特許第6044176号(P6044176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044176
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】車両用発電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/04 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   H02P9/04 L
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-179364(P2012-179364)
(22)【出願日】2012年8月13日
(65)【公開番号】特開2014-39370(P2014-39370A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 準
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/117994(WO,A1)
【文献】 特開2004−159440(JP,A)
【文献】 特開2006−325293(JP,A)
【文献】 特開2011−188597(JP,A)
【文献】 特開2013−198318(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0018504(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0273236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の減速時に当該車両の運動エネルギを回生して発電する発電機の発電量を制御する車両用発電制御装置であって、
ブレーキ操作部材の操作量と相関がある指標を検出する操作指標検出部と、
前記車両の車速を検出する車速検出部と、
前記操作指標検出部が検出した指標及び前記車速検出部が検出した車速を基に回生による発電電流を算出する発電電流算出部と、
前記発電電流算出部が算出した発電電流を基に前記発電機を制御する制御部と、
車載の電気負荷に供給する電力量が予め設定されている大きさに達しているか否かを判定する電気負荷判定部と、を有し、
前記発電電流算出部は、前記電気負荷判定部が前記電気負荷に供給する電力量が前記予め設定されている大きさに達していると判定すると前記電気負荷判定部が前記電気負荷に供給する電力量が前記予め設定されている大きさに達していないときよりも前記発電電流を大きくすることを特徴とする車両用発電制御装置。
【請求項2】
前記車両は、前記ブレーキ操作部材の操作量に応じたマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダを有し、
前記操作指標検出部は、前記指標として前記マスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧検出部であることを特徴とする請求項1に記載の車両用発電制御装置。
【請求項3】
前記発電機が発電を停止しているときに二次電池から前記電気負荷に供給される電流値を検出する電流検出部をさらに有し、
前記電気負荷判定部は、前記電流検出部が検出した電流値が予め設定されている値以上である場合に前記電気負荷に供給する電力量が予め設定されている大きさに達していると判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用発電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生により発電できる車載発電機を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンブレーキによる車両減速時に車両の運動エネルギを回生してオルタネータで発電する減速時回生システムが提案されている(例えば特許文献1)。
このような減速時回生システムでは、回生用蓄電バッテリを搭載せず、リニアレギュレータ方式の低容量のオルタネータによって回生発電して鉛バッテリを充電している。そして、減速時の回生発電量は、ブレーキ信号の入力だけで電圧の指令値を切り換えて、その指令値によってオルタネータを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−120877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、オルタネータの発電電流(すなわち、オルタネータのトルク)を制限できないため、充電されるバッテリの状態(例えば、バッテリ容量や受け入れ特性)や使用する電気負荷によって、回生発電時のオルタネータの発電電流が変化してしまう。
【0005】
よって、車両減速時の減速度がオルタネータの発電電流の影響を受けることから、車両減速時の減速度は、バッテリの状態や電気負荷に応じて変化してしまう。特に、低速域におけるそのような変化は、運転者に違和感を与えてしまう。
本発明の目的は、車両減速時の回生発電において運転者が感じる減速フィーリングを向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、(1)本発明の一態様は、車両の減速時に当該車両の運動エネルギを回生して発電する発電機の発電量を制御する車両用発電制御装置であって、ブレーキ操作部材の操作量と相関がある指標を検出する操作指標検出部と、前記車両の車速を検出する車速検出部と、前記操作指標検出部が検出した指標及び前記車速検出部が検出した車速を基に回生による発電電流を算出する発電電流算出部と、前記発電電流算出部が算出した発電電流を基に前記発電機を制御する制御部と、車載の電気負荷に供給する電力量が予め設定されている大きさに達しているか否かを判定する電気負荷判定部と、を有し、前記発電電流算出部は、前記電気負荷判定部が前記電気負荷に供給する電力量が前記予め設定されている大きさに達していると判定すると前記電気負荷判定部が前記電気負荷に供給する電力量が前記予め設定されている大きさに達していないときよりも前記発電電流を大きくすることを特徴とする車両用発電制御装置を提供する。
【0007】
(2)本発明の一態様では、前記車両は、前記ブレーキ操作部材の操作量に応じたマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダを有し、前記操作指標検出部は、前記指標として前記マスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧検出部であることが好ましい。
【0009】
(3)本発明の一態様では、前記発電機が発電を停止しているときに二次電池から前記電気負荷に供給される電流値を検出する電流検出部をさらに有し、前記電気負荷判定部は、前記電流検出部が検出した電流値が予め設定されている値以上である場合に前記電気負荷に供給する電力量が予め設定されている大きさに達していると判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
(1)の態様の発明によれば、車両減速時に、ブレーキ操作部材の操作量と相関がある指標及び車速を基に発電電流(例えば、回生発電量)を算出し、この発電電流となるように発電機を制御するため、車両減速時の回生発電において運転者が感じる減速フィーリングを向上させることができる。また、電気負荷に供給される電力量が大きいときには発電電流を大きくすることができる。
【0011】
(2)の態様の発明によれば、ブレーキストロークセンサのようなブレーキ操作部材の操作量を検出するセンサを追加することなく、通常、車両に搭載されているマスタシリンダ圧検出部を利用してブレーキ操作部材の操作量と相関のある指標を検出できる。
【0013】
(3)の態様の発明によれば、オン及びオフ状態を示すスイッチ信号を出力しない電気負荷にも対応して当該電気負荷に供給する電力量が大きいか否かを判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態に係る車両の構成例を示す図である。
図2図2は、励磁電流値を算出するための処理を実現するエンジンコントローラの構成例を示すブロック図である。
図3図3は、励磁電流値算出処理の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、電気負荷判定処理の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第1目標発電量マップの一例を示す図である。
図6図6は、第2目標発電量マップの一例を示す図である。
図7図7は、励磁電流マップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、オルタネータによって発電を行うことができる車両を挙げている。
【0016】
(構成)
図1には、本実施形態に係る車両1の構成例を示す。
図1に示すように、車両1は、アクセルペダル開度センサ2、車速センサ3、ストップランプスイッチ4、マスタシリンダ圧センサ5、ESP(Electronic Stability Program)コントローラ6、ボディコントロールモジュール(BCM)7、オートエアコンコントローラ8、及びエンジンコントローラ30を有している。
【0017】
アクセルペダル開度センサ2は、アクセルペダル開度(アクセルペダル9の踏み込み量)を検出する。そして、アクセルペダル開度センサ2は、検出値をエンジンコントローラ30に出力する。また、車速センサ3は、車速を検出する。そして、車速センサ3は、検出値をエンジンコントローラ30に出力する。また、ストップランプスイッチ4は、ブレーキペダル10の操作に応じてオン及びオフされる。そして、ストップランプスイッチ4は、オン信号又はオフ信号をエンジンコントローラ30に出力する。また、マスタシリンダ圧センサ5は、ブレーキペダル10の踏力を油圧に変換するブレーキマスタシリンダ11の液圧を検出する。そして、マスタシリンダ圧センサ5は、検出値をESPコントローラ5に出力する。ここで、ブレーキマスタシリンダ11は、ブレーキ装置12のホイールシリンダとブレーキパイプによって接続されており、ブレーキペダル10が踏み込まれることによって、ホイールシリンダが、ブレーキ装置12のブレーキシューやブレーキパッドをドラムやディスクに押し付けて制動力を発生させる。
【0018】
ESPコントローラ6は、マスタシリンダ圧センサ5の検出値等を基に、車両挙動を制御する。このESPコントローラ6は、マスタシリンダ圧センサ5の検出値(ブレーキ液圧)をエンジンコントローラ30に出力する。
ボディコントロールモジュール7は、各種ライトやドアロック等の電気負荷の機能を統合させたモジュールである。このボディコントロールモジュール7は、電気負荷の駆動時に電気負荷信号をエンジンコントローラ30に出力する。ここでいう電気負荷信号としてヘッドライト信号が挙げられる。
【0019】
オートエアコンコントローラ8は、空調装置を制御する。このオートエアコンコントローラ8は、空調装置の稼動時に電気負荷信号をエンジンコントローラ30に出力する。ここでいう電気負荷信号としてエアコン信号が挙げられる。
また、車両1は、エンジン13、オルタネータ14、蓄電用バッテリパック40、鉛バッテリ15、及びアイドルストップコントローラ16を有している。
【0020】
エンジン13は、内燃機関であり、燃料を噴射するインジェクタ17を有している。インジェクタ17は、エンジンコントローラ30によって燃料噴射タイミング等が制御される。また、エンジン13は、始動用モータとしてスタータモータ18を有している。
オルタネータ14は、エンジン13の動力によって駆動されて、蓄電用バッテリパック40、鉛バッテリ15、及び電装部品19に発電した電力を供給する。このオルタネータ14は、LIN(Local Interconnect Network)等の通信手段20を介してエンジンコントローラ30によって制御される。このとき、エンジンコントローラ30は、オルタネータ14の調整電圧を調整電圧指令値信号によって制御し、オルタネータ14の励磁電流を励磁電流指令値信号(又は励磁電流制限値信号)によって制御する。
【0021】
蓄電用バッテリパック40は、蓄電用バッテリ41の充放電を制御する。そのため、蓄電用バッテリパック40は、蓄電用バッテリ41、バッテリコントローラ42、スイッチ43,44、及び電流センサ45を有している。ここで、スイッチ43,44は、オルタネータ14からの電力の供給先を蓄電用バッテリ41や電装部品19に切り換えたり、蓄電用バッテリ41から電装部品19に電力を供給したりする。バッテリコントローラ42は、電流センサ45の検出値(電装部品19への供給電力の電流値)等の情報を基に、このスイッチ43,44のオン及びオフを制御する。また、バッテリコントローラ42は、電流センサ45の検出値等をバッテリ情報としてアイドルストップコントローラ16に出力する。
【0022】
ここで、電装部品19は、車両1内の電気負荷であり、ヘッドライト、空調装置、オーディオ機器、及び各種インジケータ(メータ等)等である。
鉛バッテリ15は、エンジン13のスタータモータ18や電装部品19に電力を供給する。ここで、スタータモータ18は、スタータリレー21によって鉛バッテリ15からの電力供給が断続される。また、鉛バッテリ15の充放電状態(例えば、スタータモータ18や電装部品19への供給電力の電流値)は、電流センサ22を用いて検出される。電流センサ22は、検出値をアイドルストップコントローラ16に出力する。
【0023】
アイドルストップコントローラ16は、車速等を基にアイドルストップを制御する。本実施形態では、アイドルストップコントローラ16は、発電要求及びバッテリ電流値をエンジンコントローラ30に出力する。ここで、バッテリ電流値は、蓄電用バッテリ41の充放電状態を検出するための電流センサ45が検出したバッテリ電流値と、鉛バッテリ15の充放電状態を検出するための電流センサ22が検出したバッテリ電流値とを加算した値である。
【0024】
エンジンコントローラ30は、例えば、マイクロコンピュータ及びその周辺回路を備えるECU(Electronic Control Unit)において構成されている。そのために、例えば、エンジンコントローラ30は、CPU、ROM、RAM等によって構成されている。ROMには、1又は2以上のプログラムが格納されている。CPUは、ROMに格納されている1又は2以上のプログラムに従って各種処理を実行する。
【0025】
このエンジンコントローラ30は、インジェクタ17等を制御してエンジン13を所望の駆動状態にする。また、エンジンコントローラ30は、オルタネータ14を制御する。特に、本実施形態では、エンジンコントローラ30は、回生可能状態にある場合において発電要求があると、電気負荷状態、ブレーキ液圧(すなわち、マスタシリンダ圧センサ5の検出値)、及び車速(すなわち、車速センサ3の検出値)を基に励磁電流値を算出する。ここで、電気負荷状態は、ボディコントロールモジュール7からの電気負荷信号(例えばヘッドライト信号)、オートエアコンコントローラ8からの電気負荷信号(例えばエアコン信号)、及びアイドルストップコントローラ16からのバッテリ電流値等に基づき決定される。
【0026】
図2には、そのような励磁電流値を算出するための処理(以下、励磁電流値算出処理という。)を実現するエンジンコントローラ30の構成例を示す。図2に示すように、エンジンコントローラ30は、減速回生可能状態判定部31、発電要求判定部32、電気負荷判定部33、発電電流算出部34、及び発電指令処理部35を有している。
【0027】
また、図3には、励磁電流値算出処理の一例のフローチャートを示す。以下に、この図3に示す励磁電流値算出処理の処理手順に沿って、図2に示すエンジンコントローラ30の各部における処理内容を具体的に説明する。
図3に示すように、先ず、ステップS1では、減速回生可能状態判定部31は、減速回生可能状態であるか否かを判定する。ここで、減速回生可能状態判定部31は、アクセルペダル9が踏まれていないことで(すなわち、アクセルペダル9がオフになっていることで)燃料噴射が停止しており(すなわち、燃料カットしており)、かつロックアップ状態であることでミッションがエンジン13を回転させるような状態になっている場合、減速回生可能状態であると判定する。すなわち、減速回生可能状態判定部31は、アクセルペダル9が戻されることでエンジンブレーキがかかると判定すると、減速回生可能状態であると判定する。そして、減速回生可能状態判定部31は、減速回生可能状態であると判定すると、ステップS2に進む。また、減速回生可能状態判定部31は、減速回生可能状態でないと判定すると、当該図3に示す処理を終了する。
【0028】
ステップS2では、発電要求判定部32は、アイドルストップコントローラ16からの発電要求が有るか否かを判定する。発電要求判定部32は、アイドルストップコントローラ16からの発電要求が有ると判定すると、ステップS3に進む。また、発電要求判定部32は、アイドルストップコントローラ16からの発電要求が無いと判定すると、当該図3に示す処理を終了する。
【0029】
ステップS3では、電気負荷判定部33は、電気負荷判定処理を行う。そして、電気負荷判定部33は、ステップS4に進む。
図4には、電気負荷判定処理の一例のフローチャートを示す。
図4に示すように、先ず、ステップS21では、電気負荷判定部33は、ボディコントロールモジュール7からのヘッドライト信号の入力が有るか否かを判定する。電気負荷判定部33は、ボディコントロールモジュール7からのヘッドライト信号の入力が有ると判定すると、すなわち、ヘッドライトが点灯すると、ステップS25に進む。また、電気負荷判定部33は、ボディコントロールモジュール7からのヘッドライト信号の入力が無いと判定すると、ステップS22に進む。
【0030】
ステップS22では、電気負荷判定部33は、オートエアコンコントローラ8からのエアコン信号の入力が有るか否かを判定する。電気負荷判定部33は、オートエアコンコントローラ8からのエアコン信号の入力が有ると判定すると、すなわち、空調装置が稼動すると、ステップS25に進む。また、電気負荷判定部33は、オートエアコンコントローラ8からのエアコン信号の入力が無いと判定すると、ステップS23に進む。
【0031】
ステップS23では、電気負荷判定部33は、車両運転中であり、発電停止指令中であり、かつオルタネータ14を駆動するための励磁電流値が励磁電流判定用しきい値以下であるという要件を満たすか否かを判定する。ここで、車両運転中には、初回エンジン始動後にエンジン停止している車両運転状態も含む。また、発電停止指令中とは、例えば、調整電圧や励磁電流が制限されるなどしてオルタネータ14が発電を停止している最中をいう。また、励磁電流判定用しきい値は、実験的、経験的、又は理論的に予め設定されている値である。例えば、励磁電流判定用しきい値は、0.1Aである。
【0032】
そして、電気負荷判定部33は、前記要件を満たすと判定すると、ステップS24に進む。また、電気負荷判定部33は、前記要件を満たさないと判定すると、ステップS26に進む。
ステップS24では、電気負荷判定部33は、電流センサ値がセンサ値判定用しきい値以上であるか否かを判定する。ここで、電流センサ値は、アイドルストップコントローラ16からのバッテリ電流値である。すなわち、電流センサ値は、電装部品19やスタータモータ18への供給電力の電流値である。また、センサ値判定用しきい値は、実験的、経験的、又は理論的に予め設定されている値である。例えば、センサ値判定用しきい値は、20Aである。
【0033】
そして、電気負荷判定部33は、電流センサ値がセンサ値判定用しきい値以上であると判定すると、ステップS25に進む。また、電気負荷判定部33は、電流センサ値がセンサ値判定用しきい値未満であると判定すると、ステップS26に進む。
ステップS25では、電気負荷判定部33は、電気負荷有りとの決定を行う。そして、電気負荷判定部33は、当該図4に示す処理を終了する(図3のステップS4に進む)。
【0034】
ステップS26では、電気負荷判定部33は、電気負荷無しとの決定を行う。そして、電気負荷判定部33は、当該図4に示す処理を終了する(図3のステップS4に進む)。
電気負荷判定処理は以上のような内容になる。
図3に戻り、ステップS4では、電気負荷判定部33は、前記ステップS3の決定を基に、電気負荷無しか否かを判定する。電気負荷判定部33は、電気負荷無しと判定すると、ステップS5に進む。また、電気負荷判定部33は、電気負荷有りと判定すると、ステップS7に進む。
【0035】
ステップS5では、発電電流算出部34は、マスタシリンダ圧センサ5及び車速センサ3を用いてブレーキ液圧及び車速を検出する。
次に、ステップS6では、発電電流算出部34は、第1目標発電量マップ(又は第1回生発電量制限マップ)を用いて、前記ステップS5で検出したブレーキ液圧及び車速を基に、目標の発電量(発電電流)を決定する。そして、発電電流算出部34は、ステップS9に進む。
【0036】
図5には、第1目標発電量マップの一例を示す。図5に示すように、第1目標発電量マップは、ブレーキ液圧及び車速と、発電量(発電電流)との関係を示すマップである。この第1目標発電量マップでは、ブレーキ液圧が大きいほど、発電量が概ね大きくなる。また、車速が大きいほど、発電量が概ね大きくなる。また、この第1目標発電量マップの値は、アクセルペダル9がオフになっていることが前提となる。よって、例えば、ブレーキ液圧が0の場合とは、アクセルペダル9がオフになっており、かつブレーキペダル10もオフになっている場合である。また、例えば、ブレーキ液圧が0.5の場合とは、アクセルペダル9がオフになっており、ブレーキ液圧が0.5となるようにブレーキペダル10が踏み込まれている場合である。
【0037】
また、ステップS7では、発電電流算出部34は、前記ステップS5の処理と同様に、マスタシリンダ圧センサ5及び車速センサ3を用いてブレーキ液圧及び車速を検出する。
次に、ステップS8では、発電電流算出部34は、第2目標発電量マップ(又は第2回生発電量制限マップ)を用いて、前記ステップS7で検出したブレーキ液圧及び車速を基に、目標の発電量(発電電流)を決定する。そして、発電電流算出部34は、ステップS9に進む。
【0038】
図6には、第2目標発電量マップの一例を示す。図6に示すように、第2目標発電量マップは、ブレーキ液圧及び車速と、発電量(発電電流)との関係を示すマップである。この第2目標発電量マップも、ブレーキ液圧が大きいほど、発電量が概ね大きくなる。また、車速が大きいほど、発電量が概ね大きくなる。しかし、第1目標発電量マップとの対比では、第2目標発電量マップの発電量は、全体的に大きい値となる。なお、第2目標発電量マップの値も、アクセルペダル9がオフになっていることが前提となる。
【0039】
ステップS9では、発電指令処理部35は、前記ステップS6又は前記ステップS8で決定した発電電流を基に、発電指令となる励磁電流値を算出する。例えば、発電指令処理部35は、励磁電流マップを用いて励磁電流値を算出する。
図7には、励磁電流マップの一例を示す。図7に示すように、励磁電流マップは、オルタネータ回転数及び発電電流(すなわち、オルタネータ出力)と、励磁電流との関係を示すマップである。この励磁電流マップでは、オルタネータ回転数が大きいほど、励磁電流が概ね小さくなる。また、目標の発電電流が大きいほど、励磁電流が概ね大きくなる。
【0040】
発電指令処理部35は、このような励磁電流マップを参照し、オルタネータ回転数及び発電電流に対応する励磁電流値を取得する。
ステップS10では、発電指令処理部35は、前記ステップS9で算出した励磁電流値を発電指令(例えば、励磁電流指令値信号)としオルタネータ14に出力する。また、このとき、発電指令処理部35は、調整電圧値の指令値もオルタネータ14に出力する。これによって、オルタネータ14は、調整電圧値及び励磁電流値に応じて駆動されて発電を行う。
【0041】
(動作、作用等)
次に、エンジンコントローラ30の処理の一例、及びその作用等について説明する。
エンジンコントローラ30は、減速回生可能状態でありかつアイドルストップコントローラ16からの発電要求が有る場合には、電気負荷の有無に応じて目標発電量マップを切り換える(前記ステップS1乃至前記ステップS8)。
【0042】
ここで、エンジンコントローラ30は、ボディコントロールモジュール7からのヘッドライト信号又はオートエアコンコントローラ8からのエアコン信号の入力が有る場合、電気負荷が有ると決定する(前記ステップS21、前記ステップS22、及び前記ステップS25)。又は、エンジンコントローラ30は、車両運転中であり、発電停止指令中であり、かつオルタネータ14を駆動するための励磁電流値が励磁電流判定用しきい値以下であるという要件を満たし、電流センサ値がセンサ値判定用しきい値以上である場合、電気負荷が有ると決定する(前記ステップS23乃至前記ステップS25)。
【0043】
この決定によって、エンジンコントローラ30は、電気負荷が無い場合、第1目標発電量マップを用いて、ブレーキ液圧及び車速を基に、目標の発電量を決定する(前記ステップS4乃至前記ステップS6)。また、エンジンコントローラ30は、電気負荷が有る場合、第2目標発電量マップを用いて、ブレーキ液圧及び車速を基に、目標の発電量を決定する(前記ステップS4、前記ステップS7、及び前記ステップS8)。そして、エンジンコントローラ30は、決定した発電量を基に励磁電流値を算出し、算出した励磁電流値を発電指令としてオルタネータ14に出力する(前記ステップS9及び前記ステップS10)。
【0044】
以上より、エンジンコントローラ30は、減速回生可能状態でありかつアイドルストップコントローラ16からの発電要求が有る場合には、電気負荷の有無にかかわらず(第1目標発電量マップ及び第2目標発電量マップの何れかを用いることによって)、ブレーキ液圧及び車速を基に目標の発電量を決定し、決定した目標の発電量を基に励磁電流値を決定する。
【0045】
このとき、エンジンコントローラ30は、ブレーキ液圧が大きいほど目標の発電量を大きくしたり、車速が大きいほど目標の発電量を大きくしたりする。すなわち、エンジンコントローラ30は、ブレーキ液圧が大きいほど励磁電流値を大きくしたり、車速が大きいほど励磁電流値を大きくしたりする。
【0046】
また、エンジンコントローラ30は、減速回生可能状態でありかつアイドルストップコントローラ16からの発電要求が有る場合において、電気負荷が有るときには電気負荷が無いときよりも目標の発電量を大きくし、励磁電流値を大きくする。
これによって、オルタネータ14は、減速回生可能状態でありかつアイドルストップコントローラ16からの発電要求が有る場合には、ブレーキ液圧及び車速に応じて決定された発電量を実現するように回生発電を行うようになる。このとき、オルタネータ14は、ブレーキ液圧が大きいほど又は車速が大きいほど、回生発電の発電量を多くする。ここで、オルタネータ14は、発電量(発電電流)に応じてトルク(モータトルク、又は制動トルク)が変化する。
【0047】
よって、本実施形態では、車両1は、アクセルペダル9が戻されることでエンジンブレーキがかかると、減速しつつオルタネータ14によって回生発電を行う。ここで、エンジンブレーキについては、車速に応じて制動力が変化する。また、車両1は、回生発電中、ブレーキ液圧及び車速に応じた回生制動力によって減速する。具体的には、ブレーキ液圧が大きいほど又は車速が大きいほど、回生制動による減速度が大きくなる。ここで、車両1は、ブレーキ液圧そのもの(すなわち、ブレーキペダル10が操作されていること自体)によっても制動力が発生しているため、減速回生時には、このようなブレーキ液圧そのものの制動力の他に回生制動力が加わっていることになる。
【0048】
そして、本実施形態では、その回生制動力がブレーキ液圧が大きいほど大きくなるため、回生制動による車両1の減速は、運転者の意思(すなわち、減速させようとする意思)に合致したものとなる。また、低速域では回生制動による減速度が小さくなるため、回生制動による車両1の減速が運転者に違和感を与えてしまうのを防止できる。このように、本システムは、車両減速時の回生発電において運転者が感じる減速フィーリングを向上させることができる。
【0049】
なお、前述の実施形態の説明では、マスタシリンダ圧センサ5、車速センサ3、及びエンジンコントローラ30は、例えば、車両1用発電制御装置を構成する。また、ブレーキペダル10は、例えば、ブレーキ操作部材を構成する。また、マスタシリンダ圧センサ5は、例えば、マスタシリンダ圧検出部を構成する。また、車速センサ3は、例えば、車速検出部を構成する。また、発電指令処理部35は、例えば、制御部を構成する。また、オーディオ機器や各種インジケータ(メータ等)は、例えば、オン及びオフ状態を示すスイッチ信号を出力しない電気負荷を構成する。
【0050】
(本実施形態の変形例)
本実施形態では、車両1が蓄電用バッテリ41(すなわち、蓄電用バッテリパック40)を備えていなくても良い。しかし、鉛バッテリ15のような蓄電容量が小さい二次電池は、ブレーキ液圧及び車速に応じた回生発電量を蓄電できない場合があるので、車両1は、前述のように別途蓄電用バッテリ41を備えるか、車載されている唯一の二次電池の容量が大きいことが好ましい。
【0051】
また、本実施形態では、第1目標発電量マップ、第2目標発電量マップ、及び励磁電流マップは、前述の具体的な数値によって構成されることに限定されないことは言うまでもない。
また、本実施形態では、エンジンコントローラ30は、第1目標発電量マップ又は第2目標発電量マップを用いて、ブレーキ液圧及び車速に対応する目標の発電量を決定している。しかし、本実施形態は、これに限定されない。例えば、エンジンコントローラ30は、予め設定されている演算式を用いて、ブレーキ液圧及び車速を基に目標の発電量を算出しても良い。
【0052】
また、本実施形態では、エンジンコントローラ30は、励磁電流マップを用いて、オルタネータ回転数及び発電電流に対応する励磁電流値を取得している。しかし、本実施形態は、これに限定されない。例えば、エンジンコントローラ30は、予め設定されている演算式を用いて、オルタネータ回転数及び発電電流を基に励磁電流値を算出しても良い。
【0053】
また、本実施形態では、ブレーキペダルストロークセンサがブレーキ操作部材の操作量と相関がある指標(すなわち、ブレーキペダルストローク又はブレーキペダル踏み込み量)を検出しても良い。
また、本実施形態では、電気負荷は、前述の具体例に限定されないことは言うまでもない。
【0054】
また、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項1により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0055】
1 車両、3 車速センサ、5 マスタシリンダ圧センサ、14 オルタネータ、30 エンジンコントローラ、31 減速回生可能状態判定部、32 発電要求判定部、33 電気負荷判定部、34 発電電流算出部、35 発電指令処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7