(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コイル外型は、鋳造すべき前記コイルの段ごとに対応して設けられた、該段におけるコイルの所望形状に対応した前記貫通孔及び前記溝を有する金型片からなることを特徴とする請求項1記載のコイル鋳造装置。
前記コイル内型は、積層方向一方側から積層方向他方側にかけて外径が徐々に縮径するテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のコイル鋳造装置。
前記注湯路は、前記コイル外型に、前記溝に連通しかつ鋳造すべき前記コイルの段ごとに対応して形成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載のコイル鋳造装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて、本発明に係るコイル鋳造装置、コイル鋳造方法、及び金型の具体的な実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例であるコイル鋳造装置10の全体構成図を示す。
図2は、
図1に示すコイル鋳造装置10のA−A断面図を示す。また、
図3は、本実施例のコイル鋳造装置10により鋳造されるコイル12の斜視図を示す。
【0014】
本実施例のコイル鋳造装置10は、中心軸線L回りに複数巻数周回されるコイル12を鋳造する装置である。コイル12は、例えばアルミニウムや銅などの導電性材料からなる。コイル鋳造装置10により鋳造されるコイル12は、
図3に示す如く、中心軸線L方向から見て略円形に形成されるものであって、複数の円形が中心軸線L方向に積み重なるように円形螺旋状に形成されるコイルである。
【0015】
コイル12は、断面が矩形状(具体的には、長方形)に形成される所定幅及び所定厚さを有する平角導線14により構成される。コイル12は、平角導線14が中心軸線L回りに均一に傾斜しながら中心軸線L方向へ延びるように形成される。コイル12の各段の平角導線14は、内周面16が中心軸線Lに対して直交する方向(径方向)に向くように、かつ、隣接する段の平角導線14と対向する面(すなわち、上面及び下面)18が中心軸線L方向に向くように形成される。
【0016】
コイル12は、各段の平角導線14の内周面16の径方向位置が段間で異なり、平角導線14の内周面16の内径が中心軸線L方向の位置に応じてリニアに変化するように形成される。尚、コイル12は、各段の平角導線14の外周面20の径方向位置が段間で略一致して、平角導線の外周面20の外径が位置にかかわらず略同じとなるように形成されてもよいし、また、各段の平角導線14の外周面20の径方向位置が段間で一致せず、平角導線14の外周面20の外径が中心軸線L方向の位置に応じてリニアに変化するようにすなわち徐々に縮径するように形成されてもよい。
【0017】
本実施例において、コイル鋳造装置10は、コイル12を鋳造すべく金型に溶解した金属を圧入するダイカストマシン22を備えている。ダイカストマシン22には、固定型24、及び、固定型24に対して移動可能な可動型26が取り付けられている。ダイカストマシン22は、可動型26を固定型24に対して所定方向(
図1において左右方向)に移動させることが可能である。
【0018】
コイル鋳造装置10は、また、鋳造すべきコイル12を成形するために必要な成形金型30を備えている。可動型26には、成形金型30を収容するための立体的な空間32が設けられている。空間32は、直方体状に形成されており、固定型24に向けて開口している。空間32は、可動型26が固定型24に接触しているときに閉じられ、一方、可動型26の移動によりその接触が解消されているときに開放される。
【0019】
成形金型30は、空間32内に収容される。成形金型30は、可動型26が移動により固定型24から所定位置まで離間しているときに空間32に対して着脱可能であり、また、空間32内に収容された状態で可動型26が移動により固定型24に接触しているときにコイル鋳造可能である。尚、成形金型30を空間32内に隙間なく収容するため或いは成形金型30のズレや変形を防止するため、
図1及び
図2に示す如く、成形金型30と空間32を形成する壁面との間に枠型34を介在させることとしてもよい。
【0020】
成形金型30は、コイル外型36と、コイル内型38と、底型40と、を有している。コイル外型36は、鋳造すべきコイル12の外周側に設置される金型である。コイル内型38は、鋳造すべきコイル12の内周側に設置される金型である。底型40は、コイル外型36を取り囲みつつそのコイル外型36をその周囲及びその下方から支持する金型である。
【0021】
図4は、本実施例のコイル鋳造装置10が備えるコイル外型36の斜視図を示す。
図5は、本実施例のコイル外型36を構成する分割金型の各金型片の構成図を示す。尚、
図5(A)には斜め上方からの斜視図を、また、
図5(B)には斜め下方からの斜視図を、それぞれ示す。
図6は、本実施例のコイル鋳造装置10が備える成形金型30のコイル外型36及びコイル内型38の構成図を示す。尚、
図6(A)にはコイル内型38の側面図を、
図6(B)にはコイル外型36を中心軸側から見た際の展開図を、また、
図6(C)には成形金型30を用いて鋳造されるコイル12の側面図を、それぞれ示す。
【0022】
また、
図7は、本実施例のコイル鋳造装置10が備えるコイル外型36、コイル内型38、及び底型40の溶湯注入前の斜視図を示す。更に、
図8は、本実施例のコイル鋳造装置10が備えるコイル外型36、コイル内型38、及び底型40の、コイル外型36の溶湯注入後の斜視図を示す。尚、
図7及び
図8においては、コイル外型36及び底型40の一部がカットされた図を示す。
【0023】
本実施利において、コイル外型36は、全体としてブロック状(直方体形状)に形成された部材であって、そのブロック状本体に対して貫通する円形の貫通孔42を有している。貫通孔42は、鋳造すべきコイル12の内周面16に合わせた大きさに形成されたそのコイル12の中心軸線L方向に向けて延びる孔である。貫通孔42の径は、中心軸線L方向の位置に応じてリニアに変化し、鋳造すべきコイル12の内周面16での内径に略一致する。
【0024】
コイル外型36は、貫通孔42に面する内側面44を有している。内側面44は、中心軸線L方向の一方側(上方側)から他方側(下方側)にかけて径がリニアに変化するように(小さくなるように)形成されている。すなわち、内側面44は、鋳造すべきコイル12の中心方向に向きつつ、その中心軸線Lに対して直交する方向よりも斜め上方に向くように形成されている。
【0025】
コイル外型36は、貫通孔42に面して形成された溝46を有している。溝46は、内側面44の表面から上記の中心軸線Lに対して径方向外側に向けて凹んだものであって、貫通孔42に沿って上記の中心軸線L回りに螺旋状に延びるように形成されている。溝46は、鋳造すべきコイル12の所望形状に合致するものであって、その中心軸線L方向の幅がコイル12の平角導線14の厚さに対応し、かつ、その径方向の深さがコイル12の平角導線14の幅に対応するように形成されている。
【0026】
コイル外型36は、鋳造すべきコイル12の周方向に4分割された分割金型50,52,54,56からなる。分割金型50,52,54,56はそれぞれ、コイル外型36全体の例えば周方向90°分を占めるように構成されている。各分割金型50,52,54,56は、鋳造すべきコイル12の中心軸線L方向に積層される複数の金型片58からなり、複数の金型片58がその中心軸線方向Lに積層される構造を有している。金型片58は、積層方向に隣接する金型片58に対して脱着自在に構成されている。
【0027】
各分割金型50,52,54,56の金型片58は、鋳造すべきコイル12の平角導線14一段当たり一つ設けられている。コイル外型36の溝46は、各金型片58の、内側面44と隣接の金型片58に接する端面(例えば、
図4〜
図6に示す如く上方側端面)との角部に設けられている。各金型片58は、積層方向両側の端面がそれぞれ、鋳造すべきコイル12の中心軸線Lに対して直交する水平面に対して傾斜するように形成されている。上記金型片58の角部に形成される溝46の径方向への深さは、周方向において略均一である。
【0028】
コイル内型38は、円錐状に形成された円錐部60と、その円錐部60の上端側に一体的に設けられた矩形状に形成された天部62と、からなる。円錐部60は、コイル外型36の貫通孔42に合致するようにコイル外型36の金型片58の積層方向一方側から積層方向他方側にかけて外径が徐々に縮径するテーパ状に形成されており、そのコイル外型36の内側面44に接することが可能である。円錐部60の径は、中心軸線L方向の位置に応じてリニアに変化し、鋳造すべきコイル12の内周面16での内径に略一致する。
【0029】
円錐部60の表面には、鋳造すべきコイル12の所望形状に合致する溝64が形成されている。溝64は、円錐部60の表面から上記の中心軸線Lに対して径方向内側に向けて凹んだものであって、その円錐部60の表面に沿って上記の中心軸線L回りに螺旋状に延びるように形成されている。溝64は、鋳造すべきコイル12の平角導線14の内周面16を断面矩形状に形成するための溝である。溝64は、コイル外型36の内側面44に形成された溝46と共に、鋳造すべきコイル12の所望形状を模した空間を形成する。
【0030】
天部62は、成形金型30(具体的には、コイル外型36)の形状(具体的には、コイル外型36全体の積層方向上端の面形状)に対応して矩形状に形成されており、コイル外型36の積層方向上端面に接する。天部62は、複数の金型片58が積層されたコイル外型36を積層方向上端側にて支持する役割を有する。
【0031】
底型40は、コイル外型36を外側四方から取り囲む側壁部66と、その側壁部66の下端側に一体的に設けられた矩形状に形成された底部68と、からなる。側壁部66は、コイル外型36の外形に合致するように形成されており、コイル外型36の外壁に接することが可能である。側壁部66は、それぞれ複数の金型片58が中心軸線L方向に積層される分割金型50,52,54,56からなるコイル外型36を側面側にて支持して位置決めする役割を有する。
【0032】
底部68は、成形金型30(具体的には、コイル外型36及びコイル内型38)の形状(具体的には、コイル外型36及びコイル内型38の積層方向下端の面形状)に対応して矩形状に形成されており、コイル外型36の積層方向下端面に接する。底部68は、複数の金型片58が積層されたコイル外型36を積層方向下端側にて支持して位置決めする役割を有する。
【0033】
コイル鋳造装置10は、また、凝固によってコイル12を構成する溶湯を成形金型30に向けて射出する射出機構70を備えている。この溶湯は、液状化された例えばアルミニウムや銅などの導電性材料である。射出機構70は、筒状のシリンダ72と、シリンダ72内を摺動するピストン74と、を有している。
【0034】
シリンダ72は、ダイカストマシン22の固定型24に取り付けられている。固定型24には、シリンダ72の内部空間に連通する注湯口76が設けられている。注湯口76は、固定型24の、可動型26の空間32に面する箇所に設けられている。また、シリンダ72には、そのシリンダ72の内部空間に溶湯を注入する注入口78が設けられている。ピストン74は、シリンダ72の内部空間に注入された溶湯を注湯口76から成形金型30に向けて押圧する部材である。ピストン74は、注入口78から溶湯が注入される際にシリンダ72に対して退避された位置にあり、その溶湯の注入後にその溶湯を押圧するようにシリンダ72に対して移動される。
【0035】
成形金型30のコイル外型36には、溝46に圧入される溶湯が流通する注湯路80が形成されている。注湯路80は、溝46に連通して形成されると共に、鋳造すべきコイル12の段ごとすなわち金型片58ごとに対応して設けられる。各注湯路80は、空間32内に成形金型30が収容された可動型26が固定型24に接触している状態で固定型24の注湯口76に向けて開口するようにコイル外型36に設けられている。
【0036】
底型40の側壁部66には、コイル外型36の注湯路80及び固定型24の注湯口76に連通する湯溜り82が形成されている。湯溜り82は、注湯口76から流通した溶湯をコイル外型36の各金型片58の注湯路80に向けて供給するために必要な溶湯が溜る空間である。湯溜り82は、4つの側壁部66のうちの一つに形成されており、その側壁部66の一部が切り欠かれて上端(すなわち、コイル内型38の天部62との接続部)まで達するように設けられている。湯溜り82は、幅が下部ほど狭くかつ上部ほど広くなるように形成されている。
【0037】
コイル鋳造装置10は、また、可動型26に取り付けられた押出機構84を備えている。押出機構84は、可動型26の空間32内に収容された成形金型30をその空間32の開口からその外部へ押し出す役割を有する。押出機構84は、外部コントローラからの指令により水平方向に移動されることにより、空間32内の成形金型30を外部へ押し出す。
【0038】
以下、上記
図7及び
図8と共に、
図9〜
図11を参照して、本実施例のコイル鋳造装置10を用いてコイル12を鋳造する方法について説明する。
図9及び
図10は、本実施例のコイル鋳造装置10によるコイル鋳造手法を説明するための斜視図を示す。尚、
図10には、コイル外型36の一部がカットされた図を示す。また、
図11は、本実施例のコイル鋳造装置10により鋳造されたコイルを含む凝固後の溶湯全体の形状を表した図を示す。
【0039】
本実施例においては、まず、それぞれ複数の金型片58を中心軸線L方向に積層した分割金型50,52,54,56からなるコイル外型36が底型40内にその天側から挿入される。この場合、コイル外型36は、側面側にて底型40の側壁部66に位置決めされると共に、積層方向下端側にて底型40の底部68に位置決めされる。
【0040】
次に、かかるコイル外型36の貫通孔42に天側からコイル内型38が挿入される。この場合、コイル内型38の円錐部60がコイル外型36の内側面44に接しつつコイル内型38の天部62がコイル外型36の積層方向上端側に接することにより、コイル外型36は、積層方向上端側にてコイル内型38の天部62に位置決めされる。かかる状態が実現されると、コイル外型36の有する溝46がコイル内型38の円錐部60表面の溝64に合致して、それらの溝46,64同士が一体化して塞がれることにより、成形金型30内に、鋳造すべきコイル12の所望形状を模した空間が形成される。
【0041】
かかる溝46,64同士が一体化した空間が形成された成形金型30がダイカストマシン22の可動型26の空間32内にセットされる。そして、空間32内に成形金型30が収容された可動型26が、その空間32が閉じられるように固定型24に対して移動される。この場合には、空間32の開口が閉じられることで成形金型30が型締めされて拘束されると共に、コイル外型36の溝46及びコイル内型38の溝64に溶湯を導く注湯路80が底型40の湯溜り82を介して固定型24の注湯口76に連通する。
【0042】
成形金型30が型締めされた後、射出機構70のピストン74がシリンダ72に対して退避された状態でシリンダ72の注入口78から液状化された溶湯が注入される。尚、シリンダ72内に注入される溶湯の量は、コイル12を鋳造するのに十分な量であって、シリンダ72、固定型24の注湯口76、及び底型40の側壁部66の湯溜り82の容量などを考慮して設定されるものであってもよい。シリンダ72内に溶湯が注入された後、ピストン74が溶湯を押圧すべくシリンダ72に対して移動される。
【0043】
かかるピストン74の移動がなされると、シリンダ72内の溶湯が加圧されることで、その加圧された溶湯が、固定型24の注湯口76から底型40の湯溜り82を介してコイル外型36の各注湯路80に導かれて、成形金型30の溝46,64全体に圧入・充填される。成形金型30の溝46,64に圧入された溶湯は、固定型24の注湯口76、底型40の湯溜り82、及びコイル外型36の各注湯路80内の溶湯と共に、所定温度まで冷却される。溶湯が所定温度まで冷却されると、その溶湯は凝固する。成形金型30の溝46,64は、コイル12の所望形状を模した空間である。このため、成形金型30の溝46,64内の溶湯が冷却され凝固すると、その溝46,64内の凝固した溶湯全体の形状は、
図9及び
図10に示す如く、鋳造すべきコイル12の所望形状に合致する。
【0044】
上記した溶湯の凝固が完了すると、その後、成形金型30の溝46,64内の溶湯が凝固しかつその成形金型30が空間32内に収容された可動型26が、その空間32が開放されるように固定型24に対して離間方向に移動される。この場合には、空間32の開口が開放されることで成形金型30の型締めが解除されると共に、その溝46,64内の溶湯が固定型24の注湯口76、底型40の湯溜り82、及びコイル外型36の各注湯路80内の溶湯と繋がった状態で可動型26と一緒に移動される。
【0045】
次に、可動型26の空間32内に収容されている成形金型30が、凝固後の溶湯と一緒に、その空間32内から取り出される。この空間32からの成形金型30の取り出しは、押出機構84が成形金型30を空間32の開口から外部へ押し出すことにより実現される。この場合、溝46,64内の溶湯、並びに、固定型24の注湯口76、底型40の湯溜り82、及びコイル外型36の各注湯路80内の溶湯は、互いに繋がったままである。
【0046】
可動型26の空間32内から取り出された成形金型30は、分割金型50,52,54,56ごとかつ金型片58ごとに分割されることで抜型される。具体的には、まず、成形金型30のコイル内型38がコイル外型36の貫通孔42から中心軸線L方向に抜かれることで、コイル外型36及び底型40とコイル内型38とが分離される。そして、コイル外型36が底型40の側壁部66から中心軸線L方向に抜かれることで、コイル外型36と底型40とが分離される。そして最後に、コイル外型36の分割金型50,52,54,56の各金型片58が凝固後の溶湯(すなわち、コイル12の中心軸線L)に対して径方向外側に移動されることで、コイル外型36と凝固後の溶湯とが分離される。
【0047】
上記の如く成形金型30の抜型が行われると、次に、凝固後の溶湯全体(
図11に示す如き形状)のうち溝46,64内の溶湯部分と、固定型24の注湯口76、底型40の湯溜り82、及びコイル外型36の各注湯路80内の溶湯部分とが切り離される。上記の如く、溝46,64は、コイル12の所望形状(円形螺旋状)を模した空間を構成する。従って、上記の切り離しが行われると、成形金型30から円形螺旋状に形成されたコイル12が取り出されることとなる。
【0048】
このように、本実施例のコイル鋳造装置10においては、所望形状(円形螺旋状)のコイル12の鋳造成形が、それぞれ複数の金型片58が中心軸線L方向に積層された周方向に4分割された分割金型50,52,54,56からなるコイル外型36と、そのコイル外型36の貫通孔42に挿入されるコイル内型38と、そのコイル外型36をその周囲及びその下方から支持する底型40と、を有する成形金型30を用いて実現される。また、そのコイル12の鋳造成形が、その成形金型30をダイカストマシン22の可動型26に形成された空間32に収容して型締めした状態で行われる。
【0049】
成形金型30のコイル外型36には、金型片58ごとに、鋳造すべきコイル12の所望形状に合致する溝46と、その溝46に連通する注湯路80と、が形成されている。また、コイル内型38には、溝46に対応して鋳造すべきコイル12の所望形状に合致する溝64が形成されている。成形金型30の溝46,64は、コイル12の所望形状(円形螺旋状)を模した空間を構成する。また、注湯路80には、ダイカストマシン22の固定型24の注湯口76を介して射出機構70のシリンダ72内が連通している。
【0050】
かかる構造においては、成形金型30を可動型26の空間32にて拘束しつつ、その成形金型30の溝46,64を圧力が逃げない構造とすることができると共に、射出機構70を用いて加圧された液状の溶湯を成形金型30の溝46,64に注入させてコイル12を鋳造することができる。すなわち、コイル12を鋳造するうえで、それぞれ複数の金型片58が積層された分割金型50,52,54,56からなる成形金型30を型締めしつつその成形金型30の溝46,64全体に高圧の溶湯を注入することができる。溝46,64に注入された高圧の溶湯は、冷却・凝固される。従って、本実施例によれば、成形金型30の溝への溶湯の注入と成形金型30の金型片58の各段の積み重ねとを交互に行うことは不要であると共に、コイル12を鋳造するうえでの鋳造圧力を高く設定することができる。
【0051】
このため、本実施例によれば、液状の溶湯から所望形状のコイル12を鋳造するうえでの形状転写性を高めることができる。また、鋳造後のコイル製品に対して後工程において所望形状への加圧変形を施すなどの処理を不要とすることができる。また、コイル12を鋳造するのに、成形金型30の金型片58の溝46に注入された溶湯表面が凝固するまで次の段の金型片58の溝46への溶湯の注入を待機させることは不要であるので、コイル12全体の鋳造時間を短くすることができる。従って、液状の溶湯から所望形状のコイル12を鋳造するうえでの形状転写性を高めつつ簡易な手法でコイル12を鋳造することができる。
【0052】
また、本実施例のコイル鋳造装置10においては、すべての段の金型片58の積み重ねが完了している成形金型30の溝46,64全体に一気に液状の溶湯が注入される。かかる構成においては、溝46,64への溶湯の注入と成形金型30の積み重ねとを交互に行う対比構成とは異なり、溝46に溶湯が注入された金型片58が、隣接する金型58と組み合わせられて積層される前に昇温により熱変形することは回避されるので、金型片58同士の積み重ねを位置精度よく行うことができる。このため、本実施例によれば、金型片58間に生じる隙間に起因した鋳バリの発生を抑えることができ、鋳造されるコイル12の形状精度を向上させることができる。
【0053】
また、溝46,64への溶湯の注入と成形金型30の金型片58の各段の積み重ねとを交互に行う対比構成では、金型片58の各段の積み重ねをロボット動作で行うことが必要であるが、かかるロボット動作では上記積み重ねの位置精度が悪いので、成形金型30側に金型片58の積み重ねを行ううえでのガイド部材を設けることが必要となる。
【0054】
これに対して、本実施例においては、コイル12の鋳造開始前に成形金型30の金型片58の各段の積み重ねを完了させて、その成形金型30全体を可動型26の空間32内において拘束させる。尚、この拘束は、空間32に挿入される枠型34を用いることとしてもよい。かかる構成によれば、コイル12の鋳造過程で成形金型30の金型片58の各段の積み重ねを行う必要はなく、その積み重ねをロボット動作で行う必要はないので、成形金型30にガイド部材を設けることは不要である。このため、本実施例によれば、簡易な構成で精度よくコイル12を鋳造することが可能である。
【0055】
また、本実施例のコイル鋳造装置10においては、成形金型30の溝46,64に注入された溶湯が冷却・凝固された後、その成形金型30の型締めが解除されてその成形金型30が可動型26の空間32内から取り出され、そして、その成形金型30が抜型される。
【0056】
この成形金型30の抜型は、具体的には、(1)コイル外型36の貫通孔42からコイル内型38が抜かれることでコイル外型36及び底型40とコイル内型38とが分離され、(2)その後、底型40からコイル外型36が抜かれることでコイル外型36と底型40とが分離され、(3)そして最後に、コイル外型36と凝固後の溶湯とが分離されることにより実現される。このコイル外型36と凝固後の溶湯との分離は、凝固後の溶湯に対して分割金型50,52,54,56の各金型片58を径方向外側に移動させることで実現される。
【0057】
成形金型30の抜型後、コイル外型36から分離された凝固後の溶湯全体のうち、溝46,64内の溶湯部分に対して、固定型24の注湯口76、底型40の湯溜り82、及びコイル外型36の各注湯路80内の溶湯部分が切り離されて除去されることで、円形螺旋状のコイル12が取り出される。
【0058】
かかる構造においては、成形金型30のコイル外型36の金型片58を段ごとに固定することは不要であると共に、そのコイル外型36の各金型片58の取り外しを積層方向の一方側のものから他方側のものへ順に一つずつ行うことは不要である。従って、本実施例によれば、成形金型30を可動型26から取り出した後におけるその成形金型30の抜型を容易に実現することができ、鋳造後のコイル12の成形金型30からの取り出しを容易にすることができる。このため、成形金型30の抜型を短時間で行うことができ、成形金型30から鋳造されたコイル12を取り出すのに要する時間を短縮させることができる。
【0059】
このように、本実施例によれば、鋳造後のコイル12の型からの取り外しを容易にしつつ、位置固定されかつ拘束された成形金型30内への溶湯の射出によって形状転写性を高めることができると共に、複雑な制御を行うことなく簡易な手法でコイル12を鋳造することができる。
【0060】
尚、上記の実施例においては、空間32を形成する壁面を有する可動型26(或いは、枠型34)が特許請求の範囲に記載した「拘束型」に相当している。
【0061】
ところで、上記の実施例においては、鋳造されるコイル12が、断面が矩形状に形成される平角導線14からなるものであって、その所望形状が、平角導線14の内周面16が中心軸線Lに対して直交する方向(径方向)に向き、かつ、平角導線14の隣接する段の平角導線14と対向する面(すなわち、上面及び下面)18が中心軸線L方向に向くものである。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、鋳造されるコイル12の所望形状は、各箇所の断面の厚さ(積層方向)が内径側から外径側にかけて一定であり或いは内径側ほど大きくかつ外径側ほど小さくなるものであればよく、各段の導線14の隣接する段の導線14と対向する面(すなわち、上面及び下面)18が中心軸線L方向に対して斜め方向に向くものであってもよく、鋳造されるコイル12は、中心軸線L方向の幅が内周面側から外周面側にかけて徐々に小さくなるように形成されるものであってもよい。すなわち、断面矩形状に限らず、断面三角形状などであってもよい。
【0062】
また、上記の実施例においては、鋳造されるコイル12が、中心軸線L方向から見て略円形に形成されるものであって、複数の円形が中心軸線L方向に積み重なるように円形螺旋状に形成されるコイルである。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、鋳造されるコイル12は、中心軸線L方向から楕円状に形成されるものであって、複数の楕円が中心軸線L方向に積み重なるように楕円螺旋状に形成されるコイルであってもよい。尚、この変形例においては、コイル12の所望形状に合わせて、成形金型30のコイル外型36の貫通孔42の形状及びコイル内型38の外形形状が設定されていればよい。
【0063】
また、上記の実施例においては、鋳造されるコイル12が、積層方向一方側から積層方向他方側にかけて外径が徐々に縮径するテーパ状に形成されるコイルである。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、鋳造されるコイル12が、積層方向一方側から積層方向他方側にかけて外径が変化しない同径のコイルであってもよい。尚、この変形例においても、コイル12の所望形状に合わせて、成形金型30のコイル外型36の貫通孔42の形状及びコイル内型38の外形形状が設定されていればよい。
【0064】
また、上記の実施例においては、鋳造されるコイル12が、平角導線14が中心軸線L回りに均一に傾斜しながら中心軸線L方向に延びるように形成される。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、鋳造されるコイル12は、平角導線14が一部で傾斜せずかつ残りの部位で傾斜しながら中心軸線L方向に延びるように形成されてもよい。例えば、鋳造されるコイル12が、中心軸線L回りの四辺のうち対向する二辺で傾斜せずかつ残りの二辺で傾斜しながら中心軸線L方向に延びるように形成されてもよい。尚、この変形例においても、コイル12の所望形状に合わせて、成形金型30のコイル外型36の貫通孔42の形状及びコイル内型38の外形形状が設定されていればよい。
【0065】
また、上記の実施例においては、鋳造されるコイル12は、
図3に示す如く、平角導線14が中心軸線L回りに均一に傾斜しながら中心軸線L方向へ延びることにより各段のレーン変更を行うものである。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、
図12及び
図13に示す如く、コイル12のコイルエンド部に中心軸線L方向に階段状に屈曲するクランク部を設けて各段のレーン変更を行うものであってもよい。尚、この変形例においても、コイル12の所望形状に合わせて、成形金型30のコイル外型36の貫通孔42の形状及びコイル内型38の外形形状が設定されていればよい。
【0066】
また、上記の実施例においては、鋳造されるコイル12は、
図3に示す如く、中心軸線L方向の遠方の点を中心にして円弧状に湾曲するものではない。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、
図12及び
図13に示す如く、中心軸線L方向の遠方の点を中心にして円弧状に湾曲するものであってもよい。尚、この変形例においても、コイル12の所望形状に合わせて、成形金型30のコイル外型36の貫通孔42の形状及びコイル内型38の外形形状が設定されていればよい。
【0067】
また、上記の実施例においては、鋳造されるコイル12は、
図3に示す如く、平角導線14の断面長手方向に屈曲するもの(すなわち、エッジワイズ成形されたもの)ではない。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、平角導線14の断面長手方向に屈曲するもの(すなわち、エッジワイズ成形されたもの)であってもよい。尚、この変形例においても、コイル12の所望形状に合わせて、成形金型30のコイル外型36の貫通孔42の形状及びコイル内型38の外形形状が設定されていればよい。
【0068】
更に、上記の実施例においては、成形金型30のコイル外型36が、鋳造すべきコイル12の周方向に4分割された分割金型50,52,54,56からなる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、分割金型の数は“4”より多くてもよく、また、コイル外型36は、抜型することが可能な範囲で、鋳造すべきコイル12の周方向に少なくとも2分割されていればよい。