特許第6044376号(P6044376)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044376
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】抵抗溶接用電極
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/30 20060101AFI20161206BHJP
   B23K 11/00 20060101ALI20161206BHJP
   B22F 5/00 20060101ALI20161206BHJP
   B23K 35/10 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B23K11/30 320
   B23K11/00 560
   B22F5/00 J
   B23K35/10
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-22511(P2013-22511)
(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公開番号】特開2014-151337(P2014-151337A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃嵩
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 雅巳
(72)【発明者】
【氏名】木下 恭一
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−017982(JP,A)
【文献】 特開2010−073398(JP,A)
【文献】 特開昭60−004050(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/142257(WO,A1)
【文献】 特開平07−310106(JP,A)
【文献】 特開2002−075324(JP,A)
【文献】 特開平09−241705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/30
B22F 5/00
B23K 11/00
B23K 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置を構成する複数枚の金属箔と導電部材とを抵抗溶接する抵抗溶接用電極であって、
前記抵抗溶接用電極は、銅製の本体部と、前記本体部の先端に配置された先端部とを有し、
前記先端部は、本体部側の一端側が銅であり、被溶接材と当接する他端側がモリブデンであり、
前記一端側の銅と、前記他端側のモリブデンとの間に、銅の含有率が一端側から減少する一方、モリブデンの含有率が増加する含有率変化部を有し、
少なくとも前記含有率変化部が金属基複合材で形成されていることを特徴とする抵抗溶接用電極。
【請求項2】
前記含有率変化部は、前記含有率が一定に変化する請求項1に記載の抵抗溶接用電極。
【請求項3】
前記金属基複合材は燒結体である請求項1又は請求項2に記載の抵抗溶接用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗溶接用電極に係り、詳しくは蓄電装置を構成する複数枚の金属箔と導電部材とを抵抗溶接するのに適した抵抗溶接用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池やキャパシタのような蓄電装置は再充電が可能であり、繰り返し使用することができるため電源として広く利用されている。蓄電装置は、電極を構成する金属箔が、電極を電極端子と接続する導電部材に対して複数枚積層された状態で抵抗溶接により溶接されている。金属箔及び導電部材は、一般に銅製あるいはアルミニウム製である。
【0003】
抵抗溶接は、被溶接材(接合対象物)を一対の溶接用電極で挟んで強く加圧しながら溶接用電極と被溶接材を通電させ、その通電によって生じる抵抗熱で被溶接材を溶融して溶接する方法である。抵抗溶接では、溶接部の温度は接触抵抗により発生する熱と熱放散の差によって決定される。発熱量は電流値、電流密度、通電時間、電極を母材に押し付ける力及び材料の電気抵抗率等によって支配され、また、熱放散量は被溶接材の容積、熱伝導率、比重及び比熱や、電極からの放熱等によって支配される。
【0004】
溶接用電極全体を銅製とした場合、銅は電気抵抗率が低く、発熱に要する電流量を多く必要とする。また、被溶接材が銅の場合は、溶接時に溶接用電極の先端の耐熱性が不十分で耐久性が悪くなる。従来、図7に示すように、銅製の溶接用電極41の先端、即ち被溶接材と当接する部分に電気抵抗率の高いモリブデン42をろう付けした溶接用電極が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−17982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モリブデンは電気抵抗率(20℃)が53.4nΩ・mと、銅の電気抵抗率(20℃)16.8nΩ・mの3倍以上あるため、抵抗溶接の際に必要な熱量を発生するために要する電流量が銅に比べて少なくて良い。また、モリブデンは融点が2623℃と、銅の融点1084.6℃に比べて1500℃以上高いため、耐熱性は良好になる。しかし、モリブデンの熱膨張率(25℃)は4.8μm・m−1・K−1と、銅の熱膨張率(25℃)16.5μm・m−1・K−1に比べて1/3以下のため、モリブデンと銅の熱膨張率の差に起因して抵抗溶接サイクル毎の熱膨張率の差でろう付け部に亀裂が入り、モリブデンが剥がれてしまい、耐久性が悪い(寿命が短い)という問題がある。
【0007】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、蓄電装置を構成する複数枚の金属箔と導電部材との抵抗溶接に使用する抵抗溶接用電極において、耐久性を向上させることができる抵抗溶接用電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する抵抗溶接用電極は、蓄電装置を構成する複数枚の金属箔と導電部材とを抵抗溶接する抵抗溶接用電極であって、前記抵抗溶接用電極は、銅製の本体部と、前記本体部の先端に配置された先端部とを有し、前記先端部は、本体部側の一端側が銅であり、被溶接材と当接する他端側がモリブデンであり、前記一端側の銅と、前記他端側のモリブデンとの間に、銅の含有率が一端側から減少する一方、モリブデンの含有率が増加する含有率変化部を有し、少なくとも前記含有率変化部が金属基複合材で形成されている。
【0009】
この構成によれば、抵抗溶接用電極は、一端側の銅と、被溶接材と当接する他端側のモリブデンとの間に、銅の含有率が一端側から減少する一方、モリブデンの含有率が増加する含有率変化部を有する。そのため、モリブデンが直接銅に接合された従来の抵抗溶接用電極と異なり、被溶接材と当接するモリブデンの熱膨張率と、モリブデンに連続する含有率変化部の熱膨張率との差が、抵抗溶接用電極の他端側(モリブデン側)から一端側(銅側)に向かって次第に変化する状態となる。その結果、熱膨張率の差に起因して抵抗溶接サイクル毎の熱膨張率の差で抵抗溶接用電極に亀裂が入ったり、モリブデンが剥がれたりすることが抑制される。したがって、蓄電装置を構成する複数枚の金属箔と導電部材との抵抗溶接に使用する抵抗溶接用電極において、耐久性を向上させることができる。
【0010】
前記含有率変化部は、前記含有率が一定に変化することが好ましい。ここで、「一定に変化する」とは、含有率変化部において、含有率が連続的にかつ変化量が一定に変化することだけでなく、含有率が段階的に変化し、かつ段階毎の変化量が一定であることを意味する。例えば、モリブデンと銅との間にモリブデンの含有率がn%、2n%、3n%、4n%の領域が隣り合うように存在すれば、隣り合う各領域のモリブデンの含有率の差はn%で一定になる。この構成によれば、隣り合う各領域の含有率の差が異なる場合に比べて、耐久性が向上する。
【0011】
前記金属基複合材は燒結体であることが好ましい。この構成によれば、銅の溶融温度以上に上昇させる必要がないため、モリブデン粉末が銅のマトリックス中に隙間がない状態で存在する構成に比べて製造時のエネルギー消費を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓄電装置を構成する複数枚の金属箔と導電部材との抵抗溶接に使用する抵抗溶接用電極において、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態の抵抗溶接用電極の斜視図。
図2】(a)は抵抗溶接用電極先端部の模式図、(b)はチップの模式断面図。
図3】チップの製造方法を説明する模式断面図。
図4】溶接状態を示す模式図。
図5】別の実施形態のチップの模式断面図。
図6】別の実施形態の抵抗溶接用電極と被溶接材との関係を示す模式図。
図7】従来技術の抵抗溶接用電極の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態を図1図3にしたがって説明する。
図1に示すように、抵抗溶接用電極10は、銅製の本体11と、その先端に接合されたチップ12を有する。本体11は、円柱状に形成され、チップ12は本体11の直径より短い四角柱状に形成されている。チップ12は、本体11の軸方向と直交する断面形状が、蓄電装置の電極組立体を構成する複数枚の金属箔と導電部材とを抵抗溶接したときの溶接部の面積と対応する形状に形成されている。電極組立体は積層型の電極組立体であっても巻回型の電極組立体であってもよい。
【0015】
図2(a)に示すように、チップ12は、一端側が銅で形成され、被溶接材と当接する他端側がモリブデンで形成され、一端側の銅と、他端側のモリブデンとの間に、銅の含有率が一端側から減少する一方、モリブデンの含有率が増加する含有率変化部13を有する。この実施形態では、チップ12は、全体が金属基複合材で形成され、一端側において本体11の先端にろう付けされている。即ち、抵抗溶接用電極10は、一端側が銅であり、被溶接材と当接する他端側がモリブデンであり、一端側の銅と、他端側のモリブデンとの間に、銅の含有率が一端側から減少する一方、モリブデンの含有率が増加する含有率変化部13を有し、含有率変化部13が金属基複合材で形成されている。
【0016】
図2(b)に模式的に示すように、チップ12は、銅粉末15及びモリブデン粉末16で形成された焼結体で構成されている。銅粉末15及びモリブデン粉末16の混合割合は、チップ12の一端側(図2(b)の上側)から他端側に向かって銅粉末15の含有率が減少する一方、モリブデン粉末16の含有率が増加するように設定されている。この実施形態では銅粉末15及びモリブデン粉末16の混合割合、即ち含有率が一定に変化するように形成されている。なお、図2(b)では含有率変化部13において、銅粉末15及びモリブデン粉末16を構成する粒子の層が一層毎に銅及びモリブデンの含有率が変化する状態で模式的に示しているが、実際は同じ含有率の層が複数層となる。
【0017】
次に前記のように構成された抵抗溶接用電極10の製造方法を説明する。
抵抗溶接用電極10を製造する場合、本体11及びチップ12を別工程で製造した後、本体11の先端にチップ12をろう付けする。
【0018】
チップ12は1個ずつ製造されるのではなく、複数個のチップ12の大きさの板状の燒結体を製造した後、その燒結体を切断してチップ12を製造する。詳述すると、図3に示すように、1個分のチップ12に対応する大きさではなく、複数個分のチップ12の大きさ以上の大きさの型20内に、銅粉末15及びモリブデン粉末16を、両者の混合割合が型の底面側から開口側に向かって次第に変化するように充填する。チップ12の一端側から他端側に向かって変化する各部における銅及びモリブデンの含有率にそれぞれ対応した混合割合の銅粉末15及びモリブデン粉末16の混合物をそれぞれ準備し、混合割合が異なる銅粉末15及びモリブデン粉末16の混合物を順に型20に充填する。次に型20に充填された混合物をプレスしてプレ成形する。次に静水圧プレスでさらに押し固めた後、炉に入れて焼結する。したがって、炉で焼結されて形成された焼結体は複数個分のチップ12の大きさ以上の大きさを有する。次に切断工程で焼結体をチップ12の大きさに切断してチップ12が完成する。
【0019】
そして、チップ12は、その銅側が銅製の本体11と対向する状態で本体11にろう付けされて抵抗溶接用電極10が完成する。
次に前記のように構成された抵抗溶接用電極10の作用を説明する。
【0020】
蓄電装置を構成する複数枚の金属箔と導電部材とを抵抗溶接(スポット溶接)する場合、図4に示すように、金属箔31の積層方向の一端側に導電部材32を配置し、金属箔31と導電部材32とを積層する。図4では、導電部材32の上に複数枚の金属箔31が積層されている。
【0021】
次に、一対の抵抗溶接用電極10により、被溶接材としての金属箔31及び導電部材32を挟持した状態で両抵抗溶接用電極10間に電圧が印加され、溶接箇所に電流が流れて金属箔31と導電部材32とが溶接される。抵抗溶接用電極10は、チップ12が被溶接材としての金属箔31及び導電部材32に当接した状態で金属箔31及び導電部材32を抵抗溶接する。
【0022】
溶接工程においては、抵抗溶接機は短時間で抵抗溶接を繰り返し、抵抗溶接用電極10は、抵抗溶接サイクル毎に膨張収縮を繰り返す。抵抗溶接用電極10は、被溶接材と当接するモリブデンとの間に、銅の含有率が一端側(本体11側)から減少する一方、モリブデンの含有率が増加する含有率変化部13を有する。そのため、モリブデンが直接銅に接合された従来の抵抗溶接用電極と異なり、被溶接材と当接するモリブデンの熱膨張率と、モリブデンに連続する含有率変化部13の熱膨張率との差が、抵抗溶接用電極10の他端側(モリブデン側)から一端側(銅側)に向かって次第に変化する状態となる。その結果、熱膨張率の差に起因して抵抗溶接サイクル毎の熱膨張率の差で抵抗溶接用電極に亀裂が入ったり、モリブデンが剥がれたりすることが抑制される。
【0023】
また、含有率変化部13は、モリブデンと合金化して金属間化合物や固溶体を生成しない金属基複合材で構成されているため、抵抗溶接時(スポット溶接時)の溶接電流を低減せず、溶接が良好に行われる。
【0024】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)抵抗溶接用電極10は、一端側が銅であり、被溶接材と当接する他端側がモリブデンであり、一端側の銅と、他端側のモリブデンとの間に、銅の含有率が一端側から減少する一方、モリブデンの含有率が増加する含有率変化部13を有し、少なくとも含有率変化部13が金属基複合材で形成されている。したがって、蓄電装置を構成する複数枚の金属箔31と導電部材32との抵抗溶接に使用する抵抗溶接用電極10において、耐久性を向上させることができる。
【0025】
(2)含有率変化部13は、含有率が一定に変化する。即ち、含有率変化部13を構成し、含有率が異なる隣り合う各領域の含有率の差が一定であるため、隣り合う各領域の含有率の差が異なる場合に比べて、耐久性が向上する。
【0026】
(3)金属基複合材は焼結体であるため、モリブデン粉末が銅のマトリックス中に隙間がない状態で存在する構成に比べて製造時のエネルギー消費を抑制することができる。
(4)抵抗溶接用電極10は、本体11の先端にチップ12が接合されて形成されており、チップ12が金属基複合材で形成されている。したがって、抵抗溶接用電極10全体を金属基複合材で形成する場合に比べて、製造コストを低減することができる。
【0027】
(5)チップ12は、複数個分のチップ12の大きさ以上の大きさを有する焼結体を形成した後、その焼結体を切断して製造される。したがって、チップ12の大きさに対応した型で銅粉末15及びモリブデン粉末16の混合物をプレ成形した後、焼結して製造する場合に比べて効率良く製造することができる。
【0028】
(6)チップ12は4角柱状に形成されている。したがって、複数個分のチップ12の大きさ以上の大きさを有する焼結体を形成した後、その焼結体を切断して製造する際、円柱状や楕円柱状のチップに比べて材料となる銅粉末15及びモリブデン粉末16の無駄が少なくなる。また、四角柱状の場合、円柱の先端を球面状に形成した抵抗溶接溶電極と異なり、一定の面積を確実に溶接することができる。
【0029】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 抵抗溶接用電極10の含有率変化部13を構成する金属基複合材は、モリブデン粉末16と銅粉末15との燒結体に限らない。例えば、図5に示すように、モリブデン粉末16が銅のマトリックス17中に存在する構成であってもよい。この構成の金属基複合材は、例えば、モリブデン粉末16と銅粉末15との燒結体を製造した後、その燒結体を金型のキャビティ内に収容して溶融状態の銅をキャビティ内に加圧状態で注入、充填して製造する。溶融状態の銅が燒結体の多孔部分に侵入することにより、銅粉末15の少なくとも表面が溶融され、モリブデン粉末16が銅のマトリックス17中に存在する金属基複合材が製造される。なお、モリブデン粉末16と銅粉末15とを焼結せずに、両粉末を加圧して所定の形状にした状態で金型のキャビティ内に収容して、溶融状態の銅をキャビティ内に加圧状態で注入、充填して金属基複合材を製造してもよい。
【0030】
○ 銅粉末15及びモリブデン粉末16を型20内に、型20の底部から上部に向かって銅粉末15及びモリブデン粉末16の含有率が次第に変化するように充填する方法として、モリブデン粉末16が上側となる状態で、銅粉末15及びモリブデン粉末16を2層に型20内に収容し、型20に振動を加えてもよい。室温付近におけるモリブデンの密度は、銅の密度に比べて10%程度大きい。そのため、モリブデン粉末16が上側に存在する状態で型に振動を加えることにより、上側のモリブデン粉末16層と下側の銅粉末15層との間に、モリブデンの含有率が型20の上側から減少する一方、銅の含有率が増加する領域を有する銅粉末15及びモリブデン粉末16の混合層が生じる。
【0031】
○ 金属基複合材の製造は、モリブデン粉末16をその充填率(体積率)が変化する状態で型20に充填し、プレスしてプレ成形を行った後、銅の溶湯を高圧鋳造して製造してもよい。しかし、銅粉末15及びモリブデン粉末16の両者を使用してプレ成形を行った後、銅の溶湯を高圧鋳造して製造する方が、モリブデンの含有率の設定が自由になる。なお、銅を高圧鋳造した際に、モリブデン粉末16の表面を銅が被覆した場合は、後加工でその部分の銅を除去する。
【0032】
○ 銅粉末15及びモリブデン粉末16は、粒度(粒度分布)が同じものを使用する必要はなく、異なる粒度(粒度分布)のものを使用してもよい。
○ 粒度の異なる銅粉末15及びモリブデン粉末16を使用して、モリブデンの含有率及び銅の含有率を調整するようにしてもよい。
【0033】
○ 粒度の異なるモリブデン粉末16を使用して体積率が異なるモリブデン層が積層された構成の燒結体に銅の溶湯を高圧鋳造して金属基複合材を製造してもよい。
○ チップ12の形状は四角柱状に限らず、例えば、四角柱以外の角柱状、円柱状あるいは半円球状、円柱部の先端に球面部を有する形状等であってもよい。
【0034】
○ 本体11は円柱状に限らず、例えば、角柱状や楕円柱状の棒状としてもよい。また、柱状(棒状)に限らず、抵抗溶接用電極10を取り付ける溶接機の支持部の構成によっては、本体11の基端側が筒状であったり、取付け部が突設されて本体11が全体として板状に形成されたりしてもよい。
【0035】
○ チップ12は、本体11との接合部の面積が本体11の先端の面積と同じであってもよい。例えば、図6に示すように、円柱部12aの先端に半球部12bが連続する形状のチップ12が円柱状の本体11の先端に接合された抵抗溶接用電極10としてもよい。チップ12は円柱部12aに含有率変化部13を有し、半球部12bがモリブデンで構成されている。溶接部の大きさや抵抗溶接の際に必要な加圧力、供給電流量によっては本体11が細くても支障がない場合には、このような構造であってもよい。
【0036】
○ 被溶接材は金属箔と導電部材であるが、金属箔側に、金属箔を保護する為の金属板を配置してもよい。この場合、抵抗溶接用電極と当接するのは、金属板と導電部材であり、金属板、金属箔、及び導電部材が溶接される。金属板は、金属箔、及び導電部材と同じ材質、もしくは同じ材質を含有する合金であることが望ましい。また、同様に金属板を導電部材側にも配置してもよい。
【0037】
○ 含有率変化部13は、銅の含有率及びモリブデンの含有率がリニアに変化する構成に限らない。例えば、含有率が異なる、隣り合う各領域における銅の含有率及びモリブデンの含有率の差が次第に大きくなったり、反対に次第に小さくなったり、あるいは含有率の差が一定の領域と異なる領域とが存在したりしてもよい。
【0038】
○ また、含有率変化部13は、含有率が異なる、隣り合う各領域における銅の含有率及びモリブデンの含有率の比が一定となるように変化してもよい。
○ 抵抗溶接用電極10は、本体11の先端にチップ12が接合された構成に限らず、全体が金属基複合材で一体形成された構成であってもよい。
【0039】
○ 抵抗溶接用電極10全体を金属基複合材で構成する場合、含有率変化部13は抵抗溶接用電極10の全体にわたって設けられてもよい。
○ チップ12を構成する焼結体あるいは抵抗溶接用電極10全体を焼結体で構成する場合、焼結体の製造方法において、型に銅粉末15及びモリブデン粉末16を充填し、プレスしてプレ成形を行った後、静水圧プレスでさらに押し固めることなく、焼結を行ってもよい。
【0040】
○ 焼結は炉で焼結する代わりに、放電プラズマ焼結(SPS:Spark Plasma Sintering)により焼結してもよい。
○ 本体11にチップ12をろう付けで接合する代わりに、摩擦圧接(摩擦溶接)で接合してもよい。
【0041】
○ 含有率変化部13にカーボンナノファイバー、炭化ケイ素、サイアロン等を複合化して熱膨張率を抑制してもよい。
○ 抵抗溶接用電極ではなく、超音波溶接機において被溶接材に当接して加圧状態で振動を加える超音波溶接ホーンに適用してもよい。
【0042】
○ 蓄電装置は、二次電池に限らず、例えば、リチウムイオンキャパシタのようなキャパシタであってもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
【0043】
(1)請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記抵抗溶接用電極は、銅製の本体の先端にチップが接合されており、前記チップ全体が金属基複合材で形成されている。
【0044】
(2)前記技術的思想(1)に記載のチップは、板状の金属基複合材を切断して形成されたものである。
(3)蓄電装置を構成する複数枚の金属箔と導電部材とを超音波溶接する超音波溶接ホーンであって、前記超音波溶接ホーンは、一端側が銅であり、被溶接材と当接する他端側がモリブデンであり、前記一端側の銅と、前記他端側のモリブデンとの間に、銅の含有率が一端側から減少する一方、モリブデンの含有率が増加する含有率変化部を有し、少なくとも前記含有率変化部が金属基複合材で形成されている。
【符号の説明】
【0045】
10…抵抗溶接用電極、13…含有率変化部、31…金属箔、32…導電部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7