(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044144
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】プリフォーム射出成形金型の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/38 20060101AFI20161206BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20161206BHJP
B24C 1/06 20060101ALI20161206BHJP
B24C 11/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
B29C33/38
B29C45/26
B24C1/06
B24C11/00 C
B24C11/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-155548(P2012-155548)
(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-15022(P2014-15022A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北川 哲也
【審査官】
鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−6659(JP,A)
【文献】
特開平4−85007(JP,A)
【文献】
特開2010−195003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 45/00−45/84
B24C 1/00− 1/10,11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸ブロー成形に用いられるプリフォームを成形する射出成形金型の製造方法であって、
金型表面を、鏡面仕上げする第一工程、
金型表面の変質部を除去する第二工程、
金型表面を高密度化する第三工程、
金型表面を、算術平均粗さ(Ra)0.03ミクロンメーターから0.1ミクロンメーターの範囲で、かつ、最大高さ(Rz)0.5ミクロンメーターから1.5ミクロンメーターの範囲の粗さの微細な凹凸のある表面に作り上げる第四工程、
を含む事を特徴とするプリフォーム射出成形金型の製造方法。
【請求項2】
第三工程で高密度化するのに、直径20ミクロンメーターから60ミクロンメーターのガラス粒、鉄粒、水晶粒、大理石粒から一以上を組み合わせた粒体を使用し、ブラスト処理する事を特徴とする請求項1に記載のプリフォーム射出成形金型の製造方法。
【請求項3】
金型の表面材質が、ステンレス鋼、プリハードン鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼、超硬工具鋼から一以上の組み合わせからなる事を特徴とする請求項1又は2に記載のプリフォーム射出成形金型の製造方法。
【請求項4】
第二工程で金型表面の変質部を除去する研削性のある粒体として、酸化アルミニウム、又は、炭化珪素である事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプリフォーム射出成形金型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性樹脂を延伸ブロー成形する為のプリフォームを製造する射出成形金型の製造方法及びその成形金型、及びそれを用いて成形されたプリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、延伸ブロー成形するには、射出成形又は押出成形でプリフォームを製造していたが、押出では口元などの製造やピンチオフ部の処理が不安定で、製造ロスも大きく、安定した生産ができていなかった。その点、射出成形でプリフォームを製造する事で、口元の形状が安定して出来、底部分も単にゲートカットするだけで、プリフォームにする事が出来るので、設備費は大きくなるが、射出成形でのプリフォームの製造が一般的になってきている。
しかしながら、ブロー成形容器に対し、透明性や、形状が細長い、軽量で肉厚の均一的な容器をより求められて来るようになると、プリフォームも細長く、抜きテーパーの少ない形状が必要になって来た。
そこで、硬度の高い材質で、かつ、鏡面に磨き上げて、金型から抜き易くした金型を製造し、プリフォームの射出成形に使用されて来た。
しかし、そのようなプリフォームの射出成形では、金型表面に成形樹脂に含まれる低重合成分であるオリゴマーが、樹脂を溶融したり射出したりする時に、ガス化して分離し、キャビティに付着、堆積する現象が発生する。この堆積したオリゴマーがキャビティに付着した状態では、金型からプリフォームを抜く時、擦られ、表面に傷が発生し、不良の大きな原因になっている。傷が付いたプリフォームを使用して延伸ブロー成形すると、その傷が拡大し、より大きな傷に拡大し、内容物の異物検査が正常に出来ない問題が発生する。そして、これをそのまま放置すると、堆積したオリゴマーはより厚くなり、時として、金型から外すのにクラックが生じる場合もある。しかも、この堆積したオリゴマーは、特殊な洗浄剤と超音波洗浄機で毎日頻繁に洗浄する必要があるので、プリフォームを射出成形する事には、大きな障害になっていた。
【0003】
プリフォームの金型洗浄に対し、別の方法として、プリフォームの抜きテーパーを大きくする方法があるが、上下方向の肉厚も、また、周囲方向の肉厚も不均一になりやすい問題が発生する。この為、抜きテーパーは小さなまま、オリゴマーの付着しにくい金型表面を作る必要があった。
【0004】
以上に対し、文献1では、微小欠陥のある加工対象金属表面の変質部に球体を圧縮空気により吹きつけてより多数の凹みを持つ表面を形成することにより、組織を高密度化する表面組織高密度化処理工程と、前記表面組織高密度化処理した表面を研磨して平滑化して鏡面を形成する鏡面研磨工程とから構成した金属表面鏡面加工方法が提案されている。
しかし、この方法では、最終的に鏡面状態を作り出す方法で、処理後の表面の粗さがより小さくなるようになっているが、あまり表面の平滑性が高いと、滑り性も持たす為に必要な空気の流動が抑えられ、返って表面に抵抗が生じてしまい、傷、クラックなどの問題が発生する問題を抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−121423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鏡面状態にしたプリフォーム金型のキャビティ表面の平滑性を向上させ、オリゴマーがつき易い問題を解決する事で、オリゴマーに関するプリフォームへの傷が減少し、延伸ブロー成形の生産性を向上させる事が、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の発明は、延伸ブロー成形に用いられるプリフォームを成形する射出成形金型の製造方法であって
、
金型表面を、鏡面仕上げする第一工程、
金型表面の変質部を除去する第二工程、
金型表面を高密度化する第三工程、
金型表面を、算術平均粗さ(Ra)0.03ミクロンメーターから0.1ミクロンメーターの範囲で、かつ、最大高さ(Rz)0.5ミクロンメーターから1.5ミクロンメーターの範囲の粗さの微細な凹凸のある表面に作り上げる第四工程、
を含む事を特徴とするプリフォーム射出成形金型の製造方法である。
【0009】
また、請求項
2の発明は、第三工程で高密度化するのに、直径20ミクロンメーターから60ミクロンメーターのガラス粒、鉄粒、水晶粒、大理石粒から一以上を組み合わせた粒体を使用し、ブラスト処理する事を特徴とする請求項
1に記載のプリフォーム射出成形金型の製造方法である。
【0010】
また、請求項
3の発明は、金型の表面材質が、ステンレス鋼、プリハードン鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼、超硬工具鋼から一以上の組み合わせからなる事を特徴とする請求項1
又は2に記載のプリフォーム射出成形金型の製造方法である。
【0011】
また、請求項
4発明は、第二工程で金型表面の変質部を除去する研削性のある粒体として、酸化アルミニウム、又は、炭化珪素である事を特徴とする請求項1〜
3のいずれかに記載のプリフォーム射出成形金型の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプリフォーム射出成形金型の製造方法による成形金型にする事で、鏡面状態にしたプリフォーム金型のキャビティの平滑性が改善され、オリゴマーがつきにくくなり、形状の欠陥やオリゴマーに関するプリフォームへの傷が減少し、良品率が向上し、キャビティの洗浄サイクルを延ばす事が可能になるので、連続成形が可能になり、延伸ブロー成形の生産性が向上するなど、大きな効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】プリフォーム射出成形金型を使用した延伸ブロー成形の製品一例の外観図である。
【
図2】射出成形したプリフォーム(2−1)とそれを延伸ブロー成形した製品(2−2)の断面模式図である。
【
図3】プリフォームを射出成形した状態における射出成形金型内部の断面模式図である。
【
図4】プリフォームを射出成形し、その後、射出成形金型を開き始め、キャビティからプリフォームを取り出しつつある、途中の状態における断面模式図である。
【
図5】プリフォームのゲートをカットしている状態の断面模式図である。
【
図6】プリフォームの温度をガラス転移点以上に上げるよう、加熱している状態の断面模式図である。
【
図7】プリフォームをブロー金型に入れ、縦延伸をかけている状態の断面模式図である。
【
図8】縦延伸されたプリフォームに高圧空気を吹き込み、延伸ブロー成形を行っている途中段階の断面模式図である。
【
図9】プリフォームに高圧空気を吹き込み、延伸ブロー成形を行って、容器形状に延伸され、冷却段階の断面模式図である。
【
図10】延伸ブロー成形された製品の断面模式図である。
【
図11】
図4において、キャビティ表面に、オリゴマーが析出して異物化し、傷が発生した状態を示したプリフォームの外観図である。
【
図12】図
11の傷が付いたプリフォームを延伸ブロー成形した容器の外観図である。
【
図13】キャビティ表面に粒体を吹付け、研磨したキャビティ表面の拡大断面工程図である。
【
図14】キャビティ表面
を含む金型表面を研磨し、その後粒体を吹付け、変質部の除去、高密度化を行った後、さらに研磨したキャビティ表面を一定の粗さに荒らした本発明の金型表面加工工程を示す拡大断面工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の延伸ブロー成形に使用されるプリフォーム射出成形において、金型表面処理をした金型の製造方法について、図を用いて説明する。
本発明は、
図1に示したような延伸ブロー成形容器の製造に用いられるプリフォームの射出金型に関するものである。口部2にはキャップと嵌合するネジ部3とキャッピングする時や内容物を充填する時に容器を支える鍔4があり、この部分は射出成形で一体で成形されている。胴部1は、口部2と首部5で繋がっており、反対側は底部6になっている。
口部2のネジ部3は、キャップとして打栓式のキャップを使用する場合は、ネジではなく、リング状になっている。
図2の(2−1)で示すプリフォームとは、最終的な容器形状にする前の、中間成形形状の部材である。口部近傍は最終的な形状や寸法にしているが、容器の胴部1になるプリフォーム7の胴部は、肉厚になっている。
この容器を成形する工程は、
図2の(2−1)で示すような、プリフォーム7を射出成形し、これを使用される樹脂のガラス転移点以上、融点未満の温度に保って、縦に延伸した後、横延伸と縦延伸を伴う延伸ブロー成形を行い、(2−2)に示すような本容器を製造する。通常、プリフォームが膨らみ易いように、融点より20〜30℃低い温度で延伸ブロー成形する。
【0019】
さらに詳しくは、まず、
図3で示すようなプリフォーム射出成形金型で、プリフォーム7を成形する。コア8とキャビティ9によって設けられた隙間に対し、溶融樹脂がゲート71から射出され、プリフォーム7を成形する。通常、ホットランナーでゲート71まで
溶融樹脂は供給され、キャビティ数は8個取りなどのように、多数個取りしている。
プリフォーム専用射出成形の場合のコア8は、単純なコア形状になっている。ゲート部分は射出成形性を重視し、通常わずかに冷却固化するので、ホットランナー形式の射出成形金型であっても、ゲート自体は冷却され、仕上げ加工するように設計されている。
射出成形後、引き続き、次の延伸ブロー成形に連続して成形される場合、コア8には、先端が突き出す、突き出しコア81が付属された金型になる。その突き出しコア81の内部には、980キロパスカル(kPa)程の高圧ブロー成形圧を送り込む為の高圧ブロー管82が通っている。
図4で示すように、射出成形用のキャビティ9は、単純にコアの反対方向に開き、プリフォームを抜く。プリフォームは長く、厚肉の試験管形状をしており、次の工程の為に、均一で、かつ、表面の損傷が無い事が求められるので、射出成形用のキャビティ9は、割型にはしない。
【0020】
図5で、回転刃72、又はホットニッパによって、プリフォームのゲート71を切断する。
プリフォーム7は、一旦、射出成形金型から抜く為に低温に冷却して、射出成形金型から離型するが、次工程の
図6では、延伸する為、プリフォーム7を構成する樹脂のガラス転移点以上で、融点未満になるよう、加熱する。通常は、肉厚であるプリフォーム7の内部と外部の温度差が出にくいよう、遠赤外線の加熱ヒーター12で加熱する。
図7で、ガラス転移点以上で、融点未満の温度に加熱されたプリフォーム7に対し、口元部分を押さえたまま、突き出しコア81を伸ばし、縦延伸を掛ける。この時、プリフォーム7を構成する樹脂は、分子が自由には動きにくいが、ガラス転移点以上の温度の為、結晶化している分子間の力は強固ではないので、高分子である樹脂の分子は縦方向に無理やり伸ばされ、同じ向きに揃わされる。この為、傷や異物の存在など、何か欠陥があると、それが拡大される問題がある。従って、プリフォームの表面、内部共、均一で欠陥がないものである必要がある。
【0021】
図8では、縦延伸されたプリフォーム7がブロー金型10の内部にあって、高圧の窒素ガス、又は高圧空気などの高圧気体822を吹き込みながら、縦と共に、横方向にも延伸されながら、容器の最終形状にまでブローされ、
図9のように、樹脂がブロー金型のキャビティ10の内面に接触し、冷却固化する。
プリフォーム7の温度がガラス転移点以上とはいえ、融点以下なので、粘性は高く、この高圧の窒素ガス、又は高圧空気などの高圧気体822の圧力は、9.8×10
5Pa程の高圧をかけないと膨らまない。
図9の矢印で示すように、ブロー金型のキャビティ10部分と、ネジ部分の金型31は分割され、
図10の製品が取り出される。
【0022】
図11は、プリフォーム射出成形金型の内面に欠陥部92があって、成形樹脂が溶融・成形された時に、成形樹脂の内部にわずか含まれる低分子量のオリゴマーがその欠陥部92に析出し、一定以上の大きさの析出物91を形成すると、それが、プリフォーム7のかすり傷93になり、それを使用して、延伸ブロー成形すると、
図12のように、さらに大きな拡大傷931になる状況を示している。
【0023】
ところで、プリフォーム射出成形金型のキャビティ9は奥に深く、細い孔で、均一な肉厚を要求されるが、放電加工などで加工され、磨く事が非常に難しい。
従来は、単に磨くだけか、鏡面性の高い放電研磨を掛けるか、のいずれであった。しかし近年、文献1にあるように、
図13で示すように、キャビティ形状を出した後の金型内部の微細な表面は、(13−1)のように加工による損傷や金型材料中の欠陥として、クラック、バリ、返りの他、球状の空洞、表面まで孔の開いたビットなどの欠陥が発生している。それを(13−2)のようにショートピーリングして、欠陥を塞ぎ、その上で(13−3)のように磨き、さらに(13−4)で示すようにラップ処理で平滑性を出していた。しかし、ショートピーリングした場合、微小クラックの欠陥を閉鎖したり、バリの除去、返りの除去、などは行われるが、それによって全体的な面の平面性までは大幅には改善できない。金型から成形品が抜ける際、平滑性が高いだけで、空気のような流動性を補助するものが製品と金型の間にないと、滑ったように、抜けていかない。そして、そこに析出物91が形成され、傷やクラックなどの原因になっていた。
【0024】
本発明の方法は、
図14に示したように、まず、平面性をアップする為、キャビティ9の内面を
含む金型表面を鏡面研磨(14−2)する。研磨は、形状が単純であるので、ポ
リアクリルアミドとダイヤモンド砥粒を使用した自動ラップ盤などの研磨でも可能である。また、粉末放電加工や、カーボンや銅をマスターに使用した鏡面に加工できる放電加工条件を選定するなどの方法でもかまわない。
この最初の研磨の段階で、主要な凹凸を小さくし、欠陥の大きさを小さくする。粗さとして、算術平均粗さRaで0.1〜0.5ミクロンメーター、最大高さRzで1〜5ミクロンメーターにまで研磨する。このような粗さにすると、光反射で磨き面の状態を目視でも確認しやすくなり、欠陥部分が分りやすくなるし,可視光の波長の関係から、鏡面加工の境界値として利用できる。
使用される金型の材質は、ステンレス鋼、プリハードン鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼、超硬工具鋼を使用する。このような硬度の高い鋼を使用しないと、研磨によって充分な鏡面が得られないし、鏡面が出ないと磨きでの問題部分を判断できないし、磨きの調整ができなくなってしまう。その為、形状を切削し、研磨して切削目を取り除いた後、焼入れすべき金型材料の場合は焼入れしたりして、充分硬度を高くした状態にしてから、鏡面研磨を行う。
【0025】
次に、(14−3)の工程では、金型表面の変質部の除去を、研削性の粒体を使用してショートピーニングを行う。ここで、第二工程として除去される金型表面の変質部は、金型加工の切削、研削、放電などで発生した、金型表面における、微小なバリや突起部分などの欠陥部分、放電加工などで発生する白層や偏析物を意味する。そして、この金型表面の変質部除去には、研削性のある粒体13である、酸化アルミニウムや炭化珪素の粒体を高圧空気で、金型表面に叩き付けて、削り取るものである。
この粒体13は、場合によってはブラスト材を空加工によって不完全な角を落とした非球面体にしても可能であるし、大きさ、当てる速度や圧縮空気の圧力は、金型の硬度などにより調整する。場合によっては、圧縮空気ではなく、窒素ガスや水などの液体にしても良い。
【0026】
さらに(14−4)の工程で、第三工程の金型表面の高密度化を行う。金型表面には、金型材料の製造時に溶融した鋼のガス化成分や空気の巻き込み等により発生した巣や、切削等の加工で発生した微小なクラックなどがあり、球状の空洞、表面まで孔の開いたビットなどとして欠陥部分が生じている。これら金型表面に、硬度の高い球体を叩き付け、その力で欠陥部分を塞ぐ事で、高密度化する。実際には、直径20ミクロンメーターから60ミクロンメーターのガラス粒、鉄粒、水晶粒、大理石粒から一以上を組み合わせた粒体11を使用し、20×10
4パスカル(Pa)〜60×10
4パスカル(Pa)の圧力を持つ圧縮空気と共に金型表面に上記粒体を高速で当てて、ブラスト処理する。この粒体を当てる速度や圧縮空気の圧力は、金型の硬度などにより調整する。場合によっては、圧縮空気ではなく、窒素ガスや水などの液体にしても良い。
【0027】
そして、さらにそれを(14−
5)の工程で、一定の表面粗さを付ける。この粗さを付けるのは、粒径が2〜6ミクロンメーターのダイヤモンドペーストを用い、均一に研磨し、算術平均粗さRaで0.03〜0.1ミクロンメーター、最大高さRzで0.5〜1.5ミクロンメーターとする。この作業により、小さな突起形状の部分は削り取られ、大きな突起部分の先端は角を丸く仕上げられる。
このような粗さの表面にすると、接する樹脂は平滑で鏡面性の高い容器になるが、微細な凹凸があるので、樹脂と金型の間に空気層が存在し、それが離型性を向上させ、傷の付かない、スムースな製品の取り出しを確保させる。
【実施例1】
【0028】
プリフォーム射出成形金型と延伸ブロー金型は、
図3、
図9で示したような、飲料水用の500ml用容器の形状で作成した。プリフォーム射出成形金型のキャビティは、プリハードン鋼の大同アミスターのNAK80を使用し、荒削り後、放電加工で形状を出し、HRC40の硬度にして、500番、1000番、2000番の布やすりで徐々に磨き番手を上げて研磨後、ダイヤモンド研磨剤2000番、5000番で鏡面に磨き上げた。これに炭化珪素の粒子で40×10
4Paの圧縮空気でピーリングを実施し、バリ等の変質部を除去した。さらに、金型表面を高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2)で硬さがHRC65で直径30ミクロンメーターの剛球を使用し、40×10
4Paの圧縮空気でピーリングを実施した。その後、ダイヤモンド研磨剤5000番を綿に均一に塗布し、軽くキャビティ表面を拭くように約20秒間だけ磨いた。キャビティ毎に研磨材を新しいものに入れ替え、キャビティ間の差が出ないようした。表面粗さは算術平均粗さRaで0.07ミクロンメーター、最大高さRzで0.75ミクロンメーターであった。
【0029】
<確認試験>成形樹脂はポリエチレンテレフタレート樹脂を除湿乾燥し、日精ASB機械株式会社製のPB85/110−16/4Mを使用して、プリフォームの射出成形から延伸ブロー成形まで連続して出来るワンステップ成形を実施した。プリフォームは4キャビティあり、それぞれ2キャビティずつ、本発明の処理をした金型と、文献1の方式で作った金型を用意した。
これを昼夜連続して成形したところ、文献1の方式(
図13参照)によるキャビティの場合、一日で2回停止して、洗浄した予備金型との交換が必要であったが、本発明の方式によるキャビティの場合、2日間連続して成形しても、傷やクラックなどの発生もなく、成形が出来た。
【0030】
本発明のプリフォーム射出成形金型は、以上のようなもので、延伸ブロー成形のプリフォームを射出成形する場合、本発明の金型表面の処理にする事によって、オリゴマーなどが外部に抜けやすいので、蓄積が少なく、それらの蓄積による傷やクラック等が発生しにくいので、成形の停止回数が減り、量産性が高くなるメリットが生まれると共に、金型の劣化も少ない。従って、金型の予備を多数用意しなくてもかまわない、安定して生産できるので、ロスが少ない。品質が安定しているなど、本発明のメリットは大きい。
【符号の説明】
【0031】
1・・・・・・・・・容器胴部
2・・・・・・・・・口部
3・・・・・・・・・ネジ部
31・・・・・・・・ネジ部キャビティ(割型)
4・・・・・・・・・鍔
5・・・・・・・・・首部
6・・・・・・・・・底部
7・・・・・・・・・プリフォーム
71・・・・・・・・ゲート
72・・・・・・・・回転刃
8・・・・・・・・・コア
81・・・・・・・・突き出しコア
82・・・・・・・・高圧ブロー管
821・・・・・・・吹き出し孔
822・・・・・・・高圧気体
9・・・・・・・・・キャビティ(射出成形用)
91・・・・・・・・析出物
910・・・・・・・キャビティ表面(切削面)
911・・・・・・・キャビティ表面(変質部除去のショートピーニング面)
912・・・・・・・キャビティ表面(高密度化のショートピーニング面)
913・・・・・・・キャビティ表面(研磨面)
914・・・・・・・キャビティ表面(ラップ処理面)
92・・・・・・・・欠陥部
920・・・・・・・キャビティ表面(研磨面)
921・・・・・・・キャビティ表面(変質部除去のショートピーニング面)
922・・・・・・・キャビティ表面(高密度化のショートピーニング面
)
924・・・・・・・キャビティ表面(表面粗し面)
93・・・・・・・・かすり傷
931・・・・・・・拡大傷(延伸による拡大傷)
10・・・・・・・・キャビティ(ブロー成形用)
11・・・・・・・・粒体(高密度化する粒体)
12・・・・・・・・加熱ヒーター
13・・・・・・・・粒体(切削性のある粒体)