【実施例】
【0028】
図1に一部分を概略的に図示した流体の汚染除去製品10は、表面の外側および内側比表面14を有する多孔質体12を備え、その面積によって大きな濾過能力が付与されている。本発明の好ましい一実施態様では、多孔質体は例えば平均粒度分布が0.5〜1mmの炭素粉末または顆粒、シートまたは棒の形状のグラファイト、活性炭、活性炭素布または繊維、またはこれらの要素の組み合わせのような炭素を含んだ成分を含む。さらに、他の成分、特に砂またはゼオライトのようなケイ素を含む成分を含むことがある。この多孔質体は、特別な処理をせずに、既に濾過能力を備えるが、殺菌または静菌能力は備えていない。
【0029】
例えば、
図2を参照して詳細に説明するような処理の後、製品10は、さらに、多孔質体12の外側および内側比表面14の少なくとも一部分を被覆する、厚さが最大でナノメートルの金属化層16を備える。「厚さが最大でナノメートル」とは、数ナノメートルを超えることがなく、さらに大部分はナノメートル未満のサイズに収まる厚さを意味する。
【0030】
金属化層は、金属、例えば、銀またはケイ素を含む。これらの成分の銀Agおよびケイ素Si原子は、強い化学結合、すなわち、前記に挙げた定義によると、分子内力の作用によって生じる化学結合によって、多孔質体12に結合される。金属化層16のいくつかの銀Agおよびケイ素Si原子は、また、分子内力の作用によって生じる化学結合によって互いに結合することがある。
【0031】
非限定的な実施例として
図1に示した製品は、銀による金属化層を備えるが、特に金、銅および亜鉛を含む他の重金属または重金属の組み合わせ(例えばバイメタル)のいずれでも同様に適している。より一般的には、「重金属」とは、原子質量が銅の原子質量に等しいか、あるいは、それ以上の全ての金属を意味する。ニッケルもまた適している。一般的には、ニッケルはアレルギーを引き起こし、発癌性のものと考えられているが、製品10内には極めて微量しか存在しないので、これらの有害作用はないであろう。
【0032】
このように構成され、製品10は主に炭素によって構成されており、極めて微量のケイ素および好ましくは極めて純粋な形態で存在する重金属を含む。金属の純度は例えばおよそN6であり、すなわち、99.9999%である。さらに、後に
図2を参照して詳細に説明するこの製品の製造方法によって、非酸化物の形態の金属(銀を使用する場合はAg
0を含む強い化学結合を備える金属化層の堆積を可能にする。
【0033】
銀によって金属化され、銀、ケイ素および多孔質体間での強い化学結合を有するこの金属化層は、製品10に、酸化反応のエネルギー触媒による殺菌性、または少なくとも静菌性を付与する。
【0034】
図2を参照して後に詳細に説明する製造方法を使用することによって、金属化層16は、好ましくは、多孔質体12との相互作用で、特にエネルギー準位がほぼ283eVに等しいことが明らかな金属シリサイド炭化物型の成分を含む。分子構造が極めて安定し、したがって、堅牢なこれらの成分の製造は、金属、ケイ素、および多孔質体(特に多孔質体の炭素元素)間の化学結合が極めて強く、特に、共有結合またはイオン結合より強いことを示す。したがって、製品10は、例えば水のような流体の処理に使用されるときその成分の1つを失う恐れはなく、その金属化層の厚さがナノメートルにもかかわらずナノ粒子の析出の恐れがないので、飲用化の用途および流体の精製を必要とする他の農産物加工業の産業に完全に適している。
【0035】
金属化層16は、また、共有結合型の化学結合によって互いに結合された炭素、ケイ素および金属原子を含む成分を含むことがある。
【0036】
結局、好ましい一実施態様では、金属化層16は凝塊の形成によって多孔質体12の外側および内側比表面14を部分的に被覆するだけである。このようにして、多孔質体の孔(特に微小孔)は、そこで活性点がイオン交換、吸着および触媒反応に参加することができるのであるが、金属化層16によって完全に塞がれてはいない。
【0037】
図2に示した装置20は、前記の製品10の製造方法の実施に適している。図面は概略的でしかなく、それらの比率を考慮すべきではない。
【0038】
本装置は、特に弁28を備える移送装置を備える導管26によって平衡ではないプラズマによる第二の堆積反応装置24に接続された第一のプラズマ官能化反応装置22を備える。この移送装置およびこの弁28の制御によって、第一の反応装置22の内部の皿30から第二の反応装置24の内部への移動を可能にする。各反応装置内で、電極32間でプラズマ媒質が生成され、皿30に堆積された多孔質体10はこのプラズマ中に浸される。
【0039】
より正確には、製品10の製造方法によると、第一の官能化段階100中に、多孔質体12は第一の反応装置22のプラズマ中に浸される。この反応装置22は、低圧で、好ましくは5〜500Paの圧力で、不活性ガスのコールドプラズマおよび誘電放電を備える噴出する流動床を備える。使用される不活性ガスは、例えば、アルゴンである。この第一段階100の間、多孔質体12はアルゴンイオンによってイオン衝撃され、その結果として、まず、そこから不純物が除去されるが、しかし、またその外側および内側比表面の増大と定着点の生成によってその活性面が発展する。
【0040】
段階100の官能化パラメータは、下記の通りである。
‐アルゴン流量: 可変であり、使用する媒質の種類による
‐反応装置内の圧力: 5〜500Pa
‐反応装置内の温度: コールドプラズマ媒質での従来の温度
‐プラズマの励起電力: 100〜400W、例えば、400W
‐官能化段階の期間: 5分
【0041】
第2の堆積段階102中に、多孔質体12は例えば弁28が開き、移送装置の制御によって、すなわち、皿30からの導管26への移動によって、反応装置24のプラズマ中に浸される。この反応装置24は、ダイオード型で、電力はほぼ10kWであり、LCR型インピーダンス整合ボックスに接続され、不活性ガスコールドプラズマおよび高周波放電を備える。使用される不活性ガスは、例えば、またアルゴンである。この堆積反応装置24は、加えて、銀およびケイ素源を備える。銀の源は例えば1つまたは複数の銀糸、または、銀の板またはシートであり、そのサイズは反応装置24内に生成するプラズマ媒質を妨害しないように決定されている。ケイ素源は例えば水晶の板または片を含み、サイズおよび形状はやはりプラズマ媒質を妨害しないように選択されている。
【0042】
別の実施例では、ケイ素源が多孔質体12を含むとき、特に砂またはゼオライトを含むとき、それ自体多孔質体12を提供することができる。例えば、多孔質体は活性炭とゼオライトとの組み合わせによって構成されることがある。ゼオライトは、その複雑な構造の観点から、酸素イオン交換によって互いに結合した四面体のAlO
4およびSiO
4の四結合構造の三次元の連なりに基づく結晶質無機ポリマーである。そのような組み合わせについて実施される官能化段階100によって炭素のマクロ孔を薄い層で被って、ゼオライトの所定のミクロ孔に結びつけることができる。炭素のマクロ孔によって、ゼオライトのミクロ孔に容易に接近することができ、そこでは、活性点がイオン交換、吸着および触媒反応に参加することができる。
【0043】
第二段階102中に、銀およびケイ素源は、5000〜7000Kの範囲のプラズマ温度でアルゴンイオンにイオン衝撃され、その効果として、アルゴンプラズマ中で多孔質体12の外側および内側比表面の少なくとも一部分に銀およびケイ素原子の注入を引き起こし、それによって、銀シリサイド炭化物と、同様にまた、炭素、銀およびケイ素を結びつける共有に結合された副産物の形成によって多孔質体に結合された、厚さが最大でナノメートルの金属化層が形成される。この層は、たとえより均一な層を得るために段階102の処理パラメータを調節することができても、多孔質体12の孔を塞がない凝塊の形状をとることが好ましい。この段階102の期間は調節できるが、厚さが最大でナノメートルの凝塊の形状の金属化層を得るためには5分未満であることが好ましい。第二の反応装置24の電極32間の空間は例えば約4cmであり、したがって、プラズマ中に極めて高い電界を設定することができ、そこから、アルゴンイオン流の強さの大きな変調性と多孔質体12の最適な表面の官能化を設定することができる。この第二段階102によって、また、製品10の外側および内側比表面を増大させることによって、その活性表面を発達させることができる。
【0044】
段階102の官能化パラメータは、下記の通りである。
‐アルゴン流量: 約40sccm(cm
3/分)
‐反応装置内の圧力: 0.01Pa
‐反応装置内の励起プラズマの温度:5000〜7000K、特に6000K
‐プラズマの励起電力: 1.5kW
‐高周波数放電の周波数: 13.56MHz
‐自動極性形成電圧: 少なくとも1.2 10
5V/m
‐堆積段階の期間: 3分
‐堆積された厚さ: 5〜10オングストローム
【0045】
これらの条件で、準安定の励起状態
3P
2にある極めて大きな密度のアルゴン原子が得られ、多孔質体12と接触して強い脱励起エネルギーを与える。注入された材料の率は、7.5μg/秒と推算される。
【0046】
得られた製品10の光電子分光計Xによる特徴付けによって、流体の処理においてみられる化学的な汚染除去機構および別の細菌およびウィルスの酸化に都合の良い極めて微量の酸化状態の他の様々なものと同様に、特に銀シリサイド炭化物のエネルギーのピークは、また、炭素、ケイ素および銀に関する他の結合エネルギーも同じく、283eVにあることを明らかにできた。
【0047】
活性炭型材料で、本発明によって製造され、前記のような単一の同じ統合された方法によって官能化された製品10を水処理の場合で試験し、分析した。殺菌処理は良好に確認されるが、また、例えば、DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)のような炭化水素や他の殺菌剤などの化学汚染物質の分解過程の触媒作用も確認されるようである。さらに、炭化物の形態のケイ素の存在は製品の電気的特性を発展させることが観察される。
試験の実験条件
【0048】
第一の厚さのあるフィルタと処理製品10を含む第二のカーボンフィルタを備える濾過装置を研究室に設置して、水に含まれるいくつかのヒトの病原菌を制御する有効性を測定した。装置の作動は、水の補給源としてテムズ川の精製されていない水を使用して、III類の安全モジュール内で実施した。
【0049】
試験に使用した材料は、より正確には下記の要素を備えていた。
‐III類の気密室
‐ワトソン マルロー(Watson Marlow)ポンプ、800シリーズ(登録商標)
‐加圧管
‐テムズ川の水50l
‐2つの無菌の50lのナルジェン(Nalgene)容器(登録商標)
‐厚さ(0.2μm)の第1のフィルタ
‐製品10を含むカーボンフィルタ
‐寒天皿(BCYE、YEA)
【0050】
使用する微生物は、下記の通りであった。
‐シュードモナス ディミニュータ(Pseudomonas diminuta):濾過装置に侵入する公算が最も高い有機体であることからフィルタのテストのために使用されることの多い最小の水生細菌の1つ、
‐大腸菌(Escherichia coli: 糞便汚染の特に重要な指標、
‐緑膿菌(Pseudomonas aerugisa): 免疫不全の患者が感染しやすい細菌、
‐レジオネラ ニューモフィラ 血清群1 ポンティアク(Legionella pneumophila serogroup 1 Pontiac):建物の温水および冷水装置と冷却路で増殖するレジオネラ(Legionella)症の原因である細菌要因、および、
‐クリプトスポリジウム パルバム(Cryptospordium parvum):水工業において最も広く使用される消毒剤である塩素への耐性があるため、大きな問題となる寄生原生動物。
【0051】
一夜の間37℃で培養した適切な寒天培地で微生物源を培養し、次に試験水に分けて添加し、各微生物について1mlにつき10
2〜10
6の植菌を得た。クリプトスポリジウム パルバム(Cryptospordium parvum)は、1mlにつき10
4〜10
5の量を製造するように添加した。
【0052】
試験を行う前に濾過装置を調整するために、少なくとも30分間ループ循環させる。次に、細菌接種材料を流量4.15l/分で導入して、細菌の投入を減少させる濾過装置の有効性を測定した。
【0053】
第1のフィルタの大量生産方式の希釈液を導入して、濾過装置に入り、通過していく細菌の有効数を測定した(1mlにつき単位を形成するコロニー)。
【0054】
濾過水のサンプル(100ml)を濾過によって濃縮させた。
【0055】
レジオネラの分析のため、サンプルをBCYE寒天培地で培養した。シュードモナス ディミニュータ、緑膿菌および大腸菌のサンプルは、適切な寒天培地(YEA)で培養した。
【0056】
各試験の濾過後の水のサンプルを保存し、15日後再培養し、再展開があったかどうかを評価した。
【0057】
濾過後の水のアリコート(10ml)を即座に濾過前の水10mlと混合し、培養可能な有機体の数を5分および15日で即座に測定した。
【0058】
プロピジウムおよび4’−6’−ジアミジノ−2‐フェニリンドールを使用して、生体汚染によって濾過前および濾過後の水のサンプル内のクリプトスポリジウム パルバム卵母細胞の生育力を測定した。
【0059】
水の処理前および後のサンプル中の1ml当たりのクリプトスポリジウム パルバム卵母細胞の数を蛍光で印を付けたクリプトスポリジウムの単クローン抗体汚染によって測定した。存在する卵母細胞の数は、蛍光顕微鏡の使用によって算出した。
【0060】
最後に、装置をホルムアルデヒドで燻蒸消毒し、温水(60℃)を濾過装置の内部に流して、クリプトスポリジウム パルバムを不活性化した。
試験の結果と議論
【0061】
試験した濾過装置は、試験した全ての細菌種の99.9%以上を除去した。大腸菌とレジオネラ菌の数は100%減少し、処理後は細菌が全く見つからなかった。これは、濾過後の水100mlを濃縮して、細菌の存在の分析を行なったとき確認された。テムズ川の水を使用して濾過装置に水を流量4.15l/分で通過させるだけで、水に含まれる病原性の細菌の存在の99.9%以上が減少した。
【0062】
濾過後の水のサンプルを15日間保存し、濾過した水のサンプル中で再展開が全く起きていないことを証明した。
【0063】
濾過後の水に細菌を添加して、残留殺菌効果を測定した。その結果、5分後には10〜20%の減少が得られたことが示されたが、15日後には95%以上の減少が確認された。したがって、その結果により、濾過後の水はこの試験で使用される細菌による再汚染を急速に抑制することはできないことが示される。
【0064】
原生動物門クリプトスポリジウム パルバムは、特に消毒処理に耐性がある。しかしながら、濾過装置を通過したクリプトスポリジウム パルバムの数は、顕著に(95%以上)減少した。
【0065】
さらにこの試験によって製品10を備える濾過装置の汚染除去特性を証明することができるが、また、汚染除去処理の残像という極めて奇妙な特性が明らかになることがわかる。残像とは、現象の原因が消滅したときのその現象の存続として定義されるものである。試験した殺菌処理の場合、処理された流体は、塩素その他などの補足の化学製品を全く添加しないで水の衛生保護を確実にするその汚染除去力を維持する(実験条件によって時には数週間)。この残像の研究および特徴付けによって、濾過装置を通過する水の運動エネルギー、その無機物量などのような実行する処理方法に影響する様々なパラメータを決定することができる。
【0066】
また、濾過装置による処理前および後の水の温度パラメータに注目すると、室温27℃で当初26℃の処理前の水は18℃で濾過装置から出て、一定温度の同じ周囲環境で自由大気に放置したときでさえ数時間後も19℃に一定であり、このことは正のエンタルピー変動を示しているので、触媒反応の吸熱特性が明らかになる。
【0067】
さらに、製品10について静電気現象を観察すると、ソノスコープ(Sonoscope)社によって市販されている「バイオスコープ システム(Bioscope System)」(登録商標)などの装置によって処理流体中の極めて弱い電界力の研究が注目される。原理が電子−バイオ−インピーダンスに基づくこの装置によって、全ての生物活性環境に共通な電気音響界の微妙な変動を検出し、記録することができる。装置は、非音響の音声周波数で拡張性のある電界を調節するために使用される基準信号を生成する。この基準信号は、分析するサンプルに変換器電極を通過して転送される。基準信号は、デジタル化の途中に装置およびサンプル間で設定される。材料が媒質と接触すると、妨害が生じ、その妨害が今度は基準信号を修正する。
【0068】
この装置によって化学分析では検出できない微妙な状態変動を明らかにすることができる。したがって、処理水の品質の変化および場合によっては汚染を含むパラメータの変動を極めて急速に視覚化することができる。
【0069】
図3は、ダイアグラムを使用して、製品10によって処理した水(左のダイアグラム)および処理していないこの同じ水(右のダイアグラム)間で同じ励起周波数(281.25Hz)および同じ採取流量で、エネルギー準位の明らかな差異を図示した。このダイアグラムは、励起波に応答して対応する媒質(左の処理水および右の非処理水)によって送られる波動の、0〜4000Hzのスペクトルの時間の経過による展開を示している。
【0070】
また、製品10の電磁気、したがって、エネルギー効果は、次の
図4のスペクトルが証明しているように処理される流体が製品に直接接触していないときでさえ感じられる。この図では、製品10によって処理水(左のダイアグラム)と、処理していないこの同じ水(右のダイアグラム)だが、製品10を備える濾過装置の近傍で採取した水との間のエネルギー差は、明らかにそれほど大きくない。
【0071】
したがって、観察された静電気現象が実証され、流体が製品10の近傍にあるとき、直接接触していなくても、試験した濾過装置が処理する流体にエネルギー増強作用を有することを示すことができる。これらの電気特性は、金属シリサイド炭化物の存在に由来する。
【0072】
このエネルギー力は、様々な割合の水を細胞培養培地に導入するとき、および、タンパク質の吸収を測定するとき、細胞レベルに現れる。実際、非処理水と製品10を使用して処理した同じ水の効果の比較実験を培養中の線維芽細胞(培養媒中で20〜50%)について実施した。測定は、処理48時間後に表面に浮かぶもので行なった。その結果、非処理水は細胞が死なずに10%に到達することができないが、製品10を使用して処理した水を導入すると、培養媒の割合の50%以上に上昇することができる。水の割合の増加は、栄養媒を貧しくするので、したがって、媒のバイオ自由使用は処理水でかなり改良されることが明らかである。それは、また、処理水での細胞のより良好な成長の確認によって示されている。