(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記定着手段に対し前記記録媒体を前記第1の方向に対応する向きで供給するように当該記録媒体を保持する第1の保持手段及び前記定着手段に対し前記記録媒体を前記第2の方向に対応する向きで供給するように当該記録媒体を保持する第2の保持手段をさらに含み、
前記切替手段は、前記第1の保持手段及び前記第2の保持手段のいずれか一方を選択することにより前記切り替えを行う
請求項1に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置10について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置10の要部構成を示す側面断面図である。同図に示すように、画像形成装置10は、筐体50内に収容された、画像形成部48、用紙入れ74A及び74B(以下、総称する場合には単に「用紙入れ74」という。)、スキャナ部30等を含んで構成されている。
【0017】
用紙入れ74A、74Bには記録媒体としての記録用紙が積層されており、また、用紙入れ74A、74B内における記録用紙の向きは相互に90°異なっている。画像形成装置10は、用紙入れ74A、74Bの装填位置に対応して、一端が回転可能に配置されたアームの他端に各々回転可能に配置された引出しローラ76A、76B(以下、総称する場合は単に「引出しローラ76」という。)を備えている。各アームの一端側には、アームの回転中心と同軸に配置されたローラ78A、78B(以下、総称する場合は単に「ローラ78」という。)とこのローラ78A、78Bに各々対応して配置されたローラ80A、80B(以下、総称する場合は単に「ローラ80」という。)が設けられている。
【0018】
ここで、用紙入れ74A及び74Bに積層された記録用紙の向きは、一例として、用紙入れ74Aでは記録用紙の長辺が後述する定着ロール100の回転軸の延伸方向と同じ方向となる向きになっており、用紙入れ74Bでは記録用紙の短辺が定着ロール100の回転軸の延伸方向と同じ方向となる向きとなっている。以下、用紙入れ74Aを「横用紙入れ」、用紙入れ74Bを「縦用紙入れ」と各々呼ぶ場合がある。
【0019】
図1では記録用紙の搬送路が想像線(二点鎖線)で示されており、この搬送路に沿ってローラ対82が配設されている。記録用紙の引出しが指示されると、対応する引出しローラ76が下方に移動すると共に、当該引出しローラ76が最上層の記録用紙に接触した状態で回転することにより記録用紙の引出しが行われる。引出された記録用紙は、対応するローラ78及びローラ80に案内されてローラ80の用紙搬送方向下流側に配置されたローラ対82に挟持されて画像形成部48へ搬送される。
【0020】
本実施の形態に係る画像形成部48は、感光体12、帯電ロール14、潜像形成装置16、現像装置18、転写ロール26、及び除電・清掃器22を含んで構成されている。
感光体12は、外周面に設けられ、電荷輸送層と電荷発生層からなる感光膜12aと、
感光膜12aを支持するアルミニウム等で構成された基材12bと、を備えている。また、感光体12はモータ(図示省略)により予め定められた回転速度で副走査方向である円弧矢印で示されたA方向に回転される。
【0021】
感光体12の外周面には、感光体12の外周面を帯電させる帯電ロール14が接触して設けられている。なお、本実施の形態に係る画像形成装置10では、接触型の帯電器である帯電ロール14を適用しているが、これに限らず、スコロトロン帯電器やコロトロン帯電器などの非接触型の帯電器を用いてもよい。
【0022】
帯電ロール14は、導電性のロールであり、感光体12の回転に追従するように回転自在とされている。また、帯電ロール14には、帯電用電源(図示省略)から交流電圧と直流電圧とが重畳された電圧が印加されており、これによって、帯電ロール14は感光体12の外周面を予め定められた電位に一様に帯電させる。
【0023】
帯電ロール14よりも感光体12の円弧矢印A方向の下流側には潜像形成装置16が配置されている。潜像形成装置16は、例えばレーザ光源から出射されたビームを形成すべき画像に応じて変調すると共に、主走査方向に偏向し、感光体12の外周面上を感光体12の中心軸と平行に走査させる。これにより、感光体12の外周面上に静電潜像が形成される。
【0024】
潜像形成装置16よりも感光体12の円弧矢印A方向の下流側には現像装置18が配置されている。現像装置18内には、帯電された現像剤としてのトナーを収容する収容部18bが設けられており、該トナーによって、現像装置18内に設けられた現像ロール18aが、感光体12の表面に形成された静電潜像を現像する。
【0025】
具体的には、現像ロール18aは予め定められた現像電位に帯電されており、感光体12と現像ロール18aとの電位差によって帯電されたトナーが感光体12の静電潜像が形成された部分に供給される。供給されたトナーは静電力によって静電潜像に付着し、トナー像を形成する。
【0026】
現像装置18よりも感光体12の円弧矢印A方向の下流側には、感光体12に接触して転写ロール26が配置されている。ローラ対82によって転写ロール26の配設部位まで搬送された記録用紙は転写ロール26によって感光体12に押圧されるので、記録用紙の印刷面には感光体12の外周面に形成されたトナー像が転写される。
感光体12の外周面上に形成されたトナー像が記録用紙に転写された後、感光体12の外周面は、除電・清掃器22によって清掃される。
【0027】
一方、転写ロール26の上方(用紙搬送方向下流側)には、定着器40が配置されている。定着器40は、記録用紙上のトナー像を加熱する定着ロール100と、定着ロール100に押し当てられたローラ102とを備えている。そして、トナー像の転写された記録用紙が定着ロール100とローラ102とのニップ部(接触部)を通過すると、記録用紙上のトナー像は溶融、凝固して記録用紙の印刷面に定着される。定着後の記録用紙はガイドローラ104の配設部位まで搬送される。
【0028】
ガイドローラ104の配設部位まで搬送された記録用紙は、複数のローラ対106に案内されて、筐体50の側面に設けられた排紙部58上に排出される。この時の用紙搬送方向は定着ロール100から見て略90°変更されるので、記録用紙は画像印刷面が下方となる向きで排紙部58上に積載されることになる。
【0029】
また、スキャナ部30は、不図示の原稿等の画像を読み取る読取機構を含んで構成されており、当該読取機構を駆動して原稿等の画像を示す画像情報をディジタル画像データとして取得する。
【0030】
図2は、本実施の形態に係る画像形成装置10の電気系の要部構成を示すブロック図である。同図に示すように、画像形成装置10は、CPU(中央処理装置)60、ROM(Read Only Memory)62、RAM(Random Access Memory)64、NVM(Non Volatile Memory)66、UI(ユーザ・インタフェース)パネル68、及び通信インタフェース70を含んで構成されている。
【0031】
CPU60は、画像形成装置10全体の動作を司るものである。ROM62は、画像形成装置10の動作を制御する制御プログラム、後述する画像形成処理プログラムや各種パラメータ等を予め記憶する記憶手段として機能するものである。RAM64は、各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるものである。NVM66は、装置の電源スイッチが切られても保持しなければならない各種情報を記憶するものである。
【0032】
UIパネル68は、ディスプレイ上に透過型のタッチパネルが重ねられたタッチパネルディスプレイ等から構成され、各種情報がディスプレイの表示面に表示されると共に、ユーザがタッチパネルに触れることにより所望の情報や指示が入力される。
【0033】
通信インタフェース70は、一例として、パーソナル・コンピュータ等の端末装置(図示省略)に接続され、端末装置から記録用紙に形成する画像を示す画像情報等の各種情報を受信したり、逆に、画像形成装置10においてスキャンされた画像情報等の各種情報を端末装置等に送信したりするためのインタフェースである。
【0034】
CPU60、ROM62、RAM64、NVM66、UIパネル68、及び通信インタフェース70は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU60は、ROM62、RAM64、NVM66へのアクセスと、UIパネル68への各種情報の表示と、UIパネル68に対するユーザの操作指示内容の把握と、端末装置からの通信インタフェース70を介した各種情報の受信と、端末装置への通信インタフェース70を介した各種情報の送信と、を各々行う。
【0035】
画像形成装置10は、さらに、画像形成部48、記録用紙搬送部72、スキャナ部30、及び画像処理部32を含んで構成されている。
【0036】
画像形成部48は、先述した感光体12、帯電ロール14、潜像形成装置16、現像装置18、転写ロール26、除電・清掃器22、定着器40、及び各ロール、ローラを駆動するモータ(図示省略)を含んで構成され、ゼログラフィ方式により記録用紙に対して画像形成、すなわち印刷を行う。
【0037】
また、記録用紙搬送部72は、用紙入れ74、引出しローラ76、ローラ78、80、
ローラ対82、ガイドローラ104、及びローラ対106を含んで構成され、画像形成装置10内における記録用紙の搬送を行う。
【0038】
スキャナ部30は、先述したように原稿等の画像を画像情報として取得する部位である。
また、画像処理部32は、例えばスキャナ部30等により取得した画像情報に対して画像処理を施し印刷用のデータを生成したり、取得した画像情報を図示しない記憶装置等に記憶したりする。
【0039】
画像形成部48、記録用紙搬送部72、スキャナ部30、及び画像処理部32もまた、
システムバスBUSに接続されている。従って、CPU60は、画像形成部48、記録用紙搬送部72、スキャナ部30、及び画像処理部32の動作の制御も行う。
【0040】
ここで、画像形成部48における画像形成処理の流れは以下のようになる。
【0041】
帯電ロール14により感光体12の外周面を帯電させ、感光体12の回転駆動が開始されると、潜像形成装置16により感光体12上に静電潜像が形成される。そして、現像装置18によって静電潜像にトナーが供給される。これによって静電潜像は顕像化されてトナー像となる。当該トナー像は、感光体12によって転写ロール26との接触位置まで搬送される。
【0042】
転写ロール26には転写電源(図示省略)によって電力が供給され、かつ記録用紙が転写ロール26によって感光体12の外周面に押し付けられることにより、感光体12上のトナー像が記録用紙の印刷面に転写される。トナー像が転写された記録用紙は定着器40まで搬送され、該定着器40によりトナー像が記録用紙上に定着される。
【0043】
ところで、定着器40においては、上述したように、記録用紙上にトナーを定着させるために定着ロール100等を加熱するが、この加熱によってトナー等から揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound、以下、「VOC」と略記する場合がある。)や超微粒子等が発生することがある。近年の環境問題への関心の高まりとともに、画像形成装置10においても特にVOCの低減が求められている。
【0044】
一方、上述したように、定着器40では、定着ロール100をローラ102に押し当て、その間にトナー像が形成された記録用紙を挟持して搬送することにより記録用紙上にトナーを定着させているので、定着ロール100上にはある程度記録用紙上のトナーが付着し、残留する。その際、定着ロール100と接触するトナーの量が少ないほどVOCの発生量は少ない。
【0045】
ここで、画像形成装置10に対する小型化、省電力化の要求とともに、定着ロール100の外形も、一例として、25mmφ(直径)と小型になっているため、定着ロール100の回転方向に対する周囲長も約80mm程度となっている。従って、定着ロール100の周囲長は、一般的に記録用紙の縦、横の長さ(例えば、A4サイズの用紙の縦、横の長さは、210mm×297mm。)よりも短くなっている。
【0046】
そのため、定着ロール100でトナー像が形成された記録用紙を定着させる場合に、1周目でトナーが接触した後に、定着ロール100の2周目あるいは3周目とトナーが重畳されて接触する場合がある。その際、トナーが重畳された部分では、1周目で接触して残留したトナーの量が支配的となり、2周目以降で接触したトナーが残留する量は少ない。
つまり、同じトナー像であっても、定着ロール100の回転に伴い定着ロール100の周面とトナー像とが接触する面積が少ないほど、すなわち、トナー像同士の重なる部分が多いほど残留するトナーの量が少ない。
【0047】
本実施の形態に係る画像形成装置10は、上記知見に基づき、定着ロール100に対して搬送される記録用紙の向きを選択することにより、定着ロール100の回転に伴って定着ロール100に接触するトナーの量を極力少なくしている。その結果、定着ロール100に残留するトナーの量が減少し、該トナーの加熱によるVOC等の発生が抑制される。
【0048】
次に、
図3ないし
図8を参照して、定着ロール100と記録用紙上のトナー像との接触状態、及びトナー像との接触がより少なくなる定着ロール100に対する記録用紙の向きの判定方法について説明する。
【0049】
図3(a)は、トナー像T1及びT2が形成された長辺の長さがa、短辺の長さがbの記録用紙P1を示している。同図のトナー像T1及びT2は、各々記録用紙P1の短辺方向の長さがx、長辺方向の長さがyである長方形であり、両者が距離l1を隔てて配置されている。
なお、錯綜を回避するため、以下の説明における記録用紙の大きさは、すべて長辺の長さがa、短辺の長さがbであるものとする。
【0050】
図3(b)は、回転軸AXを有する定着ロール100を示している。また、
図3(c)は、
図3(b)で示す方向に配置された定着ロール100に対して、
図3(a)で示す向きで記録用紙P1が搬送された場合に、記録用紙P1上のトナー像が定着ロール100と接触する部分を定着ロール100の周面の展開
図DE1上に示したものである。
【0051】
ここで、定着ロール100の周囲長をLとし、2L>x>Lと仮定する。また、記録用紙P1の長辺方向を定着ロール100の回転軸の延伸方向に一致させる方向に記録用紙P1を搬送する場合の搬送方向をLEF方向、記録用紙P1の短辺方向を定着ロール100の回転軸の延伸方向に一致させる方向に記録用紙P1を搬送する場合の搬送方向をSEF方向と称することにする。
【0052】
図3(c)においては、トナー像T1及びT2が定着ロール100と接触した部分が、
定着ロール100の展開
図DE1上に接触部分TN1及びTN2として示されている。接触部分TN1及びTN2の幅はyであるが、長さはLとなる。定着ロール100の2回転目以降の接触部分は、1回転目の接触部分と重なるからである。この場合の合計接触面積T1Lは、T1L=2yLとなる。
【0053】
図3(d)ないし
図3(f)は、定着ロール100に対しSEF方向に記録用紙P1を搬送した場合を示している。
図3(d)は、向きも含めた記録用紙P1の状態、
図3(e)は、
図3(b)と同じ定着ロール100、そして
図3(f)は、定着ロール100の展開
図DE2上に表された、トナー像T1及びT2が定着ロール100と接触した部分である接触部分TN3及びTN4を示している。接触部分TN3及びTN4は、各々幅がy、
長さがxの長方形であり、両者が隣接して配置されている。つまり、トナー像T1とT2との距離l1は、定着ロール100の周囲長Lとの関係において、定着ロール100が1周したときにトナー像T1とT2が隣接する距離となっている。
図3(f)の場合の合計接触面積T1Sは、T1S=2xyとなる。
【0054】
以上の結果から、2L>x>Lとした先の仮定に基づきT1L<T1Sとなるので、同じトナー像T1及びT2を有する記録用紙P1であっても、記録用紙P1の定着ロール100に対する搬送方向の向きによって合計接触面積が違っていることが分かる。
図3の場合、VOCの発生を抑制するという観点からは、記録用紙P1の向きとして、記録用紙P1が合計接触面積が少くなるLEF方向に搬送される向きを選択すべきということが分かる。
【0055】
本実施の形態では、合計接触面積の小さい方の記録用紙の向きを判定する手段として、
それぞれの向きに対応する方向の画像情報を積算して積算画像値を求める方法を採用している。そして、定着ロール100に対して該積算画像値の小さい方の方向に記録用紙を搬送する。
【0056】
次に、
図4及び
図5を参照して、本実施の形態に係る積算画像値を算出する具体的な方法について説明する。
図4(a)は、定着ロール100に対してLEF方向に対応する向きに配置された記録用紙に印刷すべき画像の画像情報GDAを示しており、GDAは
図3(a)の記録用紙P1に対応し、
図4(a)中の画像情報PG1及びPG2は、各々
図3(a)のトナー像T1及びT2に対応している。
【0057】
図4(a)に示すように、本実施の形態では、まず、画像情報GDAをLEF方向に定着ロール100の周囲長Lで分割し、単位画像情報GD1及びGD2とする。記録用紙P1のLEF方向の長さが2Lに満たないため、単位画像情報GD2の長さはLよりも短い。
【0058】
次に、
図4(a)に示すように、各単位画像情報GD1及びGD2の各々を、予め定められた複数の分割領域(セル)を形成するようにメッシュ状に分割する。同図では、GD1が、6×16のセルに分割されており、GD2についても個々のセルの大きさがGD1と同じになるようにして4×16のセルに分割されている。
【0059】
次に、各々のセルに対して、形成すべき画像の有無に応じてあらかじめ定められた互いに異なる数値、例えば「1」又は「0」を付与する。つまり、
図4(a)において、セルC1には形成すべき画像が存在しないので0を付与し、セルC2には形成すべき画像が存在するので1を付与する。
ここで、個々のセルにおいて、セル内の面積の一部に形成すべき画像が存在する場合は、該画像がセルの面積の予め定められた値以上を占める場合に1を付与し、それ以外の場合には0を付与するように閾値を設けてもよい。以下、この各セルに付与する値を「画像値」と呼ぶことにする。
【0060】
次に、
図4(b)に示すように、単位画像情報GD1及びGD2について、対応するセル同士の画像値の論理和をとり、合成画像情報GDT1を求める。同図に示すように、単位画像情報GD2のうち長さLに満たない部分については、各セルに値0を付与してLとし、GD1と長さを合わせるようにしてもよい。また、同図中のP1ないしP3は、
図4(a)のP1ないしP3に対応している。
【0061】
図4(b)において、合成画像情報GDT1内の合成画像情報GT1及びGT2は、各々
図3(c)に示すトナー像の接触部分TN1及びTN2に対応している。そして、合成画像情報GT1及びGT2の画像値の合計値は各々12となるので、定着ロール100に対してLEF方向に記録用紙P1を搬送する場合の積算画像値S1Lは、S1L=24と算出される。
【0062】
本実施の形態では、さらに、定着ロール100に対してSEF方向に対応する向きに配置された記録用紙P1に印刷すべき画像の画像情報GDBをメッシュ状に分割して積算画像値S1Sを算出する。
図5は、
図4と同様にして、積算画像値S1Sを算出する方法を示している。
図4(a)と同様に、
図5(a)における画像情報PG3およびPG4は、
図3(d)のトナー像T1及びT2に対応している。
【0063】
図5(a)は、画像情報GDBをSEF方向に長さLでGD3、GD4、及びGD5の単位画像情報に分割し、さらに各々の単位画像情報についてその内部を6×10(GD3及びGD4)又は4×10(GD5)のメッシュに分割した状態を示している。各セルには、
図4(a)と同様にして、形成すべき画像の有無に応じてそれぞれ画像値1又は0が付与されている。
【0064】
図5(b)は、
図4(b)と同様にして、単位画像情報GD3ないしGD5の画像値の論理和を求める方法を示している。単位画像情報GD5は長さがLに満たないため、各セルに0を付与した部分を追加し長さをLに合わせている。
同図において、合成画像情報GDT2における合成画像情報GT3及びGT4の各々の画像値の合計は16となるので、積算画像値S1Sは、S1S=32と算出される。
【0065】
以上の結果から、S1L<S1Sとなるので、定着ロール100に対して、記録用紙P1はLEF方向の向き、すなわち記録用紙P1の長辺方向を定着ロール100の中心軸の延伸方向とする向きにして搬送すべきことが分かる。この結果は、当然ながら、
図3で検討した合計接触面積T1L及びT1Sに基づく結果、すなわちT1L<T1Sと結論において一致する。
【0066】
次に、
図6ないし
図8を参照して、他の画像が印刷された記録用紙及び該記録用紙の画像情報の例に基づいて記録用紙の向きを判定する場合について説明する。
【0067】
図6(a)及び
図6(d)では、記録用紙P2に、
図3(a)及び
図3(d)と同様の長さx、幅yのトナー像T3及びT4が、
図3(a)及び
図3(d)とは異なる距離l2だけ隔てて形成されている。
そして、
図6(c)は、定着ロール100に対して記録用紙P2をLEF方向の向きにして搬送した場合の、定着ロール100の展開
図DE3上に表したトナー像の接触部分TN5およびTN6を示している。トナー像の接触部分TN5及びTN6は、
図3(c)に示す接触部分TN1及びTN2と同様、各々幅y、長さLの長方形である。
【0068】
図6(f)は、定着ロール100に対して記録用紙P2をSEF方向の向きにして搬送した場合の、定着ロール100の展開
図DE4上に表したトナー像の接触部分TN7を示している。本例の場合の接触部分TN7は、
図3(f)に示す接触部分TN3及びTN4とは異なり接触部分が1つの長方形となっている。このことはつまり、トナー像T3とT4とを隔てる距離l2が定着ロール100の周囲長Lと等しくなっているため、トナー像T3が1周するとトナー像T4と重なることを意味している。
【0069】
図6(c)に示すように、記録用紙P2をLEF方向の向きとした場合の合計接触面積T2Lは、T2L=2yLとなり、また、
図6(f)に示すように、記録用紙P2をSEF方向の向きとした場合の合計接触面積T2Sは、T2S=xyとなる。従って、x<2Lとした先の仮定により、T2L>T2Sとなるので、定着ロール100に対して、記録用紙P2はSEF方向の向きにして搬送する。この結果は、
図3の結果とは異なっており、個々のトナー像が同様であってもトナー像の記録用紙上の位置によって合計接触面積が異なり、従って、定着ロール100に対して搬送すべき向きも異なってくる。
【0070】
図7は、
図4と同様にして、記録用紙P2をLEF方向に対応する向きにして搬送した場合の積算画像値S2Lを求める方法、
図8は、
図5と同様にして、記録用紙P2をSEF方向に対応する向きにして搬送した場合の積算画像値S2Sを求める方法を模式的に示している。
図7(a)における画像情報PG5及びPG6、及び
図8(a)における画像情報PG7及びPG8は、
図6におけるトナー像T3及びT4に対応する。
【0071】
具体的には、
図7(a)に示すように、画像情報GDCを定着ロール100の周囲長Lで区切って単位画像情報GD6及びGD7とする。さらに、単位画像情報GD6及びGD7の内部をメッシュ状に分割して、形成すべき画像の有無に応じて各セルに1又は0の値を付与する。そして、
図7(b)に示すように、単位画像情報GD6及びGD7の画像値の論理和を求めて合成画像情報GDT3を形成し、合成画像情報GDT3に基づいて積算画像値S2Lを算出する。その際、単位画像情報GD7は、画像値0を追加して長さをLに合わせてもよい。
【0072】
また、
図8(a)に示すように、画像情報GDDを定着ロール100の周囲長Lで区切って単位画像情報GD8ないしGD10とする。さらに、単位画像情報GD8ないしGD10の内部をメッシュ状に分割して、形成すべき画像の有無に応じて各セルに1又は0の値を付与する。そして、
図8(b)に示すように、単位画像情報GD8ないしGD10の画像値の論理和を求めて合成画像情報GDT4を形成し、合成画像情報GDT4に基づいて積算画像値S2Sを算出する。その際、単位画像情報GD10は、画像値0を追加して長さをLに合わせてもよい。
【0073】
図7(b)から、記録用紙P2をLEF方向に対応する向きにして搬送した場合の積算画像値S2Lは、合成画像情報GT5及びGT6の和からS2L=24と算出される。一方、記録用紙P2をSEF方向に対応する向きにして搬送した場合の積算画像値S2Sは、合成画像情報GT7からS2S=16と算出される。従って、S2S<S2Lとなるので、トナー像T3及びT4の形成された記録用紙P2の場合は、SEF方向に対応する向き、すなわち記録用紙P2の短辺方向を定着ロール100の中心軸の延伸方向とする向きにして搬送すべきことが分かる。
【0074】
この結果は、個々のトナー像(
図3(a)又は
図3(d)に示すトナー像T1及びT2、
図6(a)又は
図6(d)に示すトナー像T3及びT4)が同じである
図3に示す記録用紙P1の場合とは逆の結果となっている。また、この結果は、当然ながら
図6において検討した合計接触面積T2S及びT2Lに基づく結果、T2S<T2Lと結論において一致する。
【0075】
次に、
図9を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置10の作用について説明する。
【0076】
図9は、本実施の形態に係る画像形成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。このように本実施の形態では、本画像形成処理を、プログラムを実行することによるコンピュータを利用したソフトウエア構成により実現しているが、これに限らない。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を採用したハードウエア構成や、ハードウエア構成とソフトウエア構成の組み合わせによって実現してもよい。
【0077】
以下では、本実施の形態に係る画像形成装置10が、上記プログラムを実行することにより用紙の向きを判定する場合について説明する。この場合、当該プログラムをROM62に予めインストールしておく形態や、コンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線または無線による通信手段を介して配信される形態等を適用してもよい。
【0078】
なお、以下では錯綜を回避するため、印刷すべき原稿等が既にスキャナ部30にセットされ、ユーザによってUIパネル68等を介し、本画像形成処理プログラムの実行指示がなされているものとする。また、本画像形成処理プログラムにおけるメッシュ分割等の画像処理は、一例として、CPU60を介して画像処理部32が行うこととしている。
また、
図9においては、SEF方向(短辺方向)に対応する記録用紙の向きを縦方向、
LEF方向(長辺方向)に対応する記録用紙の向きを横方向と表記している。
【0079】
図9において、まず、ステップS500では、スキャナ部30で原稿等を読み取る等することにより、印刷すべき画像の画像情報を取得する。取得した画像情報は、例えば、RAM64あるいは図示しないHDD(ハード・ディスク・ドライブ)等の記憶部に記憶する。
次のステップS502では、縦、横方向のそれぞれについて、画像情報を単位画像情報に分割する。
【0080】
次のステップS504では、該単位画像情報を予め定められたセルの大きさに応じてメッシュに分割し、各々のセルに画像値1又は0を付与する(
図4(a)、
図5(a)、
図7(a)及び
図8(a)参照。)。
ここで、
図4(a)、
図5(a)、
図7(a)及び
図8(a)では、単位画像情報を6×16に分割する場合を例示して説明したが、これに限られず、要求される記録用紙の向きの判定精度等に応じていずれの分割数としてもよい。分割数を多くした方が記録用紙の向きがより正確に判定される。
【0081】
次のステップS506では、単位画像情報の画像値の論理和を求めて合成画像情報を生成する。
次のステップS508では、該合成画像情報の縦、横方向それぞれについて画像値を積算した積算画像値を算出する(
図4(b)、
図5(b)、
図7(b)及び
図8(b)参照。)。なお、以下では、SEF方向の積算画像値を縦積算画像値、LEF方向の積算画像値を横積算画像値と称する。
【0082】
次のステップS510では、縦積算画像値が横積算画像値より大きいか否か判定し、肯定判定となった場合にはステップS512に移行する一方、否定判定となった場合には後述するステップS518に移行する。
ステップS512では、縦用紙入れ(用紙入れ74B)が使用可能であるか否か(縦用紙入れに記録用紙が積層されているか否か)を判定し、肯定判定となった場合にはステップS514に移行して縦用紙入れ(用紙入れ74B)を選択し、否定判定となった場合にはステップS516に移行して横用紙入れ(用紙入れ74A)を選択する。
【0083】
ステップS518では、縦積算画像値が横積算画像値より小さいか否かを判定し、肯定判定となった場合にはステップS520に移行する一方、否定判定となった場合には後述するステップS526に移行する。
【0084】
ステップS520では、横用紙入れ(用紙入れ74A)が使用可能であるか否か(横用紙入れに記録用紙が積層されているか否か)を判定し、肯定判定となった場合にはステップS522に移行して横用紙入れ(用紙入れ74A)を選択し、否定判定となった場合にはステップS524に移行して縦用紙入れ(用紙入れ74B)を選択する。
【0085】
一方、ステップS526ではその時点で画像形成装置10に設定されている用紙入れ(用紙入れ74A又は用紙入れ74B)を選択する。縦画像積算値と横画像積算値が等しい場合には、いずれの用紙入れを選択しても、定着ロール100とトナー像との接触という観点からは変わりがないからである。
なお、その時点で画像形成装置10に設定されている用紙入れとは、例えば、画像形成装置10に予め設定されていて、ユーザの指定がない場合に選択される用紙入れをいう。
【0086】
次に、ステップS528では、画像情報(画像情報GDAないしGDD)の回転が必要であるか否かを判定し、否定判定となった場合には後述するステップS532に移行する一方、肯定判定となった場合には、ステップS530に移行して、画像情報を90°回転させる。
【0087】
ここで、ステップS528で画像情報の回転の要否を判定しているのは、選択した用紙入れの向きによっては、印刷すべき画像の向きが画像処理部32で設定されている画像の向きと90°異なる場合があるからである。すなわち、印刷すべき画像の向きを選択された用紙入れの向きに合わせるための処理である。
【0088】
次に、ステップS532では、選択された用紙入れから搬送された記録用紙に対して、
画像形成部48を制御して画像を形成する、すなわち印刷を実行する。
【0089】
次に、ステップS534では、本プログラムを終了するタイミングが到来したか否かを判定し、否定判定となった場合にはステップS500に戻るとともに、肯定判定となった時点で本画像形成処理プログラムを終了する。
なお、本画像形成処理プログラムを終了するタイミングとしては、例えばセットされた原稿等について、ユーザによりUIパネル68等を介して指定された枚数の記録用紙への印刷が終了した場合等とすればよい。
【0090】
以上詳述したように、本実施の形態に係る画像形成装置10によれば、定着ロール100とトナー像との接触面積である合計接触面積が小さくなる方の記録用紙の向きを、それぞれの向きに対応する積算画像値を求めて判定し、定着ロール100に対して該積算画像値の小さい方に対応する方向に記録用紙を搬送する。従って、本実施の形態に係る画像形成装置10によれば、専用の部材を設けることなく、定着器の加熱により発生する物質の発生量が抑制される。
【0091】
[第2の実施の形態]
図10及び
図11を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置10について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態において、積算画像値の算出方法をより簡便化した形態である。
【0092】
図10に、第2の実施の形態に係る積算画像値の算出方法の概念図を示す。
図10では、6本の線状の画像からなる画像情報PG9を含む画像情報GDEにより、本実施の形態に係る積算画像値の算出方法を説明している。
【0093】
本実施の形態では、画像情報GDEを複数の分割領域(セル)を有するメッシュに分割する。セルの数について特に制限はないが、
図10では、10×16に分割している。第1の実施の形態と同様に、各セルには形成すべき画像の有無に応じて画像値1又は0を付与する。
【0094】
そして、SEF方向及びLEF方向のそれぞれについて各セルの画像値の論理和をとった後、それらの和を算出する。ここで、
図10においてSEF方向に沿って正面視横方向に区切られた各領域を行、LEF方向に沿って正面視縦方向に区切られた各領域を列と称することにする。本実施の形態では、1行及び1列の幅が各々定着ロール100の周囲長Lとなっている。
【0095】
SEF方向の積算画像値を求める場合、
図10に示すように、まず各列についてセルごとの画像値の論理和を求める。
図10では、これらの値が、最も左の列から、(0,1,
1,1,0,1,0,1,0,0)となっている。次に、この個々の画像値の論理和を足し合わせ、SEF方向の積算画像値S3Sとする。
図10の例では、S3S=5である。
【0096】
次に、LEF方向の積算画像値を求める場合、
図10に示すように、まず各行についてセルごとの画像値の論理和を求める。
図10では、これらの値が、最も上の行から、(0,1,0,1,0,1,0,1,1,1,1,0,0,0,0,0)となっている。次に、この個々の画像値の論理和を足し合わせ、LEF方向の積算画像値S3Lとする。
図10の例では、S3L=7である。
【0097】
図10の例では、S3S<S3Lとなるので、定着ロール100に対して、SEF方向に記録用紙を搬送した方が、定着ロール100の周面とトナー像との接触する面積が少なくなると考えられる。そこで、定着ロール100に対する記録用紙の搬送方向の向きとして、SEF方向に対応する向き、すなわち記録用紙の短辺方向を定着ロール100の中心軸の延伸方向とする向きを選択する。
【0098】
次に、
図11を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置10の作用について説明する。
図11は、本実施の形態に係る画像形成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。本実施の形態でも、
図9と同様に、印刷すべき原稿等が既にスキャナ部30にセットされ、ユーザによってUIパネル68等を介し、本画像形成処理プログラムの実行指示がなされているものとする。また、
図11においても、SEF方向(短辺方向)に対応する記録用紙の向きを縦方向、LEF方向(長辺方向)に対応する記録用紙の向きを横方向と表記している。
【0099】
図11において、ステップS600では、スキャナ部30で原稿等を読み取る等することにより、印刷すべき画像の画像情報(
図10のGDE)を取得する。取得した画像情報は、例えば、RAM64あるいは図示しないHDD(ハード・ディスク・ドライブ)等の記憶部等に記憶する。
次に、ステップS602では、上述した方法によって縦方向及び横方向の積算画像値(
図10のS3S及びS3L)を算出する。
【0100】
次のステップS604ないしS628は
図9のステップS510ないしS534と同様なので説明を省略する。
【0101】
以上のように、本実施の形態に係る画像形成装置10によれば、定着ロール100とトナー像との接触面積である合計接触面積が小さくなる方の記録用紙の向きを、それぞれの向きに対応する積算画像値を求めて判定し、定着ロール100に対して該積算画像値の小さい方に対応する方向に記録用紙を搬送する。
従って、本実施の形態に係る画像形成装置10によっても、専用の部材を設けることなく、定着器の加熱により発生する物質の発生量が抑制される。
【0102】
また、本実施の形態に係る画像形成装置10によれば、第1の実施の形態に比較して処理が簡便であるため、CPU60等の制御処理にかかる負担が軽減される。
【0103】
なお、上記各実施の形態では、記録用紙に対応する画像情報を複数のセルを含むメッシュに分割し、各セルに形成すべき画像の有無に応じて1又は0の値を付与して積算画像値を算出する形態を例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、セルの代わりに記録用紙に対応する画像情報の画素データを用い、該画素データに基づいて定着ロールに対する記録用紙の向きごとの積算画像値を算出してもよい。
【0104】
また、上記各実施の形態では、相互に90°向きの異なる記録用紙が積層された2つの用紙入れを切り替えて、定着ロールに向けて搬送する記録用紙の向きを選択したが、本発明はこれに限定されず、例えば1つの用紙入れを用い、画像形成装置内に記録用紙を90°回転させる機構を設けて記録用紙の向きを選択してもよい。