(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキは、その溶剤タイプと比較し、乾燥性の速さから高速印字型のサイネージプリンタに、または基材密着性に優れる面から、多種基材対応のフラットベット型プリンタに搭載され、用途に応じた配合の開発が進められてきた。
【0003】
これらプリンタは、ヘッドをスキャンさせることで、大型化、厚膜化、高濃度化に対応させることができた。近年、ヘッドの技術進展により、高周波数で微小の液滴を射出することのできるヘッド技術が確立されてきた。この技術の実現により、生産性、画質の面で劣っていたインクジェット印刷が、デジタル化のメリットを併せて既存の印刷方式を代替する可能性が高まった。さらには少なくとも2個以上インクジェットヘッドで吐出された後、それらを同時に硬化させる1Passタイプのプリンターの登場により、装置の低コスト化、高生産性が可能となり、さらに既存の印刷方式の代替を加速させている。
【0004】
しかし、この技術革新の実現には、従来にも増して高周波数適性に優れ、かつ低粘度、高感度のインキの開発が必要であった。低粘度化は、着弾精度の向上に寄与し、高精細な画質を得るためにインキに求められる仕様である。それに加え、インクジェット印刷を従来のオフセット印刷の代替として使用するにあたり、色再現性の向上も求められている。しかしながら、特に活性エネルギー線硬化型インクジェットインキにおいては、画像の色再現性、硬化性、吐出安定性などの要求される全ての特性を満足することは非常に難しい。
広い色再現性を得ようとして、インク組成物液滴付与量を増やしたりした場合は、硬化膜の割れによる画像の乱れや定着性の悪化が懸念される。また、広い色再現性を得ようとして、顔料濃度を上げてインク組成物を作製した場合、インク組成物が高粘度になったり、また、インク組成物中の粗大粒子の濃度が高くなったりして、長時間の吐出安定性が問題となる場合がある。つまり、広い色再現性を得るためには少ない顔料濃度でオフセット印刷レベルの色再現性を発現しうる顔料の選定が重要なポイントとなるのである。
【0005】
文献1では、通常使用されるマゼンタ、イエロー、シアンインクに加えて、水溶性オレンジ色素及び/又は緑色素及び/又はバイオレット色素を含むオレンジインク及び/又は緑インク及び/又はバイオレットインクを含んで成るカラー印刷用カラーインクジェットインクセットにより従来技術のインクセットよりも優れた色域を有する画像を生成できるインクセットを提供する方法が提案されている。しかし、インク色数の増加は記録ヘッド数の増加を意味するため、装置価格や装置サイズを増大させる要因になってしまう。従って、インク色数をむやみに増加させることは現実的には困難であり、そのため、取得できる画像品質にも限界が生じていた。
【0006】
文献2では、広い色再現性を有する顔料としてC.I.Pigment Yellow185を使用したイエロートナーを提供する方法が提案されている。しかし、この分散状態では顔料が粗大すぎるためインクジェットインキとして使用した場合はインクジェットヘッドに顔料粒子が詰まってしまい、安定吐出することができなかった。
【0007】
また、文献3、4、5ではイソインドリン系顔料、中でもC.I.Pigment Yellow185を使用した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキが提案されている。しかし、このイソインドリン系顔料は色再現性が非常に広く少ないインク色数で広域な色再現が可能であるものの、この顔料の特性から特にモノマー中では非常に分散が難しく、さらには顔料中のイオン成分の影響によりヘッド内でのエネルギー伝搬が悪くなってしまうことから、インクジェットインキとして最も重要な吐出安定性に難がある。中でも高周波数、高射出速度にした際の吐出安定性が悪いため、1Pass硬化型のインキとして使用するには生産性を下げざるを得なかった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1Pass硬化型インクジェット印刷法)
本発明の1Pass硬化型インクジェット印刷法とは、印刷したいメディアに対して1回で印字(印刷)を完成させる印刷方法であり、印刷スピードが要求される業務用印刷に向いている。近年、従来のオフセット印刷の代替としてインクジェット印刷を使用するにあたり、生産性は非常に重要な要素であり、1Pass硬化型インクジェット印刷は期待されている。さらには1Pass硬化型インクジェット印刷の中でも、25m/M、さらには50m/Mなどの高速印刷が可能となれば、オフセット印刷代替としての使用拡大へ繋がると言われている。
【0015】
(活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物)
本発明のインクジェットインキ組成物は、イソインドリン系顔料、顔料分散剤、モノマーを含有することを特徴とする。
本発明でいう活性エネルギー線とは、電子線、α線、γ線、X線、中性子線または、紫外線のごとき、電離放射線や光などを総称するものである。中でも人体への危険性が少なく、取り扱いが容易で、工業的にもその利用が普及している電子線や紫外線が好ましい。
【0016】
本発明のインクジェットインキ組成物は、モノマー、顔料分散剤と共に、顔料をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造された顔料分散体にモノマー、その他添加剤を添加して作製される。この方法により、通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、このため、過剰な分散エネルギーがかからず、多大な分散時間を必要としないため、インク成分の分散時の変質を招きにくく、安定性に優れたインクが調製される。顔料分散体作製時の条件としては、微小ヒ゛ース゛を使用することが好ましく、具体的には0.1mm〜2mmの微小ヒ゛ース゛を用いることが低粘度で安定な分散体を作製するために好ましく、さらには0.1mm〜1mmの微小ヒ゛ース゛を用いることが生産性向上と吐出性良好な分散体を作製するために好ましい。インク組成物は分散後、孔径3μm以下さらには、1μm以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0017】
(イソインドリン系顔料)
本発明に用いるイソインドリン系顔料としては、イソインドリン構造を有する顔料であれば、特に制限はないが、イソインドリン系イエロー顔料であることが好ましい。イソインドリン系イエロー顔料としては、C.I.Pi gment Yellow 139やC.I.Pigment Yellow 185などが挙げられる。中でも、色再現域が広く着色力の高いC.I.Pigment Yellow 185を用いることが好ましい。
従来のC.I.Pigment Yellow 185は、特にモノマー中では非常に分散が難しく、インクジェットインキとして最も重要な吐出安定性に難がある。また顔料の比電気伝導度がロットごとにばらつきが大きく、生産ロットによっては同一処方でインキを作製しても吐出がばらついてしまい印字品質がまちまちになってしまうという問題を抱えている。中でも高周波数、高射出速度にした際の吐出安定性が悪いため、1Pass硬化型のインキとして使用するには生産性を下げざるを得なかった。
【0018】
前記イソインドリン系顔料はDIN ISO 787/14で測定した比電気伝導度が150μS/cm以下であることが好ましく、比電気伝導度が100μS/cm以下であることがより好ましい。比電気伝導度が前述の範囲であれば、モノマー中での顔料分散が安定化し、さらにはヘッド内でのエネルギー伝搬が効率よく行われることから、インキの吐出が安定化し、長期的に安定した印字品質を保つことができる。また高周波数、高射出速度にした際の吐出安定性も良好となるため、生産性を従来のC.I..Pigment Yellow 185よりもあげることが可能となり、生産性の高い1Pass硬化型のインキとして使用することができる。
【0019】
DIN ISO 787/14に基づいた本発明で述べている比電気伝導度の測定法について示す。ポリプロピレン共重合体でできた50mlの三角フラスコないしは試験管中に顔料1.5g/変性エタノール2.0ml/2度蒸留した水26.5mlを入れる。口に蓋をし、ウォーターバスで60℃で60分加熱する。その後フィルターろ過し、常温まで覚ました後、電気伝導度を測定する。同様の手順で顔料抜きのブランク測定を行う。先に測定した顔料ありの値からブランク値を差し引いて電気伝導度を算出する。
【0020】
前記イソインドリン系顔料は十分な彩度が得られること、1Pass硬化にて十分な硬化性が得られること、粘度がインクジェット吐出適正範囲内にあること等の観点から、インク組成物の総重量に対して、0.1重量%以上15重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上10重量%以下であることがより好ましく、0.8重量%以上6重量%以下であることが特に好ましい。
【0021】
(顔料分散剤)
本発明に用いる顔料分散剤としては、大きく分けて顔料分散助剤と樹脂型顔料分散剤があげられる。
【0022】
本発明に用いる顔料分散助剤は、有機顔料を母体骨格とし側鎖にスルホン酸、スルホンアミド基、アミノメチル基、フタルイミドメチル基等の置換基を導入して得られる化合物、ないしは金属塩化合物である。
【0023】
中でも骨格中にトリアジン環を含有する顔料分散助剤、ないしはスルホン酸アルミニウム塩を含有する顔料分散助剤を使用すると、本発明に使用する顔料に対して分散が非常に安定となり、かつ20kHz以上の高周波数領域でも安定した吐出性を示すため高精度・高生産性を実現することができることから好ましい。
【0024】
顔料分散助剤の添加量は、所望の安定性を確保する上で任意に選択される。インキの流動特性に優れるのは、顔料100部に対し顔料分散助剤の有効成分が3%〜12%の場合であった。この範囲内ではインキの分散安定性が良好となり、長期経時後も初期と同等の品質を示すため、好適に用いることができる。
【0025】
本発明に用いる樹脂型顔料分散剤の主鎖骨格は、特に制限はないが、ポリウレタン骨格、ポリアクリル骨格、ポリエステル骨格、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリウレア骨格等が挙げられ、インク組成物の保存安定性の点で、ポリウレタン骨格、ポリアクリル骨格、ポリエステル骨格が好ましい。また、高分子分散剤の構造に関しても特に制限はないが、ランダム構造、ブロック構造、くし型構造、星型構造等が挙げられ、同様に保存安定性の点で、ブロック構造又はくし型構造が好ましい。
【0026】
樹脂型顔料分散剤の具体例としては、ビックケミー社より市販されている湿潤分散剤DISPER BYKシリーズの101、102、103、106、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145、161、162、163、164、166、167、168、170、171、174、180、182、183、184、185、2000、2001、2020、2050、2070、2096、2150、BYKJETシリーズの9130、9131、9132、9133、9150、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社より市販されているEFKAシリーズの4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4340、4400、4401、4402、4403、4406、4800、5010、5044、5054、5055、5063、5064、5065、5066、5070、5244、
ルーブリゾール社より市販されているSolsperseシリーズの3000、5000、11200、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000SC、24000GR、26000、28000、31845、32000、32500、32550、32600、33000、34750、35100、35200、36000、36600、37500、38500、39000、41000、53000、53095、54000、55000、56000、71000、76400、76500、J100、楠本化成(株)より市販されているDISPARLONシリーズの1210、1220、1831、1850、1860、2100、2150、2200、7004、KS−260、KS−273N、KS−860、KS−873N、PW−36、DN−900、DA−234、DA−325、DA−375、DA−550、DA−1200、DA−1401、DA−7301、味の素ファインテクノ(株)より市販されているアジスパーシリーズのPB−711、PB−821、PB−822、PB−824、PB−827、PB−711、PN−411、PA−111、エアープロダクツ社より市販されているサーフィノールシリーズの104A、104C、104E、104H、104S、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、420、440、DF110D、DF110L、DF37、DF58、DF75、DF210、CT111、CT121、CT131、CT136、GA、TG、TGE、日信化学工業(株)より市販されているオルフィンシリーズのSTG、E1004、サンノプコ(株)製SNスパースシリーズの70、2120、2190、(株)ADEKAより市販されているアデカコール及びアデカトールシリーズ、三洋化成工業(株)より市販されているサンノニックシリーズ、ナロアクティーCLシリーズ、エマルミンシリーズ、ニューポールPEシリーズ、イオネットMシリーズ、イオネットDシリーズ、イオネットSシリーズ、イオネットTシリーズ、サンセパラー100、共栄社化学社より市販されているフローノンSH−290、SP−1000、ポリフローNo.50E、No.300、日光ケミカル社より市販されているニッコール T106、MYS−IEX、Hexagline 4−0が挙げられる。
中でも、ブロック構造又はくし型構造の塩基性分散樹脂が、本発明の顔料の分散を安定化し吐出安定性が良好になるため、好ましい。
さらには、重量平均分子量Mw20000以下のアクリル樹脂は、請求項1に記載の顔料と組み合わせると高周波数特性に優れ、かつ保存安定性良好な顔料分散体が得られるため、より好ましい。
【0027】
樹脂型顔料分散剤の添加量は、所望の安定性を確保する上で任意に選択される。インキの流動特性に優れるのは、顔料100部に対し樹脂型顔料分散剤の有効成分が20%〜150%の場合であった。この範囲内ではインキの分散安定性が良好となり、長期経時後も初期と同等の品質を示すため、好適に用いることができる。さらに顔料100部に対し樹脂型顔料分散剤の有効成分が30%〜100%の場合、分散が非常に安定となり、かつ20kHz以上の高周波数領域でも安定した吐出性を示すため高精度・高生産性を実現することができることからより好ましい。
【0028】
(モノマー)
本発明に用いるモノマーとしては、目的を妨げない限り、自由に選択することができる。本発明で定義するモノマーとは、活性エネルギー線が照射された後、直接、または光重合開始剤を介して、重合反応を起こす化合物を示す。具体的には、単官能アクリルモノマー、2官能アクリルモノマー、3官能以上のアクリルモノマーなどのアクリルモノマー、またはビニルモノマー、ビニルエーテルモノマー、ビニルエステルモノマー、アクリルとビニルを分子内に包含する異種モノマー、アリルエーテルモノマー、アリルエステルモノマーなどが挙げられる。中でもEOまたはPOを主骨格としたモノマーを用いることが本発明の顔料とあわせて使用する際に良好な硬化性を示し、1Passで硬化させることができるため好ましい。またこれらEOまたはPOを主骨格としたモノマーを使用すると、塗膜としての溶剤耐性も向上することも明らかになった。本発明におけるEOまたはPOを主骨格としたモノマーとは、反応性基である、アクリロイル基や、ビニル基、ビニルエーテル基を除いた部分にEOまたはPO基を含有するモノマーを示す。さらにVEEA(アクリル酸2−(2−
ビニロキシエトキシ)エチル)、DPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート)、DVE−3(トリエチレングリコールジビニルエーテル)から選択される2官能モノマーは、本発明の顔料とあわせて使用すると特異的に硬化性が良くなり、1Passでの印刷速度をあげて生産性を向上させることができるのに加え、比較的低粘度であるため吐出安定性にも優れ、高速印刷でも安定吐出ができるため最も好ましい。
【0029】
また本発明では、上記モノマーに加えてN−ビニルカプロラクタムを添加することにより、さらに硬化性をあげ高速印字対応を可能にすることができる。N−ビニルカプロラクタムは反応性が非常に高いためインキ中に多量に添加するとインキの保存安定性が悪化し連続吐出安定性が悪くなることから、N−ビニルカプロラクタムの添加量はインキ中15重量%以下であることが好ましい。
【0030】
これらモノマーは一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0031】
また上記モノマーは、インキ中40〜90重量%で使用されるのが、上記硬化性、吐出安定性に加え、広い色再現性を両立することができるため好ましい。
【0032】
本発明のインク組成物には、上記モノマー以外にもオリゴマー、プレポリマーを使用できる。
【0033】
(添加剤)
本発明に用いる添加剤としては、開始剤、禁止剤、表面張力調整剤、有機溶剤などがあげられる。
【0034】
(開始剤)
本発明の開始剤とは、光照射により重合反応を開始するラジカル活性種を発生させる化合物全般を示し、光ラジカル重合開始剤に加え、増感剤も含まれる。開始剤としては、硬化速度、硬化塗膜物性、着色材料により自由に選択することができる。
【0035】
本発明で使用するイソインドリン顔料を用いる際には、開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、[4−[4−メチルフェニル]チオ]フェニル〕フェニルメタノン、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、4,4’-ビス‐(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンを用いることで、良好な硬化性を示す。より好ましくは、上記開始剤を2種類以上併用した際に、さらに良好な硬化性を示す。
【0036】
中でも本発明で使用するイソインドリン顔料と上記EOまたはPOを主骨格としたモノマーとを併用した際には、アシルフォスフィンオキサイド系の開始剤を含有することにより高速硬化が可能となり、生産性の点からより好ましい。
【0037】
なお本発明で使用するイソインドリン顔料を使用した場合、アミン化合物を添加することにより保存安定性が良化する。中でも4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどの増感剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤のラジカル発生効率も同時に向上させることができるためより好ましい。
【0038】
上記開始剤は、インキ中2〜25重量%で使用されるのが好ましい。2〜25重量%である場合、優れた硬化速度と色再現を両立することができる。
【0039】
(禁止剤)
本発明では、インキの経時での粘度安定性、経時後の吐出性、記録装置内での機上の粘度安定性を高めるため、禁止剤を使用することが好ましい。禁止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、フェノチアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物が特に好適に使用される。具体的に例示すると、ヒンダードフェノール系化合物として、BASF社製「IRGANOX 1010、1010FF、1035、1035FF、1076、1076FD、1076DWJ、1098、1135、1330、245、245FF、245DWJ、259、3114、565、565DD、295」、精工化学社「BHTスワノックス」「ノンフレックス アルバ、MBP、EBP、CBP、BB」「TBH」、ADEKA社製「AO−20、30、50、50F、70、80、330」、本州化学社製「H−BHT」、エーピーアイ社「ヨシノックス BB、425、930」、フェノチアジン系化合物として、精工化学社製「フェノチアジン」、堺化学工業社製「フェノチアジン」「2−メトキシフェノチアジン」、「2−シアノフェノチアジン」、ヒンダードアミン系化合物として、BASF社製「IRGANOX 5067」「TINUVIN 144、765、770DF、622LD」、精工化学社「ノンフレックス H、F、OD−3、DCD、LAS−P」「ステアラー STAR」「ジフェニルアミン」「4−アミノジフェニルアミン」「4−オキシジフェニルアミン」、エボニックデグサ社製「HO−TEMPO」、日立化成社「ファンクリル 711MM、712HM」、リン系化合物として、BASF社製「トリフェニルホスフィン」「IRGAFOS 168、168FF」、精工化学社「ノンフレックス TNP」、その他の化合物として、BASF社製「IRGASTAB UV−10、22」、精工化学社製「ハイドロキノン」「メトキノン」「トルキノン」「MH」「PBQ」「TBQ」「2,5−ジフェニルーp−ベンゾキノン」、和光純薬社「Q−1300、1301」、RAHN社製「GENORAD 16、18、20」を挙げることができる。このうち、インキへの溶解性や、禁止剤自身の色味の点で、ヒンダードフェノール系化合物として精工化学社「BHTスワノックス」「ノンフレックス アルバ」、本州化学社製「H−BHT」、フェノチアジン系化合物として精工化学社製「フェノチアジン」、堺化学工業社製「フェノチアジン」、ヒンダードアミン系化合物としてエボニックデグサ社製「HO−TEMPO」、リン系化合物として、BASF社製「トリフェニルホスフィン」が好適に選択される。中でも本発明のイソインドリン顔料は顔料としてのpHが低いため、一部のカチオン重合性モノマーが重合反応をおこし保存安定性が極端に悪くなることがあるため、酸化防止剤でもあるヒンダードフェノール系化合物が最も好ましい。
【0040】
これら禁止剤は一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0041】
上記禁止剤は、インキ中0.1〜2重量%で使用されるのが、インキ安定性と1Passでの硬化性を両立させるために好ましい。
【0042】
(表面張力調整剤)
本発明では、基材への濡れ広がり性を向上させるために表面張力調整剤を加えることが好ましい。本発明における表面調整剤とは、インキに1重量%添加した際に、インキ表面張力を0.5mN/m以上下げる樹脂のことである。
【0043】
表面張力調整剤の具体例としては、ビックケミー社製「BYK−350、352、354、355、358N、361N、381N、381、392、BYK−300、302、306、307、310、315、320、322、323、325、330、331、333、337、340、344、348、370、375、377、378、355、356、357、390、UV3500、UV3510、UV3570」テゴケミー社製「Tegorad−2100,2200、2250、2500、2700」エボニックデグサ社製「TEGO(登録商標) Glide 100、110、130、403、406、410、411、415、432、435、440、450、482」等が挙げられるがこれに限定されるものではない。これら表面張力調整剤は、一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。二種類以上を併用することにより、インキを経時促進させた場合でも良好な相溶性を保つため十分にインキが基材上で広がり、本発明の顔料の特徴である広い色再現性を保つことができるため好ましい。
【0044】
本発明に使用する表面張力調整剤は、シリコーン系であることが、相溶性によるはじき防止の点から好ましい。
【0045】
表面張力調整剤はインキ中に、0.01〜6重量%含まれることが好ましい。0.01重量%未満では濡れ広がりが悪くなり、6重量%より多くても、表面張力調整剤がインキ界面に配向しきれず、一定の効果までしか発現しないどころか、硬化を阻害してしまう。
【0046】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、ジエチルジグリコール、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、エチレングリコールプロピオネートブチレート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコールアセテートジブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールプロピオネートブチレート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートジブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールプロピオネートブチレート、プロピレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールアセテートジブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールプロピオネートブチレート、ジプロピレングリコールジプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートジブチレート等のグリコールジアセテート類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類があげられる。この中でも、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
上記有機溶剤の多量の配合は硬化性が阻害されるため、添加量はインキに対し10重量%以下が好ましい。さらに好ましくは、7重量%以下が好ましい。
【0047】
これら有機溶剤は一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0048】
また本発明で用いられるインキには、上記以外にも既存の消泡剤、流動性改質剤、蛍光増白剤、酸化防止剤などを所望の品質を満たす限り用いることができる。
【0049】
本発明のインク組成物中の水分量は5重量%以下であることが好ましい。さらには1重量%以下であることがより好ましい。水分を多く含むと本発明のイソインドリン顔料の分散性が悪くなり、インキの経時での吐出安定性が悪化してしまうのと同時に、顔料の粗大粒子が増加することにより彩度が低下し、イソインドリンの特徴である色再現性が損なわれてしまう。
【0050】
本発明のインキ組成物は、25℃での粘度が5〜14mPa secであることが好ましい。5mPa sec未満では、低粘度すぎるため吐出が安定せず、14mPa secを超えるインキ粘度では、粘度が高すぎるため吐出精度が低下し、画質が著しく低下してしまう。さらに高速・高周波数で吐出するためには8〜12 mPa secが好ましい。さらに一定の液滴量を保ち高精細な画像を描くためには9〜11 mPa secが最も好ましい。
【0051】
[実施例]
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す。
【0052】
(イソインドリン系顔料の製造)
本発明のイソインドリン系顔料はDE−A−2914086で実施されている既存の製造方法に基づき、合成した。各顔料の比電気伝導度は、半縮合体(Halbkondensat)の反応媒体の種類、結晶化工程で使用する媒体の種類、熱処理の際の温度や時間などをコントロールして表2のイソインドリン系顔料A〜Fを作成した。
【0053】
(顔料分散助剤の製造)
本発明の顔料分散助剤は特許第4407128で実施されている既存の製造方法に基づき、表1記載の顔料分散助剤A、Bを合成した。また特開昭56−81371号公報で実施されている既存の製造方法に基づき、表1記載の顔料分散助剤Cを合成した。
また、特開2010−180376公報で実施されている既存の製造方法に基づき、顔料分散助剤D(特開2010−180376公報では顔料誘導体Aと記されている)を合成した。
【0056】
(顔料分散体の作成)
表2記載の原料を配合量の通りに混合したのち、マイクロビーズ型分散機(DCPミル)にて1時間分散し、顔料分散物1〜19を得た。分散にはZrビーズの0.5mm径タイプを体積充填率75%にて実施した。
【0057】
(インキの作成)
表3記載の配合量の通りに、各顔料分散物にモノマーをゆっくりと添加し撹拌した。その後、開始剤、禁止剤、添加剤をそれぞれ添加し、シェーカーにて6時間振盪し溶解した。得られた液体をポア径0.5ミクロンのPTFEフィルターで濾過を行い、粗大粒子を除去し、評価インキを作成した。
<原料説明>
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート
VEEA:アクリル酸2−(2−
ビニロキシエトキシ)エチル
TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート
アロニックスM−120:2−エチルヘキシルEO変性(n≒2)アクリレート
PEA:フェノキシエチルアクリレート
DVE-3:トリエチレングリコールジビニルエーテル
LA:ラウリルアクリレート
Lucirin TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド
Irg819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド
Irg907:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン-1-オン
KAYACURE BMS:[4−[(4−メチルフェニル)チオ]フェニル]フェニルメタノン
EPA:4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル
EAB:4,4'−ビス‐(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
UV3510:BYK−UV3510
Tego 450:Tego Glide 450
【0058】
(粘度)
作成したインキの粘度は、東機産業社製E型粘度計を用いた。測定条件は、25℃の循環チラー環境にて、適宜測定に適する回転数に合わせた後、3分後の測定値を粘度として用いた。
◎:9≦粘度≦11mPa・s
○:8≦粘度<9、11<粘度≦12mPa・s
×:8>粘度、12<粘度
(インキ安定性)
60℃1週間で促進経時後の粘度変化率を確認した。粘度変化率とは、{(60℃1週間保管後の粘度値)−(初期粘度値)}/(初期粘度値)×100であり、インキの保存安定性の目安となる。○以上をインキ安定性実用レベルと判断した。
◎:粘度変化率が5%未満。
○:5%以上10%未満。
×:10%以上
【0059】
(吐出性)
京セラ社製(KJ4A)ヘッドを用いインキが吐出された様子をストロボ撮影で観察することにより、周波数特性を評価した。波形はFire1モードを選択した。吐出時のヘッド温度は一律40℃に設定した。
評価のポイントは、周波数を5、20KHzと変えた場合の吐出開始時と10分連続吐出後の液滴の分裂の様子を観察した。
吐出後1mm時点と、2mm時点の液滴の様子を観察した。液滴分裂の発生がなく、かつ安定であることが好ましい。○以上を吐出性実用レベルと判断した。
◎:2mmまで液滴に分裂なく、連続している。安定である。
○:1mmで分裂しているが、2mmで液滴が合一している。または破断の様子が初期から大きく変化している。
×:1mmで分裂しており、2mmでも液滴は合一しない。初期、または10分後に吐出不良が発生している。
【0060】
(連続吐出性)
上記京セラ社製(KJ4A)ヘッドを用い、吐出性同様に20KHzで吐出を行い液滴の分裂の様子を観察した。吐出方法は12時間連続して吐出し、その後12時間停止という繰り返しを1週間続けて行った。吐出時のヘッド温度は一律40℃に設定した。
評価はその後再度20kHzで吐出を開始し、吐出開始時と10分連続吐出後の液滴の分裂の様子を観察した。
吐出後1mm時点と、2mm時点の液滴の様子を観察した。液滴分裂の発生がなく、かつ安定であることが好ましい。○以上を吐出性実用レベルと判断した。
◎:2mmまで液滴に分裂なく、連続している。安定である。
○:1mmで分裂しているが、2mmで液滴が合一している。または破断の様子が初期から大きく変化している。
×:1mmで分裂しており、2mmでも液滴は合一しない。初期、または10分後に吐出不良が発生している。
【0061】
(硬化性)
これら調整されたインキは、京セラ社製(KJ4A)ヘッドを搭載した吐出機構、着弾した基材を所望の速度で搬送するコンベア部で搬送する機構、続けてUVランプで照射される機構を有するシングルパス式のインクジェットプリンター(トライテック社製)を用いて、インキ液滴量14plで印字評価を行った。UVランプは、ノードソン社製、140W/cmのメタルハライドランプで評価した。吐出時のヘッド温度は一律40℃に設定した。印字基材はOKトップコートN(王子製紙社製)を用いた。得られた印字物から、硬化性を評価した。
コンベア速度を50m/minにしたときの硬化性を指触法により判断した。○以上を硬化性実用レベルと判断した。
◎:強く擦っても、にじみが発生しない
○:硬化はしているが、強くこすると若干にじむ
×:硬化していない。(指にインキが付着する)
【0062】
評価結果を表3に示した。実施例1〜26までは、インキ安定性、吐出性(5kHz)、吐出性(20kHz)、連続吐出性、硬化性ともに良好であった。中でも実施例1〜6、10、11、14、18〜23では、全ての項目で非常に良好な物性を示し、高周波数、高射出速度で印字した場合の射出特性に優れ、且つ高い色再現性と高硬化性を両立させた、1Pass硬化型のインキとなった。一方、比較例1、2では、比電気伝導度が150μSより大きいPY185を用いたが、インキ安定性、吐出性(20kHz)、連続吐出性、硬化性の品質が悪く、1Pass高速硬化に適したインキはできなかった。