(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る搬送装置を
図1〜
図9に基づいて説明する。
図1に示すように、搬送装置10は、物品Wを搭載する搬送台車12と、搬送台車12と連結され搬送台車12を牽引する無人搬送車11とを備えている。なお、本実施形態では、無人搬送車11を基準として、無人搬送車11の進行方向を前方、進行方向の反対方向を後方(
図1における左右方向)とし、走行面Mに対して直角方向を上下方向(
図1における上下方向)とし、無人搬送車11の幅方向を左右方向(
図1における紙面に直角方向)とする。なお、搬送台車12についても、無人搬送車11の前後方向、上下方向及び左右方向と同様である。
【0024】
図1及び
図2に示すように、無人搬送車11は、車体フレーム13と、車体フレーム13に設けられた一対の駆動輪14と、車体フレーム13に設けられた従動輪15と、を備えている。
車体フレーム13は前後方向に延びる一対の枠材16を備えており、一対の枠材16間には、複数個の支持部材17〜20が架設されている。なお、枠材16と支持部材17〜20により車体フレーム13は形成されている。略U字状の支持部材17の下面には従動輪15が取り付けられている。略U字状の支持部材18には、バッテリ21が搭載されている。箱型の支持部材19には、一対の駆動輪14と駆動輪14を駆動する駆動モータ(図示せず)が取り付けられ、駆動モータは一対の駆動輪14にそれぞれ個別に設置され、バッテリ21から電力供給を受けて駆動する。一対の駆動輪14は、各駆動モータの駆動によりそれぞれ単独で回転される。箱型の支持部材20には、駆動モータの駆動を制御する制御装置(図示せず)が収容されている。
【0025】
一対の枠材16間における支持部材19の上部には平板状の取付板41が架設されている。取付板41には、上方に突出する連結突部としての連結ピン22が設けられている。連結ピン22は棒状の部材より形成され、上方に所定の高さだけ取付板41から突出している。連結ピン22は、後述する搬送台車12に設けられた連結器30と係合することにより無人搬送車11と搬送台車12とを連結する。
【0026】
図1に示すように、支持部材17の後部には、走行面Mに設けられた磁気テープによる走行軌道(図示せず)を読み取る走行センサー23が設置されている。走行センサー23の検出信号に基づき、制御装置は、無人搬送車11が走行軌道に沿って移動するよう各駆動モータの駆動を制御する。また、無人搬送車11の操舵は、各駆動モータの回転速度が個々に調整されて、両駆動モータ間に回転速度差が生じることにより行われる。
【0027】
図1及び
図3に示すように、搬送台車12は、4本の受承パイプ24と、受承パイプ24を支持し四隅に設置された脚部25とを備え、脚部25の下端部には4つの車輪26が取り付けられている。脚部25間に連結された4本の受承パイプ24により物品Wを搭載する載置台が形成されている。4つの車輪26は、自在キャスターとされ、どの方向にも向きを変えることが可能である。受承パイプ24の下方には、4つの脚部25を連結する補強パイプ27が設けられ、前後の補強パイプ27間に2本の支持パイプ28が平行に架設されている。2本の支持パイプ28間には、支持板29が取り付け固定されており、支持板29には連結器30が支持軸37を介して回動自在に備えられている。
【0028】
図4(a)、
図4(b)及び
図5に示すように、連結器30は、前後方向に延設された基板31と、基板31の下面に取り付けられU字状で後方に開口すると共に前後方向に延設されたガイド部材32と、基板31に固定され連結ピン22の頂部と当接する当接部材33とを備えている。
【0029】
基板31は、平板状の板状部材で形成され、常態では基板31の板面が略水平になるように取り付けられている。基板31の後部には支持軸37が設けられ、基板31の前部が上方へ回動可能である。また、基板31の後部における支持板29との間には、ストッパー39が設けられ、連結器30が
図4(b)で示す常態位置より下方へ回動することを防止している。
ガイド部材32は、
図5に示すように、板状部材をU字状に折り曲げることにより形成され、円弧状に湾曲した先端部32Aと、先端部32Aに延設された2つの側壁32B、32Cとを有している。側壁32B、32C間の間隔は、後方へ向かうほど広くなるように設定されている。ガイド部材32は、先端部32Aを前方側とし、開口側を後方側として配設され基板31に固定されている。ガイド部材32は連結ピン22を左右方向の中心側に案内するためのものである。
【0030】
当接部材33は、
図4(a)、
図4(b)に示すように、板状部材により形成され、基板31に対して前方ほど基板31より遠ざかる方向に傾斜した当接部33Aと、当接部33Aの先端を基板31側に折り曲げることにより形成された折り曲げ部33Bとを有している。当接部材33は、
図5に示すように、後方ほど幅方向の長さが大きくなるように形成されている。当接部材33は、ガイド部材32の側壁32B、32C間に配置され、折り曲げ部33Bを前方側として基板31に固定されている。
【0031】
基板31と、ガイド部材32及び折り曲げ部33Bによって囲まれた空間には、下方に開口する連結ピン22の差込み部34が形成されている。差込み部34は、前方の先端部32Aと後方の折り曲げ部33Bと側壁32B、32Cとから構成されている。連結ピン22が差込み部34に係合されることにより、無人搬送車11と搬送台車12との連結が行われる。
基板31の前部側には補助板35が前方に延設され、補助板35の前部側の下方に錘36が取り付けられている。錘36は、ガイド部材32の先端部32Aに対して前方に隣接する位置に配置されている。錘36は、連結器30が支持軸37を介して下方に確実に回動可能なように設けられている。
【0032】
図5に示すように、ガイド部材32の側壁32B、32Cにおける後部側には、支持軸37A、37Bがそれぞれ固定されている。支持軸37A、37Bは棒状の部材より形成され、支持軸37A、37Bは、軸心方向が左右方向に水平となるように配設されると共に、それぞれ同軸となるように配置されている。
支持軸37A、37Bは、支持板29に固定された支承部材38A、38Bに回転可能に支持されている。支持軸37Aは支承部材38Aより外側に延長して設けられ、延長された端部は直角に折り曲げられて、手動レバー部37Cが形成されている。
【0033】
このように連結器30は、基板31と、ガイド部材32と、当接部材33と、差込み部34と、補助板35と、錘36とを備えている。連結器30は、支持軸37A、37Bを介して支承部材38A、38Bに回動可能に支持されている。連結器30は、支持軸37A、37Bを介して上下方向に回動可能に設けられている。
【0034】
無人搬送車11の高さは、走行面Mから補強パイプ27までの高さよりも低く設定されている。無人搬送車11の左右方向の幅は、脚部25間の間隔よりも小さく設定されている。すなわち、無人搬送車11は、物品Wが搭載された搬送台車12に対して、後方から搬送台車12に潜り込み、通過し得る上下方向の高さと左右方向の幅寸法で構成されている。無人搬送車11に設けられた連結ピン22は、搬送台車12に設けられた連結器30の差込み部34に係合し、無人搬送車11と搬送台車12との連結が行われる。なお、
図1は、連結ピン22が連結器30に係合され、無人搬送車11と搬送台車12との連結が行われた状態を示している。
【0035】
また、
図6に示すように、走行面M上には、搬送台車12と無人搬送車11とを分離する分離位置が設定され、分離位置には無人搬送車11と搬送台車12との連結を解除する分離手段としての一対のスロープ部材40が設けられている。スロープ部材40は、上方に突出する形状を有し、所定の高さを有する水平面と、前端部と後端部との傾斜したスロープ面とで形成されている。スロープ部材40の水平面の高さは、搬送台車12がスロープ部材40の水平面に乗り上げたときに、連結ピン22と連結器30との係合が解除される高さに設定されている。すなわち、スロープ部材40の水平面の高さは、搬送台車12がスロープ部材40の水平面に乗り上げたときの連結器30の底面(最低部)の高さが、連結ピン22の先端(最上部)の高さよりも高くなるように設定されている。スロープ部材40は、走行軌道に平行に設けられている。一対のスロープ部材40間の間隔は、搬送台車12における車輪26間の間隔に等しく形成されている。搬送台車12がスロープ部材40に乗り上げることにより、連結ピン22と連結器30との係合が解除され、搬送台車12と無人搬送車11とが分離されて無人搬送車11のみが前方に移動する。
【0036】
以上の構成を有する搬送装置10につき、その作用説明を
図1及び
図6〜
図8等に基づき行う。
先ず、
図7(a)に示すように、搬送台車12の受承パイプ24には、物品Wが搭載された状態にある。この搬送台車12を分離位置に搬送する場合には、無人搬送車11は、搬送台車12の後方から搬送台車12に潜り込み、受承パイプ24の下方を通るように、前方に移動する。
【0037】
次に、
図7(b)に示すように、無人搬送車11の連結ピン22は、搬送台車12に設けた連結器30のガイド部材32内(側壁32B、32C間)に後方より進入し、連結ピン22の頂部が当接部材33の当接部33Aと当接する。
ところで、当接部材33の当接部33Aは、前方ほど基板31より遠ざかる方向に傾斜していることにより、無人搬送車11が前方に進むにしたがい、連結ピン22は当接部材33を押し上げることにより連結器30を上方に回動させる。連結器30の回動の中心は、支持軸37A、37Bである。
【0038】
なお、
図5に示すように、ガイド部材32は、後方ほど側壁32B、32C間の間隔が広くなる形状を有していることにより、ガイド部材32に進入する連結ピン22の左右位置が中心側よりずれていても、連結ピン22はガイド部材32により連結器30の中心側へ案内される。従って、連結ピン22がガイド部材32内に入り易くなっていると共に、左右方向の中心側に連結ピン22を案内することが可能となっている。
【0039】
無人搬送車11がさらに前方に移動すると、連結ピン22と当接部33Aとの当接が解除され、連結器30は、支持軸37A、37Bを中心として下方に回動する。これにより、
図1に示すように、連結ピン22は連結器30の差込み部34に係合する。なお、連結器30の前部には錘36が設けられているので、連結器30は支持軸37A、37Bを中心に下方に確実に回動することが可能である。
【0040】
図1及び
図5に示すように、連結ピン22が連結器30の差込み部34に係合されると、ガイド部材32と当接部材33によって連結器30に対する連結ピン22の前後方向及び左右方向の動きが規制されて、連結ピン22は前後方向及び左右方向に抜けない状態となる。よって、無人搬送車11と搬送台車12とが確実に連結されると共に、搬送台車12の無人搬送車11に対する幅方向の位置ずれを防止できる。そして、無人搬送車11がさらに前進すると、連結ピン22は、ガイド部材32の先端部32Aと当接し、連結器30を介して搬送台車12を牽引する。
【0041】
搬送台車12と連結された無人搬送車11は、搬送先である分離位置まで搬送台車12を牽引する。次に、
図8(a)に示すように、搬送台車12と連結された無人搬送車11が、分離位置に到達すると、搬送台車12のみが分離位置に設置されたスロープ部材40上に乗り上げる。
【0042】
図6に示すように、搬送台車12のみがスロープ部材40上に乗り上げることにより、搬送台車12に取り付けられた連結器30も上方に移動する。その結果、連結ピン22は連結器30の差込み部34から抜け出し、連結ピン22と連結器30との係合が解除される。
【0043】
次に、
図8(b)に示すように、無人搬送車11は、搬送台車12と分離され、無人搬送車11のみが前方に移動し、搬送台車12はその位置に留まる。このように、分離位置まで搬送台車12を搬送することが可能である。
なお、走行軌道上に障害物が存在しているなどの理由により、無人搬送車11が減速や停止をする場合がある。その場合には、連結ピン22は、連結ピン22の後方に存在する連結器30の折り曲げ部33Bと当接する。このように連結ピン22と折り曲げ部33Bが当接することにより、無人搬送車11と同期して搬送台車12も減速や停止させることができる。したがって、無人搬送車11が減速や停止をした場合であっても、無人搬送車11に牽引されていた搬送台車12のみが慣性で前方に進み続けることはない。
【0044】
ここで、
図9に示すように、連結器30を支持する支持軸37Aには、手動レバー部37Cが形成されているので、連結ピン22と係合された状態にある連結器30の手動レバー部37Cを把持して上方に回動させることにより、連結器30を上昇させて連結ピン22との係合を解除することができる。その結果、分離位置以外の任意の場所で手動操作により無人搬送車11と搬送台車12とを分離することが可能である。
【0045】
第1の実施形態に係る搬送装置10によれば以下の効果を奏する。
(1)無人搬送車11が搬送台車12に潜り込み、無人搬送車11に設けた連結ピン22が搬送台車12に設けた連結器30の当接部材33と当接し、連結器30が支持軸37A、37Bを介して上下方向に回動することにより、連結ピン22は連結器30の差込み部34に係合されて搬送台車12と無人搬送車11とが連結される。このことにより、無人搬送車11が前進したときには、連結ピン22と先端部32Aが当接することにより、無人搬送車11と搬送台車12が同期して前進する。また、無人搬送車11が減速や停止をしたときには、差込み部34において連結ピン22と折り曲げ部33Bが当接するため搬送台車12も同期して減速や停止を行い、搬送台車12のみが慣性で前方に進み続けることはない。よって、搬送台車12の位置ずれを防止でき、搬送台車12を確実に停止することが可能である。
(2)連結ピン22が連結器30の差込み部34に係合されると、ガイド部材32と当接部材33によって連結器30に対する連結ピン22の前後方向及び左右方向の動きが規制されて、連結ピン22は前後方向及び左右方向に抜けない状態となる。よって、無人搬送車11と搬送台車12とが確実に連結されると共に、搬送台車12の無人搬送車11に対する幅方向の位置ずれを防止できる。
(3)ガイド部材32は、後方ほど側壁32B、32C間の間隔が広くなる形状を有していることにより、連結ピン22の左右位置がずれていても、ガイド部材32内に入り易くなっている。また、ガイド部材32によって、左右方向の中心側に連結ピン22を案内することが可能である。
(4)連結器30の前部には錘36が設けられているので、連結ピン22によって連結器30が持ち上げられても、連結ピン22による持ち上げが解除されると、連結器30は支持軸37A、37Bを中心に下方に確実に回動することが可能であり、原位置に復帰できる。
(5)搬送台車12が分離位置にあるスロープ部材40に乗り上げることにより、連結ピン22と連結器30との係合が解除され、搬送台車12と無人搬送車11とが分離されて無人搬送車11のみが前方に移動する。よって、走行面Mにおける分離位置にスロープ部材40を設置するだけでよく、構成が簡単である。
(6)支持軸37Aの端部には、手動操作可能な手動レバー部37Cが形成されているので、手動レバー部37Cを把持して回動させることにより、連結器30を上昇させて連結ピン22との係合を解除できる。よって、分離位置以外の任意の場所で無人搬送車11と搬送台車12とを分離することができる。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る搬送装置50を
図10〜
図12に基づいて説明する。
この実施形態は、第1の実施形態におけるスロープ部材40に代えて地上側アームを設けたものであり、その他の構成は共通である。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0047】
図10及び
図11に示すように、走行面M上における分離位置には、無人搬送車11と搬送台車12との連結を解除する分離手段としての地上側アーム51が設けられている。地上側アーム51は、走行面Mに立設された支柱部51Aと支柱部51Aから搬送台車12側に突出するアーム部51Bとを備えている。地上側アーム51は、無人搬送車11及び搬送台車12が走行する走行領域より外側に立設されている。
【0048】
図11に示すように、連結器30を支持する支持軸37Aは、連結器30から左方向に延設され、搬送台車12の外側まで延長されている。延長された端部が折り曲げられて折り曲げ部52が形成されている。地上側アーム51のアーム部51Bの走行面Mからの高さ距離は、折り曲げ部52の走行面Mからの高さ距離と同等に形成されている。なお、折り曲げ部52が連結器側アームに相当する。
【0049】
図11及び
図12に示すように、連結ピン22が連結器30の差込み部34に係合され無人搬送車11と搬送台車12とが連結された状態にある搬送装置50が、分離位置に到達すると、連結器30から延設された折り曲げ部52が地上側アーム51のアーム部51Bと当接する。搬送台車12の前方への移動に伴い、アーム部51Bが折り曲げ部52を後方に押し付けることにより、連結器30は、支持軸37A、37Bを中心として後方(
図12で右回転方向)に回動する。その結果、連結ピン22と連結器30との係合が解除され、無人搬送車11は搬送台車12と分離され、無人搬送車11のみが前方に移動し、搬送台車12はその位置に留まる。
なお、折り曲げ部52を手動操作可能な手動レバー部として利用することも可能である。
【0050】
この実施形態の場合には、走行面M側にスロープ部材40を設置する必要がない。よって、分離位置に到達したときに搬送台車12をスロープ部材40に乗り上げる必要がなく、搬送台車12をスムースに移動可能である。
その他の作用効果については、第1の実施形態における(1)〜(4)、(6)と同等であり、説明を省略する。
【0051】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更しても良い。
○ 第1及び第2の実施形態では、U字状に湾曲したガイド部材32を使用して、基板31と、ガイド部材32と、当接部材33の折り曲げ部33Bとによって、下方に開口する連結ピン22の差込み部34を形成するとして説明したが、基板とガイド部材と当接部材を一体形成し、この一体形成された部材に差込み部を形成しても良い。また、ガイド部材を先端部で連結せずに、ガイド部材の両側壁と、基板31と、当接部材33の折り曲げ部33Bと、錘36とによって、差込み部を形成しても良い。
○ 第2の実施形態では、走行面M上に地上側アーム51を立設するとして説明したが、走行面Mに隣接する建造物の柱や壁に地上側アームを取り付けても良い。