特許第6044268号(P6044268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044268
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】制振構造
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20161206BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20161206BHJP
   F16F 7/08 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   F16F15/02 E
   E04H9/02 351
   F16F7/08
【請求項の数】10
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-239425(P2012-239425)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-88916(P2014-88916A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】内海 良和
(72)【発明者】
【氏名】野村 潤
(72)【発明者】
【氏名】佐野 剛志
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−150181(JP,A)
【文献】 特開2012−102809(JP,A)
【文献】 特開2003−307253(JP,A)
【文献】 特開2000−291712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
E04H 9/02
F16F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物架構において所定方向に相対移動する一対の部材の間に配置され、前記相対移動に伴って摺動する圧接板同士の摩擦力により、前記相対移動を抑制する摩擦ダンパーを複数設け、該摩擦ダンパーが連動して制振する制振構造であって、
前記摩擦ダンパーは、
前記一対の部材のうちの一方の部材に設けられる第1圧接板と、
前記一対の部材のうちの他方の部材に設けられる第2圧接板と、
前記第1圧接板又は前記第2圧接板と摺動可能に圧接される第3圧接板と、
を備え、
前記第1圧接板は、前記所定方向に長い第1貫通孔を備えて第1移動量を摺動可能とし、
前記第2圧接板は、前記第1貫通孔より短い第2貫通孔を備えて第2移動量を摺動可能とし、
前記第2貫通孔は前記所定方向に長く、
前記第3圧接板は、第3貫通孔を備え、
前記第1貫通孔と第2貫通孔と第3貫通孔とを挿通して設けられるボルト部材を有し、
複数の前記摩擦ダンパーは、前記第2貫通孔の前記所定方向の長さを段階的に異ならせて前記第2移動量を段階的にし、複数の前記摩擦ダンパーが段階的に摺動し、
さらに、前記相対移動を行う際に一定の摩擦力を生じさせる定摩擦発生部材を備えることを特徴とする制振構造。
【請求項2】
請求項1に記載の制振構造であって、
前記ボルト部材を内側に挿入しつつ、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔と前記第3貫通孔とを挿通して設けられるパイプ部材を備えることを特徴とする制振構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制振構造であって、
前記第1圧接板を前記第2圧接板と前記第3圧接板が挟むことを特徴とした制振構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の制振構造であって、
前記第2圧接板は、H型鋼のウェブ及びフランジの少なくともいずれか一方であることを特徴とする制振構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の制振構造であって、
前記摩擦ダンパー及び前記定摩擦発生部材において、圧接力を生じさせる部材は皿ばねであることを特徴とする制振構造。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の制振構造であって、
前記第1圧接板と前記第3圧接板との間に挟まれる摩擦板と、
前記第1圧接板と前記第2圧接板との間に挟まれる摩擦板と、
前記第1圧接板の一方の面及び他方の面に固定的に設けられ、前記摩擦板に接する滑り板と、
を備えることを特徴とする制振構造。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の制振構造であって、
前記定摩擦発生部材は、
前記一方の部材に設けられる第4圧接板と、
前記他方の部材に設けられる第5圧接板と、
を備え、
前記第4圧接板は、第4貫通孔を備え、
前記第5圧接板は、前記所定方向に長い第5貫通孔を備え、
前記第4貫通孔と前記第5貫通孔とを挿通して設けられるボルト部材を有することを特徴とする制振構造。
【請求項8】
請求項7に記載の制振構造であって、
前記第4圧接板と前記第5圧接板との間に挟まれる摩擦板と、
前記第5圧接板の面に固定的に設けられ、前記摩擦板に接する滑り板と、
を備えることを特徴とする制振構造。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の制振構造であって、
前記定摩擦発生部材は、
前記第1圧接板に設けられた第4貫通孔と、
前記第2圧接板に設けられた第5貫通孔であって、前記所定方向に長い第5貫通孔と、
前記第4貫通孔と前記第5貫通孔とを挿通して設けられるボルト部材を有することを特徴とする制振構造。
【請求項10】
請求項9に記載の制振構造であって、
前記定摩擦発生部材において、
前記第1圧接板と前記第2圧接板との間に挟まれる摩擦板と、
前記第1圧接板の面に固定的に設けられ、前記摩擦板に接する滑り板と、
を備えることを特徴とする制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対移動する2つの部材の制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
相対移動可能な2つの部材の接合部にて振動を減衰させる制振構造としては、たとえば摩擦ダンパーが知られている。この摩擦ダンパーは、たとえば、建物架構において水平方向に相対移動する階床間に設けられる間柱などに備えられ、前述の相対移動に伴って摺動する圧接板同士の摩擦力により、相対移動を抑制するものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−67806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図10は、ある比較例における摩擦ダンパーユニットの荷重と変位の説明図である。図10に示されるように、荷重に応じて段階的なエネルギー吸収が行われるが、荷重幅P1の大きさを変化させて荷重に応じて生ずる摩擦力をより適切に調整することが望まれる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、荷重に応じて生ずる摩擦力を適切に調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明に係る制振構造では、
建物架構において所定方向に相対移動する一対の部材の間に配置され、前記相対移動に伴って摺動する圧接板同士の摩擦力により、前記相対移動を抑制する摩擦ダンパーを複数設け、該摩擦ダンパーが連動して制振する制振構造であって、
前記摩擦ダンパーは、
前記一対の部材のうちの一方の部材に設けられる第1圧接板と、
前記一対の部材のうちの他方の部材に設けられる第2圧接板と、
前記第1圧接板又は前記第2圧接板と摺動可能に圧接される第3圧接板と、
を備え、
前記第1圧接板は、前記所定方向に長い第1貫通孔を備えて第1移動量を摺動可能とし、
前記第2圧接板は、前記第1貫通孔より短い第2貫通孔を備えて第2移動量を摺動可能とし、
前記第2貫通孔は前記所定方向に長く、
前記第3圧接板は、第3貫通孔を備え、
前記第1貫通孔と第2貫通孔と第3貫通孔とを挿通して設けられるボルト部材を有し、
複数の前記摩擦ダンパーは、前記第2貫通孔の前記所定方向の長さを段階的に異ならせて前記第2移動量を段階的にし、複数の前記摩擦ダンパーが段階的に摺動し、
さらに、前記相対移動を行う際に一定の摩擦力を生じさせる定摩擦発生部材を備えることを特徴とする制振構造である。
【0007】
このような制振構造によれば、摩擦力が段階的に切り替わる制振構造において、定摩擦発生部材を備えるので、圧接板同士の相対移動時に一定の摩擦力を生じさせることができる。そして、相対移動時開始から終了までに生ずる摩擦力を一律に高く設定することができる。すなわち、荷重に応じて生ずる摩擦力を適切に調整することができる。
【0008】
かかる制振構造であって、前記ボルト部材を内側に挿入しつつ、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔と前記第3貫通孔とを挿通して設けられるパイプ部材を備えることが望ましい。
このような制振構造によれば、第2圧接板が第1圧接板及び第3圧接板に対して摺動するときの摩擦力は、パイプ部材を介して伝達されるので、ボルト部材をパイプ部材により保護し、その健全性を高く維持することができる。
【0009】
また、前記第1圧接板を前記第2圧接板と前記第3圧接板が挟むことが望ましい。
このような制振構造によれば、例えば、H型鋼の一部を用いて摩擦ダンパーを構成することができる。
【0010】
また、前記第2圧接板は、H型鋼のウェブ及びフランジの少なくともいずれか一方であることが望ましい。
このような制振構造によれば、H型鋼の一部を用いて複数の摩擦ダンパーを構成することができる。
【0011】
また、前記摩擦ダンパー及び前記定摩擦発生部材において、圧接力を生じさせる部材は皿ばねであることが望ましい。
このような制振構造によれば、圧接力を生じさせる部材は、圧力方向の変形量に対して、荷重の変動が小さい非線形ばね領域を備えた皿ばねなので、安定した圧接力を発生させることができる。また、重なる皿ばねの数を異ならせることにより、圧接力を容易に調整することができる。
【0012】
また、前記第1圧接板と前記第3圧接板との間に挟まれる摩擦板と、
前記第1圧接板と前記第2圧接板との間に挟まれる摩擦板と、
前記第1圧接板の一方の面及び他方の面に固定的に設けられ、前記摩擦板に接する滑り板と、
を備えることが望ましい。
このような制振構造によれば、より安定した摩擦力を得ることができる。
【0013】
また、前記定摩擦発生部材は、前記一方の部材に設けられる第4圧接板と、前記他方の部材に設けられる第5圧接板と、を備え、前記第4圧接板は、第4貫通孔を備え、前記第5圧接板は、前記所定方向に長い第5貫通孔を備え、前記第4貫通孔と前記第5貫通孔とを挿通して設けられるボルト部材を有することが望ましい。
このような制振構造によれば、例えば、フランジに段階的に摩擦力を変化させるための複数の摩擦ダンパーを配置し、ウェブに一定の摩擦力を生じさせるための定摩擦発生部材を配置することができる。また、例えば、ウェブに段階的に摩擦力を変化させるための複数の摩擦ダンパーを配置し、フランジに一定の摩擦力を生じさせるための定摩擦発生部材を配置することができる。
【0014】
また、前記第4圧接板と前記第5圧接板との間に挟まれる摩擦板と、前記第5圧接板の面に固定的に設けられ、前記摩擦板に接する滑り板と、を備えることとしてもよい。
このような制振構造によれば、より安定した摩擦力を得ることができる。
【0015】
また、前記定摩擦発生部材は、前記第1圧接板に設けられた第4貫通孔と、前記第2圧接板に設けられた第5貫通孔であって、前記所定方向に長い第5貫通孔と、前記第4貫通孔と前記第5貫通孔とを挿通して設けられるボルト部材を有することとしてもよい。
このような制振構造によれば、例えば、フランジ又はウェブに段階的に摩擦力を変化させるための複数の摩擦ダンパーと、一定の摩擦力を生じさせるための定摩擦発生部材と、を配置することができる。
【0016】
また、前記定摩擦発生部材において、前記第1圧接板と前記第2圧接板との間に挟まれる摩擦板と、前記第1圧接板の面に固定的に設けられ、前記摩擦板に接する滑り板と、を備えることとしてもよい。
このような制振構造によれば、定摩擦発生部材においても、より安定した摩擦力を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、荷重に応じて生ずる摩擦力を適切に調整すること。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】比較例における摩擦ダンパーユニット1の側面図である。
図2図1におけるA−A断面図である。
図3】比較例における摩擦ダンパーユニット1の上面図である。
図4】摩擦ダンパーの側面図である。
図5図1におけるB−B断面図である。
図6図2におけるC−C断面図である。
図7】丸パイプを用いない場合の図1におけるB−B断面図である。
図8】H型鋼の上面図である。
図9】H型鋼の側面図である。
図10】摩擦ダンパーユニットの振動エネルギー吸収履歴特性を示すグラフである。
図11】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第1の図である。
図12】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第2の図である。
図13】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第3の図である。
図14】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第4の図である。
図15】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第5の図である。
図16】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第6の図である。
図17】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第7の図である。
図18】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第8の図である。
図19】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第9の図である。
図20】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第10の図である。
図21】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第11の図である。
図22】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第12の図である。
図23】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第13の図である。
図24】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第14の図である。
図25】摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第15の図である。
図26】第1実施形態における摩擦ダンパーユニット1’の側面図である。
図27】第1実施形態におけるA’−A’断面図である。
図28】第1実施形態における摩擦ダンパーユニット1’の上面図である。
図29図27におけるD’−D’断面図である。
図30】第1実施形態におけるH型鋼20’の上面図である。
図31】第1実施形態におけるH型鋼20’の側面図である。
図32】第1実施形態における動き出し前の摩擦ダンパーユニット1’の動作を説明する図である。
図33】第1実施形態における動き出し後の摩擦ダンパーユニット1’の動作を説明する図である。
図34】第1実施形態における摩擦ダンパーユニット1’の振動エネルギー吸収履歴特性を示すグラフである。
図35】第2実施形態における摩擦ダンパーユニット1’’の側面図である。
図36】間柱型に適用した摩擦ダンパーユニット1’’’の斜視図である。
図37】間柱型に適用した摩擦ダンパーユニット1’’’の正面図である。
図38】間柱型に適用した摩擦ダンパーユニット1’’’の簡略化した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、まず、図1から図25を用いて比較例としての摩擦ダンパーユニットを説明する。そして、その後に、比較例と比較しつつ実施形態について説明を行う。
【0020】
図1は、比較例における摩擦ダンパーユニット1の側面図である。図2は、図1におけるA−A断面図である。図3は、比較例における摩擦ダンパーユニット1の上面図である。これらの図には、建物の柱梁架構のブレースに適用された摩擦ダンパーユニット1が示されている。これらの図において、H型鋼20の材軸方向が相対移動方向である。
【0021】
摩擦ダンパーユニット1は、H型鋼20(第2圧接板)と、スプライスプレート30(第1圧接板)と、これらと摺動可能に接する複数の摩擦ダンパー10−1〜10−4を備える。スプライスプレート30は、座金52及びスペーサー54を介し、ナット53にボルト51が螺合することにより、他方のH型鋼40と連結される。
【0022】
比較例における摩擦ダンパーユニット1は、10個の摩擦ダンパーを備える。ここでは、後述するように、H型鋼20に形成された長孔の長さに違いのために、10個の摩擦ダンパーがH型鋼20及びスプライスプレート30に対して4種類の異なる相対移動をする。
【0023】
比較例における摩擦ダンパーユニットでは、1つの第1摩擦ダンパー10−1と、1つの第2摩擦ダンパー10−2と、4つの第3摩擦ダンパー10−3と、4つの第4摩擦ダンパー10−4を備える。図1及び図2において、相対移動方向について共通の相対移動をするものについては同じ符号を付してある。第1摩擦ダンパー10−1及び第2摩擦ダンパー10−2は、H型鋼10のウェブ20aに設けられる。一方、第3摩擦ダンパー10−3及び第4摩擦ダンパー4は、H型鋼10のフランジ20bに設けられる。つまり、これらの摩擦ダンパーは、4種類の異なる相対移動を行う。
【0024】
図4は、摩擦ダンパーの側面図である。図5は、図1におけるB−B断面図である。図6は、図2におけるC−C断面図である。前述のように、摩擦ダンパーはH型鋼20及びスプライスプレート30に対して4種類の異なる相対移動を行うが、これは、H型鋼20に形成された長孔21a、21b、21c、21dの長さが異なるためであり、摩擦ダンパーにおける長孔以外の構成は共通する。
【0025】
よってここでは、摩擦ダンパー10−4を例に摩擦ダンパーの構成について説明を行う。摩擦ダンパー10−4は、互いに相対移動方向に相対移動するH型鋼20及びスプライスプレート30とで摩擦摺動する第1摩擦板12−1、第2摩擦板12−2、第3摩擦板12−3、及び、第4摩擦板12−4を備える。
【0026】
H型鋼20のフランジ20bの上下両面には第2摩擦板12−2及び第3摩擦板122−3が移動不能に固着される。また、これら第2摩擦板12−2及び第3摩擦板12−3を挟み込むように、かつ、相対移動方向に摺動可能にスプライスプレート30が配置される。また、圧接部材166(第3圧接板)には、第1摩擦板12−1及び第4摩擦板12−4が移動不能に固着される。
【0027】
2つのスプライスプレート30には、それぞれ、その上下両面に滑動板32(滑り板に相当する)が移動不能に固着される。よって、4枚の摩擦板12−1〜12−4は、それぞれ、滑動板32を介してスプライスプレート30と摺動する。
【0028】
なお、上記の固着方法としては、例えば、(1)接着による方法、(2)固着面を構成する各々の表面について表面粗さの増大処理(ショットブラスト等)を施して、固着面で相対的な滑りが生じないようにする方法、(3)嵌合による方法等が挙げられる。
【0029】
さらに、圧接部材166上に、座金164、皿ばね積層体161、ブッシュ165、座金164が設けられる。一方、第4摩擦板12−4下に、圧接部材166、座金164が配置される。圧接部材166には、丸パイプ168とほぼ接するような丸孔が設けられている。
【0030】
第1摩擦板12−1〜第4摩擦板12−4、及び、H型鋼20は、相対移動方向と交差する方向について丸パイプ168に対して若干の隙間を有する。また、第2摩擦板12−2、第3摩擦板12−3、及び、H型鋼20には、相対移動方向について丸パイプ168の径よりも長い長孔21dが設けられている。そして、高力ボルト162がこれらを挿通し、ナット163と螺合される。
【0031】
なお、ここでは、第4摩擦ダンパー10−4を例に説明を行っているが、第1摩擦ダンパー10−1〜第3摩擦ダンパー10−3においても、第2摩擦板12−2及び第3摩擦板12−2には、それぞれ長孔21a、21b、21cと同じ長さの長孔が設けられる。
【0032】
上記の摩擦板12−1〜12−4には、有機系摩擦材や無機系摩擦材を使用し得る。有機系摩擦材は、熱硬化型樹脂を結合材として、アラミド繊維,ガラス繊維,ビニロン繊維,カーボンファイバーなどの繊維材料と、カシューダスト,鉛などの摩擦調整材と、硫酸バリュームなどの充填剤とからなる複合摩擦材料で形成される。上記熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂,メラミン樹脂,フラン樹脂,ポリイミド樹脂,DFK樹脂,グアナミン樹脂,エポキシ樹脂,キシレン樹脂,シリコーン樹脂,ジアリルフタレーン樹脂,不飽和ポリエステル樹脂などがある。一方、滑動板32はステンレスやチタンなどの耐食性を有する材料によって形成される。
【0033】
図6のように構成された第4摩擦ダンパー10−4に荷重Pが加わったとする。荷重Pは、H型鋼20をスプライスプレート30に対して相対的に右側に移動させようとする荷重である。図6に示される状態でこのような荷重Pが加わると、H型鋼20のフランジ20bに固着された第2摩擦板12−2及び第3摩擦板12−3は、スプライスプレート30に固着された滑動板32との間で摺動する。つまり、第2摩擦板12−2とスプライスプレート30に固着された滑動板32との面と、第3摩擦板12−3とスプライスプレート30に固着された滑動板32との面との間に生ずる2面分の摩擦力をもって摺動することになる。
【0034】
このような摺動がさらに進むと、フランジ20bに設けられた長孔21dの左壁が丸パイプ168に当接係合する。次に、スプライスプレート30に対してフランジ20bを右側に相対移動させようとするさらなる荷重が加わるものとする。このとき、前述の2面の摺動に加えて第1摩擦板12−1及び第4摩擦板12−4も、スプライスプレート30に固着された滑動板32との間で摺動する。すなわち、このとき、4面分の摩擦力をもって摺動することになる。
【0035】
このように、摩擦板の2面分の摩擦力を有する摺動と、摩擦板の4面分の摩擦力を有する摺動と、を1つの摩擦ダンパーにおいて生じさせることが可能である。摩擦板2面分で生ずる摩擦力のほうが摩擦板4面分で生ずる摩擦力よりも大きいため、荷重が加わると、まずは摩擦板2面分での摺動が開始する。丸パイプ168が長孔21dに当接係合すると摩擦板2面分での摺動は完了し、摩擦板4面分での摺動に移行する。つまり、最初は摩擦板の2面分の摩擦力により制振が行われ、次に、摩擦板の4面分のより大きい摩擦力により制振が行われる。
【0036】
尚、上述では、第1摩擦板12−1〜第4摩擦板12−4を備えていたが、これらを備えない構成とすることもできる。すなわち、圧接部材166はスプライスプレート30と接し、H型鋼20もスプライスプレート30と接する構成とすることもできる。
【0037】
図7は、丸パイプを用いない場合の図1におけるB−B断面図である。上記説明では、丸パイプ168を用いた例として説明を行ったが、図7に示されるように、長孔21dに当接係合する役割を高力ボルトの軸162bが担うこととすれば、丸パイプ168を用いなくてもよい。
【0038】
ところで、上述の説明では、1つの摩擦ダンパーについて説明を行ったが、H型鋼20に設けられる複数の長孔の長さを異ならせ、複数の摩擦ダンパーが組み合わせることで、段階的に摩擦力を変化させることが可能となる。
【0039】
図8は、H型鋼の上面図である。図9は、H型鋼の側面図である。図8及び図9に示されるように、H型鋼に設けられる長孔には、ウェブ20aの左側に設けられる1つの長孔21a(長さd1)と、ウェブ20aの右側に設けられる1つの長孔21c(長さd3)と、フランジ20bの左側に設けられる4つの長孔21b(長さd2)と、フランジ20bの右側に設けられる4つの長孔21d(長さd4)がある。これら長孔21a、21b、21c、21dの長さには、d1<d2<d3<d4の関係がある。一方、スプライスプレート30及び滑動板32に設けられる長孔31の長さは、長孔21dの長さd4よりも長い。
【0040】
ウェブ20aにおいて、長孔21aの相対移動方向に延びる中心軸は、長孔21cの中心軸と重なる。また、フランジ20bにおいて、長孔21bの相対方向に伸びる中心軸は、長孔21dの中心軸と重なる。また、相対移動方向と交差する交差方向に伸びる長孔21aの中心軸は、長孔21bの中心軸と重なる。また、交差方向に伸びる長孔21cの中心軸は、長孔21dの中心軸と重なる。
【0041】
このように、それぞれの長孔の中心軸を重ねる構成とすることで、均等に摩擦ダンパーの移動範囲を規定することができ、効率よく振動を抑制することができる。
【0042】
なお、第1摩擦ダンパー10−1から第4摩擦ダンパー10−4において、それぞれの構成の違いは、H型鋼20に設けられた長孔の長さであり、皿ばね等の他の構成は共通する。すなわち、長孔の長さがd1のものは第1摩擦ダンパー10−1であり、d2のものは第2摩擦ダンパー10−2であり、d3のものは第3摩擦ダンパー10−3であり、d4のものは第4摩擦ダンパー10−4である。すなわち、長孔を設ける位置次第で、それぞれの摩擦ダンパーを適当な位置に設けることができる。
【0043】
図10は、摩擦ダンパーユニットの振動エネルギー吸収履歴特性を示すグラフである。このグラフでは、横軸に相対移動方向の相対変位量δを示し、縦軸には、各摩擦ダンパー10−1〜10−4が発生する摩擦力の総和を示している。
【0044】
図11は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第1の図である。図11の下部分には、図2のD−D断面における第1摩擦ダンパー10−1と第3摩擦ダンパー10−3が示されている。すなわち、H型鋼20のウェブ20aの摩擦ダンパーが示されている。また、図11の上部分には、図2のE−E断面における第2摩擦ダンパー10−2と第4摩擦ダンパー10−4が示されている。すなわち、H型鋼20のフランジ20bの摩擦ダンパーが示されている。
【0045】
また、図11では、各部の相対移動の説明を容易にするために、H型鋼のウェブ20a、H型鋼のフランジ20b、スプライスプレート30、圧接部材166、及び、高力ボルトの軸162bのみが模式的に示されている。また、本来であれば、ウェブ20aに設けられる摩擦ダンパーの設置方向と、フランジ20bに設けられる摩擦ダンパーの設置方向は、互いに直交する方向となるが、相対移動方向の移動を理解容易にするために両者の設置方向をそろえて表示している。
【0046】
また、フランジ20bには、4つの第2摩擦ダンパー10−2が設けられるが、これらは相対移動方向に関して同じ動作を行うので、図11には1つだけ示すこととしている。また、第4摩擦ダンパー10−4についても、フランジ20bに4つ設けられるが、これらも相対移動方向に関して同じ動作を行うので、図11には1つだけ示すこととしている。
【0047】
このような構成において、摩擦ダンパーユニット1に相対移動方向の荷重が作用した場合について説明する。なお、これらの摩擦ダンパーユニットの動作の説明図において、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動する場合を、図10における荷重及び変位ともにプラスとして表す。
【0048】
図11の状態は、図10においてSp0点に対応する。すなわち、H型鋼20とスプライスプレート30との間に相対移動方向の荷重が加わっていないか、又は、加わっていたとしてもSp1点が示す荷重よりも小さいため、H型鋼20とスプライスプレート30との相対移動が生じていない状態である。
【0049】
H型鋼20とスプライスプレート30との間にSp1点を超える荷重が加わると、H型鋼20はスプライスプレート30に対して右側に相対移動する。このとき、H型鋼20が第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4の圧接部材166に対して右側に相対移動する。そして、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずる。
【0050】
図12は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第2の図である。図10のSp0点の状態において、Sp1点を超える荷重が加わり相対移動がなされると、図12に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp2点の状態に相当する。この状態は、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動した結果、第1ダンパー10−1の高力ボルトの軸162b(以下、単に軸162bという)が長孔21aの左壁に当接係合した状態である。よって、さらにH型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動しようとした場合、第1摩擦ダンパー10−1はスプライスプレート30との間で相対移動しなければならない。
【0051】
図10のSp2点の状態(図12)から、さらにSp6点を超える荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動する。第1摩擦ダンパー10−1の高力ボルトの軸162bは長孔21aに当接係合しているため、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動すると、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずるとともに、第1摩擦ダンパー10−1においては、圧接部材166とスプライスプレート30とが相対移動したときの摩擦力も生ずる。
【0052】
図13は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第3の図である。図10のSp2点の状態において、Sp6点を超える荷重が加わり相対移動がなされると、図13に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp7点の状態に相当する。この状態は、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動した結果、第2摩擦ダンパー10−2の軸162bが長孔21bの左壁に当接係合した状態である。よって、さらにH型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動しようとした場合、第2摩擦ダンパー10−2もスプライスプレート30との間で相対移動しなければならない。
【0053】
図10のSp7点の状態(図13)から、さらにSp8点を超える荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動する。第1摩擦ダンパー10−1の軸162bは長孔21aに当接係合し、第2摩擦ダンパー10−2の軸162bも長孔21bに当接係合しているため、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動すると、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずるとともに、第1摩擦ダンパー10−1及び第2摩擦ダンパー10−2においては、圧接部材166とスプライスプレート30とが相対移動したときの摩擦力も生ずる。
【0054】
図14は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第4の図である。図10のSp7点の状態において、Sp8点を超える荷重が加わり相対移動がなされると、図14に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp9点の状態に相当する。この状態は、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動した結果、第3摩擦ダンパー10−3の軸162bが長孔21cの左壁に当接係合した状態である。よって、さらにH型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動しようとした場合、第3摩擦ダンパー10−3もスプライスプレート30との間で相対移動しなければならない。
【0055】
図10のSp9点の状態(図14)から、さらにSp10点を超える荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動する。第1摩擦ダンパー10−1の軸162bは長孔21aに当接係合し、第2摩擦ダンパー10−2の軸162bも長孔21bに当接係合し、第3摩擦ダンパー10−3の軸162bも長孔21cに当接係合しているため、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動すると、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずるとともに、第1摩擦ダンパー10−1〜第3摩擦ダンパー10−3においては、圧接部材166とスプライスプレート30とが相対移動したときの摩擦力も生ずる。
【0056】
図15は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第5の図である。図10のSp9点の状態において、Sp10点を超える荷重が加わり相対移動がなされると、図15に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp11点の状態に相当する。この状態は、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動した結果、第4摩擦ダンパー10−4の軸162bが長孔21dの左壁に当接係合した状態である。よって、さらにH型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動しようとした場合、第4摩擦ダンパー10−4もスプライスプレート30との間で相対移動しなければならない。
【0057】
図10のSp11点の状態(図15)から、さらにSp12点を超える荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動する。第1摩擦ダンパー10−1の軸162b〜第4摩擦ダンパー10−4の軸162bは、それぞれの長孔21a、21b、21c、21dに当接係合しているため、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動すると、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずるとともに、圧接部材166とスプライスプレート30とが相対移動したときの摩擦力も生ずる。
【0058】
図16は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第6の図である。図10のSp11点の状態において、Sp12点を超える荷重が加わり相対移動がなされると、図16に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp13点の状態に相当する。この状態は、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動した結果、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4がスプライスプレート30に対して相対移動し、第1摩擦ダンパー10−1の軸162bが長孔31に当接係合した状態である。この状態は、限界変形の状態であるが、実際にはこの状態にまでは至らないように設計される。ここでは、限界変形を説明する便宜上、第1摩擦ダンパー10−1の軸162bが長孔31に当接係合した状態を示したにすぎない。
【0059】
次に、加わる荷重の方向が反転する。すなわち、H型鋼20をスプライスプレート30に対して相対的に左側に移動させる荷重が加わる。
【0060】
図10のSp13点の状態(図16)から、Sp14点を超えるマイナスの荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して左側に相対移動する。このとき、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずる。
【0061】
図17は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第7の図である。図10のSp13点の状態において、Sp14点をマイナス方向に超える荷重が加わり相対移動がなされると、図17に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp15点の状態に相当する。この状態は、H型鋼20がスプライスプレート30に対して左側に相対移動した結果、長孔21aの右壁が第1摩擦ダンパー10−1の軸162bと当接係合した状態である。
【0062】
図10のSp15点の状態(図17)から、Sp16点を超えるマイナスの荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して左側に相対移動する。このとき、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずるとともに、第1摩擦ダンパー10−1においては、圧接部材166とスプライスプレート30とが相対移動したときの摩擦力も生ずる。
【0063】
図18は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第8の図である。図10のSp15点の状態において、Sp16点をマイナス方向に超える荷重が加わり相対移動がなされると、図18に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp17点の状態に相当する。この状態は、H型鋼20がスプライスプレート30に対して左側に相対移動した結果、長孔21bの右壁が第2摩擦ダンパー10−2の軸162bと当接係合した状態である。
【0064】
図10のSp17点の状態(図18)から、Sp18点を超えるマイナスの荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して左側に相対移動する。このとき、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずるとともに、第1摩擦ダンパー10−1及び第2摩擦ダンパー10−2においては、圧接部材166とスプライスプレート30とが相対移動したときの摩擦力も生ずる。
【0065】
図19は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第9の図である。図10のSp17点の状態において、Sp18点をマイナス方向に超える荷重が加わり相対移動がなされると、図19に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp19点の状態に相当する。この状態は、H型鋼20がスプライスプレート30に対して左側に相対移動した結果、長孔21cの右壁が第3摩擦ダンパー10−3の軸162bと当接係合した状態である。
【0066】
図10のSp19点の状態(図19)から、Sp20点を超えるマイナスの荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して左側に相対移動する。このとき、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずるとともに、第1摩擦ダンパー10−1〜第3摩擦ダンパー10−3においては、圧接部材166とスプライスプレート30とが相対移動したときの摩擦力も生ずる。
【0067】
図20は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第10の図である。図10のSp19点の状態において、Sp20点をマイナス方向に超える荷重が加わり相対移動がなされると、図20に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp21点の状態に相当する。この状態は、H型鋼20がスプライスプレート30に対して左側に相対移動した結果、長孔21dの右壁が第4摩擦ダンパー10−4の軸162bと当接係合した状態である。
【0068】
図10のSp21の状態(図20)から、Sp22点を超えるマイナスの荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して左側に相対移動する。このとき、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずるとともに、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4においては圧接部材166とスプライスプレート30とが相対移動したときの摩擦力が生ずる。
【0069】
図21は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第11の図である。図10のSp21点の状態において、Sp22点をマイナス方向に超える荷重が加わり相対移動がなされると、図21に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp23点の状態に相当する。この状態は、H型鋼22がスプライスプレート30に対して左側に相対移動した結果、第1摩擦ダンパー10−1の軸162bがスプライスプレート30の長孔31と当接係合した状態である。
【0070】
この状態も限界変形の状態であるが、前述同様に、実際にはこの状態にまでは至らないように設計がされる。ここでは、限界変形の状態を説明する便宜上、第1摩擦ダンパー10−1の軸162bがスプライスプレート30の長孔31と当接係合した状態を示しているにすぎない。
【0071】
次に、加わる荷重の方向が再び反転する。すなわち、スプライスプレート30に対してH型鋼20を相対的に右側に移動させる荷重が加わる。
【0072】
図10のSp23点の状態(図21)から、Sp24点を超える荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動する。このとき、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずる。
【0073】
図22は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第12の図である。図10のSp23点の状態において、Sp24点を超える荷重が加わり相対移動がなされると、図22に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp25点の状態に相当する。この状態は、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動した結果、第1摩擦ダンパー10−1の軸162bがスプライスプレート30の長孔31の左壁と当接係合した状態である。
【0074】
図10のSp25点の状態(図22)から、Sp26点を超える荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動する。このとき、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずるとともに、第1摩擦ダンパー10−1においては、圧接部材166とスプライスプレート30とが相対移動したときの摩擦力が生ずる。
【0075】
図23は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第13の図である。図10のSp25点の状態において、Sp26点を超える荷重が加わり相対移動がなされると、図23に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp27点の状態に相当する。この状態は、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動した結果、第2摩擦ダンパー10−2の軸162bがスプライスプレート30の長孔32の左壁と当接係合した状態である。
【0076】
図10のSp27点の状態(図23)から、Sp28点を超える荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動する。このとき、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずるとともに、第1摩擦ダンパー10−1及び第2摩擦ダンパー10−2においては、圧接部材166とスプライスプレート30とが相対移動したときの摩擦力が生ずる。
【0077】
図24は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第14の図である。図10のSp27点の状態において、Sp28点を超える荷重が加わり相対移動がなされると、図24に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp29点の状態に相当する。この状態は、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動した結果、第3摩擦ダンパー10−3の軸162bがスプライスプレート30の長孔33の左壁と当接係合した状態である。
【0078】
図10のSp29点の状態(図24)から、Sp30点を超える荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動する。このとき、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずるとともに、第1摩擦ダンパー10−1〜第3摩擦ダンパー10−3においては、圧接部材166とスプライスプレート30とが相対移動したときの摩擦力が生ずる。
【0079】
図25は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第15の図である。図10のSp29点の状態において、Sp30点を超える荷重が加わり相対移動がなされると、図25に示すような各部の配置となる。これは、図10のSp31点の状態に相当する。この状態は、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動した結果、第4摩擦ダンパー10−4の軸162bがスプライスプレート30の投稿34の左壁と当接係合した状態である。
【0080】
図10のSp31点の状態(図25)から、Sp32点を超える荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動する。このとき、第1摩擦ダンパー10−1〜第4摩擦ダンパー10−4において、スプライスプレート30とH型鋼20とが相対移動したときの摩擦力が生ずるとともに、圧接部材166とスプライスプレート30とが相対移動したときの摩擦力が生ずる。そして、図10のSp13点の状態となる。
【0081】
一方、加わる繰り返し荷重が小さい場合には、以下の様になる。
【0082】
図10のSp2点の状態(図12)からマイナス方向にSp3点を超える荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して左側に相対移動する。このとき、長孔21a分の相対移動が行われ、第1摩擦ダンパー10−1の軸162bは、長孔21aの右壁に当接係合する。この状態は、図10のSp4点の状態に相当する。また、Sp4点の状態からSp5を超える荷重を加えると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動する。このとき、再度、長孔21a分の相対移動が行われ、第1摩擦ダンパー10−1の軸162bは、長孔21aの左壁に当接係合する。この状態は、Sp2の状態に相当する。
【0083】
次に、図10のSp7の状態(図13)からマイナス方向にQp1点を超える荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して左側に相対移動する。そして、長孔21a分の相対移動が行われ、第1摩擦ダンパー10−1の軸162bは、長孔21aの右壁に当接係合する。この状態は、図10のQp2点の状態に相当する。
【0084】
さらに、図10のQp2点の状態からマイナス方向にQp3点を超える荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して左側に相対移動する。そして、第2摩擦ダンパー10−2の軸162bは、長孔21bの右壁に当接係合する。この状態は、図10のQp4点の状態に相当する。
【0085】
図10のQp4点の状態からプラス方向にQp5点を超える荷重が加わると、H型鋼20がスプライスプレート30に対して右側に相対移動する。そして、第1摩擦ダンパー10−1の軸162bは、長孔21aの左壁に当接係合する。この状態は、図10のSp1点の状態に相当する。さらに、図10のSp1点の状態からプラス方向にQp6点を超える荷重が加わると、H型鋼がスプライスプレート30に対して右側に相対移動する。そして、第2摩擦ダンパー10−2の軸162bは、長孔21aの左壁に当接係合する。この状態は、図10のSp7点の状態に相当する。
【0086】
図10の破線のような動作は、Sp9点で荷重がマイナス側に反転する場合や、Sp11点で荷重がマイナス側に反転する場合にも同様に成立する。この場合、第3摩擦ダンパー10−3の軸162b及び第4摩擦ダンパー10−4の軸162bも、それぞれ長孔21c、21dに当接係合するような動作をすることになる。
【0087】
このようにすることにより、上記比較例の摩擦ダンパーユニット1では、荷重に応じて段階的に生ずる摩擦力を変化させ、適切な摩擦力を生じさせることができる。
【0088】
また、上記比較例では、スプライスプレート30の両面に滑動板32が設けられているので、第1摩擦板12−1〜第4摩擦板12−4がスプライスプレート30に対して相対移動するときに安定した摩擦力を生じさせて制振することが可能である。
【0089】
また、上記比較例では、圧縮方向の変形量に対して荷重の変動が小さいとなる非線形ばね領域を備えた皿ばね積層体161を採用したので、より安定した圧接力を発生させることが可能である。
【0090】
なお、第1摩擦ダンパー10−1から第4摩擦ダンパー10−4の取り付け位置は、上記に限られない。例えば、ウェブ20aに第2摩擦ダンパー10−2及び第4摩擦ダンパー10−4を取り付けることとしてもよい。また。フランジ20bに第1摩擦ダンパー10−1及び第3摩擦ダンパー10−3を取り付けることとしてもよい。
【0091】
上記比較例においては、第1摩擦ダンパー10−1と第3摩擦ダンパー10−3がそれぞれ1個ずつ設けられていた。また、第2摩擦ダンパー10−2と第4摩擦ダンパー10−4がそれぞれ4個ずつ設けられていた。そのため、図10において、例えば、Sp2からSp6までの荷重幅と、Sp7からSp8までの荷重幅が異なっていた。
【0092】
しかしながら、これらの第1摩擦ダンパー10−1から第4摩擦ダンパー10−4のそれぞれを同数個ずつ設けることとすれば、摩擦係数が同じ摩擦板を用いている場合にはこれらの荷重幅は一定となる。すなわち、摩擦ダンパーの個数によっても、これらの荷重幅を調整することができる。
【0093】
ところで、図10において、荷重幅P1と荷重幅P2は同じ荷重幅として示されていたが、摩擦板12及び滑動板32の摩擦係数を変化させることによって、荷重幅P1及びP2を調整することができる。しかしながら、摩擦係数等を変化させる場合、対応する摩擦ダンパー間で摩擦板12及び滑動板32の材料を異ならせる必要がある。これらの材料を異ならせることはコスト高につながるため、摩擦係数等を変化させる構成を採用せずとも、荷重幅を調整できることが望ましい。
【0094】
以下に示す実施形態では、摩擦板12及び滑動板32の材料を摩擦ダンパー間で異ならせることなく、荷重幅P1をより大きく設定可能としている。
【0095】
以下、第1実施形態における摩擦ダンパーユニット1’について説明する。なお、前述の比較例と共通する構成についてはその説明を省略し、比較例と異なる点について述べる。
【0096】
図26は、第1実施形態における摩擦ダンパーユニット1’の側面図である。図27は、第1実施形態におけるA’−A’断面図である。図28は、第1実施形態における摩擦ダンパーユニット1’の上面図である。図29は、図27におけるD’−D’断面図である。図30は、第1実施形態におけるH型鋼20’の上面図である。図31は、第1実施形態におけるH型鋼20’の側面図である。なお、第1実施形態において比較例と異なる箇所については符号に「’」(ダッシュ)を付している。
【0097】
第1実施形態では、H型鋼20’に形成された長孔の位置が比較例のものとは異なる(図30及び図31を参照)。第1実施形態では、説明の容易化のために、第1摩擦ダンパー10−1から第4摩擦ダンパー10−4のそれぞれの個数を2個ずつにしている。そして、それぞれの摩擦ダンパーを全てフランジ20b’に設けることとしている。そのため、H型鋼20’のフランジ20b’には、それぞれ、長孔21a、21b、21c、21dが設けられる。
【0098】
一方、ウェブ20a’には、定摩擦発生部材としての定摩擦ダンパー10−5が2個設けられる。そのため、H型鋼20’のウェブには、長孔21aよりも長い長孔21zが2箇所設けられる。
【0099】
以下、図29に示される断面図を用いて、定摩擦ダンパー10−5を説明する。H型鋼20’のウェブ20a’の両面には、滑動板32’が移動不能に固着される。そして、第5摩擦板12−5とスプライスプレート30と座金164がその両面を挟み込むように配置される。さらに、座金164上に、皿ばね積層体161、ブッシュ165、座金164が設けられる。スプライスプレート30と第5摩擦板10−5には、高力ボルト162とほぼ接するような丸孔(第4貫通孔に相当する)が設けられている。
【0100】
高力ボルト162は、スプライスプレート30と第5摩擦板12−5と滑動板32’とウェブ20a’に挿通する。そして、座金164とブッシュ165と丸パイプ168内を挿通し、ナット163と螺合される。
【0101】
このように、ウェブ20a’には、上記構成の定摩擦ダンパー10−5が設けられるので、ウェブ20a’とスプライスプレート30に荷重が加わり相対移動すると第5摩擦板12−5と滑動板32’が摺動する。そして、1個の定摩擦ダンパー10−5につき、2面の第5摩擦板12−5において摩擦力を生じさせる。
【0102】
図32は、第1実施形態における動き出し前の摩擦ダンパーユニットの動作を説明する図である。図33は、第1実施形態における動き出し後の摩擦ダンパーユニットの動作を説明する図である。以下、これらの図を参照しつつ、第1摩擦ダンパー10−1から第4摩擦ダンパー10−4、及び、定摩擦ダンパー10−5の初期の動きについて説明する。
【0103】
図32及び図33において、最も上に描かれた構成は、フランジにおける簡略化されたE’−E’断面図であり、中央に描かれた構成は、フランジにおける簡略化されたC’−C’断面図であり、最も下に描かれた構成は、ウェブにおける簡略化されたD’−D’断面図である。
【0104】
図32及び図33では、各部の相対移動の説明を容易にするために、H型鋼のウェブ20a’、H型鋼のフランジ20b’、スプライスプレート30’、圧接部材166、及び、高力ボルト162bが模式的に示されている。また、本来であれば、ウェブ20aに設けられる摩擦ダンパーの設置方向と、フランジ20b’に設けられる摩擦ダンパーに設置方向は、互いに直交する方向となるが、相対移動方向の移動を理解容易にするために両者の設置方向を揃えて表示している。
【0105】
図32における配置は、第1実施形態における摩擦ダンパーユニット1において何ら荷重が加えられていない初期状態の配置である。これに対し、図33における配置は、H型鋼20’及びスプライスプレート30’に初期の荷重が加わった様子を示すものである。すなわち、図33は、比較例における図12に対応するものである。よって、第1摩擦ダンパー10−1から第4摩擦ダンパー10−4の動き、及び、生じさせる摩擦力の原理は前述の比較例のものと同様である。
【0106】
一方、第1実施形態では、定摩擦ダンパー10−5が2個設けられている。そして、定摩擦ダンパー10−5において、高力ボルト162がスプライスプレート30’の貫通孔(第4貫通孔)に挿通されているので、ウェブ20a’とスプライスプレート30’との間で相対移動を生ずると前述のように2面の第5摩擦板12−5において摩擦力を生じさせることになる。すなわち、ウェブ20a’とスプライスプレート30’の最初の動き出し時から動き終わりまで確実に摩擦力を生じさせることになる。これは、定摩擦ダンパー10−5を設けることで、一定の摩擦力を摩擦ダンパーユニット1’に加えることができることを意味する。
【0107】
なお、ここでは、スプライスプレート、ウェブ、及び、フランジの動き始めのみの説明を行ったが、第1摩擦ダンパー10−1から第4摩擦ダンパー10−4が段階的に摩擦力を生じさせる原理は比較例と同様である。よって、動き始めより後のこれらの動きの説明は省略する。
【0108】
定摩擦ダンパー10−5は、上記説明のようにウェブ20a’とスプライスプレート30’との間に相対移動が生ずればかならず摩擦力を生じさせることから、第1摩擦ダンパー10−1から第4摩擦ダンパー10−4が段階的に生じさせる摩擦力に定摩擦ダンパー10−5が生じさせる摩擦力が加算されることになる。
【0109】
図34は、第1実施形態における摩擦ダンパーユニット1’の振動エネルギー吸収履歴特性を示すグラフである。前述のように、第1実施形態における振動エネルギー吸収履歴特性は、第1摩擦ダンパー10−1から第4摩擦ダンパー10−4が段階的に生じさせる摩擦力に、定摩擦ダンパー10−5の摩擦力が加算されたものとなる。
【0110】
比較例の手法であると、荷重幅P1を荷重幅P2よりも大きくするためには、対応する摩擦ダンパー間で摩擦板の摩擦係数を異なるものにする必要がある。そのため、摩擦板の種類を増加させることになるからコスト高になるという問題があった。しかしながら、第1実施形態のように、第1摩擦ダンパー10−1から第4摩擦ダンパー10−4による段階的な摩擦ダンパーユニットに定摩擦ダンパー10−5を加え、定摩擦ダンパー10−5にも第1摩擦ダンパー10−1から第4摩擦ダンパー10−4で用いられた摩擦板を採用することにより、荷重幅P1を荷重幅P2よりも大きく設定することができる。
【0111】
このように、荷重幅P1を大きくできることにより、小さな荷重では振動エネルギーの吸収を開始せず、大きな荷重が加わると振動エネルギーの吸収を開始する。例えば、中規模以上の地震から大規模の地震にかけて生ずる振動を効率よく吸収することができる。
【0112】
図35は、第2実施形態における摩擦ダンパーユニット’’の側面図である。第2実施形態では、図35に示されるように、前述の第1実施形態に対して各摩擦ダンパーユニットの配置を異ならせている。また、第1実施形態と異なる部位については、符号を「’’」(2つのダッシュ)を付している。なお、括弧書きとなっている符号に対応する第3摩擦ダンパー10−3及び第4摩擦ダンパー10−4は、図35においてそれぞれ第1摩擦ダンパー10−1及び第2摩擦ダンパー10−2の背面に存在することを示すものである。
【0113】
第1実施形態では、ウェブ20a’のみに定摩擦ダンパー10−5が設けられていたが、図35に示すように、フランジ20b’’に定摩擦ダンパー10−5を設けることとしてもよい。また、図35のフランジ20b’において紙面右側に定摩擦ダンパー10−5が設けられていたが、紙面左側に定摩擦ダンパー10−5を設けることとしてもよい。
【0114】
これは、前述のように、定摩擦ダンパー10−5では、スプライスプレート30’’に貫通孔が形成されており、この貫通孔に高力ボルト162が挿通される。よって、定摩擦ダンパー10−5がどの位置に配置されても、H型鋼20’’とスプライスプレート30’’が相対移動すれば定摩擦力が必ず作用するからである。
【0115】
このような原理から、例えば、ウェブ20a’’に定摩擦ダンパー10−5と複数の摩擦ダンパー10−1〜10−4を設けることとし、フランジ20b’’に定摩擦ダンパーを設けることとしてもよい。つまり、どの位置に定摩擦ダンパー10−5及び複数の摩擦ダンパー10−1〜10−4を設けることも可能である。
【0116】
このようにすることによっても、段階的に摩擦力を変化させることができ、荷重に応じて適切な摩擦力を生じさせることができる。また、定摩擦ダンパー10−5も備えることとしているので、振動エネルギーの吸収が開始されるまでの荷重幅P1を大きく設定することができる。
【0117】
次に、第3実施形態として間柱型に適用した摩擦ダンパーユニットについて説明する。上記第1実施形態及び第2実施形態は、所謂ブレース型について説明を行ったが、所謂間柱型についても適用が可能である。
【0118】
図36は、間柱型に適用した摩擦ダンパーユニット1’’’の斜視図である。図37は、間柱型に適用した摩擦ダンパーユニット1’’’の正面図である。図38は、間柱型に適用した摩擦ダンパーユニットの簡略化した断面図である。
【0119】
図36図38では、上記実施形態に対応する部位の符号に「’’’」(3つのダッシュ)を付して示している。このとき、符号20’’’が付された間柱上部からの部材は第2圧接板に相当する。また、符号30’’’が付された間柱下部からの部材は第1圧接板に相当する。また、符号166’’’が付された圧接部材は第3圧接板に相当する。また、これらの図において、間柱下部からの部材には符号140を付している。
【0120】
このような構成においても、第1摩擦ダンパー10−1から第3摩擦ダンパー10−3により段階的に摩擦力を変化させることができ、荷重に応じて適切な摩擦力を生じさせることができる。また、定摩擦ダンパー10−5も備えることとしているので、振動エネルギーの吸収が開始されるまでの荷重幅P1を大きく設定することができる。
【0121】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0122】
1 摩擦ダンパーユニット(制振構造)、
10−1 第1摩擦ダンパー、10−2 第2摩擦ダンパー、
10−3 第3摩擦ダンパー、10−4 第4摩擦ダンパー、
10−5 定摩擦ダンパー、
12−1 第1摩擦板、12−2 第2摩擦板、
12−3 第3摩擦板、12−4 第4摩擦板、12−5 第5摩擦板、
20 H型鋼(第2圧接板)、
20a ウェブ、20b フランジ、20a’ ウェブ(第5圧接板)、
21a 長孔(第2貫通孔)、21b 長孔(第2貫通孔)、
21c 長孔(第2貫通孔)、21d 長孔(第2貫通孔)、21z(第5貫通孔)、
30 スプライスプレート(第1圧接板、第4圧接板)、
31 スプライスプレートの長孔(第1貫通孔)、
32 滑動板(滑り板)、
161 皿ばね積層体(圧接力を生じさせる部材)、
162 高力ボルト(ボルト部材)、
163 ナット、164 座金、165 ブッシュ、
166 圧接部材(第3圧接板)
図1
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