特許第6044135号(P6044135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノーリツの特許一覧

<>
  • 特許6044135-コージェネレーションシステム 図000002
  • 特許6044135-コージェネレーションシステム 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044135
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】コージェネレーションシステム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/18 20060101AFI20161206BHJP
   F24H 1/00 20060101ALI20161206BHJP
   F02G 5/04 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   F24H1/18 302Z
   F24H1/00 631B
   F24H1/18 G
   F02G5/04 H
   F02G5/04 N
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-147424(P2012-147424)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-9894(P2014-9894A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】三宅 富雄
(72)【発明者】
【氏名】多田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】谷村 愛隆
(72)【発明者】
【氏名】吉▲高▼ 豊
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠矢
(72)【発明者】
【氏名】梅原 淳
(72)【発明者】
【氏名】守安 陽一郎
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−204239(JP,A)
【文献】 特開2003−042544(JP,A)
【文献】 特開2003−083558(JP,A)
【文献】 特開2008−096036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
F02G 5/04
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電部において発生した熱を回収して湯水加熱を行なうことが可能な熱回収用の熱交換器と、
この熱交換器を利用して加熱された湯水を貯留可能な貯湯タンクと、
給湯運転スイッチがオン状態の際に、前記貯湯タンクから出湯した湯水を予め設定された目標給湯温度に調整して所望の給湯先に供給させる動作制御を実行可能な制御手段と、
を備えており、
前記制御手段は、前記発電部の駆動時において、前記貯湯タンクの蓄熱量が所定量以上となり、かつその際において前記給湯運転スイッチがオフ状態とされている特定状態が発生した場合には、前記給湯運転スイッチをオン状態に切り替えてから、前記貯湯タンク内の湯水を浴槽または浴槽に代わる所定箇所に供給することより、前記貯湯タンクの蓄熱量を減少させる排湯処理を実行させる制御が可能とされている、コージェネレーションシステムであって、
前記制御手段は、所望の給湯先に加熱または非加熱の湯水を供給するための湯水流路に湯水流通が生じているか否かを判断可能であり、
前記特定状態が発生することに起因して前記給湯運転スイッチをオフ状態からオン状態に切り替える際において、前記湯水流路に湯水流通が生じていると判断された場合には、その後の給湯温度をそれ以前に設定されていた目標給湯温度よりも低くする給湯温度低下制御を実行する一方、前記湯水流路に湯水流通が生じていると判断されない場合には、前記給湯温度低下制御は実行されないように構成されていることを特徴とする、コージェネレーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のコージェネレーションシステムであって、
前記給湯温度低下制御は、前記特定状態が発生する以前に設定されていた目標給湯温度が、所定温度以上の場合に実行され、そうでない場合には実行されない構成とされている、コージェネレーションシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコージェネレーションシステムであって、
前記排湯処理が実行される際には、前記貯湯タンクからの放熱量が、前記熱回収用の熱交換器による熱回収量以上となるように、前記貯湯タンクからの排湯量およびその温度が制御されるように構成されている、コージェネレーションシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスエンジンや燃料電池などを利用した発電部において発生した熱を利用して湯水加熱を行ない、かつこの湯水を貯湯タンクに貯留させてから給湯用途などに用いるように構成されたコージェネレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コージェネレーションシステムの一例としては、特許文献1に記載のものがある。同文献に記載のシステムは、停電発生時などの自立発電(外部からの電力供給を受けない状態での発電)時において、貯湯タンクの蓄熱量が満杯状態に近づくと、貯湯タンクの湯水を浴槽に供給する排湯処理が実行されるように構成されている。この排湯処理により、貯湯タンクの蓄熱量が減少する。貯湯タンクの蓄熱量が満杯になると、発電部からの排熱を利用して加熱される湯水を貯湯タンクにそれ以上蓄熱することができず、発電部において発生する熱回収が困難となるため、発電部がオーバヒート状態になるといった不具合を生じる虞がある。これに対し、前記した構成によれば、そのような虞を回避し、自立発電を継続することができる利点が得られる。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地がある。
【0004】
すなわち、貯湯タンクからの排湯処理は、前記したように、貯湯タンクの蓄熱量が満杯近くになった際に実行されるが、給湯運転スイッチがオン状態とされている場合は勿論のこと、給湯運転スイッチがオフ状態とされていた場合であっても、この給湯運転スイッチが強制的にオン状態に切り替えられてから実行される。このため、ユーザが給湯運転スイッチをオフにした状態で先栓を開き、非加熱の水を使用している際に、前記した貯湯タンクからの排湯処理が実行されるべく給湯運転スイッチが強制的にオン状態に切り替えられる場合が生じ得る。このような状況が生じた場合、前記の先栓には、予め設定されていた目標給湯温度に調整された湯水が供給されることとなるが、この目標給湯温度が高温(たとえば、55℃など)に設定されていた場合、先栓からは高温の湯水が供給される。ユーザとしては、給湯運転スイッチをオフ状態として、加熱湯水の使用を避けようとしているにも拘わらず、前記したような高温の湯水が供給されたのでは、ユーザの意思に反した給湯がなされるばかりか、高温の湯水にユーザが触れる可能性も生じ得る。したがって、このような事態を適切に防止することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−204239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、ユーザが給湯運転スイッチをオフ状態にして非加熱水の使用を意図している場合に、発電部の駆動継続を目的とする排湯処理が実行されることに起因して高温出湯が生じることを適切に防止可能なコージェネレーションシステムを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供されるコージェネレーションシステムは、発電部において発生した熱を回収して湯水加熱を行なうことが可能な熱回収用の熱交換器と、この熱交換器を利用して加熱された湯水を貯留可能な貯湯タンクと、給湯運転スイッチがオン状態の際に、前記貯湯タンクから出湯した湯水を予め設定された目標給湯温度に調整して所望の給湯先に供給させる動作制御を実行可能な制御手段と、を備えており、前記制御手段は、前記発電部の駆動時において、前記貯湯タンクの蓄熱量が所定量以上となり、かつその際において前記給湯運転スイッチがオフ状態とされている特定状態が発生した場合には、前記給湯運転スイッチをオン状態に切り替えてから、前記貯湯タンク内の湯水を浴槽または浴槽に代わる所定箇所に供給することより、前記貯湯タンクの蓄熱量を減少させる排湯処理を実行させる制御が可能とされている、コージェネレーションシステムであって、前記制御手段は、所望の給湯先に加熱または非加熱の湯水を供給するための湯水流路に湯水流通が生じているか否かを判断可能であり、前記特定状態が発生することに起因して前記給湯運転スイッチをオフ状態からオン状態に切り替える際において、前記湯水流路に湯水流通が生じていると判断された場合には、その後の給湯温度をそれ以前に設定されていた目標給湯温度よりも低くする給湯温度低下制御を実行する一方、前記湯水流路に湯水流通が生じていると判断されない場合には、前記給湯温度低下制御は実行されないように構成されていることを特徴としている。
ここで、「給湯運転スイッチのオン状態」とは、貯湯タンクから所望の給湯先への湯水供給を許容するモード(給湯運転許容モードであり、たとえば先栓が開かれて所定量以上の水流検出があると加熱湯水の出湯がなされるモード)の設定状態と同義であり、所望の給湯先の湯水供給が現に行なわれている状態と、そのような湯水供給が行なわれていない待機状態のいずれであるかは問わない。ただし、例外として、給湯運転スイッチのオン状態であっても、所定の異常を検知したことにより、この異常に対応した安全動作を実行して強制的に運転禁止とされた場合には、給湯運転許容モードではなく、給湯運転禁止モードとなっている。
一方、「給湯運転スイッチのオフ状態」とは、たとえば給湯システムに設けられた先栓が開かれた場合であっても、この先栓への貯湯タンクからの湯水供給は実行されず、非加熱の水が供給されるモード(給湯運転停止モード)の設定状態と同義である。
【0009】
本願発明によれば、給湯運転スイッチをオフ状態として非加熱水を使用することをユーザが意図している状況において、発電部の駆動を継続することを目的として貯湯タンクからの排湯処理が実行されるべく給湯運転スイッチがオン状態とされ、所定の給湯先に湯水が供給される事態が生じたとしても、この湯水は、それ以前の目標給湯温度よりも低い温度に制御される。したがって、目標給湯温度が高温(たとえば、55℃など)に設定されていたとしても、所望の給湯先にその温度の高温湯水が供給されることは回避される。その結果、ユーザが高温の湯水に誤って触れてしまうといった虞を生じないようにすることができる。
また、前記構成によれば、所定の湯水流路に湯水流通が生じ、給湯先に湯水供給がなされている場合には、給湯温度低下制御が実行されるために、給湯先に高温の湯水が不意に供給されることは適切に回避される。一方、これとは異なり、湯水流路に湯水流通が生じておらず、給湯先への湯水供給がなされていない場合には、給湯温度低下制御が無駄に実行されないようにすることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記給湯温度低下制御は、前記特定状態が発生する以前に設定されていた目標給湯温度が、所定温度以上の場合に実行され、そうでない場合には実行されない構成とされている。
【0011】
このような構成によれば、目標給湯温度が所定温度以上の高温であって、ユーザにたとえば火傷などを生じさせる虞のある場合には、そのような虞のない温度に下げられた湯水給湯がなされるのに対し、元々そのような虞のない比較的低温の目標給湯温度に設定されていた場合には、給湯温度低下制御は実行されない。したがって、給湯温度低下制御は、必要性の高い場合にのみ効率良く実行される。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記排湯処理が実行される際には、前記貯湯タンクからの放熱量が、前記熱回収用の熱交換器による熱回収量以上となるように、前記貯湯タンクからの排湯量およびその温度が制御されるように構成されている。
【0015】
このような構成によれば、貯湯タンクからの排湯処理を実行する際に、その排湯量が過少にならないようにし、貯湯タンクの蓄熱量が不当に増加して満杯状態になる不具合を適切に防止することができる。したがって、発電部の駆動を継続させることを確実化する上で、より好ましい。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るコージェネレーションシステムの一例を示す概略説明図である。
図2図1のコージェネレーションシステムの制御部の動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1に示すコージェネレーションシステムCは、発電ユニットU1と、給湯ユニットU2とを具備している。このコージェネレーションシステムCの基本的なハード構成は、特許文献1と同様である。したがって、特許文献1と共通する既知の構成については、比較的簡単に説明する。
【0020】
発電ユニットU1は、発電部10、冷却回路11、電源回路12、および制御部13を備えている。
発電部10は、たとえばガスエンジン10aを利用して発電機10bを回転させる方式である。後述するように、これに代えて、発電部10を燃料電池方式とすることもできる。
冷却回路11は、ガスエンジン10aの排ガスから熱回収を行なって発電部10を冷却(水冷)するための回路であり、ポンプP1の駆動により水冷用の湯水が一定の経路で循環するように構成されている。冷却回路11を流れる湯水は、発電部10を通過して温度上昇を生じた後には、給湯ユニットU2に設けられている熱回収用の熱交換器24に送られ、貯湯タンク20から送られてくる湯水を加熱するのに利用される。
【0021】
発電ユニットU1は、通常時においては、外部電源から電源回路12に電力供給を受けて運転がなされ、発電部10において発生させた電力を発電ユニットU1の外部機器に供給可能とされている。ただし、外部電源の停電時においても発電(自立発電)が可能である。この自立発電時におけるガスエンジン10aの始動は、充電バッテリ駆動のセルモータを利用する方式、あるいは手動方式のいずれでもよい。制御部13は、発電ユニットU1の各部の動作制御やデータ処理を実行するものであり、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されている(この点は、後述の制御部22も同様)。
【0022】
給湯ユニットU2は、先栓30への湯水供給(一般給湯)や、浴槽31への湯張り動作などを実行するためのユニットであり、貯湯タンク20、補助熱源機21、制御部22、電源回路23、熱回収用の熱交換器24、および後述する各種の機器を有している。
【0023】
貯湯タンク20への加熱湯水の貯留は、ポンプP2を駆動することにより実行される。ポンプP2が駆動されると、貯湯タンク20の湯水は、矢印N11〜13で示すように流れる。より具体的には、貯湯タンク20の湯水は、下部配管部50a、およびポンプP2を有する配管部50bを通過して熱回収用の熱交換器24に送られ、この熱交換器24において加熱される。その後、この湯水は、補助熱源機21、流量制御弁V1、および上部配管部50cを通過して貯湯タンク20内の上部に流入する。したがって、貯湯タンク20内には、その上部側から高温の湯水が順次蓄積されていく。補助熱源機21は、たとえば瞬間式ガス給湯器と同様な構成であり、この補助熱源機21に送られてきた湯水温度が所定温度に満たない場合に、この湯水を加熱するのに利用される。貯湯タンク20には、複数の温度センサSaが取り付けられており、貯湯タンク20内の湯水温度分布に基づき、貯湯タンク20内の蓄熱量を制御部22において検出可能である。なお、「蓄熱量」は、貯湯タンク20内に蓄積された熱量そのものである必要はなく、たとえば貯湯タンク20内において所定温度以上の湯水が占める割合などであってもよい。
【0024】
制御部22は、給湯ユニットU2の各部の動作制御やデータ処理を実行し、発電ユニットU1の制御部13との間でデータ通信が可能である。制御部22には、少なくとも1つのリモコン4が通信接続されている。リモコン4は、データ用の表示部40、および複数の操作スイッチ41を有しており、その1つとして給湯運転スイッチ41aも有している。給湯運転スイッチ41aがオフ状態の際には、給湯動作は実行されず、先栓30が開状態とされた場合には、入水口51に供給された水道水などの水がそのまま先栓30に供給される。この場合の流水経路は、矢印N21〜N23に示すように、配管部51a〜51cを順次通過する経路である。
【0025】
給湯運転スイッチ41aがオン状態の際には、先栓30への給湯、浴槽31への湯張り、風呂追い焚き動作などが可能である。これらの動作も、基本的には特許文献1と同様である。先栓30への給湯は、矢印N31,N32,N23に示すように、貯湯タンク20の湯水が上部配管部50c、混合弁V2、バイパス配管部50d、および配管部51b,51cを通過することにより行なわれる。混合弁V2では、貯湯タンク20からの湯水と入水口51からの水との混合比が制御され、湯水温度が調整される。浴槽31への湯張りは、貯湯タンク20の上部から流出して三方弁V2および配管部51bを通過した湯水が、その後に矢印N41,N42で示すように、配管部51dを経由して浴槽湯水循環路52に到達し、その往き管52aおよび戻り管52bの双方から浴槽31に流入して行なわれる。配管部51b,51dには、流量センサSb,Sc、流量制御弁V3、および開閉弁V4が設けられている。風呂追い焚き動作は、ポンプP3を駆動させることにより、浴槽31の湯水を浴槽湯水循環路52において循環させつつ、追い焚き用の熱交換器25を利用して加熱することにより行なわれる。追い焚き用の熱交換器25には、補助熱源機21を通過した湯水が開閉弁V5を有する配管部53を介して供給される。
【0026】
給湯ユニットU2は、通常時においては、電源回路23が外部電源から受ける電力を利用して運転され、外部電源の停電時においては、発電ユニットU1によって発生された電力を利用して運転される。このような電力供給元の切り替えは、制御部22の制御によって実行されるように構成してもよいが、これに代えて、たとえば給湯ユニットU2の電源回路23を発電ユニットU1の電力出力部に対して手作業によって配線接続させるといった方式を採用することもできる。
【0027】
制御部22は、発電部10の自立発電時において、貯湯タンク20の蓄熱量が所定量以
上となった際には、貯湯タンク20の湯水を浴槽31に送り込む排湯処理を実行させる制御を行なう。この排湯処理は、既述した浴槽31への湯張り動作と同様な経路で行なわれる。この排湯処理により、貯湯タンク20においては、蓄熱量が減少して蓄熱についての余裕が生じるために、熱交換器24を利用して回収した熱を貯湯タンク20にその後も順次蓄積させていくことができる。
制御部22は、前記した排湯処理に際し、先栓30に高温の湯水が不用意に供給されることを防止するように、所定条件下において、給湯温度低下制御を実行するように構成されている。その具体的な内容については、後述する。
【0028】
次に、前記したコージェネレーションシステムCの作用について説明する。併せて、制御部22の動作処理手順の一例について、図2のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0029】
まず、外部電源が停電するなどして、発電部10の自立発電が実行され、かつ貯湯タンク20の蓄熱量が所定量以上となった場合には、制御部22は、給湯運転スイッチ41aがオン・オフ状態のいずれであるかを判断する(S1:YES,S2:YES,S3)。ここで、前記した「蓄熱量が所定量」とは、蓄熱量の満杯量よりも少ない量であり、たとえば所定温度以上の高温湯水が貯湯タンク20の容量の2/3程度に達した場合などとすることが可能である。ただし、その具体的な数値などは限定されない。前記「所定量」は、リモコン4のスイッチ操作によって変更できるようにしてもよい。
【0030】
制御部22は、前記のステップS3において、給湯運転スイッチ41aがオン状態である場合には、その後に特別な制御を行なうことなく排湯処理を実行させる(S3:NO,S8,S9:YES)。この排湯処理は、既述したとおり、貯湯タンク20の湯水を浴槽31に供給する処理であり、この処理によって貯湯タンク20の蓄熱量が減少し、蓄熱余裕量が増加する。このため、熱回収用の熱交換器24で回収された熱を貯湯タンク20に蓄積する処理を継続し、発電部10がオーバヒートするといった虞を無くして、自立発電を継続することができる。前記した排湯処理が実行されている場合において、たとえば先栓30が開状態とされた場合には、リモコン4で設定されていた目標給湯温度の湯水が供給される。ただし、この場合、ユーザは、給湯運転スイッチ41aがオン状態であることをリモコン4の表示部40を見ることによって予め認識しており、湯水を使用することを当初から意図しているために、給湯運転スイッチ41aをオフ状態に設定している場合とは異なり、排湯処理時において目標給湯温度の湯水が先栓30に供給されたとしてもとくに問題はない。
【0031】
前記とは異なり、ステップS3において、給湯運転スイッチ41aがオフ状態である場合に、制御部22は、第1の判断事項として、先栓30が開状態にあるか否かの判断、具体的には、流量センサSbを利用した水流検出がなされているか否かの判断を行なう(S4)。なお、ステップS2,S3がともに“YES”の状態は、本発明でいう「特定状態」に相当する。前記判断において、流量センサSbを利用した水流検出があれば、制御部22は、第2の判断事項として、目標給湯温度が所定温度(たとえば、50℃)以上に設定されているか否かを判断する(S4:YES,S5)。これら第1および第2の判断事項がともに“YES”である場合、制御部22は、目標給湯温度を所定温度(たとえば、40℃)に下げてから、給湯運転スイッチ41aをオン状態とし、排湯処理を実行させる(S4:YES,S5:YES,S6〜S8,S9)。前記した目標給湯温度を40℃に下げる制御は、本発明でいう給湯温度低下制御の一例に相当する。本実施形態のシステムCでは、給湯優先モードが採用されており、ステップS8の排湯処理は、先栓30が閉められることにより流量センサSbによる水流検出がなくなった時点で開始される。ただし、これに限定されるものではない。
【0032】
前記した制御によれば、ユーザが給湯運転スイッチ41aをオフ状態として、非加熱の
湯水を利用している場合に、たとえば40℃の湯水が先栓30に供給される虞はあるものの、50℃以上の高温の湯水が先栓30に不当に供給される不具合は適切に回避される。したがって、ユーザに安心感を与えることができる。また、給湯運転スイッチ41aがオフ状態にされている場合であっても、給湯運転スイッチ41aが強制的にオン状態とされて排湯処理が適切に実行されるために、貯湯タンク20の蓄熱量を減少させ、発電部10の自立発電を継続させることが適切に実現できる。
【0033】
なお、前記とは異なり、流量センサSbを利用した水流検出がない場合や(S4:NO)、目標給湯温度が所定温度以上の高温ではない場合には(S5:NO)、目標給湯温度を低下させることなく、給湯運転スイッチ41aをオン状態として排湯処理が実行される(S4:NOまたはS5:NO,S7,S8)。この場合には、高温出湯が生じる虞はなく、または少なく、目標給湯温度を低下させる処理が省略される。
【0034】
図2のフローチャートでは示されていないが、排湯処理の終了後(S9:YES)においては、給湯運転スイッチ41aのオン・オフ状態、および目標給湯温度を元の状態に復帰させるようにしてもよい。より具体的には、ステップS7を経由して排湯処理を行なった場合には、排湯処理が終了した時点で給湯運転スイッチ41aを元のオフ状態に復帰させてもよい。また、目標給湯温度も同様であり、目標給湯温度がたとえば50℃以上に当初設定されていた場合には、排湯処理後に目標給湯温度をそのような温度に復帰させるようにしてもよい。もちろん、このような復帰動作を実行しない構成としてもよい。
【0035】
本実施形態では、前記の排湯処理を実行させる場合において、浴槽31への給湯温度t0、および浴槽31への給湯量Q0を、次のようにして決定することもできる。この処理は、制御部22に代えて、リモコン4に搭載された制御部(図示略)によって実行させることが可能であり、貯湯タンク20の蓄熱量が満杯になることを確実に防止する上で有用である。
【0036】
〔給湯温度t0の決定〕
給湯温度t0は、次の方法1,2のいずれかによって決定される。ただし、給湯温度t0は、たとえば48℃を上限温度にされるなど、所定温度を超える高温には設定されない。
〔方法1〕
排湯処理前に設定されている目標給湯温度t1と、入水温度t2(温度センサSdで検出される温度)とを比較し、t1≫t2の場合には、給湯温度t0=t1とする。
t1≫t2ではない場合には、t0=t1+α1とする。ここで、α1はゼロよりも大きい正の値である。
〔方法2〕
排湯処理以前に設定されている目標給湯温度t1と、予め定められた基準温度t3(たとえば、40℃)とを比較し、t1>t3の場合は、t0=t1とする。そうでない場合は、t0=t3とする。
【0037】
〔浴槽31への給湯量Q0の決定〕
次の式1,2のいずれかに基づいて決定される。
〔式1〕
給湯量Q0=(T1+T2)・Q1/(t0−t2)+α2
〔式2〕
給湯量Q0=〔(T1+T2)・Q1/(t0−t2)〕・α3
ここで、
T1:浴槽31への1回の給湯を完了した時点から次回の給湯を開始する迄のインターバルであって、予め設定することが可能であり、単位はたとえば「分」。
T2:浴槽31への1回の給湯に要する予想所要時間であり、単位はたとえば「分」である。この時間T2は、配管の太さなどによって変化するが、試験などによって予め求めておくことができる。
Q1:熱回収用の熱交換器24における単位時間(たとえば1分)あたりの排熱回収量であり、試験などによって予め求めておくことができる。
t0,t2:先に述べた給湯温度t0、および入水温度t2と同じ。
α2:余裕を付加するための値であり、ゼロよりも大きい正の値。
α3:余裕を付加するための係数であり、1よりも大きい正の値。
【0038】
前記した方法1,2のいずれかによって給湯温度t0を決定すれば、給湯温度t0が入水温度t2あるいは基準温度t3よりも一定以上高い温度に設定される。したがって、貯湯タンク20からの排湯処理時において、多くの熱を貯湯タンク20から排出することが可能となる。また、前記した式1,2のいずれかに基づいて給湯量Q0を決定すれば、貯湯タンク20からの排湯処理時における排熱量(放熱量)を、熱回収用の熱交換器24における熱回収量以上にし、貯湯タンク20の蓄熱量が満杯になることを的確に防止することができる。
【0039】
一般的に、風呂機能(湯張り、追い焚きなど)を備えた温水装置(コージェネレーションシステムを含む)においては、先栓30への目標給湯温度と、浴槽31への注湯の目標給湯温度(以下、目標注湯温度という)とをリモコン4の操作スイッチ41の操作により、個別に設定することが可能である。先栓30が開かれることによる給湯運転要求と、浴槽31への注湯運転要求(本発明における「排湯処理」を含む)とが同時に発生している場合、先栓30への目標給湯温度での給湯運転が優先的に実施され、浴槽31への目標注湯温度での注湯運転の開始は、先栓30が閉じられるなどして先栓30への給湯運転が終わるまで遅延される。
このため、給湯運転スイッチ41aがオフ状態で最低作動流量以上の非加熱の水が先栓30で使用されているときに、本発明の排湯処理の開始要求が発生すると、給湯運転スイッチ41aが強制的にオン状態となって先栓30への目標給湯温度での給湯運転が実施され、浴槽31への目標注湯温度での排湯処理の開始は、先栓30への給湯運転が終わるまで遅延される。
この場合、本発明の請求項1では、給湯温度を先栓30への目標給湯温度よりも低くする給湯温度低下を行なうこととなり、本発明の請求項4では、浴槽31への目標給湯温度に対して排湯処理の際の温度変更制御を行なうことになる。
【0040】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るコージェネレーションシステムの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0041】
上述した実施形態では、給湯運転スイッチ41aをオフからオン状態に切り替えて貯湯タンク20からの排湯処理を強制的に実行するための条件として、ステップS2の貯湯タンク20の蓄熱量が所定以上になったことや、ステップS3の給湯運転スイッチがオフ状態とされていることに加えて、ステップS4の先栓が開けられて先栓への水の供給がなされていること、およびステップS5の目標給湯温度が所定温度以上(たとえば、50℃)であることがさらなる条件とされているが、本発明はこれに限定されない。ステップS4,S5の2つの条件の双方またはいずれか一方を無くしてもよい。
【0042】
本発明では、排湯処理を実行すべく給湯運転スイッチをオフ状態からオン状態に切り替える際に、その後の給湯温度をそれ以前に設定されていた目標給湯温度よりも低くする処理が実行されればよいが、このように給湯温度を低くする処理は常に行なわれる必要はなく、一定の条件に合致するときにのみ実行されればよい。たとえば、目標給湯温度が38
℃に設定されているような場合には、この目標給湯温度をさらに低くする必要はない。貯湯タンクからの排湯処理に際しての放熱量を多くする観点から、目標給湯温度を38℃から40℃に引き上げるといった制御を適宜行なってもよい。このことは、先に述べた方法1,2によって給湯温度t0を決定する処理からも理解されよう。
【0043】
貯湯タンクからの排湯処理を行なう場合に、湯水を浴槽に送り込めば、この湯水を入浴に利用できるために好ましいが、やはりこれに限定されず、浴槽に代わる貯湯手段が存在する場合には、この貯湯手段に湯水を送り込むようにしてもよい。また、湯水の有効利用の観点からすると好ましいものではないが、たとえば浴室の排水口などに導いて排水させるようにしてもよい。この場合であっても、貯湯タンクの蓄熱量を減少させて発電部の駆動を継続させる上では有効である。
【0044】
本発明が意図する貯湯タンクからの排湯処理は、発電部10の自立発電を継続させるのに役立つが、本発明は、非自立発電時にも適用することができる。外部電源から電力供給を受けてコージェネレーションシステムが稼働している場合であっても、貯湯タンクの蓄熱量が満杯になることを理由として発電部10の駆動を停止させず、発電部10を駆動継続させることをユーザによって要望される場合が想定され得る。このような要望に応えるには、本発明が意図する排湯処理を自立発電時に限定すべきではないからである。
【0045】
本発明でいう発電部は、ガスエンジンを利用して発電機を回転させる構成に限らず、たとえば燃料電池を用いた構成とすることもできる。本発明でいう給湯運転スイッチのオン状態およびオフ状態の定義については、先に述べたとおりであり、給湯運転スイッチのオン状態とは、給湯運転許容モードが設定された状態と同義であり、給湯運転スイッチのオフ状態とは、給湯運転停止モードが設定された状態と同義である。
【符号の説明】
【0046】
C コージェネレーションシステム
10 発電部
20 貯湯タンク
22 制御部(制御手段)
24 熱回収用の熱交換器
30 先栓
31 浴槽
41a 給湯運転スイッチ
図1
図2