(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、2つの被着体を一体化させる接合方法としては、咬合、溶接、接着剤や粘着剤による接着方法があり、それぞれの分野で用途に応じて多用されている。近年、自動車などの輸送機関連の用途では、温暖化防止に炭酸ガスCO
2排出の削減などの課題解決として、車体の軽量化、ハイブリッド車や電気自動車の普及が進んでいる。そのために、車体に軽量なアルミニウムやマグネシウム、FRP(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics、GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)を使用する傾向が強くなってきている。
【0003】
ところで、従来の溶接法では、アルミニウムと鉄などの異種材料の溶接は非常に困難であり、ガラス繊維や炭素繊維のFRPに至っては溶接自体が不可能であり、これらの材料(被着体)を、溶接と同定の接合強度を有するような接合方法が必要とされる。溶接等により接合できない材料間での接合方法としては、接着剤を用いる方法があるが、このような材料を接合するための接着剤としては、金属同士、金属と有機材料、有機材料と有機材料とを接着できること、接着強度が構造用途に使用できるように強力であること、また、接着強度は温度変化で劣化しないこと、などが求められている。
【0004】
上記のような要求を満たす接着剤として、一般的に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用されている。しかしながら、エポキシ接着剤は、硬化後の樹脂自体の機械的強度は高いものの靱性に劣り、航空機や自動車等の用途にエポキシ接着剤を使用した場合に、脆性破壊による接着強度の低下が問題となる場合がある。このような問題に対して、熱可塑性樹脂等をエポキシ樹脂に加えて、エポキシ接着剤に柔軟性を持たせることが試みられている(例えば、特開2003−82034号公報等)。
【0005】
しかしながら、特開2003−82034号公報で提案されているような、柔軟性を有する熱可塑性樹脂をエポキシ接着剤に添加すると、接着剤の耐熱性や耐水性が損なわれるため、高温環境下での使用に制限があったり、また耐水性が必要とされる用途に使用できないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、今般、特定のアクリル系樹脂を、エポキシ系樹脂に添加することにより、靱性を有し、かつ、高温環境下においても優れた接着強度を保持でき、かつ耐水性にも優れる接着剤を実現できる、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、金属同士、金属と有機材料、有機材料と有機材料とを接着できるとともに、靱性を有し、かつ、高温環境下においても優れた接着強度を保持でき、かつ耐水性にも優れる接着剤組成物を提供することである。
【0009】
また、本発明の別の目的は、上記のような接着剤組成物を用いた接着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による接着剤組成物は、エポキシ系樹脂と、アクリル系樹脂と、硬化剤と、を含んでなる接着剤組成物であって、
前記アクリル系樹脂が、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートの2元共重合体またはその変性物からなることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の態様によれば、前記エポキシ系樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂であってもよい。
【0012】
また、本発明の態様によれば、前記エポキシ系樹脂が、常温で液状のビスフェノール型エポキシ樹脂およびガラス転移温度が50〜150℃の範囲にある常温で固体のビスフェノール型エポキシ樹脂の2種のビスフェノール型エポキシ樹脂からなるものであってもよい。
【0013】
また、本発明の態様によれば、前記エポキシ系樹脂と前記アクリル系樹脂との配合割合が、100:4〜100:20であってもよい。
【0014】
また、本発明の態様によれば、前記室温で液状のビスフェノール型エポキシ樹脂と、前記室温で固体のビスフェノール型エポキシ樹脂とが、1:100〜100:1の割合で含まれていてもよい。
【0015】
また、本発明の態様によれば、前記エポキシ系樹脂が140〜260質量部、前記アクリル系樹脂が10〜50質量部、および、前記硬化剤が1〜30質量部、含まれていてもよい。
【0016】
また、本発明の態様によれば、前記2元共重合体が、メチルメタクリレート単位とブチルアクリレート単位とを1:1〜50:1の割合で含んでいてもよい。
【0017】
また、本発明の別の態様による接着シートは、第1離型紙と、接着層と、第2離型紙とを、この順で積層してなる接着シートであって、前記接着層が、上記接着剤組成物を含んでなるものである。
【0018】
また、本発明の態様によれば、前記接着層が芯材をさらに含んでなり、前記接着剤が前記芯材に含浸されていてもよい。
【0019】
また、本発明の別の態様による接着方法は、上記接着シートを用いて第1被着体と第2被着体とを接着する方法であって、
前記接着シートから、第1離型紙および第2離型紙を剥離し除去して接着層を露出させ、
前記接着層を、前記第1被着体および前記第2被着体で挟んで、前記第1被着体および前記第2被着体の仮固定を行い、
前記接着層を、加熱することにより硬化させて、前記第1被着体および前記第2被着体を接着することを含んでなるものである。
【0020】
また、本発明によれば、上記の接着方法により得られる貼合体も提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、エポキシ系樹脂中に特定のアクリル系樹脂が添加されているため、金属同士、金属と有機材料、有機材料と有機材料とを接着できるとともに、靱性を有し、かつ、高温環境下においても優れた接着強度を保持でき、かつ耐水性にも優れる接着剤組成物を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明による接着剤組成物は、エポキシ系樹脂と、アクリル系樹脂と、硬化剤と、を必須成分として含む。以下、接着剤組成物を構成する各成分について説明する。
【0024】
<エポキシ系樹脂>
本発明による接着剤組成物に用いられるエポキシ系樹脂は、少なくとも1つ以上のエポキシ基またはグリシジル基を有するプレポリマーが、硬化剤との併用により架橋重合反応により硬化したものを意味する。このようなエポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂等が挙げられ、またフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾールフェノール樹脂等のフェノール樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらエポキシ系樹脂の中でも、本発明においては、ビフェニル骨格、ビスフェノール骨格、スチルベン骨格などの剛直構造を主鎖に持つエポキシ樹脂が好ましく、より好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、特に好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0025】
上記したビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格の繰り返し単位の数によって、常温で液体のものと、常温で固体のものが存在する。主鎖が0〜1のビスフェノールA型エポキシ樹脂は常温で液体、主鎖が2〜10のビスフェノールA型エポキシ樹脂は常温で固体である。このような比較的低分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂は結晶性があり、常温で結晶化して固体のものも、融点以上の温度になると、急速に融解して低粘度の液状に変化する。したがって、被着体を接合する工程において、加熱によって接着剤が被着体に密着し、固化することによって接着剤と被着体とが強固に接着するため、接着強度を高めることができる。また、このような比較的低分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、架橋密度が高くなるため、機械的強度が高く、耐薬品性がよく、硬化性が高く、吸湿性(自由体積が小さくなるため)が小さくなる特徴もある。
【0026】
本発明においては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、上記したような常温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、常温で液体のビスフェノールA型エポキシ樹脂とを併用して使用することが好ましい。常温で固体のものと液体のものとを併用することにより、機械的強度を保ちつつ、柔軟性や製膜性を向上させることが出来るため、樹脂(接着剤組成物)が本来有する機械的強度を維持しつつ、柔軟性や製膜性に優れた粘着シートを得ることができる。その結果、被着体どうしの接合強度を向上させることができる。常温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、機械的強度、耐熱性および製膜性の観点から、ガラス転移温度が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。具体的には、常温で液体である主鎖が0〜1のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン社製、JER828が、常温で固体である主鎖が2〜10のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン社製、JER1001などが例示できる。
【0027】
常温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、常温で液体のビスフェノールA型エポキシ樹脂との配合割合は、接着剤を使用する用途にもよるが、質量基準において、1:100〜100:1の割合で含まれていることが好ましい。両者の配合割合を上記の範囲とすることによって、より接着強度に優れる接着剤とすることができる。
【0028】
<アクリル系樹脂>
本発明による接着剤組成物に含まれるアクリル系樹脂として、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートの2元共重合体またはその変性物を使用する。このようなメタアクリル酸エステル重合体ブロック(以下、MMAと略す場合がある)と、アクリル酸ブチル重合体ブロック(以下、BAと略す場合がある)とからなる2元ブロック共重合体を、上記したエポキシ系樹脂に添加することにより、靱性を有し、かつ、高温環境下においても優れた接着強度を保持でき、かつ耐水性にも優れる接着剤を実現できる。その理由は定かではないが、以下のように推定できる。
【0029】
MMA−BA−MMAの2元共重合体は、MMA部分が「硬い」セグメントとなり、BA部分が「柔らかい」セグメントとなる。従来の接着剤では、エポキシ系樹脂に靱性(柔軟性)を付与するためにアクリル系樹脂を添加することが行われていたが、アクリル樹脂を添加することにより、接着剤自体の耐熱性が低下していた。上記のような「硬い」セグメントと「柔らかい」セグメントとを併せ持つアクリル系樹脂であれば、「硬い」セグメント部分が耐熱性に寄与し、「柔らかい」セグメント部分が、靱性ないし柔軟性に寄与するため、靱性を有し、かつ、高温環境下においても優れた接着強度を保持でき、かつ耐水性にも優れる接着剤を実現できるものと考えられる。
【0030】
上記したMMA−BA−MMAの2元共重合体は、一般的なリビングラジカル重合を用いて製造することができる。このうち、重合反応の制御の容易さの点などから、原始移動ラジカル重合によって好適に製造することができる。原子移動ラジカル重合法は、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、金属錯体を触媒とする重合法である。リビングラジカル重合法によりMMA−BA−MMAの2元共重合体を製造する場合、モノマー単位を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次の重合体ブロックを重合する方法、別々に重合した重合体ブロックを反応により結合する方法などが挙げられるが、モノマー単位の逐次添加による方法によってMMA−BA−MMAの2元共重合体を製造することが好ましい。
【0031】
モノマー単位の逐次添加によりMMA−BA−MMAの2元共重合体を製造する方法においては、MMAブロックを構成するメタアクリル酸エステルと、BAブロックを構成するアクリル酸ブチルとの添加順序について、先にメタアクリル酸エステルモノマーを重合した後にアクリル酸ブチルモノマーを追加する方法と、先にアクリル酸ブチルモノマーを重合した後にメタアクリル酸エステルモノマーを追加する方法が挙げられるが、先にアクリル酸ブチルモノマーを重合して、BAブロックの重合末端からMMAブロックを重合させる方が、重合制御が容易である。MMAとBAとの比率は、リビングラジカル重合反応させる際のモノマーの投入量によって制御することができる。MMA−BA−MMAの2元共重合体におけるMMAブロックとBAブロックとの割合は、BAブロックの割合が増加すると、接着剤の靱性や柔軟性が向上し、一方、MMAブロックの割合が増加すると、接着剤の耐熱性が向上する。本発明においては、接着剤の靱性および耐熱性の観点から、MMAブロックとBAブロックとの割合は、モノマー単位の数において、1:1〜50:1であることが好ましい。
【0032】
上記したMMA−BA−MMAの2元共重合体は、BAブロックまたはMMAブロックの一部に、カルボン酸、水酸基、アミド基等の官能基を導入した変性物であってもよい。このような変性物を使用することにより、より耐熱性が向上するとともに、上記したエポキシ系樹脂との相溶性も向上するため、より接着強度が向上するが、カルボン酸、水酸基、アミド基等の親水性の官能基を有しているため、耐水性が低下する傾向にある。
【0033】
上記したエポキシ系樹脂にMMA−BA−MMA2元共重合体を添加すると、MMAブロック部分がエポキシ系樹脂と相溶し、BAブロック部分がエポキシ系樹脂と相溶しないため、エポキシ系樹脂をマトリックスとした自己組織化が起こる。その結果、樹脂硬化前の段階で、エポキシ系樹脂が海、アクリル系樹脂が島である海島構造が発現する。また、MMA−BA−MMA2元共重合体に上記のような官能基が導入されている場合、エポキシ系樹脂とアクリル系樹脂との相溶性が向上するため、島部分が小さくなり、見かけ上、両者が相溶した状態となる。このような海島構造や見かけ上の相溶状態が発現されることにより、界面破壊を避けることができ、優れた接着強度を維持できる。一方、官能基を導入していない未変性アクリル系樹脂を使用する等アクリル系樹脂の極性を下げて、エポキシ樹脂との相溶性を低下させると、上記したのとは逆に、エポキシ系樹脂が島、アクリル系樹脂が海であるような海島構造が発現するため、接着強度をある程度維持しつつ、粘着シートの耐水性を飛躍的に向上させることができる。このような海島構造を有する場合、粘着剤(樹脂)と被着体との界面からの水侵入を抑制できるため、さらに耐水性に優れた粘着シートを実現することができる。
【0034】
上記のような海島構造を発現させるには、エポキシ系樹脂とアクリル系樹脂(MMA−BA−MMA2元共重合体)とを、質量基準において、100:4〜100:20の割合で配合することが好ましい。上記のような割合で両者を配合すると、樹脂硬化前の段階で、エポキシ系樹脂(海)中に、ナノオーダーレベルの微粒子状にアクリル系樹脂(島)が分散し、見かけ上の相溶状態が発現される。見かけ上の相溶状態を維持しながら樹脂が硬化することにより優れた接着強度を維持できる。
【0035】
<硬化剤>
アクリル系樹脂とエポキシ系樹脂とは加熱等により反応が進行して接着剤組成物が硬化するが、本発明においては、硬化反応を促進するために、接着剤組成物中に硬化剤が含まれる。硬化剤としては、例えばジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物等のアミン系硬化剤、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物(液状酸無水物)、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物等の酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂等のフェノール系硬化剤が例示できる。特に、ジシアンジアミド(DICY)は潜在性の硬化剤のため、保存安定性に優れ、室温保存でもポットライフが数週間もあるので好ましい。また、硬化促進剤としてイミダゾール類を含ませてもよい。
【0036】
硬化剤の接着剤組成物中の含有量は、エポキシ系樹脂の含有量を140〜260質量部、アクリル系樹脂が10〜50質量部とした場合に、1〜30質量部含まれていることが好ましい。硬化剤の配合比がこの範囲未満であると、接合後の耐熱性が低く、また接着強度が温度変化で劣化しやすい。硬化剤の含有量がこの範囲を超えると、接着シートを被着体と接合するまで保管した場合に、その保管期間中の保存安定性(ポットライフ)が低下し、また、接着剤の硬化後も未反応の硬化剤が残留することで、接着力が低下する問題点もある。
【0037】
さらに、接着剤組成物には、必要に応じて、例えば、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、例えば、滑剤、可塑剤、充填剤、フィラー、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料等の着色剤、その他等を添加してもよい。また、必要に応じて、さらにシラン系、チタン系、アルミニウム系などのカップリング剤を含むことができる。これにより樹脂と被着体および樹脂と後述する芯材との密着性を向上させることができる。
【0038】
本発明において使用される接着剤組成物は、上記した各成分を混合し、必要に応じて混練、分散して、接着剤を調製することができる。混合ないし分散方法は、特に限定されるものではなく、通常の混練分散機、例えば、二本ロールミル、三本ロールミル、ペブルミル、トロンミル、ツェグバリ(Szegvari)アトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、デスパー、高速ミキサー、リボンブレンダー、コニーダー、インテンシブミキサー、タンブラー、ブレンダー、デスパーザー、ホモジナイザー、および超音波分散機などが適用できる。硬いエポキシ系樹脂として複数種を用いる場合は、先にこれらを混合撹拌し、次に硬化剤を混合撹拌し、溶媒で希釈した後に、軟かいエポキシ系樹脂を混合撹拌し、次いで、アクリル系樹脂を混合撹拌することが好ましい。
【0039】
<接着シート>
本発明による接着シートは、
図1に示すように、上記の接着剤組成物からなる接着層の両面に第1離型紙および第2離型紙が設けられている層構成を有する。なお、本明細書では、第1離型紙21Aと第2離型紙21Bとを合わせて離型紙21と呼称する。接着層は、
図2に示すように、芯材をさらに含み、接着剤が芯材に含浸されていてもよい。芯材としては、織布または不織布が好ましく、従来公知の種々の織布または不織布を使用できる例えば、液晶ポリマーなどの耐熱性のあるプラスチックの繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維などが例示でき、これらで構成した織布、不織布が使用できる。
【0040】
接着層が芯材を含む場合、コーティング機を用いて、後記する第1離型紙21と芯材15とを重ねて走行させて、その芯材15面に上記した接着剤13組成物を塗布することで、芯材15へ含浸されるので、乾燥後に、塗布面に第2離型紙21Bを貼り合わせて、接着シート1が得られる。
【0041】
離型紙への接着剤組成物の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ロールコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ロッドコ−ト、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ダイコート、リップコート、ディップコートなどが適用できる。組成物を、第1離型紙21Aの離型面、または第1離型紙21Aと芯材15を重ねて、芯材15面へ、上記のコーティング法で塗布して、乾燥した後に、第2離型紙21Bを貼り合わせればよい。組成物(塗布液)の粘度は、1〜20000センチストークス(25℃)程度、好ましくは1〜2000センチストークスに調整する。芯材15へ含浸塗布する場合には、粘度が低い方が好ましく、1〜1000センチストークスである。
【0042】
第1離型紙21Aと第2離型紙21Bは同じものでも異なったものを用いてもよい。離型紙21としては、離型フィルム、セパレート紙、セパレートフィルム、セパ紙、剥離フィルム、剥離紙等の従来公知のものを好適に使用できる。また、上質紙、コート紙、含浸紙、プラスチックフィルムなどの離型紙用基材の片面または両面に離型層を形成したものを用いてもよい。離型層としては、離型性を有する材料であれば、特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂などがある。これらの樹脂は、エマルジョン型、溶剤型または無溶剤型のいずれもが使用できる。
【0043】
離形層は、離形層成分を分散および/または溶解した塗液を、離型紙用基材フィルムの片面に塗布し、加熱乾燥および/または硬化させて形成する。塗液の塗布方法としては、公知で任意の塗布法が適用でき、例えば、ロールコート、グラビアコート、スプレーコートなどである。また、離形層は、必要に応じて、基材フィルムの少なくとも片面の、全面または一部に形成してもよい。
【0044】
第一および第二離型紙の剥離力は、接着シートに対し、1〜2000mN/cm程度、さらに100〜1000mN/cmであることが好ましい。離形層の剥離力が1mN/cm未満の場合は、接着シートや被着材との剥離力が弱く、剥がれたり部分的に浮いたりする。また、2000mN/cmより大きい場合は、離形層の剥離力が強く、剥離しにくい。安定した離形性や加工性の点で、ポリジメチルシロキサンを主成分とする付加および/または重縮合型の剥離紙用硬化型シリコーン樹脂が好ましい。
【0045】
<被着体の接着方法>
被着体との接合は、接着シート1の第1離型紙21Aおよび第2離型紙21Bを剥離し除去して、接着層11を露出させる。露出した接着層11を、2つの同じまたは異なる第1被着体および第2被着体で挟み、接着層11の粘着性で保持させる。次いで、加熱、または加圧加熱することで接着層11を硬化させて、第1被着体および第2被着体を強固に接着させることができる。このように、本発明による接着シートを用いることにより、初期粘着性を利用して、被着体どうしを仮固定でき、その後に、例えばバッチ方式により粘接着シートを熱硬化させて被着体を接着できるため、プレヒートなどの工程を省くことができるとともに、生産性が著しく向上する。
【0046】
被着体としては、特に限定されるものではないが、金属、無機材料、有機材料、これらを組み合わせた複合材料や、積層材料などが例示できる。
【0047】
硬化時の加熱温度は、60℃〜250℃程度、好ましくは100℃〜180℃である。加熱時間は1〜240分間、好ましくは10〜120分間である。硬化した接着シート1の接着層11は、初期粘着性を有し、プレヒートなどの工程がなく、粘着力のみで被着体を保持して作業できるので、作業性がよく、低コストでもある。また、接着層の材料およびその配合比を選択することで、金属同士、金属と有機材料、有機材料と有機材料とを接着することができる。さらに、エポキシ系樹脂に起因する強固な接着強度が得られ、この接着強度は温度変化でも劣化しにくく、また、アクリル系樹脂に起因するために脆質性が低く、優れた剪断強度と高い耐衝撃性、耐熱性を有するので、構造用途に使用できる。
【0048】
<貼合体>
本発明による接着シートを用いることにより、従来の溶接法では困難な、ガラス繊維や炭素繊維のFRP、異種金属などの材料(被着体)を強力に接合でき、例えば、アルミニウムと鉄等の金属との貼合体や、FRPやCFRPどうしの貼合体を得ることができる。これら貼合体は、温度変化を受けることなく優れた接着強度を保持できるとともに、脆質性が低く、優れた剪断強度と高い耐衝撃性、耐熱性を有するため、自動車、航空機、船舶等の分野に限らず、電子機器類、電子機器筐体、家電製品、インフラ系構造物、ライフライン建材、一般建材等の分野で利用することができる。
【実施例】
【0049】
本発明を、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例の内容に限定されるものではない。なお、各層の各組成物は溶媒を除いた固形分の質量部である。
【0050】
実施例1〜20および比較例1〜8
<接着剤組成物の調製>
下記の表1および表2に示す組成に従って、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に硬化剤および硬化促進剤を添加して攪拌機により混合した後、混合物にアクリル系樹脂を添加して混合することにより、接着剤を調製した。なお、下記の表1中、
JER828、JER1001およびJER1009は、三菱化学社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂を、
W−197Cは、根上工業社製のアクリル酸エチル−メタアクリル酸メチル共重合体を、
SKダイン1495は、総研化学社製のアクリル−酢酸ビニル共重合体を、
LC#6500は、東栄化成社製のポリメタクリル酸メチルを、
M53、M22およびM22は、アルケマ社製のメチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートの2元共重合体を、
M22N、およびSM4032X10は、アルケマ社製の極性基が導入された変性メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートの2元共重合体を、
DICY7は、三菱化学社製のジシアンジアミドを、
HIPA−2E4MZは、日本曹達社製の包接イミダゾールを、
アミキュアMY−H、およびアミキュアPN−50は、味の素ファインテクノ社製のアミンアダクトを、
FXR−1030は、味の素ファインテクノ社製の尿素アダクトを、
R202は、エボニック社製のシリカを、
KBM−403は、信越シリコーン社製のシランカップリング剤を、それぞれ表す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
<接着シートの作製>
得られた接着剤を、セパフィルム(SP−PET 03BU、東セロ社製)に重ね合わせた芯材(ベクルスMBBK6FZSO、クラレ社製)の表面に、コンマコーターにて、塗布量が100g/m
2となるように塗布して、芯材に接着剤を含浸させて接着層を形成し、その接着層上に、セパフィルム(SP−PET 01BU、東セロ社製)を貼り合わせることにより接着シートを作製した。
【0054】
<貼合体の作製>
得られた接着シートを25mm×12.5mmに裁断し、一方のセパフィルムを剥離して接着層を露出させて、一方の被着体である鉄板(長さ100mm×幅25mm×厚み1.5mm)の先端部分に貼り付けた。鉄板に貼りつけた接着シートからセパフィルムを剥離して接着層を露出させて、その接着層部分に、他方の被着体である鉄板(長さ100mm×幅25mm×厚み1.5mm)の先端部分を貼りつけた。
【0055】
次いで、仮固定された被着体の上に3kgの荷重をかけて130℃で2時間、接着層の加熱硬化を行うことにより貼合体を得た。
【0056】
<接着強度評価>
得られた各貼合体について、下記の各環境下での接着強度の評価を行った。
(1)初期接着強度
実施例1〜14および比較例1〜5の各貼合体について、23℃および80℃、50%RHの各環境下で、の環境下で、上記で得られた試料の両端をテンシロン(オリエンテック製RTA−1T)に固定して、1mm/minで引張り、せん断強度を測定した。評価結果は、下記の表3に示される通りであった。
【0057】
また、実施例15〜20および比較例6〜8の各貼合体について、23℃、50%RHの環境下で、試料の両端をテンシロン(オリエンテック製RTA−1T)に固定して、1mm/minで引張り、せん断強度を測定した。評価結果は、下記の表4に示される通りであった。
【0058】
(2)高温熱水環境下で保管後の接着強度
実施例15〜20および比較例6〜8の各貼合体について、蒸留水中に浸漬し、80℃の環境下で720時間静置した後、蒸留水から貼合体を取り出し、23℃、50%RH環境下に24時間静置した。続いて、上記と同様にして、せん断強度を測定した。評価結果は、下記の表4に示される通りであった。
【0059】
(3)高温多湿環境下で保管後の接着強度
実施例15〜20および比較例6〜8の各貼合体について、50℃、95%RHの環境下に720時間静置した後、23℃、50%RHの環境下に24時間静置した。続いて、上記と同様にして、せん断強度を測定した。評価結果は、下記の表4に示される通りであった。
【0060】
<初期粘着性の評価>
実施例15〜20および比較例6〜8の各貼合体について、接着剤組成物の初期粘着性を評価するため、以下のようにして試験サンプルを作製した。上記した接着シートの作製工程において、一方のセパフィルムに代えて、PETフィルム(E−5100、東洋紡社製)のコロナ処理面を貼り合わせた以外は、上記した接着シートと同様にして試験片を作製した。得られた試験片を、23℃、50%RHの環境下に24時間静置した後、25mm×250mmに裁断し、セパフィルムを剥離して接着層を露出させて、その接着層部分に、表面を洗浄したアルミ板(6061)を載置し、その上から、手動式圧着装置(JIS0237)を用いて、圧着速度約5mm/秒で1往復させて、接着シートとアルミ板とを貼り合わせて試験サンプルを得た。
【0061】
上記で得られた試験サンプルを、テンシロン(オリエンテック製RTA−1T)を用いて、180°、300mm/minでピール引き剥がし強度(N/cm)を測定した。評価結果は、下記の表4に示される通りであった。
【0062】
<製膜性の評価>
実施例1〜20および比較例1〜8の粘着剤について、セパフィルム(SP−PET 01BU、東セロ社製)に、乾燥後の塗布量が50g/m
2となるように接着剤をコンマコーターにて塗布し、100℃で3分間の乾燥を行い、塗布面の外観を観察した。評価基準は以下の通りとした。
○:塗布膜が均一な厚み(±5μm)である
×:セパフィルムの表面で接着剤が弾いて塗布されていない箇所が存在する
評価結果は下記の表3および表4に示される通りであった。
【0063】
<保存安定性の評価>
実施例15〜20および比較例6〜8の粘着剤について、実施例初期粘着性の評価に使用した試験サンプルと同様のものを、23℃、50%RHの環境下に1月間静置した後、セパフィルムを剥離した接着層表面のタックの有無を調べた。タックの有無は、上記した初期粘着性の評価と同様にして行い、試験サンプル作製後の初期粘着力に対して、50%以上の初期粘着性を有しているものをタック有り(○)とした。評価結果は、下記の表4に示される通りであった。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
また、実施例15および実施例17で用いた粘着剤の相溶状態を確認するため、セパフィルム(SP−PET 01BU、東セロ社製)に、乾燥後の塗布量が50g/m
2となるように接着剤をコンマコーターにて塗布し、100℃で2時間加熱して接着剤を硬化させたものについて、電子顕微鏡(SU3500、日立ハイテク社製)を用いて粘着剤の表面観察を行った。
図3は、得られた電子顕微鏡写真である。