(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面(20a)を有するコア層(20)の表面に内層配線(51)を形成したのち、前記コア層の表面に前記内層配線を覆う状態で配置されるビルドアップ層(30)を形成し、さらに前記ビルドアップ層のうち前記コア層と反対側の一面(30a)に、電子部品(121〜123)が搭載されるランド(61)を含めて、前記内層配線と少なくとも一部が電気的に接続される表層配線(61〜63)をパターニングすることで多層基板(10)を用意する工程と、
前記ランドの外縁部を覆いつつ、前記ビルドアップ層のうち前記表層配線から露出させられている部分をマスキングインク(180)で覆う工程と、
前記マスキングインクにて覆った部分を保護しつつ、該マスキングインクで覆われていない前記ランドの内周位置にはんだ(130)を形成する工程と、
前記マスキングインクから露出させられた前記はんだの上に前記電子部品を搭載し、前記ランドのうちの内周位置に配置された前記はんだにより、前記電子部品を前記ランドと接続する工程と、
前記マスキングインクを除去する工程と、を含んでいることを特徴とする電子装置の製造方法。
前記マスキングインクで覆う工程では、前記ランドの中心から見て、該ランドの周囲のうち前記内層配線が形成されている方向において、前記マスキングインクで前記ランドの外縁部を覆うことを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
前記ランドの中心から見て、該ランドの周囲のうち前記内層配線が形成されている方向において、前記マスキングインクが前記ランドの外縁部を覆っていることを特徴とする請求項3に記載の多層基板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
図9に示すように、モールド樹脂J1によって電子部品J2が覆われる上記電子装置では、金属膜J3の一面J3aおよび側面J3bに金属メッキJ4が形成されており、ランドJ5の側面まではんだJ6が濡れ広がる。また、モールド樹脂J1とはんだJ6との密着力は、通常モールド樹脂J1とランドJ5(金属)との密着力より弱い。このため、上記電子装置では、モールド樹脂J1がはんだJ6との界面から剥離し易く、モールド樹脂J1がはんだJ6から剥離するとビルドアップ層J7にクラックJ8が発生する。
【0006】
すなわち、モールド樹脂J1がはんだJ6から剥離することによって生じる応力がビルドアップ層J7に伝播してビルドアップ層J7にクラックJ8が発生する。
【0007】
また、モールド樹脂J1が剥離することにより、モールド樹脂J1にてランドJ5の変位を抑制できなくなるため、使用環境に応じてランドJ5の膨張および収縮が可能となる。そして、ランドJ5とビルドアップ層J7とは熱膨張係数が異なるため、ビルドアップ層J7に応力が印加される。特に、低温使用環境では、ランドJ5が収縮することにより、ビルドアップ層J7のうちランドJ5との界面の端部に多大な引張応力が印加され、ビルドアップ層J7にクラックJ8が発生する。
【0008】
そして、ビルドアップ層J7に発生したクラックJ8が内層配線に到達すると、当該クラックJ8に水等の異物が浸入した場合、ランドJ5と内層配線とがショートするという問題が発生する。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、ビルドアップ層にクラックが発生することを抑制できる電子装置の製造方法およびこれに用いられる多層基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1または2に記載の発明では、コア層(20)、内層配線(51)、ビルドアップ層(30)、ランド(61)を含む表層配線(61〜63)を有する多層基板(10)を用意する工程と、ランドの外縁部を覆いつつ、ビルドアップ層のうち表層配線から露出させられている部分をマスキングインク(180)で覆う工程と、マスキングインクにて覆った部分を保護しつつ、該マスキングインクで覆われていないランドの
内周位置にはんだ(130)を形成する工程と、マスキングインクから露出させられたはんだの上に電子部品を搭載し、ランドのうちの内周位置に配置されたはんだにより、
電子部品をランドと接続する工程と、マスキングインクを除去する工程と、を含んでいることを特徴としている。
【0011】
このように、ランドにおける外縁部をマスキングインクによって覆っておき、はんだがランドの内周位置にのみ接合され、ランドの外縁部や側面にははんだが濡れ広がらないようにしている。これにより、はんだがランドの一面上のみに形成されるようにでき、側面にモールド樹脂が密着した構造を実現できる。
【0012】
このような構造では、はんだとモールド樹脂との密着力と比較して、ランドとモールド樹脂との密着力の方が強いため、ランドの側面とモールド樹脂との間の界面から剥離が生じ難くなる。このため、モールド樹脂とはんだとの界面において剥離が生じたとしても、モールド樹脂とランドの一面における外縁部もしくは側面との間において剥離が停止し、剥離の進展を抑制することが可能となる。したがって、モールド樹脂とはんだとの界面における剥離による応力がビルドアップ層に伝播されることを抑制でき、ビルドアップ層にクラックが発生することを抑制できる。
【0013】
ただし、マスキングインクを形成する工程では必ずしもランドの外縁部全部を覆う必要はなく、請求項2に記載したように、ランドの中心から見て、該ランドの周囲のうち内層配線が形成されている方向において、マスキングインクでランドの外縁部を覆っていれば良い。
【0014】
請求項3または4に記載の発明では、ビルドアップ層の上に形成され、はんだをランドの一面に配置する際に、はんだを配置する位置を露出させつつはんだが配置される位置の外側の領域を覆うことで保護するマスキングインク(180)を備え、マスキングインクは、ランドの外縁部を覆いつつ、該ランドの内周位置を露出させていることを特徴としている。
【0015】
このように、マスキングインクでランドのうちの外縁部を覆いつつ、内周位置を露出させた多層基板とすれば、その後のはんだをランドの上に形成する工程の際に、必然的にはんだがランドの内周位置に形成されるようにできる。したがって、マスキングインクがランドの外縁部を覆うように形成された多層基板は、はんだをランドの内周位置に形成する際に好適なものであるということができる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。なお、本実施形態の電子装置は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両用の各種電子装置を駆動するために適用されると好適である。
【0020】
図1に示されるように、電子装置は、一面10aおよび他面10bを有する多層基板10と、多層基板10の一面10a上に搭載された電子部品121〜123と、を備えている。そして、多層基板10の一面10a側を電子部品121〜123と共にモールド樹脂150で封止することにより、電子装置が構成されている。
【0021】
多層基板10は、絶縁樹脂層としてのコア層20と、コア層20の表面20aに配置された表面20a側のビルドアップ層30と、コア層20の裏面20b側に配置された裏面20b側のビルドアップ層40と、内層配線51、52などを備える積層基板である。
【0022】
なお、コア層20およびビルドアップ層30、40は、ガラスクロスの両面を樹脂で封止してなるプリプレグ等で構成され、プリプレグの樹脂としては、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、プレプレグの樹脂には、必要に応じて、アルミナやシリカ等の電気絶縁性かつ放熱性に優れたフィラーが含有されていてもよい。
【0023】
そして、コア層20とビルドアップ層30との界面には、パターニングされた表面側内層配線51(以下では、単に内層配線51という)が形成されている。同様に、コア層20とビルドアップ層40との界面には、パターニングされた裏面側内層配線52(以下では、単に内層配線52という)が形成されている。
【0024】
また、ビルドアップ層30の表面30aには、パターニングされた表面側表層配線61〜63(以下では、単に表層配線61〜63という)が形成されている。本実施形態では、表層配線61〜63は、電子部品121〜123が搭載される搭載用のランド61、電子部品121、122とボンディングワイヤ141、142を介して電気的に接続されるボンディング用のランド62、外部回路と電気的に接続される表面パターン63とされている。
【0025】
同様に、ビルドアップ層40の表面40aには、パターニングされた裏面側表層配線71、72(以下では、単に表層配線71、72という)が形成されている。本実施形態では、表層配線71、72は、後述するフィルドビアを介して内層配線52と接続される裏面パターン71、放熱用のヒートシンクが備えられるヒートシンク用パターン72(以下では、単にHS用パターン72という)とされている。
【0026】
なお、ビルドアップ層30の表面30aとは、ビルドアップ層30のうちコア層20と反対側の一面のことであり、多層基板10の一面10aとなる面のことである。また、ビルドアップ層40の表面40aとは、ビルドアップ層40のうちコア層20と反対側の一面のことであり、多層基板10の他面10bとなる面のことである。そして、内層配線51、52、表層配線61〜63、表層配線71、72は、具体的には後述するが、銅等の金属箔や金属メッキが適宜積層されて構成されている。
【0027】
内層配線51と内層配線52とは、コア層20を貫通して設けられた貫通ビア81を介して電気的および熱的に接続されている。具体的には、貫通ビア81は、コア層20を厚さ方向に貫通する貫通孔81aの壁面に銅等の貫通電極81bが形成され、貫通孔81aの内部に充填材81cが充填されて構成されている。
【0028】
また、内層配線51と表層配線61〜63、および内層配線52と表層配線71、72とは、適宜各ビルドアップ層30、40を厚さ方向に貫通して設けられたフィルドビア91、101を介して電気的および熱的に接続されている。具体的には、フィルドビア91、101は、各ビルドアップ層30、40を厚さ方向に貫通する貫通孔91a、101aが銅等の貫通電極91b、101bにて充填された構成とされている。
【0029】
なお、充填材81cは、樹脂、セラミック、金属等が用いられるが、本実施形態では、エポキシ樹脂とされている。また、貫通電極81b、91b、101bは、銅等の金属メッキにて構成されている。
【0030】
そして、各ビルドアップ層30、40の表面30a、40aには、表面パターン63および裏面パターン71を覆うソルダーレジスト110が形成されている。なお、表面パターン63を覆うソルダーレジスト110には、
図1とは別断面において、表面パターン63のうち外部回路と接続される部分を露出させる開口部が形成されている。
【0031】
電子部品121〜123は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等の発熱が大きいパワー素子121、マイコン等の制御素子122、チップコンデンサや抵抗等の受動素子123である。そして、各電子部品121〜123は、はんだ130を介してランド61上に搭載されてランド61と電気的、機械的に接続されている。また、パワー素子121および制御素子122は、周囲に形成されているランド62ともアルミニウムや金等のボンディングワイヤ141、142を介して電気的に接続されている。
【0032】
なお、ここでは、電子部品121〜123としてパワー素子121、制御素子122、受動素子123を例に挙げて説明したが、電子部品121〜123はこれらに限定されるものではない。
【0033】
モールド樹脂150は、ランド61、62および電子部品121〜123を封止するものであり、エポキシ樹脂等の一般的なモールド材料が金型を用いたトランスファーモールド法やコンプレッションモールド法等により形成されたものである。
【0034】
なお、本実施形態では、モールド樹脂150は、多層基板10の一面10aのみに形成されている。つまり、本実施形態の電子装置は、いわゆるハーフモールド構造とされている。また、多層基板10の他面10b側には、特に図示していないが、HS用パターン72に放熱グリス等を介してヒートシンクが備えられている。
【0035】
以上が本実施形態における電子装置の基本的な構成である。次に、本実施形態の特徴点であるランド61とはんだ130との接続構造について説明する。なお、各ランド61と電子部品121〜123との接続構造については同様になっているが、ここでは
図2に示すようように受動素子123におけるはんだ130とランド61との接続構造を例に挙げて説明する。
【0036】
受動素子123が搭載されるランド61は、
図2に示されるように、はんだ130を介して受動素子123の電極123aと電気的および物理的に接続される。本実施形態では、受動素子123として抵抗やコンデンサ等を想定しているため、受動素子123の両端に電極123aが備えられ、受動素子123の両端において、各電極123aと対応する位置に形成された各ランド61と各電極123aとが接続されている。
【0037】
ランド61は、ビルドアップ層30側と反対側の一面61a、ビルドアップ層30側の他面61b、これら一面61aと他面61bとを繋ぐ側面61cを有する板状とされている。このランド61の一面61a側における内周位置、つまりランド61の端部から所定距離離間した位置においてはんだ130が終端しており、はんだ130が一面61aのうちの外縁部および側面61cに形成されていない構造になっている。また、基板垂直方向において、はんだ130は電極123aからランド61に向かうに連れて広がるように濡れ広がっているが、その終端部は、ランド61の一面61aに対して垂直面になっている。本実施形態の場合、
図3に示すように、電子装置を基板表面に対する垂直方向から視た場合において、ランド61を四角形で構成してあり、はんだ130はランド61が構成する四角形の各辺から所定距離以上離間した位置で終端するようにしてある。
【0038】
例えば、ランド61は、ビルドアップ層30の表面に形成した金属膜64の表面を金属メッキ65により覆った構成とされている。金属膜64は、銅等で構成され、ビルドアップ層30側と反対側の一面64a、ビルドアップ層30側の他面64b、これら一面64aと他面64bとを繋ぐ側面64cを有する板状とされている。金属メッキ65は、金属膜64よりはんだ濡れ性が高い金等で構成され、金属膜64の一面64aや側面64cに形成されているが、一面64aのみに形成されていても良い。
【0039】
以上が本実施形態における電子装置の構成である。次に、上記電子装置の製造方法について
図4〜
図7を参照しつつ説明する。なお、
図4〜
図6は、多層基板10のうちパワー素子121が搭載される部分近傍の断面図である。また、
図7は、
図6に続く製造工程を示した断面図であるが、多層基板10のうち制御素子122および受動素子123が搭載される部分近傍の断面図である。
【0040】
まず、
図4(a)に示されるように、コア層20の表面20aおよび裏面20bに銅箔等の金属箔161、162が配置されたものを用意する。そして、
図4(b)に示されるように、ドリル等によって金属箔161、コア層20、金属箔162を貫通する貫通孔81aを形成する。
【0041】
その後、
図4(c)に示されるように、無電解メッキや電気メッキを行い、貫通孔81aの壁面および金属箔161、162上に銅等の金属メッキ163を形成する。これにより、貫通孔81aの壁面に、金属メッキ163にて構成される貫通電極81bが形成される。なお、無電解メッキおよび電気メッキを行う場合には、パラジウム等の触媒を用いて行うことが好ましい。
【0042】
続いて、
図4(d)に示されるように、金属メッキ163で囲まれる空間に充填材81cを配置する。これにより、貫通孔81a、貫通電極81b、充填材81cを有する上記貫通ビア81が形成される。
【0043】
その後、
図5(a)に示されるように、無電解メッキおよび電気メッキ等でいわゆる蓋メッキを行い、金属メッキ163および充填材81c上に銅等の金属メッキ164、165を形成する。
【0044】
次に、
図5(b)に示されるように、金属メッキ164、165上に図示しないレジストを配置する。そして、当該レジストをマスクとしてウェットエッチング等を行い、金属メッキ164、金属メッキ163、金属箔161を適宜パターニングして内層配線51を形成すると共に、金属メッキ165、金属メッキ163、金属箔162を適宜パターニングして内層配線52を形成する。つまり、本実施形態では、内層配線51は、金属箔161、金属メッキ163、金属メッキ164が積層されて構成され、内層配線52は、金属箔162、金属メッキ163、金属メッキ165が積層されて構成されている。
【0045】
なお、次の
図5(c)以降では、金属箔161、金属メッキ163、金属メッキ164、および金属箔162、金属メッキ163、金属メッキ165をまとめて1層として示してある。
【0046】
その後、
図5(c)に示されるように、コア層20における表面20a側において、内層配線51上にビルドアップ層30および銅等の金属板166を積層する。また、コア層20における裏面20b側において、内層配線52上にビルドアップ層40および銅等の金属板167を積層する。このようにして、上から順に、金属板166、ビルドアップ層30、内層配線51、コア層20、内層配線52、ビルドアップ層30および金属板167が順に積層された積層体168を構成する。
【0047】
続いて、
図5(d)に示されるように、積層体168の積層方向から加圧しつつ加熱することにより積層体168を一体化する。具体的には、積層体168を加圧することにより、ビルドアップ層30を構成する樹脂を流動させて内層配線51の間を埋め込むと共に、ビルドアップ層40を構成する樹脂を流動させて内層配線52の間を埋め込む。そして、積層体168を加熱することにより、ビルドアップ層30、40を硬化して積層体168を一体化する。
【0048】
次に、
図6(a)に示されるように、レーザ等により、金属板166、ビルドアップ層30を貫通して内層配線51に達する貫通孔91aを形成する。同様に、
図6(a)とは別断面において、金属板167、ビルドアップ層40を貫通して内層配線52に達する貫通孔101aを形成する。
【0049】
そして、
図6(b)に示されるように、無電解メッキや電気メッキ等でいわゆるフィルドメッキを行い、貫通孔91a、101aを金属メッキ169で埋め込む。これにより、ビルドアップ層30、40に形成された貫通孔91a、101aに埋め込まれた金属メッキ169にて貫通電極91bおよび
図1に示した貫通電極101bが構成される。また、貫通孔91a、101aに貫通電極91b、101bが埋め込まれたフィルドビア91、101が形成される。なお、次の
図6(c)以降では、金属板166および金属メッキ169をまとめて1層として示してある。
【0050】
続いて、
図6(c)に示されるように、金属板166、167上に図示しないレジストを配置する。そして、レジストをマスクとしてウェットエッチング等を行って金属板166、167をパターニングする。
【0051】
次に、
図6(d)に示されるように、ビルドアップ層30、40の表面30a、40aにそれぞれソルダーレジスト110を配置して適宜パターニングする。なお、
図6(d)に示される範囲内において、表面30a上のソルダーレジスト110がすべて除去されているが、
図1に示すように他の領域においてソルダーレジスト110が残された状態になっている。
【0052】
その後、金属メッキ65を形成するためのメッキ処理やはんだ付け処理を行う。これらの処理については、
図4〜
図6とは別断面を示した
図7を参照して説明する。
【0053】
まず、上記のように、ソルダーレジスト110のパターニングを行うことで、
図7(a)に示すように、必要箇所がソルダーレジスト110によって覆われ、金属板166のうちランド61、62となる部分や金属板167などは露出させられた状態になる。その後、
図7(b)に示されるように、無電解メッキや電気メッキによって金属メッキ170を形成することにより、表層配線61〜63および表層配線71、72を形成する。つまり、本実施形態では、表層配線61〜63は、金属板166および金属メッキ169、170を有する構成とされ、表層配線71、72は、金属板167および金属メッキ169、170を有する構成とされている。そして、表層配線61〜63における金属膜64は金属板166によって構成され、金属メッキ65は金属メッキ169、170によって構成される。
【0054】
次に、
図7(c)に示されるように、ボンディング用のランド62や表面パターン63の保護やこれらへのはんだ飛散防止のために、ソルダーレジスト110から露出した部分のうちはんだ130を塗布する部分以外の部分をマスキングインク180で覆う。すなわち、マスキングインク180により、モールド樹脂150にて覆われる予定の部分において、ビルドアップ層30のうち表層配線61〜63から露出している部分、ランド62、表面パターン63およびランド61の外縁部を覆う。例えば、マスキングインク180は、ポリアクリル系などの樹脂材料によって構成され、10〜100μmの厚みとされる。このとき、マスキングインク180によってランド61のうちの外縁部、具体的には各ランド61の端部から所定距離内側まで覆われるようにしている。
【0055】
そして、
図7(d)に示されるように、各ランド61のうちマスキングインク180から露出させられている部分にはんだ130を塗布する。これにより、はんだ130が受動素子123のランド61の上に塗布される。このとき、はんだ130はランド61の外縁部には形成されず内周位置にのみ形成された状態になる。
【0056】
この後、
図8(a)に示されるように、マスキングインク180にてランド61を覆った状態ではんだ180の上に受動素子123を配置し、リフロー処理を行うことで、はんだ130により受動素子123とランド61とを電気的および物理的に接続する。このとき、はんだ130がランド61の内周位置にのみ形成されるようにしていることから、リフロー処理で受動素子123とランド61とを接続した後も、はんだ130は各ランド61の端部から所定距離離間した位置において終端した状態になる。この後、
図8(b)に示されるように、マスキングインク180を除去したのち、
図8(c)に示されるように、他の電子部品121、122についてもはんだ130を介して各ランド61とを電気的および物理的に接続する。
【0057】
この後、パワー素子121および制御素子122とランド62との間をボンディングワイヤ42で接続することで、パワー素子121および制御素子122とランド62とを電気的に接続する。
【0058】
その後は、特に図示しないが、ランド61、62および電子部品121〜123が封止されるように、金型を用いたトランスファーモールド法やコンプレッションモールド法等によってモールド樹脂150を形成する。これにより、モールド樹脂150がランド61の側面61cに密着した上記電子装置が製造される。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、ランド61における外縁部をマスキングインク180によって覆っておき、はんだ130がランド61の内周位置にのみ接合され、ランド61の外縁部や側面61cにははんだ130が濡れ広がらないようにしている。これにより、はんだ130が一面61a上のみに形成されるようにでき、側面61cにモールド樹脂150が密着した構造を実現できる。
【0060】
このような構造では、はんだ130とモールド樹脂150との密着力と比較して、ランド61とモールド樹脂150との密着力の方が強いため、側面61cとモールド樹脂150との間の界面から剥離が生じ難くなる。このため、モールド樹脂150とはんだ130との界面において剥離が生じたとしても、モールド樹脂150とランド61の一面61aにおける外縁部もしくは側面61cとの間において剥離が停止し、剥離の進展を抑制することが可能となる。したがって、モールド樹脂150とはんだ130との界面における剥離による応力がビルドアップ層30に伝播されることを抑制でき、ビルドアップ層30にクラックが発生することを抑制できる。
【0061】
さらに、モールド樹脂150がランド61の側面61cと密着しているため、ランド61の変位をモールド樹脂150にて抑制でき、使用環境によってランド61が膨張および収縮することを抑制できる。このため、ビルドアップ層30にクラックが発生することを抑制できる。
【0062】
なお、多層基板10は、マスキングインク180を配置した状態で商取引されることもある。マスキングインク180でランド61のうちの外縁部を覆いつつ、内周位置を露出させた多層基板10とすれば、その後のはんだ130をランド61の上に形成する工程の際に、必然的にはんだ130がランド61の内周位置に形成される。したがって、マスキングインク180がランド61の外縁部を覆うように形成された多層基板は、はんだ130をランド61の内周位置に形成するのに好適なものであると言える。また、このような多層基板は、はんだ130をランド61の内周位置に形成するためにのみ用いられるものであるということができる。
【0063】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0064】
例えば、上記第1実施形態では、
図3に示したように、受動素子123の電極123aが接続されるランド61の内周位置にのみはんだ130が接続されるようにしたが、他のレイアウトとしても良い。
【0065】
例えば、受動素子123の両端に配置された両電極123aの内側と対向する位置においては、ランド61の外縁部まではんだ130が接続されていても良い。また、電極123aの配列方向における外側や配列方向に対する垂直方向両側のいずれかにおいても、ランド61の外縁部まではんだ130が接続されていても良い。すなわち、クラックが発生したときに下方に位置する内層配線51にクラックが繋がってしまうことが問題となる。このため、ランド61の中心から見て下方に内層配線51が配置されている方向においてはんだ130がランド61の端部から所定距離離間した位置までしか形成されないようにすればよい。
【0066】
また、上記実施形態では、電子部品として受動素子123が搭載されるランド61について主に説明したが、他の電子部品121、122が搭載されるランド61についても、はんだ130をランド61の内周位置に形成すれば、上記と同様の効果が得られる。