(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物の製造方法であって、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Aは
炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基を表し、
Rfは−(CF
2)
a−(OC
2F
4)
b−(OCF
2)
c−を表し、a、bおよびcはそれぞれ独立して0または1以上の整数であって、bおよびcの和は少なくとも1であり、a、b、cを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、
Zは−O(CF
2)
e−を表し、eは1以上の整数であり、
X
2は塩素原子、ヨウ素原子または臭素原子を表す。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有化合物を、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、Yは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、
fは0、1または2であり、
R
1は水酸基または加水分解可能な基を表し、
R
2は水素原子または炭素数1〜22のアルキル基を表し、
nは1以上3以下の整数である。)
で表される反応性二重結合含有シラン化合物と反応させることにより、下記一般式(3)
【化3】
(式中、A、Rf、Z、Y、f、R
1、R
2およびnは上記の通りであり、
X
1は水素原子、塩素原子、ヨウ素原子または臭素原子を表し、
mは2以上の整数である。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物を得ることを含む製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層は、上記のような機能を薄膜でも発揮し得ることから、光透過性ないし透明性が求められるメガネやタッチパネルなどの光学部材に好適に利用されている。とりわけ、これら用途においては、指紋等の汚れが付着しても容易に拭き取ることができるように表面滑り性が求められ、更に、繰り返し摩擦を受けてもかかる機能を維持し得るように摩擦耐久性が求められる。
【0007】
更に、近年、スマートフォンやタブレット型端末が急速に普及する中、タッチパネルの用途においては、ユーザが指でディスプレイパネルに触れて操作した際に優れた触感を提供することが望まれている。このため、従来よりも一層高い表面滑り性を実現することが求められている。
【0008】
しかしながら、市販の表面処理剤に含まれているフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物では、次第に高まる摩擦耐久性および表面滑り性の双方に対する要求に十分応えることは困難である。
【0009】
本発明は、高い表面滑り性と高い摩擦耐久性の双方を有する層を形成することのできるフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
高い摩擦耐久性(または高い密着性)を得るためには、フルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物は、水酸基または加水分解可能な基が結合したシラン単位を複数有することが好ましいと考えられる。かかるシラン単位を複数有するシラン化合物(以下、マルチシラン化合物とも言う)は、末端をヨウ素化したフルオロオキシアルキレン基含有化合物を反応性二重結合含有シラン化合物と反応させることにより製造可能であるとされている(特許文献2を参照のこと)。
【0011】
他方、高い表面滑り性(または低い動摩擦係数)を得るためには、フルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物は、上記シラン単位を片末端に有し、そして、分子主鎖に−(OC
2F
4)
b’−(OCF
2)
c’−(b’およびc’は、通常、いずれも1以上の整数)により表される構造を有することが好ましいと考えられる(特許文献3の第0011段落を参照のこと)。
【0012】
よって、高い摩擦耐久性と高い表面滑り性の双方を得るためには、上記構造を有するフルオロオキシアルキレン基含有(片末端)マルチシラン化合物を製造できれば好都合であると考えられる。しかしながら、従来のフルオロオキシアルキレン基含有マルチシラン化合物の製造方法では、−(OCF
2CF
2CF
2)
a’−(a’は1以上の整数)により表される構造を有するフルオロオキシアルキレン基含有マルチシラン化合物は効率的に製造することができるものの、−(OC
2F
4)
b’−(OCF
2)
c’−により表される構造を有するフルオロオキシアルキレン基含有マルチシラン化合物は、必ずしもこれと同程度の効率で製造することができず、製造できない場合もあり得ることが、本発明者らの研究により判明した。より具体的には、後者のフルオロオキシアルキレン基含有マルチシラン化合物を製造する場合、−(OC
2F
4)
b’−(OCF
2)
c’−により表される構造を有するフルオロオキシアルキレン基含有化合物の末端をヨウ素化したものが原料とされるが、かかるヨウ素化物は、特許文献1〜2に記載されているヨウ素化方法、即ち、末端に−COF基を有する化合物を、ヘキサクロロ−1,3−ブタジエン溶媒中、炭酸カリウム触媒の存在下にてヨウ素と反応させて、末端の−COF基を−I基に置換する方法(特許文献1および2の合成例1を参照のこと)では、得られない場合があることが判明した。つまり、特許文献1〜2には、−(OC
2F
4)
b’−(OCF
2)
c’−により表される構造を有するフルオロオキシアルキレン基含有マルチシラン化合物の製造方法は十分に開示されていないことを見出し、更なる鋭意検討の結果、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明によれば、フルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物の製造方法であって、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Aは末端が−CF
3基である1価のフッ素含有基を表し、
Rfは−(CF
2)
a−(OC
2F
4)
b−(OCF
2)
c−を表し、a、bおよびcはそれぞれ独立して0または1以上の整数であって、bおよびcの和は少なくとも1であり、a、b、cを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、
Zは−O(CF
2)
e−を表し、eは1以上の整数であり、
X
2は塩素原子、ヨウ素原子または臭素原子を表す。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有化合物を、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、Yは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、
fは0、1または2であり、
R
1は水酸基または加水分解可能な基を表し、
R
2は水素原子または炭素数1〜22のアルキル基を表し、
nは1以上3以下の整数である。)
で表される反応性二重結合含有シラン化合物と反応させることにより、下記一般式(3)
【化3】
(式中、A、Rf、Z、Y、f、R
1、R
2およびnは上記の通りであり、
X
1は水素原子、塩素原子、ヨウ素原子または臭素原子を表し、
mは2以上の整数である。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物を得ることを含む製造方法が提供される。
【0014】
本発明の上記製造方法においては、原料に用いる一般式(1)のフルオロオキシアルキレン基含有化合物における、末端のX
2(塩素原子、ヨウ素原子または臭素原子)に隣接したフルオロオキシアルキレン基Zを−O(CF
2)
e−とし、このeを1以上の整数としている。これにより、末端がヨウ素化(または塩素化もしくは臭素化)された一般式(1)のフルオロオキシアルキレン基含有化合物を一般式(2)の反応性二重結合含有シラン化合物と反応させて、一般式(3)フルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物を効率的に製造することが可能となった。
【0015】
本発明の上記製造方法によって得られるフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物は、分子主鎖に−(OC
2F
4)
b−(OCF
2)
c−により表される構造を有し、かつ、水酸基または加水分解可能な基が結合したシラン単位(mを付して括弧でくくられた繰り返し単位)を複数有する(mが2以上の整数である)。よって、かかるフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物によれば、高い表面滑り性(または低い動摩擦係数)と高い摩擦耐久性(または高い密着性)の双方を有する層を形成することが可能となる。
【0016】
上記一般式(1)および(3)中、Zにおけるeは1以上の整数であればよく、例えば1以上6以下の整数である。
【0017】
上記一般式(3)中、mは2以上の整数であればよく、例えば2以上10以下の整数である。
【0018】
上記一般式(2)および(3)中、Yは水素原子であってよい。
【0019】
上記一般式(2)および(3)中、fは0であってよい。
【0020】
上記一般式(3)中、X
1は水素原子であってよい。X
1が水素原子である場合、本発明の上記製造方法は、この水素原子は、還元反応によって得ることを含んでよい。
【0021】
上記一般式(3)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物は、5×10
2〜1×10
5の平均分子量を有し得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高い表面滑り性と高い摩擦耐久性の双方を有する層を形成することのできるフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物の製造方法について詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
まず、原料として、以下の一般式(1)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有化合物を準備する。このフルオロオキシアルキレン基含有化合物は、一般式(1)で表される限り、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【化4】
【0025】
上記式中、Aは末端が−CF
3基である1価のフッ素含有基を表す。より詳細には、Aは、炭素数1〜16の(例えば直鎖状または分枝状の)パーフルオロアルキル基であってよく、好ましくは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のパーフルオロアルキル基(CF
3−、C
2F
5−、C
3F
7−)である。
【0026】
上記式中、Rfは−(CF
2)
a−(OC
2F
4)
b−(OCF
2)
c−を表す。a、bおよびcは、化合物(好ましくはポリマー)の主鎖を構成するフルオロ(オキシ)アルキレン基の3種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0または1以上の整数であって、bおよびcの和は少なくとも1、好ましくは1〜100である。添字a、b、cを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC
2F
4)−は、好ましくは−(OCF
2CF
2)−である。
【0027】
一方の末端を成すA−Rf−基は、全体として、パーフルオロポリエーテル基であってよいが、これに限定されない。
【0028】
上記式中、Zは−O(CF
2)
e−を表し、eは1以上の整数、例えば1以上6以下の整数である。本発明においてeは1以上の整数であればよいが、更に、eを6以下とすることにより、結晶化を抑制することができる。
【0029】
上記式中、X
2は塩素原子、ヨウ素原子または臭素原子を表し、例えばヨウ素原子であってよい。
【0030】
かかる一般式(1)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有化合物を得る方法は特に限定されない。
例えば、一般式(1)中、X
2がヨウ素原子、塩素原子または臭素原子であるフルオロオキシアルキレン基含有化合物(Zにおけるeは、上記の通り、1以上の整数)は、非特許文献1に記載される方法と同様にして得ることができる。なお、非特許文献1には末端をヨウ素化する方法が記載されているのみであるが、X
2が塩素原子または臭素原子である場合も、これと同様にして、末端を塩素化または臭素化することができる。
また、例えば、一般式(1)中、Zにおけるeが2以上であるフルオロオキシアルキレン基含有化合物は、以下の一般式(X)
A−Rf−Z−COF ・・・(X)
(式中、A、RfおよびZは上記の通り)
で表される少なくとも1種の化合物を塩素化、ヨウ素化または臭素化反応(結果的に、末端の−COF基が−X
1基で置換される反応)に付して得ることができる。具体的には、一般式(X)で表される化合物を、任意の適切な溶媒中、炭酸カリウムなどの触媒の存在下にて塩素、ヨウ素または臭素と反応させて、末端の−COF基をCl基、−I基または−Br基で置換できる。このように、一般式(X)中、Zにおけるeが2以上の整数である化合物(A−Rf−O(CF
2)
e−COF)を用いれば、末端の−COF基が−X
1基で置換される反応が進行し、一般式(1)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有化合物を得ることが可能となる。
なお、一般式(X)中、Zにおけるeが1である化合物(A−Rf−OCF
2−COF)は、特許文献1〜2に記載されているヨウ素化方法(即ち、炭酸カリウムの存在下にてヨウ素と反応させて、末端の−COF基を−I基で置換する方法)では、ヨウ素化することができず(ヨウ素化反応が全く進行せず)、Zにおけるeが1であること以外は一般式(1)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有化合物を得ることは不可能であることが、本発明らにより確認されている。
【0031】
そして、上述の一般式(1)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有化合物を、一般式(2)
【化5】
で表される反応性二重結合含有シラン化合物と反応させる。
【0032】
この式中、Yは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Yは水素原子であることが、高い反応性が得られるので好ましい。
【0033】
上記式中、fは0、1または2である。fは0であることが、高い反応性が得られるので好ましい。
【0034】
上記式中、R
1およびR
2はSiに結合する基である。nは1以上3以下の整数である。
【0035】
R
1は水酸基または加水分解可能な基を表す。加水分解可能な基の例としては、−OA、−OCOA、−O−N=C(A)
2、−N(A)
2、−NHA、ハロゲン(これら式中、Aは、置換または非置換の炭素数1〜3のアルキル基を示す)などが挙げられる。水酸基は、特に限定されないが、加水分解可能な基が加水分解して生じたものであってよい。
【0036】
R
2は水素原子または炭素数1〜22のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜22のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。
【0037】
一般式(1)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有化合物を、一般式(2)で表される反応性二重結合含有シラン化合物と反応(本明細書においてマルチシラン化反応とも言う)させることにより、以下の一般式(3)
【化6】
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物(マルチシラン化合物)を得る。
【0038】
上記式中、mは2以上の整数、例えば2以上10以下の整数である。フルオロオキシアルキレン基含有化合物のX
2側末端部に反応性二重結合含有シラン化合物が複数反応して、上記一般式(3)で表されるマルチシラン化合物を得ることができる。本発明においてmは2以上の整数であればよいが、更に、mを10以下とすることにより、溶媒に対する溶解性が高くなり、上記一般式(3)で表されるマルチシラン化合物を溶媒で希釈して使用する用途に適する。これにより得られるマルチシラン化合物は、1種の化合物であってもよいが、mの値が異なる2種以上の化合物の混合物であってよい。かかる混合物の場合、mの平均値は1より大きければよく、例えば1より大きく6以下、代表的には1より大きく3以下の範囲にある。
【0039】
上記式中、A、Rf、Z、Y、f、R
1、R
2およびnは上記の通りである。
【0040】
X
1は水素原子、塩素原子、ヨウ素原子または臭素原子を表す。
【0041】
上記のマルチシラン化反応は、特に限定されるものではないが、ジ-tert-ブチルパーオキシドなどのラジカル開始剤の存在下にて、例えば60〜140℃で、簡便には常圧下で実施され得る。
【0042】
本発明の製造方法は、上記のマルチシラン化反応を含むものであればよい。マルチシラン化反応は、上記の一般式(1)〜(3)を満たす反応を包含する限り、任意の適切な反応を伴い得る。例えば、上記の一般式(3)で表されるマルチシラン化合物であって、一般式(3)中のシラン単位におけるR
1およびR
2が、原料に使用した一般式(1)のR
1およびR
2と同じものを得るマルチシラン化反応を実施し、その後、一般式(3)中のシラン単位におけるR
1および/またはR
2を、別のR
1および/またはR
2に置換する反応を実施してもよい。
【0043】
また、一般式(3)中のX
1は、原料に使用した一般式(1)中のX
2と同じであってよいが、異なっていてもよい。X
1が、X
2とは異なって、水素原子である場合、一般式(3)で表されるマルチシラン化合物の性質(当該化合物を含む製品、例えば表面処理剤の品質)を安定化することができる。
【0044】
X
1が水素原子である場合、X
1の水素原子は、還元反応によって得ることができる。よって、本発明の製造方法は、上記のマルチシラン化反応に加えて、還元反応を更に含んでいてよい。
【0045】
かかる還元反応は、特に限定されるものではないが、例えば亜鉛粉末などにより、X
2を水素原子で置換することにより実施してよい。かかる反応は、例えば0〜80℃で、簡便には常圧下で実施され得る。
【0046】
いずれの反応も、無溶媒で、または溶媒中で進行させてよい。かかる溶媒の例としては、パーフルオロカーボン(PFC)(例えば、パーフルオロヘキサンなどが挙げられ、3M社のPF−5060などを使用できる)、クロロフルオロカーボン(CFC)(例えば、2,2,3,3−テトラクロロヘキサフルオロブタンなどが挙げられ、ダイキン工業株式会社製のダイフロンソルベントS−316などを使用できる)、含フッ素置換基を有する芳香族炭化水素(例えばビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロベンゼン、パーフルオロベンゼン)、ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C
3F
7OCH
3)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C
4F
9OCH
3)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C
4F
9OC
2H
5)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C
2F
5CF(OCH
3)C
3F
7)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい。)が挙げられ、3M社製のHFE−7100、HFE−7200、HFE−7300を使用できる)などが挙げられ、これらを単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。環境への影響に配慮すると、含フッ素置換基を有する芳香族炭化水素および/またはヒドロフルオロエーテルが好ましい。また、縮合反応が起こり得る場合には、これを抑制するため、窒素気流下で反応させることが好ましい。
【0047】
以上により、一般式(3)で表される少なくとも1種のフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物が製造される。
【0048】
かかるフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物は、特に限定されないが、例えば5×10
2〜1×10
5の平均分子量を有していてよい。かかる範囲のなかでも、2000〜10000の平均分子量を有することが、摩擦耐久性の観点から好ましい。平均分子量は、
19F−NMRにより求めることができる。
【0049】
本発明の上記製造方法によって得られるフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物は、分子主鎖に−(OC
2F
4)
b−(OCF
2)
c−により表される構造を有するので、とりわけ高い表面滑り性(または低い動摩擦係数)を発現し得る。また、フルオロオキシアルキレン基は、優れた撥水性および撥油性ひいては防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)を発現し得る。更に、本発明の上記製造方法によって得られるフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物は、水酸基または加水分解可能な基が結合したシラン単位を分子主鎖の片末端に複数有し、かかる基は基材との間および化合物間で反応することにより結合し得るので、高い摩擦耐久性(または高い密着性もしくは耐擦傷性)を発現し得る。
【0050】
よって、本発明の上記製造方法によって得られるフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物は、表面処理剤に好適に使用され得る。
【0051】
表面処理剤は、フルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物を主成分または有効成分として含んでいればよい。ここで、「主成分」とは、表面処理剤中の含量が50%を超える成分を言い、「有効成分」とは、表面処理すべき基材上に残留して表面処理層を形成し、何らかの機能(撥水性、撥油性、防汚性、表面滑り性、摩擦耐久性など)を発現させ得る成分を意味する。表面処理剤(または表面処理組成物)の組成は、表面処理層に所望される機能に応じて適宜選択してよい。
【0052】
かかる表面処理剤は、上述のフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物を含んでおり、撥水性、撥油性、防汚性を有し、かつ、高い表面滑り性と高い摩擦耐久性の双方を有する表面処理層を形成することができるので、防汚性コーティング剤として好適に利用される。
【0053】
よって、基材と、該基材の表面に、上記フルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物または上記表面処理剤より形成された層(表面処理層)とを含む物品もまた提供される。かかる物品における層は、撥水性、撥油性、防汚性を有し、かつ、高い表面滑り性と高い摩擦耐久性の双方を有する。これによって得られる物品は、特に限定されるものではないが、例えば光学部材であり得る。上記基材は、例えばガラスまたは透明プラスチックであり得る。なお、「透明」とは、一般的に透明と認識され得るものであればよいが、例えば、ヘイズ値5%以下のものを意味する。
【0054】
しかしながら、本発明の上記製造方法によって得られるフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物は、表面処理剤以外の任意の他の用途に使用可能である。
【実施例】
【0055】
本発明のフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物の製造方法について、以下の実施例を通じてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
以下の化学式
【化7】
(式中、b/c=0.9、b+c=約45)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有化合物(A)を準備した。この化合物(A)は非特許文献1に記載の方法に従って合成された。
【0057】
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器および温度計を備えた200mLの4つ口フラスコに、上記で準備したフルオロオキシアルキレン基含有化合物(A)40gをビス(トリフルオロメチル)ベンゼン80gに溶解したものと、ジ−tert−ブチルパーオキシド1.5g(1×10
−2モル)を仕込み、充分に系内を窒素置換したのち、窒素気流下、滴下ロートよりビニルトリクロロシラン8.1g(0.05モル)を滴下した。滴下終了後、系内の温度を120℃に昇温させ、この温度にて4時間反応させた。その後、減圧下で揮発分を完全に留去することによって、末端にヨウ素を有する下記のフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物(B)40.4g(収率90%)を得た。
【0058】
【化8】
(式中、b/c=0.9、b+c=約45、m=平均3.0である。)
なお、上記反応後に回収されたビニルトリクロロシランの量が3.2gであったことから、シラン単位の重合度mが平均3.0であることを確認した。
【0059】
(実施例2)
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器および温度計を備えた200mLの4つ口フラスコに、実施例1にて合成した末端にヨウ素を有するフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物(B)35.9g(8×10
−3モル)をパーフルオロヘキサン50gに溶解したものを仕込み、亜鉛2.1g(3.2×10
−2モル)を強攪拌下にて分散させた。氷水浴で系を冷却し、窒素気流下、滴下ロートより無水メタノール10gを滴下した。滴下終了後、氷水浴を取り除き、加熱還流下で2時間反応させた。その後、不溶物を濾別し、2層に分離した液相から、分液ロートを用いて下層を分取した。得られた溶液を、無水メタノールを用いて3回洗浄した。続いて、減圧下で揮発分を完全に留去することによって、末端が水素化された下記のフルオロオキシアルキレン基含有シラン化合物(C)32.1g(収率92%)を得た。
【0060】
【化9】
(式中、b/c=0.9、b+c=約45、m=平均3.0である。)
【0061】
(参考例1)
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器および温度計を備えた200mLの4つ口フラスコに、合成した化学式F−(CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2I(式中、n=21)で表されるω−フルオロポリパーフルオロオキセタンヨウ素化物40gをビス(トリフルオロメチル)ベンゼン80gに溶解したものと、ジ−tert−ブチルパーオキシド1.5g(1×10
−2モル)を仕込み、充分に系内を窒素置換したのち、窒素気流下、滴下ロートよりビニルトリクロロシラン8.1g(0.05モル)を滴下した。滴下終了後、系内の温度を120℃に昇温させ、この温度にて4時間反応させた。その後、減圧下で揮発分を完全に留去することによって、末端にヨウ素を有する下記のケイ素含有有機含フッ素ポリマー(D)38.7g(収率90%)を得た。
【0062】
【化10】
(式中、n=21、m=平均3.0である。)
なお、上記反応後に回収されたビニルトリクロロシランの量が3.2gであったことから、シラン単位の重合度mが平均3.0であることを確認した。
【0063】
(参考例2)
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器および温度計を備えた200mLの4つ口フラスコに、参考例1にて合成したケイ素含有有機含フッ素ポリマー(D)34.4g(8×10
−3モル)をパーフルオロヘキサン50gに溶解したものを仕込み、亜鉛2.1g(3.2×10
−2モル)を強攪拌下にて分散させた。氷水浴で系を冷却し、窒素気流下、滴下ロートより無水メタノール10gを滴下した。滴下終了後、氷水浴を取り除き、加熱還流下で2時間反応させた。その後、不溶物を濾別し、2層に分離した液相から、分液ロートを用いて下層を分取した。得られた溶液を、無水メタノールを用いて3回洗浄した。続いて、減圧下で揮発分を完全に留去することによって、末端が水素化された下記のケイ素含有有機含フッ素ポリマー(E)31.6g(収率92%)を得た。
【0064】
【化11】
(式中、n=21、m=平均3.0である。)