特許第6044279号(P6044279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044279
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ゴルフボール用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20161206BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20161206BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20161206BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20161206BHJP
   A63B 37/00 20060101ALI20161206BHJP
   A63B 37/06 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K5/09
   C08K5/37
   C08K5/14
   A63B37/00 510
   A63B37/00 738
   A63B37/06
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-248211(P2012-248211)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2013-108079(P2013-108079A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】13/300,847
(32)【優先日】2011年11月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】尾澤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 烈士
(72)【発明者】
【氏名】森 徹平
(72)【発明者】
【氏名】山縣 悠介
(72)【発明者】
【氏名】岩井 孝広
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−355339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/00
A63B 37/00
A63B 37/06
C08K 5/09
C08K 5/14
C08K 5/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)成分、
(A)シス−1,4−結合を60質量%以上含有するポリブタジエンを含む基材ゴム、
(B)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、及び
(C)2−メルカプトベンゾイミダゾール、
を含有することを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項2】
上記(C)の2−メルカプトベンゾイミダゾールの配合量が、上記(A)成分100質量部に対して0.01〜5質量部である請求項1記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項3】
架橋剤として(D)有機過酸化物を含有する請求項1又は2記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項4】
その架橋成形物をゴルフボールのコアに使用するものである請求項1〜のいずれか1項に記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンピースゴルフボールや、ツーピースゴルフボール、マルチピースゴルフボール等のソリッドゴルフボールのコア等に使用されるゴルフボール用ゴム組成物に関するものであり、更に詳述すると、その架橋成形体が適度な硬さと良好な反発性を有するものであり、ゴルフボール用材料として最適なゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワンピースゴルフボールや、ソリッドコアを直接若しくは中間層を介してカバーで被覆したツーピースゴルフボールやマルチピースゴルフボールのそのソリッドコアは、ポリブタジエン等のゴム成分を基材とし、これに、アクリル酸亜鉛等の不飽和カルボン酸金属塩、有機過酸化物等を含有したゴム組成物を加硫することによって得られる。上記の不飽和カルボン酸金属塩は、ゴム組成物における共架橋剤又は架橋助剤としての役割を主に果たすものであり、ゴムの架橋構造や架橋密度に大きく影響を及ぼすことが知られている。
【0003】
また、ゴムを架橋させるためには、過酸化物架橋(パーオキサイド架橋)を使用し、この場合に1種又は2種以上の有機過酸化物を用いることも行なわれる。近年は、ゴルフボール分野において、有機過酸化物の分解温度が異なる点を利用して2種以上の有機過酸化物を使用した先行技術も多数存在し、この過酸化物架橋についての研究が種々存在する。
【0004】
このようなゴルフボール用ゴム組成物には、上記有機過酸化物及び不飽和カルボン酸金属塩の他に、種々の物性や特性を改善するため、例えば、各種の老化防止剤、硫黄、有機硫黄化合物、不活性充填剤、ステアリン酸亜鉛などの添加剤を適宜配合することも行われている。
【0005】
しかしながら、ゴルフボールユーザーの要求は更に厳しく、更なる性能の向上が望まれており、特に飛び性能に直接的に影響する反発性向上が強く望まれている。
【0006】
なお、本発明に関連すると思われる先行技術文献としては、下記文献を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−355339号公報
【特許文献2】特開2002−003653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、ゴム組成物中に配合する種々の添加剤につき更に検討することにより、その架橋成形物の反発性を高め、かつ適度な硬度を有する架橋成形物が得られるゴルフボール用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ワンピースソリッドゴルフボールや1層又は2層以上のカバーを具備したソリッドゴルフボールのコア又は一部を形成するゴム組成物を調製するに当たり、特定のポリブタジエンを含む基材ゴム、不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩を配合し、有機過酸化物等の架橋剤を用いてゴム架橋成形物を得る際に、このゴム組成物中に下記一般式(1)又は(2)で表されるベンゾイミダゾール、例えば2−メルカプトベンゾイミダゾールを配合することにより、この式(1)又は(2)のベンゾイミダゾールが、架橋成形物の反発性を高めると共に、適度な硬度を維持することができることを見出し、本発明を完成したものである。
【0010】
【化1】
(ただし、式中Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基、mは1〜4の整数であり、mが2以上の場合、これらは同一でも互いに異なっていてもよい。)
【0011】
従って、本発明は、下記ゴルフボール用ゴム組成物を提供する。
[1]下記(A)〜(C)成分、
(A)シス−1,4−結合を60質量%以上含有するポリブタジエンを含む基材ゴム、
(B)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、及び
(C)2−メルカプトベンゾイミダゾール、
を含有することを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物。
]上記(C)の2−メルカプトベンゾイミダゾールの配合量が、上記(A)成分100質量部に対して0.01〜5質量部である[1]のゴルフボール用ゴム組成物。
]架橋剤として(D)有機過酸化物を含有する[1]又は[2]のゴルフボール用ゴム組成物。
]その架橋成形物をゴルフボールのコアに使用するものである[1]〜[3]のいずれかのゴルフボール用ゴム組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴルフボール用ゴム組成物の架橋成形物は、適度な硬度を有し、反発性が高く高品質なものである。特に、これをワンピースゴルフボールの材料又は多層ソリッドゴルフボールにおけるソリッドコア材に適用することにより、初速度が大きく飛距離が増大し、良好な打感が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明は、(A)基材ゴム、(B)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、及び(C)上記式(1)又は(2)のベンゾイミダゾールを配合してなるゴム組成物である。ゴム組成物の配合について以下に具体的に説明する。
【0014】
(A)成分の基材ゴムとしては、ポリブタジエンを好適に使用することができ、特にそのポリマー鎖中にシス−1,4−結合を60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上有するものを用いることが推奨される。分子中の結合に占めるシス−1,4−結合が少なすぎると、反発性が低下する場合がある。
【0015】
また、上記ポリブタジエンに含まれる1,2−ビニル結合の含有量は、そのポリマー鎖中に好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.7質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。1,2−ビニル結合の含有量が多すぎると、反発性が低下する場合がある。
【0016】
なお、上記(A)成分には、上記ポリブタジエン以外にも他のゴム成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合し得る。上記ポリブタジエン以外のゴム成分としては、上記ポリブタジエン以外のポリブタジエン、その他のジエンゴム、例えばスチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。
【0017】
(B)成分の不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸の金属塩は、共架橋剤として配合されるものである。
【0018】
不飽和カルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。
【0019】
不飽和カルボン酸の金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば上記不飽和カルボン酸を所望の金属イオンで中和したものが挙げられる。具体的にはメタクリル酸、アクリル酸等の亜鉛塩やマグネシウム塩等が挙げられ、特にアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0020】
上記(B)成分の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対して好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、上記基材ゴム100質量部に対して好ましくは60質量部以下、より好ましくは45質量部以下とすることができる。配合量が多すぎると、硬くなりすぎて耐え難い打感になる場合があり、配合量が少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
【0021】
(C)成分のベンゾイミダゾールは、下記一般式(1)又は(2)で表されるものである。
【化2】
(ただし、式中Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基、mは1〜4の整数であり、mが2以上の場合、これらは同一でも互いに異なっていてもよい。)
【0022】
ここで、上記式(1)、(2)中のRは、上記のように、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基であり、炭化水素基としては、特に制限されるものではないが、特に、メチル基、エチル基であることが好ましい。また、炭化水素基は、水素原子の一部又は全部が置換されていてもよく、その置換基としては例えばハロゲン原子、ヒドロキシル基などが例示される。更に、式(1)、(2)中の各Rは、上記のように、一部又は全部が同一でもそれぞれ異なっていてもよい。
【0023】
上記一般式(1)、(2)で表されるベンゾイミダゾールとして具体的には、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−メチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−ジメチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−トリメチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−テトラメチルベンゾイミダゾール、2−ベンゾイミダゾールチオン、5−メチル−2−ベンゾイミダゾールチオンなどが例示され、これらの中では2−メルカプトベンゾイミダゾール〔下記式(3)〕、2−メルカプト−メチルベンゾイミダゾール〔下記式(4)〕が好ましく用いられる。
【0024】
【化3】
【0025】
この(C)成分のベンゾイミダゾールの配合量は、特に制限されるものではないが、下限としては、上記(A)成分100質量部に対して好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上である。また、上限としては、上記(A)成分100質量部に対して好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。この(C)成分の配合量が少なすぎると、反発性を向上させて初速を高くする効果が得られない場合があり、一方、多すぎると必要以上に硬度が低くなってたわみ量が大きくなりすぎたり、反発性の向上効果が得られない場合がある。
【0026】
本発明のゴム組成物には、公知の架橋剤が配合されるが、本発明では特に制限されるものではないが、(D)成分として有機過酸化物が好適に用いられる。この有機過酸化物としては、特に制限はなく、公知の有機過酸化物を用いることができる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ジベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどを例示することができ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの有機過酸化物は、市販品を用いることができ、例えば商品名「パークミルD」、「パーヘキサC−40」(いずれも日油社製)や商品名「ナイパーBW」、「パーロイルL」(いずれも日油社製)、更に商品名「トリゴノックス29」(化薬アクゾ社製)などを挙げることができる。
【0027】
この(D)成分の有機過酸化物の配合量は、選択した有機過酸化物の種類や架橋成形条件などに応じて適宜設定され、特に制限されるものではないが、好ましくは上記(A)成分100質量部に対して0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上とされ、上限は好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。この(D)成分の有機過酸化物の配合量が少なすぎると、十分な反発性向上効果が得られない場合があり、また、配合量が多すぎると、反発性(特に、W#1による打撃)の改良効果がそれ以上期待できなくなり、また軟らかくなりすぎたり、打感が悪くなる場合がある。
【0028】
本発明のゴム組成物には、上記(A)〜(D)成分以外にも必要に応じて各種添加剤を配合することができ、例えば、硫黄、有機硫黄化合物、不活性充填剤、老化防止剤、ステアリン酸亜鉛等を配合することができる。
【0029】
不活性充填剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記不活性充填剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上とすることができる。また、配合の上限は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0031】
老化防止剤としては、公知のものを使用することができ、特に制限されるものではないが、具体的には、市販品としてノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラックSP−N、ノクラック200(大内新興化学工業社製)等を例示することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
老化防止剤の配合量は、(A)成分の基材ゴム100質量部に対して好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下とすることができる。配合量が多すぎると良好な反発性、耐久性を得ることができない場合がある。
【0033】
本発明ゴム組成物は、ゴルフボールの構成要素の少なくとも一部を形成するものであり、そのゴルフボールは、目的に応じて様々な態様を取り得る。より具体的には、上記組成物で全体が形成されたワンピースゴルフボール;ソリッドコアと1層のカバーとを具備し、前記ソリッドコア及び/又はカバーの少なくとも一部が上記組成物で形成されたツーピースソリッドゴルフボール;1層又は2層以上のソリッドコアと1層又は2層以上のカバーとを具備し、前記ソリッドコア及び/又はカバーの少なくとも一部が上記組成物で形成されたスリーピース以上のマルチピースソリッドゴルフボール;上記組成物でソリッドセンター及び/又はカバーの少なくとも一部が形成された糸巻きゴルフボール等を例示することができる。これらの態様の中でも、特に組成物の特性を活かし、ゴルフボールの反発性をより効果的に発揮させる観点から、上記組成物で形成されたソリッドコアを具備してなるツーピースソリッドゴルフボール又はマルチピースソリッドゴルフボールであることが好適である。
【0034】
ゴルフボールを構成する場合に、本発明のゴルフボール用ゴム組成物を用いた部分以外のその他の部分に使用できる材料の具体例としては、熱可塑性又は熱硬化性のポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン系エラストマー及びポリウレア等を挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができ、特に熱可塑性ポリウレタン系エラストマー及びアイオノマー樹脂を好適に用いることができる。成形方法としては、例えば射出成形法や加圧成形法等の公知の方法を採用することができる。
【0035】
上記熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとしては、市販品を用いることができ、具体的には、パンデックスT7298、同T7295、同T7890、同TR3080、同T8295、同T8290、同T8260(DIC・バイエルポリマー社製)等を例示することができる。また、アイオノマー樹脂も市販品を用いることができ、具体的には、サーリン6320、同8120、同9945(米国デュポン社製)、ハイミラン1706、同1605、同1855、同1601、同1557(三井・デュポンポリケミカル社製)等を例示することができる。
【0036】
また、上記の材料には、任意成分として上記以外の熱可塑性エラストマー等のポリマーを配合することができる。その具体例としては、ポリアミド系エラストマー、スチレン系ブロックエラストマー、水添ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合体等が挙げられる。
【0037】
本発明ゴム組成物を用いて作製するゴルフボールが、ワンピースゴルフボール又はソリッドコア若しくはソリッドセンターを具備してなるゴルフボールのいずれかである場合、上記ワンピースゴルフボール、ソリッドコア又はソリッドセンターに対して初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量は、特に制限されるものではないが、通常2.0mm以上、好ましくは2.5mm以上である。また、その上限も特に制限されないが、通常6.0mm以下、好ましくは5.8mm以下である。上記のたわみ量が少なすぎると打感が悪くなると共に、特にドライバー等のボールに大変形が生じるロングショット時にスピンが増えすぎて飛ばなくなる場合がある。一方、軟らかすぎると、打感が鈍くなると共に、反発が十分でなくなり飛ばなくなる場合や、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる場合がある。
【0038】
この場合、ソリッドコアの直径は、特に制限されるものではないが、通常20mm以上、好ましくは30mm以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、通常42.5mm以下、好ましくは42.3mm以下とすることができる。
【0039】
上記ソリッドコアの比重は、特に制限されるものではないが、通常0.7以上、好ましくは0.9以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、通常1.6以下、好ましくは1.4以下とすることができる。
【0040】
本発明のゴルフボール用組成物及び上記の材料で形成されるカバー1層あたりの厚さは、特に制限されるものではないが、通常0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、通常4mm以下、好ましくは3mm以下とすることができる。
【0041】
上記ゴム組成物を用いてワンピースゴルフボール、並びにツーピースソリッドゴルフボール及びマルチピースソリッドゴルフボールを作製する場合、公知のゴルフボール用ゴム組成物と同様の方法で加硫・硬化させることによって作製することができる。加硫条件については、例えば、加硫温度100〜200℃、加硫時間10〜40分の条件を挙げることができる。
【0042】
本発明のゴム組成物を用いてゴルフボールを作製する場合、その直径は、42mm以上とすることができ、特に競技用ゴルフ規則に従うものとして42.67mm以上とすることが好ましい。また、その上限は45mm以下、好ましくは44mm以下とすることができる。一方、重量は48g以下とすることができ、特に競技用ゴルフ規則に従うものとして45.93g以下とすることが好ましい。また、その下限は、40g以上、好ましくは44g以上とすることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0044】
〔実施例1〜6、比較例1〕
(コアの形成)
表1に示す配合のゴム組成物を調製した後、155℃、20分間の条件で加硫成形することにより、同表に示した直径及び重量のコアを作製した。なお、同表中の配合量は質量部で示されている。
【0045】
得られた各コアにつき、たわみ量及び初速を下記方法で評価した。結果を表1に示す。
(1)コアのたわみ量(mm)
コアを、23±1℃の温度で、10mm/sの速度で圧縮し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷した時までの、コアのたわみ量(mm)を計測した。
(2)コア初速試験(m/s)
コアの初速は、R&Aの承認する装置であるUSGAのドラム回転式の初速計と同じ方式の初速測定器を用いて測定した。コアは23±1℃の温度で3時間以上温度調節し、室温23±2℃の部屋でテストした。比較例1のコアとの差を表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1中に記載した材料の詳細は下記の通りである。
BR730:JSR社製ポリブタジエン〔シス−1,4−結合95%(JSR社公表値)〕
酸化亜鉛:堺化学工業社製
アクリル酸亜鉛:日本蒸留工業社製
ノクラックNS−6:大内新興化学工業社製の老化防止剤 2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)
ノクラックMB:東京化成工業社製 2−メルカプトベンゾイミダゾール
パークミルD:日油社製の有機過酸化物 ジクミルパーオキサイド
パーヘキサC−40:日油社製の有機過酸化物 1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、40%濃度
【0048】
表1に示されるように、2−メルカプトベンゾイミダゾールを配合した実施例1〜6のゴム組成物から得られる架橋成形物(コア)は、これを配合しない比較例1のゴム組成物に比べて、より高い反発性を示しコア初速が高く得られることが確認された。