特許第6044327号(P6044327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044327
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20161206BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H04N1/00 C
   G03G21/00 384
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-282682(P2012-282682)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-127820(P2014-127820A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐原 慎也
【審査官】 鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−041454(JP,A)
【文献】 特開2008−288952(JP,A)
【文献】 特開平03−051245(JP,A)
【文献】 特開2001−310510(JP,A)
【文献】 特開2012−099947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って原稿を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記原稿を用いた画像処理を実行する画像処理部と、
前記画像処理部よりも前記搬送経路の上流側に配置され、前記搬送部によって搬送される前記原稿に押されて原稿検知信号を出力する原稿センサと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記画像処理部の動作モードとして第1の動作モードが設定されているか第2の動作モードが設定されているかを判断するモード判断処理と、
前記原稿センサから出力される前記原稿検知信号を検知した回数である信号検知回数に基づいて前記原稿の先端を検知する先端検知処理と、
を実行し、
前記先端検知処理において、
前記モード判断処理によって前記第1の動作モードが設定されていると判断された場合は、前記信号検知回数が第1の回数に達すると前記原稿の先端を検知する一方、
前記モード判断処理によって前記第2の動作モードが設定されていると判断された場合は、前記信号検知回数が前記第1の回数未満である第2の回数に達すると前記原稿の先端を検知する、画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記画像処理は原稿を読み取って画像データを生成する読取処理であり、
前記第2の動作モードは前記画像データから前記原稿の搬送方向の先端を検知して所定の処理を実行するモードであり、
前記第1の動作モードは前記所定の処理を実行しないモードである、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記第2の回数は1回である、画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、
前記制御部は、前記先端検知処理によって前記原稿の先端が検知された後も前記原稿検知信号が出力されているか否かを継続して判断し、前記原稿検知信号が出力されていないと判断した回数である信号非検知回数が第3の回数に達すると前記原稿の後端を検知したと判断する後端検知処理を実行する、画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置であって、
前記搬送部は複数の原稿を1枚ずつ順に搬送するものであり、
前記制御部は、先に搬送される前記原稿の搬送方向後端が基準位置を通過してから次に搬送される前記原稿の先端が前記基準位置を通過するまでの経過時間が短い場合は、当該経過時間が長い場合に比べて前記第3の回数を小さくする変更処理を実行する、画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置であって、
前記制御部は、前記変更処理において、前記経過時間が下限時間より短い場合は前記第3の回数を1回に変更する、画像処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、
前記画像処理は原稿を読み取って画像データを生成する読取処理であり、
前記制御部は、
前記モード判断処理によって前記第2の動作モードが設定されていると判断された場合に、前記読取処理によって生成された画像データが表す画像において前記搬送部による搬送方向に相当する方向の幅が基準幅未満であるか否かを判断する幅判断処理と、
前記幅判断処理によって前記基準幅未満であると判断された場合に、前記画像データを破棄する破棄処理と、
を実行する、画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿が搬送される搬送経路において読取センサよりも上流側に配置され、原稿の先端を検知して制御部に検知結果を送信する原稿センサが開示されている(例えば特許文献1参照)。
また、このような原稿センサとして、搬送経路に揺動部材を配置し、搬送されてきた原稿の先端によって揺動部材が押されると接点が接触して電気信号を出力する機械的な原稿センサが用いられる場合もある。
【0003】
ところで、接点が接触すると電気信号を出力する機械的な原稿センサでは、接点が非接触から接触に切り替わった際、あるいは接点が接触から非接触に切り替わった際の機械的振動によって電気信号が断続を繰り返す所謂チャタリングという現象が生じることが知られている。なお、原稿センサとして光学センサを用いる場合にもこのようなチャタリングが生じる場合がある。
【0004】
例えば原稿センサから電気信号が出力されると原稿の先端が検知されたと判断し、電気信号が出力されなくなると原稿の後端が検知されたと判断するとする。この場合、チャタリングが生じると、本来は搬送方向にある程度の幅を有する原稿であるにもかかわらず、搬送方向の幅が非常に短い原稿が複数連続して搬送されていると誤判断してしまう虞がある。
このようなチャタリングによる影響を除去するために、原稿センサから出力される電気信号が一定期間継続したことで初めて原稿先端を検知することにより、原稿先端検知精度が低下することを抑制する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−099947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、装置の小型化が進み、原稿センサから読取センサまでの距離が短くなる傾向にある。このため、原稿センサから出力される電気信号が一定期間継続したことで初めて原稿先端を検知すると、原稿先端を検知するタイミングが遅れ、原稿先端の画像データが欠損する虞があった。
本明細書では、原稿先端検知精度が低下することを抑制することを優先するか、又は、画像データの欠損を抑制することを優先するかを切り替える技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される画像処理装置は、搬送経路に沿って原稿を搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送される前記原稿を用いた画像処理を実行する画像処理部と、前記画像処理部よりも前記搬送経路の上流側に配置され、前記搬送部によって搬送される前記原稿に押されて原稿検知信号を出力する原稿センサと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記画像処理部の動作モードとして第1の動作モードが設定されているか第2の動作モードが設定されているかを判断するモード判断処理と、前記原稿センサから出力される前記原稿検知信号を検知した回数である信号検知回数に基づいて前記原稿の先端を検知する先端検知処理と、を実行し、前記先端検知処理において、前記モード判断処理によって前記第1の動作モードが設定されていると判断された場合は、前記信号検知回数が第1の回数に達すると前記原稿の先端を検知する一方、前記モード判断処理によって前記第2の動作モードが設定されていると判断された場合は、前記信号検知回数が前記第1の回数未満である第2の回数に達すると前記原稿の先端を検知する。
【0008】
上記画像処理装置によると、第1の動作モードが設定されている場合は信号検知回数が第2の回数より大きい第1の回数に達すると原稿の先端を検知したと判断するので、原稿先端検知精度が低下することを抑制できる。一方、上記画像処理装置によると、第2の動作モードが設定されている場合は信号検知回数が第1の回数未満である第2の回数に達すると原稿の先端を検知したと判断するので、画像データの欠損を抑制することができる。
よって上記画像処理装置によると、原稿先端検知精度が低下することを抑制することを優先するか、又は、画像データの欠損を抑制することを優先するかを、画像処理部の動作モードに応じて切り替えることができる。
【0009】
また、前記画像処理は原稿を読み取って画像データを生成する読取処理であり、前記第2の動作モードは前記画像データから前記原稿の搬送方向の先端を検知して所定の処理を実行するモードであり、前記第1の動作モードは前記所定の処理を実行しないモードであってもよい。
【0010】
上記画像処理装置によると、第2の動作モードが設定されている場合は信号検知回数が第1の回数未満である第2の回数に達すると原稿の先端を検知したと判断するので、画像データから原稿の搬送方向の先端を検知して所定の処理を実行する場合に、原稿先端の画像データが欠損することによって当該所定の処理を正しく実行できなくなる可能性を抑制することができる。
【0011】
また、前記第2の回数は1回であってもよい。
【0012】
上記画像処理装置によると、画像データの欠損を最大限抑制できる。
【0013】
また、前記制御部は、前記先端検知処理によって前記原稿の先端が検知された後も前記原稿検知信号が出力されているか否かを継続して判断し、前記原稿検知信号が出力されていないと判断した回数である信号非検知回数が第3の回数に達すると前記原稿の後端を検知したと判断する後端検知処理を実行してもよい。
【0014】
上記画像処理装置によると、信号非検知回数が第3の回数に達するまでは原稿の後端であるとは判断しないので、チャタリングが生じた場合に搬送方向の幅が非常に短い原稿が複数連続して搬送されていると誤判断してしまうことを抑制できる。
【0015】
また、前記搬送部は複数の原稿を1枚ずつ順に搬送するものであり、前記制御部は、先に搬送される前記原稿の搬送方向後端が基準位置を通過してから次に搬送される前記原稿の先端が前記基準位置を通過するまでの経過時間が短い場合は、当該経過時間が長い場合に比べて前記第3の回数を小さくする変更処理を実行してもよい。
【0016】
複数の原稿が1枚ずつ順に搬送される場合、先に搬送される原稿の搬送方向後端が基準位置を通過してから次に搬送される原稿の先端が当該基準位置を通過するまでの経過時間が短いと、原稿非検知回数が第3の回数に達する前に次の原稿によって原稿検知信号が出力され、前の原稿の後端を検知できなくなる虞がある。
上記画像処理装置によると、経過時間が短い場合は第3の回数を小さくするので、経過時間が短い場合に原稿の後端を検知できなくなることを抑制できる。
【0017】
また、前記制御部は、前記変更処理において、前記経過時間が下限時間より短い場合は前記第3の回数を1回に変更してもよい。
【0018】
上記画像処理装置によると、原稿の後端を検知できなくなることを最大限抑制できる。
【0019】
また、前記画像処理は原稿を読み取って画像データを生成する読取処理であり、前記制御部は、前記モード判断処理によって前記第2の動作モードが設定されていると判断された場合に、前記読取処理によって生成された画像データが表す画像において前記搬送部による搬送方向に相当する方向の幅が基準幅未満であるか否かを判断する幅判断処理と、前記幅判断処理によって前記基準幅未満であると判断された場合に、前記画像データを破棄する破棄処理と、を実行してもよい。
【0020】
第2の動作モードが設定されている場合は第1の回数未満である第2の回数に達すると原稿の先端を検知したと判断するので、第2の回数を少なくした場合には、チャタリングの影響によって搬送方向の幅が非常に短い原稿であると判断される可能性がある。それにより、搬送方向の幅が非常に短い原稿を表す画像データが生成されてしまう可能性がある。
上記画像処理装置によると、搬送方向に相当する方向の幅が基準幅未満である画像を表す画像データは破棄するので、ユーザが画像データを破棄する負担を低減できる。
【0021】
なお、本明細書によって開示される技術は、画像処理システム、画像処理方法等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
上記の画像処理装置によると、原稿先端検知精度が低下することを抑制することを優先するか、又は、画像データの欠損を抑制することを優先するかを切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1に係る画像読取装置の構成を簡略化して示す模式図。
図2】リアセンサの構成を簡略化して示す模式図。
図3】画像読取装置の電気的構成を簡略化して示す模式図。
図4】原稿検知信号を簡略化して示す模式図。
図5】読取制御処理のフローチャート。
図6】クロッピング処理がオフであるときの読取制御処理のフローチャート(前半)。
図7】クロッピング処理がオフであるときの読取制御処理のフローチャート(後半)。
図8】搬送開始処理のフローチャート。
図9】クロッピング処理がオンであるときの読取制御処理のフローチャート(前半)。
図10】実施形態2に係るリアセンサOFF決定カウントの設定を説明するための模式図。
図11】クロッピング処理がオンであるときの読取制御処理(前半)。
図12】実施形態3に係るクロッピング処理がオンであるときの読取制御処理のフローチャート(前半)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図9によって説明する。
(1)画像読取装置
先ず、図1を参照して、実施形態1に係る画像読取装置1の構成について説明する。画像読取装置1はA4やB5などの原稿を読み取り可能に構成されているとともに、キャッシュカード、クレジットカード、名刺、免許証などのカードサイズの原稿も読み取り可能に構成されている。以降の説明ではA4やB5などの原稿のことを普通紙といい、カードサイズの原稿のことをカードというものとする。
【0025】
画像読取装置1の筐体11は略箱状に形成されている。筐体11の上壁面において後方側には紙面垂直方向に延びる普通紙導入口12が形成されている。普通紙導入口12は普通紙を読み取る際に筐体11内に普通紙を導入するための開口である。
【0026】
筐体11の背面にはカード導入口16が形成されている。カード導入口16はカードCを読み取る際に筐体11内にカードCを導入するための開口である。
筐体11の前面には排出口14が設けられている。普通紙導入口12から導入された普通紙やカード導入口16から導入されたカードCは筐体11内で読み取られた後に排出口14から筐体11前方に排出される。
【0027】
カバー13は普通紙導入口12を開放する開状態と普通紙導入口12を覆う閉状態とに回動可能に筐体11に連結されている。カバー13は開状態にあるとき閉状態から所定角度回動した位置において傾斜した姿勢で定位し、普通紙が載置される原稿トレイとして機能する。カバー13が閉状態にあるときは普通紙導入口12がカバー13によって覆われるので普通紙の読み取りを行うことはできない。
【0028】
また、筐体11の上壁面には操作部15が設けられている。ユーザは操作部15を操作することによって読取条件の設定や読取指示の入力などを行うことができる。カバー13には閉状態のときにもユーザが操作部15を操作できるようにするための開口13aが形成されている。
【0029】
筐体11内には搬送部20、画像読取部30、リアセンサ44、普通紙センサ43、カードセンサ42などが収容されている。また、筐体11内にはカードC及び普通紙が搬送される搬送経路Tが形成されている。
搬送経路Tは、カードCが搬送される第1の搬送経路T1、普通紙が搬送される第2の搬送経路T2、それらが合流した共通搬送経路T3から構成されている。図示するように第1の搬送経路T1と第2の搬送経路T2とは画像読取部30よりも上流側で合流している。
【0030】
また、図1に示すように第1の搬送経路T1と共通搬送経路T3とは一つの直線的な搬送経路を構成している。これは、キャッシュカードやクレジットカードなどの湾曲し難いカードを搬送するためである。
【0031】
搬送部20は、供給ローラ21、分離パッド22、搬送ローラ23、搬送ローラ23に従動して回転する従動ローラ24、搬送ローラ25、搬送ローラ25に従動して回転する従動ローラ26、図示しないステッピングモータ、当該ステッピングモータの回転駆動力を上述した供給ローラ21、搬送ローラ23、及び、搬送ローラ25に伝達する図示しない伝達機構などを備えて構成されている。搬送部20は、カード導入口16から導入されたカードCを第1の搬送経路T1及び共通搬送経路T3に沿って搬送するとともに、普通紙導入口12から導入された複数の普通紙を第2の搬送経路T2及び共通搬送経路T3に沿って1枚ずつ順に搬送する。
【0032】
ここで、画像読取部30にカードCを読み取らせる場合は、ユーザはカード導入口16からカードCを挿入し、カードCが搬送ローラ23と従動ローラ24とに狭持されるまでカードCを押し込むものとする。これは、カードCが搬送ローラ23と従動ローラ24とに狭持されていないと搬送ローラ23を回転させてもカードCを搬送できないからである。
【0033】
画像読取部30は、第1読取部31と第2読取部32とを備えて構成されている。第1読取部31は共通搬送経路T3を搬送されている原稿の一方の面を読み取る。第2読取部32は共通搬送経路T3を挟んで第1読取部31とは逆側に配置されており、共通搬送経路T3を搬送されている原稿の他方の面を取る。画像読取部30は画像処理部の一例である。
【0034】
第1読取部31と第2読取部32とは実質的に同一の構成であるのでここでは第1読取部31を例に説明する。第1読取部31は、共通搬送経路T3にある原稿を照射する光源、複数の受光素子が紙面垂直方向に直線状に配列されたリニアイメージセンサ、光源によって照射された原稿の光学像をリニアイメージセンサの受光素子に結像する光学系などを備えて構成されている。
【0035】
光源はRGB3色のLED光源であってもよいし、冷陰極管(CCFL)などを用いた白色光源であってもよい。本実施形態ではRGB3色のLED光源を用いるものとする。リニアイメージセンサはCCDセンサであってもよいし、CMOSセンサであってもよい。光学系は等倍光学系であってもよいし、縮小光学系であってもよい。
【0036】
リアセンサ44は、共通搬送経路T3においてカードCや普通紙などの原稿の有無を検知するセンサである。リアセンサ44は画像読取部30と従動ローラ24との間に配置されている。リアセンサ44の構成については後述する。リアセンサ44は原稿センサの一例である。
【0037】
普通紙センサ43は、普通紙導入口12から導入された普通紙の有無を検知するセンサである。普通紙センサ43は第2の搬送経路T2において供給ローラ21及び分離パッド22の上流側に配置されている。普通紙センサ43としてはリアセンサ44と同じ構成のものを用いることができる。なお、普通紙センサ43は普通紙の有無を検知できるものであれば上述したものに限定されない。例えば普通紙センサ43は超音波センサであってもよい。
【0038】
カードセンサ42は、カードCの有無を検知するセンサである。カードセンサ42は第1の搬送経路T1においてカード導入口16の近傍に配置されている。カードセンサ42としては普通紙センサ43と同じ構成のものを用いることができる。
【0039】
(2)リアセンサの構成
図2を参照して、リアセンサ44の構成について説明する。リアセンサ44は光学センサとして構成されており、支点を中心に揺動可能に筐体11に設けられている揺動部44a、光を出射する発光部44b、発光部44bから出射された光を受光し、受光した光の明るさに応じたレベルの電気信号を出力する図示しない受光部を備えている。
【0040】
揺動部44aは搬送経路に沿って搬送されてきた原稿の進行を阻害するように一端が共通搬送経路T3上に配置されている。揺動部44aは原稿が搬送されていないときは自重あるいは図示しないバネの付勢力によって実線で示す姿勢で定位する。揺動部44aが実線で示す姿勢にあるとき発光部44bから受光部に至る光路は揺動部44aによって遮られ、リアセンサ44から出力される電気信号のレベルは基準レベル未満となる。
【0041】
共通搬送経路T3に沿って原稿が搬送されてくると揺動部44aは原稿に押されて点線で示す姿勢に変位する。揺動部44aが点線で示す姿勢に変位すると上述した光路が揺動部44aによって遮られなくなり、リアセンサ44から出力される電気信号のレベルが基準レベル以上となる。
【0042】
以降の説明ではリアセンサ44から出力される基準レベル以上の電気信号のことを原稿検知信号という。また、以降の説明ではリアセンサ44から出力されている電気信号のレベルが基準レベル以上であることを原稿検知信号がONであるといい、基準レベル未満であることを原稿検知信号がOFFであるという。あるいは、リアセンサ44から出力されている電気信号のレベルが基準レベル以上であることをリアセンサ44がONであるといい、基準レベル未満であることをリアセンサ44がOFFであるという。
【0043】
上述したように実施形態1に係るリアセンサ44は光学センサとして構成されているが、揺動部44aが原稿に押された際、あるいは原稿に押されなくなった際に揺動部44aが機械的に振動することによってチャタリングが生じる場合がある。
【0044】
なお、リアセンサ44は揺動部44aが原稿によって押されていないときに光路を開放し、押されているときに光路を遮断する構成であってもよい。その場合はリアセンサ44から出力される基準レベル未満の電気信号が原稿検知信号である。
また、リアセンサ44は揺動部44aが原稿に押されると揺動部44aに設けられている接点と筐体11側に設けられている接点とが機械的に接触して原稿検知信号を出力する接点スイッチとして構成されてもよい。
【0045】
(3)画像読取装置の電気的構成
次に、図3を参照して、画像読取装置1の電気的構成について説明する。画像読取装置1は、制御部10、搬送部20、画像読取部30、操作部15、通信インタフェース16、リアセンサ44、普通紙センサ43、カードセンサ42などを備えている。搬送部20、リアセンサ44、普通紙センサ43、及び、カードセンサ42の構成は前述した通りであるのでここでは説明を省略する。
【0046】
制御部10はCPU10a、ROM10b、及び、RAM10cなどを備えて構成されている。CPU10aはROM10bに記憶されている制御プログラムを実行することによって画像読取装置1の各部を制御する。ROM10bにはCPU10aによって実行される制御プログラムやデータなどが記憶されている。RAM10cはCPU10aが各種の処理を実行するための主記憶装置として用いられる。
【0047】
画像読取部30は、前述した第1読取部31及び第2読取部32の他に、ASIC33、及び、図示しないAFE(アナログフロントエンド)を備えている。ASIC33はCPU10aによる制御の下で光源、リニアイメージセンサ、ステッピングモータなどを制御する。図示しないAFEはリニアイメージセンサから出力されたアナログの画像信号にゲイン調整やA/D変換などを行ってデジタルの画像信号を出力する回路である。ASIC33はAFEから出力された画像信号にガンマ補正、シェーディング補正、後述するクロッピング処理などの各種の画像処理を施して画素毎にRGB3色の濃度を持つ画像データを生成する。なお、ASIC33によって実行される画像処理の一部あるいは全部は制御部10によって実行されてもよい。
【0048】
画像読取部30によって生成された画像データは通信インタフェース16を介して外部の装置に送信されてもよいし、画像読取装置1に着脱可能に装着されているリムーバブルメモリなどの記憶媒体に記憶されてもよいし、電子メールに添付されて送信されてもよいし、ファクシミリによって送信されてもよい。
【0049】
操作部15は、液晶ディスプレイなどの表示装置、表示装置を駆動する駆動回路、表示装置の表示面を覆う略透明なタッチパネルなどを備えて構成されている。前述したようにユーザは操作部15を操作することによって読取条件の設定や読取指示の入力などを行うことができる。
【0050】
通信インタフェース16は、USB(Universal Serial Bus)、LAN(Local Area Network)、インターネットなどの通信回線を介してパーソナルコンピュータなどの外部の装置と通信するためのインタフェースである。なお、画像読取装置1は外部の装置から通信回線を介して読取条件の設定や読取指示の入力を受け付ける構成であってもよい。
【0051】
(4)画像読取装置の動作モード
画像読取装置1の動作モードには、第1の動作モードと第2の動作モードとがある。動作モードは読取条件の一つとしてユーザによって設定されるものである。
ここでは先ず第2の動作モードについて説明する。第2の動作モードは画像読取部30から出力された画像データから原稿の搬送方向の先端を検知して所定の処理を実行するモードである。
【0052】
所定の処理とは例えばクロッピング処理である。クロッピング処理とは、画像データが表す画像において原稿の先端と後端とを画像処理によって認識し、当該画像において原稿の先端よりも前の部分と後端よりも後の部分とを破棄することによって原稿の先端から後端までを表す画像データを抽出する処理である。
第1の動作モードは上述したクロッピング処理を実行しないモードである。
【0053】
(5)リアセンサから出力される原稿検知信号
次に、図4を参照して、リアセンサ44から出力される原稿検知信号について説明する。
【0054】
図4において期間Aは搬送部20によって原稿の搬送が開始された後、リアセンサ44がONになる前の期間である。
期間Bは原稿の搬送が開始された後にリアセンサ44が初めてONになったときからチャタリングによってリアセンサ44のON/OFFが断続的に繰り返されている期間である。
期間Cはチャタリングが収束してリアセンサ44が安定してONになっている期間である。
【0055】
期間Dは期間Cの後にリアセンサ44が初めてOFFになったときからチャタリングによってリアセンサ44のON/OFFが断続的に繰り返されている期間である。
期間Eはチャタリングが収束してリアセンサ44が安定してOFFになっている期間である。
【0056】
例えばリアセンサ44がONになると直ちに原稿の搬送方向の先端を検知したと判断し、その後にリアセンサ44がOFFになると直ちに原稿の搬送方向の後端を検知したと判断するとする。この場合、チャタリングが発生すると、パルス51が出力されてリアセンサ44がONになった時に原稿の先端を検知したと判断され、パルス51が立ち下がってリアセンサ44がOFFになった時に原稿の後端を検知したと判断されることになり、搬送方向の幅が非常に短い原稿と誤判断されてしまう。
【0057】
そこで、制御部10は、チャタリングによる影響を低減するために、原稿の搬送が開始されるとリアセンサ44がONであるか否かの判断を繰り返し、ONであると判断した回数が第1の回数(>1)に達すると、原稿の先端を検知したと判断する。
第1の回数は原稿の先端を検知したと判断される時点P2が期間C内になるように設定されている。時点P2が期間C内であると、原稿の後端を検知したと判断されるのは期間Cが終了した後になる。なぜなら、期間Cが終了しないとリアセンサ44はOFFにならないからである。これにより、搬送方向の幅が非常に短い原稿と判断されてしまうことを抑制できる。
【0058】
ただし、このようにすると、リアセンサ44と画像読取部30との間隔が狭い場合であって、且つ、前述した第2の動作モードが設定されている場合(すなわちクロッピング処理がオンである場合)に不都合が生じる場合がある。
具体的には、リアセンサ44が初めてONになった時点P1から原稿の先端を検知したと判断される時点P2までには時間が経過しているので、リアセンサ44と画像読取部30との間隔が狭いと、時点P2で原稿の先端を検知したと判断したとき、原稿の先端は既に画像読取部30によって読み取られる位置を通過してしまっていることが起こり得る。
【0059】
時点P2で原稿の先端が既に画像読取部30によって読み取られる位置を通過してしまっていると、時点P2で直ちに画像読取部30に原稿の読み取りを開始させても原稿先端の画像データが欠損してしまい、原稿の先端から後端までを表す画像データを生成できなくなる。すなわち、クロッピング処理を正しく実行できなくなる。
【0060】
そこで、制御部10は、第2の動作モードが設定されている場合は、原稿の搬送を開始した後、リアセンサ44がONであると最初に判断した時点P1において、原稿の先端を検知したと判断する。このようにすると、原稿の先端をより早い時点で検知することができる。
【0061】
しかしながら、リアセンサ44がONであると最初に判断した時点P1で原稿の先端を検知したと判断すると、前述したようにチャタリングが発生した場合に搬送方向の幅が非常に短い原稿と誤判断されてしまう。
【0062】
そこで、制御部10は、原稿の先端を検知した後もリアセンサ44がONであるか否かを継続して判断し、間にONであると判断することなく連続してOFFであると判断した回数がリアセンサOFF決定カウントに達するまでは、原稿の後端を検知したとは判断しない。実施形態1ではリアセンサOFF決定カウントは予め固定の値として設定されているものとする。リアセンサOFF決定カウントは第3の回数の一例である。
【0063】
このようにすると、例えばパルス51とパルス52との間でリアセンサ44がOFFであると判断されても、その後にパルス52によってONと判断されることにより、OFFと判断した回数がリアセンサOFF決定カウントに達する前に0(零)に初期化される。従って、パルス51とパルス52との間でリアセンサ44がOFFであると判断されても原稿の後端を検知したとは判断されない。これにより、リアセンサ44がONであると最初に判断した時点P1で原稿の先端を検知したと判断しても、搬送方向の幅が非常に短い原稿と誤判断されてしまうことを抑制することができる。
【0064】
ただし、リアセンサ44がONであると最初に判断した時点P1で原稿の先端を検知したと判断するようにすると、別の問題が生じる虞がある。具体的には、電気的なノイズによって短いパルスが1つだけ発生すると、そのパルスの後はリアセンサ44がOFFになる期間が続くので、原稿の後端を検知したと判断され、搬送方向の幅が非常に短い原稿であると誤判断されてしまう。
【0065】
これに対し、リアセンサ44がONであると判断した回数が第1の回数に達するまでは原稿の先端を検知したと判断しない場合は、このようなノイズが発生しても原稿の先端を検知したとは判断されないので、短い原稿であると誤判断されることを抑制できる。
【0066】
そこで、本実施形態では、ノイズの影響を最小限に抑えるために、リアセンサ44がONであると最初に判断した時点P1で原稿の先端を検知したと判断するのは第2の動作モードが設定されている場合(すなわちクロッピング処理がオンである場合)に止め、第1の動作モードが設定されている場合(すなわちクロッピング処理がオフである場合)はONであると判断した回数が第1の回数に達するまで原稿の先端を検知したと判断しない。
【0067】
(6)制御部による読取制御処理
次に、図5を参照して、制御部10による読取制御処理についてより具体的に説明する。本処理はユーザが操作部15あるいは外部の装置を操作して画像読取装置1に原稿の読み取りを指示すると開始される。ここでは原稿が普通紙であるものとして説明する。
【0068】
S101では、制御部10は第1の動作モードが設定されているか第2の動作モードが設定されているかを判断し、第1の動作モードが設定されている場合(すなわちクロッピング処理がオフである場合)はS102に進み、第2の動作モードが設定されている場合(すなわちクロッピング処理がオンである場合)はS103に進む。S101はモード判断処理の一例である。
【0069】
S102では、制御部10はクロッピング処理がオフであるときの読取制御処理を実行する。
S103では、制御部10はクロッピング処理がオンであるときの読取制御処理を実行する。
【0070】
(6−1)クロッピング処理がオフであるときの読取制御処理
次に、図6及び図7を参照して、S102で実行される「クロッピング処理がオフであるときの読取制御処理」について説明する。
【0071】
S201では、制御部10は原稿の搬送を開始する搬送開始処理を実行して原稿の搬送を開始させる。搬送開始処理についての説明は後述する。
S202では、制御部10はリアセンサ44がONであるか否かを判断し、ONである場合はS203に進み、OFFである場合はS204に進む。
【0072】
S203では、制御部10はリアセンサ44がONであると判断した回数をカウントする変数であるリアセンサONカウントに1を加算する。リアセンサONカウントは信号検知回数の一例である。
S204では、制御部10はリアセンサONカウントが第1の回数(>1)より大きいか否かを判断し、第1の回数より大きい場合は原稿の先端を検知したとしてS205に進み、第1の回数以下である場合は原稿の先端を検知していないとしてS202に戻って処理を繰り返す。
上述したS202〜S204は先端検知処理の一例である。
【0073】
S205では、制御部10は原稿の先端が画像読取部30に読み取られる位置に達するまで待機する。原稿の先端が画像読取部30に読み取られる位置に達したか否かは、リアセンサ44が最初にONになったと判断したときからのステッピングモータが回転したステップ数から判断することができる。
【0074】
S206では、制御部10は画像読取部30を制御して原稿の読み取りを開始させる。
S207では、制御部10はリアセンサ44がONであるか否かを判断し、ONである場合はS208に進み、OFFである場合はS209に進む。
S208では、制御部10はリアセンサ44がOFFであると判断した回数をカウントする変数であるリアセンサOFFカウントを0に初期化する。リアセンサOFFカウントは信号非検知回数の一例である。
【0075】
S209では、制御部10はリアセンサOFFカウントに1を加算する。
S210では、制御部10はリアセンサOFFカウントがリアセンサOFF決定カウントより大きいか否かを判断する。制御部10は、リアセンサOFFカウントがリアセンサOFF決定カウントより大きい場合は原稿の後端を検知したとしてS211に進む。一方、リアセンサOFF決定カウント以下である場合は、制御部10は原稿の後端を検知していないとして、S207に戻って処理を繰り返す。S210は後端検知処理の一例である。
【0076】
S211では、制御部10は原稿の後端が画像読取部30に読み取られる位置に達するまで待機する。原稿の後端が画像読取部30に読み取られる位置に達したか否かは、リアセンサ44が最初にOFFになったと判断したときからのステッピングモータが回転したステップ数から判断することができる。
【0077】
S212では、制御部10は画像読取部30を制御して読み取りを終了させる。
S213では、制御部10はフロントセンサがONであるか否かを判断する。フロントセンサとは、普通紙を読み取る場合は普通紙センサ43のことであり、カードCを読み取る場合はカードセンサ42のことである。制御部10はフロントセンサがOFFである場合は次の原稿がないとして本処理を終了し、ONである場合は次の原稿があるとしてS201に戻って処理を繰り返す。
【0078】
(6−2)搬送開始処理
次に、図8を参照して、S201で実行される搬送開始処理について説明する。
S301では、制御部10はステップ数カウンタを0に初期化する。
S302では、制御部10は搬送部20にステッピングモータの1ステップ分のパルス信号を出力する。
S303では、制御部10はステップ数カウンタに1を加算する。
【0079】
S304では、制御部10はステップ数カウンタが予め設定されている搬送開始ステップ数に達したか否かを判断し、達した場合はS305に進み、達していない場合はS302に戻って処理を繰り返す。
S305では、制御部10は搬送部20を制御して原稿の搬送を開始する。
【0080】
(6−3)クロッピング処理がオンであるときの読取制御処理
次に、図9を参照して、S103で実行される「クロッピング処理がオンであるときの読取制御処理」について説明する。「クロッピング処理がオンであるときの読取制御処理」では、前述した「クロッピング処理がオフであるときの読取制御処理」のS202〜S204に替えてS401が実行される。
【0081】
S401では、制御部10はリアセンサ44がONになるまで待機し、ONになるとS205に進む。つまり、「クロッピング処理がオンであるときの読取制御処理」では、制御部10はリアセンサONカウントが第1の回数(>1)より小さい第2の回数(=1回)に達すると原稿の先端を検知したと判断する。
S205以降の処理は図6及び図7に示すフローチャートと同一であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
(7)実施形態の効果
以上説明した画像読取装置1によると、クロッピング処理がオフであるときはリアセンサONカウントが第2の回数(=1回)より大きい第1の回数(>1回)に達すると原稿の先端を検知したと判断するので、搬送方向の幅が非常に短い原稿が複数連続して搬送されていると誤判断することを抑制できる。
一方、画像読取装置1によると、クロッピング処理がオンであるときはリアセンサONカウントが第1の回数(>1回)未満である第2の回数(=1回)に達すると原稿の先端を検知したと判断するので、画像データの欠損を抑制することができる。これにより、クロッピング処理を正しく実行できなくなる可能性を抑制することができる。
よって画像読取装置1によると、搬送方向の幅が非常に短い原稿が複数連続して搬送されていると誤判断してしまうことを抑制することを優先するか、又は、画像データの欠損を抑制することを優先するかを、クロッピング処理がオンであるか否かに応じて切り替えることができる。
【0083】
更に、画像読取装置1によると、第2の回数は1回であるので、クロッピング処理がオンである場合に画像データの欠損を最大限抑制できる。
【0084】
更に、画像読取装置1によると、リアセンサOFFカウントがリアセンサOFF決定カウントに達するまでは原稿の後端であるとは判断しないので、リアセンサONカウントが第2の回数(=1回)に達すると原稿の先端を検知したと判断する場合であっても、チャタリングによって搬送方向の幅が非常に短い原稿が複数連続して搬送されていると誤判断してしまうことを抑制できる。
【0085】
<実施形態2>
次に、実施形態2を図10ないし図11によって説明する。
実施形態1ではリアセンサOFF決定カウントが予め固定の値として設定されている場合を例に説明した。これに対し、実施形態2に係る制御部10は、先に搬送される原稿の搬送方向後端がある任意の基準位置を通過してから次に搬送される原稿の先端が当該基準位置を通過するまでの経過時間に応じてリアセンサOFF決定カウントを設定する。
【0086】
図10を参照して、実施形態2に係るリアセンサOFF決定カウントの設定について説明する。ここでは先に搬送されている原稿M1の後端から原稿M1の次に搬送される原稿M2の先端までの距離が短いことによって上述した経過時間が短くなる場合を例に説明する。
図10では先に搬送されている原稿M1の後端から原稿M1の次に搬送される原稿M2の先端までの距離が長い場合と短い場合とを示している。図10においてD1は長い場合の距離を示しており、D2(<D1)は短い場合の距離を示している。
【0087】
図示する例の場合、リアセンサOFF決定カウントが5回であるとすると、距離が長い場合はリアセンサOFFカウントがリアセンサOFF決定カウントより大きくなった後に次の原稿の先端がリアセンサ44によって検知されるので、先に搬送されている原稿M1の後端を検知できる。
【0088】
これに対し、距離が短い場合はリアセンサOFFカウントがリアセンサOFF決定カウントより大きくなる前に次の原稿がリアセンサ44によって検知されてしまう。リアセンサOFFカウントがリアセンサOFF決定カウントより大きくなる前に次の原稿がリアセンサ44によって検知されてしまうと、図6あるいは図9に示すS208でリアセンサOFFカウントがクリアされてしまい、先に搬送されている原稿M1の後端を検知できなくなってしまう。
【0089】
なお、上述した説明では距離が短いことによって経過時間が短くなると説明したが、距離が同じで搬送速度が速くなることによって経過時間が短くなることもある。
【0090】
そこで、制御部10は、先に搬送される原稿の搬送方向後端がある任意の基準位置を通過してから次に搬送される原稿の先端が当該基準位置を通過するまでの経過時間が短い場合は、当該経過時間が長い場合に比べてリアセンサOFF決定カウントを小さくする。
ただし、制御部10は、上述した経過時間が下限時間より短い場合はリアセンサOFF決定カウントを一律に1回にする。
【0091】
図11を参照して、実施形態2に係る「クロッピング処理がオンであるときの読取制御処理」について説明する。
S201、S401、S205からS209の処理は図9に示す処理と実質的に同一の処理であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0092】
S501では、制御部10は、先に搬送される原稿の搬送方向後端がある任意の基準位置を通過してから次に搬送される原稿の先端が当該基準位置を通過するまでの経過時間が下限時間より短いか否かを判断する。経過時間は以下に示す式1によって求められる。
経過時間=距離/搬送速度 ・・・ 式1
【0093】
ここで距離は先に搬送される原稿の搬送方向後端から次に搬送される原稿の搬送方向先端までの距離である。この距離は普通紙導入口12に導入されて未だ搬送が開始されていない普通紙の先端から先に搬送されている原稿の後端までの搬送経路Tに沿った距離と、前述した図8のS304で用いられる搬送開始ステップ数に1ステップ当たりの搬送距離を乗算して得られる距離とを合計した距離として求められる。
【0094】
普通紙導入口12に導入されて未だ搬送が開始されていない普通紙の先端から先の原稿の後端までの搬送経路Tに沿った距離は、具体的にはこの時点で先の原稿の後端は画像読取部30によって読み取られる位置にあるので未だ搬送が開始されていない普通紙の先端から画像読取部30によって原稿が読み取られる位置までの搬送経路Tに沿った距離である。
【0095】
なお、先の原稿の搬送が開始されたときから前述した図8のS304で用いられる搬送開始ステップ数分だけ当該先の原稿が搬送されたら次の原稿の搬送を開始する構成であってもよい。その場合は前述した図8のS304で用いられる搬送開始ステップ数に1ステップ当たりの搬送距離を乗算して得られる距離が上述した距離となる。
【0096】
搬送速度は搬送部20が原稿を搬送する速度である。搬送速度はユーザによって設定された読取条件に応じて決定される。例えば読取条件として高画質が設定されている場合は低画質が設定されている場合より遅い搬送速度が設定される。
制御部10は、経過時間が下限時間より短い場合は図7に示すS211に進み、下限時間以上である場合はS502に進む。下限時間より短い場合はS211に進むので、結果としてリアセンサOFF決定カウントは1回になる。
【0097】
S502では、制御部10はリアセンサOFF決定カウントを設定する。具体的には、制御部10は以下の式2によってリアセンサOFF決定カウントを設定する。
リアセンサOFF決定カウント=経過時間×割り込み処理回数 ・・・ 式2
【0098】
ここで割り込み処理回数はリアセンサ44がONであるか否かを制御部10が1秒間当たりに判断する回数である。
【0099】
例えば次の例を考える。
距離=5[mm]
搬送速度=100[mm/秒]
割り込み処理回数=100[回/秒]
この場合、リアセンサOFF決定カウントは以下の式3に示す値となる。
リアセンサOFF決定カウント=5[回] ・・・ 式3
【0100】
これに対し、以下の例を考える。
距離=3[mm]
搬送速度=100[mm/秒]
割り込み処理回数=100[回/秒]
この場合、リアセンサOFF決定カウントは以下の式4に示す値となる。
リアセンサOFF決定カウント=3[回] ・・・ 式4
つまり、上述した経過時間が短くなるとリアセンサOFF決定カウントが小さくなる。S502は変更処理の一例である。
【0101】
以上説明した実施形態2に係る画像読取装置1によると、経過時間が短い場合は経過時間が長い場合に比べてリアセンサOFF決定カウント(第3の回数)を小さくするので、経過時間が短い場合に原稿の後端を検知できなくなることを抑制できる。
【0102】
更に、画像読取装置1によると、経過時間が下限時間より短い場合はリアセンサOFF決定カウントを1回にするので、原稿の後端を検知できなくなることを最大限抑制できる。
【0103】
<実施形態3>
次に、実施形態3を図12によって説明する。
実施形態1ではリアセンサOFFカウントがリアセンサOFF決定カウントより大きくなると原稿の後端を検知したと判断する。これに対し、実施形態3ではリアセンサOFFカウントをカウントせず、リアセンサ44がOFFになると直ちに原稿の後端を検知したと判断する。
【0104】
ただし、リアセンサ44がOFFになると直ちに原稿の後端を検知したと判断すると、チャタリングが生じた場合に副走査方向の幅が非常に短い原稿を表す画像データが生成されてしまう。
そこで、実施形態3に係る制御部10は、第2の動作モードが設定されている場合(すなわちクロッピング処理がオンである場合)は、生成された画像データが表す画像において搬送部20による搬送方向に相当する方向の幅が基準幅未満であるか否かを判断し、基準幅未満である場合は画像データを破棄する。
【0105】
図12を参照して、実施形態3に係る「クロッピング処理がオンであるときの読取制御処理」について説明する。
実施形態3に係る「クロッピング処理がオンであるときの読取制御処理」では実施形態1に係る「クロッピング処理がオンであるときの読取制御処理」のS207からS210に替えてS601が実行されるとともに、S212の後にS602、S603が実行される。
【0106】
S210〜S206までの処理は実施形態1と実質的に同一であるので説明は省略する。
S601では、制御部10はリアセンサ44がONであるか否かを判断し、ONになるとS211に進む。
S211〜S212も実施形態1と実質的に同一であるので説明は省略する。
【0107】
S602では、制御部10は生成された画像データが表す画像において搬送部20による搬送方向に相当する方向の幅が基準幅未満であるか否かを判断し、基準幅以上である場合はS213に進み、基準幅未満である場合はS603に進む。
S603では、制御部10は生成された画像データを破棄する。
【0108】
以上説明した実施形態3に係る画像読取装置1によると、クロッピング処理がオンである場合に、読取処理によって生成された画像データが表す画像において搬送部20による搬送方向に相当する方向の幅が基準幅未満である場合は画像データを破棄するので、ユーザが画像データを破棄する負担を低減できる。
【0109】
<他の実施形態>
上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0110】
(1)上記実施形態では第2の回数を1回としたが、第2の回数は第1の回数より小さい回数であれば1回より多い回数であってもよい。
【0111】
(2)上記実施形態では所定の処理としてクロッピング処理を例に説明した。これに対し、所定の処理は画像データが表す画像を解析して原稿の搬送方向先端側の辺を表す直線状のエッジを検出し、検出したエッジの傾きに応じて画像を回転させることによって画像の傾きを補正する傾き補正処理であってもよい。
【0112】
(3)上記実施形態では画像処理装置として画像読取装置1を例に説明した。しかしながら、画像処理装置は画像読取装置1に限定されるものではない。例えば画像処理装置は画像形成装置(所謂プリンタ)であってもよい。この場合、画像形成装置が備える画像形成部が画像処理部の一例である。
また、画像処理装置はスキャナ機能、ファクシミリ機能、プリント機能、コピー機能等を備える所謂複合機であってもよいし、単機能のファクシミリ装置であってもよい。
【0113】
(4)上記実施形態では制御部10が一つのCPU10aを備える場合を例に説明した。これに対し、制御部10は複数のCPUによって構成されてもよいし、ASICによって構成されてもよいし、CPUとASICとの組み合わせによって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1・・・画像読取装置、10・・・制御部、15・・・操作部、16・・・通信インタフェース、14・・・排出口、20・・・搬送部、30・・・画像読取部、31・・・第1読取部、32・・・第2読取部、42・・・カードセンサ、43・・・普通紙センサ、44・・・リアセンサ、T1・・・搬送経路、T2・・・搬送経路、T3・・・共通搬送経路、C・・・カード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12