(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、粒状肥料の溶出成分の流亡による環境への影響、農業就労者の高年齢化に伴う省力化等の面から、より省力型で効率の高い肥料、並びにその使用法が要求されている。このような背景のもとに、種々の溶出調整型の肥料が提案され、実用化されている。
【0003】
前記の溶出調整型の肥料は、粒状肥料の表面を有機系あるいは無機系の水透過性の被覆資材を用いて被覆することにより内部成分の溶出を制御した被覆粒状肥料である。中でも樹脂等の有機系の被覆資材を用いたものは溶出制御機能がより優れており、この様な型が被覆粒状肥料の主流を占めている。
【0004】
一般的に、被覆粒状肥料を水中に浸漬させると、水は徐々に被覆層を透過し、被覆肥料の内部に入り込むことにより、水溶性肥料の溶出成分を溶解させる。溶解した該溶出成分は被覆層を透過して被覆層外に溶出するが、このとき、被覆層が水及び成分溶出の透過を抑制する。やがて該被覆層は、吸水により膨張し、それにより溶出が促進される。
【0005】
前記被覆資材として用いられる樹脂は、各種様々なものが使用されているが、ウレタン樹脂などの熱硬化樹脂は被膜の強度、耐水性の大きいこと、溶出特性の制御の容易さ、溶剤を使用しないで塗布することができるなどの理由から広く用いられている。本出願人は、粒状肥料であってその表面が、(A)芳香族ポリイソシアネートとひまし油またはひまし油誘導体ポリオールとから得られたイソシアネート基末端プレポリマーを、(B)ひまし油またはひまし油誘導体ポリオールと(C)アミン系ポリオールで、硬化させて得られるポリウレタン樹脂からなる被膜で被覆されてなる被覆粒状肥料を特許出願している(特許文献1)。
【0006】
前記被覆資材のなかでも、水溶性の被覆粒状肥料は溶出をコントロールする期間や溶出特性によって、長期溶出型、短期溶出型、シグモイド型などの溶出パターンを示すものが存在し、その用途に合わせて溶出パターンを細かに調整することが求められている。
【0007】
例えば、特許文献2では、芯材粒子の表面を被覆材料で被覆することにより被覆生物活性粒状物を製造する際、該被覆膜に対してフィラーを分散させ、フィラー分散変動係数50%以下、及び該被膜材料溶解液の粘度を0.5〜40[mPa・s]にすることにより、1粒1粒の粒子間における活性物質放出機能を均一化させることを特徴とする被覆生物活性粒状物及びその製造方法が開示されており、本方法は活性成分の初期溶出を防止するとしたものである。
【0008】
その他にも、被覆内容物である粒状肥料成分の初期溶出を抑制することを目的として、例えば特許文献3では、粒状肥料の表面を高分子化合物を含む被覆材料で被覆することにより被覆粒状肥料を製造する際、その短軸/長軸比が0.80から0.95である粒状肥料を用いることを特徴とする被覆粒状肥料の製造方法が開示されており、特許文献4では、肥料を有効成分として含み、かつ下記式に示される計算式より求められる円形度係数が0.7以上である芯材粒子の表面上に、合成樹脂を主成分とする膜が覆われていることを特徴とする時限溶出型被覆粒状肥料が開示されている。尚、円形度係数とは、円形度係数=(4π×粒子の投影面積)/(粒子投影図の輪郭の長さ)
2、で算出される。
【0009】
また、特許文献5では、粒状肥料の表面を被覆材で被覆することにより粒状被覆肥料を製造するに際し、原料として用いる粒状肥料として、転選機により選別された整粒を用いることを特徴とする被覆粒状肥料の製造方法が記載されており、所定の時期に溶出する肥効調節型肥料が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したように、溶出調整型の肥料は、溶出コントロール期間を細かに調節することが求められており、施用後の溶出(以下「初期溶出」と記載することもある)を抑制し、なおかつ施用後任意の期間(例えば7日〜200日)で80重量%以上の溶出を示すものが求められる。
【0012】
溶出パターンをコントロールする際、特に溶出を早めて短期間(例えば7日〜40日)での溶出を達成することを目的として、被覆層を形成する被覆膜の薄膜化や被覆膜の水酸基当量を増加させて被覆膜の透水性を高める等の方法が知られている。しかし、薄膜化すると粒状肥料の被覆が不完全になり、溶出を調整すること自体が不可能となり易い。また、水酸基当量の増加は被覆膜原料の粘度の増加を招きピンホール等の欠陥を発生させ易くなることから、実際に製造を行う上で溶出を早める技術には限界があった。
【0013】
従って、本発明は溶出調整型の被覆粒状肥料において、被覆層に欠陥を発生させることなく溶出を早めた被覆粒状肥料を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、水溶性の粒子を被覆層に混ぜ込むことにより溶出を早めることが可能であることを見出した。また検討を進めた結果、水溶性粒子の粒径が小さくなるに従って、溶出を早める効果が顕著に現れることが明らかとなった。
【0015】
すなわち本発明は、水溶性粒状肥料表面に被覆層が形成された被覆粒状肥料であって、該被覆層が水溶性微粒子を含有していることを特徴とする被覆粒状肥料である。
【0016】
被覆層は水溶性粒状肥料表面に形成される層であり、被覆膜を1層以上とし、被覆層を形成する樹脂中に水溶性微粒子とを有する。該被覆層に含まれる水溶性微粒子は、被覆粒状肥料を水中に浸漬させたり畑に施肥したりすると、水中、及び土中の水分を吸収することにより、水の浸透と共に溶解し、該被覆層外へ溶出する。該水溶性微粒子が溶出した後、その部分に空孔が生じ、該空孔を通して肥料成分が溶出するため、被覆層の膜厚が同様の被覆粒状肥料と比較して、溶出を早めることが可能である。
【0017】
このとき水溶性微粒子の中心粒径は被覆層の膜厚の3倍以下とするのが好ましく、中心粒径についての下限は特に限定するものではない。しかしながら、中心粒径が小さすぎると粉塵や被覆装置内の汚染等の製造工程において取り扱いが悪くなることがあるため、被覆層の膜厚の1/10以上としても差し支えない。また、該水溶性微粒子の中心粒径が被覆層の膜厚の3倍を超えると、被覆層中に含有させ難くなる。
【0018】
本発明における被覆層の平均厚みは、被覆層の平均厚み=樹脂添加液重量/粒状肥料表面積の式で表すことができる。
【0019】
また、本発明における「中心粒径」とは、以下に示した測定器を用いた粒度分布測定において、全体の50%径(μm)値と定義した。測定装置はレーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所製、SALD―2200)を用い、イソプロパノール溶液中に、水溶性粒子を適量加え十分に拡散させた後、測定を行った。
【発明の効果】
【0020】
本発明の被覆粒状肥料により、被覆層に欠陥を発生させることなく溶出を早めた被覆粒状肥料を得ることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好適な実施形態のひとつを
図1、
図2を用いて以下に示す。本発明は、水溶性粒状肥料1の表面に被覆層2、3が形成された被覆粒状肥料であって、該被覆層2、3が水溶性微粒子4を含有し、該水溶性微粒子4の中心粒径が該被覆層2、3の平均厚みの3倍以下の範囲内である被覆粒状肥料である。このとき、被覆層の平均厚みは、被覆層の総厚みの平均厚みを指すものとする。
【0023】
水溶性粒状肥料1は、例えば、尿素、塩安、硫安、硝安、塩化カリ、硫酸カリ、硝酸カリ、硝酸ソーダ、燐酸カリ、燐酸アンモニア、燐酸石灰、からなる群から選ばれる少なくとも1種の肥料又は複合肥料、および粒状の有機肥料が挙げられる。
【0024】
また、被覆層2、3は水溶性粒状肥料1表面を覆うものであり、水を徐々に透過し、かつ水に溶解した肥料成分が被覆層外部へ溶出するのを抑制するものである。該被覆層の平均膜厚は特に限定するものではないが、一般的な水溶性粒状肥料である粒子径1〜20mm程度の水溶性粒状肥料を用いる場合、平均膜厚を1〜200μmとすることにより溶出を好適に制御することができる。
【0025】
また、該被覆層は前述したように水を徐々に透過し、溶出成分の被覆層外への溶出を抑制できれば良い。例えば、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂、天然ゴム、ロジン等の天然樹脂、シリコン樹脂、ワックス類等を使用することが可能であり、特に溶出特性が制御し易いことから、ポリウレタン樹脂が好適に利用される。
【0026】
被覆層2、3は、単層でも被覆膜が多層積層されたものでも差し支えないが、被覆効率の向上や水溶性微粒子を効率良く被覆層内に保持する目的で、
図1、
図2に示したように、内層2及び外層3と多層構成にするのが好ましい。また、該被覆層は、被覆層の強度や溶出特性等を調整する目的で、該被覆層中に任意の第三の樹脂、無機物、植物油、触媒等の非水溶性物質を含有してもよい。
【0027】
また、水溶性粒状肥料1に対する被覆層2、3の被覆率は目的に応じて決定されれば良いが、特に本発明は溶出を早めて短期間(例えば7日〜40日)での溶出に顕著な効果を奏するものであり、被覆率を1〜10%としてもよい。尚、本発明における被覆率は樹脂添加量/(粒状肥料重量+樹脂添加重量)×100によって算出される。
【0028】
水溶性微粒子4は水に溶解し、肥料成分の機能を妨げないものであればよく、例えば塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが挙げられる。特に炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムは溶解度が高いことから好ましい。
【0029】
水溶性微粒子4の中心粒径は被覆層2、3の合計厚みの3倍以下であり、中心粒径が小さい程溶出を早める効果が高いことから、好ましくは2倍以下としてもよい。該水溶性微粒子は水溶性粒状肥料1又は被覆層2、3の表面に一旦物理的に付着し、さらにその上から被覆膜で覆うことにより固定された状態となる。このとき、
図2に示したように、水溶性微粒子4のうち被覆層2、3から突出した部分についても、上記の中心粒径の範囲内であれば薄く被覆することが可能となる。該中心粒径が被覆層の厚みの3倍を超えると、水溶性粒状肥料及び被覆層の表面への物理的な付着が生じ難く、また、一旦付着しても被覆層に固定しきれず被覆膜から脱離してしまうことがある。一方で、中心粒径が小さすぎると粉塵や被覆装置内の汚染等の製造工程において取り扱いが悪くなることがあるため、被覆層の膜厚の1/10以上としても差し支えない。
【0030】
また、被覆粒状肥料間の相互の固着を防止することを目的として、該被覆層表面を無機質粉末で処理してもよい。無機粉末としては、例えばタルク、イオウ、炭酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、ケイソウ土、クレー、金属酸化物が挙げられ、これらを単独又は混合して用いてもよい。
【0031】
本発明の被覆粒状肥料を製造する方法としては、流動状態又は転動状態とした前記の水溶性粒状肥料に、水溶性微粒子及び被覆層を形成する為の樹脂液を加えれば、該水溶性肥料全体を被覆することが可能である。
【0032】
前記水溶性粒状肥料を流動状態又は転動状態にする際、該水溶性粒状肥料をあらかじめ熱風等によって一定時間予熱するのが好ましい。この時予熱時間及び予熱温度は、該水溶性肥料の水分が被覆用の樹脂液に大きな影響を及ぼさない程度の水分量、水溶性粒状肥料の温度が好適な被覆温度となるように適宜調整されればよい。
【0033】
前記水溶性粒状肥料の流動化には、流動層または噴流層等の装置が使用でき、転動化には回転パンまたは回転ドラム等の装置が使用できる。該水溶性粒状肥料を流動状態又は転動状態にすることによって、該水溶性粒状肥料表面に連続的に被覆層を形成することが可能となる。
【0034】
水溶性微粒子は所望の中心粒径を含むように予め粉砕してもよい。該水溶性微粒子を上記の装置内に投入する際、所望の中心粒径が50重量%以上を有する水溶性微粒子原料であれば厳密に分級されなくとも利用可能である。
【0035】
水溶性微粒子を含有させる方法としては、水溶性粒状肥料又は被覆層の表面に塗した後、さらにその上に被覆層を形成するものでも、被覆層を形成するための樹脂液と同時に水溶性微粒子を製造装置内に加えるものでもよい。
【0036】
水溶性粒状肥料又は被覆層の表面に水溶性微粒子を塗す方法としては、水溶性粒状肥料を流動状態又は転動状態にした後、以下の工程A又は工程Bを経るのが好ましい。
工程A:流動状態又は転動状態の水溶性粒状肥料表面に水溶性微粒子を塗した後、樹脂液を供給し被覆層を形成する。
工程B:流動状態又は転動状態の水溶性粒状肥料表面に樹脂液を供給して被覆層を形成した後、該被覆層表面に水溶性微粒子を塗し、該水溶性微粒子表面に被覆層を形成する。
【0037】
上記の方法を用いると、工程Aでは水溶性粒状肥料表面上の水溶性微粒子を、また工程Bでは被覆層上の水溶性微粒子を、樹脂液に均一に分散させることができるため、簡易に水溶性微粒子を被覆樹脂中に含有させることが可能となる。
【0038】
また、樹脂液と同時に水溶性微粒子を製造装置内に加える方法としては、該水溶性粒状肥料表面に、水溶性微粒子、被覆温度における粘度が0.1〜1000mPa・sである樹脂液A、及び該樹脂液Aとウレタン結合を形成する樹脂液Bを供給し、該水溶性微粒子を含有する被覆層を形成する工程を用いるのが好ましい。
【0039】
上記の方法を用いると、製造上での工程及び製造時間が短くなり、生産性を向上させることが可能となるため好ましい。この時、前記樹脂液Aの被覆温度における粘度を0.1〜1000mPa・sとすることにより、水溶性粒状肥料及び水溶性微粒子を均一に被覆することが可能となる。また、粘度が範囲外となった場合でも水溶性粒状肥料は被覆可能だが、樹脂液の粘度が0.1mPa・s未満であるときは、水溶性微粒子が露出してしまい、1000mPa・sを超えるときは、均一に被覆できない。好ましくは、0.1〜500mPa・sとしてもよい。
【0040】
また、樹脂液Bと水溶性微粒子を混合し、前記樹脂液Aと前記水溶性粒状肥料表面に供給する方法も好ましく利用できる。該樹脂液Bの被覆温度における粘度が0.1〜500mPa・sであれば、均一に被覆できるため、好ましく、速やかに水溶性粒状肥料表面を覆うことが可能であればよい。
【0041】
上記の樹脂液Bに予め水溶性微粒子を混合させる場合、水溶性微粒子が樹脂液Bの重量に対して0.1〜10重量%となるように混合するのが好ましい。10重量%を超えて混合すると、水溶性微粒子が樹脂液Bによる被覆を阻害し、被覆性が低下してしまうことがある。また、下限については特に限定する必要はないが、含有量が少なくなる程、水溶性微粒子の効果が表れ難くなるため0.1重量%以上としてもよい。
【0042】
前記被覆層を形成する方法としては、効率よく被覆層を形成する樹脂液を分散添加できるものであればよく、例えば装置内に噴霧、滴下等を行うことが挙げられる。特に、圧縮空気を用いた二流体ノズルによって噴霧添加する方法は樹脂液を均一に加え易いため好適に利用される。
【0043】
該被覆層を形成する際、例えばウレタン樹脂の場合は、装置内でウレタン結合を形成する反応を進行させることにより被覆層を形成する。この時、ポリオール成分とイソシアネート成分とが存在すると反応が進行してしまうことから、ポリオール成分含有の樹脂液と、イソシアネート成分含有の樹脂液とを別々に調製し、装置内で混合することによりウレタン樹脂を形成する。この時、ウレタン樹脂の透水性はイソシアネート基と水酸基との比率で調整可能であり、本発明においてはイソシアネート基:水酸基=0.5〜1.5としている。
【0044】
前記樹脂液を噴霧や滴下により、製造装置内に供給した後、流動状態又は転動状態を維持しながら、前述した被覆温度を一定時間維持することにより、混合された樹脂液が熱硬化し被覆層が形成される。さらに被覆層を積層する場合は適宜次層用の樹脂液を供給すれば良い。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を説明する。尚、本発明は以下実施例に限定されるものではない。また、以下の「中心粒径」とは、以下に示した測定器を用いた粒度分布測定において、全体の50%径(μm)値と定義した。測定装置はレーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所製、SALD―2200)であり、イソプロパノール溶液中に、水溶性粒子を適量加え十分に拡散させた後、屈折率を1.50−0.00iに設定の上測定を行った。
【0046】
(使用した被覆材)
[被覆材A]
以下の成分1、成分2をイソシアネート基/水酸基=0.8となるように混合し、成分3を添加して調製したウレタン樹脂液。
(成分1)メタンジイソシアネート(MDI)(NCO基含有率33.6%)
(成分2)aとbを水酸基のモル比=8:2で混合した混合液。
a:ひまし油(水酸基価160mgKOH/g)。
b:エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)。
(成分3)成分2の合計重量に対して、7.7重量%になるように秤量した中心粒径を50μmに持つ塩化ナトリウム。
【0047】
[被覆材B]
上記成分3を中心粒径を10μmに持つ塩化ナトリウムにして、被覆材Aと同様に調製したウレタン樹脂液。
【0048】
[被覆材C]
上記成分3を中心粒径を20μmに持つ炭酸水素ナトリウムにして、被覆材Aと同様に調製したウレタン樹脂液。
【0049】
[被覆材D]
上記成分3を中心粒径を2μmに持つシリカヒュームにして、被覆材Aと同様に調製したウレタン樹脂液。
【0050】
[被覆材E]
上記成分1と2をイソシアネート基/水酸基=0.8となるように混合し、調製したウレタン樹脂液。
【0051】
[実施例1]
尿素の粒子(粒径2.0〜10.0mm)1.2kgを直径300mmのドラム型転動被覆装置に仕込み、20rpmで転動させながら、熱風発生機により粒状尿素温度を60℃に保持した。
次に、第1層目の被覆層を形成させるために前記被覆材A(12.6g)を装置内に10秒かけて添加した。
次に、第1層目の被覆層の添加から5分後に第2層目の被覆層として前記被覆材Aと同一量の前記被覆材Eを、装置内に10秒かけて添加し、第2層目被覆層を作成した。
次に、30分間転動させ、該尿素上の被覆膜を硬化させた。これを常温(約25℃)まで冷却し、被覆層2層からなる目的の被覆粒状肥料を得た。
【0052】
[実施例2]
前記被覆材Aを12.8g用い、実施例1と同様に第1層目の被覆を行った。次に、実施例1と同様に第2層目の被覆を行った。第2層目の被覆層の添加から5分後に第3層目の被覆層として第2層目と同一成分、同一量の被覆材Eを装置内に10秒かけて添加し、第3層目被覆層を作成した。
続いて、実施例1と同様に被覆膜を硬化させ、被覆層3層からなる目的の被覆粒状肥料を得た。
【0053】
[実施例3]
前記被覆材Bを用い、実施例1と同様の手順で被覆を行い、被覆層2層からなる目的の被覆粒状肥料を得た。
【0054】
[実施例4]
前記被覆材Bを用い、実施例2と同様の手順で被覆を行い、被覆層3層からなる目的の被覆粒状肥料を得た。
【0055】
[実施例5]
前記被覆材Cを用い、実施例1と同様の手順で被覆を行い、被覆層2層からなる目的の被覆粒状肥料を得た。
【0056】
[実施例6]
前記被覆材Cを用い、実施例2と同様の手順で被覆を行い、被覆層3層からなる目的の被覆粒状肥料を得た。
【0057】
[比較例1]
前記被覆材Eを用い、実施例1と同様の手順で被覆を行い、被覆層2層からなる被覆粒状肥料を得た。
【0058】
[比較例2]
前記被覆材Eを用い、実施例2と同様の手順で被覆を行い、被覆層3層からなる被覆粒状肥料を得た。
【0059】
[比較例3]
前記被覆材Dを用い、実施例1と同様の手順で被覆を行い、被覆層2層からなる被覆粒状肥料を得た。
【0060】
[比較例4]
前記被覆材Dを用い、実施例2と同様の手順で被覆を行い、被覆層3層からなる被覆粒状肥料を得た。
【0061】
以上の実施例と比較例に関して、用いた被覆材、膜厚、水溶性微粒子の名称と中心粒径について、表1にまとめた。
【0062】
【表1】
【0063】
[溶出試験]
得られた被覆粒状肥料を縮分して溶出試験を行い、その結果を表2に示した。溶出試験は縮分した被覆粒状肥料のうち12.5gを採取して250gのイオン交換水に投入し、25℃の恒温槽内に保存して所定時間経過後に取り出し、水中に溶出した溶出成分を定量して求めた。なお、表2には、それぞれ1日、3日、7日、14日、21日、28日、35日経過した時の尿素の溶出率(重量%)を示した。
【0064】
【表2】
【0065】
実施例1〜実施例6より、水溶性金属塩を被覆層に混ぜ込むことにより、短期溶出型のパターンを示す被覆尿素肥料を作成できた。
【0066】
被覆率毎に尿素溶出率を比較した時、実施例1〜実施例6までの各実施例は、被覆層に可溶性金属塩を添加していない被覆尿素肥料である、比較例1から比較例2の各比較例に対して、明らかに溶出が早まることがわかった。
【0067】
また、実施例1及び実施例3を比較した時、被覆層に添加した可溶性金属塩の取る中心粒径が小さい、実施例3の方が更なる短期溶出型パターンを示した。また、実施例2及び実施例4を比較した時においても、同様の傾向を示すことが分かった。故に、被覆層添加内容物の中心粒径が小さいことが短期溶出型パターンを示すことに必要であることが分かった。
【0068】
実施例1、実施例3、実施例5と比較例3を比較した時、実施例1、実施例3、実施例5が比較例3よりも短期溶出型パターンを示した。また、実施例2、実施例4、実施例6と比較例4を比較した時においても、同様の傾向を示すことが分かった。故に、被覆層添加内容物が水溶性であることが、短期溶出型パターンを示すことに必要であることが分かった。
【0069】
実施例3及び実施例5の結果から、両実施例間における水中溶出率は変わらないことから、水への溶解度が、短期溶出型パターンに及ぼす影響は無いものと考えられる。また、実施例4と実施例6を比較した時においても、同様の傾向を示した。尚、実施例3及び実施例4に用いた塩化ナトリウムの溶解度は、25℃の水1kgに対して6.15mol、一方、実施例5及び実施例6に用いた炭酸水素ナトリウムの溶解度は、25℃の水1kgに対して1.23molであり、炭酸水素ナトリウムが塩化ナトリウムに対して3倍難水溶性である。