(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機充填材(E)がシリカ類、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品、水酸化マグネシウム酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、無機酸化物担持モリブデン酸化合物からなる群のうち、いずれか一種以上である、請求項2〜9のいずれか一項に記載の樹脂組成物
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様によれば、式(1)で表されるイミダゾール化合物(A)、エポキシ化合物(B)、フェノール化合物(C)及びマレイミド化合物(D)を含有する樹脂組成物である。
【化1】
(1)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数3〜18のアルキル基、炭素数3〜18のアルケニル基、炭素数3〜18のアルコキシル基、又は炭素数6〜14の置換もしくは非置換の芳香族置換基を表し、R3は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数6〜14の置換もしくは非置換の芳香族置換基、又はハロゲン基を表す。)
【0010】
また、本発明の別の態様としては、前記樹脂組成物成分に加え、無機充填材(E)を含有する樹脂組成物である。
【0011】
さらに本発明の別の態様においては、前記樹脂組成物と基材からなるプリプレグ及び該プリプレグを用いた積層板、金属箔張積層板、プリント配線板も提供される。
【0012】
以下、本発明による樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0013】
<イミダゾール化合物(A)>
本発明による樹脂組成物は、硬化促進剤として式(1)で表されるイミダゾール化合物(A)を含む。
【化2】
(1)
【0014】
上記式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数3〜18のアルキル基、炭素数3〜18のアルケニル基、炭素数3〜18のアルコキシル基、又は炭素数6〜14の置換もしくは非置換の芳香族置換基を表す。芳香族置換基の水素原子の少なくとも1つが他の置換基で置換されている場合、このような置換基としては、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルコキシル基及びハロゲン基が挙げられる。
【0015】
重合反応の硬化促進の観点から、R1及びR2は、それぞれ独立して、イソプロピル基、t−ブチル基、イソプロピルアルコキシル基、t−ブチルアルコキシル基、フェニル基、又はナフチル基であることが好ましく、特に、R1及びR2のいずれもがフェニル基であることが好ましい。
【0016】
また、上記式(1)におけるR3は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数6〜14の置換もしくは非置換の芳香族置換基、又はハロゲン基を表す。芳香族置換基の水素原子の少なくとも1つが他の置換基で置換されている場合、このような置換基としては、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルコキシル基及びハロゲン基が挙げられる。
【0017】
本発明においては、フェノール化合物(C)を含む樹脂組成物において、上記したような特定のイミダゾール化合物(A)を硬化促進剤として添加することにより、低温硬化条件においても得られた積層板のΔTgを小さくすることができる。
【0018】
本発明の樹脂組成物中における式(1)で表されるイミダゾール化合物(A)の含有量は、特に限定されないが、硬化促進効果及び成形性の観点から、樹脂固形分の総量に対して、0.1〜10質量%含まれていることが好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%である。なお、特に断りのない限り、樹脂固形分の総量とは、樹脂組成物における、溶剤を及び無機充填材(E)を除いた合計質量をいうものとする。
【0019】
本発明による樹脂組成物は、上記イミダゾール化合物(A)に加えて、他の公知の硬化促進剤が含まれていてもよい。このような硬化促進剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチル−ジ−パーフタレート等で例示される有機過酸化物、アゾビスニトリル当のアゾ化合物、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、2−N−エチルアニリノエタノール、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、N−メチルピペリジンなどの第3級アミン類、フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどのフェノール類、ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オレイン酸錫、ジブチル錫マレート、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトン鉄などの有機金属塩、これら有機金属塩をフェノール、ビスフェノールなどの水酸基含有化合物に溶解したもの、塩化錫、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどの無機金属塩、ジオクチル錫オキサイド、その他のアルキル錫、アルキル錫オキサイドなどの有機錫化合物などが挙げられる。
【0020】
<エポキシ化合物(B)>
本発明において用いられるエポキシ化合物(B)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限なく、公知のものを使用することができる。
本発明において、好ましいエポキシ化合物(B)としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の水酸基の水素原子をグリシジル基に置換した構造のものが挙げられる。また、エポキシ化合物(B)は、芳香族基を有するものが好ましく、グリシジル基が芳香族基に直結した構造のものを好適に使用することができる。
このようなエポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ化合物、式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビスナフタレン型エポキシ化合物、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型エポキシ化合物、アントラキノン型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ザイロック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールM型エポキシ化合物、ビスフェノールP型エポキシ化合物、ビスフェノールE型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、3官能フェノール型エポキシ化合物、4官能フェノール型エポキシ化合物、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ化合物、脂環式フェノール型エポキシ化合物、リン含有フェノール等の水酸基の水素原子をグリシジル基に置換した構造の化合物、又はグリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエンなどの2重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコン樹脂類とエピクロルヒドリン等との反応により得られる化合物等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物(B)は、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。また、上記したエポキシ化合物(B)は、モノマー、オリゴマー及び樹脂のいずれの形態であってもよい。
この中でも難燃性を高める観点からフェノールノボラック型エポキシ化合物、式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビスナフタレン型エポキシ化合物、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型エポキシ化合物、アントラキノン型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ザイロック型エポキシ化合物が特に好ましく、とりわけ式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ化合物が好ましい。
【化3】
(2)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、yは1以上の整数を示す。)
【0021】
本発明の樹脂組成物中におけるエポキシ化合物(B)の含有量は、特に限定されないが、吸湿耐熱性及び耐熱性の観点から、樹脂固形分の総量に対して、25〜95質量%含まれていることが好ましく、より好ましくは30〜90質量%である。
【0022】
本発明の樹脂組成物中におけるエポキシ化合物(B)のエポキシ当量は、特に限定されないが、耐熱性の観点から、50〜500g/eq.の範囲であるのが好ましく、より好ましくは150〜350g/eq.である。
【0023】
<フェノール化合物(C)>
本発明において用いられるフェノール化合物(C)は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物であれば特に制限なく、公知のものを使用することができる。
例えば、クレゾールノボラック型フェノール化合物、式(3)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール化合物、アミノトリアジンノボラック型フェノール化合物、ナフタレン型フェノール化合物、ナフトールアラルキル型フェノール化合物、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール化合物、ザイロック型フェノール化合物、テルペン変性フェノール化合物、ポリビニルフェノール類、ビフェニルアラルキル型フェノール化合物、などが例示される。
これらは単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
この中でも、吸水性、耐熱性の観点からクレゾールノボラック型フェノール化合物、式(3)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール化合物、アミノトリアジンノボラック型フェノール化合物、ナフタレン型フェノール化合物、ナフトールアラルキル型フェノール化合物が特に好ましく、とりわけクレゾールノボラック型フェノール化合物、式(3)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール化合物が好ましい。
【化4】
(3)
(式中、nは1以上の整数を示す。)
【0024】
本発明の樹脂組成物中におけるフェノール化合物(C)の含有量は、特に限定されないが、吸湿耐熱性及び耐熱性の観点から、樹脂固形分の総量に対して、5〜75質量%含まれていることが好ましく、より好ましくは10〜70質量%である。
【0025】
本発明の樹脂組成物中におけるフェノール化合物(C)の水酸基当量は、特に限定されないが、耐熱性の観点から、50〜500g/eq.の範囲であるのが好ましく、より好ましくは100〜350g/eq.である。
【0026】
本発明の樹脂組成物におけるエポキシ当量/水酸基当量の値は、特に限定されないが、耐熱性の観点から、0.1〜2.0の範囲であるのが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5である。
【0027】
<マレイミド化合物(D)>
本発明において用いられるマレイミド化合物(D)は1分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。
その具体例としては、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、式(4)で表されるマレイミド化合物、N−フェニルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、これらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーなどが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
この中でも、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、式(4)で表されるマレイミド化合物が耐熱性の観点から好ましい。
【化5】
(4)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【0028】
本発明の樹脂組成物中におけるマレイミド化合物(D)の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分の総量に対して、5〜50質量%程度であることが好ましいく、耐熱性及び低吸水性の観点から10〜30質量%であることが、特に好ましい。
【0029】
<無機充填材(E)>
本発明の樹脂組成物における任意の成分として、無機充填材(E)が含まれていてもよい。無機充填材を添加することにより、樹脂に、低熱膨張化、難燃性及びレーザー加工性を付与することができるとともに、プリプレグや積層体の成形時の樹脂の流動性を制御することができる。
本発明において用いられる無機充填材としては、特に制限なく公知のものを使用でき、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、フュームドシリカ、中空シリカ等のシリカ類、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、無機酸化物担持モリブデン化合物、酸化チタン、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、ガラス短繊維(EガラスやDガラスなどのガラス微粉末類)、中空ガラス等が挙げられる。これらのなかでも、難燃性の観点からは、シリカ類、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品、水酸化マグネシウム酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、無機酸化物担持モリブデン化合物を好適に使用することができる。
これら無機充填材は、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本発明の樹脂組成物における無機充填材の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、分散性の観点から、0.01〜200μmの範囲であるのが好ましく、より好ましくは0.03〜30である。
なお、本発明における平均粒子径(D50)とは、メジアン径を意味し、測定した粉体の粒度分布を2つに分けたときの大きい側と小さい側が等量となる径である。平均粒子径は、一般的には湿式レーザー回折・散乱法により測定される。
【0031】
本発明の樹脂組成物中における無機充填材(E)の含有量は、特に限定されないが、低熱膨張、難燃性及び成形性の観点から、樹脂固形分総量に対して、5〜200質量%含まれていることが好ましく、より好ましくは30〜150質量%含まれていることが好ましい。
【0032】
<その他の成分>
本発明による樹脂組成物は、上記した成分以外にも、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。所期の特性が損なわれない範囲において、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及びそのオリゴマーやエラストマー類などの種々の高分子化合物、他の難燃性の化合物、添加剤などが添加されていてもよい。これらは、一般に使用されているものであれば、特に制限なく使用することができる。例えば、リン酸エステル、リン酸メラミンなどのリン化合物、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素含有化合物、オキサジン環含有化合物、シリコン系化合物、ポリイミド、ポリビニルアセタール、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、水酸基又はカルボキシル基を有するアクリル樹脂、アルキッド樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブチルゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどのエラストマー類、スチレン−イソプレンゴム、アクリルゴム、これらのコアシェルゴム、エポキシ化ブタジエン、マレイン化ブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−プロピレン共重合体、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルフェノール、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、ポリ−4−フッ化エチレン、フッ化エチレン−プロピレン共重合体、4−フッ化エチレン−6−フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデンなどのビニル化合物重合体類、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリエーテルサルホン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリフェニレンサルファイトなどの熱可塑性樹脂類及びこれらの低分子量重合体類、(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリルオキシービスフェノールなどのポリ(メタ)アクルレート類、スチレン、ビニルピロリドン、ジアクリルフタレート、ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン、ジアリルエーテルビスフェノール、トリアルケニルイソシアヌレートなどのポリアリル化合物及びそのプレポリマー類、ジシクロペンタジエン及びそのプレポリマー類、フェノール化合物、不飽和ポリエステル等の重合性二重結合含有モノマー類及びそのプレポリマー類、ポリイソシアネート類などの熱硬化性モノマー又はそのプレポリマー類などが挙げられる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤等が挙げられ、これら添加剤は、必要に応じて、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0033】
さらに、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて溶剤を含有していてもよい。例えば、有機溶剤を用いると、樹脂組成物の調製時における粘度が下がり、ハンドリング性を向上されるとともにガラスクロスへの含浸性が高められる。溶剤の種類は、式(1)で表されるイミダゾール化合物(A)エポキシ化合物(B)、フェノール化合物(C)及びマレイミド化合物(D)の混合物を溶解可能なものであれば、特に限定されない。その具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセルソルブなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、プロピレングリコールメチルエーテル及びそのアセテートなどが挙げられるが、これらに特に限定されない。溶剤は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
<樹脂組成物>
本発明における樹脂組成物は、常法にしたがって調製することができ、式(1)で表されるイミダゾール化合物(A)、エポキシ化合物(B)、フェノール化合物(C)、マレイミド化合物(D)、無機充填材(E)及び上述したその他の任意成分を均一に含有する樹脂組成物が得られる方法であれば、その調製方法は、特に限定されない。例えば、式(1)で表されるイミダゾール化合物、エポキシ化合物、フェノール化合物、マレイミド化合物、無機充填材を順次溶剤に配合し、十分に攪拌することで本実施形態の樹脂組成物を容易に調製することができる。
【0035】
本発明の樹脂組成物の調製時において、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。有機溶剤の種類は、式(1)で表されるイミダゾール化合物(A)、エポキシ化合物(B)、フェノール化合物(C)マレイミド化合物(D)の混合物を溶解可能なものであれば、特に限定されない。その具体例は、上述したとおりである。
【0036】
なお、樹脂組成物の調製時に、各成分を均一に溶解或いは分散させるための公知の処理(攪拌、混合、混練処理など)を行うことができる。例えば、無機充填材(E)の均一分散にあたり、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことで、樹脂組成物に対する分散性が高められる。上記の攪拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミルなどの混合を目的とした装置、又は、公転・自転型の混合装置などの公知の装置を用いて適宜行うことができる。
【0037】
<プリプレグ及び積層板、金属箔張積粗板及びプリント配線板>
一方、本発明のプリプレグは、上記の樹脂組成物を基材と組み合わせる、具体的には、上記の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させることにより、得ることができる。プリプレグの作製方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、本発明における樹脂成分を基材に含浸又は塗布させた後、100〜200℃の乾燥機中で1〜30分加熱するなどして半硬化(Bステ−ジ化)させることで、本実施形態のプリプレグを作製することができる。なお、本実施形態のプリプレグは、特に限定されないが、プリプレグの総量に対する樹脂組成物(無機充填剤を含む。)の量が、30〜90質量%の範囲であることが好ましい。
【0038】
本発明で使用される基材としては、特に限定されるものではなく、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。その具体例としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス、球状ガラス、NEガラス、Tガラス等のガラス繊維、クォーツ等のガラス以外の無機繊維、ポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド(テクノーラ(登録商標)、帝人テクノプロダクツ株式会社製)等の全芳香族ポリアミド、2,6−ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸(ベクトラン(登録商標)、株式会社クラレ製)等のポリエステル、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(ザイロン(登録商標)、東洋紡績株式会社製)、ポリイミドなどの有機繊維が挙げられるが、これらに特に限定されない。
これらの中でも低熱膨張性の観点から、Eガラス、Tガラス、Sガラス、Qガラスが好ましい。
これら基材は1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
基材の形状としては織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマットなど、織布の織り方としては、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができ、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01〜0.3mm程度のものが好適に用いられる。とりわけ、強度と吸水性の観点から、基材は、厚み200μm以下、質量250g/m
2以下のガラス織布が好ましく、Eガラスのガラス繊維からなるガラス織布がより好ましい。
【0039】
他方、本発明の積層板及び金属箔張積層板は、上述のプリプレグを少なくとも1枚以上重ね、所望によりその片面もしくは両面に金属箔を配して積層成形することにより、得ることができる。具体的には、前述のプリプレグを1枚あるいは複数枚以上を重ね、所望によりその片面もしくは両面に銅やアルミニウムなどの金属箔を配置した構成とし、これを必要に応じて積層成形することにより、本実施形態の金属箔張積層板を作製することができる。
ここで使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔などの公知の銅箔が好ましい。また、金属箔の厚みは、特に限定されないが、2〜70μmが好ましく、より好ましくは2〜35μmである。
金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件についても、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができ、また、温度は100〜300℃、圧力は面圧0.2〜10MPa、加熱時間は0.05〜8時間の範囲が一般的である。
この中でも、温度150〜250℃、圧力0.1〜5MPa、1〜6時間で行うことが、製造コスト、十分な硬化度及び小さいΔTgを得ることができる観点から好ましく、とりわけ温度が160〜190℃であることが好ましい。
さらに、必要に応じて、150〜300℃の温度で後硬化を行うこともできる。また、本実施形態のプリプレグと、別途作製した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることも可能である。
【0040】
上記の金属箔張積層板は、所定の配線パターンを形成することにより、プリント配線板として好適に用いることができる。そして、本発明の金属箔張積層板は、低い熱膨張率、高い難燃性、良好な成形性及びドリル加工性を有し、そのような性能が要求される半導体パッケージ用プリント配線板として、殊に有効に用いることができる。
【0041】
本発明におけるプリント配線板は、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、本発明の銅張積層板等の金属箔張積層板を用意する。金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作製する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその内層回路表面に本発明のプリプレグを所要枚数重ね、更にその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材及び熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、更に外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成し、プリント配線板が製造される。
本発明のプリプレグ(基材及びこれに添着された本発明の樹脂組成物)、金属箔張積層板の樹脂組成物層(本発明の樹脂組成物からなる層)が、本発明の樹脂組成物を含む絶縁層を構成することになる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
実施例1
<プリプレグの作製>
ナフタレン型フェノール化合物(HP−9500−60M、DIC(株)製、水酸基当量:153g/eq.)17.5質量部、ビフェニルアラルキル型フェノール化合物(KAYAHARD GPH−103、日本化薬(株)製、水酸基当量:231g/eq.)17.5質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(NC−3000−FH、エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)45質量部、式(4)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300、大和化成工業(株)製)20質量部、球状シリカ(SFP−130MC、平均粒径0.7μm、電気化学工業(株)製)120質量部、湿潤分散剤(DISPERBYK−161、ビッグケミージャパン(株)製)1質量部、2,4,5−トリフェニルイミダゾール(東京化成工業(株)製)0.5質量部を混合し、その後メチルエチルケトン(160mL)で希釈してワニスを得た。得られたワニスを厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、130℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量50質量%のプリプレグを得た。
【0044】
<金属箔張積層板の作製>
得られたプリプレグを、それぞれ8枚重ねて12μm厚の電解銅箔(3EC−III、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力3MPa、温度190℃で120分間の積層成型を行い、絶縁層厚さ0.8mmの銅張積層板を得た。
【0045】
実施例2
ナフタレン型フェノール化合物(HP−9500−60M)、ビフェニルアラルキル型フェノール化合物(KAYAHARD GPH−103)を使用せず、代わりにナフトールアラルキル型フェノール化合物(SN−495、新日鐵化学(株)製、水酸基当量:236g/eq.)を35質量部使用した以外は実施例1と同様に行った。
【0046】
実施例3
球状シリカ(SFP−130MC)を使用せず、代わりにベーマイト(APYRAL AOH60、平均粒径0.9μm、Nabaltec製)120質量部にした以外は実施例1と同様に行った。
【0047】
実施例4
式(4)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300)を使用せず、代わりにビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミジフェニル)メタン(BMI−70、ケイ・アイ化成(株)製)を20質量部使用した以外は実施例1と同様に行った。
【0048】
実施例5
ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(NC−3000−FH)を使用せず、代わりにフェノールノボラック型エポキシ化合物(N770、DIC(株)製、エポキシ当量:188g/eq.)を45質量部使用した以外は実施例1と同様に行った。
【0049】
比較例1
2,4,5−トリフェニルイミダゾールを使用しなかった以外は実施例1と同様に行った。
【0050】
比較例2
ナフタレン型フェノール化合物(HP−9500−60M)及びビフェニルアラルキル型フェノール化合物(KAYAHARD GPH−103)を使用せず、代わりに特開2009−35728号公報に記載の方法で合成したナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアネート基当量:261g/eq.)を35質量部使用した以外は実施例1と同様に行った。
【0051】
比較例3
ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(NC−3000−FH)を使用しなかった以外は実施例1と同様に行ったが、硬化しなかった。
【0052】
比較例4
ナフタレン型フェノール化合物(HP−9500−60M)及びビフェニルアラルキル型フェノール化合物(KAYAHARD GPH−103)を使用しなかった以外は実施例1と同様に行ったが、硬化しなかった。
【0053】
比較例5
式(4)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300)を使用しなかった以外は実施例1と同様に行った。
【0054】
得られた銅張積層板を用いて、下記の方法によりガラス転移温度、温度220℃で4時間加熱(ベーキング)した後のガラス転移温度、難燃性、熱膨張率、吸湿耐熱性、ピール強度の評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0055】
測定方法
1)難燃性
銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去したのちに、UL94垂直燃焼試験法に準拠して評価した。
2)熱膨張率
銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去したのちに、熱機械分析装置(TAインスツルメント製、Q800型)で40℃から340℃まで毎分10℃で昇温し、60℃から120℃での面方向の線膨張係数を測定した。測定方向は積層板のガラスクロスの縦方向(Warp)を測定した。
3)ガラス転移温度
銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去したのちに、サイズ10mm×60mmの試験片を作製し、DMA装置(TAインスツルメント製、2980型)を用いて、昇温10℃/minの条件下でガラス転移温度の測定を行った。測定は、JIS C6481(プリント配線板用銅張積層板試験方法)のDMA法B法に準拠して行った(JIS C6481の5.17.2参照)。
4)吸湿耐熱性
銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去したのちに、50×50mmの試験片を作製し、120℃、1時間乾燥機で乾燥させ、プレッシャー・クッカー試験装置(平山製作所(株)製)を用いて121℃、2atmの条件に5時間放置した後に260℃の半田槽に1分間投入して、デラミネーションが発生するかどうか評価した。
5)ピール強度
銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去したのちに、100mm×10mmの試験片を作製し、ついで、引きはがした銅箔の一端を引っ張り試験機に固定し、銅箔面に垂直になる方向に50mm/分の速度で引っ張り、ピール強度を評価した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】