(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の振動片では、外側に位置する2個の圧電体素子と内側の圧電体素子とが逆位相となる電気的接続を採用しているため、基部内において異なる位相の電極が圧電体膜(絶縁層)を介して重なる、所謂クロス配線が必要となる。このようなクロス配線が形成されることにより、振動腕(駆動部)以外の配線で付加容量C
0’が生じることになる。振動片を用いた振動子の実効抵抗Re(振動子の振動のし難さを示す数値)は、R
e=R
1(1+C
0/C
L)
2で表されるため、クロス配線による付加容量C
0’が加えられることによって振動子の実効抵抗R
eが大きくなり、振動子が振動し難くなる虞を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[形態1]本形態に係る振動片は、基部と、前記基部から延出されている振動腕と、前記基部および前記振動腕に配置されている下部電極と、平面視で、前記基部に配置されている前記下部電極および前記振動腕に配置されている前記下部電極と重なっている上部電極と、前記下部電極と前記上部電極との間にある絶縁層と、を備え、前記基部と重なっている前記絶縁層の厚さは、前記振動腕と重なっている前記絶縁層の厚さより厚いことを特徴とする。
本形態によれば、基部と重なっている絶縁層の厚さは、振動腕と重なっている絶縁層の厚さより大きく形成されている。付加容量C0’は、下記式(1)によって表されるため、クロス配線を生じる基部における絶縁層の厚さが振動腕の上方に設けられている絶縁層の厚さより大きい本適用例の構成では、基部においてクロス配線を生じても基部の領域での付加容量C0’の増加を防止することができる。したがって、振動子の実効抵抗Reが増加しないため、振動し易い振動子を提供することができる。
C0’=ε・S/d ・・・(1)
(ε:誘電率(F/m)[ε=ε0×εr・・・ε0:真空の誘電率(F/m)、εr:比誘電率(F/m)]、S:平行平板の面積(m2) d:平行平板間の距離(m))
[形態2]上記形態に記載の振動片において、前記基部と重なっている前記絶縁層の誘電率は、前記振動腕と重なっている前記絶縁層の誘電率より小さいことを特徴とする。
上述の式(1)に表されるように、誘電率(ε)が小さいほど付加容量C0’が小さくなる。本形態によれば、基部と重なっている絶縁層の誘電率は、振動腕と重なっている絶縁層の誘電率より小さいことから、基部におけるクロス配線を生じても、基部の領域での付加容量C0’の増加を防止することができる。したがって、基部においてクロス配線を生じても振動子の実効抵抗Reが増加しないため、振動し易い振動子を提供することができる。
[形態3]本形態に係る振動片は、基部と、前記基部から延出されている振動腕と、前記基部および前記振動腕に配置されている下部電極と、平面視で、前記基部に配置されている前記下部電極および前記振動腕に配置されている前記下部電極と重なっている上部電極と、前記下部電極と前記上部電極との間にある絶縁層と、を備え、前記基部と重なっている前記絶縁層の誘電率は、前記振動腕と重なっている前記絶縁層の誘電率よりも小さいことを特徴とする。
本形態によれば、基部と重なっている絶縁層の誘電率は、振動腕と重なっている絶縁層の誘電率より小さいことから、基部におけるクロス配線を生じても、基部の領域での付加容量C0’の増加を防止することができる。したがって、基部においてクロス配線を生じても振動子の実効抵抗Reが増加しないため、振動し易い振動子を提供することができる。
[形態4]上記形態に記載の振動片において、前記振動腕は、第1の振動腕と第2の振動腕とを備えており、前記第1の振動腕から前記基部に延設されている前記下部電極と、前記第2の振動腕から前記基部に延設されている前記上部電極とは、平面視で前記基部と重なっている領域において、前記絶縁層を挟んでいることを特徴とする。
本形態によれば、基部におけるクロス配線による付加容量C0’の増加を防止することができる。したがって、振動子の実効抵抗Reが増加しないため、振動し易い振動子を提供することができる。
[形態5]上記形態に記載の振動片において、前記絶縁層は、圧電体膜を含んでいることを特徴とする。
本形態によれば、絶縁層に圧電体膜を含むことにより、絶縁層の厚さを大きくすることが可能となり、さらにクロス配線による付加容量C0’の増加を防止することができる。
[形態6]上記形態に記載の振動片において、前記基部、および前記振動腕は、水晶で構成されていることを特徴とする。
本形態によれば、水晶を用いることにより小型化に伴う温度特性(周波数温度特性などの温度依存性を有する特性)の低下を抑制することができる。
[形態7]上記形態に記載の振動片において、前記基部、および前記振動腕は、半導体で構成されていることを特徴とする。
本形態によれば、フォトリソグラフィーなどを用いた外形加工が容易あるとともに、エッチング速度が一定であるため、形成された外形形状が均一となり、安定した特性を得ることが可能となる。
[形態8]本形態に係る振動子は、上記形態のいずれか一例に記載の振動片と、前記振動片を収容している容器と、を備えていることを特徴とする。
本形態によれば、上述の振動片を用いているため、振動し易い振動子を提供することができる。
[形態9]本形態に係る電子デバイスは、上記形態のいずれか一例に記載の振動片と、前記振動片を駆動させる回路素子と、を備えていることを特徴とする。
本形態によれば、上述の振動片を用いているため振動片が振動し易く、振動の安定した電子デバイスを提供することができる。
[形態10]本形態に係る電子機器は、上記形態のいずれか一例に記載の振動片を備えていることを特徴とする。
本形態によれば、上述の振動片を用いているため振動片が振動し易く、したがって安定した特性の電子機器を提供することができる。
[形態11]本形態に係る移動体は、上記形態のいずれか一例に記載の振動片を備えていることを特徴とする。
本形態によれば、上述の振動片を用いているため振動片が振動し易く、したがって安定した性能を発揮できる移動体を提供することができる。
[適用例1]本適用例に係る振動片は、基部と、前記基部から延出されている振動腕と、前記基部および前記振動腕に設けられている下部電極と、前記下部電極の上方に設けられている上部電極と、前記下部電極と前記上部電極との間に設けられている絶縁層と、を備え、前記基部の上方に設けられている前記絶縁層の厚さが、前記振動腕の上方に設けられている前記絶縁層の厚さより厚いことを特徴とする。
【0007】
本適用例によれば、基部の上方に設けられている絶縁層の厚さが、振動腕の上方に設けられている絶縁層の厚さより大きく形成されている。付加容量C
0’は、下記式(1)によって表されるため、クロス配線を生じる基部における絶縁層の厚さが振動腕の上方に設けられている絶縁層の厚さより大きい本適用例の構成では、基部においてクロス配線を生じても基部の領域での付加容量C
0’の増加を防止することができる。したがって、振動子の実効抵抗R
eが増加しないため、振動し易い振動子を提供することができる。
C
0’=ε・S/d ・・・(1)
(ε:誘電率(F/m)[ε=ε
0×ε
r・・・ε
0:真空の誘電率(F/m)、ε
r:比誘電率(F/m)]、S:平行平板の面積(m
2) d:平行平板間の距離(m))
【0008】
[適用例2]上記適用例に記載の振動片において、前記基部の上方に設けられている前記絶縁層の誘電率が、前記振動腕の上方に設けられている前記絶縁層の誘電率より小さいことを特徴とする。
【0009】
上述の式(1)に表されるように、誘電率(ε)が小さいほど付加容量C
0’が小さくなる。本適用例によれば、基部の上方に設けられている絶縁層の誘電率が、振動腕の上方に設けられている絶縁層の誘電率より小さいことから、基部におけるクロス配線を生じても、基部の領域での付加容量C
0’の増加を防止することができる。したがって、基部においてクロス配線を生じても振動子の実効抵抗R
eが増加しないため、振動し易い振動子を提供することができる。
【0010】
[適用例3]本適用例に係る振動片は、基部と、前記基部から延出されている振動腕と、前記基部および前記振動腕に設けられている下部電極と、前記下部電極の上方に設けられている上部電極と、前記下部電極と前記上部電極との間に設けられている絶縁層と、を備え、前記基部の上方に設けられている前記絶縁層の誘電率が、前記振動腕の上方に設けられている前記絶縁層の誘電率よりも小さいことを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、基部の上方に設けられている絶縁層の誘電率が、振動腕の上方に設けられている絶縁層の誘電率より小さいことから、基部におけるクロス配線を生じても、基部の領域での付加容量C
0’の増加を防止することができる。したがって、基部においてクロス配線を生じても振動子の実効抵抗R
eが増加しないため、振動し易い振動子を提供することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に記載の振動片において、前記振動腕は、第1の振動腕と第2の振動腕とを備えており、前記第1の振動腕から前記基部に延設されている前記下部電極と、前記第2の振動腕の上方から前記基部の上方に延設されている前記上部電極とが、前記基部の上方で前記絶縁層を介して重なっていることを特徴とする。
【0013】
本適用例によれば、基部におけるクロス配線による付加容量C
0’の増加を防止することができる。したがって、振動子の実効抵抗R
eが増加しないため、振動し易い振動子を提供することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に記載の振動片において、前記絶縁層は、圧電膜を含んでいることを特徴とする。
【0015】
本適用例によれば、絶縁層に圧電膜を含むことにより、絶縁層の厚さを大きくすることが可能となり、さらにクロス配線による付加容量C
0’の増加を防止することができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例に記載の振動片において、前記基部、および前記振動腕は、水晶から構成されていることを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、水晶を用いることにより小型化に伴う温度特性(周波数温度特性などの温度依存性を有する特性)の低下を抑制することができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例に記載の振動片において、前記基部、および前記振動腕は、半導体から構成されていることを特徴とする。
【0019】
本適用例によれば、フォトリソグラフィーなどを用いた外形加工が容易あるとともに、エッチング速度が一定であるため、形成された外形形状が均一となり、安定した特性を得ることが可能となる。
【0020】
[適用例8]本適用例に係る振動子は、上記適用例のいずれか一例に記載の振動片と、前記振動片を収納している容器と、を備えていることを特徴とする。
【0021】
本適用例によれば、上述の振動片を用いているため、振動し易い振動子を提供することができる。
【0022】
[適用例9]本適用例に係る電子デバイスは、上記適用例のいずれか一例に記載の振動片と、前記振動片を駆動させる回路素子と、を備えていることを特徴とする。
【0023】
本適用例によれば、上述の振動片を用いているため振動片が振動し易く、振動の安定した電子デバイスを提供することができる。
【0024】
[適用例10]本適用例に係る電子機器は、上記適用例のいずれか一例に記載の振動片を備えていることを特徴とする。
【0025】
本適用例によれば、上述の振動片を用いているため振動片が振動し易く、したがって安定した特性の電子機器を提供することができる。
【0026】
[適用例11]本適用例に係る移動体は、上記適用例のいずれか一例に記載の振動片を備えていることを特徴とする。
【0027】
本適用例によれば、上述の振動片を用いているため振動片が振動し易く、したがって安定した性能を発揮できる移動体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の振動片の第1実施形態にかかる音叉型振動片を示しており、(a)は音叉型振動片の平面図、(b)は(a)に示すQ−Q断面図、(c)は(a)のR−R断面図である。
図2は、本発明の振動片の第2実施形態にかかる音叉型振動片の絶縁層の構成を説明する図であり、(a)は
図1(a)のQ−Q断面図、(b)は
図1(a)のR−R断面図である。
図3は、振動片の等価回路を示す回路図である。
【0030】
(第1実施形態)
図1に示す本実施形態の音叉型振動片1は、振動腕11、12、13と、これら3個の振動腕11、12、13のそれぞれの一端を連結する基部14と、圧電体素子15、16、17と、を含んで構成されている。
【0031】
振動腕11は、第1方向(図中のZ方向)へ向けて配置された第1面11aを有する。同様に、振動腕12は、第1方向へ向けて配置された第1面12aを有し、振動腕13は、第1方向へ向けて配置された第1面13aを有する。本実施形態では、各第1面11a、12a、13aは平面であるが、これに限定されず、曲面、凹凸面などであってもよい。これらの振動腕11、12、13は、第1方向と交差する第2方向(図中のX方向)に沿って配列されている。各振動腕11、12、13は、それぞれ長手方向が第3方向(図中のY方向)に沿うように配置されている。これらの振動腕11、12、13の断面形状は、例えば
図1(b)に示すように矩形上であるが、この形状に限定されない。
【0032】
基部14は、3個の振動腕11、12、13のそれぞれの一端(Y方向に沿った一方の端部)と接続されており、これらの振動腕11、12、13を連結している。そして、基部14は、第3方向の中途で幅(第2方向の寸法)が広くなった形状をなしている。本実施形態では、各振動腕11、12、13とこの基部14とは一体に形成される。各振動腕11、12、13と基部14とは、例えば水晶板を形状加工することによって形成される。この水晶板は、カット角の観点からはZカット板であることが好ましいが、Xカット板、ATカット板であってもよい。Zカット板を用いた場合には加工が容易になる。
【0033】
圧電体素子15は、振動腕11の第1面11a上に設けられている。同様に、圧電体素子16は、振動腕12の第1面12a上に設けられ、圧電体素子17は、振動腕13の第1面13a上に設けられている。
【0034】
図1(b)は、振動腕11、12、13の第1面11a、12a、13aに設けられている圧電体素子15、16、17の構造を示した断面図である。なお、圧電体素子15、16、17の構造は同様であるため、ここでは圧電体素子15について説明する。圧電体素子15は、第1面11a上に配置された下部電極膜15aと、当該下部電極膜15a上に配置された絶縁層としての圧電体膜15b2と、当該圧電体膜15b2上に配置された上部電極膜15cと、を含んでいる。この圧電体膜15b2は、例えばZnO、AlN、PZT、LiNbO
3又はKNbO
3の何れかを含む膜である。圧電体膜15b2の膜厚は、例えば0.2μm程度である。この圧電体膜15b2の膜厚は、振動腕11の厚みに対して0.025倍〜0.25倍程度に設定されることが望ましい。
【0035】
また、
図1(c)は、基部14の第1面14aに設けられている圧電体素子15’、16’、17’の構造を示した断面図である。基部14に設けられている圧電体素子15’、16’、17’は、前述の振動腕11、12、13に設けられている圧電体膜15b2、16b2、17b2の厚さt1(
図1(b)参照))に比べ、圧電体膜15b2’、16b2’、17b2’の厚さt2が大きく設けられている。なお、圧電体素子15’、16’、17’の構造は同様であるため、圧電体素子15’を用いて詳細を説明する。基部14に設けられている圧電体素子15’は、第1面14a上に配置された下部電極膜15aと、下部電極膜15a上に配置された絶縁層としての圧電体膜15b2’と、圧電体膜15b2’上に配置された上部電極膜15cと、を含んでいる。なお、基部14の第1面14aに設けられている下部電極膜15aは、振動腕11の第1面11aに設けられている下部電極膜15aから延設されている。また、基部14の第1面14aに設けられている圧電体膜15b2’は、振動腕11に設けられている圧電体膜15b2と連接されている。また、基部14の上方に設けられている上部電極膜15cは、振動腕11の上側に配置されている圧電体膜15b2’上の上部電極膜15cから延設されている。
【0036】
各下部電極膜15a、16a、17a、各上部電極膜15c、16c、17cは、それぞれ、例えばクロム膜、金膜、チタン膜、アルミニウム膜、モリブデン膜、ITO膜などの導電体膜である。これらのうち、X方向において外側に配置された2つの振動腕11、13に設けられた各圧電体素子15、17の各下部電極膜15a、17aと、X方向において内側に配置された1つの振動腕12に設けられた圧電体素子16の上部電極膜16cと、が相互に電気的に接続されている。また、X方向において外側に配置された2つの振動腕11、13に設けられた各圧電体素子15、17の各上部電極膜15c、17cと、X方向において内側に配置された1つの振動腕12に設けられた圧電体素子16の下部電極膜16aと、が相互に電気的に接続されている。
【0037】
各電極膜の接続構造について、主に
図1(a)を参照しながら、さらに説明する。上部電極膜15cと上部電極膜17cとは、電極パッド24を介して相互に電気的に接続されている。本実施形態では、これらの上部電極膜15c、17cと電極パッド24とは一体に形成される。下部電極膜16aは、例えばスルーホール配線などを用いた接続部18aを介して上部電極膜17cと電気的に接続されている。これらにより、上部電極膜15c、17cと下部電極膜16aとの相互間が電気的に接続される。この電極パッド24を通じて、上部電極膜15c、17cおよび下部電極膜16aに対して同電位の電気信号を供給することができる。
【0038】
下部電極膜15aと下部電極膜17aとは、例えばスルーホール配線などを用いた接続部18bおよび電極パッド26を介して相互に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、電極パッド26は、前述の電極パッド24と同時に形成される。上部電極膜16cは、基部14の上方に延出された位置で、例えばスルーホール配線などを用いた接続部18cを介して下部電極膜15aと電気的に接続されている。これらにより、下部電極膜15a、17aと上部電極膜16cとの相互間が電気的に接続される。この電極パッド26を通じて、下部電極膜15a、17aおよび上部電極膜16cに対して同電位の電気信号を供給することができる。
【0039】
上記の電極パッド24および電極パッド26に逆電位の電気信号を交互に供給することにより、振動腕11、13と振動腕12とを互い違いに上下振動させることができる。具体的には、各上部電極膜と下部電極膜との間に電圧を印加した際に、外側の各圧電体素子15、17にかかる電界の方向と内側の圧電体素子16にかかる電界の方向とが逆向きとなる。したがって、振動腕11、13の振動方向と振動腕12の振動方向とが逆向きになり、電界印加により振動腕11、13と振動腕12とが互い違いに上下運動を行う。このように、3脚構造とすることにより、上下振動(図中のZ方向に沿った振動)を用いる振動モードにおいてもQ値を高めることが可能となる。
【0040】
上述の構成のように、二つの振動腕11、13に挟まれた振動腕12の電極の電位が逆電位となり、且つ基部14に設けられた電極パッド24および電極パッド26とそれぞれの電極膜が接続される。このため、基部14内で、下部電極膜15a、16a、17aと上部電極膜15c、16c、17cとが、絶縁層としての圧電体膜15b2’、16b2’、17b2’を介して対向する、所謂クロス配線となる部分を生じてしまう。このクロス配線部分を
図1(a)では、P1、P2、P3、P4で示している。
【0041】
ここでクロス配線を生じることによる音叉型振動片1に対する影響について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、クロス配線を生じた場合の、振動片(振動素子)の電気的特性を示す等価回路を示している(L
1:等価インダクタンス、C
1:等価容量、R
1:等価抵抗、C
0:静電容量、C
0’:基部のクロス配線による付加容量)。
【0042】
上述ように基部14にクロス配線を生じると、静電容量C
0に加えて付加容量C
0’が付加される。振動片(振動素子、振動子)の実効抵抗Re(振動子の振動のし難さを示す数値)は、R
e=R
1(1+C
0/C
L)
2で表されるため、クロス配線による付加容量C
0’が加えられることによって振動子の実効抵抗R
eが大きくなる。これにより、振動子は、発振が起こり難くなる、換言すれば、振動し難くなってしまうことになる。
【0043】
しかしながら、本実施形態の音叉型振動片1では、基部14の上方に設けられている絶縁層としての圧電体膜15b2’、16b2’、17b2’の厚さt2が、振動腕11、12、13の上方に設けられている絶縁層としての圧電体膜15b2、16b2、17b2の厚さt1より大きく形成されている。付加容量C
0’は、下記式(1)のように、平行平板間の距離dが大きくなるほど小さくなるため、本実施形態の構成では、基部14の平面領域においてクロス配線を生じても付加容量C
0’の増加を防止することができる。これにより、本実施形態の構成の音叉型振動片1は、実効抵抗R
eを小さく保つことが可能となるため、発振し易い振動片とすることができる。
C
0’=ε・S/d ・・・(1)
(ε:誘電率(F/m)[ε=ε
0×ε
r・・・ε
0:真空の誘電率(F/m)、ε
r:比誘電率(F/m)]、S:平行平板の面積(m
2) d:平行平板間の距離(m))
【0044】
(第2実施形態)
次に、
図2を用いて本発明の振動片の第2実施形態にかかる音叉型振動片について説明する。
図2は、第2実施形態の音叉型振動片の絶縁層の構成を説明する図であり、(a)は
図1(a)のQ−Qの位置に相当する断面図、(b)は
図1(a)のR−Rの位置に相当する断面図である。なお、第2実施形態の音叉型振動片の平面視(平面図)は、前述の第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と同様な構成については同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0045】
図2(a)に示す、第2実施形態の音叉型振動片1の振動腕11、12、13の第1面11a、12a、13aに設けられている圧電体素子15、16、17は、絶縁膜を更に含む構成である。前述と同様に圧電体素子15、16、17の構造が同じであるため、ここでは圧電体素子17について説明する。
【0046】
圧電体素子17は、第1面13a上に配置された下部電極膜17aと、下部電極膜17a上に配置された絶縁層17bと、絶縁層17b上に配置された上部電極膜17cと、を含んでいる。
【0047】
本第2実施形態では、絶縁層17bが、絶縁膜17b1および圧電体膜17b2で構成されている。絶縁膜17b1は、圧電体膜17b2と下部電極膜17aとの間に配置されている。絶縁膜17b1は、例えば酸化硅素(SiO
2)膜である。この絶縁膜17b1は、下部電極膜17aと上部電極膜17cとの短絡を防止する機能を果たす。絶縁膜17b1の膜厚は、短絡防止の観点から25nm以上であることが望ましく、また圧電体素子15の特性低下を抑制する観点から500nm以下であることが望ましい。圧電体膜17b2は、例えばZnO、AlN、PZT、LiNbO
3又はKNbO
3の何れかを含む膜である。圧電体膜17b2の膜厚は、例えば0.2μm程度である。この圧電体膜17b2の膜厚は、振動腕11の厚みに対して0.025倍〜0.25倍程度に設定されることが望ましい。
【0048】
また、
図2(b)に示す、基部14の第1面14aに設けられている圧電体素子15’、16’、17’は、絶縁膜の厚さが厚い構成である。
図2(b)に示すように、絶縁層17b’の内の絶縁膜17b1’の厚さは、前述の振動腕11、12、13に設けられている絶縁層17bの内の絶縁膜17b1の厚さよりも大きく形成されている。したがって、基部14に設けられている絶縁層17b’の厚さも、振動腕11、12、13に設けられている絶縁層17bの厚さより大きくなる。
【0049】
このような第2実施形態の音叉型振動片1によれば、第1実施形態と同様に、基部14の上方に設けられている絶縁層15b’、16b’、17b’の厚さが、振動腕11、12、13の上方に設けられている絶縁層15b、16b、17bの厚さより大きい。したがって、第1実施形態と同様に、基部14の平面領域においてクロス配線を生じても付加容量C
0’の増加を防止することができる。これにより、本実施形態の構成の音叉型振動片1は、実効抵抗R
eを小さく保つことが可能となるため、発振し易い振動片とすることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、
図2(b)に示す、基部14の第1面14aに設けられている圧電体素子15’、16’、17’が、下部電極膜17aの上面に絶縁膜17b1’が設けられ、絶縁膜17b1’の上面に圧電体膜17b2が設けられている構成で説明したが、下部電極膜17aの上面に圧電体膜17b2が設けられ、圧電体膜17b2の上面に絶縁膜17b1’が設けられる構成でも良い。
【0051】
また、前述の実施形態では、3つの振動腕11、12、13を有する音叉型振動片1で説明したが、振動腕は5つ以上の奇数個であってもよい。
【0052】
また、振動片の基材は、水晶に限定するものではなく、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)、四ホウ酸リチウム(Li
2B
4O
7)、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電材料、またはシリコンなどの半導体材料であってもよい。
【0053】
また、クロス配線による付加容量C
0’を抑えるためには、上述の式(1)から、絶縁層に誘電率の小さな材料を用いることもできる。クロス配線を生じる基部14の上方に用いる絶縁層の材料を振動腕11、12、13の上方に用いる絶縁層の材料より誘電率の小さな材料とすることもできる。誘電率の小さな材料としては、例えば、SiN、Al陽極酸化膜、SiO
2(F添加)、SiOCなどを用いることができる。このような、誘電率の小さな材料を絶縁層として用いることにより、基部14の平面領域においてクロス配線を生じても付加容量C
0’が大きくならないようにすることができる。これにより、実効抵抗R
eを小さく保つことが可能となるため、発振し易い振動片を提供することが可能となる。なお、基部14の上方に用いる絶縁層の材料を振動腕11、12、13の上方に用いる絶縁層の材料より誘電率の小さな材料とした場合は、振動腕11、12、13の上方に用いる絶縁層の厚みと振動腕11、12、13の上方に用いる絶縁層の厚みとを同一としても良いし、異なる厚みとしてもよい。
【0054】
(振動子)
次に、上記各実施形態で述べた振動片を備えた振動子について第1実施形態の音叉型振動片1を用いた例で説明する。
図4は、振動子の概略構成を示す模式的に示す正断面図である。なお、上記第1実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0055】
図4に示すように、振動子5は、上記第1実施形態で述べた音叉型振動片1と、音叉型振動片1を収容したパッケージ20と、を備えている。
【0056】
パッケージ20は、平面形状が略矩形で凹部を有したパッケージベース21と、パッケージベース21の凹部を覆う平面形状が略矩形で平板状のリッド22と、を有し、略直方体形状に形成されている。パッケージベース21には、セラミックグリーンシートを成形して積層し焼成した酸化アルミニウム質焼結体、水晶、ガラス、シリコンなどが用いられている。リッド22には、パッケージベース21と同材料、または、コバール、42アロイ、ステンレス鋼などの金属が用いられている。
【0057】
パッケージベース21には、内底面(凹部の内側の底面)23に、内部端子34が設けられている。内部端子34は、音叉型振動片1の基部14に設けられた電極パッド26(24)の近傍となる位置に略矩形状に形成されている。電極パッド26(24)は、図示しない配線により、音叉型振動片1の下部電極膜15a、16a、17a、あるいは各上部電極膜15c、16c、17cに接続されている。
【0058】
パッケージベース21の外底面(内底面23の反対側の面、外側の底面)36には、電子機器などの外部部材に実装される際に用いられる一対の外部端子27、28が形成されている。外部端子27、28は、図示しない内部配線によって内部端子34と接続されている。例えば、外部端子27は、内部端子34と接続され、外部端子28は、図示しない他の内部端子と接続されている。内部端子34及び外部端子27、28は、W(タングステン)などのメタライズ層にNi、Auなどの各被膜をメッキなどの方法により積層した金属膜からなる。
【0059】
振動子5は、音叉型振動片1の基部14の固定部分(振動腕11、12、13より厚い部分)が、エポキシ系、シリコーン系、ポリイミド系などの接着剤30を介して、パッケージベース21の内底面23に固定されている。そして、振動子5は、音叉型振動片1の電極パッド26(24)が、Au、Alなどの金属ワイヤー31により、例えば内部端子34と接続されている。振動子5は、音叉型振動片1がパッケージベース21の内部端子34と接続された状態で、パッケージベース21の凹部がリッド22により覆われ、パッケージベース21とリッド22とがシームリング、低融点ガラス、接着剤などの接合部材29で接合されることにより、パッケージ20の内部が気密に封止されている。なお、パッケージ20の内部は、減圧状態(真空度の高い状態)または窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが充填された状態となっている。
【0060】
なお、パッケージは、平板状のパッケージベースと凹部を有するリッドなどから構成されていてもよい。また、パッケージは、パッケージベース及びリッドの両方に凹部を有していてもよい。
【0061】
振動子5は、外部端子27、28、金属ワイヤー31、電極パッド26(24)を経由して圧電体素子(16など)に印加される駆動信号(交番電圧)によって、音叉型振動片1の各振動腕(12など)が所定の周波数で振動(共振)する。
【0062】
上述したように、振動子5は、音叉型振動片1を備えていることから、上記第1実施形態に記載された効果、すなわち小型で発振し易い振動子を提供することができる。
【0063】
(電子デバイス)
次に、上記各実施形態で述べた音叉型振動片を備えた電子デバイスとしての発振器について第1実施形態の音叉型振動片1を用いた例で説明する。
図5は、電子デバイスの一例の発振器の概略構成を示す模式的に示す正断面図である。なお、各配線は省略してある。また、上記第1実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0064】
図5に示すように、発振器6は、上記第1実施形態で述べた音叉型振動片1と、音叉型振動片1を発振させる発振回路としてのICチップ40と、音叉型振動片1及びICチップ40を収容したパッケージ20と、を備えている。
【0065】
パッケージベース21の内底面32には、内部接続端子32aが設けられている。発振回路を内蔵するICチップ40は、パッケージベース21の内底面32に、接着剤32bなどを用いて固定されている。ICチップ40は、図示しない接続パッドが、Au、Alなどの金属ワイヤー41により内部接続端子32aと接続されている。
【0066】
内部接続端子32aは、W(タングステン)などのメタライズ層にNi、Auなどの各被膜をメッキなどにより積層した金属膜からなり、図示しない内部配線を経由して、パッケージ20の外部端子27、28、内部端子34などに接続されている。なお、ICチップ40の接続パッドと内部接続端子32aとの接続には、金属ワイヤー41を用いたワイヤーボンディングによる接続方法以外に、ICチップ40を反転させてのフリップチップ実装による接続方法などを用いてもよい。
【0067】
また、パッケージベース21の内底面(凹部の内側の底面)23には、内部端子34が設けられている。内部端子34は、音叉型振動片1の基部14に設けられた電極パッド26(24)の近傍となる位置に略矩形状に形成されている。電極パッド26(24)は、図示しない配線により、音叉型振動片1の下部電極膜15a、16a、17a、あるいは各上部電極膜15c、16c、17cに接続されている。
【0068】
音叉型振動片1は、基部14の固定部分(振動腕11、12、13より厚い部分)が、エポキシ系、シリコーン系、ポリイミド系などの接着剤30を介して、パッケージベース21の内底面23に固定されている。そして、音叉型振動片1の電極パッド26(24)が、Au、Alなどの金属ワイヤー31により、例えば内部端子34と接続されている。
【0069】
発振器6は、ICチップ40から内部接続端子32a、内部端子34、金属ワイヤー31、電極パッド26(24)を経由して下部電極膜15a、16a、17a、あるいは各上部電極膜15c、16c、17cに印加される駆動信号によって、音叉型振動片1の各振動腕(12など)が所定の周波数で発振(共振)する。そして、発振器6は、この発振に伴って生じる発振信号をICチップ40、内部接続端子32a、外部端子27、28などを経由して外部に出力する。
【0070】
上述したように、発振器6は、音叉型振動片1を備えていることから、上記第1実施形態に記載された効果、すなわち小型で発振し易い発振器を提供することができる。
【0071】
なお、発振器6は、ICチップ40をパッケージ20に内蔵ではなく、外付けした構成のモジュール構造(例えば、1つの基板上に水晶振動子及びICチップが個別に搭載されている構造)としてもよい。
【0072】
[電子機器]
次いで、本発明の一実施形態に係る振動片としての音叉型振動片1、音叉型振動片1を用いた振動子5、あるいは音叉型振動片1を用いた発振器6を適用した電子機器について、
図6〜
図8に基づき、詳細に説明する。なお、説明では、音叉型振動片1を用いた振動子を適用した例を示している。
【0073】
図6は、本発明の一実施形態に係る音叉型振動片1を用いた振動子を備える電子機器としてのモバイル型(又はノート型)のパーソナルコンピューターの構成の概略を示す斜視図である。この図において、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部100を備えた表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。このようなパーソナルコンピューター1100には、基準信号源などとして音叉型振動片1を用いた振動子が内蔵されている。
【0074】
図7は、本発明の一実施形態に係る音叉型振動片1を用いた振動子を備える電子機器としての携帯電話機(PHSも含む)の構成の概略を示す斜視図である。この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206を備え、操作ボタン1202と受話口1204との間には、表示部100が配置されている。このような携帯電話機1200には、基準信号源などとして音叉型振動片1を用いた振動子が内蔵されている。
【0075】
図8は、本発明の一実施形態に係る音叉型振動片1を用いた振動子を備える電子機器としてのデジタルスチールカメラの構成の概略を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、デジタルスチールカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。デジタルスチールカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部100が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部100は、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCD等を含む受光ユニット1304が設けられている。
【0076】
撮影者が表示部100に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリー1308に転送・格納される。また、このデジタルスチールカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示されるように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニター1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピューター1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、メモリー1308に格納された撮像信号が、テレビモニター1430や、パーソナルコンピューター1440に出力される構成になっている。このようなデジタルスチールカメラ1300には、基準信号源などとして音叉型振動片1を用いた振動子が内蔵されている。
【0077】
なお、本発明の一実施形態に係る音叉型振動片1を用いた振動子は、
図6のパーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)、
図7の携帯電話機、
図8のデジタルスチールカメラの他にも、例えば、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター等の電子機器に適用することができる。
【0078】
[移動体]
図9は移動体の一例としての自動車を概略的に示す斜視図である。自動車106には本発明に係る音叉型振動片1を用いた振動子が搭載されている。例えば、同図に示すように、移動体としての自動車106には、音叉型振動片1を用いた振動子を内蔵してタイヤ109などを制御する電子制御ユニット108が車体107に搭載されている。また、音叉型振動片1を用いた振動子は、他にもキーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター、車体姿勢制御システム、等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。