(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信技術の普及に伴い、2.4GHzの周波数帯の他に、5GHzの周波数帯の使用が認められた。日本では、2005年には、5.25〜5.35GHzの周波数帯(W53として、チャンネル52/56/60/64の4チャンネル)が屋内にて使用可能となり、2007年には、5.47〜5.725GHzの周波数帯(W56として、チャンネル100/104/・・/140の11チャンネル)が、屋外も含めて使用可能となった。
【0003】
W53、W56などの周波数帯は、従来から、船舶用、航空機用、軍用などの移動レーダーや、気象用の固定レーダーなどの各種レーダーの周波数帯として用いられており、無線通信装置との共用により、電波干渉が生じる可能性があった。電波干渉を防止または抑制するために、無線通信装置には、DFS(Dynamic Frequency Selection: 動的電波周波数選択)機能を備えることにより、干渉の回避が義務付けられている。
【0004】
DFS機能では、チャンネルの使用に先立って、使用予定のチャンネルを1分間監視し、各種レーダーの電波を検出しないことを確認してから使用予定チャンネルの使用を開始するCAC(Channel Availability Check)や、チャンネルの使用中、常時レーダーの電波をモニタリングするISM(In Service Monitoring)が実行される。また、DFS機能では、使用中のチャンネルにおいてレーダーの電波が検出された場合には、10秒以内にそのチャンネルの使用を停止するといった回避動作が実行される。そして、レーダーの電波が検出されたチャンネルは、検出後30分間、使用が禁止される。
【0005】
このようなDFS機能の実施は、この周波数帯においてはレーダーの使用が優先されることを意味しており、各種レーダーの電波が検出された場合には、無線LANを介するデータのやり取りが中断されることがあった。無線LANで使用中のチャンネルの周波数帯において、各種レーダーの電波が検出されると、使用中のチャンネルは使用できなくなり、新たに使用しようとするチャンネルについては、そのチャンネルの周波数帯でレーダーが運用されていないことを確認する期間(CACの実行中)は、通信できないからである。この場合、新たに使用しようとするチャンネルの周波数帯に各種レーダーの電波が存在しなくても、CACを実行中の約1分間、無線LANによる通信は中断される。
【0006】
ところで、近年では、隣接する2つのチャンネルの帯域を使用する技術(例えば、HT40による通信モード、帯域幅:40MHz)が知られている。このような技術としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された技術では、隣接する2つのチャンネルを使用する通信モード(HT40)による通信中に、一方のチャンネルにおいてレーダーの電波が検出されると、レーダーの電波が検出されなかった他方のチャンネルを単独で使用する通信モード(HT20)に遷移する。その後、現在使用中のチャンネルと、使用を停止したチャンネルとを使用する通信モード(HT40)に再び遷移する。しかし、特許文献1に記載された技術では、レーダーの電波が検出されてから30分間は、隣接する2つのチャンネルを使用する通信モード(HT40)に復帰できないという課題があった。
【0009】
また、HT40の通信に使用することのできる2つのチャンネルの組み合わせ(ペア)は、IEEE802.
11の規格によって定められている。しかし、従来の無線通信装置では、チャンネルを遷移させる際に、HT40の通信に使用することのできる2つのチャンネルの組み合わせについては、あまり考慮されていなかった。また、HT40の通信中にレーダーの電波が検出された場合に、使用するチャンネルをどのように遷移させれば速やかにHT40の通信に復帰できるのかについて、工夫が十分になされてこなかった。特に、コスト低減のためにレーダーの電波を監視するための無線モジュールを1つしか備えておらず、レーダーの電波を監視することのできる帯域幅が隣接する2チャンネル分(40MHz)である無線通信装置において、チャンネルをどのように遷移させるのかについての工夫が十分になされてこなかった。そのほか、従来の無線通信装置においては、その小型化や、低コスト化、省資源化、製造の容易化、使い勝手の向上等が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0011】
(1)本発明の一形態によれば、無線通信装置が提供される。この無線通信装置は、単独のチャンネルを使用する第1の通信モードと、隣接する2つのチャンネルを使用する第2の通信モードとを有する通信部と;前記第1の通信モードによる通信に使用されているチャンネルに隣接するチャンネルにおいて、所定時間、所定の電波の検出処理を実行する検出処理部とを備え;前記通信部は、第1のチャンネルと前記第1のチャンネルに隣接する第2のチャンネルとを使用する前記第2の通信モードによる通信中に、前記第1のチャンネルにおいて前記所定の電波が検出された場合には、前記第1のチャンネルと前記第2のチャンネルとを使用する前記第2の通信モードから、前記第2のチャンネルを単独で使用する前記第1の通信モードに遷移し;前記検出処理部は、前記第1のチャンネルとは逆方向の周波数帯として前記第2のチャンネルに隣接する第3のチャンネルにおいて、前記所定時間、前記所定の電波の検出処理を実行し;前記通信部は、前記第3のチャンネルにおいて、前記所定時間、前記所定の電波が検出されない場合には、前記第2のチャンネルを単独で使用する前記第1の通信モードから、前記第3のチャンネルを単独で使用する前記第1の通信モードに遷移する。この形態の無線通信装置によれば、第2のチャンネルを使用する第1の通信モードによる通信中に、第3のチャンネルにおける所定の電波の検出処理を完了することができるので、第2のチャンネルを使用する第1の通信モードから、第3のチャンネルを使用する第1の通信モードに速やかに遷移することができる。なお、第2のチャンネルは、規格上、第2の通信モードにおいて第1のチャンネルと共に使用することのできるチャンネルである。第3のチャンネルは、規格上、第2の通信モードにおいて第2のチャンネルとは共に使用することのできないチャンネルである。また、この形態によれば、レーダーの電波を監視することのできる帯域幅が2チャンネル分である無線通信装置であっても、第2のチャンネルを使用する第1の通信モードによる通信中に、第3のチャンネルにおける所定の電波の検出処理を完了することができるので、第2のチャンネルを使用する第1の通信モードから、第3のチャンネルを使用する第1の通信モードに速やかに遷移することができる。
【0012】
(2)上記形態の無線通信装置において、前記検出処理部は、前記第3のチャンネルを単独で使用する前記第1の通信モードによる通信中に、前記第2のチャンネルとは逆方向の周波数帯として前記第3のチャンネルに隣接する第4のチャンネルにおいて、前記所定時間、前記所定の電波の検出処理を実行し;前記通信部は、前記第4のチャンネルにおいて、前記所定時間、前記所定の電波が検出されない場合には、前記第3のチャンネルを単独で使用する前記第1の通信モードから、前記第3のチャンネルと前記第4のチャンネルとを使用する前記第2の通信モードに遷移してもよい。この形態の無線通信装置によれば、第3のチャンネルを単独で使用する前記第1の通信モードによる通信中に、第4のチャンネルにおける所定の電波の検出処理を完了することができるので、第1の通信モードから第2の通信モードに速やかに遷移することができる。なお、第4のチャンネルは、規格上、第2の通信モードにおいて第3のチャンネルと共に使用することのできるチャンネルである。また、この形態によれば、レーダーの電波を監視することのできる帯域幅が2チャンネル分である無線通信装置であっても、第3のチャンネルを単独で使用する前記第1の通信モードによる通信中に、第4のチャンネルにおける所定の電波の検出処理を完了することができるので、第1の通信モードから第2の通信モードに速やかに遷移することができる。
【0013】
(3)上記形態の無線通信装置において、前記チャンネルは、5GHz帯で規定された周波数帯W53およびW56から選択されたチャンネルであり;前記所定の電波は、レーダーの電波であってもよい。この形態の無線通信装置によれば、W53(帯域:5250−5350MHz)、W56(帯域:5470−5725MHz)の通信規格を遵守することができる。
【0014】
(4)本発明の他の形態によれば、単独のチャンネルを使用する第1の通信モードと、隣接する2つのチャンネルを使用する第2の通信モードとを有する無線通信装置において無線通信を行なう方法が提供される。この無線通信を行なう方法は、第1のチャンネルと前記第1のチャンネルに隣接する第2のチャンネルとを使用する前記第2の通信モードによる通信中に、前記第1のチャンネルにおいて前記所定の電波が検出された場合には、前記第1のチャンネルと前記第2のチャンネルとを使用する前記第2の通信モードから、前記第2のチャンネルを単独で使用する前記第1の通信モードに遷移する工程と;前記第1のチャンネルとは逆方向の周波数帯として前記第2のチャンネルに隣接する第3のチャンネルにおいて、前記所定時間、前記所定の電波の検出処理を実行する工程と;前記第3のチャンネルにおいて、前記所定時間、前記所定の電波が検出されない場合には、前記第2のチャンネルを単独で使用する前記第1の通信モードから、前記第3のチャンネルを単独で使用する前記第1の通信モードに遷移する工程とを備える。
【0015】
上述した本発明の各形態の有する複数の構成要素はすべてが必須のものではなく、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、適宜、前記複数の構成要素の一部の構成要素について、その変更、削除、新たな他の構成要素との差し替え、限定内容の一部削除を行うことが可能である。また、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、上述した本発明の一形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部を上述した本発明の他の形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部と組み合わせて、本発明の独立した一形態とすることも可能である。
【0016】
例えば、本発明の一形態は、通信部と、検出処理部との2つの要素の内の一つ以上の要素を備えた装置として実現可能である。すなわち、この装置は、通信部を有していてもよく、有していなくてもよい。また、装置は、検出処理部を有していてもよく、有していなくてもよい。通信部は、例えば、単独のチャンネルを使用する第1の通信モードと、隣接する2つのチャンネルを使用する第2の通信モードとを有するように構成されてもよい。検出処理部は、例えば、前記第1の通信モードによる通信に使用されているチャンネルに隣接するチャンネルにおいて、所定時間、所定の電波の検出処理を実行するように構成されてもよい。前記通信部は、例えば、第1のチャンネルと前記第1のチャンネルに隣接する第2のチャンネルとを使用する前記第2の通信モードによる通信中に、前記第1のチャンネルにおいて前記所定の電波が検出された場合には、前記第1のチャンネルと前記第2のチャンネルとを使用する前記第2の通信モードから、前記第2のチャンネルを単独で使用する前記第1の通信モードに遷移してもよい。前記検出処理部は、例えば、前記第1のチャンネルとは逆方向の周波数帯として前記第2のチャンネルに隣接する第3のチャンネルにおいて、前記所定時間、前記所定の電波の検出処理を実行してもよい。前記通信部は、例えば、前記第3のチャンネルにおいて、前記所定時間、前記所定の電波が検出されない場合には、前記第2のチャンネルを単独で使用する前記第1の通信モードから、前記第3のチャンネルを単独で使用する前記第1の通信モードに遷移してもよい。こうした装置は、例えば無線通信装置として実現できるが、無線通信装置以外の他の装置としても実現可能である。このような形態によれば、装置の小型化や、低コスト化、省資源化、製造の容易化、使い勝手の向上等の種々の課題の少なくとも1つを解決することができる。前述した無線通信装置の各形態の技術的特徴の一部又は全部は、いずれもこの装置に適用することが可能である。
【0017】
本発明は、装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、無線通信を行なう方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を実施形態に基づいて以下の順序で説明する。
A.実施形態:
B.変形例:
【0020】
A.実施形態:
図1は、本発明の一実施形態としての無線通信装置を用いたネットワークシステムの概略構成を示す説明図である。ネットワークシステム100は、無線通信装置200と、3台のクライアント装置300、400、500とを備えている。
【0021】
無線通信装置200は、IEEE802.11に準拠した無線LANアクセスポイントであり、有線ケーブルを介してインターネットINTに接続されている。また、無線通信装置200は、OSI参照モデル(OSI reference model)における第3層のルータとしても機能し、クライアント装置300、400、500との間の無線通信および有線通信を中継する。
【0022】
クライアント装置300は、IEEE802.3に準拠した有線通信インタフェースを備えるパーソナルコンピュータである。クライアント装置400は、IEEE802.11に準拠した無線通信インタフェースを備えるパーソナルコンピュータである。クライアント装置500は、IEEE802.11に準拠した無線通信インタフェースを備える携帯端末である。
図1に示す例では、クライアント装置300は無線通信装置200と有線によって接続され、クライアント装置400、500は無線通信装置200と無線によって接続されている。
【0023】
図2は、無線通信装置200の内部構成を示す説明図である。
図2では、本実施形態の無線通信装置200の説明に必要のない構成については図示を省略している。無線通信装置200は、無線通信部210と、有線通信部220と、CPU230と、RAM240と、フラッシュROM250とを備え、それぞれがバスにより相互に接続されている。また、無線通信装置200は、無線通信部210に接続されたアンテナ260を備えている。
【0024】
無線通信部210は、通信部211と、検出処理部212とを備えている。通信部211は、アンテナ260を介して受信した電波の復調とデータの生成、および、アンテナを介して送信する電波の生成と変調を行う機能を有する。本実施形態では、通信部211は、2.4GHz帯のチャンネルを使用する通信と、5GHz帯のチャンネルを使用する通信とを行なうことができる。5GHz帯のチャンネルの帯域幅は、20MHzである。
【0025】
また、本実施形態では、通信部211は、HT20(HT:High-Throughput)の通信モードと、HT40の通信モードとを有している。HT20の通信モードは、単独のチャンネルを使用する通信モードであり、使用する電波の帯域幅は20MHzである。HT40の通信モードは、隣接する2つのチャンネルを使用する通信モードであり、使用する電波の帯域幅は40MHzである。なお、「隣接する2つのチャンネルを使用する」とは、隣接する2つのチャンネルの周波数帯域を、1つの広い周波数帯域として使用することを意味する。また、「チャンネル」とは、無線通信装置200が使用する電波の周波数帯域を意味する。
【0026】
検出処理部212は、レーダーの電波を検出する処理を行なう。具体的には、検出処理部212は、チャンネルの使用中、常時、レーダーの電波を監視するISM(In Service Monitoring)と、チャンネルの使用に先立って、1分間、レーダーの電波が検出されないことを確認するCAC(Channel Availability Check)とを実行する。なお、レーダーには、固定レーダーと移動レーダーとが含まれる。固定レーダーには、気象用レーダー、空港用レーダー等が含まれ、移動レーダーには、軍用レーダー、船舶用レーダー、航空機用レーダー等が含まれる。もとより、検出処理部212は、固定レーダーと移動レーダーとのいずれか一方のみを検出する構成であってもよい。
【0027】
なお、本実施形態では、検出処理部212は、40MHzの帯域幅でレーダーの電波を監視することができるのみである。5GHz帯におけるチャンネルの帯域幅は20MHzであるので、本実施形態における検出処理部212は、隣接する2つのチャンネルに対して同時にISM(またはCAC)を実行できるが、離れた2つのチャンネルに対しては同時にISM(またはCAC)を実行できない。本実施形態では、無線通信装置200が、ハードウェア的にこのような制限を有していることを前提として説明する。
【0028】
有線通信部220は、受信した信号の波形を整える処理や、受信した信号からMACフレームを取り出す処理等を実行する。有線通信部220は、WAN側インタフェース221と、LAN側インタフェース222とを備える。WAN側インタフェース221は、インターネットINT側の回線に接続される。LAN側インタフェース222は、クライアント装置300に接続される。
【0029】
CPU230は、フラッシュROM250に格納されているコンピュータプログラムをRAM240に展開して実行することにより、無線通信装置200を制御する。
【0030】
RAM240には、ISMやCACに関する情報が記憶される。具体的には、RAM240には、ISMやCACによってレーダーが検出されたチャンネルと、そのチャンネルにおいてレーダーが検出された時刻とが記憶される。以下では、ISMやCACによってレーダーが検出されたチャンネルと、そのチャンネルにおいてレーダーが検出された日時とを含む情報を、「チャンネル情報」とも呼ぶ。
【0031】
図3は、無線通信装置200が5GHz帯のチャンネルを使用する場合における動作を示す説明図である。
図3には、5GHz帯のチャンネルとして、W56に属する周波数帯のチャンネルが示されている。W56に属する周波数帯のチャンネル100ch〜140chのうち、HT40として使用可能なチャンネルの組み合わせ(ペア)は、IEEE802.
11の規格によって、以下のように定められている。
100ch+104ch
108ch+112ch
116ch+120ch
124ch+128ch
132ch+136ch
なお、HT40として使用可能な2つのチャンネルのうち、一方のチャンネルは「制御チャンネル(control channel)」または「プライマリ・チャンネル(primary channel)」と呼ばれ、HT20による通信やBSS(Basic Service Set)管理のための制御情報の交換に使用される。他方のチャンネルは「拡張チャンネル(extension channel)」または「セカンダリ・チャンネル(secondary channel)」と呼ばれ、HT40による通信時に帯域を拡張するためのチャンネルとして使用される。
【0032】
図3(A)に示すように、無線通信装置200の通信部211は、116chと、116chに隣接する120chとを使用するHT40の通信モードによって通信しているものとする。以下では、検出処理部212がISMを実行し、116chにおいてレーダーの電波が検出された場合について説明する。
【0033】
図3(B)に示すように、通信部211は、116chにおいてレーダーの電波が検出された場合には、116chの使用を停止し、116chと120chとを使用するHT40の通信モードから、120chを単独で使用するHT20の通信モードに遷移する。検出処理部212は、116chとは逆方向の周波数帯として120chに隣接する124chにおいて、1分間、レーダーの電波の検出処理(CAC)を実行する。
【0034】
図3(C)に示すように、通信部211は、124chにおいて、1分間、レーダーの電波が検出されない場合には、120chを単独で使用するHT20の通信モードから、124chを単独で使用するHT20の通信モードに遷移する。ここで、通信部211が、120chと124chとを使用するHT40の通信モードに遷移しない理由は、上述したように、120chと124chは、IEEE802.
11の規格によって、HT40の通信モードとして使用可能なペアのチャンネルとして定められていないためである。
【0035】
検出処理部212は、その後、124chを単独で使用するHT20の通信中に、遷移元である120chとは逆方向の周波数帯として124chに隣接する128chにおいて、1分間、レーダーの電波の検出処理(CAC)を実行する。
【0036】
図3(D)に示すように、通信部211は、128chにおいて、1分間、レーダーの電波が検出されない場合には、124chを単独で使用するHT20の通信モードから、124chと128chとを使用するHT40の通信モードに遷移する。ここで、通信部211が、124chと128chとを使用するHT40の通信モードに遷移することができる理由は、上述したように、124chと128chは、IEEE802.
11の規格によって、HT40の通信モードとして使用可能なペアのチャンネルとして定めされているためである。
【0037】
以上の動作によれば、HT40の通信モードによる通信中にレーダーの電波が検出され、HT40の通信モードからHT20の通信モードに遷移した場合であっても、HT20の通信モードからHT40の通信モードに早期に復帰することができる。特に、レーダーの電波を監視することのできる帯域幅が、隣接する2つのチャンネル分(40MHz)である無線通信装置であっても、HT20の通信モード中に、使用中のチャンネルに隣接するチャンネルにおいてCACを実行することができるので、CACの実行中の1分間、通信が中断されるといった事態を回避することができる。
【0038】
図4および
図5は、無線通信装置200における通信モード及びチャンネルを変更する動作の詳細を示すフローチャートである。ステップS100(
図4)では、通信部211は、隣接する2つのチャンネルを使用するHT40の通信モードによる通信を開始する。なお、通信部211による通信開始に先立って、検出処理部212は、通信に使用する2つのチャンネルを対象としてCACを実行しており、レーダーの電波が1分間検出されなかったことが確認されている。
【0039】
ステップS102では、検出処理部212は、ISMを実行し、HT40の通信モードに使用されているチャンネルにおいてレーダーの電波が検出されたか否かを判定する。
【0040】
レーダーの電波が検出された場合には(ステップS102:Yes)、検出処理部212は、レーダーの電波が検出されたチャンネルと、レーダーの電波が検出された日時とに関する情報(チャンネル情報)をRAM240に記録するとともに(ステップS103)、通信部211は、レーダーの電波が検出されたチャンネルの使用を停止して、レーダーの電波が検出されていないもう一方のチャンネルのみを使用したHT20による通信モードに遷移する(ステップS104)。
図3(A)〜(D)に示す例では、通信部211は、116chの使用を停止して、120chのみを使用したHT20による通信モードに遷移する。
【0041】
一方、レーダーの電波が検出されなかった場合には(ステップS102:No)、通信部211は、HT40の通信モードによる通信を継続し、検出処理部212は、ステップS102の処理(ISM)を繰り返し実行する。
【0042】
ステップS106では、検出処理部212は、HT20の通信モードに使用されているチャンネルに隣接するチャンネルが、レーダーの電波が検出されたチャンネル以外に存在するか否かを判定する。
【0043】
具体的には、例えば、100chと104chとを使用したHT40の通信モードによる通信中に、104chにおいてレーダーの電波が検出された場合には、100chに隣接するチャンネルは、レーダーの電波が検出された104ch以外に存在しない。一方、
図3(A)に示すように、116chと120chとを使用したHT40の通信モードによる通信中に、116chにおいてレーダーの電波が検出された場合には、120chに隣接するチャンネルとして、レーダーの電波が検出された116ch以外に、124chが存在している。以下では、HT20の通信モードに使用されているチャンネルに隣接するチャンネルであって、レーダーの電波が検出されたチャンネル以外のチャンネルを、単に「隣接チャンネル」とも呼ぶ。
図3(A)〜(D)に示す例では、HT20の通信モードに使用されているチャンネルは、120chに相当し、隣接チャンネルは、124chに相当する。
【0044】
隣接チャンネルが存在する場合には(ステップS106:Yes)、後述するステップS108の処理が実行される。一方、隣接チャンネルが存在しない場合には(ステップS106:No)、
図5に示される処理が実行される。
【0045】
ステップS108では、検出処理部212は、RAM240に格納されたチャンネル情報を参照することによって、隣接チャンネルにおいてレーダーの電波が検出されたことがあるか否かを判定する。
【0046】
隣接チャンネルにおいてレーダーの電波が検出されたことがない場合には(ステップS108:No)、検出処理部212は、隣接チャンネルにおいて、1分間、レーダーの電波の検出処理(CAC)を実行する(ステップS112(
図5))。
【0047】
一方、隣接チャンネルにおいてレーダーの電波が検出されたことがある場合には(ステップS108:Yes)、検出処理部212は、RAM240に格納されたチャンネル情報を参照することによって、レーダーの電波が検出されてから30分以上経過しているか否かを判定する(ステップS110)。
【0048】
レーダーの電波が検出されてから30分以上経過している場合には(ステップS110:Yes)、検出処理部212は、隣接チャンネルにおいて、1分間、レーダーの電波の検出処理(CAC)を実行する(ステップS112(
図5))。
【0049】
一方、レーダーの電波が検出されてから30分以上経過していない場合には(ステップS110:No)、検出処理部212は、レーダーの電波が検出されてから30分以上経過するまで、ステップS110の処理を繰り返し実行する。
【0050】
ステップS114(
図5)では、検出処理部212は、ステップS112のCACにおいて、レーダーの電波が検出されたか否かを判定する。
【0051】
レーダーの電波が検出されなかった場合には(ステップS114:No)、通信部211は、隣接チャンネルを使用したHT20の通信モードに遷移する(ステップS116)。ここで、通信部211が、HT20の通信モードにおいて使用しているチャンネルと隣接チャンネルとを使用したHT40の通信モードに遷移せずに、隣接チャンネルのみを使用したHT20の通信モードに遷移する理由は、HT20の通信モードにおいて使用しているチャンネルと隣接チャンネルは、HT40の通信モードとして使用可能なペアのチャンネルとして定めされていないからである。
図3(A)〜(D)に示す例では、HT20の通信モードにおいて使用しているチャンネルは、120chに相当し、隣接チャンネルは、124chに相当する。
【0052】
一方、レーダーの電波が検出された場合には(ステップS114:Yes)、検出処理部212は、レーダーの電波が検出されてから30分以上経過しているか否かを判定するステップS110の処理を実行する。
【0053】
ステップS118では、検出処理部212は、隣接チャンネルのペアとなるチャンネルにおいて、1分間、レーダーの電波の検出処理(CAC)を実行する。なお、隣接チャンネルのペアとなるチャンネルは、HT40による通信の際に、隣接チャンネル(制御チャンネル)の拡張チャンネルとして使用されるチャンネルである。
図3(A)〜(D)に示す例では、隣接チャンネルは、124chに相当し、隣接チャンネルのペアとなるチャンネルは、128chに相当する。
【0054】
ステップS120では、検出処理部212は、ステップS118におけるCACにおいて、レーダーの電波が検出されたか否かを判定する。
【0055】
レーダーの電波が検出されなかった場合には(ステップS120:No)、通信部211は、隣接チャンネル(制御チャンネル)と、隣接チャンネルのペアとなるチャンネル(拡張チャンネル)とを使用したHT40の通信モードに遷移する(ステップS122)。
【0056】
一方、レーダーの電波が検出された場合には(ステップS120:Yes)、検出処理部212は、RAM240に格納されたチャンネル情報を参照することによって、レーダーの電波が検出されてから30分以上経過しているか否かを判定する(ステップS124)。
【0057】
レーダーの電波が検出されてから30分以上経過している場合には(ステップS124:Yes)、検出処理部212は、隣接チャンネルのペアとなるチャンネルにおいて、1分間、レーダーの電波の検出処理(CAC)を実行する(ステップS118)。
【0058】
一方、レーダーの電波が検出されてから30分以上経過していない場合には(ステップS124:No)、検出処理部212は、レーダーの電波が検出されてから30分以上経過するまで、ステップS124の処理を繰り返し実行する。
【0059】
図6は、レーダーの電波が検出されたチャンネル以外に隣接チャンネルが存在しなかった場合(ステップS106:No)における処理の流れを示すフローチャートである。ステップS140では、検出処理部212は、RAM240に格納されたチャンネル情報を参照することによって、ステップS102(
図4)においてレーダーの電波が検出されてから30分以上経過しているか否かを判定する。
【0060】
レーダーの電波が検出されてから30分以上経過している場合には(ステップS140:Yes)、検出処理部212は、使用を停止したチャンネルにおいて、1分間、レーダーの電波の検出処理(CAC)を実行する(ステップS142)。
【0061】
一方、レーダーの電波が検出されてから30分以上経過していない場合には(ステップS140:No)、検出処理部212は、レーダーの電波が検出されてから30分以上経過するまで、ステップS140の処理を繰り返し実行する。
【0062】
ステップS144では、検出処理部212は、ステップS142のCACにおいて、レーダーの電波が検出されたか否かを判定する。
【0063】
レーダーの電波が検出されなかった場合には(ステップS144:No)、通信部211は、使用を停止したチャンネルを再び使用することによって、HT40の通信モードに遷移する(ステップS146)。
【0064】
一方、レーダーの電波が検出された場合には(ステップS144:Yes)、検出処理部212は、レーダーの電波が検出されてから30分以上経過しているか否かを判定するステップS140の処理を実行する。
【0065】
このように、本実施形態では、レーダーの電波が検出された場合であっても、HT20の通信モードから、HT40の通信モードに早期に復帰することができる。すなわち、本実施形態では、レーダーの電波が検出されたチャンネルとは異なるチャンネルを使用したHT40の通信モードに遷移するので、レーダーの電波が検出されてから30分間、HT40の通信モードに復帰できないといった事態を回避することができる。さらに、本実施形態によれば、レーダーの電波を監視することのできる帯域幅が、隣接する2つのチャンネル分(40MHz)である無線通信装置であっても、HT20の通信モード中に、使用中のチャンネルに隣接するチャンネルにおいてCACを実行することができるので、CACの実行中に通信が中断されるといった事態を回避することができる。
【0066】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施形態や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0067】
B1.変形例1:
上記実施形態では、ステップS106において、隣接チャンネル(HT20の通信モードに使用されているチャンネルに隣接するチャンネルであって、レーダーの電波が検出されたチャンネル以外のチャンネル)が存在しない場合には(ステップS106:No)、
図6に示される処理が実行される。ただし、ステップS106において、隣接チャンネルが存在しない場合に、検出処理部212は、通常のDFS処理を実行してもよい。例えば、検出処理部212は、使用していた2つのチャンネルとは別の隣接する2つのチャンネルに対してCACを実行し、当該隣接する2つのチャンネルにおいてレーダーの電波が検出されなければ、通信部211は、当該隣接する2つのチャンネルを使用するHT40の通信モードに遷移してもよい。この場合、検出処理部212は、W56の中央付近の周波数帯に位置する隣接する2つのチャンネル(例えば、116ch+120ch)を使用するHT40の通信モードに遷移することが好ましい。このようにすれば、隣接チャンネルが存在しないといった状況が回避されやすくなる。
【0068】
B2.変形例2:
上記実施形態において、通信部211は、120chを単独で使用するHT20の通信モードから、124chを単独で使用するHT20の通信モードに遷移する際に、通信中のクライアント装置400、500に対して、遷移後に使用するチャンネル(124ch)を通知してもよい。また、上記実施形態では、チャンネル情報は、RAM240に格納されている。ただし、チャンネル情報は、フラッシュROM250に格納されてもよい。
【0069】
B3.変形例3:
上記実施形態の
図3では、W56の周波数帯を例に挙げて説明したが、本発明は、W53の周波数帯に対しても適用することができる。また、上記実施形態では、日本において使用が許可されているチャンネルを例に挙げて説明したが、日本以外の国において本発明を実施する場合には、本発明を実施する国において使用が許可されているチャンネルを使用すればよい。
【0070】
B4.変形例4:
上記実施形態においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【0071】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。