特許第6044320号(P6044320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044320
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】物理量センサ
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/08 20060101AFI20161206BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20161206BHJP
   G01C 19/5733 20120101ALI20161206BHJP
   G01C 19/5769 20120101ALI20161206BHJP
   G01L 9/00 20060101ALI20161206BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20161206BHJP
   B81B 7/02 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G01P15/08 101A
   G01P15/08 102B
   G01P15/125 Z
   G01C19/5733
   G01C19/5769
   G01L9/00 301J
   H01L29/84 Z
   B81B7/02
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-276897(P2012-276897)
(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公開番号】特開2014-119426(P2014-119426A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有木 史芳
(72)【発明者】
【氏名】酒井 峰一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 圭正
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−50634(JP,A)
【文献】 特開平7−234243(JP,A)
【文献】 特許第4486103(JP,B2)
【文献】 特許第5076986(JP,B2)
【文献】 特許第5477434(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C19
G01L
G01P15
H01L29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面を有する基板(34)と、
前記基板の一面側に形成され、物理量に応じたセンサ信号を出力するセンシング部(36)と、
前記基板の一面側に形成され、前記センシング部と電気的に接続されるパッド部(45)と、を備える物理量センサにおいて、
前記基板の一面には、前記パッド部の熱膨張係数が前記基板の熱膨張係数より高い場合には熱膨張係数が前記基板の熱膨張係数より低くされていると共に前記パッド部の熱膨張係数が前記基板の熱膨張係数より低い場合には熱膨張係数が前記基板の熱膨張係数より高くされている緩和部(46)が前記パッド部に隣接して配置されており、
前記センシング部は、前記基板の平面方向における所定方向に変位する可動部(40)を有し、
前記パッド部および前記緩和部は、前記パッド部のうち前記基板と接触する部分の前記所定方向の長さをL1x、前記パッド部の熱膨張係数をα1、前記緩和部のうち前記基板と接触する部分の前記所定方向の長さをL2x、前記緩和部の熱膨張係数をα2、前記基板の熱膨張係数をα3としたとき、Llx×(α1−α3)=L2×(α3−α2)が成立する形状とされていることを特徴とする物理量センサ。
【請求項2】
前記パッド部および前記緩和部は、前記所定方向において、前記パッド部および前記緩和部のうち一方の前記基板と接触する部分が他方の前記基板と接触する部分に挟まれており、
前記パッド部および前記緩和部のうち前記基板と接触する部分の中心を通り、前記所定方向と垂直方向に延びる基準線に対して前記他方の基板と接触する部分が対称形状とされていることを特徴とする請求項に記載の物理量センサ。
【請求項3】
前記パッド部および前記緩和部は、前記基板と接触する部分が前記所定方向において交互となる状態で配置されていることを特徴とする請求項に記載の物理量センサ。
【請求項4】
前記パッド部および前記緩和部は、前記基板の平面方向における前記所定方向と垂直方向において、前記パッド部および前記緩和部のうち一方の前記基板と接触する部分が他方の前記基板と接触する部分に挟まれており、
前記パッド部および前記緩和部のうち前記基板と接触する部分の中心を通り、前記所定方向に延びる基準線に対して前記他方の基板と接触する部分が対称形状とされていることを特徴とする請求項に記載の物理量センサ。
【請求項5】
前記パッド部および前記緩和部は、前記パッド部のうち前記基板と接触する部分の前記垂直方向の長さをL1y、前記緩和部のうち前記基板と接触する部分の前記垂直方向の長さをL2yとしたとき、L1y×(α1−α3)=L2y×(α3−α2)が成立する形状とされていることを特徴とする請求項に記載の物理量センサ。
【請求項6】
一面を有する基板(34)と、
前記基板の一面側に形成され、物理量に応じたセンサ信号を出力するセンシング部(36)と、
前記基板の一面側に形成され、前記センシング部と電気的に接続されるパッド部(45)と、を備える物理量センサにおいて、
前記基板の一面には、前記パッド部の熱膨張係数が前記基板の熱膨張係数より高い場合には熱膨張係数が前記基板の熱膨張係数より低くされていると共に前記パッド部の熱膨張係数が前記基板の熱膨張係数より低い場合には熱膨張係数が前記基板の熱膨張係数より高くされている緩和部(46)が前記パッド部に隣接して配置されており、
前記パッド部および前記緩和部は、一方の前記基板と接触する部分が円状とされ、他方の前記基板と接触する部分が前記一方の前記基板と接触する部分を囲む円環状とされており、前記パッド部のうち前記基板と接触する部分の径方向の長さをL1r、前記パッド部の熱膨張係数をα1、前記緩和部のうち前記基板と接触する部分の径方向の長さをL2r、前記緩和部の熱膨張係数をα2、前記基板の熱膨張係数をα3としたとき、Llr×(α1−α3)=L2r×(α3−α2)が成立する形状とされていることを特徴とする物理量センサ。
【請求項7】
前記パッド部と前記緩和部とは、直接接触していることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の物理量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量に応じてセンサ信号を出力するセンシング部およびこのセンシング部と電気的に接続されるパッド部を備える物理量センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の物理量センサとして、固定電極および可動電極を有するセンシング部および固定電極および可動電極と電気的に接続されるパッド部を備える加速度センサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、このような加速度センサは、例えば、支持基板、埋込絶縁膜、半導体層が順に積層されたSOI基板を用いて構成されている。そして、半導体層には、支持基板に固定されたアンカー部と、アンカー部に梁部を介して接続され、側面に可動電極を有する錘部とを備える可動部が形成されていると共に、可動電極と所定間隔対向して配置される固定電極を有する固定部が形成されている。なお、可動部は、支持基板に対して浮遊状態とされており、加速度に応じて変位可能とされている。
【0004】
また、アンカー部および固定部の所定領域には、回路チップ等の外部回路とボンディングワイヤを介して電気的に接続されるパッド部が形成されている。そして、梁部とパッド部(アンカー部)との間にはスリットが形成されている。
【0005】
これによれば、外部温度が変化した際、パッド部とアンカー部との熱膨張係数の差に起因する応力がパッド部からアンカー部に印加されても、スリットにてこの応力が緩和されるため、可動部が変位することを抑制できる。つまり、可動電極が変位することを抑制でき、可動電極と固定電極との距離が変位することを抑制できる。したがって、検出精度が低下すること抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−224462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の加速度センサでは、パッド部からアンカー部に印加される応力の緩和能力を向上させるためにはスリットを大きくしなければならず、緩和能力を向上させるとスリットにてアンカー部と可動部とを繋ぐ半導体層(基板)の部分が細くなる。このため、パッド部とセンシング部(可動電極)とを繋ぐ細くなった部分で信号の伝達が悪くなる可能性があるという問題がある。
【0008】
なお、上記では、加速度センサを例に挙げて説明したが、圧力センサ等のような他のセンサにおいてもパッド部とセンシング部とを繋ぐ基板の部分で信号の伝達が悪くなることなく、検出精度が低下することを抑制したいという要望がある。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、パッド部からセンシング部に印加される応力を低減できる物理量センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1および6に記載の発明では、一面を有する基板(34)と、基板の一面側に形成され、物理量に応じたセンサ信号を出力するセンシング部(36)と、基板の一面側に形成され、センシング部と電気的に接続されるパッド部(45)と、を備える物理量センサにおいて、以下の点を特徴としている。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明では、基板の一面には、パッド部の熱膨張係数が基板の熱膨張係数より高い場合には熱膨張係数が基板の熱膨張係数より低くされていると共にパッド部の熱膨張係数が基板の熱膨張係数より低い場合には熱膨張係数が基板の熱膨張係数より高くされている緩和部(46)がパッド部に隣接して配置されており、センシング部は、基板の平面方向における所定方向に変位する可動部(40)を有し、パッド部および緩和部は、パッド部のうち基板と接触する部分の所定方向の長さをL1x、パッド部の熱膨張係数をα1、緩和部のうち基板と接触する部分の所定方向の長さをL2x、緩和部の熱膨張係数をα2、基板の熱膨張係数をα3としたとき、Llx×(α1−α3)=L2×(α3−α2)が成立する形状とされていることを特徴としている。
また、請求項6に記載の発明では、基板の一面には、パッド部の熱膨張係数が基板の熱膨張係数より高い場合には熱膨張係数が基板の熱膨張係数より低くされていると共にパッド部の熱膨張係数が基板の熱膨張係数より低い場合には熱膨張係数が基板の熱膨張係数より高くされている緩和部(46)がパッド部に隣接して配置されており、パッド部および緩和部は、一方の基板と接触する部分が円状とされ、他方の基板と接触する部分が一方の基板と接触する部分を囲む円環状とされており、パッド部のうち基板と接触する部分の径方向の長さをL1r、パッド部の熱膨張係数をα1、緩和部のうち基板と接触する部分の径方向の長さをL2r、緩和部の熱膨張係数をα2、基板の熱膨張係数をα3としたとき、Llr×(α1−α3)=L2r×(α3−α2)が成立する形状とされていることを特徴としている。
【0012】
これによれば、パッド部から基板に応力が印加される場合には、緩和部からこの応力と反対向きの応力が基板に印加されるため、パッド部から基板に印加される応力が緩和される。このため、パッド部からセンシング部に応力が印加されることを抑制できる。
【0013】
また、緩和部は、基板上に配置されており、基板を部分的に細くする必要もないため、パッド部とセンシング部とを繋ぐ基板の部分で信号の伝達が悪くなることもない。
【0015】
さらに、パッド部からアンカー部に印加される応力に起因する基板の所定方向における歪みの度合いと、緩和部からアンカー部に印加される応力に起因する基板の所定における歪みの度合いとが等しくなる。このため、パッド部から可動部の変位応力に応力が印加されることをさらに抑制できる。
【0016】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態における物理量センサの断面図である。
図2図1に示すセンサ部30の平面図である。
図3】アンカー部43aの平面図である。
図4図3中のIV−IV線に沿った断面図である。
図5】本発明の第2実施形態におけるアンカー部43aの平面図である。
図6図5中のVI−VI線に沿った断面図である。
図7】本発明の第3実施形態におけるアンカー部43aの平面図である。
図8図7中のVIII−VIII線に沿った断面図である。
図9】本発明の第4実施形態におけるアンカー部43aの平面図である。
図10図9中のX−X線に沿った断面図である。
図11】本発明の第5実施形態におけるアンカー部43aの平面図である。
図12図11中のXII−XII線に沿った断面図である。
図13】本発明の他の実施形態におけるアンカー部43aの平面図である。
図14図13中のXIV−XIV線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、可動電極および固定電極を有するセンシング部が形成されたセンサ部を備える加速度センサを例に挙げて説明する。
【0020】
図1に示されるように、加速度センサは、回路チップ10上に接着剤20を介してセンサ部30が搭載されて構成されている。
【0021】
センサ部30は、支持基板31と、支持基板31上に配置された埋込絶縁膜32と、埋込絶縁膜32を挟んで支持基板31と反対側に配置された半導体層33とを有するSOI基板34を用いて構成され、SOI基板34に周知のマイクロマシン加工が施されている。
【0022】
なお、本実施形態では、SOI基板34が本発明の基板に相当し、半導体層33のうち埋込絶縁膜32と反対側の表面が本発明の基板の一面に相当する。また、支持基板31および半導体層33はSiにて構成されている。
【0023】
半導体層33には、図1および図2に示されるように、溝部35が形成されることによって可動部40および固定部50、60よりなる櫛歯形状を有する梁構造体が構成されている。そして、この梁構造体によって加速度に応じたセンサ信号を出力するセンシング部36が形成されている。
【0024】
また、埋込絶縁膜32のうち梁構造体40〜60の形成領域に対応した部位には、犠牲層エッチング等によって矩形状に除去された開口部37が形成されている。
【0025】
可動部40は、図2に示されるように、開口部37上を横断するように配置されており、矩形状の錘部41における長手方向の両端が梁部42を介してアンカー部43a、43bに一体に連結された構成とされている。アンカー部43a、43bは、埋込絶縁膜32における開口部37の開口縁部に固定されて支持基板31に支持されている。これにより、錘部41および梁部42は、開口部37に臨んだ状態とされている。
【0026】
ここで、図2中のx軸、y軸、z軸の各方向について説明する。図2中では、x軸方向は錘部41の長手方向である。y軸方向はSOI基板34の面内においてx軸と直交する方向である。z軸方向は、SOI基板34の平面方向と直交する方向である。
【0027】
梁部42は、平行な2本の梁がその両端で連結された矩形枠状とされており、2本の梁の長手方向と直交する方向に変位するバネ機能を有している。具体的には、梁部42は、x軸方向の成分を含む加速度を受けたときに錘部41をx軸方向へ変位させると共に、加速度の消失に応じて元の状態に復元させるようになっている。したがって、このような梁部42を介して支持基板31に連結された錘部41(可動部40)は、加速度の印加に応じて、開口部37上にて梁部42の変位方向(x軸方向)へ変位可能とされている。
【0028】
可動部40は、y軸方向(錘部41の長手方向と直交した方向)に、錘部41の両側面から互いに反対方向へ一体的に突出形成された複数個の可動電極44を備えている。図2では、可動電極44は、錘部41の上側および下側に各々4個ずつ突出して形成されており、開口部37に臨んだ状態とされている。また、各可動電極44は、梁部42および錘部41と一体的に形成されており、梁部42が変位することによって錘部41と共にx軸方向に変位可能とされている。
【0029】
また、アンカー部43aの所定領域には、パッド部45が形成されている。そして、パッド部45は、図1に示されるように、回路チップ10に形成されたパッド部11とボンディングワイヤ70を介して電気的に接続されている。
【0030】
固定部50、60は、図2に示されるように、埋込絶縁膜32における開口部37の開口縁部における対向辺部のうち、アンカー部43a、43bが支持されていないもう1組の対向辺部に支持されている。各固定部50、60は、錘部41を挟んで設けられており、図2中の上側に固定部50が配置され、図2中の下側に固定部60が配置されている。そして、各固定部50、60は互いに電気的に独立している。
【0031】
また、各固定部50、60は、可動電極44の側面と所定の検出間隔を有するように平行した状態で対向配置された複数個(図示例では4個ずつ)の固定電極51、61と、埋込絶縁膜32における開口部37の開口縁部に固定されて支持基板31に支持された配線部52、62とを有している。
【0032】
そして、各固定電極51、61は、可動電極44における櫛歯の隙間にかみ合うように櫛歯状に複数本配列され、各配線部52、62に片持ち状に支持されて開口部37に臨んだ状態となっている。
【0033】
また、配線部52、62の所定領域には、それぞれパッド部53、63が形成されている。そして、パッド部53、63は、図1とは別断面において、それぞれ回路チップ10に形成されたパッドとボンディングワイヤを介して電気的に接続されている。
【0034】
以上が本実施形態における加速度センサの基本的な構成である。そして、アンカー部43aには、図3および図4に示されるように、パッド部45と共に緩和部46が形成されている。以下に、本実施形態のパッド部45と緩和部46との構成について、図3および図4を参照しつつ具体的に説明する。
【0035】
パッド部45は、導電性を有する材料を用いて構成されており、本実施形態では、Al等のアンカー部43a(半導体層33)より熱膨張係数の高い材料を用いて構成されている。このため、例えば、外部温度が高温に変化したとき、パッド部45からアンカー部43aには引っ張り応力が印加される。
【0036】
緩和部46は、SiO等のアンカー部43a(半導体層33)より熱膨張係数の低い材料を用いて構成されている。このため、例えば、外部温度が高温に変化したとき、緩和部46からアンカー部43aには圧縮応力が印加される。言い換えると、緩和部46は、外部温度が高温に変化したとき、パッド部45からアンカー部43aに印加される引っ張り応力と反対向きの圧縮応力を印加する材料にて構成されている。すなわち、この緩和部46は、パッド部45からアンカー部43aに印加される引っ張り応力を相殺(緩和)するものである。
【0037】
そして、緩和部46は、本実施形態では、パッド部45からアンカー部43aに印加される引っ張り応力のうちx軸方向(可動部40の変位方向)の引っ張り応力がキャンセルされるように、アンカー部43aに形成されている。
【0038】
具体的には、緩和部46は、本実施形態では、長手方向をy軸方向とし、x軸方向の長さが所定長さとされた平面矩形状とされており、x軸方向に所定距離だけ離間された状態で2つ配置されている。
【0039】
パッド部45は、2つの緩和部46の間から露出するアンカー部43aと接触(接続)するように直接緩和部46上に配置されている。そして、アンカー部43aと接触する部分のy軸方向の長さが緩和部46と同じとされている。
【0040】
言い換えると、パッド部45のうちアンカー部43aと接触する部分は、緩和部46のうちアンカー部43aと接触する部分に挟まれている。そして、緩和部46のうちアンカー部43aと接触する部分は、パッド部45および緩和部46のうちアンカー部43aと接触する部分の中心を通り、y軸方向に延びる基準線に対して対称形状とされている。
【0041】
さらに、パッド部45および緩和部46は、パッド部45からアンカー部43aに印加される引っ張り応力に起因するアンカー部43aのx軸方向における歪みの度合いと、2つの緩和部46からアンカー部43aに印加される圧縮応力に起因するアンカー部43aのx軸方向における歪みの度合いとの大きさが等しくなるように、アンカー部43aと接触する部分のx軸方向における長さが規定されている。
【0042】
詳しくは、パッド部45および緩和部46は、図4に示されるように、
(数1)L1x×(α1−α3)=2×L2´x×(α3−α2)
が成立する形状とされている。
【0043】
なお、上記数式1において、L1xはパッド部45におけるアンカー部43aと接触する部分のうちx軸方向の長さ、α1はパッド部45の熱膨張係数である。また、L2´xは緩和部46におけるアンカー部43aと接触する部分のうちx軸方向の長さ(緩和部46のx軸方向の長さ)、α2は緩和部46の熱膨張係数である。α3はアンカー部43a(Si)の熱膨張係数である。また、緩和部46におけるアンカー部43aと接触する部分のうちx軸方向の長さ(緩和部46のx軸方向の長さ)の総和をL2xとすると、L2x=2×L2´xであるため、上記数式1を変形すると、
(数2)L1x×(α1−α3)=L2x×(α3−α2)
とも示せる。
【0044】
そして、一般的に、α1=23ppm、α2=0.5ppm、α3=3ppmで示される。このため、L2´x=4L1x(L2x=8L1x)とされている。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、アンカー部43aには、パッド部45と共にアンカー部43aより熱膨張係数の低い緩和部46が形成されている。このため、パッド部45からアンカー部43aに印加される応力(引っ張り応力)が緩和部46からアンカー部43aに印加される応力(圧縮応力)によって緩和され、パッド部45からセンシング部36(可動部40)に応力が印加されることを抑制できる。
【0046】
また、緩和部46は、アンカー部43a上に形成するものであり、アンカー部43aとセンシング部36との間の部分を繋ぐ半導体層33を細くする必要もない。したがって、パッド部45とセンシング部36とを繋ぐ半導体層33の部分で信号の伝達が悪くなることもない。
【0047】
そして、本実施形態では、パッド部45とアンカー部43aとは、上記数式1(数式2)が成立する形状とされており、パッド部45からアンカー部43aに印加される引っ張り応力に起因するアンカー部43aのx軸方向における歪みの度合いと、2つの緩和部46からアンカー部43aに印加される圧縮応力に起因するアンカー部43aのx軸方向における歪みの度合いとの大きさが等しくされている。このため、さらにパッド部45からセンシング部36(可動部40)に応力が印加されることを抑制できる。
【0048】
さらに、本実施形態では、パッド部45のうちアンカー部43aと接触する部分は、緩和部46のうちアンカー部43aと接触する部分に挟まれている。そして、緩和部46のうちアンカー部43aと接触する部分は、パッド部45および緩和部46のうちアンカー部43aと接触する部分の中心を通り、y軸方向に延びる基準線に対して対称形状とされている。このため、基準線に対して対称に応力が緩和されることになり、アンカー部43aが反ってしまうことを抑制することができる。
【0049】
なお、配線部52、62は、支持基板31に支持されており、パッド部53、63から引っ張り応力が印加されてもx軸方向に変位し難い。つまり、パッド部53、63から配線部52、62に引っ張り応力が印加されても固定電極51、61はx軸方向に変位し難い。このため、パッド部53、63の周囲に緩和部46は形成されていないが、パッド部53、63の周囲に緩和部46が形成されていてもよい。
【0050】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して緩和部46の形状を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0051】
図5および図6に示されるように、本実施形態では、緩和部46は、y軸方向が長手方向となるストライプ状となるように複数配置されており、隣接する間隔が全て等しくされている。そして、パッド部45は、隣接する緩和部46の間から露出するアンカー部43aと接触するように緩和部46上に配置されている。
【0052】
なお、本実施形態では、パッド部45および緩和部46は、図6に示されるように、
(数3)4L1´x×(α1−α3)=5×L2´x×(α3−α2)
が成立する形状とされている。
【0053】
なお、L1´xは、パッド部45における隣接する緩和部46の間からアンカー部43aと接触する部分のうちx軸方向の長さである。また、パッド部45におけるアンカー部43aと接触する部分のうちx軸方向の長さの総和をL1xとするとL1x=4L1xであり、L2x=5L2´xであるため、上記数式3を変形すると上記数式2と同様となる。
【0054】
これによれば、x軸方向において各緩和部46からアンカー部43aに印加される圧縮応力が小さくなると共に、隣接する緩和部46の間からアンカー部43aと接触するパッド部45からアンカー部43aに印加される引っ張り応力も小さくなる。このため、互いの応力を相殺し易くすることができる。
【0055】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して緩和部46の形状を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0056】
図7および図8に示されるように、本実施形態では、緩和部46は平面矩形枠状とされている。パッド部45は、枠内にて露出するアンカー部43aと接触するように緩和部46上に配置されている。また、緩和部46のうちアンカー部43aと接触する部分は、パッド部45および緩和部46のうちアンカー部43aと接触する部分の中心を通り、x軸方向に延びる基準線に対して対称形状とされている。
【0057】
そして、パッド部45および緩和部46は、図8に示されるように、
(数4)L1y×(α1−α3)=2×L2´y×(α3−α1)
が成立する形状とされている。
【0058】
なお、L1yは、パッド部45におけるアンカー部43aと接触する部分のうちy軸方向の長さ、L2´yは緩和部46におけるアンカー部43aと接触する部分のうちy軸方向の長さ(緩和部46のy軸方向の長さ)である。また、緩和部46におけるアンカー部43aと接触する部分のうちy軸方向の長さの総和をL1yとするとL2y=2×L2´yであるため、上記数式4を変形すると
(数5)L1×(α1−α3)=L2×(α3−α2)
となる。
【0059】
これによれば、y軸方向においても、パッド部45からアンカー部43aに印加される引っ張り応力と、緩和部46からアンカー部43aに印加される圧縮応力とを相殺しつつ、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、第3実施形態に対して緩和部46の形状を変更したものであり、その他に関しては第3実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0061】
図9および図10に示されるように、本実施形態では、緩和部46は平面円環状とされている。そして、パッド部45は、円環内にて露出するアンカー部43aと接触するように緩和部46上に配置されている。
【0062】
また、パッド部45および緩和部46は、図10に示されるように、
(数6)L1r×(α1−α3)=2×L2´r×(α3−α1)
が成立する形状とされている。
【0063】
なお、L1rはパッド部45におけるアンカー部43aと接触する部分のうち径方向の長さ、L2´rは緩和部46におけるアンカー部43aと接触する部分のうち径方向の長さである。また、緩和部46におけるアンカー部43aと接触する部分のうち径方向の長さの総和をL2rとするとL2r=2×L2´rであるため、上記数式6を変形すると
(数7)L1r×(α1−α3)=L2r×(α3−α1)
となる。
【0064】
これによれば、アンカー部43aの平面方向における全方向において、パッド部45からアンカー部43aに印加される引っ張り応力と、緩和部46からアンカー部43aに印加される圧縮応力とを相殺しつつ、上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態は、第4実施形態に対してパッド部45および緩和部46の配置方法を変更したものであり、その他に関しては第4実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0066】
図11および図12に示されるように、本実施形態では、パッド部45のうちアンカー部43aと接触する部分が円環状とされている。そして、緩和部46は、パッド部45のうちアンカー部43aと接触する部分の内側に配置されている。言い換えると、緩和部46は平面円状とされており、パッド部45はアンカー部43aと接触する部分が円環状となるように緩和部46を覆うように配置されている。
【0067】
また、パッド部45および緩和部46は、図12に示されるように、
(数8)2×L1´r×(α1−α3)=L2r×(α3−α1)
が成立する形状とされている。
【0068】
なお、L1´rはパッド部45におけるアンカー部43aと接触する部分のうち径方向の長さである。また、パッド部45におけるアンカー部43aと接触する部分のうち径方向の長さの総和をL1rとするとL1r=2×L1´rであるため、上記数式8を変形すると上記数式7となる。
【0069】
このように、パッド部45のうちアンカー部43aと接触する部分の内側に緩和部46が配置されていても、上記第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0071】
例えば、上記各実施形態では、パッド部45と緩和部46とは、アンカー部43aの表面において接触している例を説明したが、図13および図14に示されるように、パッド部45と緩和部46とが僅かに離間して形成されていてもよい。言い換えると、パッド部45と緩和部46との間からアンカー部43aが露出していてもよく、パッド部45は緩和部46と直接接触していなくてもよい。すなわち、本発明の隣接とは、図13および図14に示されるような、パッド部45と緩和部46との間に若干の隙間が存在するものも含むものである。
【0072】
そして、上記第1実施形態において、緩和部46のうちアンカー部43aと接触する部分は、パッド部45および緩和部46のうちアンカー部43aと接触する部分の中心を通り、y軸方向に延びる基準線に対して対称形状とされていなくてもよい。例えば、緩和部46は1つのみで形成されていてもよい。この場合、緩和部46が上記数式2を満たすように形成されていれば、パッド部45からアンカー部43aに印加される応力と緩和部46からアンカー部43aに印加される応力とをほぼ相殺することができる。また、第2〜第5実施形態においても同様である。そして、上記第3実施形態では、緩和部46のうちアンカー部43aと接触する部分は、パッド部45および緩和部46のうちアンカー部43aと接触する部分の中心を通り、x軸方向に延びる基準線に対して対称形状とされていなくてもよい。
【0073】
さらに、上記第1実施形態において、パッド部45および緩和部46は、上記数式1(数式2)が成立する形状とされていなくても、緩和部46が形成されていることにより、パッド部45からアンカー部43aに印加される応力を緩和することができる。また、上記第2〜第5実施形態においても、同様である。
【0074】
また、上記各実施形態では、加速度センサを例に挙げて説明したが、例えば、次のようなセンサに本発明を適用することができる。つまり、本発明は、角速度を検出するセンシング部36が形成されたセンサ部30を備える角速度センサや、圧力を検出するセンシング部36が形成されたセンサ部30を備える圧力センサに適用することもできる。
【0075】
そして、上記各実施形態では、パッド部45をアンカー部43a(半導体層33)より熱膨張係数の高い材料を用いて構成し、緩和部46をアンカー部43a(半導体層33)より熱膨張係数の低い材料を用いて構成したが、次のようにしてもよい。すなわち、パッド部45をアンカー部43a(半導体層33)より熱膨張係数の低い材料を用いて構成し、緩和部46をアンカー部43a(半導体層33)より熱膨張係数の高い材料を用いて構成してもよい。このようなにパッド部45および緩和部46を構成しても、パッド部45からアンカー部43aに印加される応力と緩和部46からアンカー部43aに印加される応力とが相殺されるため、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0076】
30 センサ部
34 SOI基板(基板)
36 センシング部
45 パッド部
46 緩和部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14