特許第6044179号(P6044179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044179
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/40 20160101AFI20161206BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20161206BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20161206BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20161206BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20161206BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B60W20/40
   B60W10/02 900
   B60W10/08 900
   B60K6/48ZHV
   B60K6/54
   B60L11/14
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-182244(P2012-182244)
(22)【出願日】2012年8月21日
(65)【公開番号】特開2014-40125(P2014-40125A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】平尾 俊一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 寛康
【審査官】 田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2013/005593(JP,A1)
【文献】 再公表特許第2013/005594(JP,A1)
【文献】 特開2009−208700(JP,A)
【文献】 特開平06−094122(JP,A)
【文献】 再公表特許第2011/070673(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 20/50
B60K 6/20 − 6/547
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力軸にクラッチを介してモータを連結し、そのエンジンまたはモータの動力を同モータの出力軸を介して駆動輪に伝える車両の車両制御装置であって、
前記クラッチを所定の係合力で係合して前記エンジンの動力を前記駆動輪に伝達させて走行するエンジン走行モードから前記クラッチを開放して前記モータの動力のみを前記駆動輪に伝達させて走行するモータ走行モードへの移行後、前記エンジンの回転数が一定値以上の低下率で低下した場合に前記クラッチを前記所定の係合力より少ない係合力で再び係合して前記モータから前記エンジンに動力を伝達する制御手段、
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記エンジンの回転数の低下率が前記一定値以上で、かつ前記エンジンの回転数が設定値以下の場合に、前記クラッチを前記所定の係合力より少ない係合力で係合する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記クラッチを前記所定の係合力より少ない係合力で係合する際に、前記モータの駆動トルクが所定値未満であれば同モータの駆動トルクを増加させる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記クラッチを前記所定の係合力より少ない係合力で係合する際に、前記モータの駆動トルクが前記所定値以上であれば同モータの駆動トルクをそのままの状態に維持する、
ことを特徴とする請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記所定の係合力より少ない係合力で前記クラッチを係合する際、
前記エンジンの回転数の低下率が大きくなるに従って、前記クラッチの係合力が大きくなるようにする、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンおよびモータを動力源とするハイブリッド自動車の車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンおよびモータを動力源とする車両いわゆるハイブリッド自動車は、エンジンの動力のみによるエンジン駆動走行、エンジンの動力とモータの動力によるパラレル駆動走行、モータの動力のみによるモータ駆動走行など、複数の走行パターンを有する。
【0003】
このようなハイブリッド自動車では、パラレル駆動走行からモータ駆動走行へ移行するとき、エンジンとモータとの間のクラッチを解放してエンジンを停止するが、そのエンジン停止の直前にエンジンが振動し、その振動が車体を通して搭乗者に伝わり、搭乗者に不快感を与えることがある。
【0004】
一方、エンジン停止に際してエンジンとアクチュエータ(モータ)との間のクラッチを開放し、その後、アクチュエータの回転数が低下したところでクラッチを係合(接続)してエンジンに負荷を与え、これによりエンジン回転数の減少度合を増やしてエンジン回転数が共振域に残留する時間を短縮し、エンジン振動を抑制するようにした車両が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−204065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、クラッチの係合によりエンジンに負荷を与えてエンジン振動を抑制するものでは、アクチュエータからエンジンに余計な負荷が加わらないよう、アクチュエータの回転数およびその回転数に基づくクラッチの係合タイミングを適切に捕える必要がある。このため、アクチュエータ専用の回転数センサが必要となって部品点数が増加したり、制御が複雑化するなどの問題がある。部品点数の増加はコストの上昇につながる。
【0007】
この発明は、部品点数の増加や制御の複雑化を生じることなく、エンジン停止時の不要な振動を解消できる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の車両制御装置は、エンジンの出力軸にクラッチを介してモータを連結し、そのエンジンまたはモータの動力を同モータの出力軸を介して駆動輪に伝える車両の車両制御装置であって、前記クラッチを所定の係合力で係合して前記エンジンの動力を前記駆動輪に伝達させて走行するエンジン走行モードから前記クラッチを開放して前記モータの動力のみを前記駆動輪に伝達させて走行するモータ走行モードへの移行後、前記エンジンの回転数が一定値以上の低下率で低下した場合に前記クラッチを前記所定の係合力より少ない係合力で再び係合して前記モータから前記エンジンに動力を伝達する制御手段、を備える。
【0009】
請求項2に係る発明の車両制御装置は、請求項1に係る発明に従属するもので、制御手段について限定している。すなわち、制御手段は、前記エンジンの回転数の低下率が前記一定値以上で、かつ前記エンジンの回転数が設定値以下の場合に、前記クラッチを前記所定の係合力より少ない係合力で係合する。
【0010】
請求項3に係る発明の車両制御装置は、請求項1または請求項2に係る発明に従属するもので、制御手段について限定している。すなわち、制御手段は、前記クラッチを前記所定の係合力より少ない係合力で係合する際に、前記モータの駆動トルクが所定値未満であれば同モータの駆動トルクを増加させる。
【0011】
請求項4に係る発明の車両制御装置は、請求項3に係る発明に従属するもので、制御手段について限定している。すなわち、制御手段は、前記クラッチを前記所定の係合力より少ない係合力で係合する際に、前記モータの駆動トルクが前記所定値以上であれば同モータの駆動トルクをそのままの状態に維持する。
【0012】
請求項5に係る発明の車両制御装置は、請求項1乃至請求項4のいずれかに係る発明に従属するもので、制御手段について限定している。すなわち、制御手段は、前記所定の係合力より少ない係合力で前記クラッチを係合する際、前記エンジンの回転数の低下率が大きくなるに従って、前記クラッチの係合力が大きくなるようにする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、部品点数の増加や制御の複雑化を生じることなく、エンジン停止時の不要な振動を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一実施形態の構成を示すブロック図。
図2】同実施形態の制御を示すフローチャート。
図3】同実施形態のエンジン回転数、クラッチの状態、モータの駆動トルク指令値の一例を示すタイムチャート。
図4】同実施形態のエンジン回転数の変動を抑制した状態を示す図。
図5】同実施形態のエンジン回転数、クラッチの状態、モータの駆動トルク指令値の他の例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、エンジン1の出力軸にクラッチ2を介してモータ3の出力軸(回転軸ともいう)が連結され、そのモータ3の出力軸に自動変速機4および差動装置5を介して駆動輪6の車軸7が連結される。エンジン1、クラッチ2、モータ3、および自動変速機4は、いわゆる直列配置の関係にある。
【0016】
クラッチ2は、図示の解放時はエンジン1の出力軸とモータ3の出力軸とを切り離し、係合(接続)時はエンジン1の出力軸とモータ3の出力軸とを結合する。すなわち、開放時は、モータ3の駆動トルクTmのみが自動変速機4に伝わり、モータ3の出力のみによるモータ駆動走行が可能となる(モータ走行モード)。係合時は、エンジン1の駆動トルクTeおよびモータ3の駆動トルクTmが自動変速機4に伝わり、エンジン1の出力のみによるエンジン駆動走行あるいはエンジン1の出力とモータ3の出力によるパラレル駆動走行が可能となる(エンジン走行モード)。クラッチ2を解放するか係合するかは、後述のコントロールユニット50により、車両の走行状況や後述のバッテリ電源40の蓄電量などに合せて適宜に選定される。
【0017】
なお、クラッチ2は、内蔵の油圧ピストンの変位に応じて、最小0%〜最大100%の範囲の任意の係合力(係合量ともいう)で係合することが可能である。最小の係合力0%は開放状態である。係合力が少ないほどトルクの伝達量が少なく、係合力が多いほどトルクの伝達量が多くなる。
【0018】
自動変速機4は、変速機本体10のほかにトルクコンバータ20を有する。トルクコンバータ20は、モータ3の出力軸に連結されるインペラ21、変速機本体10に連結されるタービン22、これらインペラ21とタービン22との間に存する動力伝達用の粘性流体を有し、モータ3から伝わる駆動トルクを増幅して変速機本体10に伝える。
【0019】
バッテリ電源40の直流電圧が電力変換器42のインバータ機能により所定周波数およびその周波数に応じたレベルの交流電圧に変換され、それがモータ3のステータ巻線に印加される。この印加により、モータ3が動作する。車両の空走時や制動時など、駆動輪6の回転が車軸7、差動装置5、自動変速機4を介してモータ3の出力軸に伝わる場合は、モータ3が発電機として機能し、モータ3から交流電圧が出力される。この交流電圧が電力変換器42のコンバータ機能により所定レベルの直流電圧に変換され、それが回生エネルギとしてバッテリ電源40に充電される。
【0020】
一方、コントロールユニット50に、エンジン1、クラッチ2、変速機本体10、電力変換器42、アクセル開度センサ51、車速センサ52、およびクランク角センサ53が接続される。アクセル開度センサ51は、車両のアクセルペダルの開度を検知する。車速センサ52は、車両の走行速度を検知する。クランク角センサ53は、エンジン1のピストンの上下動に連動するクランクの角度を検知する。このクランク角センサ53の検知角度からエンジン1の回転数Neを検出できる。
【0021】
そして、コントロールユニット50は、主要な機能として次の(1)〜(6)の手段を有する。
(1)内部メモリに記憶している目標駆動トルクTt設定用のマップデータをアクセル開度センサ51の検知開度、車速センサ52の検知車速、自動変速機4の変速位置などに基づいて参照することにより、目標駆動トルクTtを設定する設定手段。
【0022】
(2)クラッチ2を所定の係合力(例えば最大の係合力100%)で係合してエンジン1の動力のみを駆動輪6に伝達させて走行するエンジン駆動走行時(エンジン走行モード)、エンジン1の駆動トルクTeが上記設定した目標駆動トルクTtとなるようにエンジン1の出力を制御する第1制御手段。
【0023】
(3)クラッチ2を所定の係合力(例えば最大の係合力100%)で係合してエンジン1の動力およびモータ3の動力を駆動輪6に伝達させて走行するパラレル駆動走行時(エンジン走行モード)、エンジン1の駆動トルクTeおよびモータ3の駆動トルクTmの合計が上記設定した目標駆動トルクTtとなるようにエンジン1の出力および電力変換器42の出力を制御する第2制御手段。
【0024】
(4)クラッチ2の解放(係合力0%)によりエンジン1を切り離してモータ3の動力のみを駆動輪6に伝達させて走行するモータ駆動走行時(モータ走行モード)、モータ3の駆動トルクTmが上記設定した目標駆動トルクTtとなるように電力変換器42の出力を制御する第3制御手段。
【0025】
(5)上記エンジン駆動走行、パラレル駆動走行、モータ駆動走行のいずれかを当該車両の走行状況およびバッテリ電源40の蓄電量などに応じて選択的に設定する第4制御手段。
【0026】
(6)クラッチ2を上記所定の係合力で係合してエンジン1の動力を駆動輪6に伝達させて走行するエンジン走行モードから、クラッチ2を開放してモータ3の動力のみを駆動輪6に伝達させて走行するモータ走行モードへの移行後、エンジン1の回転数(以下、エンジン回転数という)Neが一定値以上の低下率θeで低下した場合にクラッチ2を上記所定の係合力より少ない係合力で再び係合してモータ3からエンジン1に動力を伝達する第5制御手段。具体的には、パラレル駆動走行からモータ駆動走行への移行時、エンジン1の回転数Neが一定値以上の低下率θeで低下した場合に、クラッチ2を最大の係合力100%より少ない係合力たとえば略半の係合力50%で係合する。エンジン回転数Neは、クランク角センサ53の検知角度から検出する。回転数Neの低下率θeとは、単位時間Δt当たりの回転数低下量ΔNeのことである(θe=ΔNe/Δt)。
【0027】
つぎに、図2のフローチャートおよび図3図4図5のタイムチャートを参照しながら、コントロールユニット50が実行する制御について説明する。
エンジン1の出力およびモニターの出力により走行するパラレル駆動走行から、モータ3の出力により走行するモータ駆動走行への移行時(ステップ101のYES)、つまりクラッチ2を開放し且つエンジン1を停止してモータ3の出力のみで走行するとき、エンジン回転数Neの低下率θeを検出する(ステップ102)。
【0028】
この移行時、エンジン1の停止制御として、エンジン回転数Neが徐々に低下していくように、エンジン1のスロットル弁開度を徐々に閉じていく制御を実行するが、その実行と並行して実際のエンジン回転数Neの低下率θeを検出する。
【0029】
検出した低下率θeが一定値未満のうちは(ステップ103のNO)、低下率θeの検出を繰り返す(ステップ102)。
【0030】
エンジン回転数Neの低下が進むと、たとえエンジン回転数Neが徐々に低下していくようにスロットル弁開度を制御していても、エンジン回転数Neの変動が徐々に大きくなる。
【0031】
検出した低下率θeが一定値以上のとき(ステップ103のYES)、その時点のエンジン回転数Neと設定値Ne2たとえば300rpmとを比較する(ステップ104)。エンジン回転数Neが設定値Ne2より高ければ(ステップ104のNO)、低下率θeの検出を繰り返す(ステップ102)。
【0032】
検出した低下率θeが一定値以上のとき(ステップ103のYES)、その時点のエンジン回転数Neが設定値Ne2以下であれば(ステップ104のYES)、その時点のエンジン回転数Neが設定値Ne1(<Ne2)たとえば100rpm以上であることを条件に(ステップ105のYES)、モータ3の駆動トルクTmと設定値Tmaとを比較する(ステップ106)。
【0033】
エンジン回転数Neが設定値Ne2以下かつ設定値Ne1以上の低回転数領域は、低下率θeが一定値以上であることと併せて、エンジン回転数Neの変動が徐々に大きくなってエンジン1に振動が生じ易くなる領域である。
【0034】
モータ3の駆動トルクTmが設定値Tma以上であれば(ステップ106のYES)、その駆動トルクTmに対する指令値をそのまま維持した状態で、エンジン回転数Neの低下に合せて、クラッチ2をt1時間だけ係合力50%で係合する(ステップ107)。係合力50%の係合とは、いわゆる半クラッチ接続のことである。
【0035】
こうして、クラッチ2を半クラッチ接続することにより、モータ3の駆動トルクTmの一部がエンジン1の出力軸に伝わる。これにより、図4に示すように、低回転数領域におけるエンジン回転数Neの大きな変動を抑制することができる。エンジン回転数Neの大きな変動を抑制できることにより、エンジン1の不要な振動を解消できる。したがって、不要なエンジン振動が車体を通して搭乗者に伝わって搭乗者に不快感を与えるといった不具合を回避できる。
【0036】
この場合、駆動トルクTmが設定値Tma以上なので、クラッチ2が半クラッチ接続となって駆動トルクTmの一部がエンジン1の出力軸に伝わっても、走行に十分な実駆動トルクを確保することができる。これにより、減速感のない安定したモータ駆動走行を続けることができる。
【0037】
クラッチ2の半クラッチ接続によって駆動トルクTmの一部のみをエンジン1側に伝えるので、エンジン1に余計な負荷が加わることもない。エンジン1に余計な負荷が加わった場合には、エンジン回転数Neが急降下して大きなエンジン振動を生じる可能性があるが、そのような不具合も回避できる。
【0038】
エンジン回転数Neの検出はもともとエンジン制御に必須のものであり、モータ3の駆動トルクTmについてもコントロールユニット50が自身の制御から把握できるものであるから、回転数センサやトルクセンサなど専用部品の増加やそれに伴うコストの上昇を避けることができる。
【0039】
また、クラッチ2を係合力100%で係合した場合には、駆動トルクTmの全てがエンジン1に伝わってしまうので、過剰なトルク伝達とならないようクラッチ2の係合タイミングを適切に制御する配慮が必要となるが、クラッチ2を半クラッチ接続してわずかなトルクをエンジン1に伝えるだけなので、過剰なトルクがエンジン1に伝わることはなく、その点での制御の複雑化を回避することができる。
【0040】
一方、低下率θeが一定値以上で(ステップ103のYES)、かつエンジン回転数Neが設定値Ne2以下,設定値Ne1以上の低回転数領域に入ったとき、(ステップ104のYES,ステップ105のYES)、モータ3の駆動トルクTmが設定値Tma未満であれば(ステップ106のNO)、図5に示すように、エンジン回転数Neの低下に合せて、駆動トルクTmに対する指令値をt1時間だけΔTm増加させる(ステップ108)。ΔTmは、現状の駆動トルクTmと設定値Tmaとの差分に相当する値である。そして、エンジン回転数Neの低下に合せて、クラッチ2をt1時間だけ係合力50%で係合する(ステップ107)。
【0041】
このように、駆動トルクTmが設定値Tma未満の場合は駆動トルクTmを増加させつつクラッチ2を半クラッチ接続することにより、たとえ駆動トルクTmの一部がエンジン1の出力軸に伝わっても、走行に十分な実駆動トルクを確保することができる。これにより、減速感のない安定したモータ駆動走行を続けることができる。
【0042】
減速感のない安定したモータ駆動走行を続けながら、図4に示すように、低回転数領域におけるエンジン回転数Neの大きな変動を抑制することができる。ひいては、エンジン1の不要な振動を解消できる。
【0043】
エンジン回転数Neが設定値Ne1未満に低下すると(ステップ105のNO)、制御を終了する。エンジン回転数Neは零となり、エンジン1が完全に停止する。
【0044】
なお、上記実施形態では、エンジン回転数Neの低下率θeが一定値以上で、かつエンジン回転数Neが低回転数領域に入っていることを条件に、クラッチ2を半クラッチ接続する構成としたが、エンジン回転数Neの低下率θeが一定値以上であることのみ条件としてクラッチ2を半クラッチ接続する構成としてもよい。こうすることにより、エンジン回転数Neの変動を低回転数領域以外でも抑制することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、クラッチ2の半クラッチ接続として係合力50%の係合を行ったが、その半クラッチ接続の実際の係合力については、クラッチ2の容量、モータ3の定格出力、エンジン1の排気量や気筒数などに応じて適宜に選定可能である。
【0046】
半クラッチ接続の実際の係合力については、エンジン回転数Neの低下率θaに比例する値を設定してもよい。すなわち、エンジン回転数Neの低下率θaが小さい場合は、エンジン回転数Neの変動も小さいので、クラッチ2の係合力を少なくしてエンジン1へのトルク伝達量を少なくする。エンジン回転数Neの低下率θaが大きい場合は、エンジン回転数Neの変動も大きいので、クラッチ2の係合力を多くしてエンジン1へのトルク伝達量を多くする。このように、エンジン回転数Neの低下率θaが大きくなるに従ってクラッチ2の係合力が大きくなるよう、クラッチ2の係合力を可変とすることにより、エンジン回転数Neの実際の変動の大きさに追従した適切な変動抑制が可能となる。
【0047】
クラッチ2を半クラッチ接続するt1時間についても、エンジン回転数Neの低下率θeに比例する値を可変設定してもよい。
【0048】
また、モータ3の駆動トルクTmが設定値Tma未満の場合に、駆動トルクTmをΔTm増加させるとともに、そのΔTmとして現状の駆動トルクTmと設定値Tmaとの差分に相当する値を設定したが、ΔTmについては、エンジン回転数Neの低下率θeに比例する値を可変設定してもよい。
【0049】
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…エンジン、2…クラッチ、3…モータ、4…自動変速機、5…差動装置、6…駆動輪、7…車軸、10…変速機本体、20…トルクコンバータ、21…インペラ、22…タービン、40…バッテリ電源、42…電力変換器、51…アクセル開度センサ、52…車速センサ、53…クランク角センサ
図1
図2
図3
図4
図5