(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)が490,000〜6,200,000であり、重量平均分子量の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)が6.0以下である請求項1又は2に記載のポリエチレンテープ。
ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)が490,000〜6,200,000であり、重量平均分子量の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)が6.0以下である請求項11〜13のいずれか1項に記載のポリエチレンスプリットヤーン。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの製造に用いられるポリエチレンの物性、本発明に係るポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性や製造方法について説明する。
【0012】
〔ポリエチレン〕
本発明で用いられるポリエチレンは、その繰り返し単位が実質的にエチレン鎖であることが好ましい。また、本発明の効果が得られる範囲で、エチレンの単独重合体ばかりでなく、エチレンと少量の他のモノマーとの共重合体を使用することができる。他のモノマーとしては、例えば、α−オレフィン、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、ビニルシラン及びその誘導体等が挙げられる。また、本発明で用いられるポリエチレンは、共重合体同士(エチレンと他のモノマー(例えば、α―オレフィン)との共重合体)、あるいはホモポリエチレンとエチレン系共重合体とのブレンド物、更にはホモポリエチレンと他のα−オレフィン等のホモポリマーとのブレンド物であってもよく、部分的な架橋、又は部分的なメチル分岐、エチル分岐、ブチル分岐等を有していてもよい。また、重量平均分子量が異なるポリエチレンのブレンド物であってよく、分子量分布(Mw/Mn)の異なるポリエチレンのブレンド物であってもよい。また、分岐ポリマーと分岐のないポリマーとのブレンド物であってもよい。このとき、テープやスプリットヤーン中の分岐量や架橋量を増やせば、製品の耐クリープ性が向上するが、分岐量が多すぎると後述する延伸工程時に破断が多発するため、架橋量や分岐量は使用する製品の要求性能に合わせて調整することが好ましい。
【0013】
しかし、エチレン以外の他のモノマーの含有量が多すぎると、却って延伸の阻害要因となる。そのため、高強度のポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンを得るという観点から、α−オレフィン等の他のモノマーは、モノマー単位で5.0mol%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0mol%以下、更に好ましくは0.2mol%以下であり、更に一層好ましいのは0.0mol%、すなわちエチレンのホモポリマーである。なお、本明細書では「ポリエチレン」は、特段の記載がない限り、エチレンのホモポリマーのみならず、エチレンと少量の他のモノマーとの共重合体等も含めるものとする。また、テープやスプリットヤーンの原料として、ポリエチレンに必要に応じて後述する各種添加剤を配合したポリエチレン組成物を用いることもでき、本明細書の「ポリエチレン」にはこのようなポリエチレン組成物も含めるものとする。
本発明で用いられるポリエチレンの極限粘度は、ポリエチレンテープになった状態やポリエチレンスプリットヤーンになった状態において5.0dL/g以上、好ましくは6.0dL/g以上、より好ましくは8.0dL/g以上であり、32.0dL/g以下、好ましくは27.0dL/g以下、より好ましくは22.0dL/g以下である。極限粘度が5.0dL/g以上の超高分子量ポリエチレンであっても後述する圧延成形法により、フィルム、ポリエチレンテープ、及びポリエチレンテープから得られるポリエチレンスプリットヤーンを製造することが容易になり、いわゆるゲル紡糸法等で製糸する必要がない。そのため、製造コストの抑制、作業工程の簡略化の点で優位である。更に、製造時に溶剤を用いないため、作業者や環境への溶剤の悪影響がなく、製品中の残留溶剤もほとんど存在しないため、製品使用者に対する溶剤の悪影響がない。また、極限粘度を5.0dL/g以上とすると、ポリエチレンの分子末端基の減少により、ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーン中の構造欠陥数を減少させることができる。そのため、ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの引張強度や初期弾性率等を向上させることができ、力学物性や耐磨耗性を向上させることができる。極限粘度の測定方法については後述する。
【0014】
本発明で用いられるポリエチレンの重量平均分子量は、ポリエチレンテープになった状態又はポリエチレンスプリットヤーンになった状態において490,000〜6,200,000であることが好ましく、より好ましくは550,000〜5,000,000、更に好ましくは800,000〜4,000,000である。重量平均分子量が490,000未満であると、後述する圧延工程及び延伸工程において、高い倍率で延ばすことができないばかりでなく、延伸工程における最後段において熱処理を行ってもポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンが、高強度、高弾性率にならない。これは、分子量が小さいために、ポリエチレンテープ又はポリエチレンスプリットヤーンの断面積あたりの分子末端数が多くなり、これが構造欠陥として作用したことによると推定される。また、重量平均分子量が6,200,000を超えると、圧延工程及び延伸工程時の張力が非常に大きくなることにより破断が発生し、生産することが非常に困難となる。
重量平均分子量の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)が6.0以下、好ましくは、5.5以下、更に好ましくは5.0以下である。Mw/Mnが6.0を超えると、分子量が非常に大きいポリマーが含有されやすく、後述する圧延工程及び延伸工程時の張力が大きくなり、工程中での糸切れが多発し好ましくない。上記比(Mw/Mn)は1.0以上が好ましく、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.5以上である。重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法については後述する。
なお、エチレンのホモポリマーを用いてポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンを製造する場合、原料ホモポリエチレンの極限粘度、重量平均分子量、及びMw/Mnが上記に記載の範囲内であることが好ましい。
【0015】
〔単斜晶及び斜方晶の比率、結晶化度〕
ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、その内部構造として、単斜晶の比率が0.1%以上30%以下であり、好ましくは0.5%以上29.5%以下、より好ましくは2.0%以上29%以下である。更に、斜方晶の比率が40%以上99%以下であり、好ましくは45%以上96%以下、より好ましくは50%以上95%以下である。ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの内部構造と物性保持率との関係におけるメカニズムは明確になっていないが、後述の圧延工程時の変形、延伸工程最後段の熱処理条件、及び巻取り張力の制御により、内部構造における単斜晶成分を上記の範囲内で少量含有することによって、良好な物性保持率を示す。単斜晶の比率が30%より多くなると貯蔵弾性率の保持率が後述の範囲を維持し難い傾向がある。理由は明確ではないが単斜晶のほうが斜方晶よりも結晶構造が不安定なためと思われる。
【0016】
また、上記の範囲内での単斜晶の存在により、ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは優れた耐磨耗特性を示す。詳細は明らかではないが、ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーン中の結晶構造が全て安定構造である斜方晶にするよりも、一定量の単斜晶をポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーン内に存在させることにより、単斜晶はクッションの役割を担っており、被磨耗体から与えられるエネルギーを分散できるためと推定される。単斜晶及び斜方晶の比率の測定方法については後述する。
【0017】
ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの結晶化度は、65%以上が好ましく、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上である。結晶化度が65%未満になるとポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの引張強度や初期弾性率が小さくなり好ましくない。また結晶化度の好ましい上限は特に限定されないが99%を超えると、結節強度や引掛強度の保持率が低下するため、結節や引掛が必要な用途には好ましくない。結晶化度の測定方法については後述する。
【0018】
〔引張強度〕
本発明に係るポリエチレンテープは、引張強度が0.8GPa以上であることが好ましい。本発明に係るポリエチレンテープは、かかる引張強度を有することにより、従来の溶融成形法で得られる汎用ポリエチレンテープでは展開できなかった用途にまで展開することができる。引張強度は、1.5GPa以上がより好ましく、更に好ましくは2.0GPa以上である。引張強度は高い方が好ましく上限は特に限定されないが、例えば、引張強度が6.0GPa以上のテープを得ることは、圧延成形法では、技術的、工業的に生産が困難である。引張強度の測定方法については後述する。
【0019】
本発明に係るポリエチレンスプリットヤーンは、引張強度が8cN/dtex以上であることが好ましい。本発明に係るポリエチレンスプリットヤーンは、かかる引張強度を有することにより、従来の溶融成形法で得られる汎用ポリエチレンスプリットヤーンでは展開できなかった用途にまで展開することができる。引張強度は、15cN/dtex以上がより好ましく、更に好ましくは22cN/dtex以上である。引張強度は高い方が好ましく上限は特に限定されないが、例えば、引張強度が60cN/dtex以上のスプリットヤーンを得ることは、圧延成形法では、技術的、工業的に生産が困難である。
【0020】
〔初期弾性率〕
本発明に係るポリエチレンテープは、初期弾性率が20GPa以上220GPa以下であることが好ましい。ポリエチレンテープが、かかる初期弾性率を有していれば、製品時や製品加工工程で受ける外力に対して力学物性変化や形状変化が生じ難くなる。初期弾性率は40GPa以上がより好ましく、更に好ましくは50GPa以上、特に好ましくは90GPa以上であり、190GPa以下がより好ましく、更に好ましくは180GPa以下である。初期弾性率が220GPaを超えるテープを得ることは、引き裂けや破断が多発し、工業生産的に困難である。引張強度、初期弾性率の測定方法については後述する。
【0021】
本発明に係るポリエチレンスプリットヤーンは、初期弾性率が200cN/dtex以上2200cN/dtex以下であることが好ましい。ポリエチレンスプリットヤーンが、かかる初期弾性率を有していれば、製品時や製品加工工程で受ける外力に対して力学物性変化や形状変化が生じ難くなる。初期弾性率は300cN/dtex以上がより好ましく、更に好ましくは400cN/dtex以上、特に好ましくは500cN/dtex以上であり、1900cN/dtex以下がより好ましく、更に好ましくは1600cN/dtex以下である。初期弾性率が2200cN/dtexを超えるポリエチレンスプリットヤーンを得ることは、毛羽や破断が多発するため、工業生産的に困難である。初期弾性率の測定方法については後述する。
【0022】
〔残留溶剤濃度〕
ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーン中の残留溶剤濃度は、1000ppm以下が好ましく、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは200ppm以下であり、最も好ましいのは0ppm(残留溶剤が存在しない)である。残留溶剤としては、デカリン(デカヒドロナフタレン)やパラフィン等の炭化水素系溶剤が挙げられる。残留溶剤濃度の測定方法については後述する。
【0023】
〔熱収縮応力・熱収縮率〕
本発明に係るポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、TMA(機械熱分析)測定における最大熱収縮温度が100℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは115℃以上である。また、TMA測定における最大熱収縮応力が2.0cN/dtex以下であることが好ましく、より好ましくは1.8cN/dtex以下、更に好ましくは1.4cN/dtex以下である。また、上記ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、室温付近で残留する歪みも小さいため、室温域から結晶分散温度域に亘って寸法の差が小さいことが特徴である。よって、TMA測定における50℃の熱収縮応力が、0.20cN/dtex以下であることが好ましく、より好ましくは0.15cN/dtex以下であり、80℃の熱収縮応力が0.50cN/dtex以下であることが好ましく、より好ましくは0.45cN/dtex以下である。
また、本発明に係るポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、100℃における熱収縮率が5.0%以下であることが好ましく、より好ましくは4.5%以下、更に好ましくは4.0%以下である。なお、ポリエチレンテープの100℃における熱収縮率は、ポリエチレンテープの100℃における長手方向の熱収縮率を指す。
【0024】
〔貯蔵弾性率〕
また、ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、広い温度範囲に亘って貯蔵弾性率の保持率が高いことが好ましい。具体的には、100℃における貯蔵弾性率が30℃における貯蔵弾性率の20%以上であることが好ましく、より好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上である。動的な負荷下でも貯蔵弾性率の保持率の高いポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、24時間以上高温環境下においても、環境変化の影響を受けることが少なく、良好な物性保持率を示す。以下、「良好な物性保持率」とは、100℃における熱収縮率が−5.0%以上5.0%以下であることを指す。なお、熱膨張しているときは熱収縮率の値がマイナスとなる。また、ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンに樹脂コーティング等を行う後加工時において、貯蔵弾性率の保持率が高いほど、後加工後の力学物性の低下を抑制することが可能となる。また、例えば強化プラスチック材、コンクリート補強材、ロープ等のように高張力下で使用され、且つ、使用時の環境によっては温度の高い環境下となる場合であっても、環境変化に伴う製品性能の変動を小さくすることができる。貯蔵弾性率の測定方法については後述する。
【0025】
〔その他物性〕
ポリエチレンテープの幅は、好ましくは15mm以下であり、ポリエチレンテープの厚みは好ましくは1mm以下、更に好ましくは200μm以下である。
【0026】
ポリエチレンスプリットヤーンは、好ましくは単糸繊度が0.5dtex以上1000dtex以下であり、より好ましくは2dtex以上800dtex以下、更に好ましくは5dtex以上500dtex以下である。
【0027】
〔製造方法〕
本発明に係るポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンを得る製造方法については、以下の圧延成形法によることが好ましい。他にも溶剤を用いて行う超高分子量ポリエチレン繊維の製法の一つにゲル紡糸法があるが、ゲル紡糸法では、高強度を得られるものの、生産性が低いばかりでなく、溶剤使用による製造作業者の健康や環境への影響、また繊維中に残留する溶剤が製品使用者の健康に与える影響が大きい。
【0028】
本発明に係るポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの製造方法では、圧延及び延伸を行うことが好ましい。具体的には、本発明に係るポリエチレンテープやポリエチレンスプリットヤーンの製造方法は、ポリエチレンを圧縮する圧縮工程と、圧縮工程で圧縮されたポリエチレンを圧延する圧延工程と、圧延工程で圧延されたポリエチレンを延伸する延伸工程と、延伸工程で延伸されたポリエチレンを巻取る巻取り工程とを備えることが好ましい。また、本発明に係るポリエチレンスプリットヤーンの製造方法では、巻取り工程により巻取られたポリエチレンテープを切断する切断工程を備えることが好ましい。
圧縮工程ではポリエチレン(例えば、ポリエチレンの粉末)を圧縮する。このときの圧力は50N/cm
2以上15,000N/cm
2以下である。好ましくは100N/cm
2以上、8,000N/cm
2以下、更に好ましくは、400N/cm
2以上、6,000N/cm
2以下である。圧縮時の温度は、100℃以上145℃以下、好ましくは110℃以上、142℃以下、更に好ましくは120℃以上、140℃以下である。圧力が50N/cm
2を下回る又は圧縮時の温度が100℃より低い温度の場合、ポリマー粒子がつぶれるだけで、ポリマー粒子間におけるポリエチレン分子鎖間の絡み合いがほとんど生じないため、ポリマー粒子間の接着が弱くなり好ましくない。また、圧力が15,000N/cm
2を超えるとポリエチレン分子鎖の切断が生じるため、圧縮することにより得られたポリエチレンの引張強度の低下のみならず、圧縮装置が大掛かりなものとなり、生産性の観点からも好ましくない。圧縮温度が145℃を超えるとポリエチレン分子鎖間の絡み合いが大きくなり、後述の圧延工程及び延伸工程で高倍率に延伸することができないため好ましくない。
圧縮工程における圧縮時間は0.5秒以上40分以下、好ましくは、5秒以上15分以下、更に好ましくは、10秒以上10分以下である。圧縮時間が0.5秒を下回る場合、ポリマー粒子間で剥離が生じ好ましくない。他方、圧縮時間が40分を超えると、得られたポリエチレン中のポリエチレン分子鎖が破断し、結果として分子量の低下による引張強度の低下が生じるため好ましくない。
【0029】
圧延工程及び延伸工程において、送り出しロールと巻取りロールとの間でポリエチレンを加熱し、送り出しロールと巻取りロールとの速度差で走行方向(MD方向)への圧延及び延伸を行うことが好ましい。ただし工程途中での切断を防ぐためにも、この段階ではポリエチレンの溶融温度以下で行うことが好ましい。この加熱には、液体加熱、熱板、熱風加熱、赤外線加熱、誘電加熱等が何れも利用できる。また、必要に応じて、送り出しロールや巻取りロールの内部に、スチーム等の加熱媒体を導入することもできる。熱板に成形されたポリエチレンを直接接触させて加熱してもよい。
【0030】
圧延工程における圧延温度は、120℃以上145℃以下、好ましくは125℃以上、143℃以下、更に好ましくは128℃以上、141℃以下である。また、圧延工程における圧延前のポリエチレンに対する圧延後のポリエチレンの長手方向における長さの比は1.5倍以上30倍以下であることが好ましい。
【0031】
延伸工程では、2段階以上に分けて延伸を行うことが好ましい。2段階以上に分けて延伸を行う場合は、後段に進むほど、延伸時の温度が高いほうが好ましい。2段階以上に分けて延伸を行う場合は、初期の延伸(例えば、1段目の延伸)における延伸温度は、20℃以上160℃以下、好ましくは60℃以上、150℃以下、更に好ましくは80℃以上、148℃以下である。なお、1回のみの延伸の場合は、その延伸温度をポリエチレンの結晶分散温度以上ポリエチレンの融点以下とすることが好ましい。ポリエチレンの結晶分散温度は後述の測定方法より得られる値とする。なお、2段階以上に分けて延伸を行った場合の最後段における時間及び温度の好ましい条件については後述する。
【0032】
延伸工程における延伸倍率は、4倍以上とすることが好ましく、より好ましくは5倍以上、更に好ましくは6倍以上である。圧延工程における圧延倍率と延伸工程における延伸倍率との合計倍率(延伸工程の最後段終了後におけるポリエチレンの圧延工程前におけるポリエチレンに対する長手方向における長さの比率)は10倍以上550倍以下とすることが好ましく、より好ましくは15倍以上、400倍以下、更に好ましくは20倍以上、280倍以下である。なお、圧延工程や延伸工程の各段において、圧延倍率又は延伸倍率が1倍未満(工程開始前より長さが短くなる)となる場合もあり得る。
【0033】
また、ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの貯蔵弾性率を一層向上させたい場合、未延伸の成形体を成形するのに要する時間、すなわち圧延工程開始から延伸工程の最後段終了までに要する時間(以下、成形時間という)も制御することが好ましい。成形時間を40分以内、より好ましくは25分以内、更に好ましくは20分以内とすることが好ましい。成形時間が40分を超えると、ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンにおいて所定の単斜晶及び斜方晶の比率を得ることができない。
【0034】
成形時間を短くすることにより、単斜晶及び斜方晶の比率を所定の範囲にすることができる。このメカニズムの詳細は明らかになっていないが、成形時間が40分より長くなると結晶構造が安定な斜方晶も変形応力を受け、斜方晶の比率が低下するものと推定される。斜方晶の比率を多くすることで、広い温度範囲に亘って貯蔵弾性率の変化が小さくなり、更には比較的高温下で長期間使用しても力学物性の変化を小さくすることが可能となる。なお、成形時間は短くても構わないが、テープに所定の温度を与える必要があるため、0.1秒以上、好ましくは1秒以上、更に好ましくは10秒以上の時間が必要である。
【0035】
本発明では、上述したとおり、延伸工程の最後段におけるポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの熱処理方法、すなわち、延伸工程の最後段で延伸する際の熱処理温度及び熱処理時間が重要となる。また、巻取り工程における巻取り張力及び巻取り温度も重要となる。延伸工程の最後段における熱処理条件、巻取り工程における巻取り張力等を精密に制御することによって、100℃における熱収縮率を5.0%以下とすることができる。
【0036】
最後段の延伸における延伸温度(最後段で延伸する際の熱処理温度)は、ポリエチレンの結晶分散温度以上170℃以下が好ましく、具体的には、80℃〜170℃が好ましい。最後段の延伸における延伸温度の上限は、ポリエチレンの融点とすることが好ましい。
また、延伸工程の最後段における延伸倍率は0.85倍以上6.0倍以下が好ましく、より好ましくは0.90倍以上4.0倍以下、さらに好ましくは0.95倍以上3.0倍以下である。最後段における延伸倍率が0.85倍を下回る場合、該工程におけるテープ及びスプリットヤーンの弛みが生じ、張力が不安定となり好ましくない。他方、最後段における延伸倍率が6.0倍を超えると、張力が高過ぎることによる破断が生じるため好ましくない。
このとき延伸工程の最後段の時間(最後段で延伸する際の熱処理時間)は0.01秒以上30分以下が好ましい。好ましくは、0.02秒以上、20分以下であり、更に好ましくは0.04秒以上、10分以下である。0.01秒よりも短い場合、熱処理を十分に行なうことができず、所望の貯蔵弾性率の保持率や熱収縮率を得ることができず好ましくない。また、30分を超えると熱を与える時間が長すぎるため、引張強度又は初期弾性率が低下するため、好ましくない。
また、最後段においてポリエチレンにかける張力は、15cN/dtex以下が好ましく、より好ましくは5cN/dtex以下、更に好ましくは1cN/dtex以下である。最後段で、ポリエチレンの結晶分散温度よりも低い温度で熱処理した場合、ポリエチレン内部の残留応力が十分に除去できない。最後段での熱処理時の加熱方法は特に拘らない。公知な手法である、例えばホットローラー、輻射パネル、スチームジェット、ホットピン等が推奨されるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
延伸工程の最後段における熱処理においては、熱処理温度、熱処理時間、熱処理張力の3要素を上記範囲内にすることが好ましい。熱処理時間が上記範囲よりも短い場合又は熱処理温度が上記範囲よりも低い場合、得られる成形品中の単斜晶の比率が多くなったり、貯蔵弾性率の温度の影響による変動が大きくなったりする傾向がある。また、熱処理温度が上記範囲よりも高い場合又は熱処理中の張力が上記範囲よりも大きい場合は、延伸工程の最後段の工程中にポリエチレンが破断しやすくなったり、得られる成形品の初期弾性率が低下したりする傾向がある。
【0038】
巻取り工程における巻取り張力は、5.0cN/dtex以下が好ましく、より好ましくは4.0cN/dtex以下、更に好ましくは3.5cN/dtex以下である。巻取り張力が5.0cN/dtexを超えると、ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーン内部に余剰な残留応力を付与することとなる。その結果、100℃における熱収縮率が5.0%を超えてしまい、又はTMA(機械熱分析)における最大熱収縮応力が2.0cN/dtexを超えてしまい好ましくない。また、製品の使用環境温度として想定される室温付近からポリエチレンの結晶分散温度付近の領域での熱収縮応力も高くなり、環境変化によって力学物性変化や寸法変化が発生し、更には、製品加工条件や最終製品の使用温度範囲が限定される等の制約が生じるため、好ましくない。
巻取り工程における巻取り温度は60℃以下であることが好ましい。より好ましくは55℃以下、更に好ましくは50℃以下である。60℃よりも高温であると、ポリエチレンの結晶分散温度に近い温度となるため、得られる製品の内部に残留応力が生じやすくなり、寸法変化や力学物性変化が製品化後に生じやすくなるため好ましくない。また、製品の使用環境温度として想定される室温付近からポリエチレンの結晶分散温度付近の温度領域での熱収縮応力が高くなり、環境変化によって力学物性変化や寸法変化が発生しやすく、更には、製品加工条件や最終製品の使用温度範囲が限定される等の制約が生じやすくなるため、好ましくない。
切断工程において、例えば、巻取り工程により得られたポリエチレンテープをスプリッターを通すことによりポリエチレンスプリットヤーンを得ることができる。
【0039】
他の機能を付与するために、酸化防止剤、還元防止剤等の添加剤、PH調整剤、表面張力低下剤、増粘剤、保湿剤、濃染化剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、顔料、鉱物繊維、他の有機繊維、金属繊維、金属イオン封鎖剤等を使用してもよい。
また、ポリエチレンテープ又はポリエチレンスプリットヤーンを含む組紐、撚糸、織編物、ポリエチレンテープを1mm以上10cm以下にカットしたカットテープ、ポリエチレンスプリットヤーンから得られるカットファイバーなども製造することができる。なお、本明細書においてカットファイバーとは、ポリエチレンスプリットヤーンを1mm以上10cm以下にカットしたものを指す。
【0040】
組紐、撚糸、及び織編物の70質量%以下の割合で、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維、綿、毛等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維等を用いてもよい。
【0041】
本発明に係るポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、ロープ、安全ロープ、ネット、防球ネット、魚網ネット、釣糸、食肉用締め糸、資材防護カバー、シート、カイト用糸、洋弓弦、セールクロス、幕材等に用いることができる。
上記の用途は、力学物性の保持と同時に、目的に応じて多様な色目、あるいは意匠性を求められることがある。従来、無機顔料又は有機顔料を含有する樹脂を被覆する後加工が施されることが多かった(例えば特開2004−308047号を参照)が、本発明に係るポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンを用いることによって、素材本来の風合いを損なうことなく利用することが可能となる。
【0042】
また、本発明に係るポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、広い温度範囲に亘って、力学物性の変化が小さく、寸法安定性にも優れているので、後加工工程で加温を必要とする繊維強化樹脂補強材、セメント補強材、繊維強化ゴム補強材、あるいは環境変化が想定される防護材、防弾材、医療用縫合糸、人工腱、人工筋肉、工作機械部品、電池セパレーター、化学フィルター等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0044】
下記各実施例・比較例におけるポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの特性値の測定は下記のように行なった。なお、以下ではサンプルの「長さ」はサンプルの長手方向の長さのことを指す。
【0045】
(1)極限粘度
温度135℃のデカリンにてウベローデ型毛細粘度管を用いて、種々の希薄溶液の比粘度を測定した。希薄溶液粘度の濃度に対するプロットから最小2乗近似で得られる直線の原点への外挿点より極限粘度を決定した。測定に際し、サンプルを約5mm長の長さに分割又は切断し、ポリマーに対して1質量%の酸化防止剤(エーピーアイコーポレーション社製、「ヨシノックス(登録商標) BHT」)を添加し、135℃で4時間攪拌溶解して測定溶液を調製した。
【0046】
(2)重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、及びMw/Mn
重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、及びMw/Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC装置としては、「GPC 150C ALC/GPC」(Waters製)を用い、カラムとしては「GPC UT802.5」(SHODEX製)を1本、「UT806M」(SHODEX製)を2本用い、検出器として示差屈折率計(RI検出器)を用いて測定した。測定溶媒は、o−ジクロロベンゼンを使用し、カラム温度を145℃とした。サンプル濃度は1.0mg/mlとし、200マイクロリットル注入して測定した。分子量の検量線は、ユニバーサルキャリブレーション法により分子量既知のポリスチレンサンプルを用いて作成されている。
【0047】
(3)引張強度及び初期弾性率
万能試験機(株式会社オリエンテック製、「テンシロン万能材料試験機 RTF−1310」を用い、サンプル長200mm(チャック間長さ)、伸長速度100%/分の条件で歪−応力曲線を雰囲気温度20℃、相対湿度65%条件下で測定した。破断点での応力と伸びから引張強度を、曲線の原点付近の最大勾配を与える接線から初期弾性率を計算して求めた。この時、測定時にサンプルに印加する初荷重を繊維10000m当りの質量(g)の1/10とした。なお、引張強度及び初期弾性率は10回の測定値の平均値を使用した。
【0048】
(4)熱収縮率
サンプルを70cmにカットし、両端より各々10cmの位置に、即ちサンプル長さ50cmがわかるように印をつけた。次に、サンプルに荷重が印加されないようにジグにぶら下げた状態で、熱風循環型の加熱炉を用いて、温度100℃で30分間加熱した。その後、加熱炉よりサンプルを取り出し、室温まで十分に徐冷した後に、最初にサンプルに印をつけた位置の長さを計測した。熱収縮率は以下の式より求めた。なお、熱収縮率は2回の測定値の平均値を使用した。
熱収縮率(%)=100×(加熱前におけるサンプルの長さ−加熱後におけるサンプルの長さ)/(加熱前におけるサンプルの長さ)
【0049】
(5)熱収縮応力
測定には、熱応力歪測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、「TMA/SS120C」)を用いた。テープの場合、長さ20mmで幅を2mm、スプリットヤーンの場合、長さ20mmで繊度が100dtexになるようにサンプルを準備し、初荷重0.01764cN/dtex負荷し、昇温速度20℃/分で昇温して、最大熱収縮応力、並びに50℃及び80℃における熱収縮応力を測定した。
【0050】
(6)貯蔵弾性率
100℃及び30℃における貯蔵弾性率の測定には、固体粘弾性測定装置(T.A.インスツルメント社製、「DMA Q800」)を用いた。測定に際し、テープ及びスプリットヤーンのサンプルと装置チャックとの間での滑りや単糸のバラケが発生しないように、サンプル両端を接着剤と両面テープを用いて厚紙で挟み、サンプルを挟むチャック間の距離を10mm、測定サンプル幅をサンプル10,000mのときの質量が100gとなるように調整した。これにより測定においてサンプルと装置チャック間に厚紙が存在することにより、装置チャックでの滑りや単糸のバラケを抑制することが可能となる。測定開始温度を−10℃、測定終了温度を140℃、昇温速度を1.0℃/minとした。歪み量は0.04%とし、測定開始時の初荷重は0.05cN/dtexとした。また、測定周波数は11Hzとした。測定したデータの解析には、「T.A.Universal Analysis」(T.A.インスツルメント社製)を用いた。このとき貯蔵弾性率の保持率は以下の式より求めた。
貯蔵弾性率の保持率(%)=100×[(100℃における貯蔵弾性率)/(30℃における貯蔵弾性率)]
【0051】
(7)結晶分散温度
上記(6)同様に、固体粘弾性測定装置(T.A.インスツルメント社製、「DMA Q800」)を用いてデータを測定し、測定したデータの解析には、「T.A.Universal Analysis」(T.A.インスツルメント社製)を用いた。測定開始温度を−140℃、測定終了温度を140℃、昇温速度を1.0℃/minとした。歪み量を0.04%とし、測定開始時の初荷重0.05cN/dtexとした。また、測定周波数を11Hzとした。損失弾性率を計算し、温度分散を低温側より求め、損失弾性率の値を対数で縦軸に取り、横軸を温度でプロットし、最も高温側に現れるピーク値を結晶分散温度とした。
【0052】
(8)残留溶剤濃度
サンプル中の残留溶剤濃度の測定には、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製)を用いた。サンプル10mgをガスクロマトグラフィー注入口のガラスインサートにセットした。注入口を溶剤の沸点以上に加熱し、加熱により揮発した溶剤を窒素パージでカラムに導入した。カラム温度を40℃に設定し、溶剤を5分間トラップさせた。次に、カラム温度を80℃まで昇温させた後に測定を開始した。得られたピークより、残留溶剤濃度を求めた。
【0053】
(9)結晶化度
示差走査熱量計(T.A.インスツルメント社製、「DSC測定装置」)を用いてデータを測定し、測定したデータの解析には、「T.A.Universal Analysis」(T.A.インスツルメント社製)を用いた。サンプルを5mg以下に切断し、アルミニウムパンに約2mg充填・封入した。同様の空のアルミニウムパンをリファレンスとした。測定は、不活性ガス下、50℃から200℃の温度範囲で、昇温速度を約10℃/minとした。得られた昇温DSC曲線のベースラインを補正し、ピーク面積をサンプル質量で割り返して測定融解熱量を算出し、下記の式より結晶化度を求めた。
結晶化度(%)=100×(測定融解熱量(J/g))/(293(J/g))
【0054】
(10)単斜晶、斜方晶等の比率測定
結晶成分の比率は、固体高分解能
13C−NMRにより求めた。具体的には、「AVANCE400WB」(ブルカー・バイオスピン社製)により室温で測定した。磁場強度及びスピン速度は、それぞれ9.4Tと4kHzで測定した。測定パルスはDipolar decoupling(DD)/MASを用いた。サンプルを短冊状に切断して、ローターに充填した。DD/MASスペクトルは待ち時間を4300秒としてシングルパルス法(DD/MAS法)で、全成分を反映するスペクトルを測定した。低磁場側から単斜晶、斜方晶、非晶成分として波形分離を行った。単斜晶、斜方晶、非晶成分、各々のピークの面積比より比率を求めた。
【0055】
(実施例1)
極限粘度14dL/g、重量平均分子量1,500,000、Mw/Mnが1.9であり、超高分子量ホモポリエチレン粉末を121℃に加熱し、550N/cm
2で9分間圧縮成形した。超高分子量ホモポリエチレン粉末は、特開2005−29775号公報に記載の方法で製造されている。次に、得られた成形体を表面温度140℃に調整された1m/minの上下同一速度で反対方向に回転する一対のロール間に供給し、4倍に圧延してフィルムを得た。その後、得られたフィルムをスリッターを通すことによりテープ状とし、加熱ローラー間で145℃で2.5倍延伸した(1段目延伸)。次に、151℃で2.5倍延伸することにより延伸テープを得た(2段目延伸)。続いて、得られた延伸テープを、152℃、1.5cN/dtexの張力、1.1倍延伸の条件下で2分間加熱処理を行った(最後段延伸)。圧延開始から最後段延伸終了までに要した時間は合計で19分であった。その後、28℃で3.2cN/dtexの張力で巻き取り、幅5mm、厚み60μmのポリエチレンテープを得た。次に得られたポリエチレンテープをスプリッター(6角棒のエッジに32山/インチの突起を設けたもの)を通すことによりポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性及び評価結果を表1に示す。
【0056】
(実施例2)
実施例1において、最後段延伸における延伸倍率を1.8倍、加熱処理の時間を0.06分、張力を3.0cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
【0057】
(実施例3)
実施例1において、最後段延伸における延伸温度を154℃、加熱処理の時間を4.0分、張力を1.2cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例4)
実施例1において、2段目延伸における延伸倍率を3.0倍、最後段延伸における張力を3.0cN/dtex、圧延開始から最後段延伸終了までに要した時間を15分、巻取り工程における巻取り温度を35℃、巻取り張力を1.2cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
【0059】
(実施例5)
実施例1において、極限粘度18dL/g、重量平均分子量2,400,000、Mw/Mnが4.5である超高分子量ポリエチレン粉末を用い、132℃に加熱し、650N/cm
2で圧縮成形し、圧延工程における圧延倍率を2.5倍、1段目延伸における延伸倍率を3.0倍、最後段延伸における張力を3.0cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にして幅8mm、厚み60μmのポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
【0060】
(比較例1)
実施例1において、最後段延伸における延伸温度を149℃、延伸倍率を1.5倍、加熱処理の時間を0.005秒、張力を16.6cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
【0061】
(比較例2)
実施例1において、巻取り工程における巻取り温度を32℃、巻取り張力を5.3cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
【0062】
(比較例3)
実施例1において、極限粘度2.2dL/g、重量平均分子量150,000、Mw/Mnが2.9である高密度高分子量ポリエチレン粉末を用い、圧延工程における圧延倍率を2.5倍、1段目延伸における延伸倍率を3.0倍とし、最後段延伸における延伸時間を0.005秒とし、巻取り張力を5.2cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
【0063】
(比較例4)
実施例1において、最後段延伸における延伸時間を32分間とし、圧延開始から最後段延伸終了までに要した時間を48分、巻取り工程における巻取り張力を2.1cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】