(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
<スロットアンテナの概要>
【0009】
図16は、プリント基板を用いたスロットアンテナ100の概要を示している。
図16のAはスロットアンテナ100のスロット面を示している。
図16のBはストリップ導体面を示している。
図16のC(
図16のBのXVIC−XVIC線断面)は電波放射イメージを示している。
【0010】
プリント基板102には誘電体板104が用いられ、この誘電体板104の表裏面に銅箔が設置されている。このプリント基板102の一面側には銅箔により導体膜106が形成され、その裏面側には銅箔によりストリップ導体108が形成されている。導体膜106にはエッチングによりスロット部110が形成されている。ストリップ導体108もエッチングにより所定形状に形成されている。
【0011】
電波放射では、ストリップ導体108が給電されると、ストリップ導体108とスロット部110との交差点でストリップ導体108からスロット部110が励振される。これにより、スロット部110からプリント基板102の両面側に電波が放射される。このスロットアンテナ100では、誘電体板104の厚さがたとえば、1〔mm〕程度と薄く、導体膜106やストリップ導体108を構成する銅箔の厚さがたとえば、0.02〔mm〕程度である。
【0012】
<スロットアンテナ100への給電>
【0013】
図17のAおよびBはスロットアンテナ100の給電の概要を示している。
図17のAは給電中のスロットアンテナ100をストリップ導体108側から見て示している。
図17のBは
図17のAのXVIIB−XVIIB線断面を示している。
【0014】
このスロットアンテナ100に同軸線112により給電する場合には、ストリップ導体108に同軸線112を垂直に接続する。同軸線112は、同軸上に外導体114および内導体116を備えている。外導体114は半田付け118により導体膜106に接続されている。これにより、導体膜106はグランド状態となる。内導体116は、誘電体板104およびストリップ導体108を貫通させ、その先端部をストリップ導体108の上面に半田付け120により接続される。
【0015】
このように同軸線112による給電では、ストリップ導体108と導体膜106との間に電位差が生じる。つまり、この電位差により、ストリップ導体108を給電し、ストリップ導体108からスロット部110への入力信号による励振、スロット部110から空間への電波放射を行うことができる。
【0016】
図18は、反射板122を備えるスロットアンテナ100を示している。反射板122は金属板で構成される。この反射板122は、プリント基板102からλ/4の位置に設置される。このような反射板122を設置すれば、プリント基板102の片面側(つまり、ストリップ導体108側)に電波放射124を集中させることができる。つまり、スロット部110側への電波放射が不要であれば、反射板122の設置により、ストリップ導体108側に約2倍の電波放射124が得られる。
【0017】
ところで、スロットアンテナ100の給電に同軸線112を用いれば、この同軸線112をプリント基板102上のストリップ導体108に半田付け120で固定すればよい。しかし、内導体116とストリップ導体108との導通が得られるものの、固定強度が低いという課題がある。外部から同軸線112やプリント基板102に応力を受けると、安定した接続状態が維持できないという課題がある。
【0018】
プリント基板102は既述したように薄く、形状変形などの機械的な歪みを生じやすい。この歪みがアンテナ放射パターンを歪ませる原因になるという課題がある。プリント基板102の導体膜106と反射板122との間隔が変化すると、アンテナ放射パターンに歪みが生じるという課題がある。
【0019】
そこで、1つの側面では、本発明は、プリント基板の機械的歪みを抑制すること、または同軸線との固定強度を高めること、または、安定した動作特性を持つスロットアンテナを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本開示の構成にはプリント基板が備えられる。このプリント基板の一方の面には単一または複数のストリップ導体が形成され、他方の面にはストリップ導体と透視的に交差するスロット部を有する導体膜が形成されている。このプリント基板に筐体が固定されている。この筐体には、スロット部を覆い、所定高さの空洞部が形成されている。そして、ストリップ導体に対して単一または複数の同軸部が備えられる。筐体を貫通させた内導体がストリップ導体に接続され、その外導体が導体膜に接続されている。
さらに、本開示の構成では、筐体は、空洞部に摺動可能に設置され、筐体内部の高さを変更する可動板とこの可動板に接続され筐体を貫通して外部に引き出される支持アームとを含み、または空洞部の中央部における空洞部の高さが周辺部における空洞部の高さよりも高くなるように、筐体の空洞部の天井部が曲面にされている。
【発明の効果】
【0021】
本開示のスロットアンテナによれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0022】
(1) スロット部を備える導体膜とともに、ストリップ導体を備えたプリント基板が筐体により補強されるので、プリント基板の機械的歪みを抑制することができる。
【0023】
(2) プリント基板を補強する筐体に同軸部を備えるので、ストリップ導体と同軸線との固定強度が高められる。
【0024】
(3) プリント基板の機械的歪みを抑制し、同軸部を筐体に備えたことにより、安定した動作特性を持つスロットアンテナを実現できる。
【0025】
そして、本発明の他の目的、特徴および利点は、添付図面および各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、第1の実施の形態に係るスロットアンテナを一部を切り欠いて示している。
図1に示す構成は一例であり、斯かる構成に本開示の発明が限定されるものではない。
【0029】
このスロットアンテナ2−1には一例として矩形形状のプリント基板4が備えられている。このプリント基板4の背面側には金属筐体6が設置され、この金属筐体6にプリント基板4が固定されている。金属筐体6はプリント基板4を固定する筐体の一例である。
【0030】
プリント基板4の一方の面(表面)には、その中央部にストリップ導体8が設置されている。このストリップ導体8はたとえば、長方形状であり、プリント基板4の誘電体板10の表面に備える銅箔などの導体膜によって形成されている。このプリント基板4の他方の面(裏面)には導体膜12が設置されている。このスロットアンテナ2−1では、ストリップ導体8と導体膜12とでマイクロストリップ線路が構成され、このマイクロストリップ線路によってスロットアンテナ2−1が構成されている。
【0031】
導体膜12には、ストリップ導体8と透視的にプリント基板4の中心部で直交するスロット部14が形成されている。このスロット部14は、導体膜12が選択的に除去された部分である。このスロット部14はプリント基板4にあるたとえば、銅箔をエッチングによって除去し、誘電体板10の表面を露出させた部分である。ストリップ導体8とスロット部14は交差していればよく、直交状態に限定されるものではない。
【0032】
金属筐体6には空洞部16が形成されている。この空洞部16は、導体膜12のスロット部14を包囲している。
【0033】
金属筐体6にはプリント基板4が重ねられ、このプリント基板4の四隅に設けた貫通孔18から固定ねじ20を金属筐体6に挿通させて強固に固定されている。各固定ねじ20は、プリント基板4の誘電体板10と同様に誘電体材料としてたとえば、樹脂で形成されている。つまり、プリント基板4は金属筐体6が持つ剛性により補強されている。
【0034】
金属筐体6に対するプリント基板4の固定について、この実施の形態では、金属筐体6およびプリント基板4の4隅部に固定ねじ20を配置して固定しているが、4箇所未満または5箇所以上の固定箇所を設定してもよい。
【0035】
図2のAは、
図1のIIA −IIA 線で切断したスロットアンテナ2−1の断面を示している。
図2のBは、
図2のAのIIB部の拡大断面を示している。空洞部16は、金属筐体6の側壁部22および天井部24(図中、下面部)で包囲されている。プリント基板4の導体膜12に形成されたスロット部14は、空洞部16の中央に配置されている。金属筐体6の側壁部22には、既述の貫通孔18の位置に対応するねじ孔26が形成されている。このねじ孔26には、プリント基板4の誘電体板10を貫通させた固定ねじ20が固定されている。これにより、プリント基板4と金属筐体6とが強固に固定され、金属筐体6および導体膜12が導通している。スロット部14を覆う金属筐体6の空洞部16がプリント基板4で閉塞されている。
【0036】
空洞部16の天井部24の面部と、プリント基板4のストリップ導体8の面部との距離は、スロットアンテナ2−1の使用周波数fの波長λ(=c/f、cは光速である)の4分の1(=λ/4)に設定されている。
【0037】
金属筐体6の側壁部22には空洞部16に隣接して同軸部28が形成されている。この同軸部28は、金属筐体6の側壁部22、貫通孔30、内導体32および絶縁体34で構成されている。この場合、金属筐体6の側壁部22は外導体を構成する。貫通孔30は、金属筐体6の側壁部22に形成された同径の透孔である。この貫通孔30には内導体32が設置され、絶縁体34により貫通孔30の中心に保持されている。
【0038】
プリント基板4の裏面側の導体膜12には
図2のBに示すように、貫通孔30に対応して凹部36が形成されている。この凹部36には既述の絶縁体34が設置され、この絶縁体34は誘電体板10に密着している。凹部36の中心には貫通孔38が形成されている。ストリップ導体8および誘電体板10にも同様に貫通孔38が形成されている。
【0039】
内導体32は貫通孔38に貫通させ、その先端がストリップ導体8の上面に突出している。この内導体32の先端部には、ストリップ導体8が半田付け40により接続されている。つまり、同軸部28の内導体32のみがプリント基板4の誘電体板10を貫通してストリップ導体8に接続されている。
【0040】
金属筐体6の側壁部22には同軸コネクタ42が設置されている。この同軸コネクタ42は同軸部28に同軸線44を接続する接続手段の一例である。同軸コネクタ42は筒部46と固定フランジ部48を備えている。筒部46および固定フランジ部48は金属で形成されており、金属筐体6に固定されて外導体を構成している。筒部46および固定フランジ部48には既述の内導体32および絶縁体50が設置されている。内導体32は絶縁体50により筒部46の中心に保持されている。同軸コネクタ42に接続された同軸線44は、外導体52、内導体54および絶縁体56を備えている。外導体52は同軸コネクタ42の筒部46および固定フランジ部48を介して金属筐体6に接続されている。内導体54は同軸コネクタ42を介して同軸部28の内導体32に接続されている。
【0041】
図3は、
図1のIII −III 線で切断したスロットアンテナ2−1の断面を示している。同軸コネクタ42の固定フランジ部48は、金属筐体6の側壁部22にある同軸部28に位置決めされ、金属筐体6に固定ねじ58により固定されている。固定フランジ部48には貫通孔60が形成され、この貫通孔60に貫通させた固定ねじ58が金属筐体6側のねじ孔にねじ込まれている。これにより、同軸コネクタ42と金属筐体6とが一体化されている。
【0042】
斯かる構成では、同軸線44からスロットアンテナ2−1に入力信号S1が加えられると、この入力信号S1により内導体54、32を経てストリップ導体8が給電される。この給電により、ストリップ導体8から入力信号S1によるスロット部14への信号S1の励振が生じ、電波S3がスロット部14から空間に放射される。この場合、金属筐体6により背面側への放射がなく、その反射波S2がストリップ導体8側に生じ、金属筐体6が配置されない場合に比べて約2倍の電波S3が放射される。
【0043】
<第1の実施の形態の効果および利点>
【0044】
(1) プリント基板4に金属筐体6が取り付けられているので、金属筐体6によりプリント板4を強化することができ、プリント基板4の平坦度を維持することができる。プリント基板4側のストリップ導体8およびスロット部14と、空洞部16の間隔を一定に維持することができる。
【0045】
(2) スロット部14を備える導体膜12は金属筐体6に密着、接続されて強化され、安定したグランドを構成できる。
【0046】
(3) スロットアンテナ2−1の給電点の接続が金属筐体6に備える同軸部28によりリジッド化される。プリント基板4が金属筐体6により補強されるので、安定したグランドを形成できるとともに、プリント基板4の機械的な歪みを抑制できる。
【0047】
(4) プリント基板4と金属筐体6との固定がストリップ導体8やスロット部14から離れた位置で、樹脂製の固定ねじ20により固定されているので、スロットアンテナ2−1への固定ねじ20による影響はなく、アンテナ特性が損なわれない。
【0049】
図4および
図5は、スロットアンテナ2−1の変形例を示している。
図5は、
図4のV −V 線で切断したスロットアンテナ2−1の断面を示している。このスロットアンテナ2−1では
図4に示すように、空洞部16の平面形状を円形状に形成している。また、
図5に示すように金属筐体6の空洞部16の天井部24(図中底面)を湾曲面に形成している。このスロットアンテナ2−1では空洞部16の平面形状と天井部24の面形成の両方を変更したが、何れか一方を変更してもよい。
【0050】
斯かる構成によれば、空洞部16の平面形状を変更することにより、電磁界モードを調整することができる。また、このような湾曲面から成る天井部24を備えれば、金属筐体6の天井部24を広い周波数範囲で反射板として作用させることができる。斯かる構成では、広帯域で良好な放射特性を有するスロットアンテナ2−1を実現できる。
【0052】
図6および
図7は、第2の実施の形態に係るスロットアンテナアレイを示している。
図7は、
図6のVII −VII 線で切断したスロットアンテナアレイの断面を示している。このスロットアンテナアレイ2−2では複数のスロットアンテナ2−1をマトリクス状に配列したものであり、一例として4行4列のスロットアンテナ2−1を備えている。
【0053】
このスロットアンテナアレイ2−2では、隣接するスロットアンテナ2−1のストリップ導体8の幅方向の間隔、スロット部14の幅方向の間隔を使用周波数fの波長の2分の1波長に設定している。つまり、既述のスロットアンテナ2−1をアレイアンテナとして使用する場合には、
図6に示すように、隣接する各スロットアンテナ2−1の間隔を使用放射電波の2分の1波長(λ/2)以下にする必要がある。これはグレーティングローブ抑圧を回避するためである。具体的には、レーダ波帯(Xバンド)で使用する場合にはたとえば、15〔mm〕程度の間隔以下に設定することが必要である。このスロットアンテナアレイ2−2では、
図7に示すように、金属筐体6で構成される各反射板とストリップ導体8との距離が同一に設定されている。
【0054】
<第2の実施の形態の効果および利点>
【0055】
(1) このスロットアンテナアレイ2−2では、各スロットアンテナ2−1に個別に金属筐体6が備えられ、各金属筐体6に個別に空洞部16が形成されている。つまり、このスロットアンテナアレイ2−2では、1スロット分の金属筐体6をそれぞれのスロットに対して取り付ける構造としている。このため、各プリント基板4の強度が高められるとともにグランドを強固に形成できる。
【0056】
(2) 斯かる構成では、各スロットアンテナ2−1が隣接するスロットアンテナ2−1からの影響を受けにくく、第2の実施の形態では、アンテナ間の間隔を一定にしているが、4分の1波長までの幅でアンテナ間距離を変化させることができる。つまり、隣接するスロットアンテナ2−1間の距離を異ならせることができる。これにより、スロットアンテナアレイ2−2のアンテナ性能や機能の向上を図ることができる。
【0057】
(3) また、斯かる構成では、アンテナ間結合を抑制でき、アンテナ特性の劣化を低減でき、各スロットアンテナ2−1の単素子でのアンテナ放射パターンが損なわれない。つまり、各スロットアンテナ2−1のアンテナ放射パターンが良好に保たれるので、アレイアンテナとしての放射特性(利得や効率)など、良好なアンテナ性能が得られる。
【0058】
(4) 各反射板とストリップ導体8との距離が同一に設定されている。このため、各スロットアンテナから放射される電波の放射特性を強めることができる。
【0059】
(5) このようなスロットアンテナアレイ2−2では、各スロットアンテナ2−1に個別に給電でき、多数のアンテナに対して単一給電する形態に比較し、各スロットアンテナ2−1の入出力特性を給電により制御できるなど、給電の自由度を高めることができる。
【0060】
(6) 反射板を構成する金属筐体6では剛性が高く、プリント基板4の補強により、優れたスロットアンテナを構成できる。因みに、多数のアンテナに対して、支えが少ない1つの反射板を用いた場合では、十分な強度が得られないため、アンテナ間で結合を生じ、アンテナ性能を劣化させる原因になる。このような不都合を金属筐体6の設置によって改善することができる。
【0061】
(7) 複数のスロットアンテナを用いてアレイ化する場合には、各アンテナからの出力信号からの信号を効率的に合成でき、アレイアンテナの放射性能(利得や効率)を劣化させることがない。
【0062】
<スロットアンテナアレイ2−2の変形例>
【0063】
図8および
図9は、スロットアンテナアレイ2−2の変形例を示している。
図9は、
図8のIX −IX 線で切断したスロットアンテナアレイの断面を示している。このスロットアンテナアレイ2−2では
図8に示すように、各金属筐体6の空洞部16の平面形状を円形状に形成している。また、
図9に示すように各金属筐体6の空洞部16の天井部24を湾曲面に形成している。このスロットアンテナアレイ2−2では各空洞部16の平面形状と天井部24の面形成の両方を変更したが、何れか一方を変更してもよい。
【0064】
斯かる構成によれば、空洞部16の平面形状を変更することにより、電磁界モードを調整することができる。また、このような湾曲面から成る天井部24を備えれば、金属筐体6の天井部24を広い周波数範囲で反射板として作用させることができる。斯かる構成では、広帯域で良好な放射特性を有するスロットアンテナアレイ2−2を実現できる。
【0066】
図10は、第3の実施の形態に係るスロットアンテナアレイを示している。
図10に示す構成は一例であり、斯かる構成に本開示の発明が限定されるものではない。
【0067】
このスロットアンテナアレイ2−3ではプリント基板4−3の一方の面(表面)に複数のストリップ導体8をマトリクス状に配列し、プリント基板4−3の他方の面(裏面)に複数のスロット部14をマトリクス状に配列している。スロットアンテナアレイ2−3は、一例として2行2列のスロットアンテナを備えている。複数のスロット部14は、導体膜12−3を形成した誘電体板10−3の表面を露出させた部分である。複数のストリップ導体8は、一対一で複数のスロット部14と透視的に直交している。ストリップ導体8とスロット部14は交差していればよく、直交状態に限定されるものではない。
【0068】
金属筐体6−3には複数の空洞部16がマトリクス状に形成され、一例として空洞部16が2行2列に形成されている。この複数の空洞部16は、一対一で複数のスロット部14を包囲している。
【0069】
金属筐体6−3にはプリント基板4−3が重ねられる。このプリント基板4−3の四隅部、プリント基板4−3の各辺の中心部およびプリント基板4−3の中心部には貫通孔が設けられ、この貫通孔から固定ねじ20を金属筐体6−3に挿通させて金属筐体6−3とプリント基板4−3とが強固に固定されている。各固定ねじ20は、プリント基板4−3の誘電体板10−3と同様に誘電体材料としてたとえば、樹脂で形成されている。つまり、プリント基板4−3は金属筐体6−3が持つ剛性により補強されている。
【0070】
プリント基板4−3の厚さ方向の構成は、第1および第2の実施の形態のプリント基板4と同様であり、同軸部28、同軸コネクタ42および同軸線44の構成ならびに接続構造は、第1および第2の実施の形態と同様である。また、隣接するストリップ導体8の幅方向の間隔、スロット部14の幅方向の間隔は第2の実施の形態と同様である。
【0071】
この実施の形態では、一つの金属筐体6−3に複数の空洞部16を設け、一つのプリント基板4−3で2行×2列のアンテナ素子を構成している。つまり、第2の実施の形態と比較すれば明らかなように、プリント基板4および金属筐体6を共通化した構成である。
【0072】
斯かる構成によれば、プリント基板4および金属筐体6の共通化を図ることができるとともに、共通化したプリント基板4−3を共通化した金属筐体6−3で強化することができる。各ストリップ導体8、スロット部14および空洞部16の位置がプリント基板4−3と金属筐体6−3との固定により容易に固定することができ、プリント基板4−3の歪みを防止でき、アンテナ特性を安定化することができる。なお、空洞部16およびアンテナ素子の配列は、2行×2列に限らず、他の配列であってもよい。
【0074】
(1)上記実施の形態では、空洞部16の天井部24で電波を反射させる構成としているが、これに限定されない。
図11に示すスロットアンテナアレイ2−4では、金属筐体6が可動板62とこの可動板62に接続された支持アーム64を備えている。
【0075】
可動板62は、金属筐体6の空洞部16の平面形状と同形状を有し、空洞部16に摺動可能に設置され、金属筐体6の内部の高さ、すなわち金属筐体6の深さを調整する機能を有する。つまり、可動板62の摺動により、可動板62の面部とスロット部14の面部との距離が調整される。可動板62は支持アーム64を操作することで摺動する。支持アーム64は、金属筐体6の天井部24を貫通し、金属筐体6の外側に引き出されている。斯かる構成により、可動板62を金属筐体6の外側から摺動させることができる。
【0076】
可動板62は金属板などで構成され、電波を反射する。この場合、各スロットアンテナ2−5における筐体の高さがλ/4である場合、全てのスロットアンテナ2−5のアンテナ素子から電波を放射することができ、電波の放射を強くできる。また、
図12に示すように、筐体の内部の高さがλ/4であるスロットアンテナ2−5と、筐体の内部の高さがλ/2であるスロットアンテナ2−5とを交互に配置してもよい。このように配置すると、筐体の内部の高さがλ/2であるスロットアンテナ2−5のアンテナ素子からは電波が放射されず、ビームの形状を変化させることができる。つまり、ビームの幅やサイドローブレベルを変化させることができる。筐体の内部の高さをλ/4またはλ/2としたがその他の高さであってもよく、可動板62の面部とストリップ導体8の面部との距離をλ/4、λ/2またはその他の距離としてもよい。可動板62の設置位置を変更することでビームの形状を変化させることができる。
【0077】
この実施の形態では、可動板62を備えて金属筐体6の一部を可動可能にし、筐体の内部の高さを容易に変更することができる。斯かる構成により、各スロットアンテナの調整の自由度が高められる。各スロットアンテナを設置環境に応じて調整することが可能になるほか、筐体の内部の高さを変化させて電波との関係を調べる実験素子として用いることができる。
【0078】
(2) 筐体の内部の高さを変更する構成について、スロットアンテナアレイ2−4を例示したが、これに限定されない。スロットアンテナ2−5を個別に用いる構成にしてもよい。斯かる構成によれば、スロットアンテナ2−5から放射する電波の周波数を調整することができる。
【0079】
(3)
図11および
図12に示すスロットアンテナアレイ2−4では、可動板62により筐体の内部の高さを変更したが、これに限定されない。
図13に示すように、金属筐体6で構成される各反射板とストリップ導体8との距離h1、h2(≠h1)のように個別に変化させてもよい。斯かる構成によれば、反射板とストリップ導体8との距離が異なる複数のスロットアンテナ2−1により、使用周波数の広帯域化やビーム制御などを行うことができる。
【0080】
(4) 金属筐体6について、上記実施の形態では、プリント基板4に固定される金属筐体6を無垢の金属体で構成しているが、これに限定されない。
図14に示すスロットアンテナ2−1には、基材に合成樹脂からなる筐体600を使用している。この筐体600の表面部にスパッタや塗布によって導体層602を形成し、既述の金属筐体6と同様の機能を得てもよい。
【0081】
(5) ストリップ導体8とスロット部14の成す角度θについて、上記実施の形態では、ストリップ導体8とスロット部14とを直交させているが、これに限定されない。
図15に示すように、ストリップ導体8とスロット部14の成す角度θは、90度である必要はなく、90度以下に設定してもよい。この角度設定によって、ストリップ導体8とスロット部14との結合を変化させることができ、所望のアンテナゲインを得る構成としてもよい。
【0082】
(6) 上記実施の形態では、空洞部16の平面形状を矩形形状または円形状としているが、これらの形状に代え、楕円形またはひし形などの他の形状に形成することにより、電磁界モードを調整する構成としてもよい。
【0083】
以上説明したように、本開示の構成の最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。