特許第6044418号(P6044418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044418
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】サージアブソーバ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 4/12 20060101AFI20161206BHJP
   H01T 4/10 20060101ALI20161206BHJP
   H01T 21/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H01T4/12 F
   H01T4/10 G
   H01T21/00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-66890(P2013-66890)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-192011(P2014-192011A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】社藤 康弘
【審査官】 出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/040435(WO,A1)
【文献】 特開平03−030276(JP,A)
【文献】 特開2011−258490(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043576(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 4/12
H01T 4/10
H01T 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板と、
該絶縁性基板上に形成され互いに放電間隙を隔てて対向配置された一対の放電電極と、
前記一対の放電電極の少なくとも対向部分の直上に放電空間を有して前記絶縁性基板上に多孔質な絶縁性材料で形成された通気性を有する放電空間バリア層と、
該放電空間バリア層の外表面を絶縁性材料で覆って形成され内側を密封する気密層とを備え
前記気密層が、非晶質ガラスで形成されていることを特徴とするサージアブソーバ。
【請求項2】
請求項1に記載のサージアブソーバにおいて、
前記絶縁性基板の両端部に形成され前記一対の放電電極に接続された一対の端子電極を備えていることを特徴とするサージアブソーバ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサージアブソーバにおいて、
前記気密層の外表面が、樹脂で形成された保護層で覆われていることを特徴とするサージアブソーバ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のサージアブソーバを製造する方法であって、
絶縁性基板上に互いに放電間隙を隔てて対向配置された一対の放電電極を形成する工程と、
前記一対の放電電極の少なくとも対向部分の直上に放電空間を有して前記絶縁性基板上に多孔質な絶縁性材料で通気性を有する放電空間バリア層を形成する工程と、
該放電空間バリア層の外周面を絶縁性材料で覆って内側を密封する気密層を形成する工程とを有し、
前記放電空間バリア層を形成する工程が、予め前記放電空間となる領域に一定の温度以上で分解・気化可能な材料で放電空間形成層を形成する工程と、
該放電空間形成層の外表面に前記一定の温度よりも高い融点であると共に加熱により多孔質な絶縁性材料で通気性を有する放電空間バリア層となる仮バリア層を形成する工程と、
前記一定の温度以上に加熱し、形成された前記放電空間バリア層を介して前記放電空間形成層を外部に分解・気化させ前記放電空間を形成する工程とを有していることを特徴とするサージアブソーバの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のサージアブソーバの製造方法において、
前記放電空間形成層を形成する工程で、予め前記放電空間形成層を形成する領域を囲った絶縁性の枠部を前記絶縁性基板及び前記放電電極の上に形成しておき、前記枠部内に前記分解・気化可能な材料を塗布又は印刷し、乾燥させることで前記放電空間形成層を形成することを特徴とするサージアブソーバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サージから種々の電子機器を保護し、事故を未然に防ぐために使用されるサージアブソーバ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サージアブソーバは、例えば電話機、モデム、家電製品等の電子機器において通信線、電源線、アンテナ等の外部から信号や電力を得るための入力部に接続され、外部から侵入する雷サージや静電気等の異常電圧によって電子機器が破壊されるのを防ぐために使用されている。
【0003】
放電タイプのサージアブソーバにおいても、近年、表面実装化(SMD)が進んでいる。例えば、特許文献1及び2には、絶縁性基体と、該絶縁性基体と共に放電ガスが充填された箱状の気密室を形成する絶縁性の気密キャップと、気密室の両端部に設けられた端子電極と、端子電極と導通し気密室内に放電ギャップを形成して設けられた放電電極とを備えたチップ型サージアブソーバが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−35633号公報
【特許文献2】特開2002−43020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
上述したように、表面実装可能な種々のサージアブソーバが提案、開発され、製品化されているが、上記特許文献1及び2に示されたサージアブソーバでは、ガラス製やセラミックス製の筐体や気密キャップの封止部材を用いて気密室となる放電空間を形成している。しかしながら、これらの封止部材を用いると部材コストが増大してしまうという問題があった。また、放電によって放電電極の金属材料が飛散し、封止部材の内面に付着し、放電特性が変化してしまうという不都合があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、より低コストで製造できると共に安定した放電特性を得ることができるサージアブソーバ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るサージアブソーバは、絶縁性基板と、該絶縁性基板上に形成され互いに放電間隙を隔てて対向配置された一対の放電電極と、前記一対の放電電極の少なくとも対向部分の直上に放電空間を有して前記絶縁性基板上に多孔質な絶縁性材料で形成された通気性を有する放電空間バリア層と、該放電空間バリア層の外表面を絶縁性材料で覆って形成され内側を密封する気密層とを備えていることを特徴とする。
【0008】
このサージアブソーバでは、一対の放電電極の少なくとも対向部分の直上に放電空間を有して絶縁性基板上に多孔質な絶縁性材料で形成された通気性を有する放電空間バリア層と、該放電空間バリア層の外表面を絶縁性材料で覆って形成され内側を密封する気密層とを備えているので、封止部材を別途用意して接着する必要がなく、部材コストの低減を図ることができる。また、多孔質な絶縁性材料で放電空間バリア層が形成されているので、その内面の凹凸が大きく、放電によって飛散した金属が内面に付着しても連続した膜状になり難く、放電特性に影響を与え難い。さらに、放電空間が多孔質な放電空間バリア層で囲まれて形成されているので、放電衝撃を放電空間バリア層が緩衝層として緩和することで、外側の気密層の破損等を防ぐことができる。したがって、繰り返しの放電に対しても放電特性が安定していると共に高寿命化を図ることができる。
【0009】
第2の発明に係るサージアブソーバは、第1の発明において、前記絶縁性基板の両端部に形成され前記一対の放電電極に接続された一対の端子電極を備えていることを特徴とする。
すなわち、このサージアブソーバでは、絶縁性基板の両端部に形成され前記一対の放電電極に接続された一対の端子電極を備えているので、端子電極により表面実装が容易になる。
【0010】
第3の発明に係るサージアブソーバは、第1又は第2の発明において、前記気密層が、非晶質ガラスで形成され、該気密層の外表面が、樹脂で形成された保護層で覆われていることを特徴とする。
すなわち、このサージアブソーバでは、非晶質ガラスの気密層により、高い強度と放電空間の高い気密性とが得られると共に、樹脂の保護層により、実装時のチャッキングによる非晶質ガラスの気密層にクラックが発生することを抑制し、封止不良が生じることを防ぐことができる。
【0011】
第4の発明に係るサージアブソーバの製造方法は、第1から第3の発明のいずれかのサージアブソーバを製造する方法であって、絶縁性基板上に互いに放電間隙を隔てて対向配置された一対の放電電極を形成する工程と、前記一対の放電電極の少なくとも対向部分の直上に放電空間を有して前記絶縁性基板上に多孔質な絶縁性材料で通気性を有するドーム状の放電空間バリア層を形成する工程と、該放電空間バリア層の外周面を絶縁性材料で覆って内側を密封する気密層を形成する工程とを有し、前記放電空間バリア層を形成する工程が、予め前記放電空間となる領域に一定の温度以上で分解・気化可能な材料で放電空間形成層を形成する工程と、該放電空間形成層の外表面に前記一定の温度よりも高い融点であると共に加熱により多孔質な絶縁性材料で通気性を有する放電空間バリア層となる仮バリア層を形成する工程と、前記一定の温度以上に加熱し、形成された前記放電空間バリア層を介して前記放電空間形成層を外部に分解・気化させ前記放電空間を形成する工程とを有していることを特徴とする。
【0012】
すなわち、このサージアブソーバの製造方法では、通気性を有する放電空間バリア層となる仮バリア層を放電空間形成層の外表面に形成した後、前記一定の温度以上に加熱し、形成された放電空間バリア層を介して放電空間形成層を外部に分解・気化させるので、放電空間バリア層の内側に容易に放電空間を形成することができる。
【0013】
第5の発明に係るサージアブソーバの製造方法は、第4の発明において、前記放電空間形成層を形成する工程で、予め前記放電空間形成層を形成する領域を囲った絶縁性の枠部を前記絶縁性基板及び前記放電電極の上に形成しておき、前記枠部内に前記分解・気化可能な材料を塗布又は印刷し、乾燥させることで前記放電空間形成層を形成することを特徴とする。
すなわち、このサージアブソーバの製造方法では、枠部内に前記分解・気化可能な材料を塗布又は印刷し、乾燥させることで放電空間形成層を形成するので、枠部内で規定された領域からはみ出さずに位置決めされて放電空間形成層を高精度に形成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るサージアブソーバによれば、一対の放電電極の少なくとも対向部分の直上に放電空間を有して絶縁性基板上に多孔質な絶縁性材料で形成された通気性を有する放電空間バリア層と、該放電空間バリア層の外表面を絶縁性材料で覆って形成され内側を密封する気密層とを備えているので、部材コストの低減と高寿命化とを図ることができる。
また、本発明に係るサージアブソーバの製造方法によれば、通気性を有する放電空間バリア層となる仮バリア層を放電空間形成層の外表面に形成した後、前記一定の温度以上に加熱し、形成された放電空間バリア層を介して放電空間形成層を外部に分解・気化させるので、放電空間バリア層の内側に容易に放電空間を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るサージアブソーバの第1実施形態において、サージアブソーバを示す断面図である。
図2】第1実施形態において、放電間隙の形成工程を示す断面図(a)及び放電空間形成層の形成工程を示す断面図(b)である。
図3】第1実施形態において、仮バリア層の形成工程を示す断面図(a)及び放電空間の形成工程を示す断面図(b)である。
図4】本発明に係るサージアブソーバの第2実施形態において、放電空間形成層の形成工程(a)を示す断面図及びサージアブソーバを示す断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るサージアブソーバの第1実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態のサージアブソーバ1は、図1に示すように、チップ型サージアブソーバであって、絶縁性基板2と、該絶縁性基板2上に形成され互いに放電間隙Gを隔てて対向配置された一対の放電電極3と、一対の放電電極3の少なくとも対向部分の直上に放電空間Sを有して絶縁性基板2上に多孔質な絶縁性材料で形成された通気性を有する放電空間バリア層4と、該放電空間バリア層4の外表面を絶縁性材料で覆って形成され内側を密封する気密層5と、絶縁性基板2の両端部に形成され一対の放電電極3に接続された一対の端子電極6とを備えている。
【0018】
上記一対の放電電極3は、基端が絶縁性基板2の端部側で端子電極6に接続されていると共に互いに先端が対向配置された一対の主電極部3aと、主電極部3aの先端に基端が接続されていると共に互いに先端が放電間隙Gを介して対向配置された一対のトリガ電極部3bとで構成されている。
上記主電極部3aは、例えば導電性ペーストを絶縁性基板2上にそれぞれ長方形状にスクリーン印刷して、乾燥、焼成して形成したものである。上記主電極部3aは、例えばAg/Pdなどで形成されている。
【0019】
上記トリガ電極部3bは、長方形状に形成されたトリガ被膜である。これらのトリガ電極部3bは、スパッタ法、印刷法、蒸着法、イオンプレーティング法、焼き付け法等によって所定の膜厚で成膜される。
なお、一対のトリガ電極部3bの間隙(放電間隙G)は、それぞれグロー放電がトリガ可能な放電ギャップとして所定距離に設定されている。
トリガ電極部3bは、例えばAg,Pd,Pt,Ag/Pd,Cu,ITO,SnO,RuO−ガラス系材料などで形成されている。なお、主電極部3aとトリガ電極部3bとは、同一材料で形成されていても構わない。
【0020】
上記絶縁性基板2は、アルミナ、ムライト、コランダムムライト等のセラミックス材料で形成されている。
上記放電空間S内には、放電ガスが封入されており、該放電ガスは、不活性ガス等であって、例えばHe,Ar,Ne,Xe,Kr,SF,CO,C,C,CF,H,大気等及びこれらの混合ガスが採用される。
【0021】
上記一対の端子電極6は、Agペースト等の導電性ペースト、Niめっきやはんだめっき又は導電性樹脂等により形成される。例えば、絶縁性基板2の両端面にAg焼き付けを行い、その上に導電性樹脂を形成し、さらにその上にNi/Snめっきを行って端子電極6を形成する。
【0022】
上記放電空間バリア層4は、例えば結晶化ガラス又はアルミナなどの絶縁性粉末が添加された結晶化ガラスでドーム状に形成され、通気性があり多数の微細孔を有した絶縁性の多孔質材料で形成されている。
上記気密層5は、例えば非晶質ガラスなどで形成されている。なお、気密層5の内側は放電空間バリア層4の外面内に一部が侵入して外面の微細孔を充填して埋めていても構わない。
【0023】
次に、本実施形態のサージアブソーバの製造方法について説明する。
上記サージアブソーバ1の製造方法は、絶縁性基板2上に互いに放電間隙Gを隔てて対向配置された一対の放電電極3を形成する工程と、一対の放電電極3の少なくとも対向部分の直上に放電空間Sを有して絶縁性基板2上に多孔質な絶縁性材料で通気性を有するドーム状の放電空間バリア層4を形成する工程と、該放電空間バリア層4の外周面を絶縁性材料で覆って内側を密封する気密層5を形成する工程とを有している。
【0024】
また、上記放電空間バリア層4を形成する工程は、予め放電空間Sとなる領域に一定の温度以上で分解・気化可能な材料で放電空間形成層7を形成する工程と、該放電空間形成層7の外表面に前記一定の温度よりも高い融点であると共に加熱により多孔質な絶縁性材料で通気性を有する放電空間バリア層4となる仮バリア層4aを形成する工程と、前記一定の温度以上に加熱し、形成された放電空間バリア層4を介して放電空間形成層7を外部に分解・気化させ放電空間Sを形成する工程とを有している。
【0025】
より詳しく各工程を具体例で説明すると、まずアルミナで形成された絶縁性基板2上に、主電極部3a及びトリガ電極部3bをスクリーン印刷によってAg/Pdで印刷し、150℃で乾燥させた後に、ベルト炉にて850℃で焼成する。
なお、放電間隙Gは、図2の(a)に示すように、繋がっているトリガ電極部3bの中間部にレーザ光を照射してカットする方法や、予めトリガ電極部3bの形成時に間隙を設けて放電用のギャップとする方法で形成する。このようにして、互いに対向配置された一対の放電電極3を形成する。
【0026】
次に、互いに対向配置された一対のトリガ電極部3bの上に、図2の(b)に示すように、500℃以下で分解・気化する樹脂を塗布し、150℃で乾燥させてバインダ層である放電空間形成層7を形成する。この放電空間形成層7を構成する材料としては、例えばアクリル系樹脂又はエチルセルロース系樹脂などが採用可能である。
さらに、放電空間形成層7を覆うように作業温度が800℃以上の結晶化ガラス又はアルミナ等の絶縁性粉末が添加された結晶化ガラスを印刷し、150℃で乾燥させて、図3の(a)に示すように、仮バリア層4aを形成する。この後、図3の(b)に示すように、大気中又は不活性ガス中で600〜650℃程度焼成することで、仮バリア層4aが、多数の気孔を内在した通気性のある多孔質の放電空間バリア層4となる。
【0027】
またこの際、放電空間バリア層4の一次焼結が行われると共に、樹脂で形成された放電空間形成層7が加熱によって分解・気化させることで、通気性のある放電空間バリア層4から外部に放出されて消失する脱バインダ処理が行われる。これにより、最終的に放電空間バリア層4内側の放電空間形成層7が無くなり、該放電空間形成層7が存在していた放電空間バリア層4の内側領域に、内部空間として放電空間Sが形成される。
【0028】
この後、雰囲気ガスを放電ガスとして放電空間バリア層4を介して放電ガスで放電空間Sを満たし、さらに、放電空間バリア層4を覆うようにして焼き付け温度600℃程度の非晶質ガラスを形成することで、保護コート層として気密層5を形成する。これにより、多孔質で内部構造が疎な状態の放電空間バリア層4の外面の気孔が充填されて、放電空間Sが密閉される。
次に、絶縁性基板2の両端部にAg焼き付け及び導電性樹脂の形成を行い、さらにその上にNi/Snめっきを行って一対の端子電極6を形成することで、本実施形態のサージアブソーバ1が作製される。
【0029】
このように本実施形態のサージアブソーバ1では、一対の放電電極3の少なくとも対向部分の直上に放電空間Sを有して絶縁性基板2上に多孔質な絶縁性材料で形成された通気性を有する放電空間バリア層4と、該放電空間バリア層4の外表面を絶縁性材料で覆って形成され内側を密封する気密層5とを備えているので、封止部材を別途用意して接着する必要がなく、部材コストの低減を図ることができる。
【0030】
また、多孔質な絶縁性材料で放電空間バリア層4が形成されているので、その内面の凹凸が大きく、放電によって飛散した金属が内面に付着しても連続した膜状になり難く、放電特性に影響を与え難い。さらに、放電空間Sが多孔質な放電空間バリア層4で囲まれて形成されているので、放電衝撃を放電空間バリア層4が緩衝層として緩和することで、外側の気密層5の破損等を防ぐことができる。したがって、繰り返しの放電に対しても放電特性が安定していると共に高寿命化を図ることができる。
【0031】
また、絶縁性基板2の両端部に形成され一対の放電電極3に接続された一対の端子電極6を備えているので、端子電極6により表面実装が容易になる。
さらに、このサージアブソーバ1の製造方法では、通気性を有する放電空間バリア層4となる仮バリア層4aを放電空間形成層7の外表面に形成した後、前記一定の温度以上に加熱し、形成された放電空間バリア層4を介して放電空間形成層7を外部に分解・気化させるので、放電空間バリア層4の内側に容易に放電空間Sを形成することができる。
【0032】
次に、本発明に係るサージアブソーバの第2実施形態について、図4を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、放電空間形成層7を放電電極3の上に単に印刷して形成しているのに対し、第2実施形態のサージアブソーバ21では、図4の(a)に示すように、予め放電空間形成層7を形成する領域を囲った樹脂等の絶縁性の枠部28を絶縁性基板2及び放電電極3の上に形成しておき、枠部28内に樹脂等の前記分解・気化可能な材料を塗布又は印刷し、乾燥させることで放電空間形成層7を形成している点である。
すなわち、第2実施形態では、例えば長方形状の枠部28内に前記分解・気化可能な材料を塗布又は印刷し、乾燥させることで放電空間形成層7を形成するので、枠部28内で規定された領域からはみ出さずに位置決めされて放電空間形成層7を高精度に形成できる。
【0034】
また、第2実施形態では、気密層5の外表面が、樹脂で形成された保護層29で覆われている点でも第1実施形態と異なる。
すなわち、第2実施形態のサージアブソーバ21では、樹脂の保護層29により、実装時のチャッキングによる非晶質ガラスの気密層5にクラックが発生することを抑制し、封止不良が生じることを防ぐことができる。
【0035】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1,21…サージアブソーバ、2…絶縁性基板、3…一対の放電電極、4…放電空間バリア層、4a…仮バリア層、5…気密層、28…枠部、29…保護層、G…放電間隙、S…放電空間
図1
図2
図3
図4