(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044231
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
F16H 3/30 20060101AFI20161206BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20161206BHJP
B62D 49/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
F16H3/30
A01M7/00 D
B62D49/00 E
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-214647(P2012-214647)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-70646(P2014-70646A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢野 典弘
(72)【発明者】
【氏名】永井 真人
【審査官】
瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−100134(JP,U)
【文献】
実開昭58−050253(JP,U)
【文献】
特開平08−121545(JP,A)
【文献】
特開昭62−062041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/30
A01M 7/00
B62D 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力を受ける入力軸と、第一変速と、第二変速と、第一変速及び第二変速で設定された動力を受ける伝動軸と、伝動軸の動力を受けて走行車輪に動力を伝動する走行用出力軸を備える作業車両において、
前記入力軸には、複数の変速ギアからなる第一変速用ギアと、複数の変速ギアからなる第二変速用ギアを設け、第一変速用ギアと噛み合う第一変速設定用ギアと、第二変速用ギアと噛み合う第二変速設定用ギアを入力軸と並設する変速調節用軸に設け、第一変速設定用ギアと第二変速設定用ギアを変速調節用軸に対しスライド可能に構成し、
入力軸の下手側で、かつ入力軸と同一軸心位置に作業用出力軸を設け、入力軸から作業用出力軸へ動力を入り切りする作業用入り切りギアを入力軸に設けたことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業機を搭載する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、作業車両の伝動構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−5461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特許文献1の作業車両の伝動構成をさらに簡単にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するために次のような技術的手段を講ずる。
請求項1記載の発明は、
エンジンの動力を受ける入力軸と、第一変速と、第二変速と、第一変速及び第二変速で設定された動力を受ける伝動軸と、伝動軸の動力を受けて走行車輪に動力を伝動する走行用出力軸を備える作業車両において、
前記入力軸には、複数の変速ギアからなる第一変速用ギアと、複数の変速ギアからなる第二変速用ギアを設け、第一変速用ギアと噛み合う第一変速設定用ギアと、第二変速用ギアと噛み合う第二変速設定用ギアを入力軸と並設する変速調節用軸に設け、第一変速設定用ギアと第二変速設定用ギアを変速調節用軸に対しスライド可能に構成し
、
入力軸の下手側で、かつ入力軸と同一軸心位置に作業用出力軸を設け、入力軸から作業用出力軸へ動力を入り切りする作業用入り切りギアを入力軸に設けたことを特徴とする作業車両とする。
【0006】
【0007】
【0008】
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明は、第一変速用ギア(22)と、第二変速用ギア(23)を共通の入力軸(20)に設けると共に、第一変速設定用ギア(35)と第二変速設定用ギア(36)を共通の変速調節用軸(34)に対しスライド可能に構成したことで、伝動構成を簡単にすることができる。
【0010】
【0011】
また、作業用入り切りギア(26)を入力軸(20)に設けたことで、作業機への伝動構成が簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】平面から見たミッションケース及びポンプを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態の作業車両について、以下説明する。本実施の形態では車両の進行方向側を前側と呼ぶ。また、本実施の形態の作業車両は薬液を圃場に散布する薬液散布車両である。
【0014】
走行車体1に左右一対の前輪2及び後輪3を設け、走行車体1の前側にはラジエータ4及びラジエータ4用の補充用の冷却液を収容するリザーブタンク5及びエンジン6等を搭載し、ボンネット7で覆う構成としている。
【0015】
ボンネット7の後方にはステアリングハンドル8を設け、ステアリングハンドル8の後方には運転座席9を設けている。ステアリングハンドル8及び運転座席9の下方にはステップ10を設け、ステップ10の下方には燃料タンク11及び後述するミッションケース12及びポンプ24を設けている。ミッションケース12及びポンプ24は前後方向に延びる車体フレーム18上に載置して取付ける構成としている。
【0016】
運転座席9の後方には薬液を収容する薬液タンク13を設け、運転座席9の左右一側には操作盤14を設け、後述するポンプ入り切り操作レバー17等の薬液散布作業のための各種操作具を備えている。
【0017】
薬液を散布するブーム15は
図9に示すように走行車体1の左右両側に広げ、ブーム15に取付けている多数のノズル16から薬液を散布する。
図1から
図4ではブーム15の収納姿勢の状態で、走行車体1の左右両側に後斜め上がり姿勢とする。
【0018】
次に、伝動構成について説明する。
エンジン6の動力の入力軸20を設け、入力軸20の上手側には主クラッチ21を設け、下手側に向かってミッションケース12内に第一変速用ギア22及び第二変速用ギア23を設けている。第二変速用ギア23のさらに下手側には、薬液タンク13内の薬液をブーム15のノズル16に供給するためのポンプ24を駆動する作業用出力軸25を同一軸芯上に設け、入力軸20に設ける作業用ギア26をシフタ27でスライドさせて入り切りする構成である。シフター27はポンプ入り切り操作レバー17で操作する。
【0019】
本実施の形態では第一変速はいわゆる主変速を指し、第二変速はいわゆる副変速を指すが、第一変速を副変速とし、第二変速を主変速としても良い。
第一変速用ギア22は高速用ギア28と低速用ギア29と第一伝動用ギア30を備え、ベアリング52を介して入力軸20に対して遊転する構成としている。第二変速用ギア23は低速用ギア31と中速用ギア32と高速用ギア33を設け、入力軸20と共に回転する構成である。
【0020】
入力軸20に並設する変速調節用軸34には、スライド可能な第一変速設定用ギア35と第二変速設定用ギア36を設けている。
また、第一変速設定用ギア35と第二変速設定用ギア36の間には、第一変速の低速用ギア29と常時噛み合う第一変速の低速用噛み合いギア37と、第二変速の低速用ギア31と常時噛み合う第二変速の低速用噛み合いギア38を設け、第一変速の低速用噛み合いギア37は変速調節用軸34
に対して遊転する構成とし、第二変速の低速用噛み合いギア38は変速調節用軸34に対してベアリング53を介して遊転する構成である。
【0021】
また、変速調節用軸34の一端には、変速調節用軸34と共に回転する後進用ギア39を設けている。
第一変速設定用ギア35は、第一変速を高速に設定する高速部40と、第一変速を低速に設定する低速部41を形成する。本実施の形態の第一変速設定用ギア35の高速部40は第一変速の高速用ギア28と噛み合う噛み合いギアを形成し、第一変速設定用ギア35の低速部41は、第一変速の低速用噛み合いギア37と一体に形成する嵌め合い用ギア54と嵌合するギア受け部を形成している。また、第一変速設定用ギア35には、後進用ギア39と一体に形成する嵌め合い用ギア55と嵌合する後進用ギア受け部56を形成している。
【0022】
第二変速設定用ギア36は、第二変速を高速に設定する高速部42と、第二変速を中速に設定する中速部43と、第二変速を低速に設定する低速部44とを設ける。本実施の形態の第二変速設定用ギア36の高速部42は、第二変速の高速用ギア33と噛み合う噛み合いギアを形成し、第二変速設定用ギア36の中速部43は、第二変速の高速用ギア33と噛み合う噛み合いギアを形成し、第二変速設定用ギア36の低速部44は、第二変速の低速用噛み合いギア38と一体に形成するギア受け部57と嵌合する嵌め合い用ギアを成している。
【0023】
入力軸20及び変速調節用軸34と並設する伝動軸45には、後進用ギア39と常時噛み合う後進用噛み合いギア46と、第一伝動用ギア30と常時噛み合う第二伝動用ギア47と後述する走行用出力軸49に伝動する第三伝動用ギア48とを設けている。そして、後進用噛み合いギア46と第二伝動用ギア47と第三伝動用ギア48は伝動軸45と共に回転する構成である。
【0024】
伝動軸45と並設する走行用出力軸49には第三伝動用ギア48と常時噛み合う第四伝動用ギア50とブレーキ51を設けている。走行用出力軸49はミッションケース12の前後からそれぞれ外側に突出し、前方へは前輪用伝動軸58、後方へは後輪用伝動軸59を形成する。すなわち、本実施の形態の薬液散布車両は四輪駆動の作業車両である。
【0025】
伝動の作用について説明する。
エンジン6から伝動され入力軸20が回転すると、第二変速23が共に回転する。
第二変速操作レバー60で第二変速設定用ギア36を操作し、低速・中速・高速のいずれかに設定すると入力軸20の回転が変速調節用軸34に伝動する。また、第一変速操作レバー61で第一変速設定用ギア35を操作し、低速・高速のいずれかを設定すると、第一伝動用ギア30が共に回転し、第二伝動用ギア47に伝動されて伝動軸45が回転する。そして、伝動軸45が回転すると第三伝動用ギア48及び第四伝動用ギア50が共に回転し、走行用出力軸49が回転し、走行用車輪が設定された速度で前進する。
【0026】
第一変速設定用ギア35を後進にすると、後進用ギア39及び後進用噛み合いギア46が共に回転し、第三伝動用ギア48及び第四伝動用ギア50を経て走行用出力軸49へ伝動される。
【0027】
入力軸20をミッションケース12の上部に設け、走行用出力軸49をミッションケース12の下部に設けることでミッションケース12がコンパクトなものでありながらの設置地上高さ位置を高く設けることででき、ミッションケース12の下方を通過する作物がミッションケース12に干渉し難く、円滑な圃場での作業を行うことができるものである。
【0028】
入力軸20・変速調節用軸34・伝動軸45・走行用出力軸49はそれぞれミッションケース12内に並設して設ける。入力軸20の上手側端部をミッションケース12の外側に突出して設ける、主クラッチ21を設けている。主クラッチ21の上方をカバー65で覆い、カバー65は入力軸20とミッションケース12で支持する構成としている。
【0029】
図7のボンネット7内部の構成について説明する。リザーブタンク5は走行車体1の前端側で、かつフライホイル62の上方のスペースを利用して設けている。そのため、スペースの有効利用と共に、リザーブタンク5への給水等のメンテナンスがし易い構成である。
【0030】
図8のブレーキ51の作動構成について説明する。
ブレーキ51はミッションケース12内の下部に設け、ステップ10に設けているブレーキペダル63の踏込みにより操作される。ブレーキペダル63とブレーキ51はブレーキロッド64で連結する構成である。ブレーキロッド64は車体フレーム18に支持する構成であり、ブレーキロッド64の下端部はミッションケース12の下端面より上位に設ける走行車体1の地上高さを確保し、走行車体1の下方を通過する作物に当接することを防止する。
【0031】
なお、ブレーキペダル63はステップ10の前側の左右一側に設け、主クラッチ21を作動させるクラッチペダル64をステップ10の左右他側に設けている。
【符号の説明】
【0032】
2 走行車輪(前輪)
3 走行車輪(後輪)
6 エンジン
20 入力軸
22 第一変速用ギア
23 第二変速用ギア
25 作業用出力軸
26 作業用入り切りギア
30 第一伝動ギア
34 変速調節用軸
35 第一変速設定用ギア
36 第二変速設定用ギア
41 第一変速設定用ギアのギア受け部
45 伝動軸
47 第二伝動ギア
48 第三伝動ギア
49 走行用出力軸
53 第一変速用噛み合いギア
55 嵌め合わせ用ギア部