(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1パターンにおいて、格子の基礎となる多角形と中心を共有する円であって、当該円の半径rが、当該多角形の辺から中心までの垂線の長さvを超え、当該多角形の角から中心までの直線の長さd未満である円を想定した場合に、円同士が重なる領域内、又は円同士が重なる領域を含む領域に、細長のエンボス部(30)が形成されている
請求項1又は請求項2に記載のトップシート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明者らは、様々なエンボス部の形状や配置をしたトップシートをテープ型おむつに用いて消費者テストを実施するなかで、エンボスに関して消費者がもつ印象に、以下のような傾向があることを見出した。
(1)連続した線で形づくられる多角形の凹状エンボスを施したトップシートは、ベビを代表とする爬虫類や魚の鱗などを想起させるため、低く評価する消費者がある割合存在する。
(2)分断した線で形づくられる凹状エンボスからなるトップシートは、凹状のエンボスによって凸状に浮き出すパターンよりも、凹状のエンボスによってへこんだ部位に注目が集まり、厚み方向の通気性が良好なものであることを想起させるため、高い評価をする消費者が多い。前記の如く吸収性物品における「むれ」はかぶれに直結するものとして、重要評価項目である。
【0007】
次に、本発明者らは、実際に使用してみた後に良かったと感じた点や、不具合を感じた点について調査したところ、以下のことがわかった。
(3)連続した線で形づくられる凹状エンボスは、使用後の肌に跡がつく場合があり、そのことを良く感じない消費者がある割合存在する。
(4)上記(2)のもので実際に通気性の良さを実感できなくても、最初に得た「見た目」の通気性が良好に感じられるため好まれることがわかった。
【0008】
以上のような調査の結果から、本発明者らは、凹状の不連続線からなるエンボス部を格子状に配置したトップシートについて開発を進めたが、従来の技術では、凹状のエンボスを有するトップシートはシート面内一様に同じパターンを配置することが一般的であった。従来の技術のように、トップシートに凹状のエンボスが続くと、その部分が溝になって排泄物が吸収体の幅方向に拡散して吸収体が有効利用されずに、漏れにつながる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、皮膚刺激性が低く、視覚的にも消費者に好まれ、漏れを軽減することが可能なトップシート、及びそれを備える吸収性物品を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは、上記の従来発明の問題点を解決する手段について鋭意検討した結果、着用者の肌に接する液透過性のトップシートを、幅方向に、中央部分と左右両側部分に区分し、中央部分においては、複数の細長のエンボス部によって格子状の規則的なパターンを形成しつつも、両側部分においては、複数の細長のエンボス部を格子状に配置する共に、周囲を複数のエンボス部で囲われた筋状の隆起部を一又は複数箇所に設けるパターンを形成することで、皮膚刺激性が低く、視覚的にも消費者に好まれ、漏れを軽減することが可能なトップシートを得ることができるという知見を得た。そして、本発明者らは、上記知見に基づけば、従来技術の課題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。
具体的に説明すると、本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
本発明の第1の側面は、吸収性物品用のトップシートに関する。
トップシート1は、積層された複数のシート部材が、エンボス加工によって厚さ方向に接合されることにより形成されている。トップシート1は、長手方向及び幅方向を有し、この幅方向に、中央部分10と、当該中央部分10の左右両側に位置する両側部分20とに区分される。
中央部分10には、複数の凹状のエンボス部30が、第1パターンで形成されている。この第1パターンは、多角形の格子を想定したときに、各格子辺上に、細長のエンボス部30を形成した規則的なパターンである。
他方、両側部分20には、複数の凹状のエンボス部30が、第2パターンで形成されている。この第2パターンは、多角形の格子を想定したときに、複数の格子辺上に、細長のエンボス部30を形成しつつ、当該エンボス部30を形成しない格子辺を連続させることにより、複数の当該エンボス部30によって周囲を囲われた筋状の隆起部40を一又は複数箇所に形成したパターンである。
【0012】
上記構成のように、トップシート1を形成する複数のシート部材をエンボス加工によって接合し、トップシート1に凹凸を形成することで、トップシート1の表面と着用者の肌が接触する面積が少なくなるため、皮膚刺激性を低くすることができる。また、上記構成のように、細長のエンボス部30を多角形の格子の格子辺上に配置したパターンは、花柄のような見た目となるため、視覚的にも消費者に好まれると考えられる。さらに、トップシート1の左右の両側部分20に筋状の隆起部40を形成することにより、尿などの横漏れを軽減することができる。
【0013】
本発明のトップシートは、第1パターン及び第2パターンにおいて、多角形の格子の格子辺上に形成された細長のエンボス部30は、当該格子辺よりも、長さが短く形成されており、各エンボス部30は、それぞれ離間していることが好ましい。
【0014】
上記構成のように、細長のエンボス部30の長さを、格子辺の長さよりも短くして、エンボス同士を離間させることで、トップシート1の表面に形成されたエンボスのパターンが、さらに花柄に近い見た目となる。なお、細長のエンボスは、格子辺の1/4以上の長さを有していることが好ましい。
【0015】
本発明のトップシートは、第2パターンにおいて、複数の格子単位の各格子辺上に細長のエンボス部30を形成することで、複数の格子単位の目の位置に凸部31が形成されており、筋状の隆起部40は、凸部31が複数個直線状に連なることにより形成されていることが好ましい。すなわち、凸部31同士の間の位置におけるエンボス部30を省略することで、凸部31同士が連なるようになる。
【0016】
上記のように、第2パターンにおいても、格子を形成する複数の単位格子の各格子辺上にエンボス30を設けて複数の凸部31を形成しつつ、この凸部31を複数個連結させた隆起部40を形成することで、トップシートの両側部分20の皮膚刺激性が低減され、且つ、防漏性が高まる。
【0017】
本発明のトップシートにおいて、第1パターンと第2パターンの基礎となる格子は、三角形、四角形、六角形、又は八角形と四角形の組み合わせの格子であることが好ましい。
【0018】
上記構成のように、格子の形状を上記多角形の格子とすることにより、格子辺上に形成された細長のエンボス部30がなすパターンが、美麗な見た目となる。
【0019】
本発明のトップシートにおいて、第1パターンと第2パターンの基礎となる格子は、同一形状であることが好ましい。
【0020】
上記構成のように、第1パターンの格子の形状と第2パターンの格子の形状を同一ものとすることで、格子辺上に形成された細長のエンボス部30がなすパターンが、統一された美麗な見た目となる。
【0021】
本発明のトップシートにおいて、第1パターンと第2パターンの基礎となる格子は、形状又は大きさが異なるものであってもよい。
【0022】
上記構成のように、トップシート1の中央部分10における第1パターンと、両側部分20における第2パターンとで格子の形状を異ならせることにより、この中央部分10と両側部分20の特性を変化させることができるため、トップシート1の用途が拡がる。
【0023】
本発明のトップシートは、第1パターンにおいて、格子の基礎となる多角形と中心を共有する円であって、当該円の半径rが、当該多角形の辺から中心までの垂線の長さvを超え、当該多角形の角から中心までの直線の長さd未満である円を想定した場合に、円同士が重なる領域内、又は円同士が重なる領域を含む領域に、細長のエンボス部30が形成されていることが好ましい。
【0024】
上記構成のように、格子の多角形と中心を共有する円を想定し、円同士が重なる領域に細長のエンボス部30を配置することで、複数のエンボスが花びらのようになった花柄を想起させる外観となり、消費者の印象を良くすることができる。
【0025】
本発明のトップシートは、第1パターンにおいて、細長のエンボス部30の形状が、円同士が重なる領域の形状と一致する形状であることが好ましい。
【0026】
上記構成のように、細長のエンボス部30の形状を、円同士が重なった領域の形状と一致させることで、そのエンボス部30に囲われた凸部31が厚さ方向に効果的に隆起するようになり、トップシートと着用者の肌の接触面積が低減される。
【0027】
本発明の第2の側面は、上記第1の側面に係るトップシートを用いた吸収性物品に関する。すなわち、本発明の吸収性物品は、液透過性のトップシート1と液不透過性のバックシート2の間に、吸収体3が介在する。
ここで、トップシート1は、長手方向及び幅方向を有し、幅方向に、中央部分10と、当該中央部分10の左右両側に位置する両側部分20とに区分される。中央部分10には、複数の凹状のエンボス部30が、第1パターンで形成されており、この第1パターンは、多角形の格子を想定したときに、各格子辺上に、細長のエンボス部30を形成した規則的なパターンである。また、両側部分20には、複数の凹状のエンボス部30が、第2パターンで形成されており、この第2パターンは、多角形の格子を想定したときに、複数の格子辺上に、細長のエンボス部30を形成しつつ、当該エンボス部30を形成しない格子辺を連続させることにより、複数の当該エンボス部30によって周囲を囲われた筋状の隆起部40を一又は複数箇所に形成したパターンである。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、皮膚刺激性が低く、視覚的にも消費者に好まれ、漏れを軽減することが可能なトップシート、及びそれを備える吸収性物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
なお、本願明細書において、トップシートの「長手方向」とは、基本的に、吸収性物品に適用された場合に、前身頃と後身頃を結ぶ方向であり、「幅方向」とは、この長手方向に平面的に直交する方向である。
また、本願明細書では、「格子」という表現を用いているが、ここにいう「格子」とは、多角形の頂点に位置する格子点を格子辺で繋いだ格子単位が、規則的に複数連なってできた網目状の形状を意味する。格子では、各格子単位ごとに、格子点と格子辺で囲われた多角形状の目が存在する。
また、本願明細書において、「A〜B」とは、特に断りのない限り、「A以上B以下」であることを意味する。
【0031】
図1は、本発明に係るトップシート1の平面図を示している。トップシート1は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられ、着用者の股下の肌に直接接し、尿などの液体を吸収体へと透過させるためのシート状の部材である。このため、トップシート1は、柔軟性が高い液透過性材料で構成されることが好ましい。トップシート1は、吸収体を肌対向面側から被覆するように配置される。
【0032】
図1に示されるように、本実施形態のトップシート1は、略長方形に形成されており、長手方向と、幅方向とを有している。また、トップシート1は、幅方向(
図1の左右方向に)、中央部分10と、この中央部分10の左右両側方に位置する両側部分20とに区分されている。例えば、中央部分10の幅は、両側部分20の一方の幅よりも幅広であり、両側部分20の両方を足した幅よりも幅狭とすることが好ましい。例えば、中央部分10の幅は、両側部分20の一方の幅を100%とした場合に、105%〜195%、又は120%〜180%であることが好ましい。なお、両側部分20の一方の幅は、10mm以上であることが好ましく、10mm〜80mm又は20mm〜60mmとすることが好ましい。
【0033】
図2は、
図1に示した線分Xにおけるトップシート1の断面図を示している。
図2に示されるように、本実施形態のトップシート1は、2枚のシート部材(上層シート1aと下層シート1b)が重ねられた状態でエンボス加工が施して、2枚のシート部材を接合することによって形成される。エンボス加工は、基本的に、外周面に所定パターンの突起部が設けられたエンボスロールと、平滑面を有するアンビルロールとの間で、2枚の熱可塑性のシート部材を加熱しながら挟み込むことにより接合させる加工方法である。エンボス加工を施すことにより、エンボスロールの突起部が接触した位置に、上層シート1aに凹状のエンボス部30が形成され、このエンボス部30において、上層シート1aと下層シート1bが融着する。また、
図2に示されるにように、上層シート1aと下層シート1bが、エンボス加工によって接合されることで、接合点(凹状のエンボス部30)おいては、上層シート1a厚さが薄くなるため、エンボス部30が形成されていない箇所は、相対的に凸状に浮いた凸部31となる。上記のようにエンボスロールと平滑なアンビルロールとの組合せ以外にも凸状のエンボスが彫刻されたエンボスロール同士の組合せを用いることができる。この場合は得られたシートは両面に凸状に浮いた凸部をもつ。このトップシートを吸収性物品に用いた場合、裏面の凸部と相対的に存在する凹部はトップシートを透過した体液を拡散する効果が期待できる。これらエンボスロールは加熱され、複数のシートを挟みこんだ状態で加熱・加圧によって複数のシート部材を接合する。したがって、アンビルロールに平滑ロールを用いた場合は、平滑ロールの熱によってシート部材が平滑ロールに当たる面が融けて、手触りが硬くなりやすい。エンボスロール同士で熱エンボス加工する場合は、シート部材に触れる部分が少ないので、熱によるシート部材の手触りの悪化を少なくすることができる。
【0034】
本発明のエンボス加工では上記のごとき加熱、加圧によるエンボス接合であってもよいし、凸状のエンボスパターンを彫刻されたエンボスロールと超音波で振動するヘッドとの間を複数のシート部材を通過させて、厚さ方向に超音波接合させることもできる。この場合、前記のような熱による手触り感の劣化は非常に低くすることができる。
【0035】
上記のように、本発明のトップシート1は、複数のシート部材をエンボス加工によって熱融着することにより形成されるものである。このため、トップシート1を構成する各シート部材は、熱可塑性樹脂を原料とした繊維からなる不織布であることが好ましい。トップシート1を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、又はナイロンが挙げられる。また、トップシート1を構成する不織布の繊度の例としては、0.6dtex〜10dtexであることが好ましく、1dtex〜6dtexであることが特に好ましい(1dtex=1万メートルが1g重量の重さになる太さ)。また、シート部材の構成繊維は、融点の異なる2種類以上の熱可塑性樹脂からなる複合繊維が好ましい。例えば、サイドバイサイド型や、コアシェル型などのバイコン繊維が好適である。融点が低い樹脂同士を溶かして熱接合をすると、接合点の手触りが良好となる効果が期待できる。トップシート1は、上記熱可塑性不織布を用い、2層または3層の複数層を重ねて接合することが好ましい。トップシート1が2層のシート部材で構成される場合において、上層シートと下層シートは、上層シートの繊維の太さが、下層シートの繊維の太さと等しいか、又は下層シートの繊維の太さよりも細いことが好ましい。また、トップシート1が2層のシート部材で構成される場合において、上層シートと中層シートの関係は、上層シートの繊維の太さが、中層シートの繊維の太さと等しいか、又は中層シートの繊維の太さよりも細いことが好ましい。その他、下層シートの繊度は、自由に選択できる。中層シートは嵩があって、上層シートと下層シート間にできる空間を埋めるように圧縮充填するものが好ましい。
【0036】
図1は、上記トップシート1に形成された凹状のエンボス部30のパターンを示している。また、
図3(a)は、
図1に示された破線の枠内の拡大図である。また、
図3(b)では、エンボス部30の形状や配置の寸法の一例を示している。さらに、
図4は、エンボス部30と共に、このエンボス部30の形状や配置を設計する際の補助線を示したものである。これらの図に示されるように、本実施形態において、トップシート1の中央部分10には、略斜方形の格子を想定したときに、この格子の各格子辺上に、細長のエンボス部30が形成されている。ここにいう「格子」とは、多角形の頂点に位置する格子点を格子辺で繋いだ格子単位が、規則的に複数連なってできた網目状の形状を意味するものであり、格子では、各格子単位ごとに、格子点と格子辺で囲われた多角形状の目が存在する。本発明において、格子は実在するものではなく、エンボス部30の形状や配置位置を特定するための補助線として利用される仮想的な概念である。
図3(a)では、格子をなす格子線の一部を破線で示している。
図1や
図3に示されたエンボスのパターンにおいて、格子は斜方形を基礎としたものとなっている。なお、斜方形とは、正方形を45°傾斜させた図形である。すなわち、斜方形の格子の格子線は、トップシート1の長手方向及び幅方向に延びる想定線に対して45°傾斜している。
【0037】
図1、
図3、
図4に示されるように、トップシート1の中央部分10に形成されたエンボス部30のパターンは、斜方形の格子を想定したときに、各格子辺上に、細長のエンボス部30が形成されている。中央部分10におけるエンボス部30のパターンを、本願明細書では、第1パターンと称している。第1パターンにおいて、各エンボス部30は、不連続であるものの、トップシート1は、一見格子状に浮いた略四角形のような形状が複数配置された外観となる。斜方形の格子の格子辺上に形成された細長のエンボス部30は、当該格子辺よりも長さが短く形成されているため、結果として、各エンボス部30は、それぞれ離間した状態となっている。なお、細長のエンボス部30は、少なくとも格子辺の1/4以上、1/3以上、又は1/2以上の長さを有していることが好ましい。このように、複数の格子単位の各格子辺上に細長のエンボス部30を形成することで、複数の格子単位の目の位置に凸部31が形成されている。凸部31とは、
図2に示されるにように、上層シート1aと下層シート1bが、エンボス加工によって接合されることで、接合点(凹状のエンボス部30)おいて上層シート1a厚さが薄くなった結果、相対的に凸状に浮いた構造となったエンボス部30が形成されていない部分を意味する。
【0038】
また、
図1に示されるように、トップシート1の両側部分20においても、基本的に、複数のエンボス部30が、斜方形の格子の格子辺上に形成されたパターンをなしている。両側部分20におけるエンボス部30のパターンを、本願明細書では、第2パターンと称している。第2パターンでは、基本的には、中央部分10の第1パターンと同じ形状の凹状エンボス部30が形成されているが、その中に、凹状のエンボス部30の一部を欠いた結果として、凸部31が連続して形成された筋状の隆起部40が出現している。すなわち、両側部分20の第2パターンは、斜方形の格子を想定したときに、複数の格子辺上に、細長のエンボス部30を形成しつつ、当該エンボス部30を形成しない格子辺を連続させることにより、複数の当該エンボス部30によって周囲を囲われた筋状の隆起部40を一又は複数箇所に形成したパターンとなる。第2パターンにおいても、複数の格子単位の各格子辺上に細長のエンボス部30を形成することで、複数の格子単位の目の位置に凸部31が形成されている。ただし、複数の凸部31の一部は、複数個直線状に連なっており、筋状の隆起部40となっている。すなわち、複数個直線状に連なった凸部31の間において、エンボス部30は省略されている。
【0039】
このように、
図1等に示された実施形態において、両側部分20には、エンボス部30の規則的なパターンの中に、筋状の隆起部40が複数箇所に形成されている。各隆起部40は、複数個の凸部31が直線状に連なった構造となる。各隆起部40は、例えば、3箇所以上の凸部31が直線状に連なった形状であることが好ましく、4箇所〜10箇所の凸部31が連なった形状であってもよいし、5箇所〜9箇所の凸部31が連なった形状であってもよい。
図1、
図2、
図3(a)に示した例では、隆起部40は、7箇所の凸部31が連なった構造となっている。
図2は、
図1の線分Xの断面における凹状エンボス部30で接合された部位と、エンボス部30で囲まれた凸部31と、凸部31が連続した隆起部40の構造を示している。
図2では、上層シート1aと下層シート1bが接合されて、凹状のエンボス部30を形成されており、上層シート1aと下層シート1bが離れた部分が、凸部31や隆起部40となっている。
図3(a)では、隆起部40が形成された箇所を、網掛けを施して示している。
図3(a)に示されるように、隆起部40は、エンボス部30のパターンの基礎をなす格子に対応して、トップシート1の長手方向及び幅方向に延びる想定線に対して、45°傾斜した直線状となっている。
【0040】
また、
図2(b)には、中央部分10の第1パターンと両側部分20の第2パターンの基礎となるエンボス部30の形状や配置の具体的な寸法の例が示されている。
図2(b)に示されるように、凹状のエンボス部30の幅の一例は0.6mmであり、長さの一例は約2.1mmである。なお、エンボス部30の幅は、0.3mm〜1.2mmであることが好ましく、エンボス部30の長さは、1.3mm〜4mmであることが好ましい。また、
図2(b)に示されるように、凹状のエンボス部30同士の間(すなわち、格子辺同士の間)は、5mm(エンボス部が形成されていない領域の間隔は4.4mm)である。凹状エンボス部30同士の間の間隔は、例えば、3mm〜8mmであることが好ましい。また、想定線でみると、直径5.6mmの円を格子状に配置して、隣り合った円とは0.6mm重なった位置関係になっている。格子は。トップシートの長さ方向に対して角度が45°傾いている。
【0041】
図4(a)は、凹状のエンボス部30を拡大したものであり、エンボス部30の形状と共に、その配置を設計するために利用する想定的な格子と円を示したものである。
図4(a)に示されるように、斜方形の格子と、この格子をなす斜方形と中心を共有する円とを想定する。そして、格子状に配置され直径の等しい円が重なる部分に、エンボス部30が形成されている。すなわち、
図4(b)に示されるように、格子をなす斜方形の一辺から中心までの垂線の長さを“v”とし、斜方形の各から中心までの直線の長さを“d”とする。また、格子をなす斜方形と中心を共有する円の半径を“r”とする。このような場合、円の半径rは、斜方形の辺から中心までの垂線の長さvを超え、当該斜方形の角から中心までの直線の長さd未満となる(v<r<d)。円の半径rがこのような条件を満たすことで、格子状に配置されたときに、隣り合う円と重なる部分が生じる。そして、各エンボス部30は、基本的に、円同士が重なる領域内、又は円同士が重なる領域を含む領域に、形成されていることが好ましい。図示は省略するが、エンボス部30の形状は、細長い長方形にすることもできる。ただし、エンボス部30の形状は、
図4(a)に示されるように、円弧状の線が対称的に形成された丸味のある花弁のような形状であることが好ましい。例えば、エンボス部30の外形は、円同士が重なる領域の形状と一致するものであることが好ましい。このように、エンボス部30を細長い丸味のある形状とすることで、隣り合う複数のエンボス部30が、花柄のような見栄えとなるため、消費者に対して肌に優しい印象を与えることができる。また、
図4(a)に示されるようにエンボス部30の形状と配置を設計することで、隣り合ったエンボス部分30が連続した線になることはないため、消費者に対して、1個1個のエンボス部30が通気性のある穴であるような印象を与えることができる。
【0042】
続いて、
図5及び
図6を参照して、
図4等に示したエンボス部30のパターンとは異なる、エンボス部30のパターンについて説明する。
【0043】
図5は、凹状のエンボス部30が、六角形を基礎とする格子の格子辺の位置に形成された例である。
図5に示されたパターンにおいても、格子単位の各格子辺に凹状のエンボス部30が形成されているため、この格子辺によって囲まれた格子の目の位置に、相対的に厚み方向に突出した凸部31が形成される。
図5に示されたパターンにおいても、複数の凸部31が格子状に配置された外観となるが、
図4等に示したパターンに比べると、凸部31の外観は、円形の凸部に近づく。
図5に示されたパターンの効果は、
図4と
図5を比較すると理解しやすい。すなわち、
図4において太い点線の丸で囲んだ部位と、
図5において太い点線の丸で囲んだ部位とでは、相対的に、
図5の部位の方が小さくなる。この太い点線の丸で囲んだ部位は、格子の格子点を中心として、エンボス部30が形成されていない領域を示している。この格子点の周囲は、エンボス部30同士の距離が比較的近くなっているため、格子の目の位置に形成された凸部31と比べ、シート部材が厚み方向に突出しにくくなっている。このため、格子点を中心としたエンボス部30の形成されていない領域は、なるべく小さくした方がよい。また、格子点を中心としたエンボス部30の形成されていない領域を小さくすることで、格子の目の位置に形成された凸部31の総面積が大きくなる。そして、凸部31の総面積を大きくすることにより、手触りの柔らかいトップシート1を得ることができる。このように、六角形を基礎とする格子のパターンは、トップシート1の手触りが柔らかなくなるという点において、四角形(正方形や斜方形)を基礎とする格子のパターンよりも好ましい。
【0044】
図6は、凹状のエンボス部30が、八角形と四角形により形成される格子の格子辺上に形成されたパターンである。すなわち、4つの八角形の単位格子に四方を囲われるようにして、一つの四角形の単位格子が設けられている。この例においても、円の想定線をみると、1つの大きい円が、小さい4つの円と大きい4つの円にそれぞれ重なるように配置される。
図6に示されたパターンの効果は、四角形の格子単位の格子辺上に形成されたエンボス部30に注目すると理解しやすい。すなわち、略四角形に配置された凹状のエンボスの間隔が狭くなると、略四角形に凸になった部分は隆起しにくい。このため、この部分を広くするためには、略八角形を大きくする必要がある。すなわち、略八角形に配置する凹状のエンボス部30の間隔を、
図5で示した略六角形に配置する凹状のエンボス部30よりも広くすることが好ましい。
図5の略六角形の個々を大きくすると、トップシート面の凸部31の大きさが一度に大きくなってしまうが、
図6の略八角形では、略四角形が混在するため、緩和される。また、違った見方をすると、略四角形部分の隆起が抑えられるので、仮に
図5と
図6の想定円の大きさが同じ場合であっても、接合部の掘りが深くなることが期待できる。凹状のエンボス部30の配置及び形状については、このような特徴を設計に活かして選択すればよい。
【0045】
本発明における複数の凹状エンボスの第1パターンおよび第2パターンは、多角形の格子を想定したときに、各格子辺上に沿って、細長のエンボスが配置されている。前記多角形は、トップシートの面を隙間なく埋めることができる幾何学形状であることが好ましい。たとえば、三角形(図示省略)、四角形(
図4)、六角形(
図5)、八角形と四角形の組み合わせ(
図6)のような形状が好ましい。このような形状であればエンボスを規則正しく、効率よく配置することができ、複数のシート部材がこのような想定格子上に配置された凹状エンボスによって接合されることによって、最上層のシートが規則正しく表面側に凸状に浮いて、手触りも見た目も優れたトップシートを得ることができる。
【0046】
続いて、
図7を参照して、トップシート1の両側部分20に隆起部40を形成した場合の尿の流れについて説明する。
図7(a)は、トップシート1が用いられた吸収性物品100の断面図であり、尿の流れを矢印で示している。
図7(a)に示されるように、使い捨ておむつ等の吸収性物品100は、一般的に、液透過性のトップシート1と、液不透過性のバックシート2の間に、吸収体3を介在させることにより構成される。
図7(a)にあるように、吸収性物品100は着用された際において、着用者の腹部に接する前身頃101、着用者の背部に接する後身頃102、及び前身頃101と後身頃102の間に位置する股下域103のうち、股下域103を中心として曲がった状態で着用される。このため、例えば着用者が男性である場合などに、排泄された尿は吸収性物品100の前身頃101に最初に接触し、吸収体3によって吸収されるものの、吸収しきれなかった分が股下域103や両側部分20へと流れ込もうとする。ここで、
図7(b)では、本発明のトップシート1の平面図を、排泄された尿の流れと共に示している。上記のように吸収体3によって吸収しきれなかった尿は、トップシート1の中央部分10から両側部分20に向かって流れ込む。このとき、
図7(b)に示されるように、トップシート1の両側部分20の複数箇所に、凸部31が連続した隆起部40が存在していると、この隆起部40によって、両側部分20に流れた尿を中央部分10へと誘導することができる。このように、本発明のトップシート1によれば、繰り返しの吸収で排尿部近傍の吸収体3の吸収能力を越えて排尿がなされた場合であっても、吸収しきれなかった尿を適切に誘導することができ、両側部分から尿が横漏れすることを効果的に防止できる。
【0047】
また、
図7(b)等に示されるように、トップシート1の両側部分20に、トップシートの長手方向及び幅方向に斜めに傾斜した隆起部40を形成することで、トップシート1の中心部分10の方向へと排尿を誘導することができる。各隆起部40が、トップシート長手方向に対して傾斜する角度は、20°〜80°、30°〜60°、40°〜50°、又は45°であることが好ましい。また、
図7(b)等に示されるように、トップシート1を平面視した場合に、両側部分20のそれぞれに形成された隆起部40は、互いにハの字型をなすように傾斜していることが好ましい。すなわち、両側部分20の一方に形成された隆起部40と、両側部分20の他方に形成された隆起部40の形状は、トップシート1の長手方向に延びる仮想線に対して線対称の形状となることが好ましい。
図7(b)に示されるように、前身頃101側から股下域103側への尿の流れを形成したい場合には、両側部分20に形成された一対の隆起部40を、前身頃101側が開き後身頃102側が閉じた状態の「逆ハの字型」とすればよい。他方、前身頃101における尿の流れを阻害したい場合には、両側部分20に形成された一対の隆起部40を、前身頃101側が閉じ後身頃102側が開いた状態の「ハの字型」とすればよい。
【0048】
図8は、上記パターンとは異なるパターンでエンボス部30が形成された例を示している。
図8に示した例では、トップシート1の中央部分10の第1パターンを形成している格子の多角形と、両側部分20の第2パターンの形成している格子の多角形を異ならせている。すなわち、
図8の例において、中央部分10の第1パターンは、斜方形の格子の格子辺上に、規則的にエンボス部30を形成したパターンとなっている。他方、両側部分の第2パターンは、正方形の格子の格子辺上に、複数のエンボス部30を形成したパターンとなっている。また、第2パターンでは、正方形の格子単位の目の位置に凸部31が形成されており、この凸部31が複数個直線状に連結することにより、筋状の隆起部40が出現している。
図8に示された例において、隆起部40が延びる方向は、トップシート1の長手方向と一致する。すなわち、両側部分20の第2パターンは、正方形の格子を想定したときに、複数の格子辺上に、細長のエンボス部30を形成しつつ、当該エンボス部30を形成しない格子辺を連続させることにより、複数の当該エンボス部30によって周囲を囲われた筋状の隆起部40を一又は複数箇所に形成したパターンとなる。このように、トップシート1の両側部分20に、トップシート1の長手方向に沿って筋状の隆起部40が出現するようにエンボス部30を形成することで、中央部分10において排尿の吸収が間に合わなくなった場合でも、排尿が両側部分20に流れることを防止できる。
【0049】
図9は、さらに別のパターンでエンボス部30が形成された例を示している。
図9に示した例では、トップシート1の中央部分10の第1パターンを形成している格子の多角形と、両側部分20の第2パターンの形成している格子の多角形は同一である。すなわち、
図9の例において、中央部分10の第1パターン及び両側部分20の第2パターンは、斜方形の格子の格子辺上に、エンボス部30を形成したパターンとなっている。ただし、両側部分20に形成された隆起部40は、「ハの字型」の隆起部40と「逆ハの字型」の隆起部40とが、トップシート1の長手方向に交互に形成されている。すなわち、両側部分20の一方に形成された隆起部40を見ると、隆起部40の傾斜方向がジグザク状になるように形成されている。このように、隆起部40をジグザク状に形成することで、中央部分10から両側部分20に排尿が流れることを防止ししつつ、両側部分20に流れ込んだ排尿を中央部分10へと導くことができるようになる。
【0050】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態を中心に説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。