特許第6044416号(P6044416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044416
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】自動取引装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   G07D9/00 421
   G07D9/00 426Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-65197(P2013-65197)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-191502(P2014-191502A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089093
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 健治
(72)【発明者】
【氏名】久保田 敬一
(72)【発明者】
【氏名】西村 明洋
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−160168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平面と略垂直面を有し、前記略垂直面の頂部近傍を回動中心として装置本体に対して開閉可能な顧客操作部と、
前記顧客操作部の前記略水平面の表面に設けられたハンドセットと、
前記顧客操作部の裏面に取り付けられ前記ハンドセットのケーブルを巻き取るケーブル巻取機とを有し、
前記ケーブル巻取機は、前記ケーブルを巻き取る巻取中心軸が上下方向に傾きを有するように傾斜させた状態で取り付けられることを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
前記ケーブル巻取機は巻き取ったケーブルを該ケーブル巻取機の接線方向に前記ハンドセットに向けて引出すケーブル出口を有し、更に前記ケーブル巻取機は前記ケーブル出口の端部と前記ケーブル巻取機の巻取中心を結ぶ直線を軸にして前記傾斜させた状態で、前記顧客操作部の前記略水平面の裏面に取り付けられたことを特徴とする請求項1記載の自動取引装置。
【請求項3】
前記ケーブル出口付近に設けられた第1のガイド部材と、
前記第1のガイド部材と前記ハンドセットとの中間位置に設けられた第2のガイド部材を有し、前記ケーブルは、前記第1のガイド部材と前記第2のガイド部材に係合することにより、引出し方向が規制されることを特徴とする請求項2記載の自動取引装置。
【請求項4】
前記第2のガイド部材に係合する前記ケーブルを覆うケーブル押え部材を設けたことを特徴とする請求項3記載の自動取引装置。
【請求項5】
前記ケーブル巻取機は、前記巻取中心軸が前記顧客操作部の前記略水平面に45度±15度の前記傾斜した状態で取り付けられたことを特徴とする請求項1乃至4いずれか一記載の自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金融機関等に設置される自動取引装置、特に係員と対話をしながら操作を進めるためのハンドセットを有する自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関の営業店舗等に設置される自動取引装置(ATM)においては、現金の入出金取引をはじめ、残高照会、振込/振替、更には公共料金の支払取引等の多種取引が行われる。また、この自動取引装置は空港、コンビニエンスストア及びスーパーマーケット等にも設置されているため、様々な顧客が利用する。しかしながら、顧客によっては所望の取引を行うための必要な操作の仕方が分からない場合がある。このような事態を想定し、顧客と係員とがハンドセットを介して対話しながら操作を進める自動取引装置がある。
【0003】
上記自動取引装置において、運用中の障害対応等のために保守作業が必要となる場合がある。この保守作業を想定して、装置筐体の一部は開閉構造になっている。特に、タッチパネル等の顧客操作部を点検保守する場合には、顧客操作部の下側から作業する必要性が生じる。従って現実的には、顧客操作部を上方に回動退避させることが多い。
【0004】
特開平9−147182号公報(特許文献1)記載の自動取引装置は、略水平な第1の操作面と、該第1の操作面に対して略垂直な第2の操作面と、第1の操作面と第2の操作面との間に第1の操作面に対して所定の傾斜角を有して形成される第3の操作面を有する。この第3の操作面にハンドセットを埋め込むように取り付けた対面式自動取引装置である。このハンドセットは顧客と遠隔する係員との音声による通信を行うための送話器と受話器とで構成され、このハンドセットのケーブルは巻取装置によって巻取られる構造になっている。
【0005】
図9は従来の自動取引装置のハンドセットとケーブル巻取機の関係を側面から示す説明図である。自動取引装置1の顧客操作部80は略L字状に形成される。ハンドセット81は顧客操作部80に実装されたハンドセット載置部82に載置される。ハンドセット81にはケーブル83が接続され、ケーブル83は顧客操作部80の下部に実装されたケーブル巻取機84によって巻き取られている。ハンドセット81の使用時、顧客がハンドセット81を引出し方向Bに取出すと、ケーブル83はケーブル巻取機84から順次繰出される。そのため、ケーブルの引出し及び巻取り動作が円滑に行われるように、ハンドセットの引出し方向とケーブルの引出し方向が同一方向となるようにケーブル巻取機84を配置していた。ここで、ケーブル巻取機84の下部には他のユニット、例えば硬貨入出金部86が設置される。また、ハンドセット81とケーブル巻取機84が実装される顧客操作部80は、保守作業のため回動中心Pを中心に矢印A方向としての上方に回動退避させる。
【0006】
図10は同じく従来の自動取引装置のハンドセットとケーブル巻取機の関係を正面から示す説明図である。ハンドセット81は、自動取引装置1の顧客操作部80に向かって左側に設置される。ケーブル巻取機84も顧客操作部80に向かって左側に設置される。顧客操作部80の下部には、顧客操作部80に向かって右側に紙幣入出金部85が設置され、左側に硬貨入出金部86が設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−147182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術ではケーブル巻取機84の下側に設置される他のユニットとしての硬貨入出金部86は、ケーブル巻取機84を避けた形状にしなければならなかった。即ち、ケーブル巻取機84と下側に設置される硬貨入出金部86との間を境界86−1とすると、硬貨入出金部86はケーブル巻取機84の大きさの分、小さくする必要があるという問題があった。
【0009】
また、保守作業のためハンドセット81とケーブル巻取機84が実装される顧客操作部80を上方に回動退避させる際、ケーブル巻取機84が周囲の筐体、例えば前面カバー10に引っかかるおそれがあるという問題があった。従って、ケーブル巻取機84の回動軌跡を考慮して前面カバー10を前面側に突出させる必要があるため、自動取引装置1を小型化することは困難であった。
【0010】
本発明は、装置本体に対して開閉可能な顧客操作部を有する自動取引装置において、当該顧客操作部にハンドセットを実装し、ハンドセットのケーブルを巻き取るケーブル巻取機を前記顧客操作部の裏面に実装するのに際し、顧客操作部の上方への回動に支障がなく、かつケーブル巻取機の周囲のユニットに制限を与えることの少ない自動取引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために本発明は、略水平面と略垂直面を有し、前記略垂直面の頂部近傍を回動中心として装置本体に対して開閉可能な顧客操作部と、前記顧客操作部の前記略水平面の表面に設けられたハンドセットと、前記顧客操作部の裏面に取り付けられ前記ハンドセットのケーブルを巻き取るケーブル巻取機とを有し、前記ケーブル巻取機は、前記ケーブルを巻き取る巻取中心軸が上下方向に傾きを有するように傾斜させた状態で取り付けられることを特徴とする自動取引装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケーブル巻取機が顧客操作部の裏面側に傾斜して実装されるので、ケーブル巻取機の配設空間が少なくなり、ケーブル巻取機の周囲のユニットのスペースの確保が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施の形態に関わるケーブル巻取機の正面図である。
図2】第1の実施の形態に関わる自動取引装置の外観斜視図である。
図3】第1の実施の形態に関わる自動取引装置の左側面図である。
図4】第1の実施の形態に関わる自動取引装置の正面図である。
図5】第1の実施の形態に関わるケーブル巻取機の左側面図である。
図6】第1の実施の形態に関わる自動取引装置における顧客操作部の開閉状態の説明図である。
図7】第2の実施の形態に関わるケーブル巻取機の正面図である。
図8】第2の実施の形態に関わる第3のガイド部材の概念図である。
図9】従来の自動取引装置のハンドセットとケーブル巻取機の関係を側面から示す説明図である。
図10】従来の自動取引装置のハンドセットとケーブル巻取機の関係を正面から示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。図2は第1の実施の形態に関わる自動取引装置の外観斜視図である。自動取引装置1は金融機関の営業店やコンビニエンスストアなどに設置され、通信回線を介してホストコンピュータに接続される。自動取引装置1の前面には装置本体に対して開閉可能な顧客操作部2が設けられる。顧客操作部2は略水平面2−1と略垂直面2−2からなる略L字状に形成され、略水平面2−1の表面にはタッチパネルで構成される操作表示部21及びハンドセット22が設けられる。略水平面2−1の中央には操作表示部21を配置し、その左横にハンドセット22が位置する。なお、操作表示部21の右側には、指静脈又は手のひら静脈読取等の生体認証機器が配設される場合もある。
【0015】
顧客操作部2の略垂直面2−2には、顧客が操作するカード挿入排出口70及び通帳挿入返却口40が設けられる。なお、回動中心Pは保守作業において顧客操作部2を矢印A方向に回動させるための中心軸である。
【0016】
図3は第1の実施の形態に関わる自動取引装置の正面図である。自動取引装置1は、顧客操作部2、通帳処理部4、紙幣入出金部5、硬貨入出金部6、カード処理部7及び図示しない記憶部や、これらを制御する制御部等の各ユニットにより構成される。顧客操作部2の略垂直面2−2には、カード処理部7のカード挿入排出口70が設けられる。また、カード処理部7の左横には通帳処理部4の通帳挿入返却口40が設けられる。即ち、顧客操作部2の略垂直面2−2の奥側にカード処理部7と通帳処理部4が配設される。
【0017】
顧客操作部2の略水平面2−1の裏面には、紙幣入出金部5と硬貨入出金部6が並設される。上述した紙幣入出金口50(図2参照)を介して、この紙幣入出金部5が受け入れる紙幣や支払う紙幣の授受を行う。同様に、硬貨入出金部6が受け入れる硬貨や支払う硬貨の授受を行うのが前記硬貨入出金口60(図2参照)である。ハンドセット22の下部には、ハンドセット22のケーブル25を巻き取るケーブル巻取機3が設けられる。ケーブル巻取機3は略水平面2−1の裏面に設けられる。ケーブル巻取機3は硬貨入出金部6と顧客操作部2の間に配置する。本実施の形態に関わるケーブル巻取機3は後述するように顧客操作部2の略水平面2−1に対して45度±15度傾斜して取り付けられる。その結果、ケーブル巻取機3の周囲のユニットとしての硬貨入出金部6は、ケーブル巻取機3との境界36−1が境界36−2の通り変更することができるので、その分スペースを大きく取ることができる。
【0018】
図4は第1の実施の形態に関わる自動取引装置の左側面図である。顧客操作部2は、略垂直面2−2の頂部近傍2−3を回動中心Pとして、装置本体1に対して回動可能に支持される。この回動に対しては、図示しない錠が設けられており、保守の際の開時には錠が外され、ガススプリングにより軽く矢印A方向に上昇し、かつその位置を維持することができる。なお、硬貨入出金部6は硬貨入出金口60を有し、硬貨入出金口60は顧客操作部2に設けられる。前述の通り本実施の形態に関わるケーブル巻取機3は傾斜して取り付けられる。その結果、前述の通りケーブル巻取機3の周囲のユニットとしての硬貨入出金部6は、従来のケーブル巻取機3における境界36−1を境界36−2に変更することができる。
【0019】
次に、図1及び図5を使用し、ハンドセット22とケーブル巻取機3の詳細を説明する。図1は第1の実施の形態に関わるケーブル巻取機の正面図であり、図5は第1の実施の形態に関わるケーブル巻取機の左側面図である。ハンドセット22は顧客と遠隔地にいる係員との対話を音声により行うための送話器と受話器で構成される。ハンドセット22は顧客操作部2の表面に設けられた置台23に載置されている。なお、顧客操作部2には制御部に接続され、ハンドセット22の置台23に載置されていることを検知するための図示しないフック検知スィッチが設けられている。ハンドセット22が顧客操作部2上に載置された状態では、フック検知スィッチによりOFF信号がケーブル25を介して制御部に送信される。また、顧客がハンドセット22を持ちあげるとフック検知スィッチがON信号を送信することになる。
【0020】
ハンドセット22のケーブル25は、ケーブル巻取機3によって巻取られる。ケーブル巻取機3は、顧客操作部2の裏面に設けられる。即ち、ケーブル巻取機3は、硬貨入出金部6と顧客操作部2との間の空間に配置される。ケーブル巻取機3の内部には、ハンドセット22から伸びてくるケーブル25を所定回数巻き付けるケーブルリール30を有する。この巻き付け回数はケーブルリール径と引出しを許容する長さにより決定される。例えば、ケーブルリール径が10cm程度とすれば3巻で90cm以上の引き出しが可能となる。なお、ケーブル始端部のケーブルリール軸への固定部材、更には、ケーブルリール30の回転量をケーブル25の終端近傍に固着するストッパ部材があるが説明は省略する。なお、ケーブル巻取機3のケーブルリール30は巻取り中心30−0を有し、巻取り中心30−0に巻取軸3−1があるものとする。
【0021】
ケーブルリール30軸には図示しないゼンマイが組み込まれている。ハンドセット22のケーブル25を矢印B方向に引き出すと、ケーブルリール30が巻取軸3−1を軸に回転し、このゼンマイを巻き戻すことになる。ゼンマイは元の位置に戻ろうとする力が発生するので、ハンドセット22を置台23に戻す方向へ動かすと、ゼンマイの力でケーブル25が巻き取られる。なお、このケーブル巻取機3の構造は、例えば電気掃除機の電源コード収納などで多用されているので、詳細な説明は省略する。
【0022】
図1に示すように本発明の自動取引装置1では、ケーブル巻取機3を支持部材27により傾斜させて顧客操作部2の下部(裏側)に取り付けられている。支持部材27は図1に示したように、板金を鋭角に折り曲げて形成され、ネジなどの固定部材によって顧客操作部2の下部に取り付けられている。支持部材27の折り曲げ角度は、ケーブル巻取機3の傾斜角度に適合する角度である。ケーブル巻取機3は、支持部材27とケーブル巻取機3の側面とをネジなどの固定部材により固定される。この支持部材27により、ケーブル巻取機3は45度±15度傾斜した状態で顧客操作部2に取り付けられている。なお、支持部材27はケーブル巻取機の側面を固定するものとして説明するが、支持部材27に加えて、例えばケーブル巻取機3の両側面を挟み込むようなコの字形状の板金を追加することで、より確実にケーブル巻取機3を固定するようにしてもよい。
【0023】
ケーブル巻取機3はほぼ円盤状である。ケーブル巻取機3は巻き取ったケーブル25を円盤状の接線方向に向けて引出すケーブル出口34を有する。そして、ケーブル巻取機3は、ケーブル出口34の出口先端34−1とケーブルリール30の巻取中心30−0を結ぶ直線30−1を軸に傾斜している。従って、ケーブル出口34から引き出されるケーブル25は方向を上方に切り替える必要がある。図示するように第1のガイド部材としての第1ローラ31は出口先端34−1付近に設けられる。なお、ケーブル巻取機3の傾斜は、出口先端34−1と巻取中心30−0を結ぶ直線30−1を軸にした傾斜であってもよく、また巻取中心30−0にある巻取軸3−1の傾斜であってもよい。またケーブル巻取機3の傾斜は、支持部材27の折り曲げ角度に適合することになる。いずれにしろ傾斜角度は45度±15度がよい。
【0024】
この第1ローラ31は、ケーブルリール30のフレームに軸を設けるようにして回転可能に固定される。このフレームによって、ケーブル25が第1ローラの軸方向への移動を規制するため、ケーブルが第1ローラから脱落することがない。第2のガイド部材としての第2ローラ32は第1ローラ31とハンドセット22の中間位置に設けられる。この第2ローラ32は、第1ローラ31同様にケーブルリール30のフレームに軸を設けるようにして回転可能に固定されてもよく、顧客操作部2の下部に図示しないブラケットを設けて、そこに第2ローラ32を設けるようにしてもよい。ケーブル25はこれら第1ローラ31及び第2ローラ32と係合することにより、引出し方向が規制される。
【0025】
ケーブル出口34から繰出されるケーブル25は第1ローラ31に架けられ、その後は第2ローラに向けて送られる。その方向はケーブル巻取機3の接線方向であり、かつ第2ローラ32の位置する方向となる。第2ローラ32に架けられたケーブル25は、置台23の下部に設けた貫通穴230に向かい、かつほぼ垂直に向かうことになる。矢印B方向に持ち上げられたハンドセット22は、その後、顧客により前後左右に引っ張られることとなる。そこで貫通穴230には図示しないケーブル保護部材を設ける。このケーブル保護部材は樹脂製としても良く、またゴム等の弾力を有する部材であっても良い。更には、貫通穴230からの塵埃落下防止を兼ねるような形状でもよい。
【0026】
次に、保守作業等のために顧客操作部2を開閉する場合について説明する。図6は第1の実施の形態に関わる自動取引装置における顧客操作部の開閉状態の説明図である。顧客操作部2の図示せぬ錠が外されると、回転中心Pを中心として顧客操作部2が開くことができる。顧客操作部2自身の重量とバランスを取るように、図示しないガススプリングが作用するので、軽い力で顧客操作部2を持ち上げることができる。図6に示す顧客操作部2の位置は開途中の位置であり、最終的には、カード処理部7や通帳処理部4を手前側に引出すことが可能になる位置(二点鎖線で示す)まで上昇し、その状態を保持する。
【0027】
ケーブル巻取機3は顧客操作部2に吊下げられている状態なので、回転中心Pを中心とした回転軌跡(図示の一点鎖線C)を通過する。このとき、例えば図9に示すように従来のケーブル巻取機84では筐体(ここでは前面カバー10)に干渉してしまうが、本実施の形態によるケーブル巻取機3では筐体(ここでは、前面カバー10)に干渉することはない。ケーブル巻取機3の傾斜量は、この前面カバー10との干渉を生じないようにするため45度±15度とする。顧客操作部2が回転上昇した位置であっても、ハンドセット22は置台23との掛合量が確保されていることやゼンマイの初期張力により、落下することは無い。この状態で、ケーブル巻取機3自身の保守も可能であることは言うまでもない。
【0028】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。ハンドセット22を持ち上げ、ケーブル25を引き出す時は、ケーブル巻取機3内のゼンマイを巻き戻す。逆に、ハンドセット22を置台23に近づけるとゼンマイの作用でケーブル25を巻き取り、ケーブル25の弛みを除去する。しかしながら、ゼンマイによる巻き取り速度より、図7に示す矢印D方向にハンドセット22を置台23に戻す速度が速い場合が想定できる。このような事象が発生すると、ケーブル25に撓みが生じ、ケーブル25が第2ローラ32から脱落することがある。すると、ケーブル巻取機3による巻取りが不安定になる。
【0029】
第2の実施の形態では、このような事象に対して配慮したものである。図7は第2の実施の形態に関わるケーブル巻取機の正面図であり、図8は第2の実施の形態に関わる第3のガイド部材の概念図である。図示するように、第2のガイド部材としての第2ローラ32に係合するケーブル25を覆うようにケーブル押え部材としての第3のガイド部材33を設ける。この第3のガイド部材33は略U字形状に板金を折り曲げた部材であり、第2ローラ32の回転を妨げることなく所定の隙間を設けて図示しないフレームに固定する。そして、第2ローラ32からケーブル25が離れようと作用しても、第3のガイド部材33によりそれが阻止され、ケーブル25は第2ローラ32から脱落することなく滑らかにケーブル巻取機3により巻き取ることができる。なお、第1ローラ31、第2ローラ32はケーブル25との接触時の摩擦負荷軽減のため、回転自在のローラとしたが、ローラに限定するものではない。また、第3のガイド部材33をローラとすることもできる。
【0030】
以上説明したハンドセット22は、ケーブル25を介して制御部と電気的に接続されているが、無線接続方式とすることもできる。この場合には、バッテリーを付加することや、盗難防止等の対策としてケーブル25に代わるワイヤーをハンドセット22に固定し、ワイヤー巻取機を顧客操作部2内に固定するようにすればよい。
【符号の説明】
【0031】
1 自動取引装置
2 顧客操作部
2−1 略水平面
2−2 略垂直面
3 ケーブル巻取機
5 紙幣入出金部
6 硬貨入出金部
10 前面カバー
22 ハンドセット
25 ケーブル
27 支持部材
30 ケーブルリール
31 第1のガイド部材(第1ローラ)
32 第2のガイド部材(第2ローラ)
33 第3のガイド部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10