(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大、縮小、あるいは誇張して表示している。また、説明に必要な構成要素以外は図示を省略する場合がある。
【0022】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0023】
(第1の実施形態)
<電気光学装置>
ここでは、電気光学装置として、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor:TFT)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば、後述する投射型表示装置(プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
【0024】
まず、第1の実施形態に係る電気光学装置としての液晶装置について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る液晶装置の構成を示す概略図である。詳しくは、
図1(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図であり、
図1(b)は
図1(a)のH−H’線に沿った概略断面図である。また、
図2は、第1の実施形態に係る液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0025】
図1(a)および(b)に示すように、第1の実施形態に係る液晶装置1は、電気光学装置用基板としての素子基板10と、素子基板10に対向配置された対向基板20と、素子基板10と対向基板20との間に配置された電気光学物質層としての液晶層40とを備えている。素子基板10および対向基板20には、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料からなる基板が用いられている。
【0026】
素子基板10は対向基板20よりも一回り大きく、両基板は、額縁状に配置されたシール材42を介して接合されている。液晶層40は、素子基板10と対向基板20とシール材42とによって囲まれた空間に封入された、電気光学物質としての正または負の誘電異方性を有する液晶で構成されている。
【0027】
シール材42は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤からなる。シール材42には、素子基板10と対向基板20との間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。額縁状に配置されたシール材42の内側には、対向基板20に設けられた額縁状の遮光層21が配置されている。遮光層21は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなる。
【0028】
遮光層21の内側は、複数の画素Pが配列された表示領域Eとなっている。表示領域Eは、液晶装置1において、実質的に表示に寄与する領域である。なお、
図1(a),(b)では図示を省略したが、表示領域E内においても、複数の画素Pを平面的に区画する遮光部が、例えば格子状に設けられている。
【0029】
素子基板10の1辺部のシール材42の外側には、1辺部に沿ってデータ線駆動回路51および複数の外部接続端子54が設けられている。また、その1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材42の内側には、検査回路53が設けられている。さらに、これらの2辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材42の内側には、走査線駆動回路52が設けられている。
【0030】
検査回路53が設けられた1辺部のシール材42の内側には、2つの走査線駆動回路52を繋ぐ複数の配線55が設けられている。これらデータ線駆動回路51、走査線駆動回路52に繋がる配線は、複数の外部接続端子54に接続されている。また、対向基板20の角部には、素子基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための上下導通部56が設けられている。なお、検査回路53の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路51と表示領域Eとの間のシール材42の内側に沿った位置に設けてもよい。
【0031】
以下の説明では、データ線駆動回路51が設けられた1辺部に沿った方向を第1方向としてのX方向とし、この1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向を第2方向としてのY方向とする。
図1(a)のH−H’線の方向は、Y方向に沿った方向である。また、X方向およびY方向と直交し
図1(b)における上方に向かう方向をZ方向とする。なお、本明細書では、液晶装置1の対向基板20の表面の法線方向(Z方向)から見ることを「平面視」という。
【0032】
図1(b)に示すように、素子基板10の液晶層40側の面である上面10aの側には、画素P毎に設けられたスイッチング素子としてのTFT30(
図2参照)と、光透過性を有する画素電極15と、信号配線(図示しない)と、画素電極15を覆う配向膜18とが設けられている。画素電極15は、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの光透過性を有する導電膜からなる。
【0033】
なお、本実施形態の素子基板10には、TFT30の半導体層30a(
図4参照)に光が入射してスイッチング動作が不安定になることを防ぐ遮光構造が採用されている。遮光構造については後述する。
【0034】
対向基板20の液晶層40側には、遮光層21と、層間層22と、共通電極23と、共通電極23を覆う配向膜24とが設けられている。
【0035】
遮光層21は、
図1(a)および(b)に示すように、平面的に走査線駆動回路52、複数の配線55や検査回路53と重なる位置に額縁状に設けられている。遮光層21は、対向基板20側から入射する光を遮蔽して、これらの駆動回路を含む周辺回路の光による誤動作を防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0036】
図1(b)に示す層間層22は、遮光層21を覆うように形成されている。層間層22は、例えば酸化シリコン(SiO
2)などの絶縁膜で形成され、光透過性を有している。層間層22は、遮光層21などに起因する凹凸を緩和し、共通電極23が形成される液晶層40側の面が平坦となるように設けられている。層間層22の形成方法としては、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
【0037】
共通電極23は、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの光透過性を有する導電膜からなり、層間層22を覆うとともに、
図1(a)に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部56により素子基板10側の配線に電気的に接続されている。
【0038】
配向膜18および配向膜24は、液晶装置1の光学設計に基づいて選定される。配向膜18および配向膜24は、例えば、ポリイミドなどの有機材料を成膜して、その表面をラビングすることにより、液晶分子に対して略水平配向処理が施されたものや、SiOx(酸化シリコン)などの無機材料を気相成長法を用いて成膜して、液晶分子に対して略垂直配向させたものが挙げられる。
【0039】
液晶層40を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。例えば、ノーマリーホワイトモードの場合、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少する。ノーマリーブラックモードの場合、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加し、全体として液晶装置1からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が射出される。
【0040】
図2に示すように、表示領域Eには、走査線3aとデータ線6aとが互いに絶縁され交差するように形成されている。走査線3aが延在する方向が第1方向としてのX方向であり、データ線6aが延在する方向が第2方向としてのY方向である。画素Pは、走査線3aとデータ線6aとの交差に対応して設けられている。画素Pのそれぞれには、画素電極15と、スイッチング素子としてのTFT30(Thin Film Transistor:薄膜トランジスター)とが設けられている。
【0041】
TFT30のソース電極31(
図4参照)は、データ線6aに電気的に接続されている。データ線6aは、データ線駆動回路51(
図1参照)に接続されており、データ線駆動回路51から供給される画像信号(データ信号)S1、S2、…、Snを画素Pに供給する。データ線駆動回路51からデータ線6aに供給される画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣接する複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。
【0042】
TFT30のゲート電極30g(
図4参照)は、走査線3aに電気的に接続されている。走査線3aは、走査線駆動回路52(
図1参照)に接続されており、走査線駆動回路52から供給される走査信号G1、G2、…、Gmを各画素Pに供給する。走査線駆動回路52は、走査線3aに対して、走査信号G1、G2、…、Gmを所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。TFT30のドレイン電極32(
図4参照)は、画素電極15に電気的に接続されている。
【0043】
画像信号S1、S2、…、Snは、TFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aを介して画素電極15に所定のタイミングで書き込まれる。このようにして画素電極15を介して液晶層40に書き込まれた所定レベルの画像信号は、対向基板20に設けられた共通電極23(
図1(b)参照)との間に形成される液晶容量で一定期間保持される。
【0044】
保持された画像信号S1、S2、…、Snがリークするのを防止するため、データ線6aに沿って平行するように形成された容量線3bと画素電極15との間に保持容量16が形成され、液晶容量と並列に配置されている。このように、各画素Pの液晶に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより液晶の配向状態が変化する。これにより、液晶層40(
図1参照)に入射した光が変調されて階調表示が可能となる。
【0045】
なお、
図1(a)に示した検査回路53には、データ線6aが接続されており、液晶装置1の製造過程において、上記画像信号を検出することで液晶装置1の動作欠陥などを確認できる構成となっているが、
図2の等価回路では省略している。また、検査回路53は、上記画像信号をサンプリングしてデータ線6aに供給するサンプリング回路、データ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して供給するプリチャージ回路を含むものとしてもよい。
【0046】
次に、画素Pの平面的な配置について、
図3および
図4を参照して説明する。
図3は、第1の実施形態に係る液晶装置における画素の配置を示す概略平面図である。
図4は、第1の実施形態に係る液晶装置における画素の構成を示す概略平面図である。
【0047】
図3に示すように、液晶装置1における画素Pは、例えば平面的に略四角形の開口領域を有する。開口領域は、X方向とY方向とに延在し格子状に設けられた遮光性の非開口領域により囲まれている。
【0048】
X方向に延在する非開口領域には、
図2に示した走査線3aが設けられている。走査線3aは遮光性の導電部材が用いられており、走査線3aによって非開口領域の少なくとも一部が構成されている。
【0049】
Y方向に延在する非開口領域には、
図2に示したデータ線6aと容量線3bとが設けられている。データ線6aおよび容量線3bも遮光性の導電部材が用いられており、これらによって非開口領域の少なくとも一部が構成されている。
【0050】
非開口領域は、素子基板10側に設けられた上記信号線類によって構成されるだけでなく、対向基板20側において格子状にパターニングされた遮光層21によっても構成することができる。
【0051】
非開口領域の交差部付近には、
図2に示したTFT30や保持容量16が設けられている。遮光性を有する非開口領域の交差部付近にTFT30を設けることにより、TFT30の光誤動作を防止するとともに、開口領域における開口率を確保している。交差部付近の非開口領域の幅は、交差部付近にTFT30や保持容量16を設ける関係上、他の部分に比べて広くなっている。
【0052】
図4に示すように、TFT30は、各画素Pに対応して、X方向に延在する走査線3aとY方向に延在するデータ線6aとの交差部に設けられている。TFT30は、半導体層30aとゲート電極30gとソース電極31とドレイン電極32とを有している。
【0053】
半導体層30aは、ソース領域30sと、ドレイン領域30dと、チャネル領域30cと、ソース領域30sとチャネル領域30cとの間に設けられた接合領域30eと、チャネル領域30cとドレイン領域30dとの間に設けられた接合領域30fと、を有するLDD(Lightly Doped Drain)構造を有している。半導体層30aは、走査線3aとデータ線6aとの交差部を通過してX方向に沿って延在し、平面視で走査線3aと重なるように配置されている。なお、半導体層30aがLDD構造を有していない構成であってもよい。
【0054】
走査線3aは、データ線6aとの交差部において、平面視でY方向両側に張り出した張出し部を有している。ゲート電極30gは、Y方向において半導体層30aを跨ぐように設けられている。ゲート電極30gは、平面視で半導体層30aのチャネル領域30cと重なっている。ゲート電極30gのY方向における両端部は、半導体層30aを間に挟んで互いに対向するとともに、X方向に沿って延在するように設けられている。また、ゲート電極30gのY方向における両端部は、平面視で走査線3aの張出し部と重なっている。
【0055】
半導体層30aのY方向における両端側には、平面視で半導体層30aを間に挟んで互いに対向しゲート電極30gのY方向における両端部と重なるように、凹部7および凹部8が配置されている。凹部7は第1凹部7aと第2凹部7bとで構成され、凹部8は第1凹部8aと第2凹部8bとで構成される。凹部7および凹部8は、コンタクトホールとしての役割を果たす。ゲート電極30gは、凹部7および凹部8の内部において走査線3aに電気的に接続されている。凹部7および凹部8を含む非開口領域の交差部の構造については後述する。
【0056】
データ線6aは、走査線3aとの交差部においてX方向に拡張された拡張部と、拡張部から半導体層30aのソース領域30s側に張り出すようにX方向に沿って延在する張出し部とを有している。データ線6aの拡張部は、平面視でゲート電極30gと重なっている。データ線6aの張出し部は、平面視で走査線3aおよび半導体層30aと重なっている。
【0057】
半導体層30aのソース領域30s側の端部と平面視で重なるように、コンタクトホールCH1が設けられている。データ線6aはコンタクトホールCH1を介して半導体層30aのソース領域30sに電気的に接続されており、コンタクトホールCH1を含む部分がソース電極31となっている。
【0058】
半導体層30aのドレイン領域30d側の端部と平面視で重なるように、コンタクトホールCH2が設けられており、コンタクトホールCH2を含む部分がドレイン電極32となっている。また、コンタクトホールCH2に隣り合うように、コンタクトホールCH3が設けられている。コンタクトホールCH2とコンタクトホールCH3とは、島状に設けられた中継電極6bによって電気的に接続している。
【0059】
画素電極15は、走査線3aやデータ線6aと外縁部が重なるように設けられている。本実施形態では、画素電極15は、走査線3aと重なる位置に設けられた2つのコンタクトホールCH3およびコンタクトホールCH4と第1容量電極16bとを介して、ドレイン電極32に電気的に接続されている。
【0060】
保持容量16は、遮光性の第1容量電極16bと、第1容量電極16bに対向するように配置された透光性の第2容量電極16aとを有している。
【0061】
第1容量電極16bは、走査線3aの張出し部と重なる部分と、張出し部と重なる部分から走査線3aの延在方向とデータ線6aの延在方向とに延びる部分とを有しており、非開口領域(
図3参照)に配置されている。第1容量電極16bは、画素P毎に独立して島状に設けられている。1つの画素Pを囲むようにして、画素Pの第1容量電極16bと隣り合う画素Pの第1容量電極16bとが配置され、遮光性の非開口領域を構成している。
【0062】
第2容量電極16aは、第1容量電極16bと平面的に重なるとともに、図示を省略するが、Y方向において複数の画素Pに跨って設けられた本線部と本線部からX方向に突出した突出部とを有している。本線部および突出部は第1容量電極16bおよびデータ線6aや走査線3aとほぼ同等の幅で設けられている。第2容量電極16aは、画素電極15と第1容量電極16bとが電気的に接続されるコンタクトホールCH4を含む領域を除いて、第1容量電極16bと重なるように設けられている。
【0063】
また、
図4では図示を省略するが、非開口領域内に走査線3aやデータ線6aと平面的に重なるように、遮光性のシールド層35(
図5参照)が形成されている。したがって、TFT30の半導体層30aは、平面的に走査線3a、データ線6a、シールド層35、第1容量電極16b、第2容量電極16aが重なりあった非開口領域に設けられて遮光されている。
【0064】
続いて、画素Pの構造について、
図5を参照して説明する。
図5は、
図4のA−A’線で切った画素の構造を示す概略断面図である。
図5に示すように、素子基板10上には、走査線3aと、TFT30と、データ線6aと、保持容量16と、画素電極15とが設けられている。
【0065】
走査線3aは、素子基板10の上面10aに形成されている。走査線3aは、例えばAl(アルミニウム)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)などの金属のうちの少なくとも1つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらを積層したものからなり、導電性と遮光性とを有している。
【0066】
素子基板10の上面10aと走査線3aとを覆うように、第1絶縁層としての下地絶縁層11aが形成されている。下地絶縁層11aは、例えば酸化シリコンなどからなる。半導体層30aは、下地絶縁層11a上に島状に形成されている。半導体層30aは、例えば多結晶シリコン膜からなり、不純物イオンが注入されて、前述したソース領域30s、接合領域30e、チャネル領域30c、接合領域30f、ドレイン領域30dを有するLDD構造が形成されている。
【0067】
下地絶縁層11aと半導体層30aとを覆うように、第2絶縁層としてのゲート絶縁層11bが形成されている。さらに、ゲート絶縁層11b上には、ゲート絶縁層11bを間に挟んでチャネル領域30cに対向する位置に、ゲート電極30gが形成されている。
【0068】
ゲート絶縁層11bとゲート電極30gとを覆うように、第3絶縁層としての層間絶縁層11cが形成されている。半導体層30aのソース領域30s側の端部と重なる位置に、層間絶縁層11cとゲート絶縁層11bとを貫通するコンタクトホールCH1が形成されている。また、ドレイン領域30d側の端部と重なる位置には、層間絶縁層11cとゲート絶縁層11bとを貫通するコンタクトホールCH2が形成されている。
【0069】
層間絶縁層11c上には、データ線6aと中継電極6bとが形成されている。データ線6aおよび中継電極6bは、例えばAl、Ti、Cr、W、Ta、Moなどの金属のうちの少なくとも1つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらを積層したものからなり、導電性と遮光性とを有している。
【0070】
データ線6aおよび中継電極6bは、同じ材料を用いて導電膜を成膜し、これをパターニングすることによって得られる。また、データ線6aおよび中継電極6bを形成する材料でコンタクトホールCH1を埋めることによりソース電極31が形成され、コンタクトホールCH2を埋めることによりドレイン電極32が形成されている。
【0071】
データ線6aと中継電極6bとを覆うように層間絶縁層12が形成されている。層間絶縁層12は、例えばシリコンの酸化物や窒化物からなる。層間絶縁層12には、TFT30が設けられた領域を覆うことによって生ずる表面の凹凸を平坦化する平坦化処理が施されている。平坦化処理の方法としては、例えば化学的研磨処理(Chemical Mechanical Polishing;CMP処理)やスピンコート処理などが挙げられる。
【0072】
層間絶縁層12上には、走査線3aやデータ線6aと平面的に重なるようにパターニングされたシールド層35が形成されている。シールド層35は、例えばAlなどの遮光性の導電部材からなり、侵入する電磁波を遮蔽してTFT30を保護している。
【0073】
シールド層35と層間絶縁層12とを覆うように層間絶縁層13が形成されている。層間絶縁層13は、例えばシリコンの酸化物や窒化物からなる。層間絶縁層13にも、層間絶縁層12と同様に平坦化処理が施されていてもよい。
【0074】
中継電極6bと重なる位置に、層間絶縁層13と層間絶縁層12とを貫通するコンタクトホールCH3が形成されている。層間絶縁層13上には、平面視で中継電極6bおよびコンタクトホールCH3と重なるように、第1容量電極16bが形成されている。
【0075】
第1容量電極16bは、例えばAl、TiN(窒化チタン)などからなる単層膜あるいはこれらが積層された多層膜からなり、導電性と遮光性とを有している。第1容量電極16bは、コンタクトホールCH3の内部にも形成されている。これにより、第1容量電極16bは、コンタクトホールCH3を介して中継電極6bに電気的に接続され、ドレイン電極32に電気的に接続されている。
【0076】
層間絶縁層13と第1容量電極16bの外縁部分とを覆うように、保護層37が形成されている。保護層37は、例えば、シリコンの酸化物からなる保護膜を成膜し、この保護膜のうち誘電体層16cが形成される領域を除くようにパターニングすることで形成される。保護膜を部分的に除去してパターニングする方法としては、例えば成膜された保護膜を部分的にドライエッチングする方法や、予め除去したい第1容量電極16bの表面をレジストなどによってマスキングした状態で保護膜を成膜した後にレジストを除去するリフトオフ法などが挙げられる。
【0077】
誘電体層16cは、第1容量電極16bと重なるように形成されている。誘電体層16cは、例えば、第1容量電極16bと保護層37とを覆うように成膜した誘電体膜のうち、第1容量電極16bのコンタクトホールCH4と重なる部分を除くようにパターニングすることで形成される。誘電体膜としては、シリコン窒化膜や、酸化ハフニウム(HfO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、酸化タンタル(Ta
2O
3)などの単層膜、またはこれらの単層膜のうち少なくとも2種の単層膜を積層した多層膜を用いることができる。
【0078】
さらに、誘電体層16c上には、誘電体層16cとほぼ重なるように第2容量電極16aが形成されている。第1容量電極16bが保護層37と誘電体層16cとによって覆われているので、例えば、第1容量電極16bと第2容量電極16aとがともに同じ材料で構成されていたとしても、第2容量電極16aをパターニングする際に第1容量電極16bがエッチングされてしまうなどの不具合を防止できる。
【0079】
第1容量電極16bおよび第2容量電極16aと、これらの電極に挟まれた誘電体層16cとにより、保持容量16が構成される。保持容量16と保護層37とを覆うように、層間絶縁層14が形成されている。層間絶縁層14は、例えばシリコンの酸化物や窒化物からなる。層間絶縁層14にも、層間絶縁層13と同様に平坦化処理が施されていてもよい。
【0080】
第1容量電極16bと重なる位置に、層間絶縁層14を貫通するコンタクトホールCH4が形成されている。画素電極15は、層間絶縁層14上に、平面視で第1容量電極16bおよびコンタクトホールCH4と重なるように形成されている。画素電極15は、ITOなどの透明導電膜で成膜され、コンタクトホールCH4の内部にも形成されている。これにより、画素電極15は、コンタクトホールCH4を介して第1容量電極16bに電気的に接続され、コンタクトホールCH3と中継電極6bとを介してドレイン電極32に電気的に接続されている。
【0081】
上述したように、第1容量電極16bは、TFT30のドレイン電極32に電気的に接続されるとともに、画素電極15に電気的に接続されている。また、上述したように、第2容量電極16aの本線部は、データ線6aの延在方向(Y方向)において複数の画素Pに跨るように形成され、等価回路(
図2参照)における容量線3bとしても機能している。第2容量電極16aには固定電位が与えられる。これにより、TFT30のドレイン電極32を介して画素電極15に与えられた電位を第2容量電極16aと第1容量電極16bとの間において保持することができる。
【0082】
次に、非開口領域の交差部の構造について、従来の交差部の構造と比較して説明する。
図6は、第1の実施形態に係る液晶装置における非開口領域の交差部の構造を示す図である。詳しくは、
図6(a)は交差部の構造を示す概略平面図であり、
図6(b)は
図6(a)のB−B’線で切った概略断面図である。また、
図8は、従来の非開口領域の交差部の構造の一例を示す図である。詳しくは、
図8(a)は従来の交差部の構造の一例を示す概略平面図であり、
図8(b)は
図8(a)のB−B’線で切った概略断面図である。なお、
図6(a),(b)および
図8(a),(b)では、層間絶縁層12よりも上層の構成要素の図示を省略している。
【0083】
まず、
図6を参照して、本実施形態に係る非開口領域の交差部の構造を説明する。
図6(a)に示すように、凹部7と凹部8とは、平面視で半導体層30aを間に挟んで、Y方向において互いに対向するように配置されている。
【0084】
凹部7は、平面視で走査線3aと重なる第1凹部7aと、第1凹部7aから走査線3aの外側に延在する第2凹部7bとを有している。第2凹部7bは、平面視でデータ線6aと重なるように、Y方向に沿って半導体層30aとは反対側に延びる部分を有している。
【0085】
凹部8は、平面視で走査線3aと重なる第1凹部8aと、第1凹部8aから走査線3aの外側に延在する第2凹部8bとを有している。第2凹部8bは、平面視でデータ線6aと重なるように、Y方向に沿って半導体層30aとは反対側に延びる部分を有している。したがって、凹部7および凹部8は、平面視で凸形状となっている。
【0086】
図6(b)に示すように、第1凹部7aおよび第1凹部8aは、ゲート絶縁層11bと下地絶縁層11aとを貫通して走査線3aに到達している。第2凹部7bおよび第2凹部8bは、ゲート絶縁層11bと下地絶縁層11aとを貫通するとともに素子基板10の上面10aから窪んで形成されている。
【0087】
このような構成の凹部7,8は、例えば、凹部7,8の領域に対応した開口部を有するマスクを用いたドライエッチング処理やウエットエッチング処理により形成することができる。なお、凹部7,8を形成するエッチング処理の際は、走査線3aの形成材料に対して素子基板10の材料のエッチング選択比が格段に高くなるようなエッチングガスやエッチング液を用いることが望ましい。
【0088】
このようにすれば、平面視で走査線3aと重なる領域において、走査線3aが露出するまでゲート絶縁層11bと下地絶縁層11aとをエッチングして第1凹部7aおよび第1凹部8aを形成できる。また、走査線3aと重ならない領域においては、ゲート絶縁層11bと下地絶縁層11aとをエッチングし、さらに素子基板10の上面10aの側の一部をエッチングして第2凹部7bおよび第2凹部8bを形成することができる。
【0089】
ゲート電極30gは、第1凹部7aから第2凹部7bの一部に亘って形成され、第1凹部8aから第2凹部8bの一部に亘って形成されている。より具体的には、ゲート電極30gは、第1凹部7aおよび第1凹部8aにおいて走査線3a上に形成されている。また、ゲート電極30gは、第1凹部7aから第2凹部7bの第1凹部7a側の壁部に沿って走査線3aよりも下方まで連続して形成され、第1凹部8aから第2凹部8bの第1凹部8a側の壁部に沿って走査線3aよりも下方まで連続して形成されている。
【0090】
したがって、ゲート電極30gは、第1凹部7aおよび第1凹部8aにおいて走査線3aの上面に接するとともに、第2凹部7bおよび第2凹部8bにおいて走査線3aの側面に接している。なお、ゲート電極30gは、第2凹部7bおよび第2凹部8bの壁部に沿って底部に到達するまで形成されていてもよい。
【0091】
層間絶縁層11cは、第1凹部7aから第2凹部7bと第1凹部8aから第2凹部8bとに亘り、ゲート電極30gを覆って形成されている。層間絶縁層11cは、第2凹部7bおよび第2凹部8bにおいては、壁部に沿って底部まで回り込んで形成されている。
【0092】
データ線6aは、層間絶縁層11cを覆って形成されており、第2凹部7bの内部および第2凹部8bの内部に回り込むことで、間に層間絶縁層11cを介してゲート電極30gに沿うように走査線3aよりも下方まで形成されている。これにより、半導体層30a(チャネル領域30cおよび接合領域30f)を挟んでY方向における両側の側方が、走査線3aよりも下方までゲート電極30gとデータ線6aとにより二重に遮光される。
【0093】
上述したように、TFT30の半導体層30aは、走査線3a、データ線6a、シールド層35、第1容量電極16b、第2容量電極16aが重なりあった非開口領域に設けられて平面的に遮光されるとともに、ゲート電極30gとデータ線6aとにより側方も遮光される。すなわち、画素Pに色々な方向から光が入射したとしても、半導体層30aの少なくともチャネル領域30cおよび接合領域30fには光が入射しない立体的な遮光構造が採用されている。
【0094】
一方、
図8(a)に示すように、従来の非開口領域の交差部には、コンタクトホールとして機能する凹部77,78が半導体層30aの両側に配置されている。走査線3aは、例えば、データ線6aとの交差部において、X,Y方向に拡張された平面視で四角形の拡張部を有している。凹部77,78は、例えば平面視でX方向が長い矩形状(長方形)であり、走査線3aの拡張部の領域内に設けられている。したがって、凹部77,78のY方向における長さは、本実施形態の凹部7,8のY方向における長さと比べて小さい。
【0095】
図8(b)に示すように、凹部77,78はゲート絶縁層11bと下地絶縁層11aとを貫通して走査線3aに到達している。ゲート電極30gは、凹部77,78の内部に回り込むように形成され、凹部77,78の内部で走査線3aに接している。
【0096】
層間絶縁層11cは、ゲート電極30gを覆って形成されている。層間絶縁層11cは、凹部77,78のY方向における長さ(幅)が本実施形態の凹部7,8と比べて小さいため、凹部77,78におけるゲート電極30gが形成されていない部分を埋めるように形成されている。
【0097】
データ線6aは、凹部77,78の内部が層間絶縁層11cで埋められているため、凹部77,78の内部に回り込むことなく、層間絶縁層11cを覆って形成されている。また、データ線6aが凹部77,78の内部に回り込んだとしても、ゲート電極30gとの間に層間絶縁層11cが介在するため、凹部77,78の底部(走査線3a)まで到達することはない。
【0098】
このように、従来の非開口領域の交差部の構造では、TFT30の半導体層30aは、走査線3aおよびデータ線6aと、
図8では図示を省略するが、シールド層35、第1容量電極16b、第2容量電極16aとが重なりあった非開口領域に設けられて平面的に遮光される。
【0099】
しかしながら、TFT30の半導体層30aの側方の遮光は、ゲート電極30gのみによるものとなる。したがって、凹部77,78の内部に導電膜を製膜してゲート電極30gを形成する際に部分的に導電膜がない部分が生じた場合や、アニール処理によってゲート電極30gの遮光性が低下した場合、半導体層30aに斜め方向から入射する光の遮光が不十分となる。そうすると、TFT30における光リーク電流の増大や光誤動作が生じて、フリッカーや表示ムラなど起こし液晶装置の表示品質が低下してしまうという課題がある。
【0100】
これに対して、
図6(a),(b)に示すように、本実施形態の非開口領域の交差部の構造によれば、凹部7,8は、平面視で走査線3aと重なる第1凹部7a,8aと、第1凹部7a,8aから走査線3aの外側に拡張された第2凹部7b,8bとを有している。そして、第2凹部7b,8bは、データ線6aが延在するY方向に沿って延在する部分を含むので、従来の非開口領域の交差部の構造と比べて、データ線6aを容易に第2凹部7b,8bの内部に入り込ませて形成することができる。
【0101】
また、第2凹部7b,8bは素子基板10の上面10aから窪んで形成されており、ゲート電極30gとデータ線6aとが第2凹部7b,8bにおいて走査線3aよりも下方まで形成されているので、TFT30の半導体層30aの側方を走査線3aよりも下方までゲート電極30gとデータ線6aとで遮光できる。すなわち、TFT30の半導体層30aを平面的に遮光するだけでなく側方も遮光する立体的な遮光構造により、半導体層30aに斜め方向から入射する光を確実に遮光できる。これにより、入射光に対して安定した駆動状態が得られるTFT30を備えた表示品質が高い液晶装置1を提供できる。
【0102】
(第2の実施形態)
<電子機器>
次に、第2の実施形態に係る電子機器について
図7を参照して説明する。
図7は、第2の実施形態に係る電子機器としてのプロジェクターの構成を示す概略図である。
【0103】
図7に示すように、第2の実施形態に係る電子機器としてのプロジェクター(投射型表示装置)100は、偏光照明装置110と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー104,105と、3つの反射ミラー106,107,108と、5つのリレーレンズ111,112,113,114,115と、3つの液晶ライトバルブ121,122,123と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム116と、投射レンズ117とを備えている。
【0104】
偏光照明装置110は、例えば超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット101と、インテグレーターレンズ102と、偏光変換素子103とを備えている。ランプユニット101と、インテグレーターレンズ102と、偏光変換素子103とは、システム光軸Lに沿って配置されている。
【0105】
ダイクロイックミラー104は、偏光照明装置110から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー105は、ダイクロイックミラー104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0106】
ダイクロイックミラー104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー106で反射した後にリレーレンズ115を経由して液晶ライトバルブ121に入射する。ダイクロイックミラー105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ114を経由して液晶ライトバルブ122に入射する。ダイクロイックミラー105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ111,112,113と2つの反射ミラー107,108とで構成される導光系を経由して液晶ライトバルブ123に入射する。
【0107】
光変調素子としての透過型の液晶ライトバルブ121,122,123は、クロスダイクロイックプリズム116の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ121,122,123に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調され、クロスダイクロイックプリズム116に向けて射出される。
【0108】
クロスダイクロイックプリズム116は、4つの直角プリズムが貼り合わされて構成されており、その内面には赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ117によってスクリーン130上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0109】
液晶ライトバルブ121は、第1の実施形態の液晶装置1が適用されたものである。液晶ライトバルブ121は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ122,123も同様である。
【0110】
第2の実施形態に係るプロジェクター100の構成によれば、複数の画素Pが高精細に配置されていても、光が透過する画素領域の開口率が高くTFT30における光リーク電流の発生を抑止できる液晶装置1を備えているので、品質が高く明るいプロジェクター100を提供することができる。
【0111】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。変形例としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
【0112】
(変形例1)
上記実施形態に係る液晶装置1は、画素電極15および共通電極23が光透過性を有する導電膜で形成された透過型の液晶装置であったが、本発明はこのような形態に限定されない。液晶装置1の画素電極15または共通電極23をアルミニウムなどの光反射性を有する導電膜で形成して、反射型の液晶装置としてもよい。画素電極15を光反射性導電膜で形成すれば、対向基板20側から入射した光が、素子基板10側(画素電極15)で反射して対向基板20側から射出される間に光変調される。共通電極23を光反射性導電膜で形成すれば、素子基板10側から入射した光が、対向基板20側(共通電極23)で反射して素子基板10側から射出される間に光変調される。
【0113】
(変形例2)
上記の実施形態の電子機器(プロジェクター100)では、液晶装置1が適用された3枚の液晶ライトバルブ121,122,123を備えていたが、本発明はこのような形態に限定されない。電子機器は、2枚以下の液晶ライトバルブ(液晶装置1)を備えた構成であってもよいし、4枚以上の液晶ライトバルブ(液晶装置1)を備えた構成であってもよい。
【0114】
(変形例3)
上記実施形態に係る液晶装置1を適用可能な電子機器は、プロジェクター100に限定されない。液晶装置1は、例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。