特許第6044300号(P6044300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6044300非水系二次電池電極形成用導電性プライマー組成物、それを用いた非水系二次電池電極、及び非水系二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044300
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】非水系二次電池電極形成用導電性プライマー組成物、それを用いた非水系二次電池電極、及び非水系二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20161206BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20161206BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20161206BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20161206BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20161206BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20161206BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20161206BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20161206BHJP
   C01B 31/04 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H01M4/66 A
   H01M4/13
   H01M4/139
   H01M4/62 Z
   H01M10/052
   H01B1/24 A
   H01B1/00 J
   H01M10/0566
   C01B31/04 101Z
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-258131(P2012-258131)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-107073(P2014-107073A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】諸石 順幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政勝
(72)【発明者】
【氏名】會田 勝寿
【審査官】 立木 林
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−156109(JP,A)
【文献】 国際公開第12/133030(WO,A1)
【文献】 国際公開第12/133031(WO,A1)
【文献】 国際公開第11/013756(WO,A1)
【文献】 特開2004−080019(JP,A)
【文献】 特開2010−097816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64− 4/84
H01M 4/13− 4/1399
H01M 4/36− 4/62
H01M10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径1〜50μmの葉状黒鉛粒子(A)、平均粒子径0.01〜0.3μmのカーボンブラック(B)、下記単量体を共重合してなる共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和してなる両性樹脂型分散剤(C)、バインダー(D)、および水性液状媒体(E)を含有する非水系二次電池電極形成用導電性プライマー組成物であり、葉状黒鉛粒子(A)、カーボンブラック(B)の合計100重量%中、葉状黒鉛粒子(A)の割合が60〜99重量%、カーボンブラック(B)の割合が1〜40重量%であることを特徴とする、非水系二次電池電極形成用導電性プライマー組成物。
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1):5〜70重量%
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(c2):15〜60重量%
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3):1〜80重量%
前記(c1)〜(c3)以外のエチレン性不飽和単量体(c4):0〜79重量%
(但し、前記(c1)〜(c4)の合計を100重量%とする)
【請求項2】
請求項記載の非水系二次電池電極形成用導電性プライマー組成物から形成されてなる二次電池電極下地層。
【請求項3】
集電体上に、請求項記載の非水系二次電池電極下地層、および合材層が積層されてなることを特徴とする非水系二次電池電極。
【請求項4】
合材層が、両性樹脂型分散剤(C)を含有する合材インキから形成されてなることを特徴とする請求項記載の非水系二次電池電極。
【請求項5】
正極と負極と電解液とを具備する二次電池であって、正極もしくは負極の少なくとも一方が、請求項または記載の非水系二次電池電極である非水系二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池電極形成用導電性プライマー組成物、及びその組成物を用いて得られる電極、並びにその電極を用いて得られる二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラや携帯電話のような小型携帯型電子機器が広く用いられるようになってきた。これらの電子機器には、容積を最小限にし、かつ重量を軽くすることが常に求められてきており、搭載される電池においても、小型、軽量かつ大容量の電池の実現が求められている。又、自動車搭載用等の大型二次電池においても、従来の鉛蓄電池に代えて、軽量で高出力性能を有する大型電池の実現が望まれている。
【0003】
そのような要求に応えるため、リチウムイオン二次電池などの二次電池の開発、例えば、電極の形成に使用される合材インキの開発が活発に行われている。電極の更なる高性能化のため、下地層の形成に使用される導電性プライマー組成物を導入する試みもされている。導電性プライマー組成物を導入する目的としては、合材層と箔状集電体の間に下地層を積層することで、合材層の接触界面抵抗を低減して、電池を形成した際に内部抵抗を低減することが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、電極の活物質層と集電体間に下地層を使用し、密着性を向上させた電極が示されている。しかしながら、上記下地層は、導電材料を含有していないため得られる電極の導電性が著しく低下する問題点を有している。
特許文献2には、水溶性ポリマーを含有した電極用下地層が示されている。しかしながら、上記下地層は、特許文献1同様、導電材料を含有していないため得られる電極の導電性が著しく低下する問題点を有している。
特許文献3には、導電材料と硫黄原子を含む化合物を含有した電極用下地層が示されている。しかしながら、実施例の導電材料にはカーボンブラックしか記載がなく、カーボンブラックだけでは合材層との接触界面抵抗の低減効果は低い。
特許文献4には、フッ素系高分子とカーボンブラックを含有する電極用下地層が示されている。しかしながら、特許文献3と同様、導電材料としてカーボンブラックしか用いておらず、カーボンブラックだけでは合材層との接触界面抵抗の低減効果は低い。
特許文献5には、炭素質成分としてグラファイトまたはカーボンブラックを含有する電極用下地層が示されている。しかしながら、該文献にはグラファイト種類の特定が無く、実施例で用いられているグラファイトのKS−6(TIMCAL(株)製)は人造黒鉛のため、得られる下地層の表面の平滑性は十分でない。
特許文献6には、平均粒子径が0.5μm以下の導電性フィラーを含む電極用下地層が示されている。しかしながら、平均粒子径が0.5μm以下の導電性フィラーだけでは、得られる下地層の表面の平滑性は十分でない。
特許文献7には、電気二重層キャパシタ用電極において葉状黒鉛やカーボンブラックを含む導電性下地層が示されている。しかしながら、これらの導電性フィラーを混合しただけでは、得られた下地層においてフィラー間の接点が不十分なために導電性が不十分であり、また、下地層の表面平滑性も悪いため合材層との密着性の改善が必要である。
このように従来の下地層では、電池性能に影響の大きい接触界面抵抗の低減効果が不十分であり、そのためにはさらなる導電性の向上が望まれている。また、合材層と集電体間の密着性の向上も検討はなされているものの未だ不十分であり、改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−149810号公報
【特許文献2】特開平11−339771号公報
【特許文献3】特開2000−123823号公報
【特許文献4】特許第3229740号公報
【特許文献5】特開2001−52710号公報
【特許文献6】特許第3478077号公報
【特許文献7】特開2005−136401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、充放電サイクル特性に優れる非水系二次電池を形成するための非水系二次電池電極形成用導電性プライマー組成物であって、合材層と集電体間の界面接触抵抗を低減することができ、さらに、密着性が良好で導電性の高い下地層を形成できる導電性プライマー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、高電位、高エネルギー密度でサイクル特性に優れた非水系二次電池を得るために検討した結果、集電体と合材層(活物質層)との間に、両性分散剤により均一に分散された葉状天然黒鉛粒子とカーボンブラックを使用した導電性プライマー組成物を用いることにより、密着性、導電性の良好な下地層を得られることを見いだしたものである。
【0008】
すなわち本発明は、平均粒子径1〜50μmの葉状黒鉛粒子(A)、平均粒子径0.01〜0.3μmのカーボンブラック(B)、下記単量体を共重合してなる共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和してなる両性樹脂型分散剤(C)、バインダー(D)、および水性液状媒体(E)を含有する非水系二次電池電極形成用導電性プライマー組成物であり、葉状黒鉛粒子(A)、カーボンブラック(B)の合計100重量%中、葉状黒鉛粒子(A)の割合が60〜99重量%、カーボンブラック(B)の割合が1〜40重量%であることを特徴とする、非水系二次電池電極形成用導電性プライマー組成物に関する。
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1):5〜70重量%
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(c2):15〜60重量%
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3):1〜80重量%
前記(c1)〜(c3)以外のエチレン性不飽和単量体(c4):0〜79重量%
(但し、前記(c1)〜(c4)の合計を100重量%とする)
【0010】
さらに本発明は、前記非水系二次電池電極形成用導電性プライマー組成物から形成されてなる二次電池電極下地層に関する。
【0011】
さらに本発明は、集電体上に、前記非水系二次電池電極下地層、および合材層が積層されてなることを特徴とする非水系二次電池電極に関する。
【0012】
さらに本発明は、合材層が、両性樹脂型分散剤(C)を含有する合材インキから形成されてなることを特徴とする前記非水系二次電池電極に関する。
【0013】
さらに本発明は、正極と負極と電解液とを具備する二次電池であって、正極もしくは負極の少なくとも一方が、前記非水系二次電池電極である非水系二次電池に関する。
【発明の効果】
【0014】
葉状天然黒鉛粒子とカーボンブラックと両性樹脂型分散剤の利用により、本発明の非水系二次電池電極形成用導電性プライマー組成物を得ることができた。本発明の電極形成用導電性プライマー組成物は両性分散剤によりフィラーガ均一に分散されたことにより、集電体と合材層の密着性を改善し、集電体と合材層との界面接触抵抗も低減できる下地層を形成することができるばかりでなく、下地層の導電ネットワークが良好になり導電性が改善出来るため、充放電サイクル特性に優れる非水系二次電池を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、非水系二次電池電極形成用導電性プライマー組成物を形成する葉状黒鉛粒子(A)について説明する。黒鉛粒子は一般にカーボンブラック(B)と比較して粒子径が1μm以上と大きい。黒鉛粒子としては、天然黒鉛粒子と人造黒鉛粒子が挙げられ、天然黒鉛がより滑らかで軟らかい表面を有していることが知られている。そのため、界面接触を低減させる観点では天然黒鉛が好ましい。天然黒鉛粒子は、葉状、球状、土状等が挙げられ、天然黒鉛の中でも、表面の平滑性の観点からアスペクト比の高い葉状黒鉛が好ましい。
【0016】
葉状黒鉛粒子(A)は、平均粒子径1〜50μmが好ましく、平均粒子径3〜40μmがより好ましい。なお、ここでいう平均粒子径とは、反射型電子顕微鏡(SEM)を用いて、500〜1000倍に適宜拡大した画像から、10〜50個の粒子の直径(面方向の最大径と最小径の平均値)を平均することで得られる。なお、葉状黒鉛粒子(A)の厚みは問わないが、下地層の表面平滑性および導電性の観点から0.01〜2μmであることが好ましい。
【0017】
葉状黒鉛粒子(A)は、例えば、塊状の天然黒鉛を粉砕することや、天然黒鉛の層間化合物のへき開面に沿って、層間剥離を行なうことにより得ることができる。粉砕による場合、例えば、ボールミルなどを用いての乾式粉砕法により、葉状黒鉛を得ることができる。
【0018】
葉状黒鉛粒子(A)は、前記の層間化合物のへき開面を利用する方法でも得られることができる。具体的には、例えば、天然黒鉛を硫酸と硝酸との混酸で処理して得られる黒鉛と硫酸との層間化合物を、または天然黒鉛を硫酸中で電気的に酸化して得られる黒鉛と硫酸との層間化合物等を加熱膨張させて得られる膨張黒鉛を、結晶構造のへき開面を剥離させる方法などで得られる。前記膨張黒鉛は、へき開面の層間が広がっているため、へき開面に沿って容易に層間剥離をし、平滑な粒子表面、すなわち葉状黒鉛粒子が得られる。
【0019】
葉状黒鉛粒子(A)は特に限定されないが、市販のものとして例えば、中越黒鉛(株)製のCX−3000、FBF、BF、CBR、SSC−3000、SSC−600、SSC−3、SSC、CX−600、CPF−8、CPF−3、CPB−6S、CPB−3、96E、96L、96L−3、90L−3、CPC、S−87、K−3、CF−80、CF−48、CF−32、CP−150、CP−100、CP、HF−80、HF−48、HF−32、SC−120、SC−80、SC−60、SC−32、富士黒鉛工業(株)製の、UF−2、CBF−1、CBF−3、CPF−3、96L、COP,FAC−1、FAC−2、FGB、CSP−2、CF−2、SECカーボン(株)製のSNO−20、SNO−10、SNO−5、SNE−20、SNE−10、SNE−5、日本黒鉛工業(株)製のCSSP、CSPE、CSP、CP、CB−150、CB−100、ACP、ACB−150、SP−10、SP−20、J−SP、SP−270、HOP、CMX、UP−5、UP−10、UP−20、伊藤黒鉛工業(株)のZ−5F、CNP−7、CNP−15、CNP−35、Z−100、Z+80、Z−25、Z−50、X−10、X−20、が挙げられる。
【0020】
次に、カーボンブラック(B)について説明する。カーボンブラック(B)は葉状黒鉛粒子(A)同士を繋ぐ導電ネットワークの役割を果たす。カーボンブラック(B)としては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
【0021】
カーボンブラック(B)の平均一次粒子径は、0.01〜0.3μmが好ましい。より好ましくは、0.03〜0.2μmここで、平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、1万倍〜10万倍に適宜拡大した画像から、10〜50個の粒子の直径を平均することで得られる。
【0022】
カーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m/g以上、1500m/g以下、好ましくは50m/g以上、1500m/g以下、更に好ましくは100m/g以上、1500m/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
【0023】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン(株)製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ(株)製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975ULTRA等、PUER BLACK100、115、205等(コロンビヤン(株)製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学(株)製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット(株)製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li(TIMCAL(株)製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ(株)製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業(株)製、アセチレンブラック)等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0024】
次に、本発明における両性樹脂型分散剤(C)について説明する。
本発明における両性樹脂型分散剤(C)は、芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(c2)と、アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)と、を必須成分とする共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和したものである。
【0025】
本発明における両性樹脂型分散剤(C)を構成するエチレン性不飽和単量体とは、特に断らない限り、1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する単量体のことを示す。
【0026】
まず、芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)について説明する。
本発明で使用する芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)としては、スチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレートを例示することが出来る。
【0027】
つぎに、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(c2)について説明する。
本発明で使用する単量体(c2)は、カルボキシル基含有不飽和化合物としてはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等を例示することが出来る。特にメタクリル酸、アクリル酸が好ましい。
【0028】
つぎに、アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)について説明する。
本発明で使用するアミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)は、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等が挙げられる。
【0029】
つぎに、前記(c1)〜(c3)以外のその他の単量体(c4)について説明する。
(メタ)アクリレート系化合物としては、アルキル系(メタ)アクリレート、アルキレングリコール系(メタ)アクリレートがある。
【0030】
更に具体的に例示すると、アルキル系(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレートがあり、極性の調節を目的とする場合には好ましくは炭素数2〜10、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキル基を有するアルキル基含有アクリレートまたは対応するメタクリレートが挙げられる。
【0031】
また、アルキレングリコール系(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等、末端に水酸基を有し、ポリオキシアルキレン鎖を有するモノアクリレートまたは対応するモノメタアクリレート等、
メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等、末端にアルコキシ基を有し、ポリオキシアルキレン鎖を有するモノアクリレートまたは対応するモノメタアクリレート等、
フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等、末端にフェノキシまたはアリールオキシ基を有するポリオキシアルキレン系アクリレートまたは対応するメタアクリレートがある。
【0032】
上記以外の水酸基含有不飽和化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼンなどが挙がられる。
【0033】
上記以外の窒素含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド等のモノアルキロール(メタ)アクリルアミド、
N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド等のジアルキロール(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系不飽和化合物を例示できる。
【0034】
更にその他の不飽和化合物としては、パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類;
パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル、アルキレン類等のパーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラノール基含有ビニル化合物及びその誘導体などを挙げることができ、これらの群から複数用いることができる。
【0035】
脂肪酸ビニル化合物としては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が挙げられる。
【0036】
アルキルビニルエーテル化合物としては、ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0037】
α−オレフィン化合物としては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン等が挙げられる。
【0038】
ビニル化合物としては、酢酸アリル、アリルアルコール、アリルベンゼン、シアン化アリル等のアリル化合物、シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトン、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、クロロスチレン、などが挙げられる。
【0039】
エチニル化合物としては、アセチレン、エチニルベンゼン、エチニルトルエン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等が挙げられる。これらは単独もしくは2種類以上を併用して使用することもできる。
【0040】
本発明で用いられる両性樹脂型分散剤(C)中の共重合体を構成する単量体の比率は、単量体(c1)〜(c4)の合計を100重量%とした場合に、
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)が5〜70重量%、
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(c2)が15〜60重量%、
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)が1〜80重量%、
前記(c1)〜(c3)以外のその他の単量体(d4)が0〜79重量%である。
好ましくは、(c1):20〜70重量%、(c2):15〜45重量%、(c3):1〜70重量%、(c4):0〜50重量%である。
より好ましくは、(d1):30〜70重量%、(d2):15〜35重量%、(d3):1〜40重量%、(d4):0〜40重量%である。
【0041】
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)由来の芳香環、及びアミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)由来のアミノ基が、後述する活物質(A)や炭素材料(B)への主たる吸着部位となると推測している。
【0042】
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(c2)は、共重合体の中和物を水性液状媒体に溶解ないし分散させる機能を担う。
そして、葉状黒鉛粒子(A)、炭素材料(B)、および活物質(F)に、芳香環やアミノ基を介してコポリマーが吸着し、中和され、イオン化されたカルボキシル基の電荷反発により、葉状黒鉛粒子(A)、炭素材料(B)、および活物質(F)の水性液状媒体中における分散状態を安定に保つことができるようになったものと考察される。
【0043】
上記単量体(c1)〜(c4)を共重合してなるコポリマーの分子量は特に制限はないが、両性樹脂型分散剤(C)の固形分20%水溶液における粘度が、好ましくは5〜100,000mPa・sであり、さらに好ましくは10〜50,000mPa・sである。所定範囲の粘度より低く、両性樹脂型分散剤(C)の分子量が小さすぎる場合、あるいは所定範囲の粘度より高く、両性樹脂型分散剤(C)の分子量が大きすぎる場合には、葉状黒鉛粒子(A)、炭素材料(B)、および活物質(F)の分散不良を引き起こす可能性がある。
尚、本発明における粘度とは、B型粘度計を用いて25℃の条件下で測定した値である。
【0044】
上記コポリマーは、カルボキシル基含有不飽和化合物(c2)を共重合してなるが、コポリマーにおけるアニオン性官能基を有する単量体の構成比率を酸価で表すと下記のようであることが好ましい。即ち、使用するコポリマーの酸価が、50mgKOH/g以上400mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、更には、酸価が80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の範囲であることが好ましい。
本発明で使用するコポリマーの酸価が上記した範囲よりも低いと分散体の分散安定性が低下し、粘度が増加する傾向がある。また、本発明で使用するコポリマーの酸価が上記した範囲より高いと、顔料表面に対するコポリマーの付着力が低下し、分散体の保存安定性が低下する傾向がある。
尚、本発明におけるコポリマーの酸価は、JIS K 0070の電位差滴定法に準拠し、測定した酸価(mgKOH/g)を固形分換算した値である。
【0045】
両性樹脂型分散剤(C)は、種々の製造方法で得ることができる。
例えば、上記単量体(c1)〜(c4)を、水と共沸し得る有機溶剤中で重合する。その後、水に代表される水性液状媒体と中和剤とを加えてカルボキシル基の少なくとも一部を中和し、共沸可能な溶剤を留去し、両性樹脂型分散剤(C)の水溶液ないし水性分散液を得ることができる。
重合時の有機溶剤としては、水と共沸するものであれば良いが、コポリマーに対し溶解性の高いものが良く、好ましくはエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールであり、さらに好ましくは1−ブタノールである。
【0046】
あるいは、親水性有機溶剤中で共重合し、水とアミンを加えて中和し水性化し、前記するが、親水性有機溶剤は留去せず、親水性有機溶剤と水とを含む水性液状媒体に、両性樹脂型分散剤(C)が溶解ないし分散した液を得ることができる。
この場合、用いられる親水性有機溶剤としては、コポリマーに対し溶解性の高いものが良く、好ましくはグリコールエーテル類、ジオール類、さらに好ましくは(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオール類が良い。
【0047】
コポリマーの中和に使用される中和剤である塩基性化合物としては、下記のものが挙げられる。
例えば、アンモニア水、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤を使用することができる。上記したようなコポリマーは、水性液媒体中に、分散又は溶解される。
【0048】
次に、バインダー(D)について説明する。バインダー(D)は、黒鉛粒子(A)やカーボンブラック(B)を結着させ、さらに下地層を形成した際、下地層と箔状集電体間、及び合材層と下地層間を密着させるために使用されるものであり、それら粒子を溶媒中へ分散させる効果は小さいものである。
【0049】
バインダー(D)としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等のセルロース樹脂、スチレン−ブタジエンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴム、ポリアニリンやポリアセチレン等の導電性樹脂等、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、及びテトラフルオロエチレン等のフッ素原子を含む高分子化合物が挙げられる。また、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良い。これらバインダーは、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
また、バインダーとしては環境面の配慮から水媒体のものが好ましく、水媒体のバインダーの形態としては、水溶性型、エマルション型、ハイドロゾル型等が挙げられ、適宜選択することができる。
【0050】
葉状黒鉛粒子(A)、およびカーボンブラック(B)を使用する割合は、葉状黒鉛粒子(A)、カーボンブラック(B)の合計100重量%中、葉状黒鉛粒子(A)の割合が60〜99重量%が好ましく、65〜95重量%がより好ましい。また、カーボンブラック(B)の割合は、1〜40重量%が好ましく、5〜35重量%がより好ましい。
カーボンブラック(B)の割合が上記の範囲よりも低いと導電性が低下し、下地層を形成した際に、合材層との接触抵抗が増加する懸念があり、一方、カーボンブラック(B)の割合が上記の範囲よりも高いと、下地層を形成した際に、合材層との密着性が低下するおそれがある。また、下地層を形成した際の界面の平滑性を高めるため、カーボンブラック(B)と比較して葉状黒鉛粒子(A)の割合を高めるほうが好ましい。
葉状黒鉛粒子(A)およびカーボンブラック(B)の割合が、それぞれ上記範囲にあると、合材層との接触抵抗低減化と密着性に特に優れる下地層を形成することができ、好ましい。
両性樹脂型分散剤(C)を使用する割合は、葉状黒鉛粒子(A)とカーボブラック(B)の合計100重量%に対し、1重量%から100重量%が好ましく、2重量%〜50重量%がより好ましい。両性樹脂型分散剤(C)の割合が上記範囲よりも低いと、分散体の安定性が低下し、粘度が増加する懸念がある。一方、両性樹脂型分散剤(C)の割合が上記範囲よりも高いと、葉状黒鉛粒子(A)とカーボブラック(B)の充填率が低くなり、導電性が劣るおそれがある。
バインダー(D)を使用する割合は、葉状黒鉛粒子(A)とカーボブラック(B)の合計100重量%に対し、1重量%から200重量%が好ましく、2重量%〜100重量%がより好ましい。バインダー(D)の割合が上記範囲よりも低いと、箔状集電体や合材層との密着性が低下する懸念がある。一方、バインダー(D)の割合が上記範囲よりも高いと、葉状黒鉛粒子(A)とカーボブラック(B)の充填率が低くなり、導電性が劣るおそれがある。
【0051】
つぎに、水性液状媒体(E)について説明する。
本発明に使用する水性液状媒体(E)としては、水を使用することが好ましいが、必要に応じて、例えば、集電体への塗工性向上のために、水と相溶する液状媒体を使用しても良い。
水と相溶する液状媒体としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用しても良い。
【0052】
さらに、導電性プライマー組成物には、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、防腐剤、pH調整剤、粘性調整剤などを必要に応じて配合できる。
【0053】
本発明で得られる導電性プライマー組成物の適正粘度は、導電性プライマー組成物の塗工方法によるが、一般には、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。本発明で得られる導電性プライマー組成物は集電体上に塗工・乾燥し、二次電池電極下地層を得ることができる。
【0054】
(プライマー組成物の作製方法)
葉状黒鉛粒子(A)とカーボンブラック(B)は平均粒子径が大きいため、あらかじめ、水、分散樹脂を用いて分散粒径が0.1〜50μmに分散して使用するのが好ましい。分散樹脂としては、両性樹脂型分散剤(C)が好ましい。ここでいう分散粒径とは、得られた分散体の体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装(株)製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
葉状黒鉛粒子(A)とカーボンブラック(B)は同時に分散してもよいし、別々に分散した黒鉛粒子分散体と、カーボンブラック分散体とを混合してもよい。また、一方を分散した分散体に、さらに他方を加えて分散してもよい。
【0055】
導電性プライマー組成物を得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック(株)製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル(株)製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス(株)製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ(株)製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス(株)製「ジーナスPY」、スギノマシン(株)製「スターバースト」、ナノマイザー(株)製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック(株)製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械(株)製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
【0056】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。また、強い衝撃で粒子が割れたり、潰れたりしやすい正または負極活物質の場合は、メディア型分散機よりは、ロールミルやホモジナイザー等のメディアレス分散機が好ましい。
【0057】
(合材層)
本発明における、非水系二次電池電極下地層上に設けられる合材層は、合材インキによって形成される。合材インキは、活物質(F)とバインダー(D)とを含有する。
活物質(F)について説明する。リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。
例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V、V13、TiO等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。
また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
【0058】
リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、LiFe、LiFe、LiWO、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
【0059】
これら活物質(F)の大きさは、0.05〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜50μmの範囲内である。そして、合材インキ中の電極活物質(F)の分散粒径は、0.05〜30μmであることが好ましい。ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装(株)製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
【0060】
つぎに、バインダー(D)について説明する。
本発明に使用するバインダー(D)は、合材層を形成する際に活物質(F)を集電体に結着させるために使用されるものである。バインダー(D)としては、導電性プライマー組成物で用いられるバインダー(D)と同様な材料を用いることができる。バインダーの形態としては、集電体への密着の観点からエマルション型が好ましい。ここでのエマルション型とは、バインダーが水性液状溶媒に溶解せず、水性液状溶媒中で粒子状に分散している状態を指す。
【0061】
さらに、合材インキには、導電性を高めるために導電材料(G)を用いることができる。導電材料(G)としては炭素材料であることが好ましく、前述のカーボンブラック(B)のほかに、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性プライマー組成物を得る際と同様、導電材料(G)を用いる際には、水、分散樹脂を用いて分散粒径で0.1〜10μmに分散して使用するのが好ましい。分散樹脂としては、水溶性セルロース系樹脂、水溶性アクリル系樹脂、水溶性スチレン/アクリル系樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ウレタン樹脂等が好ましく、両性分散剤(C)であることがより好ましい。ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装(株)製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
【0062】
さらに、合材インキには、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、防腐剤、pH調整剤、粘性調整剤などを必要に応じて配合できる。
合材インキの作成方法は特に限定されないが、上述の分散機等を用いることができる。
【0063】
塗工方法によるが、固形分30〜90重量%の範囲で、合材インキの粘度は、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
塗工可能な粘度範囲内において、活物質(F)はできるだけ多く含まれることが好ましく、例えば、合材インキ固形分に占める活物質(F)の割合は、80重量%以上、99重量%以下が好ましい。
導電材料(G)を含む場合、合材インキ固形分に占める導電材料(G)の割合は、0.1〜15重量%であることが好ましい。
バインダーを含む場合、合材インキ固形分に占めるバインダーの割合は、0.1〜15重量%であることが好ましい。
【0064】
<電極>
本発明の導電性プライマー組成物を箔状集電体上に塗工・乾燥して下地層を形成し、該下地層上に、合材インキから形成される合材層を設け、非水系二次電池電極を得ることができる。
【0065】
(集電体)
電極に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。
例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。リチウムイオン電池の場合、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅が、それぞれ好ましい。
又、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、多孔質の発泡状のもの、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
【0066】
集電体上に導電性プライマー組成物を塗工する方法、および、当該導電性プライマー組成物により形成された下地層上に合材インキを塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。
具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
又、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。下地層の厚みは、一般的には0.1〜10μmであり、好ましくは0.5〜5μmである。合材層の厚みは、一般的には1〜500μmであり、好ましくは10〜300μmである。
【0067】
<二次電池>
正極もしくは負極の少なくとも一方に上記の電極を用い、非水系二次電池を得ることができる。
二次電池としては、リチウムイオン二次電池の他、ナトリウム二次電池、マグネシウム二次電池、リチウムイオンキャパシター等が挙げられ、それぞれの二次電池で従来から知られている、非水系電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。
【0068】
(電解液)
リチウムイオン二次電池の場合を例にとって説明する。電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。
電解質としては、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、Li(CFSOC、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN、又はLiBPh等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0069】
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、例えば、
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;
テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;
メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;
ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、
アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0070】
さらに上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、及びポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0071】
(セパレーター)
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びそれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0072】
(電池構造・構成)
本発明の組成物を用いたリチウムイオン二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレータとから構成され、ペーパー型、円筒型、コイン型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「重量部」を表す。
【0074】
(分散剤合成例1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、n−ブタノール200.0部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、スチレン100.0部、アクリル酸60.0部、ジメチルアミノエチルメタクリレート40.0部、およびV−601(和光純薬製)12.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、共重合体(1)溶液を得た。共重合体(1)の重量平均分子量は約1万、酸価は219.1(mgKOH/g)であった。
さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール74.2部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。さらに、水を400部添加して水性化した後、100℃まで加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去した。
水で希釈し、不揮発分20%の両性樹脂型分散剤(1)の水溶液ないし水性分散体を得た。また、不揮発分20%の両性樹脂型分散剤(1)の水溶液の粘度は、40mPa・sであった。
【0075】
(分散剤合成例2〜20)
表1に示す配合組成で、合成例1と同様の方法で合成し、合成例2〜20の分散剤を得た。
【0076】
【表1】

St:スチレン
AA:アクリル酸
BzMA:ベンジルメタクリレート
DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
BMA:メタクリル酸ブチル
【0077】
<実施例1:導電性プライマー組成物(1−1)>
葉状黒鉛粒子(A)として葉状黒鉛CPB−3(中越黒鉛(株)製、平均粒子径18μm)を7部、分散剤として、合成例1(固形分濃度20%)を4.1部、水58.9部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて5時間分散を行い、黒鉛粒子分散体(1−1)を得た。
次に、カーボンブラック(B)としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100、平均粒子径48nm)1.5部、分散剤として、合成例1(固形分濃度20%)を0.9部、水12.6部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて5時間分散を行い、カーボンブラック分散体(1−1)を得た。
得られた黒鉛粒子分散体(1−1)70.0部とカーボンブラック分散体(1−1)15.0部に対して、バインダーとして水溶性セルロース樹脂のCMCダイセル1120(カルボキシメチルセルロース、ダイセルファインケム(株)製、固形分100%)1.5部、水50部を混合して、導電性プライマー組成物(1−1)を作製した。
【0078】
<実施例1〜24:導電性プライマー組成物1−2〜1−15、2〜10>
表2、3に示すように組成物の種類や比率を変えた以外は実施例1の導電性プライマー組成物(1−1)と同様にして、導電性プライマー組成物を得た。
表2および表3の実施例において、葉状黒鉛粒子(A)を黒鉛粒子(A)と略す。


【0079】
<比較例1〜12:導電性プライマー組成物1−16〜1−20、11〜17>
表2、3に示すように組成物の種類や比率を変えた以外は実施例1の導電性プライマー組成物(1−1)と同様にして、導電性プライマー組成物を得た。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】

・FBF :葉状黒鉛(中越黒鉛(株)製、平均粒子径8μm)
・CNP−15:葉状黒鉛(伊藤黒鉛(株)製、平均粒子径15μm)
・Z−100:葉状黒鉛(伊藤黒鉛(株)製、平均粒子径60μm)
・SG−BH8:球状黒鉛(伊藤黒鉛(株)製、平均粒子径8μm)
・SPG:人造黒鉛(SECカーボン(株)製、平均粒子径10μm)
・#2600:カーボンブラック(三菱化学(株)製、平均粒子径13nm)
・W−168:エマルション型アクリル樹脂(トーヨーケム(株)製、固形分50%)
【0082】
(導電性プライマーの分散度の判定)
導電性プライマーの分散度は、グラインドゲージによる判定(JISK5600−2−5に準ず)より求めた。評価結果を表5に示す。表中の数字は粗大粒子の大きさを示し、数値が小さいほど分散性に優れ、均一な分散体であることを示している。
【0083】
<リチウムイオン二次電池正極用合材インキの作製>
[リチウムイオン二次電池正極用合材インキ(1)]
正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/3 45部、導電材料としてデンカブラックHS−100を2.5部、バインダーとしてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)2.5部、NMP(N−メチルピロリドン)50部を混合して、リチウムイオン二次電池正極用合材インキ(1)を作製した。
[リチウムイオン二次電池正極用合材インキ(2)]
正極活物質としてLiFePO 45部、導電材料としてデンカブラックHS−100を2.5部、バインダーとしてCMC(ダイセル1120:カルボキシメチルセルロース)0.5部、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)3.5部、水48.5部を混合して、リチウムイオン二次電池正極用合材インキ(2)を作製した。
[リチウムイオン二次電池正極用合材インキ(3)]
正極活物質としてLiFePO 45部、導電材料としてデンカブラックHS−100を2.5部、合成例1の両性樹脂型分散剤の水溶液2.5部、バインダーとしてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)3.5部、水46.5部を混合して、リチウムイオン二次電池正極用合材インキ(3)を作製した。
【0084】
<リチウムイオン二次電池正極、および評価用コイン型電池の作製>
実施例1の導電性プライマー組成物(1−1)を集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して下地層の厚みが2μmとなるよう調整した。さらに、リチウムイオン二次電池正極用合材インキを下地層上に塗布した後、減圧加熱乾燥した。さらに、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが70μmとなる正極を作製し、密着性を以下の方法にて評価した。
【0085】
次に、得られた正極を、直径16mmに打ち抜き作用極と、金属リチウム箔対極と、作用極及び対極の間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロピレンフィルム)と、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)とからなる評価用コイン型電池を作製した。コイン型電池の作製はアルゴンガス置換したグロ−ブボックス内で行い、コイン型電池作製後、所定の電池特性評価を行った。
【0086】
(電極の密着性)
上記で作製した電極に、ナイフを用いて電極表面から集電体に達する深さまでの切込みを2mm間隔で縦横それぞれ6本の碁盤目の切込みを入れた。この切り込みに粘着テープを貼り付けて直ちに引き剥がし、活物質の脱落の程度を目視判定で判定した。評価基準を下記に示す。
○:「剥離なし(実用上問題のないレベル)」
○△:「わずかに剥離(問題はあるが使用可能レベル)」
△:「半分程度剥離」
×:「ほとんどの部分で剥離」
【0087】
(充放電保存特性)
得られたコイン型電池について、充放電装置(北斗電工(株)製SM−8)を用い、充放電測定を行った。
充電電流1.9mAにて充電終止電圧4.3Vまで定電流充電を続けた。電池の電圧が4.3Vに達した後、放電電流1.9 mAで放電終止電圧2.8Vに達するまで定電流放電を行った。これらの充電・放電サイクルを1サイクルとして5サイクルの充電・放電を繰り返し、5サイクル目の放電容量を初回放電容量とした。(初回放電容量を維持率100%とする)。
【0088】
次に、5サイクル目までと同様に充電を行った後、60℃恒温槽にて100時間保存後に、放電電流1mAで放電終止電圧2.8Vに達するまで定電流放電を行い、放電容量の変化率を算出した(100%に近いほど良好)。
◎:「変化率が98%以上。特に優れている。」
○:「変化率が95%以上、98%未満。優れている。」
○△:「変化率が90%以上、95%未満。全く問題なし。」
△:「変化率が85%以上、90%未満。問題はあるが使用可能なレベル。」
×:「変化率が85%未満。実用上問題あり、使用不可。」
【0089】
また、使用する活物質が、LiFePOの場合は、充電電流1 mA、充電終止電圧4.2V、放電電流1 mA,放電終止電圧2.0Vとした以外は、LiNi1/3Mn1/3Co1/3の場合と同様に充放電保存特性を測定出来る。
さらに、負極電極用の活物質として人造黒鉛を使用する場合(後述)は、充電電流0.85mA(0.1C相当)、充電終止電圧0.1V、放電電流0.85 mA,放電終止電圧2.0Vとした以外は、LiNi1/3Mn1/3Co1/3の場合と同様に充放電保存特性を測定出来る。
【0090】
実施例2〜12、16〜22、比較例1〜4、6〜11で得られた導電性プライマー組成物を用い、表4に示すように導電性プライマー組成物及び、正極二次電池電極用合材インキの組み合せを変えた以外は実施例1と同様にして、正極二次電池電極を得、同様に評価した。
【0091】
<リチウムイオン二次電池負極用合材インキ、および評価用コイン型電池の作製>
[リチウムイオン二次電池負極用合材インキ(4)]
負極活物質として人造黒鉛90部、導電材料としてデンカブラックHS−100を2部、バインダーとしてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)8部、NMP(N−メチルピロリドン)100部を混合して、リチウムイオン二次電池負極用合材インキを作製した。
【0092】
実施例13〜15、23、24、および比較例5、12で得られた導電性プライマー組成物を集電体となる厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して下地層の厚みが2μmとなるよう調整した。さらに、リチウムイオン二次電池負極用合材インキ(4)を下地層上に塗布した後、減圧加熱乾燥した。さらに、ロールプレスによる圧延処理を行い、減圧加熱乾燥して電極の厚みが70μmとなるよう調整し、正極の場合と同様に評価した。なお、充放電保持特性は、負極を作用極、金属リチウム箔を対極とした評価用コイン型電池を用いて評価した。
【0093】
表4に示すように、本発明の導電性プライマー組成物を用いた場合、導電性プライマー組成物が均一に分散されているため、形成される下地層の表面が平滑なことによる合材層との接触抵抗の低下や、下地層内の導電ネットワークが良好なため、良好な電池充放電保存特性が得られると考えられる。
一方、比較例では、形成される下地層の表面の平滑性が維持できず、密着性が低下し、その結果十分な電池充放電特性が得られず、下地層を形成することで特性を損ねてしまう場合も見られてしまった。また、比較例では、得られる下地層の導電炭素粒子同士が最密に充填出来ていないためか、導電ネットワークが十分でないために電池充放電特性が低下してしまったと考えられる。
【0094】
【表4】