特許第6044162号(P6044162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044162
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   B41J2/01 303
   B41J2/01 301
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-172141(P2012-172141)
(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-30947(P2014-30947A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信隆
【審査官】 道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−126111(JP,A)
【文献】 特開2004−130622(JP,A)
【文献】 特開2005−342979(JP,A)
【文献】 特開2003−011340(JP,A)
【文献】 特開2007−283610(JP,A)
【文献】 特開2006−269658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
該液体噴射ヘッドを保持して主走査方向に沿って往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向と交差する奥行き方向において前記キャリッジの移動領域の奥側となる位置に配置され、前記主走査方向に延設されて前記キャリッジの移動を案内するガイドレールを形成する金属板からなる本体フレームと、
該本体フレームに保持される電力回路部と、
該電力回路部に基端側が接続されるとともに先端側が前記キャリッジに接続され、前記キャリッジの前記主走査方向に沿う移動に追従して撓み変位する可撓性ケーブルと、
前記本体フレームとの間に空間を形成するように前記移動領域と前記本体フレームとの間に配置されるとともに、前記本体フレームと前記可撓性ケーブルとの間に介在するように配置される電気伝導体と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記電気伝導体は前記本体フレームに接続されていることを特徴とする請求項に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記電気伝導体は、前記主走査方向において前記電力回路部から離間した位置において前記本体フレームに接続されていることを特徴とする請求項に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記電気伝導体は前記主走査方向に延設される板金からなることを特徴とする請求項1から請求項のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
該液体噴射ヘッドを保持して主走査方向に沿って往復移動するキャリッジと、
前記キャリッジの移動領域と並行するように配置され、前記主走査方向に延設されて前記キャリッジの移動を案内するガイドレールを形成する金属板からなる本体フレームと、
前記キャリッジの移動領域とは重ならない位置に配置され、前記本体フレームに保持される電力回路部と、
該電力回路部に一方の端部側が接続されるとともに他方の端部側が前記キャリッジに接続され、前記キャリッジの前記主走査方向に沿う移動に追従して撓み変位する可撓性ケーブルと、
前記本体フレームとの間に空間を形成するように前記移動領域と前記本体フレームとの間に配置されるとともに、前記本体フレームと前記可撓性ケーブルとの間に介在するように配置される電気伝導体と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを保持して往復移動するキャリッジとを備える液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを保持して主走査方向に沿って往復移動するキャリッジとを備える液体噴射装置として、液体の一例であるインクを用紙などのターゲットに対して噴射することで記録を行うインクジェット式プリンターがある。
【0003】
こうしたプリンターにおいては、液体噴射ヘッドから規定サイズのインク滴を噴射するのに伴って、そのインク滴よりも微小なインク滴からなるミストが副次的に生じてしまう。また、こうしたプリンターには、キャリッジの移動領域に沿って張設されたエンコーダースケールと、このエンコーダースケールと対向するようにキャリッジに搭載されたエンコーダーセンサーとからなるリニアエンコーダーを備えたものがある。
【0004】
このリニアエンコーダーは、キャリッジの主走査方向における位置や移動速度を把握するために設けられる。そのため、インクの噴射に伴って生じたミストがリニアエンコーダーに付着すると、キャリッジの位置などが正確に把握できなくなるなどの問題が生じる虞がある。
【0005】
そのため、リニアエンコーダーの周囲からミストを排除するべく、装置内部に空気を導入するための電動ファンと、導入された空気をリニアエンコーダーに向けて送風するためのダクトとを備えたプリンターが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−191604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、主走査方向に往復移動するキャリッジには、電力や制御信号を送るための信号線が上下方向に並ぶように集束された平板状の可撓性ケーブルが接続されるのが一般的である。また、こうした可撓性ケーブルは、キャリッジの往復移動に伴って撓み変位する。そのため、例えばキャリッジの往路移動に伴って可撓性ケーブルがその背面側にあるフレーム部材などに接触した場合には、キャリッジの復路移動に伴って可撓性ケーブルはフレーム部材から引き剥がされるように離間することになる。
【0008】
ここで、可撓性ケーブルを被覆するカバー及びフレーム部材が樹脂で形成されている場合などには、可撓性ケーブルがフレーム部材から離間するときに、剥離帯電が生じることがある。そして、剥離帯電によって発生した電荷にミストが引き寄せられることで、リニアエンコーダーなどの周辺部材にミストが付着してしまう。
【0009】
このように電荷に引き寄せられるミストを送風によって排除するためには、送風時の風量や風速を増大させる必要がある。しかし、液体噴射ヘッドの周囲にそのような強い気流を発生させると、噴射したインク滴のターゲットに対する着弾位置に影響を及ぼしてしまう虞があるため、好ましくない。
【0010】
そこで、可撓性ケーブルが接触するフレーム部材を金属板によって形成することで、剥離帯電の発生を抑制することも考えられる。しかし、こうしたフレーム部材には電力回路部が固定されることが多い。そして、電力回路部への通電に伴って発生した熱によってフレーム部材の温度が上昇すると、フレーム部材に対する接触を避ける必要があるために、フレーム部材周辺におけるメンテナンス作業が困難になってしまうという課題が発生する。
【0011】
なお、こうした課題は、インクジェット式プリンターに限らず、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを保持して往復移動するキャリッジとを備える液体噴射装置においては、概ね共通したものとなっている。
【0012】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体の噴射に伴って生じるミストの周辺部材への付着を抑制しつつ、メンテナンス作業を容易に行うことができる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを保持して主走査方向に沿って往復移動するキャリッジと、前記主走査方向と交差する奥行き方向において前記キャリッジの移動領域の奥側となる位置に配置され、前記主走査方向に延設されて前記キャリッジの移動を案内するガイドレールを形成する金属板からなる本体フレームと、該本体フレームに保持される電力回路部と、該電力回路部に基端側が接続されるとともに先端側が前記キャリッジに接続され、前記キャリッジの前記主走査方向に沿う移動に追従して撓み変位する可撓性ケーブルと、前記本体フレームとの間に空間を形成するように前記移動領域と前記本体フレームとの間に配置されるとともに、前記本体フレームと前記可撓性ケーブルとの間に介在するように配置される電気伝導体と、を備える。
上記課題を解決する液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを保持して主走査方向に沿って往復移動するキャリッジと、前記キャリッジの移動領域と並行するように配置され、前記主走査方向に延設されて前記キャリッジの移動を案内するガイドレールを形成する金属板からなる本体フレームと、前記キャリッジの移動領域とは重ならない位置に配置され、前記本体フレームに保持される電力回路部と、該電力回路部に一方の端部側が接続されるとともに他方の端部側が前記キャリッジに接続され、前記キャリッジの前記主走査方向に沿う移動に追従して撓み変位する可撓性ケーブルと、前記本体フレームとの間に空間を形成するように前記移動領域と前記本体フレームとの間に配置されるとともに、前記本体フレームと前記可撓性ケーブルとの間に介在するように配置される電気伝導体と、を備える。
上記課題を解決する液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを保持して主走査方向に沿って往復移動するキャリッジと、前記主走査方向と交差する奥行き方向において前記キャリッジの移動領域の奥側となる位置に配置され、前記主走査方向に延設される金属板からなる本体フレームと、該本体フレームに保持される電力回路部と、該電力回路部に基端側が接続されるとともに先端側が前記キャリッジに接続され、前記キャリッジの前記主走査方向に沿う移動に追従して撓み変位する可撓性ケーブルと、前記本体フレームと前記可撓性ケーブルとの間に介在するように配置される電気伝導体と、前記本体フレームと前記電気伝導体との間に配置される断熱層と、を備える。
【0014】
この構成によれば、本体フレームは金属板によって形成されるので、電力回路部で発生した熱を効率よく放熱することができる。また、本体フレームと電気伝導体との間には断熱層が配置されるので、電力回路部から電気伝導体への伝熱を抑制することができる。そして、このように伝熱が抑制された電気伝導体の奥側に本体フレームを配置することで、メンテナンス作業を行う場合などに、本体フレームに対する意図しない接触が発生しにくくなる。また、本体フレームと可撓性ケーブルとの間には電気伝導体が配置されるので、可撓性ケーブルはキャリッジの往復移動に伴って撓み変位するときに電気伝導体に接触する。そのため、可撓性ケーブルが樹脂によって形成されたフレーム部材等と接触及び剥離する場合と比較して、ミストを引き寄せる要因となる剥離帯電の発生が抑制される。したがって、液体の噴射に伴って生じるミストの周辺部材への付着を抑制しつつ、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0015】
上記液体噴射装置において、前記断熱層は、前記電気伝導体を前記本体フレームから前記奥行き方向に離間して配置することにより形成される空気層であることが好ましい。
この構成によれば、断熱層は電気伝導体を本体フレームから奥行き方向に離間して配置することにより形成される空気層であるので、簡易な構成で断熱層を構成することができる。
【0016】
上記液体噴射装置において、前記電気伝導体は前記本体フレームに接続されていることが好ましい。
この構成によれば、金属板からなる本体フレームを介して電気伝導体が接地されるので、電気伝導体の帯電を抑制することができる。
【0017】
上記液体噴射装置において、前記電気伝導体は、前記主走査方向において前記電力回路部から離間した位置において前記本体フレームに接続されていることが好ましい。
この構成によれば、電気伝導体は主走査方向において電力回路部から離間した位置において本体フレームに接続されているので、電力回路部から電気伝導体への伝熱を抑制することができる。
【0018】
上記液体噴射装置において、前記電気伝導体は前記主走査方向に延設される板金からなることが好ましい。
この構成によれば、電力回路部で発生した熱によって加熱される本体フレームなどの部材を電気伝導体で覆蓋することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態の液体噴射装置の斜視図。
図2】給紙トレイ及び蓋部が開状態とされた液体噴射装置の斜視図。
図3】本体ケース内の概略構成を示す断面図。
図4】導電板の斜視図。
図5】本体フレームに接続される導電板の斜視図。
図6】キャリッジに追従して撓み変位する可撓性ケーブルを示す上面図。
図7】キャリッジが往路移動した場合の斜視図。
図8】キャリッジが復路移動した場合の斜視図。
図9】本体フレームと導電板との間に形成される空気層を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の液体噴射装置をインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」という)に具体化した一実施形態について、図を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態のプリンター11は、略直方体形状の本体ケース12を備えている。
【0021】
本体ケース12の一側面には、プリンター11の各種操作を行うための操作部(例えば操作ボタン)13が配置されている。また、本体ケース12の一側面において操作部13の下方には、排紙口14が開口している。さらに、本体ケース12において排紙口14の下方には、伸縮式の排紙トレイ15が収容されている。
【0022】
なお、本実施形態においては、反重力方向を上方向、重力方向を下方向として、上方向及び下方向に沿う方向を上下方向Zとして図示する。また、本体ケース12の長手方向を主走査方向Xとして図示する。さらに、本体ケース12の排紙口14が開口した一側面をプリンター11の前面とする一方、その反対側の側面を後面として、この前後方向を奥行き方向Yとして図示する。そして、主走査方向X、奥行き方向Y、上下方向Zは互いに交差(本実施形態においては直交)する。
【0023】
本体ケース12の上側後部には、回動式の給紙トレイ16と、本体ケース12内のメンテナンス等を行う場合に開閉される蓋部17とが開閉可能に取り付けられている。給紙トレイ16及び蓋部17は、プリンター11の不使用時などには図1に示す閉状態とされる。そして、給紙トレイ16及び蓋部17は、前端側が上方に向けて回動することで開状態とされる。
【0024】
図2に示すように、給紙トレイ16が開状態となることで、本体ケース12の上側後部に形成された給紙口12aが露出する。また、蓋部17が開状態となることで、本体ケース12の上壁18及びこの上壁18に形成された開口部19が露出する。
【0025】
図3に示すように、本体ケース12内には、ターゲットの一例である用紙Pを搬送するための搬送ローラー対20,21が収容されている。また、用紙Pの搬送方向となる奥行き方向Yにおいて搬送ローラー対20と搬送ローラー対21との間には、用紙Pを支持するための支持部材22が配置されている。
【0026】
本体ケース12内には、用紙Pの搬送経路の上方となる位置に、主走査方向Xに延設される本体フレーム23が設けられている。本体フレーム23は金属板によって形成されている。本体フレーム23は、上下の端部が屈曲されることで、上下方向Zに並ぶ一対のガイドレール24,25を形成している。
【0027】
本体フレーム23のガイドレール24,25には、キャリッジ26が主走査方向Xに沿って往復移動可能な状態で保持されている。すなわち、本体フレーム23は、主走査方向Xと交差する奥行き方向Yにおいてキャリッジ26の移動領域の奥側となる位置に配置されている。
【0028】
キャリッジ26の下面側には、液体の一例としてのインクを噴射可能な液体噴射ヘッド27が保持されている。また、キャリッジ26の上部には、インクを収容した複数のインクカートリッジ28が着脱可能に装着される。そして、搬送ローラー対20,21によって支持部材22上に搬送された用紙Pに対して、インクカートリッジ28から供給されたインクが液体噴射ヘッド27から噴射されることで、記録(印刷)が行われる。
【0029】
本体フレーム23の前面側には、主走査方向Xに並ぶように対をなすプーリー29(図3では一方のプーリー29のみ図示)が配置されている。この対をなすプーリー29には、無端状のタイミングベルト30が巻き掛けられている。また、図3で図示していない他方のプーリー29には、図示しないキャリッジモーターの駆動軸が取り付けられている。
【0030】
キャリッジ26は、その後部側がタイミングベルト30に固定されている。そして、キャリッジモーターが正逆方向に駆動されて、タイミングベルト30が正転及び逆転することにより、キャリッジ26は主走査方向Xに往復移動する。
【0031】
また、プーリー29及びタイミングベルト30の上方には、エンコーダースケール31がキャリッジ26の移動経路に沿うように張設されている。また、キャリッジ26には、エンコーダースケール31と対向するように配置されたエンコーダーセンサー32が搭載されている。なお、エンコーダースケール31とエンコーダーセンサー32とは、キャリッジ26の主走査方向Xにおける位置や移動速度を検出するためのリニアエンコーダー33を構成する。
【0032】
エンコーダースケール31は、主走査方向Xに沿って一定ピッチで開口する多数のスリットを有している。一方、エンコーダーセンサー32は、キャリッジ26が主走査方向Xに沿って移動する場合に、エンコーダースケール31に対して射光するとともにスリットを通過する光を検出する。そして、リニアエンコーダー33は、キャリッジ26の移動距離に比例するパルス数で、かつキャリッジ26の移動速度に反比例する周期をもつパルス信号を出力する。
【0033】
本体フレーム23の前面側には、電気伝導体の一例としての導電板35が取り付けられている。なお、導電板35は、主走査方向Xに延設される板金によって形成されている。
図4に示すように、導電板35には、主走査方向Xに並ぶように複数(本実施形態では3つ)のねじ止め部36が設けられている。ねじ止め部36は、切り込み部分を後方に向けて折り曲げるような態様で形成されている。また、導電板35には、主走査方向Xにおいて中央に位置するねじ止め部36と、それよりも右方に位置するねじ止め部36との間に、導電板35の上端側を切り欠いた切欠部37が形成されている。
【0034】
図5に示すように、導電板35は、ねじ止め部36が本体フレーム23にねじ止めされることで、本体フレーム23に接続されている。また、本体フレーム23の主走査方向Xにおける中央付近には、導電板35の切欠部37と対応する位置に挿通孔38が形成されている。さらに、本体フレーム23の後面側には、挿通孔38よりも主走査方向Xにおける左方側となる位置に、電力回路部39が保持されている。
【0035】
図6に示すように、電力回路部39は、電力回路基板40と、電力回路基板40を本体フレーム23に固定するための接続部材41とを有している。また、キャリッジ26と本体フレーム23との間には、電力回路部39に基端側が接続されるとともにキャリッジ26に先端側が接続される平板状の可撓性ケーブル42が配線されている。
【0036】
本体フレーム23の挿通孔38には、本体フレーム23の後面側から前面側へ引き回される可撓性ケーブル42を保持するための保持部材43が取り付けられている。そして、可撓性ケーブル42は、本体フレーム23の前面側において保持部材43から左方向に引き回され、さらに引き回し方向が左方向から右方向に反転された先端側が、キャリッジ26の左側面側に後方から接続されている。
【0037】
可撓性ケーブル42は、電力回路基板40からキャリッジ26側に向けて電力や制御信号を送るための信号線が上下方向Zに並ぶように集束され、樹脂からなるカバーで覆われたものである。そして、可撓性ケーブル42は、キャリッジ26と本体フレーム23との間の配線空間において、キャリッジ26の主走査方向Xに沿う往復移動に追従して撓み変位する。
【0038】
そのため、キャリッジ26が前側から見た場合に右側から左側に向かう場合を往路移動、同じく左側から右側に向かう場合を復路移動とすると、往路移動終了時には、図6に二点鎖線で示すとともに及び図7に実線で示すように、可撓性ケーブル42が保持部材43よりも左側の領域において引き回された状態となる。一方、キャリッジ26の復路移動終了時には、図6及び図8に実線で示すように、可撓性ケーブル42が保持部材43よりも右側の領域まで引き延ばされた状態となる。なお、図7図8においては、本体ケース12内の様子を明示するために、蓋部17の図示を省略している。
【0039】
次に、以上のように構成されたプリンター11の作用について説明する。
図7及び図8に示すように、導電板35は本体フレーム23と可撓性ケーブル42との間に介在するように配置される。そのため、キャリッジ26の主走査方向Xに沿う移動に追従して撓み変位する可撓性ケーブル42は、図6に示すように導電板35に接触する。特に、キャリッジ26が保持部材43よりも左側の領域において移動する場合には、可撓性ケーブル42が導電板35に接触する面積が大きくなる。
【0040】
ここで、導電板35がなく、撓み変位する可撓性ケーブル42が樹脂からなる樹脂部材に接触した場合には、可撓性ケーブル42が樹脂部材から離間する際に、剥離帯電が生じる虞がある。その点、本実施形態では、可撓性ケーブル42が接触するのが導電板35であるため、剥離帯電の発生が抑制される。
【0041】
また、導電板35及び本体フレーム23は金属板からなるので、導電板35を本体フレーム23に対してねじ止めにて接続することで、導電板35が本体フレーム23を介して接地される。
【0042】
なお、通電に伴って電力回路部39の電力回路基板40が発熱するが、この電力回路基板40を保持する本体フレーム23は金属板からなるので、発生した熱は表面積の大きい本体フレーム23によって効率よく放熱される。
【0043】
一方、導電板35のねじ止め部36を除く本体部分は、図9に示すように本体フレーム23から奥行き方向Yに離間して配置されることで、本体フレーム23との間に断熱層の一例としての空気層Laを形成している。そのため、本体フレーム23から導電板35への伝熱は抑制される。
【0044】
そして、蓋部17を開状態として本体ケース12の上壁18に形成された開口部19を露出させると、図7及び図8に示すように本体フレーム23の前側に導電板35が配置された状態となっている。そのため、インクカートリッジ28の着脱や紙詰まりの解消などのメンテナンス作業を行う場合に、加熱された本体フレーム23への接触が抑制される。
【0045】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本体フレーム23は金属板によって形成されるので、電力回路部39で発生した熱を効率よく放熱することができる。また、本体フレーム23と導電板35との間には断熱層としての空気層Laが配置されるので、電力回路部39から導電板35への伝熱を抑制することができる。そして、このように伝熱が抑制された導電板35の奥側に本体フレーム23を配置することで、メンテナンス作業を行う場合などに、本体フレーム23に対する意図しない接触が発生しにくくなる。また、本体フレーム23と可撓性ケーブル42との間には導電板35が配置されるので、可撓性ケーブル42はキャリッジ26の往復移動に伴って撓み変位するときに導電板35に接触する。そのため、可撓性ケーブル42が樹脂によって形成されたフレーム部材等と接触及び剥離する場合と比較して、ミストを引き寄せる要因となる剥離帯電の発生が抑制される。したがって、液体の噴射に伴って生じるミストの周辺部材への付着を抑制しつつ、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0046】
(2)断熱層は導電板35を本体フレーム23から奥行き方向Yに離間して配置することにより形成される空気層Laであるので、簡易な構成で断熱層を構成することができる。
【0047】
(3)金属板からなる本体フレーム23を介して導電板35が接地されるので、導電板35の帯電を抑制することができる。
(4)電力回路部39で発生した熱によって加熱される本体フレーム23などの部材を導電板35で覆蓋することができる。
【0048】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ねじ止め部36は、導電板35が本体フレーム23にねじ止めされた場合に、主走査方向Xにおいて電力回路部39から離間する位置に設けてもよい。すなわち、導電板35は主走査方向Xにおいて電力回路部39から離間した位置において本体フレーム23に接続してもよい。この構成によれば、電力回路部39から導電板35への伝熱をさらに抑制することができる。
【0049】
・導電板35は必ずしも可撓性ケーブル42と接触する必要はないので、可撓性ケーブル42と接触するのが好ましくない部材を覆蓋するような位置に導電板35を配置すればよい。また、電気伝導体は、必要に応じて複数設置してもよい。
【0050】
・本体フレーム23と導電板35との間に、断熱層として樹脂層を設けてもよい。
・電気伝導体の形状は任意に変更することができる。例えば、電気導電体を金属性のワイヤーやメッシュによって構成してもよい。
【0051】
・導電板35において、ねじ止め部36の数や位置、形状などは任意に変更することができる。
・インクカートリッジ28は、上記実施形態のようにキャリッジ26上に搭載される所謂オンキャリタイプのインクカートリッジであってもよいし、本体ケース12内においてキャリッジ56以外の所定箇所に搭載される所謂オフキャリタイプのインクカートリッジであってもよい。また、この場合には、インクカートリッジから液体噴射ヘッド27に向けてインクを供給するためのインクチューブを結束したケーブル束を可撓性ケーブルとしてもよい。
【0052】
・上記実施形態において、液体噴射装置は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置であってもよい。なお、液体噴射装置から微小量の液滴となって吐出される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体は、液体噴射装置から噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体を含むものとする。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置であってもよい。また、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
11…液体噴射装置の一例としてのプリンター、23…本体フレーム、26…キャリッジ、27…液体噴射ヘッド、35…電気伝導体の一例としての導電板、39…電力回路部、42…可撓性ケーブル、X…主走査方向、Y…奥行き方向、La…断熱層の一例としての空気層。
図1
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図9