特許第6044126号(P6044126)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6044126画像読取装置、画像形成装置、増幅率の調整方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044126
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】画像読取装置、画像形成装置、増幅率の調整方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/19 20060101AFI20161206BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20161206BHJP
   H04N 1/401 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H04N1/04 103E
   G06T1/00 460B
   H04N1/40 101A
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-136742(P2012-136742)
(22)【出願日】2012年6月18日
(65)【公開番号】特開2014-3423(P2014-3423A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100110607
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 進也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】中澤 政元
【審査官】 宮島 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−211259(JP,A)
【文献】 特開2002−300400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 − 1/207
G06T 1/00
H04N 1/024 − 1/036
H04N 1/40 − 1/409
H04N 5/222 − 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を光学的に読み取り、アナログ画像信号として出力する読取手段と、前記アナログ画像信号を設定された第1増幅率に基づき増幅する第1増幅手段と、増幅された前記アナログ画像信号をデジタル画像データへ変換する変換手段と、変換されたデジタル画像データを設定された第2増幅率に基づき増幅する第2増幅手段とを含む画像読取装置であって、
基準画像を前記読取手段により読み取り、前記第1増幅手段および前記第2増幅手段により増幅した後のデジタル画像データの複数ライン分の信号レベルから最大レベルであるピーク値を第1ピーク値として検出し、前記複数ライン分の前記信号レベルを平均して平均値を第1平均値として算出する検出処理手段と、
検出された前記第1ピーク値が所定の目標値を超えない範囲で前記第1増幅率を算出して前記第1増幅手段に設定し、前記第1ピーク値前記第1平均値の比を第1の比として算出する制御手段とをさらに含み、
前記検出処理手段は、前記第1増幅手段に前記第1増幅率を設定した後の前記基準画像の再度の読み取りに対して、前記ピーク値を第2ピーク値として検出し、前記平均値を第2平均値として算出し、
前記制御手段は、前記第2ピーク値と前記第2平均値の比を第2の比として算出し、前記第1の比と前記第2の比のうち大きい方の比と前記第2平均値とを乗算した値が前記目標値となるように前記第2増幅率を算出し、前記第2増幅手段に設定する、画像読取装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1増幅率の誤差を考慮して前記目標値を補正し、前記第1ピーク値が補正した前記目標値を超えない範囲で前記第1増幅率を算出する、請求項に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第2増幅率の設定後に前記基準画像を前記読取手段により読み取り、前記第1増幅手段および前記第2増幅手段において前記目標値を超えず、正常に増幅率調整が終了したときの前記第1増幅率および前記第2増幅率と当該第2増幅率を算出するために使用された前記ピーク値とを記憶する記憶手段を含み、次の増幅率調整時に、前記記憶手段に記憶された前記第1増幅率および前記第2増幅率と前記ピーク値とを初期値として使用する、請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、前記第2増幅率を算出するために使用された前記平均値も記憶し、前記制御手段は、前記次の増幅率調整時に、前記検出処理手段により算出された新たな平均値が、前記記憶手段に記憶された前記平均値と一定の係数とを乗算した値より小さい場合、新たに第1増幅率および第2増幅率を算出する、請求項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
増幅率調整が終了するたびに前記ピーク値および前記平均値を履歴情報として記憶する履歴情報記憶手段をさらに含み、前記制御手段は、前記履歴情報記憶手段に順に記憶された一定数の前記ピーク値および前記平均値がいずれも一定範囲内であるかどうかを判定し、前記一定範囲内と判定された場合に、前記読取手段は、前記ピーク値を検出するためのライン数を減らして前記基準画像の読み取りを行う、請求項1〜のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の画像読取装置と、前記画像読取装置により読み取られた画像の画像形成を行う画像形成部とを備える画像形成装置。
【請求項7】
原稿を光学的に読み取り、アナログ画像信号として出力する読取手段と、前記アナログ画像信号を設定された第1増幅率に基づき増幅する第1増幅手段と、増幅された前記アナログ画像信号をデジタル画像データへ変換する変換手段と、変換されたデジタル画像データを設定された第2増幅率に基づき増幅する第2増幅手段とを含む画像読取装置により実行される増幅率の調整方法であって、
前記読取手段により基準画像を読み取り、前記第1増幅手段および前記第2増幅手段により増幅して前記基準画像のデジタル画像データを出力するステップと、
出力された前記デジタル画像データの複数ライン分の信号レベルから最大レベルであるピーク値を第1ピーク値として検出し、前記複数ライン分の前記信号レベルを平均して平均値を第1平均値として算出するステップと、
前記第1ピーク値が所定の目標値を超えない範囲で前記第1増幅率を算出して前記第1増幅手段に設定し、かつ前記第1ピーク値と前記第1平均値の比を第1の比として算出するステップと、
前記読取手段により前記基準画像を再度読み取り、前記第1増幅手段および前記第2増幅手段により増幅して前記基準画像のデジタル画像データを再度出力するステップと、
再度出力された前記デジタル画像データの複数ライン分の信号レベルからピーク値を第2ピーク値として検出し、前記複数ライン分の前記信号レベルを平均して平均値を第2平均値として算出するステップと、
前記第2ピーク値と前記第2平均値の比を第2の比として算出し、前記第1の比と前記第2の比のうち大きい方の比と前記第2平均値とを乗算した値が前記目標値となるように前記第2増幅率を算出し、前記第2増幅手段に設定するステップとを含む、増幅率の調整方法。
【請求項8】
請求項に記載の増幅率の調整方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を光学的に読み取り出力されたアナログ画像信号を増幅し、デジタル画像データへ変換し、デジタル画像データを増幅して出力する際に適用する増幅率を調整することができる画像読取装置、その画像読取装置を備える画像形成装置、その増幅率の調整方法およびその方法を実行するためのコンピュータ可読なプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナは、原稿に光を照射し、その原稿からの反射光を、センサ基板(SBU)内に配置されたラインセンサへ導き、ラインセンサで光電変換を行うことにより原稿の読み取りを行う。具体的には、図1に示すように、コンタクトガラス1の上面に原稿12が載置され、原稿12は、コンタクトガラス1の下部に配置された光源2により光が照射される。光源2が配置される第1走行体6には、原稿12からの反射光を偏向する第1ミラー3も配置され、この第1ミラー3により偏向された反射光は、第2走行体7内へ入射される。第2走行体7には、第2ミラー4および第3ミラー5が配置され、第1ミラー3からの反射光を順次偏向し、結像レンズ8へ入射される。
【0003】
結像レンズ8は、入射された反射光を、SBU10上のラインセンサ9の受光面に縮小結像する。ラインセンサ9は、光電変換を行い、これによって原稿の読み取りを行う。この原稿読み取り時において、スキャナ11は、原稿12の長手方向である副走査方向Aに向けて、第1走行体6を一定の速度で移動し、第1走行体6と連動して第2走行体7が第1走行体6の1/2の速度で移動する。なお、図1には、シェーディング補正等において補正データを得るための、副走査方向Aに対して垂直な主走査方向に延びた均一濃度の白色部材である基準白板13も示されている。シェーディング補正は、濃度ムラを取り除くための画像補正処理である。
【0004】
SBU10は、図2に示すように、ラインセンサ9で光電変換され、得られたアナログ画像信号をデジタル画像データへ変換して出力する。そのために、SBU10は、クランプ回路14、サンプル・ホールド(S/H)回路15、アナログ・プログラマブル・ゲイン・アンプ(APGA)16、アナログ/デジタル変換器(ADC)17、デジタル・プログラマブル・ゲイン・アンプ(DPGA)18を備えた信号処理ICを備えており、ラインセンサ9で変換されたアナログ画像信号は、図示しないバッファおよびAC結合を介して前記信号処理IC内へ入力される。
【0005】
前記信号処理IC内へ入力されたアナログ画像信号は、クランプ回路14により黒レベルに基準電圧が補正される。S/H回路15は、常時変化するアナログ画像信号のある時点のレベルを一定時間保持するサンプル・ホールドを行い、これにより、連続した画像データにする。APGA16は、設定された増幅率(アナログゲイン)に基づき、ADC17によるA/D変換に適した電圧に増幅する。ADC17によりA/D変換された後、DPGA18は、設定された増幅率(デジタルゲイン)に基づきデジタル画像データを増幅し、後段の図示しない画像処理部へ出力する。ゲインは、増幅率であり、例えば2倍、4倍、8倍等とされる。
【0006】
電源ON時または省エネモードからの復帰時には、基準白板13が読み取られ、その読み取りレベルが、予め設定されている任意のレベル(白目標値)となるように各ゲインが調整される。APGA16およびDPGA18には、調整後のゲインが設定される。なお、読み取りレベルは、主走査方向に並ぶ1ライン中の複数の画素値から構成されるものである。この1ラインの読み取りレベルを例示すると、図3に示すようなものとなる。図3中、向かって左側が、ゲイン調整前の基準白板13の読み取りレベルであり、向かって右側が、ゲイン調整後の基準白板13の読み取りレベルである。上記のゲイン調整では、ゲイン調整前の読み取りレベルの最も高いピーク値が白目標値より低いので、そのピーク値が白目標値となるようにゲインが決定される。
【0007】
通常、ゲインは、白目標値、光源2の光量の変動、基準白板13の濃度のばらつきを考慮して、出力されるデジタル画像データが飽和しない値、例えば10bitのデータであれば、1023digitを超えない値に設定される。一例では、900LSB等に設定される。LSBは、A/D変換の量子化単位であるdigitと同義に使用される単位である。
【0008】
ゲイン調整後は、基準白板13を再度読み取り、その読み取りレベル(白レベル)が白目標値付近の値になっており、そのゲインが適切な値であることを確認する。適切な値でない場合は、再度調整を行う。光源2の不点灯や光量低下等によって白レベルやゲインに異常がある場合、エラー状態とされる。
【0009】
従来、ゲインを決定するための方法として、以下の方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1に記載の方法では、基準白板を読み取り、そこから白レベルを検出し、各走査ラインで検出した白レベルからピークレベルを検出し、それを平均化や重加算平均化等の処理を行い、ピーク値を求め、そのピーク値を目標出力レベルに調整することによりゲイン係数を決定している。特許文献2に記載の方法では、1ライン中のピークレベルを検出し、そのピークレベルが白レベル目標値の公差範囲内になるようにゲインを決定している。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、基準白板の各走査ラインのピークレベルを検出し平均化しているため、ノイズを含んだ白キズ等のピークレベルを検出していない。特許文献2に記載の方法でも、1ライン中のピークレベルを検出するのみで、ノイズを含んだ白キズ等のピークレベルを検出していない。基準白板にゴミが付着している場合や、白キズが存在する場合は、ゴミや白キズからの反射光によって基準白板を読み取ったときのライン画像データに突出したピークレベルが観測される。このようなゴミや白キズが存在する場合、APGA16やDPGA18のゲイン調整を精度良く行うことが困難となる。また、画像の読取信号を処理する回路は、その出力ビット数で定まる最大値を出力し続け、エラー状態となる。これでは、この回路を備えた装置全体の動作が停止してしまうおそれがある。
【0011】
この問題に鑑み、自動ゲイン調整におけるアナログゲインを決定する際、1ライン中のピークレベルを検出し、そのピーク値が目標値を超えない範囲で最大になるようにアナログゲインを決定し、アナログゲイン設定後に複数ラインでの最大ピークレベルを検出し、最大ピークレベルが目標値を超えたか否かを判定し、超えた場合、アナログゲインを一段階下げ、再度複数ラインのピークレベルを検出し、最大ピークレベルが目標値に最も近づくようにデジタルゲインを決定することで、ゲイン調整を最適に行い、出力の飽和を防止し、エラー状態を回避する技術が提案されている(特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献3に記載の技術では、アナログゲインを決定する際、1ライン中のピーク値に対して、目標値と比較してアナログゲインを決定している。このような1ライン中のピーク値のみを検出してアナログゲインを決定する方法では、ノイズを含んだ白キズのピークレベルを検出することができない可能性が高い。これは、アナログゲインを決定するために読み取られる基準白板のその1ライン中に必ず白キズが存在するとは限らないからである。したがって、調整後の基準白板にて白キズを読み取ったとき、目標値を超えてしまい、高い確率でアナログゲインを一段階下げなければならない。
【0013】
上記特許文献3によると、このアナログゲインは、一段階しか下げられないので、ゲインの設定ステップが小さいとき、ゲイン調整後の基準白板の読み取り時に、白キズの読み取りレベルが目標値を超える可能性がある。また、アナログゲインの誤差等を考慮すると、その可能性がさらに高くなる。例えば、アナログゲインを一段階下げる前にゲイン誤差が−10%あり、一段階下げた後はゲイン誤差が+10%になった場合である。このように目標値を超えてしまう場合、エラー処理となり、通常、再度ゲイン調整を行うため、立ち上げ時間に影響を及ぼすこととなる。
【0014】
そこで、基準白板に白キズ等があっても、短時間で最適なゲイン設定を行うことができ、ゲイン調整後の基準白板の読み取りレベルが目標値を超える確率を最低限に抑えてエラー状態を回避し、高速立ち上げを実現することができる装置や方法の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題に鑑み、原稿を光学的に読み取り、アナログ画像信号として出力する読取手段と、アナログ画像信号を設定された第1増幅率に基づき増幅する第1増幅手段と、増幅されたアナログ画像信号をデジタル画像データへ変換する変換手段と、変換されたデジタル画像データを設定された第2増幅率に基づき増幅する第2増幅手段とを含む画像読取装置であって、
基準画像を読取手段により読み取り、第1増幅手段および前記第2増幅手段により増幅した後のデジタル画像データの複数ライン分の信号レベルから最大レベルであるピーク値を検出し、複数ライン分の信号レベルを平均して平均値を算出する検出処理手段と、
検出されたピーク値が所定の目標値となるように第1増幅率を算出して第1増幅手段に設定し、ピーク値および平均値と、第1増幅率の設定後に基準画像を読取手段で再度読み取り、検出処理手段により検出されたピーク値および算出された平均値と、目標値とを用いて第2増幅率を算出し、第2増幅手段に設定する制御手段とをさらに含む、画像読取装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像読取装置を提供することにより、基準白板にゴミが付着し、白キズがある場合であっても、短時間で最適なゲイン設定を行うことができ、ゲイン調整後の白レベルが目標値を超える確率を最低限のものとすることができ、また、この画像読取装置のエラー状態を回避し、高速立ち上げを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】画像読取装置のハードウェア構成を例示した図。
図2図1に示す画像読取装置が備えるセンサ基板の構成例を示した図。
図3】ゲイン調整前後の基準白板の読み取りレベルを例示した図。
図4】本実施形態の画像形成装置のハードウェア構成を例示した図。
図5図4に示す画像形成装置が備える画像読取装置の構成例を示した図。
図6図5に示す画像読取装置が行うゲイン調整の第1実施形態の流れを示したフローチャート。
図7】画像読取装置が保持する各値を例示した図。
図8】アナログゲイン誤差を考慮しない場合のゲイン調整前後の基準白板の読み取りレベルを例示した図。
図9図5に示す画像読取装置が行うゲイン調整の第2実施形態の流れを示したフローチャート。
図10図5に示す画像読取装置が行うゲイン調整の第3実施形態の流れを示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図4は、本実施形態の画像形成装置の構成例を示した図である。画像形成装置は、原稿を読み取る画像読取装置を含む。画像形成装置としては、MFP(Multi Function Peripheral)を挙げることができるが、プリンタ、コピー装置、スキャナ装置、FAX装置等であってもよい。ここでは、画像形成装置をMFPとして説明する。
【0019】
画像形成装置は、本体100と、本体100の上部に設置された画像読取装置200と、画像読取装置200上に装着された自動原稿給送装置(ADF)300と、本体100に隣接して配置され、大量の用紙を供給することを可能にする大容量給紙装置400と、本体100に隣接して配置され、用紙を排出する等の後処理を行う用紙後処理装置500とを含んで構成される。
【0020】
本体100は、画像書き込み部110、作像部120、定着部130、両面搬送部140、給紙部150、垂直搬送部160、手差し部170を含んで構成される。その他、図示しない本体100を制御するためのCPUと、CPUが読み取り実行するプログラム等を記憶するためのメモリやHDD等の記憶装置と、ネットワークと接続するためのネットワークI/Fとをさらに含んで構成される。
【0021】
画像書き込み部110は、光源であるレーザーダイオード(LD)を備える露光装置により構成される。画像書き込み部110は、画像読取装置200により読み取られた原稿の画像情報に基づき、LDを変調し、ポリゴンミラーやfθレンズ等の走査光学系により感光体ドラム121の表面にレーザ光を照射して、感光体ドラム121にレーザ書き込みを行う。
【0022】
作像部120は、感光体ドラム121と、感光体ドラム121の外周に沿って設けられた現像ユニット122と、転写ユニット123と、クリーニングユニット124と、図示しない帯電ユニットや除電ユニット等の電子写真方式の作像要素を含む。現像ユニット122は、レーザ書き込みが行われた感光体ドラム121にトナーを付着させ、感光体ドラム121の表面上にトナー像(顕像)を形成する。転写ユニット123は、感光体ドラム121の表面に形成されたトナー像を用紙に転写する。クリーニングユニット124は、転写後の感光体ドラム121上に残留するトナーを除去する。帯電ユニットは、レーザ書き込みを行うために感光体ドラム121を帯電し、除電ユニットは、転写後の感光体ドラム121を除電する。
【0023】
定着部130は、転写ユニット123により用紙に転写されたトナー像を、温度および圧力を加えて用紙に定着させる。両面搬送部140は、定着部130の用紙搬送方向の下流側に設けられ、用紙の搬送方向を、用紙後処理装置500側または両面搬送部140側に切り換える第1の切換爪141と、第1の切換爪141により導かれた反転搬送路142と、反転した用紙を再度転写ユニット123側へ搬送する画像形成側搬送路143と、反転した用紙を用紙後処理装置500へ搬送する後処理側搬送路144とを含んで構成される。また、両面搬送部140は、画像形成側搬送路143と後処理側搬送路144との分岐部に第2の切換爪145を備えている。
【0024】
給紙部150は、図4では4段の給紙段から構成され、ピックアップローラ401、給紙ローラにより選択された給紙段に収納された用紙を引き出し、垂直搬送部160へ送り出す。垂直搬送部160は、各給紙段から送り出された用紙を転写ユニット123の用紙搬送方向上流側直前にあるレジストローラ161まで搬送する。レジストローラ161は、感光体ドラム121上のトナー像の画像先端とタイミングを取って用紙を転写ユニット123に送り込む。手差し部170は、開閉可能な手差しトレイ171を備え、必要に応じて手差しトレイ171を開いて用紙をその手差しトレイ171から供給する。この手差しトレイ171から用紙を給紙する場合も、レジストローラ161で用紙の搬送タイミングを取り、搬送する。
【0025】
大容量給紙装置400は、同一サイズの用紙を大量にスタックして供給する。この大容量給紙装置400は、用紙が消費されるにしたがって底板402が上昇し、常にピックアップローラ401から用紙のピックアップを可能にしている。ピックアップローラ401から給紙される用紙は、垂直搬送部160からレジストローラ161のニップまで搬送される。
【0026】
用紙後処理装置500は、パンチ、整合、ステープル、仕分け等の所定の処理を行う。図4に示す実施形態では、上記の処理を実現するためにパンチ501、ステープルトレイ(整合)502、ステープラ503、シフトトレイ504を備えている。このため、本体100から用紙後処理装置500に搬入された用紙は、孔あけを行う場合、パンチ501により用紙1枚ずつ孔あけが実施される。その後、特に処理を実施するものがなければ、プルーフトレイ505へ排紙され、ソート、スタック、仕分けを行う場合は、シフトトレイ504へ排紙される。図4に示す実施形態では、仕分けは、シフトトレイ504が用紙搬送方向に対して垂直方向に所定量往復移動することにより行われる。そのほか、用紙搬送路で用紙を用紙搬送方向に対して垂直方向に移動させることにより仕分けを行うことも可能である。
【0027】
整合を行う場合、孔あけが行われた、または行われていない用紙が下搬送路506へ送られ、ステープルトレイ502において後端フェンスにより用紙搬送方向に対して垂直方向の整合が行われ、ジョガーフェンスにより用紙搬送方向と平行な方向の整合が行われる。また、綴じを行う場合、整合された用紙の束の所定位置、例えば角部と中央部の2箇所の所定位置をステープラ503により綴じ、放出ベルトによりシフトトレイ504へ排紙する。図4に示す実施形態では、下搬送路506は、プレスタック搬送路507を備えていて、搬送時に複数枚の用紙をスタックし、後処理中の本体100側の画像形成動作の中断を回避することができるようになっている。
【0028】
画像読取装置200は、ADF300によって原稿台210上に搬送され、停止した原稿を光学的に読み取り、図1に示したような第1ミラー、第2ミラー、第3ミラーを介して結合レンズへ入射され、結像された読み取り画像を、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の光電変換素子により読み取りを行う。読み取られた画像データは、図示しない画像処理部にて所定の画像処理が実行され、図示しないメモリに一旦記憶される。その後、画像形成時に、画像書き込み部110によりメモリから読み出され、読み出された画像データに応じて変調し、感光体ドラム121に対して光学的な書き込みが行われる。
【0029】
ADF300は、複数枚の原稿を自動的に給紙する装置で、画像読取装置200の原稿台210設置面に開閉可能に取り付けられる。ADF300は、原稿の片面のみを読み取り可能なものであってもよいし、両面読み取り機能を有するものであってもよい。
【0030】
画像読取装置200のハードウェア構成は、図1に示したハードウェア構成とほぼ同様であり、コンタクトガラス、光源、第1ミラー、第2ミラー、第3ミラー、第1走行体、第2走行体、結像レンズ、ラインセンサを有するSBUが含まれる。このSBUは、図2に示した従来のSBU10と同様、読取手段としてのラインセンサ、クランプ回路、S/H回路、第1増幅手段としてのAPGA、変換手段としてのADC、第2増幅手段としてのDPGAを備えるが、この画像読取装置200では、それらに加えて、ゲイン調整を行うための回路を含む。
【0031】
図5は、画像読取装置200の構成例を示した図である。図5に示す画像読取装置200は、APGA220、ADC221、DPGA222のほか、ゲイン調整を行うための、制御手段としてのゲイン制御回路223、検出処理手段としての検出処理回路224を含んで構成される。また、画像読取装置200は、光電変換を行い、APGA220に対してアナログ画像信号V_sigを入力するラインセンサとしてのセンサ225と、センサ225に対してセンサクロック信号Sensor_clkを与え、ゲイン制御回路223および検出処理回路224に対してクロック信号CLKおよび同期信号SYNCを与えるタイミング発生回路226とを備えている。ここでは、簡略化のために、クランプ回路やS/H回路は省略している。
【0032】
センサ225は、上述したCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサであって、主走査方向の1ライン分の信号レベルを読み取るラインセンサである。タイミング発生回路226は、センサ225、ゲイン制御回路223および検出処理回路224にクロック信号CLKを与えて、センサ225、ゲイン制御回路223および検出処理回路224を動作させ、ゲイン制御回路223および検出処理回路224に同期信号SYNCを与えて、センサ225による読み取り動作にタイミングを合わせてゲイン制御回路223および検出処理回路224を動作させる。
【0033】
APGA220、ADC221、DPGA222は、図2に示したAPGA16、ADC17、DPGA18と同様のものであり、それらが行う処理についてはすでに説明したので、ここでは省略する。検出処理回路224は、タイミング発生回路226からの同期信号SYNCによりセンサ225の動作とタイミングを合わせて動作し、センサ225により読み取られた基準白板の、DPGA222から出力されたデジタル画像データD_sigの複数ライン分の信号レベルから最大レベルをピーク値peak_maxとして検出し、それらの信号レベルを平均して平均値aveを算出する。基準白板は、基準画像を得るために読み取られる部材である。
【0034】
具体的には、各ラインにつき、複数の画素値を有することから、複数ラインのすべての画素値から最大の画素値をピーク値peak_maxとして検出する。そして、これらすべての画素値を加算し、その画素数で除算することにより平均値aveを算出する。検出処理回路224は、メモリを備えていて、検出したピーク値peak_maxと、算出した平均値aveとをそのメモリに記憶する。ここでは、検出処理回路224のメモリに記憶するようにしているが、外部の記憶装置に記憶することも可能である。
【0035】
ゲイン制御回路223も、タイミング発生回路226からの同期信号SYNCによりセンサ225の動作とタイミングを合わせて動作し、検出処理回路224からピーク値peak_maxおよび平均値aveを取得し、取得した平均値aveからアナログ画像信号V_sigに対するアナログゲインAgainおよびデジタル画像データD_sigに対するデジタルゲインDgainを算出し、APGA220およびDPGA222のそれぞれに設定する。これにより、APGA220およびDPGA222は、設定されたゲインに基づき、入力されたアナログ画像信号V_sigおよびデジタル画像データD_sigを増幅して出力することが可能となる。
【0036】
画像読取装置200におけるゲイン調整を、図6を参照して詳細に説明する。図6は、画像読取装置200が行うゲイン調整の第1実施形態を示したフローチャートである。画像読取装置200の電源がONにされたとき、または省エネモードから復帰したときに、この処理をステップ600から開始する。ステップ602では、APGA220およびDPGA222に設定されているゲインを初期化して、APGA220のアナログゲインAgainも、DPGA222のデジタルゲインDgainも、最低のゲインである1倍に設定する。そして、ステップ604において、検出処理回路224がメモリに保持するピーク値peak_maxおよび平均値aveをリセットする。これらの値は、例えば、予め設定されたデフォルト値にリセットされる。
【0037】
ステップ606では、センサ225が、最低のゲインに設定した状態で基準白板を複数ライン分読み取り、光電変換してアナログ画像信号V_sigを出力する。アナログ画像信号V_sigは、APGA220で増幅され、ADC221でデジタル画像データD_sigへ変換され、DPGA222で増幅される。ステップ608では、検出処理回路224が、DPGA222から出力されたデジタル画像データD_sigの複数ライン分の信号レベルからピーク値peak_maxを検出し、また、それら信号レベルを平均して平均値aveを算出し、これらの値により検出処理回路224のメモリ内の各値を更新する。上記でデフォルト値にリセットされていれば、デフォルト値から検出されたピーク値および算出された平均値へ更新される。
【0038】
その後、検出処理回路224は、メモリに記憶されたピーク値peak_maxおよび平均値aveをゲイン制御回路223へ送る。ステップ610では、ゲイン制御回路223が、ピーク値peak_maxと平均値aveの比を算出し、その比をkとしてゲイン制御回路223が備えるメモリに記憶する。比kは、ピーク値peak_maxを平均値aveで除算することにより算出される。この比は、ゲイン制御回路223が備えるメモリに限られるものではなく、外部に記憶装置を設け、その記憶装置に記憶することも可能である。
【0039】
ステップ612では、ゲイン制御回路223が、ピーク値peak_maxが予め設定されている白目標値agc_trgに0.9を乗算した値を超えない範囲で、かつ最大のゲインとなるようにAPGA220に設定するアナログゲインAgainを算出する。この実施形態では、アナログゲインAgainが1倍、2倍、4倍、8倍の4つの設定が可能になっているものとし、アナログゲインAgainの誤差を±10%としている。0.9を乗算しているのは、この誤差を考慮したものである。
【0040】
このように、複数ライン分の信号レベルからピーク値を検出しているため、ノイズを含んだピークレベルをより確実に検出することができ、基準白板に白キズがある場合であっても、アナログゲインAgainの調整精度を向上させることができる。また、アナログゲインAgainの誤差を考慮して0.9を白目標値agc_trgに乗算しているので、白目標値agc_trgを超える確率を低減させることができる。
【0041】
また、ステップ612では、ゲイン制御回路223が、白目標値agc_trgに0.9を乗算した値をピーク値peak_maxで除算して得られた計算値N(N=agc_trg×0.9/peak_max)が2未満であるか否かを判定する。Nが2未満である場合、アナログゲインAgainを2倍以上に設定すると白目標値agc_trgを超える場合があるので、ステップ614へ進み、ゲイン制御回路223はアナログゲインAgainを1倍と決定し、APGA220に1倍を設定する。Nが2以上である場合、ステップ616へ進み、ゲイン制御回路223は、Nが2以上で、かつ4未満であるかを判定する。Nがその間の範囲である場合、ステップ618へ進み、ゲイン制御回路223はアナログゲインAgainを2倍と決定し、APGA220に2倍を設定する。アナログゲインAgainを4倍以上に設定すると、白目標値agc_trgを超える場合があるからである。
【0042】
Nが4以上である場合、ステップ620へ進み、ゲイン制御回路223は、Nが4以上で、かつ8未満であるかを判定する。Nがその間の範囲である場合、ステップ622へ進み、ゲイン制御回路223はアナログゲインAgainを4倍と決定し、APGA220に4倍を設定する。Nが8倍以上である場合、ステップ624へ進み、ゲイン制御回路223はアナログゲインAgainを8倍と決定し、APGA220に8倍を設定する。このようにしてゲイン制御回路223がアナログゲインAgainをAPGA220に設定した後、ステップ626へ進み、センサ225が、再度、基準白板を複数ライン分読み取り、アナログ画像信号V_sigを出力する。
【0043】
APGA220は、アナログ画像信号V_sigを、設定されたアナログゲインAgainに基づき増幅し、ADC221は、A/D変換を行い、DPGA222は、デジタルゲインDgainを1倍の状態のままにして増幅を行い、デジタル画像データD_sigを出力する。ステップ628では、検出処理回路224が、そのデジタル画像データD_sigを受け取り、再びピーク値peak_maxを検出し、平均値aveを算出する。そして、検出処理回路224は、これらの値によりメモリに記憶されている値を更新する。その後、検出処理回路224は、ゲイン制御回路223へこれらの値を送る。ステップ630では、ゲイン制御回路223が、これらの値からピーク値peak_maxと平均値aveの比kを算出する。比kは、ピーク値peak_maxを平均値aveで除算することにより算出される。ステップ632では、算出されたkとkを比較し、kがkより大きいかどうかを判定する。
【0044】
ここで、アナログゲインAgainを決定する前後におけるピーク値peak_max、平均値ave、比k、k、アナログゲインAgain、白目標値agc_trgを例示すると、図7のテーブルに示すような値となる。この例では、アナログゲインAgainが2倍と決定されているため、APGA220に2倍が設定され、その結果、再度基準白板を読み取って得られた平均値aveが600LSB/10bitという決定前の300LSB/10bitの2倍となっている。しかしながら、ピーク値peak_maxについては、決定前の400LSB/10bitの2倍にはなっておらず、2倍より小さい700LSB/10bitとなっている。このため、ピーク値peak_maxと平均値aveの比kとkは、異なる値となり、決定する前のkが決定した後のkより大きい値となっている。
【0045】
再び図6を参照して、ステップ632でkが大きいと判定された場合、ステップ634へ進み、最低のゲインとして設定した1倍に、白目標値agc_trgを乗算し、それをステップ628にて算出した平均値aveで除算し、さらに、大きい方のkで除算してDPGA222に設定するデジタルゲインDgain(Dgain=1×agc_trg/(ave×k1))を算出する。算出後、得られたデジタルゲインDgainをDPGA222に設定し、ステップ638でこの処理を終了する。
【0046】
ステップ632でkとkが同じか、kの方が大きいと判定された場合、ステップ636へ進み、最低のゲインとして設定した1倍に、白目標値agc_trgを乗算し、それをステップ628にて算出した平均値aveで除算して、さらに、大きい方のkで除算してDPGA222に設定するデジタルゲインDgain(Dgain=1×agc_trg/(ave×k2))を算出する。算出後、得られたデジタルゲインDgainをDPGA222に設定し、ステップ638でこの処理を終了する。
【0047】
ちなみに、図7に示す例では、kのほうが大きいので、1倍、白目標値900LSB/10bit、平均値600LSB/10bit、k=1.33を用いて、デジタルゲイン=(1×900)/(600×1.33)=1.127と計算し、これをDPGA222に設定することができる。また、上記のように、1倍、2倍、4倍、8倍といった整数で設定する場合には、白目標値agc_trgを超えない範囲で設定する必要があることから、この例では、1.127に最も近く、それより小さい整数である1倍に設定することができる。設定するゲインは、上記の1倍、2倍、4倍、8倍に限定されるものではなく、それ以外の整数倍であってもよく、上記の1.127のように小数倍であってもよい。
【0048】
この画像読取装置200におけるゲイン調整では、可能な限りノイズを含んだピーク値を検出し、それに基づきアナログゲインAgainおよびデジタルゲインDgainを決定しているため、基準白板に白キズがあるような場合であっても、精度良くゲイン調整を行うことができる。また、調整後の白キズ読み取りレベルが白目標値agc_trgを超える確率を最小限のものとすることができる。その結果、画像読取装置200のエラー状態を回避することができ、電源ON時や省エネモードからの復帰時の高速立ち上げを実現することができる。
【0049】
図6に示す実施形態では、アナログゲインAgainを算出する際、白目標値agc_trgに0.9を乗算してアナログゲインAgainの誤差を考慮したが、これを考慮しない場合の不具合について簡単に説明する。例えば、図8に示すように、最初に設定されたアナログゲインAgainが最低のゲインである1倍のとき、アナログゲイン調整前の基準白板の読み取りレベルのピーク値peak_maxが440LSB/10bitであり、予め設定されている白目標値agc_trgが900LSB/10bitであるものとする。
【0050】
アナログゲインAgainの誤差を考慮しない場合、白目標値agc_trg/ピーク値peak_maxが2以上で4未満であるから、アナログゲインAgainは2倍に決定される。これは、2倍したとしても、440×2=880LSB/10bitで、白目標値agc_trgの900LSB/10bitより小さくなるためである。
【0051】
しかしながら、アナログゲインAgainの誤差が±10%ある場合、実際のアナログゲインAgainは、2倍ではなく、1.9倍〜2.1倍となる。例えば、アナログゲインAgainが1.9倍では、440×1.9=836LSB/10bitで、白目標値agc_trgより小さくなるが、アナログゲインAgainが2.1倍では、440×2.1=924LSB/10bitとなり、白目標値agc_trgを超えてしまう。すると、画像読取装置200はエラー状態となってしまう。
【0052】
このような不具合に対処するために、白目標値agc_trgそのものではなく、ゲイン誤差を考慮した低めの値、すなわち白目標値agc_trg×0.9と補正することで、基準白板の読み取りレベルが白目標値agc_trgを超えることがなくなり、画像読取装置200がエラー状態になるのを回避することができる。なお、誤差が±20%あれば、白目標値agc_trgに0.8を乗算して補正し、その補正した値を用いてゲインを決定することができる。
【0053】
図6に示した実施形態では、最低のゲインを設定し、検出処理回路224のメモリに記憶されているピーク値および平均値をリセットした後、基準白板を読み取り、アナログゲインAgainを決定し、それを設定し、再度基準白板を読み取り、デジタルゲインDgainを決定し、それを設定して、ゲイン調整を行った。この実施形態では、ゲイン調整を行うたびに、初期化しているが、デジタルゲインDgainを設定した後の基準白板の読み取りにおいて、白目標値agc_trgを超えず、エラーが発生することなく正常に終了した場合、そのときに設定されたアナログゲインAgainおよびデジタルゲインDgain、ピーク値を、次のゲイン調整における初期値として利用することが望ましい。これは、より大きなピーク値を検出した場合はピーク値を更新することになるが、初期値として利用したピーク値のほうが大きい場合はその値をそのまま保持することができるからである。これにより、ゲイン調整を行うたびにピーク値を検出する精度が向上し、より最適なゲイン設定が可能となり、ゲイン調整後の基準白板読み取りレベルが白目標値agc_trgを超える確率をさらに低減させることができる。
【0054】
図9は、画像読取装置200が行うゲイン調整の第2実施形態を示したフローチャートである。この第2実施形態は、正常に終了したときのゲインおよびピーク値を初期値として用いるものである。図9に示す第2実施形態も、図6に示した第1実施形態と同様、画像読取装置200の電源がONにされたとき、または省エネモードから復帰したときに、処理を開始する(ステップ900)。
【0055】
ステップ902では、まず、前回のゲイン調整が正常に終了したかを判定する。例えば、ゲイン調整においてログ情報を取得するようにしておき、そのログ情報を参照し、エラーが出力されているかどうかにより判定することができる。確認処理において白目標値agc_trgを超えていればエラーが出力されるからである。なお、確認処理は、ゲイン調整においてアナログゲインAgainおよびデジタルゲインDgainを算出し、それらを設定した後に、基準画像である基準白板を再度読み取り、増幅されたときの値が白目標値agc_trgを超えないことを確認するための処理である。これは一例であり、正常に終了したかどうかを判定することができればいかなる方法でも採用することができる。
【0056】
正常に終了していないと判定された場合、ステップ904へ進み、ゲイン制御回路223は、APGA220およびDPGA222に設定されているアナログゲインAgainおよびデジタルゲインDgainを初期化し、最低のゲインである1倍に設定する。そして、ステップ906において、検出処理回路224のメモリに記憶されているピーク値peak_maxおよび平均値aveをリセットする。一方、正常に終了したと判定された場合、前回設定したゲインや各値を初期値として利用することができるので、直接ステップ908へ進む。
【0057】
ステップ908では、画像読取装置200が最低のゲインに設定した状態で、あるいは前回のゲインに設定した状態で、センサ225が基準白板を複数ライン分読み取り、アナログ画像信号V_sigを出力する。その後のステップ910〜940の処理は、図6に示したステップ608〜638の処理と同様である。なお、ステップ912、ステップ914、ステップ918、ステップ922において、比kおよび計算値Nを算出する際に用いるピーク値peak_maxは、前回のゲインに設定した状態で読み取りを行った場合、前回のピーク値が用いられる。
【0058】
画像読取装置200は、長期使用等により光源の光量低下を生じる。このため、光量が低下した分を、ゲインを大きくすることで、適切なデジタル画像データD_sigを出力することができる。しかしながら、図9に示した第2実施形態では、エラーがなく正常に終了している場合、保持しているピーク値peak_maxを利用してゲインを決定するため、そのゲインを大きくすることはできない。そこで、検出処理回路224が算出した前回の平均値をave_oldとして保持し、算出された平均値aveが、平均値ave_oldと一定の係数とを乗算した値より小さい場合、光源光量が低下していると判断し、ゲインを初期化し、ピーク値および平均値をリセットして再度ゲイン調整を行うことができるようにする。
【0059】
図10は、画像読取装置200が行うゲイン調整の第3実施形態を示したフローチャートである。図10に示す第3実施形態は、図9に示した第2実施形態と同様、画像読取装置200の電源がONにされたとき、または省エネモードから復帰したときに、処理を開始する(ステップ1000)。ステップ1002では、まず、前回のゲイン調整が正常に終了したかを判定する。正常に終了していないと判定された場合、ステップ1004へ進み、ゲイン制御回路223は、APGA220およびDPGA222に設定されているアナログゲインAgainおよびデジタルゲインDgainを初期化し、最低のゲインである1倍に設定する。そして、ステップ1006において、検出処理回路224のメモリに記憶されているピーク値peak_maxおよび平均値aveをリセットする。一方、正常に終了したと判定された場合、前回設定したゲインや各値を初期値として利用することができるので、直接ステップ1008へ進む。
【0060】
ステップ1008では、画像読取装置200が最低のゲインに設定した状態で、あるいは前回のゲインに設定した状態で、センサ225が基準白板を複数ライン分読み取り、アナログ画像信号V_sigを出力する。アナログ画像信号V_sigは、APGA220、ADC221、DPGA222により増幅および変換される。ステップ1010では、検出処理回路224が、DPGA222から出力されたデジタル画像データD_sigの複数ライン分の信号レベルからピーク値peak_maxを検出し、それら信号レベルを平均して平均値aveを算出し、これらの値により検出処理回路224のメモリ内の各値を更新する。なお、このメモリは、前回の平均値もave_oldとして記憶している。
【0061】
検出処理回路224は、ゲイン制御回路223へピーク値peak_max、平均値aveおよび前回の平均値ave_oldを送る。ステップ1012では、ゲイン制御回路223が、平均値aveが平均値ave_oldにtを乗算した値より大きいかどうかを判定する。tは、一定の係数であって、0より大きく1以下の数値である。例えば、tは、0.8あるいは0.9といった値とすることができる。
【0062】
ステップ1012で平均値aveのほうが大きい場合、ステップ1016へ進み、小さい場合は、ステップ1014へ進む。ステップ1014では、平均値aveを平均値ave_oldとし、メモリ内に記憶された平均値ave_oldを更新する。そして、ステップ1004へ戻り、ゲインの初期化、ピーク値peak_maxおよび平均値aveのリセットを行う。なお、ステップ1016〜1044の処理は、図9に示したステップ912〜ステップ940の処理と同様である。このようにして、光源の光量低下があった場合でも、その光量に応じた最適なゲインに調整することができる。
【0063】
検出処理回路224のメモリは、検出されたピーク値peak_maxおよび算出された平均値ave、前回の平均値ave_oldのほか、これまでに検出されたピーク値および算出された平均値を履歴情報として記憶することができる。ピーク値peak_maxおよび平均値aveは、ゲイン調整が終了するたびに順に記憶することができる。このため、ゲイン制御回路223は、順に記憶された一定数のピーク値および平均値がいずれも一定範囲内にあるかどうかを判断し、一定範囲内にあれば、変動がほとんど無く、安定している状態であり、充分にノイズを含んだピーク値を検出できており、光源光量の変動もほとんどないと判断できる。このため、センサ225は、基準白板を読み取る際、例えばこれまでに100ラインであったものを、50ラインにライン数を減らして読み取りを行うことができる。ライン数を減らしても充分にゲイン調整を行うことができるからである。このようにライン数を減らすことにより読み取り時間が短縮されるため、画像読取装置200の立ち上げをより高速にすることができる。
【0064】
これまで本発明の画像処理装置、この画像処理装置を備える画像読取装置および画像形成装置および画像処理方法について上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。このため、画像処理方法を実行するためのコンピュータ可読なプログラムも提供することができる。このプログラムは、CD−ROM、DVD、USBメモリ、SDカード等の記録媒体に格納して提供することもできるし、ネットワークに接続されたサーバ等に記憶され、ダウンロード要求に応じてネットワークを介して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…コンタクトガラス、2…光源、3…第1ミラー、4…第2ミラー、5…第3ミラー、6…第1走行体、7…第2走行体、8…結像レンズ、9…ラインセンサ、10…SBU、11…スキャナ、12…原稿、13…基準白板、14…クランプ回路、15…S/H回路、16…APGA、17…ADC、18…DPGA、100…本体、110…画像書き込み部、120…作像部、121…感光体ドラム、122…現像ユニット、123…転写ユニット、124…クリーニングユニット、130…定着部、140…両面搬送部、141…第1の切換爪、142…反転搬送路、143…画像形成側搬送路、144…後処理側搬送路、145…第2の切換爪、150…給紙部、160…垂直搬送部、161…レジストローラ、170…手差し部、171…手差しトレイ、200…画像読取装置、210…原稿台、220…APGA、221…ADC、222…DPGA、223…ゲイン制御回路、224…検出処理回路、225…センサ、226…タイミング発生回路、300…ADF、400…大容量給紙装置、401…ピックアップローラ、402…底板、500…用紙後処理装置、501…パンチ、502…ステープルトレイ、503…ステープラ、504…シフトトレイ、505…プルーフトレイ、506…下搬送路、507…プレスタック搬送路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特許第4127603号公報
【特許文献2】特許第4778337号公報
【特許文献3】特開2011−211259号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10