(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044368
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】物理量センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 9/00 20060101AFI20161206BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20161206BHJP
G01P 15/08 20060101ALI20161206BHJP
G01C 19/5783 20120101ALI20161206BHJP
【FI】
G01L9/00 303L
H01L21/52 E
G01P15/08 102A
G01C19/5783
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-17181(P2013-17181)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-149192(P2014-149192A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 和明
(72)【発明者】
【氏名】岩城 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 善文
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩平
(72)【発明者】
【氏名】武井 宏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆重
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平4−152642(JP,A)
【文献】
特許第3445641(JP,B2)
【文献】
米国特許第5986316(US,A)
【文献】
特許第5595145(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L9
G01P15
H01L21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量に応じたセンサ信号を出力するセンサ部(30)と、
一面(40a)に前記センサ部を搭載する被搭載部材(40)と、
前記センサ部と前記被搭載部材との間に配置される接合部材(50)と、を備え、
前記センサ部および前記被搭載部材のうち少なくともいずれか一方に凹部(17、41)が形成され、
前記接合部材は、接着剤(51)に、前記接合部材の機械的特性を規定するフィラー(52)および前記接合部材の厚みを規定するビーズ(53)が混入されて構成されており、
前記ビーズは、前記フィラーの最大寸法より直径が長くされた球状とされ、前記凹部にはめ込まれており、
前記フィラーの最大寸法は、前記センサ部と前記被搭載部材との間隔より短くされていることを特徴とする物理量センサ。
【請求項2】
前記凹部(41)は、前記被搭載部材の一面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の物理量センサ。
【請求項3】
前記凹部(17)は、前記センサ部のうち前記被搭載部材の一面と対向する裏面(30b)に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の物理量センサ。
【請求項4】
前記センサ部は、前記被搭載部材側と反対側の表面(30a)にパッド(15)が配置され、前記パッドにボンディングワイヤ(60)が接続されており、
前記凹部は、前記パッドを通り、前記センサ部の一面に対する法線方向に延びる軸線(L)が通過する部分に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の物理量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量に応じたセンサ信号を出力するセンサ部を被搭載部材に接合部材を介して搭載した物理量センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の物理量センサとして、例えば、特許文献1には、圧力に応じたセンサ信号を出力するセンサ部を用いたものが提案されている。具体的には、この圧力センサでは、接着剤に樹脂ビーズが混入されて接合部材が構成されており、樹脂ビーズがセンサ部および被搭載部材に接触している。
【0003】
これによれば、樹脂ビーズがセンサ部および被搭載部材に接触しており、樹脂ビーズによって接着剤の厚みを確保することができる。このため、被搭載部材から圧力センサに印加される応力を接着剤によって緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−13616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、接着剤にフィラーを混入することによってヤング率や熱膨張係数、ポアソン比等の機械的特性を規定した接合部材が知られている。このため、上記圧力センサにおいて、接着剤にフィラーを混入することによって機械的特性を規定しつつ、ビーズを混入することによって接着剤の厚みを確保することが考えられる。
【0006】
しかしながら、接着剤に混入されるフィラーは、機械的特性を規定するためのみに混入されるものであり、通常、大きさがばらついている。このため、樹脂ビーズより大きいフィラーが混入されている場合には、センサ部および被搭載部材がビーズに接触したり、フィラーに接触したりする。したがって、センサ部が傾くことがあるという問題がある。
【0007】
なお、このような問題は、圧力に応じたセンサ信号を出力するセンサ部を用いる場合のみに発生する問題ではなく、加速度や角速度に応じたセンサ信号を出力するセンサ部を用いる場合にも同様に発生する問題である。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、接着剤にフィラーおよびビーズが混入された接合部材を備える物理量センサにおいて、センサ部が傾くことを抑制できる物理量センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、物理量に応じたセンサ信号を出力するセンサ部(30)と、一面(40a)にセンサ部を搭載する被搭載部材(40)と、センサ部と被搭載部材との間に配置される接合部材(50)と、を備え、
センサ部および被搭載部材のうち少なくともいずれか一方に凹部(17、41)が形成され、接合部材は、接着剤(51)に、接合部材の機械的特性を規定するフィラー(52)および接合部材の厚みを規定するビーズ(53)が混入されて構成されており、ビーズは、フィラーの最大寸法より直径が長くされた球状とされ
、凹部にはめ込まれており、フィラーの最大寸法は、センサ部と被搭載部材との間隔より短くされていることを特徴としている。
【0010】
これによれば、ビーズのみがセンサ部および被搭載部材に接触することになり、接合部材の厚さがビーズのみによって規定される。したがって、センサ部が傾くことを抑制できる。
【0011】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態における圧力センサの断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態における圧力センサの断面図である。
【
図3】
図2に示す圧力センサの製造工程を示す断面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態における圧力センサの断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態における圧力センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、本発明の物理量センサを圧力センサに適用した例について説明する。
図1に示されるように、圧力センサは、センサチップ10に台座20が接合されたセンサ部30を備えている。
【0015】
センサチップ10は、矩形板状のシリコン基板11を用いて構成されており、裏面に断面矩形状の窪み部12が形成されることで構成される薄肉のダイヤフラム13を有している。そして、このダイヤフラム13にブリッジ回路を構成するように図示しないゲージ抵抗が形成されてセンシング部14が構成されている。
【0016】
すなわち、本実施形態のセンサチップ10は、ダイヤフラム13に圧力が印加されるとゲージ抵抗の抵抗値が変化してブリッジ回路の電圧が変化し、この電圧の変化に応じてセンサ信号を出力する半導体ダイヤフラム式のものである。
【0017】
なお、窪み部12は、断面矩形状でなくてもよく、例えば、断面台形状とされていてもよい。
【0018】
台座20は、矩形板状のシリコン基板21の表面に絶縁膜22が形成されたものであり、絶縁膜22がセンサチップ10の裏面に接合されている。このため、センサチップ10と絶縁膜22との間には基準圧力室16が構成されている。
【0019】
また、センサ部30(センサチップ10)の表面30aには、ダイヤフラム13の外側の領域に図示しない拡散抵抗等を介してゲージ抵抗と電気的に接続される4個のパッド15(
図1中では2個のみ図示)が形成されている。
【0020】
そして、このようなセンサ部30は、ケース40の一面40aに裏面30bが接合部材50を介して接合され、ケース40の一面40aに配置された回路チップ等とボンディングワイヤ60を介して電気的に接続されている。
【0021】
ケース40は、例えば、樹脂が型成形されて構成されたものである。なお、本実施形態では、ケース40が本発明の被搭載部材に相当している。
【0022】
接合部材50は、接着剤51に機械的特性を規定するフィラー52と、接合部材50の厚みを規定する球状のビーズ53が混入されて構成されている。具体的には、フィラー52は、分級されることによって最大寸法がビーズ53の直径より小さいもののみが混入されている。言い換えると、ビーズ53は、フィラー52の最大寸法より長い直径を有するもののみが混入されている。
【0023】
そして、ビーズ53のみがセンサ部30およびケース40に接触している。つまり、各フィラー52は、センサ部30およびケース40のいずれか一方のみに接触するか、もしくは、センサ部30およびケース40のいずれにも接触していない。
【0024】
なお、特に限定されるものではないが、接着剤51としては、シリコン系接着剤やフロロシリコン系接着剤等が用いられる。そして、フィラー52としては、シリカや窒化アルミニウム等が用いられ、ビーズ53としては、アクリル、ゴム、ポリスチレン等が用いられる。また、機械的特性とは、熱膨張係数、ヤング率、ポアソン比等のことである。
【0025】
以上説明したように、本実施形態では、接着剤51にフィラー52およびビーズ53が混入されて接合部材50が構成されている。そして、ビーズ53は、フィラー52の最大寸法よりも直径が長くされた球状とされている。
【0026】
このため、ビーズ53のみがセンサ部30およびケース40に接触することになり、接合部材50の厚さがビーズ53のみによって規定される。したがって、センサ部30が傾くことを抑制できる。
【0027】
また、台座20としてシリコン基板21を用いている。このため、センサチップ10と台座20との熱膨張係数の差を低減することができ、センサチップ10と台座20との間で熱応力が発生することを抑制できる。
【0028】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してケース40に凹部を形成したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0029】
本実施形態では、
図2に示されるように、ケース40の一面40aには、センサ部30の裏面30bと対向する部分に複数の凹部41が所定間隔毎に形成されている。具体的には、ケース40の一面40aのうち、パッド15を通り、センサ部30の表面30aの法線方向に延びる軸線Lが通過する部分を含むように凹部41が形成されている。そして、ビーズ53が、各凹部41にはめ込まれている。
【0030】
また、フィラー52は、センサ部30の裏面30bとケース40の一面40aとの間隔より最大寸法が短くされている。つまり、フィラー52は、センサ部30およびケース40の両方と接触することがない大きさとされている。
【0031】
このような圧力センサの製造方法について
図3を参照しつつ説明する。
【0032】
まず、
図3(a)に示されるように、上記凹部41が形成されたケース40を用意する。そして、
図3(b)に示されるように、接着剤51にビーズ53のみが混入された第1接合部材50aを塗布し、各ビーズ53を凹部41にはめ込む。
【0033】
次に、
図3(c)に示されるように、第1接合部材50a上に、接着剤51にフィラー52のみが混入された第2接合部材50bを塗布する。これにより、
図3(d)に示されるように、ビーズ53が凹部41にはめ込まれた状態で第1、第2接合部材50a、50bの接着剤51が混ざり合って接合部材50が構成される。
【0034】
その後、
図3(e)に示されるように、接合部材50上にセンサ部30を配置し、センサ部30をケース40側に押圧してビーズ53をセンサ部30にも接触させることにより、
図2に示す圧力センサが製造される。
【0035】
これによれば、ビーズ53が所定領域に固まって配置されることを抑制でき、センサ部30が傾くことをさらに抑制できる。また、ビーズ53が固まって配置されていないため、接合部材50の内部で部分毎に機械的特性がばらつくことも抑制できる。
【0036】
そして、凹部41は、ケース40の一面40aのうち、パッド15を通る軸線Lが通過する部分にも形成されている。このため、センサ部30にワイヤボンディングを行う際、パッド15をケース40側に押圧して行うことになるが、ビーズ53によってセンサ部30が傾くことも抑制できる。
【0037】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0038】
例えば、上記第2実施形態では、ケース40の一面40aに凹部41が形成された例について説明したが、
図4に示されるように、センサ部30の裏面30bに凹部17が形成され、ビーズ53が凹部17にはめ込まれていてもよい。このような圧力センサでは、シリコン基板21に凹部17を形成するため、凹部17をエッチング等によって形成することができ、隣接する凹部17の間隔を高精度に規定できる。
【0039】
また、
図5に示されるように、ケース40の一面40aに凹部41が形成されていると共にセンサ部30の裏面30bに凹部17が形成され、ビーズ53が各凹部17、41、にはめ込まれていてもよい。
【0040】
そして、上記第2実施形態において、次のように圧力センサを製造してもよい。例えば、第1接合部材50aを配置した後、第1接合部材50a上にフィラー52のみが混入されたフィルム剤を配置する。そして、ハーフ加熱してフィルム材を溶融させることにより、接合部材50を構成するようにしてもよい。
【0041】
さらに、上記第1実施形態において、ビーズ53を所定間隔毎に配置したい場合には、例えば、あらかじめビーズ53が所定間隔毎に配置されたフィルム材を用意し、当該フィルム材を溶融することによって接合部材50とするようにしてもよい。
【0042】
また、上記各実施形態では、圧力に応じたセンサ信号を出力するセンサチップ10を用いた例について説明したが、加速度や角速度に応じたセンサ信号を出力するセンサチップ10を用いた物理量センサとしてもよい。
【0043】
そして、上記各実施形態では、台座20としてシリコン基板21の表面に絶縁膜22が形成されたものを用い、絶縁膜22がセンサチップ10の裏面に接合されているものを説明したが、次のようにしてもよい。例えば、シリコン基板21をシリコン基板11と直接接合してもよい。また、台座20としてガラスを用い、シリコン基板11とガラスを陽極接合してもよい。さらに、センサチップ10によっては、台座20がなくてもよい。
【符号の説明】
【0044】
30 センサ部
40 ケース(被搭載部材)
40a 一面
50 接合部材
51 接着剤
52 フィラー
53 ビーズ