(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のノズルからなるノズル列が形成されたノズル面、および、前記ノズルに連通する圧力室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を有し、前記圧力発生手段を駆動させて圧力室に圧力変動を生じさせることで前記ノズルから液体を噴射する単位ヘッドと、
前記ノズル面に対して交差する方向に沿って立設され、前記圧力発生手段に駆動信号を伝送する伝送基板と、
前記単位ヘッドに液体を供給する液体流路を有する液体流路部材と、
を備え、前記単位ヘッドを複数配列してなる単位ヘッド列が、前記伝送基板の厚さ方向の両方の面側にそれぞれ並設されたヘッドユニットであって、
前記液体流路は、前記伝送基板の厚さ方向の一側に配置される第1の液体流路、および、当該伝送基板の厚さ方向の他側に配置される第2の液体流路を有し、
前記単位ヘッドは、
前記圧力発生手段と前記伝送基板とを電気的に接続するフレキシブルケーブルと、
当該フレキシブルケーブルを間に挟んで前記伝送基板側とは反対側に設けられた第1のヘッド流路と、
当該第1のヘッド流路に対して前記フレキシブルケーブルを間に挟んで前記伝送基板側に設けられた第2のヘッド流路と、
を備え、
前記第1のヘッド流路は、前記第1の液体流路又は第2の液体流路のうち、当該単位ヘッドが配置された前記面側の一方の液体流路と連通し、
前記第2のヘッド流路は、前記第1の液体流路又は第2の液体流路のうち、当該単位ヘッドとは前記伝送基板を跨いで反対側に位置する前記面側の他方の液体流路と連通することを特徴とするヘッドユニット。
前記単位ヘッドに備えられたフレキシブルケーブルは、前記伝送基板の両面のうち当該単位ヘッドが配置された側の面に接続されたことを特徴とする請求項4に記載のヘッドユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ヘッドユニットの小型化が進んでいる。例えば、ノズル列を2列設けた単位ヘッドを、配線基板のベースとなる伝送基板の両面側に複数配列したヘッドユニットが開発されつつある。各単位ヘッドには、一端を伝送基板に接続したフレキシブルケーブルが備えられ、このフレキシブルケーブルを挟んで両側に、各ノズル列に連通する流路が設けられる。すなわち、各単位ヘッドには、フレキシブルケーブルを挟んで伝送基板側の流路と、これとは反対側の流路とが設けられる。このような構成を採ると、伝送基板側の流路は、伝送基板とフレキシブルケーブルとの間に配置されるため、上流側の流路と接続する場合に、伝送基板とフレキシブルケーブルとの接続部分が邪魔になってしまう。特に、単位ヘッドが小型になると、相対的に単位ヘッドに対するフレキシブルケーブルの幅が広くなるため、上流側の流路と単位ヘッドの流路との間を接続する流路の取り回しが複雑になってしまい、流路の接続がより困難になる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複雑な液体流路を形成することなく、複数のノズル列を有する単位ヘッドを伝送基板の両面側に配列したヘッドユニット、および、これを備えた液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、複数のノズルからなるノズル列が形成されたノズル面、および、前記ノズルに連通する圧力室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を有し、前記圧力発生手段を駆動させて圧力室に圧力変動を生じさせることで前記ノズルから液体を噴射する単位ヘッドと、
前記ノズル面に対して交差する方向に沿って立設され、前記圧力発生手段に駆動信号を伝送する伝送基板と、
前記単位ヘッドに液体を供給する液体流路を有する液体流路部材と、
を備え、前記単位ヘッドを複数配列してなる単位ヘッド列が、前記伝送基板の厚さ方向の両方の面側にそれぞれ並設されたヘッドユニットであって、
前記液体流路は、前記伝送基板の厚さ方向の一側に配置される第1の液体流路、および、当該伝送基板の厚さ方向の他側に配置される第2の液体流路を有し、
前記単位ヘッドは、
前記圧力発生手段と前記伝送基板とを電気的に接続するフレキシブルケーブルと、
当該フレキシブルケーブルを間に挟んで前記伝送基板側とは反対側に設けられた第1のヘッド流路と、
当該第1のヘッド流路に対して前記フレキシブルケーブルを間に挟んで前記伝送基板側に設けられた第2のヘッド流路と、
を備え、
前記第1のヘッド流路は、前記第1の液体流路又は第2の液体流路のうち、当該単位ヘッドが配置された前記面側の一方の液体流路と連通し、
前記第2のヘッド流路は、前記第1の液体流路又は第2の液体流路のうち、当該単位ヘッドとは前記伝送基板を跨いで反対側に位置する前記面側の他方の液体流路と連通することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ヘッド流路と液体流路とを接続する連通流路と、フレキシブルケーブルとの干渉がなくなるので、複雑な液体流路を形成することなく、複数のノズル列を有する単位ヘッドを伝送基板の両面側に配列することが可能になる。
【0009】
上記構成において、一側に前記液体流路部材が固定され、他側に前記単位ヘッドが固定される固定部材を備え、
該固定部材は、前記第1のヘッド流路と前記一方の液体流路とを連通する第1の連通流路と、前記第2のヘッド流路と前記他方の液体流路とを連通する第2の連通流路と、を単位ヘッド毎に有し、
前記第2の連通流路は、前記第2のヘッド流路から前記伝送基板を跨いで前記他方の液体流路に向けて延在することが望ましい。
【0010】
また、上記各構成において、前記液体流路部材は、前記液体流路からヘッド流路側への液体の流入を制御する弁を有することが望ましい。
【0011】
さらに、上記各構成において、前記伝送基板が一枚の基板で構成されたことが望ましい。
また、前記単位ヘッドに備えられたフレキシブルケーブルは、前記伝送基板の両面のうち当該単位ヘッドが配置された側の面に接続されたことが望ましい。
【0012】
この構成によれば、フレキシブルケーブルの接続が容易になる。また、伝送基板の一方の面側に接続されるフレキシブルケーブルと、他方の面側に接続されるフレキシブルケーブルとが伝送基板の板厚方向において重畳可能になるため、ヘッドユニットの小型化が可能になる。
【0013】
さらに、上記各構成において、前記伝送基板の少なくとも一方の面側に、当該伝送基板の面方向に沿って延在した金属板を備え、
該金属板は、前記伝送基板と前記フレキシブルケーブルとの接続部分と対向するように、当該フレキシブルケーブルが挿通可能な開口部を備えたことが望ましい。
【0014】
この構成によれば、ヘッドユニットに剛性を与えることができる。例えば、伝送基板にフレキシブルケーブルを熱圧着する際に、この熱によってヘッドユニット自体が変形することを防止できる。また、ヘッドユニットの外部から伝送基板に向かう電磁波等のノイズを遮蔽することができる。
【0015】
そして、本発明の液体噴射装置は、上記各構成のヘッドユニットを備えたことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の説明では、本発明の液体噴射装置として、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、単位ヘッド)を複数搭載したインクジェット式プリンター(以下、プリンター1)を例に挙げる。
【0018】
図1(a)は、プリンター1の構成を模式的に表した平面図であり、
図1(b)は、側面図である。このプリンター1は、ヘッドユニット2と、インクタンク3と、給紙ローラー4と、搬送機構5とを備えている。ヘッドユニット2は、液体状のインクを噴射して画像等の記録を行う単位ヘッド7が複数配列された装置であり、記録紙6(記録媒体或いは着弾対象物の一種)の紙幅方向(記録紙6の搬送方向に対して直交する方向)に沿って横長に延在している。インクタンク3は、ヘッドユニット2に供給するためのインクが貯留された貯留部材(液体供給源)の一種である。インクタンク3内のインクは、インク供給チューブ8を介してヘッドユニット2に供給される。なお、液体供給源をヘッドユニット2の上方に搭載する構成を採用することもできる。また、ヘッドユニット2の詳しい構成は後述する。
【0019】
給紙ローラー4は、搬送機構5の上流側に配設され、図示しない給紙部から給紙された記録紙6を挟持した状態で互いに反対方向に同期回転可能な上下一対のローラー4a、4bにより構成されている。この給紙ローラー4は、給紙モーター9からの動力で駆動され、図示しないスキュー補正ローラーと共働して記録紙6の搬送方向に対する傾き及び搬送方向に直交する方向の位置ずれを補正してから、この記録紙6を搬送機構5側に供給する。
【0020】
搬送機構5は、搬送ベルト11、搬送モーター12、駆動ローラー13、従動ローラー14、テンションローラー15、および、圧接ローラー16を備えている。搬送モーター12は、搬送機構5の駆動源であり、駆動ローラー13に動力を伝達している。搬送ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラー13及び従動ローラー14の間に張設されている。テンションローラー15は、駆動ローラー13と従動ローラー14との間において搬送ベルト11の内周面に当接し、ばね等の付勢部材の付勢力により搬送ベルト11に張力を付与している。圧接ローラー16は、搬送ベルト11を挟んで従動ローラー14の直上に配設され、記録紙6を搬送ベルト11側に押圧している。
【0021】
搬送ベルト11の外周面には、リニアースケール18がベルト全周に渡って配設されている。このリニアースケール18は、スリット状の検出用パターンを搬送ベルト11の搬送方向に一定間隔(例えば、360dpi)で複数配列して構成されている。このリニアースケール18の検出用パターンは、検出ヘッド19によって光学的に検出され、検出信号がエンコーダー信号として、プリンター1の制御部(図示せず)に出力される。したがって、制御部は、このエンコーダー信号に基づいて、搬送機構5(搬送ベルト11)による記録紙6の搬送量を把握することができる。また、このエンコーダー信号は、単位ヘッド7の圧電素子65(後述)を駆動するための駆動信号の発生タイミングを規定する。
【0022】
次にヘッドユニット2について、図を用いて説明する。
図2、
図4はヘッドユニット2の斜視図であり、
図3、
図5はヘッドユニット2の正面図である。また、
図6はノズル面58側から見たヘッドユニット2の斜視図である。さらに、
図7(a)は
図3におけるA−A′断面図であり、
図7(b)は
図3におけるB−B′断面図である。なお、
図4〜6では、説明の都合上、弁ユニット23を省略している。また、本実施形態のヘッドユニット2では、弁ユニット23が伝送基板22を挟んで表裏を反転して交互に配列されているが、各弁ユニット23の構成は同じであるため、以下の説明では一(
図2又は
図3における左端)の弁ユニット23に着目して説明する。
【0023】
本実施形態におけるヘッドユニット2は、複数の単位ヘッド7(
図6参照)と、単位ヘッド7のノズル面58(ノズルプレート52、
図9参照)に対して交差する方向(本実施形態では垂直方向)に沿って起立(立設)した板状の伝送基板22と、伝送基板22を挟んで両面側に延在する弁ユニット23(本発明における液体流路部材に相当)と、伝送基板22と平行に起立した金属板24と、これら単位ヘッド7、伝送基板22、弁ユニット23、および、金属板24が固定されるケース25(本発明における固定部材に相当)と、を備えている。また、本実施形態では、
図6に示すように、5つの単位ヘッド7をヘッドユニット2の長手方向に沿って等間隔に配列してなる単位ヘッド列27が、2列設けられている。一方の単位ヘッド列27aと他方の単位ヘッド列27bとは、単位ヘッド7の列設ピッチの距離だけずれて列設され、ラインヘッドを構成している。
【0024】
伝送基板22は、制御部から送信された駆動信号を各単位ヘッド7の圧電素子65に伝送する一枚の基板であり、
図4等に示すように、ケース25の上面(単位ヘッド7とは反対側)に起立した状態で固定されている。この伝送基板22は、
図7に示すように、ケース25の幅方向の略中央であって、2列の単位ヘッド列27の間に対応する位置に配置される。言い換えると、単位ヘッド列27は、伝送基板22の厚さ方向の両方の面側(両面側)にそれぞれ並設されている。また、この伝送基板22の両面には、図示しないコンデンサーやトランジスタ等の電子部品が実装されている。さらに、伝送基板22の下方において、各単位ヘッド7に対応する位置には、単位ヘッド7のフレキシブルケーブル79(後述)がそれぞれ電気的に接続されている。本実施形態では、伝送基板22の両面側に並設された単位ヘッド7のフレキシブルケーブル79は、伝送基板22の両面のうち単位ヘッド7が配置された側の面に接続されている。すなわち、伝送基板22の両面にそれぞれフレキシブルケーブル79が接続されている。なお、起立した伝送基板22の上端部には、コネクター28が配置されている。コネクター28には、一端側が制御部に電気的に接続されるケーブルの他端側が電気的に接続される。これにより、制御部からの信号等がコネクター28を介して前記電子部品に送られて処理され、その後にフレキシブルケーブル79を介して、各単位ヘッド7に供給される。本実施形態のコネクター28は、伝送基板22の長手方向の両端部にそれぞれ設けられている。
【0025】
金属板24は、
図4等に示すように、伝送基板22の面方向に沿って延在した櫛歯状の板材であり、ケース25の上面に伝送基板22を挟んで2枚固定されている。本実施形態の金属板24は、伝送基板22よりも一回り小さく形成され、伝送基板22の両面側において当該伝送基板22と間隔を開けて配置されている。また、金属板24は、伝送基板22とフレキシブルケーブル79との接続部分と対向するように、フレキシブルケーブル79が挿通可能な開口部29を備えている。この開口部29は、金属板24の下端から上端側の途中まで凹状に切欠いて形成されている。また、本実施形態では、伝送基板22の片面側に5つの単位ヘッド7が配列されているため、これに対応して5つの開口部29が設けられている。そして、フレキシブルケーブル79は、伝送基板22に対して金属板24を挟んだ反対側から、当該金属板24の開口部29に挿通され、伝送基板22に接続される。
【0026】
弁ユニット23は、インクタンク3から導入したインクを単位ヘッド7に安定供給するものであり、内部の流路の途中に開閉弁31(自己封止弁ともいう。本発明における弁に相当)が設けられている。本実施形態の弁ユニット23は、
図7に示すように、伝送基板22を跨いで伝送基板22の厚さ方向の両面側に亘って配置されている。この弁ユニット23の内部には、伝送基板22の厚さ方向の一面側(
図7における左側(単位ヘッド列27a側))に配置される第1の液体流路32aと、伝送基板22の厚さ方向の他面側(
図7における右側(単位ヘッド列27b側))に配置される第2の液体流路32bとを備えている。また、弁ユニット23の第2の液体流路32bの上方には、インク供給チューブ8と液密に接続される導入流路34が上方に突出している。このため、インクタンク3内のインクは、インク供給チューブ8を介して導入流路34内に導入される。また、導入流路34の下端は、
図3に示すように、他面側(第2の液体流路32b側)に形成された正面視において楕円形状のフィルター室35に連通している。このフィルター室35の下流側には、
図7(a)に示すように、一端が一面側(第1の液体流路32a側)に形成された圧力調整室38と連通する内部流路36の他端が連通している。そして、フィルター室35の内部流路36との連通箇所には、ごみ等を除去するフィルター37が設けられている。圧力調整室38は、正面視において円形状に形成され、薄手のフィルムで封止されている。内部流路36の圧力調整室38との連通箇所であってフィルムに対向する箇所には、開閉弁31が設けられている。このため、圧力調整室38の内部が負圧になるに連れてフィルムが開閉弁31を押圧して開く方向に撓み、これにより開閉弁31が開かれて導入流路34からのインクがフィルター37を通じて圧力調整室38側に供給される。
【0027】
また、圧力調整室38には、一端が他面側(フィルター室35側)の第2の液体流路32bに連通する第1の接続流路(図示せず)の他端が、内部流路36とは異なる位置に開口している。開閉弁31を通過したインクはこの第1の接続流路を介して第2の液体流路32bに流入する。第2の液体流路32bは、伝送基板22の面方向に沿って下方に延在し、弁ユニット23の下端部に開口している。本実施形態の第2の液体流路32bは、その途中で二股に分岐し、2列の単位ヘッド列27a,27bのうち、一方の単位ヘッド列27aに配置された単位ヘッド7と、他方の単位ヘッド列27bに配置された単位ヘッド7とに後述するケース25の連通流路44を介してインクを供給している。具体的には、分岐した一方の第2の液体流路32bは、
図7(a)に示すように、後述する第2の連通流路44bに接続され、分岐した他方の第2の液体流路32bは、
図7(b)に示すように、後述する第1の連通流路43bに接続されている。また、第2の液体流路32bの途中であって、分岐よりも上流側には、第1の液体流路32aと第2の液体流路32bとを連通する第2の接続流路(図示せず)が設けられている。この第2の接続流路によって、圧力調整室38から第2の液体流路32bに流入したインクが、第1の液体流路32a側に供給される。
【0028】
第1の液体流路32aは、第2の液体流路32bと同様に、伝送基板22の面方向に沿って下方に延在し、弁ユニット23の下端部に開口している。本実施形態の第1の液体流路32aは、その途中で二股に分岐し、2列の単位ヘッド列27a,27bのうち、一方の単位ヘッド列27aに配置された単位ヘッド7と、他方の単位ヘッド列27bに配置された単位ヘッド7とにインクを供給している。具体的には、分岐した一方の第1の液体流路32aは、
図7(a)に示すように、第2の液体流路32bが連通する第1の連通流路43bとは異なる第1の連通流路43aに接続され、分岐した他方の第1の液体流路32aは、
図7(b)に示すように、第2の液体流路32bが連通する第2の連通流路44bとは異なる第2の連通流路44aに接続されている。すなわち、本実施形態の弁ユニット23に設けられた流路は、開閉弁31を通過した後、4つの流路に分岐し、それぞれケース25の4つの連通流路43a,43b,44a,44bに連通する。これにより、弁ユニット23からのインクが、連通流路43a,43b,44a,44bを介して、対応する2つの単位ヘッド7(後述する4つのヘッド流路82)に供給される。なお、上記した内部流路36、第1の接続流路、および、第2の接続流路は、弁ユニット23において伝送基板22よりも上方(ケース25とは反対側)に設けられている。
【0029】
ケース25は、その上面(単位ヘッド7側とは反対側の面)に伝送基板22、金属板24、および、弁ユニット23が固定された樹脂等からなる部材である。本実施形態のケース25は、ヘッドユニット2の長手方向において、伝送基板22よりも長く形成されている。このケース25の下面側には、単位ヘッド7に対応する位置に、下面から上方の途中まで凹んだヘッド固定空部41が設けられており、このヘッド固定空部41内に単位ヘッド7が固定されている。すなわち、ヘッド固定空部41は、伝送基板22に対して一側に配列された単位ヘッド列27aに対応して、5つ列設されており、他側に配列された単位ヘッド列27bに対応して、単位ヘッド7の列設ピッチの距離だけずれて5つ列設されている。言い換えると、ヘッド固定空部41はケース25の長手方向に沿って、伝送基板22を挟んだ一側と他側に交互に配列されている。また、ヘッド固定空部41の上方には、単位ヘッド7のフレキシブルケーブル79が挿通されるケーブル挿通空部42がケース25の板厚方向(
図7における上下方向)に貫通して設けられている。各ケーブル挿通空部42は、単位ヘッド7のフレキシブルケーブル79に対応して、ケース25の幅方向におけるヘッド固定空部41の略中央部に開口している。
【0030】
そして、
図7に示すように、このケーブル挿通空部42を挟んで外側(伝送基板22とは反対側)には、第1の連通流路43が鉛直方向(ノズル面58に対して垂直な方向)に延在している。この第1の連通流路43は、下端がヘッド固定空部41内に開口し、後述する第1のヘッド流路82a(インク導入路75)の上端と液密に連通している。具体的には、伝送基板22の両面側のうち一面側(単位ヘッド列27a側)の第1の連通流路43aは、単位ヘッド列27aに配置された単位ヘッド7の第1のヘッド流路82aと連通し、伝送基板22の両面側のうち他面側(単位ヘッド列27b側)の第1の連通流路43bは、単位ヘッド列27bに配置された単位ヘッド7の第1のヘッド流路82aと連通する。また、第1の連通流路43a,43bの上端は、第1の液体流路32a又は第2の液体流路32bの何れか一方に液密に連通する。すなわち、
図7(a)に示すように、伝送基板22の両面側のうち一面側(単位ヘッド列27a側)に設けられた第1の連通流路43aは、その上端が第1の液体流路32aに液密に連通する。一方、
図7(b)に示すように、伝送基板22の両面側のうち他面側(単位ヘッド列27b側)に設けられた第1の連通流路43bは、その上端が第2の液体流路32bに液密に連通する。
【0031】
また、ケーブル挿通空部42を挟んで内側(伝送基板22側)には、第2の連通流路44が伝送基板22の下方を跨いで斜めに延在している。この第2の連通流路44は、下端がヘッド固定空部41内のケーブル挿通空部42に対して第1の連通流路43とは反対側に開口し、後述する第2のヘッド流路82b(インク導入路75)の上端と液密に連通している。具体的には、上端が伝送基板22の両面側のうち他面側(単位ヘッド列27b側)に開口した第2の連通流路44bは、その下端が単位ヘッド列27aに配置された単位ヘッド7の第2のヘッド流路82bと連通し、上端が伝送基板22の両面側のうち一面側(単位ヘッド列27a側)に開口した第2の連通流路44aは、その下端が単位ヘッド列27bに配置された単位ヘッド7の第1のヘッド流路82bと連通する。そして、第1の連通流路43と同様に、第2の連通流路44a,44bの上端は、第1の液体流路32a又は第2の液体流路32bの何れか一方に液密に連通する。すなわち、
図7(a)に示すように、上端が伝送基板22の両面側のうち他面側(単位ヘッド列27b側)に開口した第2の連通流路44bは、その上端が伝送基板22を跨いで第2の液体流路32bに液密に連通する。一方、
図7(b)に示すように、上端が伝送基板22の両面側のうち一面側(単位ヘッド列27a側)に開口した第2の連通流路44aは、その上端が伝送基板22を跨いで第1の液体流路32aに液密に連通する。
【0032】
要するに、各ヘッド固定空部41には、ケーブル挿通空部42を挟んで第1の連通流路43(外側の垂直な連通流路43)の下端と第2の連通流路44(外側から内側に向けて下り傾斜した連通流路44)の下端とが開口している。そして、第1の連通流路43は、その直上に第1の液体流路32a又は第2の液体流路32bが位置しているため、鉛直方向に延在してこの液体流路32に連通する。一方、第2の連通流路44は、第1の連通流路43と同様に鉛直方向に延在して上方の液体流路32へ接続しようとすると、ケーブル挿通空部42あるいはフレキシブルケーブル79が障害となり、この液体流路32に連通することが困難になる。しかしながら、ヘッドユニット2には2つの単位ヘッド列27a,27bがその列設ピッチの距離だけずれて配置されているため、伝送基板22を挟んで反対側(当該第2の連通流路44が連通する単位ヘッド7が属する単位ヘッド列27とは異なる他の単位ヘッド列27側)には、他の単位ヘッド列27に属する単位ヘッド7のフレキシブルケーブル79(ケーブル挿通空部42)が配置されていない。このため、第2の連通流路44は、伝送基板22を挟んで反対側(当該第2の連通流路44が連通する単位ヘッド7が属する単位ヘッド列27とは反対側)に位置する第1の液体流路32a又は第2の液体流路32bに、当該伝送基板22の下方を跨いで連通することが可能である。
【0033】
次に単位ヘッド7について説明する。
図8は、単位ヘッド7の斜視図であり、
図9は、単位ヘッド7の要部の断面図である。なお、本実施形態における単位ヘッド7は、複数のノズルが列設してなるノズル列49を2列備えているが、
図9では、他方のノズル列49に対応する構成が、図示された一方のノズル列49に対応する構成と左右方向に対称であるため省略されている。また、便宜上、各部材の積層方向を上下方向として説明する。
【0034】
本実施形態における単位ヘッド7は、
図9に示すように、圧力発生ユニット50および流路ユニット51を備え、これらの部材が積層された状態でヘッドケース56に取り付けて構成されている。ヘッドケース56は、単位ヘッド7の上面および側面の大部分を構成する合成樹脂製の箱体状部材である。このヘッドケース56の上部は、ケース25のヘッド固定空部41内に固定される。また、
図8に示すように、ヘッドケース56の平面視における中心部分にはノズル列方向に沿って長尺な矩形状の開口を有する貫通空部74が、ヘッドケース56の高さ方向を貫通する状態で形成されている。この貫通空部74には、フレキシブルケーブル79の一端部が収容されている。
【0035】
さらに、ヘッドケース56には、インク導入路75が形成されている。このインク導入路75は、ヘッド流路82の上流側を構成する流路であり、その上端は、
図8に示すように、ヘッドケース56の上面から上方に突出している。本実施形態では、2列のノズル列49に対応して、2本のインク導入路75がフレキシブルケーブル79を間に挟んで両側の上面から突出しており、それぞれケース25の第1の連通流路43又は第2の連通流路44の何れか一方の下端と接続される。すなわち、
図7に示すように、単位ヘッド7がケース25に固定された状態で、外側(フレキシブルケーブル79に対して伝送基板22とは反対側)に配置されたインク導入路75が第1のヘッド流路82aを構成し、内側(フレキシブルケーブル79に対して伝送基板22側)に配置されたインク導入路75が第2のヘッド流路82bを構成する。なお、ヘッドケース56の上面から突出した2本のインク導入路75は、ヘッドケース56の長手方向(ノズル列方向)の中央部分において、同方向における位置が僅かにずれて配置されている。また、インク導入路75の下端は、連通基板53の共通液体流路62に連通されている。
【0036】
流路ユニット51は、ノズルプレート52、及び、連通基板53を有している。連通基板53は、共通液体流路62、個別連通口72等が形成された板材である。共通液体流路62は、上流側がインク導入路75と接続される各圧力室61に共通の流路であり、2列に形成された圧力室61(またはノズル57)に対応して、2列形成されている。この共通液体流路62は、個別連通口72を介して各圧力室61と連通する。ノズルプレート52は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル57を列状に開設した、シリコン基板等から作成される板材である。この列設された複数のノズル57は、一端側のノズル57から他端側のノズル57まで等間隔に設けられてノズル列49(ノズル群の一種)を構成する。本実施形態では、ノズルプレート52にノズル列49が2列形成されている。なお、ノズルプレート52の下面がノズル面58に相当する。
【0037】
圧力発生ユニット50は、圧力室61が形成された圧力室形成基板59(圧力室形成部材の一種)、弾性膜60、所謂撓み振動型の圧電素子65(本発明における圧力発生手段に相当)、および保護基板54が積層されてユニット化された状態で、ヘッドケース56の下部に収容されている。各圧電素子65からは、図示しない電極配線部が貫通空部74側にそれぞれ延出されており、これらの電極配線部にフレキシブルケーブル79の一端側の端子が接続されている。また、各圧力室61は、個別連通口72とは反対側で、連通基板53に形成されたノズル連通路66を介してそれぞれノズル57と連通している。
【0038】
そして、インク導入路75、共通液体流路62、個別連通口72、圧力室61、ノズル連通路66、および、ノズル57からなる一連の流路によってヘッド流路82が構成される。本実施形態では、フレキシブルケーブル79を間に挟んで2本のヘッド流路82が設けられており、それぞれが第1のヘッド流路82a、および、第2のヘッド流路82bに相当する。具体的には、単位ヘッド7がケース25に固定された状態で、外側(フレキシブルケーブル79に対して伝送基板22とは反対側)に配置されたヘッド流路82が第1のヘッド流路82aに相当し、内側(フレキシブルケーブル79に対して伝送基板22側)に配置されたインク導入路75が第2のヘッド流路82bに相当する。
【0039】
このような構成のヘッドユニット2では、インクタンク3からのインクがインク供給チューブ8を介して各弁ユニット23に供給される。弁ユニット23に供給されたインクは、開閉弁31を通過した後、第1の液体流路32aと第2の液体流路32bとに分岐し、各液体流路32a,32bの下流側でさらに分岐して、連通流路43a,43b,44a,44bを介して4つのヘッド流路82に導入される。すなわち、1つの弁ユニット23から、伝送基板22の厚さ方向の両側にある2つの単位ヘッド7にインクが供給される。詳しく説明すると、
図7(a)に示すように、伝送基板22に対して第1の液体流路32a側に配置された単位ヘッド7の第1のヘッド流路82a(外側のヘッド流路82)には、第1の連通流路43aを介して第1の液体流路32aからのインクが供給される。また、当該単位ヘッド7の第2のヘッド流路82b(内側のヘッド流路82)には、第2の連通流路44bを介して第2の液体流路32bからのインクが供給される。一方、
図7(b)に示すように、伝送基板22に対して第2の液体流路32b側に配置された単位ヘッド7の第1のヘッド流路82a(外側のヘッド流路82)には、第1の連通流路43bを介して第2の液体流路32bからのインクが供給される。また、当該単位ヘッド7の第2のヘッド流路82b(内側のヘッド流路82)には、第2の連通流路44aを介して第1の液体流路32aからのインクが供給される。なお、伝送基板を挟んで表裏を反転して配置された弁ユニットでは、第1の液体流路および第2の液体流路に、上記した説明とは逆の連通流路が接続される。
【0040】
そして、各ヘッド流路82がインクで満たされた状態で、制御部からの駆動信号を、伝送基板22およびフレキシブルケーブル79を介して圧電素子65に供給することで、圧電素子65を撓ませる。これにより、圧力室61内に圧力変動が生じ、この圧力変動を利用することでノズル57からインク滴を噴射させている。
【0041】
このように、第1のヘッド流路82aは、第1の液体流路32a又は第2の液体流路32bのうち、当該単位ヘッド7が配置された面側の一方の液体流路32と連通し、第2のヘッド流路82bは、第1の液体流路32a又は第2の液体流路32bのうち、当該単位ヘッド7とは伝送基板22を跨いで反対に位置する面側(反対面側)の他方の液体流路32と連通するので、複雑な液体流路を形成することなく、複数のノズル列49を有する単位ヘッド7を伝送基板22の両面側に配列することが可能になる。また、複雑な液体流路を形成する必要が無いため、液体流路を配管する際の作業性が向上する。さらに、単位ヘッド7に備えられたフレキシブルケーブル79は、一枚の基板で構成された伝送基板22の両面のうち当該単位ヘッド7が配置された側の面に接続されるので、フレキシブルケーブル79の接続が容易になる。また、伝送基板22の一方の面側に接続されるフレキシブルケーブル79と、他方の面側に接続されるフレキシブルケーブル79とが伝送基板22の板厚方向において重畳可能になるため、単位ヘッド列27の列設ピッチを短くでき、ヘッドユニット2の小型化が可能になる。さらに、伝送基板22の少なくとも一方の面側に、当該伝送基板22の面方向に沿って延在した金属板24を備え、該金属板24は、伝送基板22とフレキシブルケーブル79との接続部分と対向するように、当該フレキシブルケーブル79が挿通可能な開口部29を備えたので、ヘッドユニット2に剛性を与えることができる。例えば、伝送基板22にフレキシブルケーブル79を熱圧着する際に、この熱によってケース25(又はヘッドユニット2自体)が変形することを防止できる。また、ヘッドユニット2の外部から伝送基板22に向かう電磁波等のノイズを遮蔽することができる。
【0042】
ところで、上記した実施形態では、1つの単位ヘッド列27が5つの単位ヘッド7によって構成されたが、これには限られず、複数の単位ヘッドによって構成することができる。また、単位ヘッド7のノズル面58には、2列のノズル列49が設けられたが、これには限られず、複数のノズル列を設けることもできる。また、ノズル列はノズルが一直線状に列設されたノズル列に限られず、例えば、単位ヘッドの列設方向(記録紙の紙幅方向)に対して斜めに配列されたノズル列や、記録紙の紙幅方向に沿って配列され、隣接するノズルが記録紙の搬送方向(記録紙の紙幅方向に直交する方向)に対して交互にずれた所謂2次元配置型のノズル列(ノズル群)でもよい。要は、単位ヘッドのフレキシブルケーブルを挟んだ両側にそれぞれノズル列(ノズル群)が配置され、これらのノズル列(ノズル群)にインクを供給する流路が、フレキシブルケーブルを挟んだ両側にそれぞれ形成されていれば本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、上記した実施形態では、金属板24が伝送基板22を挟んで2枚設けられたが、これには限られず、伝送基板の少なくとも一方の面側に設けられていればよい。また、上記した実施形態では、圧力発生手段として、所謂撓み振動型の圧電素子65を例示したが、これには限られず、例えば、所謂縦振動型の圧電素子や発熱素子を採用することも可能である。
【0043】
さらに、上記した実施形態では、1つの弁ユニット23から連通流路43a,43b,44a,44bを介して4つのヘッド流路82(2つの単位ヘッド7)にインクを供給したが、これには限られない。例えば、伝送基板の厚さ方向の一側に開閉弁と第1の液体流路とを有する弁ユニットを配置し、他側に開閉弁と第2の液体流路とを有する弁ユニットを配置してもよい。すなわち、1つの弁ユニットから連通流路を介して2つのヘッド流路にインクを供給するように構成しても良い。1つの弁ユニットから2つのヘッド流路にインクを供給する場合、1つの弁ユニットから4つのヘッド流路にインクを供給する場合と比べて、弁ユニット内のインクの流量が相対的に減るため、流路内の圧力損失が下がり、ヘッド流路内にインクを供給し易くなる。しかしながら、上記した実施形態のように1つの弁ユニットから4つのヘッド流路にインクを供給する場合、4つのヘッド流路に対して開閉弁が1つでよいため、小型化が可能になる。なお、伝送基板の厚さ方向の両側にそれぞれ弁ユニットを配置する場合、伝送基板を挟んで対になる2つの弁ユニットが、本発明における液体流路部材に相当する。
【0044】
そして、上述した実施形態では、インクジェットプリンターに搭載されるインクジェット式記録ヘッドを例示したが、インク以外の液体を噴射するものにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも本発明を適用することができる。