特許第6044514号(P6044514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044514
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】スラスト力測定装置及び圧延機
(51)【国際特許分類】
   B21C 51/00 20060101AFI20161206BHJP
   B21B 31/02 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B21C51/00 C
   B21B31/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-233111(P2013-233111)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2015-93294(P2015-93294A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】森本 和浩
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−226106(JP,A)
【文献】 特開昭63−043705(JP,A)
【文献】 特開平04−100607(JP,A)
【文献】 特開平06−226606(JP,A)
【文献】 特開2002−316203(JP,A)
【文献】 特開2004−243398(JP,A)
【文献】 特開2012−157963(JP,A)
【文献】 特開2013−052396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 51/00
B21B 31/02,38/06−38/08
G01L 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングにロールチョックが支持され、前記ロールチョックに支持されたワークロールで被圧延材を圧延する際に前記ワークロールに発生するスラスト力を測定するスラスト力測定装置であって、
前記ワークロールの軸方向の端面に回動自在に固定された中間部材と、
前記ワークロールの軸方向に発生するスラスト力を電気信号に変換するロードセルと、
前記ワークロールの軸方向の端面に向かって前記ロードセルを前記中間部材に押付けるロードセル押付け機構と、
を有していることを特徴とするスラスト力測定装置。
【請求項2】
前記中間部材は、前記ワークロールの軸方向の回転力が前記ロードセルに伝達されないように前記ワークロールの回転力の前記ロードセルへの伝達を遮断するスラストベアリングであることを特徴とする請求項1に記載のスラスト力測定装置。
【請求項3】
前記ロードセル押付け機構は、
頭部、雄ネジ部、挿入部がこの順番で配列された複数のボルトと、
前記ワークロールの軸方向において互いに反対側に位置する2つの面のうち前記ワークロール側の面に前記ロードセルが固定され、前記2つの面に亘って貫通する複数の貫通孔が配設された固定板と、
前記ワークロールの一端側の端面を覆うようにして前記ロールチョックにネジ止め固定され、前記ワークロールの軸方向の端面と向かい合う部分にその部分の内外に亘って貫通する複数の貫通雌ネジ部が配設されたカバー部材と、
を有し、
前記複数のボルトの各々の前記挿入部が前記カバー部材の内側に突出するように前記複数のボルトの各々の前記雄ネジ部が前記カバー部材の前記複数の貫通雌ネジ部に個別に嵌め合わされ、
前記複数のボルトの各々の前記挿入部が前記固定板の前記複数の貫通の各々に回動可能な状態で個別に挿入されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスラスト力測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のスラスト力測定装置を備えたことを特徴とする圧延機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラスト力測定装置及び圧延機に関し、特に、ワークロールで被圧延材を圧延する際にワークロールに発生するスラスト力を測定するスラスト力測定装置及びそれを備えた圧延機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延機では、被圧延材の非対称性や被圧延材に対するワークロールの傾き、そしてワークロールの形状などにより、ワークロールにその回転軸方向の力、即ちスラスト力が発生する。このスラスト力は、ロールチョックや、ロールチョックとワークロールとの間に介在されるベアリングなどの設備寿命に影響するため、ワークロールに発生するスラスト力の測定・管理は非常に重要である。そこで、圧延機のワークロールに発生するスラスト力の測定に関する技術が下記の特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1には、ワークロールとバックアップロールとの間のスラスト力を、バックアップロールのチョック内部に設置したロードセルで測定することが開示されている。
特許文献2には、ミルハウジングのポストの内外側面に歪計を取り付け、上下ロールによる圧延中に発生するスラスト力を相殺した形で圧延荷重を得るようにした歪計式荷重測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−243398号公報
【特許文献2】特開昭61−226106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧延機のワークロールに発生するスラスト力は、ワークロールを支持するロールチョックやこのロールチョックを支持するハウジングに伝達されるため、特許文献1のように、バックアップロールのチョック内部にロードセルを設置した場合や、特許文献2のように、ミルハウジングのポストの内外側面に歪計を取り付けた場合においてもワークロールに発生するスラスト力を測定することができる。
【0006】
しかしながら、チョック内部に設置したロードセルや、ミルハウジングのポストの内外側面に取り付けた歪計でワークロールに発生するスラスト力を測定する場合は、ロールチョックとハウジングとの間の摩擦の影響によりワークロールに発生する真のスラスト力よりも測定値が小さくなるので、ワークロールに発生するスラスト力の測定精度が低い。
そこで、本発明者は、ワークロールの軸方向の端面に着目し、本発明をなした。
本発明の目的は、ワークロールに発生するスラスト力を高精度で測定することが可能なスラスト力測定装置及びそれを備えた圧延機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るスラスト力測定装置は、ハウジングにロールチョックが支持され、前記ロールチョックに支持されたワークロールで被圧延材を圧延する際に前記ワークロールに発生するスラスト力を測定するスラスト力測定装置であって、前記ワークロールの軸方向の端面に回動自在に固定された中間部材と、前記ワークロールの軸方向に発生するスラスト力を電気信号に変換するロードセルと、前記ワークロールの軸方向の端面に向かって前記ロードセルを前記中間部材に押付けるロードセル押付け機構とを有している。
【0008】
また、本発明の一態様に係るスラスト力測定装置において、前記中間部材は、前記ワークロールの軸方向の回転力が前記ロードセルに伝達されないように前記ワークロールの回転力の前記ロードセルへの伝達を遮断するスラストベアリングであることが好ましい。
また、本発明の一態様に係るスラスト力測定装置において、前記ロードセル押付け機構は、頭部、雄ネジ部、挿入部がこの順番で配列された複数のボルトと、前記ワークロールの軸方向において互いに反対側に位置する2つの面のうち前記ワークロール側の面に前記ロードセルが固定され、前記2つの面に亘って貫通する複数の貫通孔が配設された固定板と、前記ワークロールの一端側の端面を覆うように前記ロールチョックにネジ止め固定され、前記ワークロールの軸方向の端面と向かい合う部分にその部分の内外に亘って貫通する複数の貫通雌ネジ部が配設されたカバー部材とを有し、前記複数のボルトの各々の前記挿入部が前記カバー部材の内側に突出するように前記複数のボルトの各々の前記雄ネジ部が前記カバー部材の前記複数の貫通雌ネジ部に個別に嵌め合わされ、前記複数のボルトの各々の前記挿入が前記固定板の前記複数の貫通雌ネジ部の各々に回動可能な状態で個別に挿入された構成になっていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る圧延機は、前記スラスト力測定装置を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
本発明によれば、ワークロールに発生するスラスト力を高精度で測定することが可能なスラスト力測定装置及びそれを備えた圧延機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るスラスト力測定装置を備えた圧延機の概略構成を示す正面図である。
図2図1のA−A線に沿った断面図である。
図3図2のB−B線に沿った断面図である。
図4図3の一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
本実施形態では、本発明に係るスラスト力測定装置及びそれを備えた2段式圧延機について、図1乃至図4を用いて説明する。
【0012】
なお、本実施形態では、後述する被圧延材の進行方向に沿う方向をX方向と呼び、同一平面内においてX方向と直交する方向をY方向と呼び、X方向及びY方向に対して直交する方向をZ方向と呼ぶこともある。
また、図面を見易くするため、図3及び図4においては断面を表すハッチングを一部省略している。
【0013】
図1及び図2において、本発明の一実施形態に係る2段式圧延機1は、ハウジング9と、ハウジング9内に上下方向(Z方向)に配設された上側ワークロール2及び下側ワークロール3と、上側ワークロール2の両端側を個別に支持する軸受部としての一対の上側ワークロールチョック4a,4bと、下側ワークロール3の両端側を個別に支持する軸受部としての一対の下側ワークロールチョック5a,5bとを備えている。この2段式圧延機1は、被圧延材の圧延設備内に配備される調質圧延機である。
【0014】
また、2段式圧延機1は、ハウジング9の底板部9aと一対の下側ワークロールチョック5a,5bとの間に、一対の下側ワークロールチョック5a,5bの各々に対応して個別に配設された一対の圧下シリンダ6を備えている。
また、2段式圧延機1は、ハウジング9の天板部9bと一対の上側ワークロールチョック4a,4bとの間に、一対の上側ワークロールチョック4a,4bの各々に対応して個別に配設された一対のプレッシャーブロック7を備えている。
【0015】
また、2段式圧延機1は、一対の上側ワークロールチョック4a,4bと一対の下側ワークロールチョック5a,5bとの各々の間に2つずつ配設された4つのワークロールバランス8を備えている。この4つのワークロールバランス8の各々は、例えばシリンダ機構で構成されている。
また、2段式圧延機1は、一方の下側ワークロールチョック5aに対して2つのキーパプレート11a,11bを備え(図3参照)、さらに、他方の下側ワークロールチョック5b及び一対の上側ワークロールチョック4a,4bの各々に対しても2つのキーパフレート11a,11bを備えている(図示せず)。
【0016】
一対の圧下シリンダ6において、一方の圧下シリンダ6は、シリンダチューブ6bがハウジング9の底板部9aに取り付けられ、シリンダロッド6aの上端部が一方の下側ワークロールチョック5aの圧下シリンダ6側の面に当接して一方の下側ワークロールチョック5aに圧下荷重を供給する。また、他方の圧下シリンダ6は、シリンダチューブ6bがハウジング9の底板部9aに取り付けられ、シリンダロッド6aの先端部が他方の下側ワークロールチョック5bの圧下シリンダ6側の面に当接して他方の下側ワークロールチョック5bに圧下荷重を供給する。
【0017】
一対のプレッシャーブロック7において、一方のプレッシャーブロック7は、上面に連結された圧下スクリュー(図示せず)を介してハウジング9の天板部9bに取り付けられ、下面が一方の上側ワークロールチョック4aのプレッシャーブロック7側の面に当接して一方の上側ワークロールチョック4aに圧下荷重の反力を付与する。また、他方のプレッシャーブロック7は、上面に連結された圧下スクリュー(図示せず)を介してハウジング9の天板部9bに取り付けられ、下面が他方の上側ワークロールチョック4bのプレッシャーブロック7側の面に当接して他方の上側ワークロールチョック4aに圧下荷重の反力を付与する。
【0018】
一方の上側ワークロールチョック4aと一方の下側ワークロールチョック5aとの間に配設された2つのワークロールバランス8において、一方のワークロールバランス8はハウジング9の前柱部9c側に配設され、他方のワークロールバランス8はハウジング9の後柱部9d側に配設されている。この2つのワークロールバランス8の各々は、各々のシリンダチューブ8bがハウジング9の前柱部9c及び後柱部9dに固定され、各々のシリンダロッド8aの先端部が一方の上側ワークロールチョック4aのワークロールバランス8側の面に当接している。
【0019】
他方の上側ワークロールチョック4bと他方の下側ワークロールチョック5bとの間に配設された2つのワークロールバランス8において、一方のワークロールバランス8はハウジング9の前柱部9c側に配設され、他方のワークロールバランス8はハウジング9の後柱部9d側に配設されている。この2つのワークロールバランス8の各々は、各々のシリンダチューブ8bがハウジング9の前柱部9c及び後柱部9dに固定され、各々のシリンダロッド8aの先端部が他方の上側ワークロールチョック4bのワークロールバランス8側の面に当接している。
【0020】
一対の上側ワークロールチョック4a,4b及び一対の下側ワークロールチョック5a,5bは、ハウジング9の前柱部9cと後柱部9dとの間に配設され、前柱部9cの後柱部9d側の面及び後柱部9dの前柱部9c側の面を案内面として上下方向(Z方向)に移動可能となっている。この一対の上側ワークロールチョック4a,4b及び一対の下側ワークロールチョック5a,5bの移動は、圧下シリンダ6やワークロールバランス8によって行われる。
【0021】
一方の下側ワークロールチョック5aは、図3に示すように、X方向において互いに反対側に位置する2つの外壁面の各々に凹部12a,12bが設けられている。この2つの凹部12a,12bのうち、一方の凹部12aにはハウジング9の前柱部9cの外壁面に支持されたキーパプレート11aが嵌合され、他方の凹部12bにはハウジング9の後柱部9dの外壁面に支持されたキーパプレート11bが嵌合されている。この2つの凹部12a,12bは、図示していないが、他方の下側ワークロールチョック5b及び一対の上側ワークロールチョック4a,4bの各々においても設けられている。また、これらワークロールチョック(5b,4a,4b)の凹部12a,12bにおいても、ハウジング9の前柱部9c及び後柱部9dの側面面に支持されたキーパプレート11a,11bが嵌合されている。
【0022】
図3及び図4に示すように、下側ワークロール3の一端側は、軸受としてのコロベアリング13及びボールベアリング14を介して一方の下側ワークロールチョック5aに回動自在に支持されている。このコロベアリング13及びボールベアリング14は、下側ワークロール3の回転軸方向の一方の端面3aの周縁部を覆うようにしてその端面3aにネジ止め固定された位置決め部材15によって下側ワークロール3の軸方向に沿う方向の位置決めがなされている。
【0023】
なお、図示していないが、下側ワークロール3の他端側及び上側ワークロール2の両端側においても、下側ワークロール3の一端側と同様に、軸受としてのコロベアリング及びボールベアリングを介して各々のワークロールチョック(5b,4a,4b)に回動自在に支持され、これらのベアリングにおいても各々のワークロールの端面の周縁部を覆うようにしてその端面にネジ止め固定された位置決め部材によってワークロールの軸方向に沿う方向の位置決めがなされている。
【0024】
このように構成された2段式圧延機1は、上側ワークロール2の両端を支持する一対のワークロールチョック4a,4bがハウジング9に支持され、下側ワークロール3の両端を支持する一対のワークロールチョック5a,5bがハウジング9に支持されている。また、このように構成された2段式圧延機1は、各ワークロールチョック4a,4b,5a,5bに支持された一対のワークロール2,3で被圧延材を圧延する。被圧延材は、一対のワークロール2,3の間を図2の矢印Lで示す方向に進行し、一対のワークロール2,3間を進行中に圧延される。
【0025】
2段式圧延機1は、図3及び図4に示すように、スラスト力測定装置20を備えている。本実施形態において、スラスト力測定装置20は、これに限定されないが、下側ワークロール3の一端側に配設されている。
スラスト力測定装置20は、下側ワークロール3の回転軸方向の一方の端面3aに回動自在に支持された中間部材としてのスラストベアリング21と、下側ワークロール3の回転軸方向に発生するスラスト力SPを電気信号に変換するロードセル22と、スラストベアリング21にロードセル22を押付けるロードセル押付け機構23とを有している。
【0026】
スラストベアリング21は、複数のボール若しくはコロが環状に配設された保持器21bを2つの軌道盤21a,21cで挟んだ構成になっている。2つの軌道盤21a,21cの各々は、保持器21bを挟む面側に保持器21bのボール若しくはコロが回動する環状の溝を有している。即ち、スラストベアリング21は、2つの軌道盤21a,21cが互い反対方向に回動可能となるように構成されている。
【0027】
2つの軌道盤21a,21cにおいて、一方の軌道盤21aは、スラストベアリング21の回転軸と下側ワークロール3の回転軸とが同一直線上に位置するように下側ワークロール3の端面3aに例えば接着材を介して固定されている。他方の軌道盤21cは、この軌道盤21cにロードセル22が押付けられる押圧力により、保持器21bを介して一方の軌道盤21aに回動自在に支持される。すなわち、スラストベアリング21は、下側ワークロール3の回転力がロードセル22に伝達されないように下側ワークロール3の回転力のロードセル22への伝達を遮断することができる。
【0028】
ロードセル22としては、これに限定されないが、例えば引張圧縮型のロードセルを用いている。この引張圧縮型のロードセルは、主に、力に比例して変形する起歪体と、この起歪体の変形量(ひずみ)を測定する歪ゲージとを筐体内に収納した構成になっている。歪ゲージは起歪体に貼り付けられている。筐体の外側には起歪体と連結されたロードボタンが配設されており、このロードボタンに力が加わることで起歪体が変形するようになっている。この引張圧縮型のロードセルは、起歪体の変形量に比例して歪ゲージの電気抵抗が変化することで、起歪体の変形量に比例した電気信号を出力する。したがって、ロードセル22は、ロードボタンに下側ワークロール3の軸方向のスラスト力SPが伝達されることで、スラスト力SPに比例した電気信号を出力する。
【0029】
ロードセル押付け機構23は、複数のボルト24と、ロードセル22が固定された固定板25と、下側ワークロール3の回転軸方向の一端側の端面3aを覆うようにして一方の下側ワークロールチョック5aに例えばボルト16によってネジ止め固定されたカバー部材26とを有している。
複数のボルト24の各々は、頭部24a、雄ネジ部24b、挿入部24cがこの順番で配列された構成になっている。頭部24aは、雄ネジ部24bを回転させるための工具によって形状が異なり、例えば外形形状が6角、若しくは円柱の中央部に六角穴が設けられた形状からなる。挿入部24cは、雄ネジ部24bよりも外形サイズが小さくなっており、挿入部24cと雄ネジ部24bとの間に段差部が形成されている。挿入部24cは、例えば外形が円形の円柱若しくは円筒で形成されている。
【0030】
固定板25は、下側ワークロール3の回転軸方向において互いに反対側に位置する2つの面のうちの下側ワークロール3側の面にロードセル22が固定されている。ロードセル22は、そのロードボタンの中心軸と下側ワークロール3の回転軸とが同一直線上に位置するように固定板25に固定されている。
また、固定板25は、下側ワークロール3の回転軸方向において互いに反対側に位置する2つの面に亘って貫通する複数の貫通孔25aを有している。複数の貫通孔25aは、固定板25に固定されたロードセル22を囲むようにして固定板25のロードセル22の固定位置の周囲に配設されている。複数の貫通孔25aの各々の内形サイズは、ボルト24の挿入部24cの外形サイズよりも大きく、かつボルト24の雄ネジ部24bの外径サイズよりも小さくなっている。この複数の貫通孔25aには、ボルト24の挿入部24cが回動可能に挿入されるため、ボルト24の挿入部24cと同じ形状、例えば円形の形状が好ましい。
【0031】
カバー部材26は、下側ワークロール3の一端側の端面3aと向かい合う部分26aに、その部分26aの内外に亘って、即ち下側ワークロール3の回転軸方向において互いに反対側に位置する2つの面に亘って貫通する複数の貫通雌ネジ部26bを有している。この複数の貫通雌ネジ部26bは、平面的にカバー部材26と固定板25とを重ね合わせたとき、各々が固定板25の複数の貫通孔25aと個別に重なる位置に配設されている。
【0032】
固定板25の貫通孔25a及びカバー部材26の貫通雌ネジ部26bの数は、ボルトの本数に対応している。
複数のボルト24は、各々の頭部24aがカバー部材26の外側に位置し、各々の挿入部24cがカバー部材26からその内側に突出するように、各々の雄ネジ部24bがカバー部材26の複数の貫通雌ネジ部26bに個別に嵌め合わされている。そして、複数のボルト24は、各々の挿入部24cが固定板25の複数の貫通孔25aの各々に回動可能な状態で個別に挿入されている。固定板25は、複数の貫通孔25aの各々に複数のボルト24の各々の挿入部24cが挿入されることにより、複数のボルト24を介してカバー部材26に支持される。このとき、固定板25は、固定板25の貫通孔25aの内形サイズがボルト24の挿入部24cの外径サイズよりも大きく、かつボルト24の雄ネジ部24bの外径サイズよりも小さくなっているので、ボルト24の雄ネジ部24bと挿入部24cとの間の段差部に保持される。
【0033】
このように構成されたロードセル押付け機構23は、複数のボルト24を回して複数のボルト24がカバー部材26の内側に突出する突出量を調整することにより、固定板25を下側ワークロール3の回転軸方向に移動させることができるので、固定板25に固定されたロードセル22をスラストベアリング21に押付けることができると共に、スラストベアリング21への押圧力を調整することができる。
【0034】
なお、ボルト24の本数は2本でもよいが、固定板25を安定して保持するためには3本以上のボルト24を用いることが好ましい。
次に、本実施形態のスラスト力測定装置20の作用効果について説明する。
2段式圧延機1では、両端が一対のワークロールチョック4a,4bに支持された上側ワークロール2と、両端が一対のワークロールチョック5a,5bに支持された下側ワークロール3とで被圧延材を圧延する際、被圧延材の非対称性や被圧延材に対するワークロールの傾き、そしてワークロール自身の形状などにより、例えば図3及び図4に示す方向のスラスト力SPが下側ワークロール3に発生する。
【0035】
このスラスト力SPは、下側ワークロール3を支持する下側ワークロールチョック5aや、この下側ワークロールチョック5aを支持するハウジング9に伝達されるため、従来のように、ワークロールチョックの内部にロードセルを設置した場合や、ハウジングに歪計若しくはロードセルを設置した場合においても下側ワークロール3に発生するスラスト力SPを測定することができる。
【0036】
しかしながら、ワークロールチョックの内部に設置したロードセルや、ハウジングに設置した歪計若しくはロードセルで下側ワークロール3に発生するスラスト力を測定する場合は、ワークロールチョックとハウジングとの摩擦の影響により下側ワークロール3に発生する真のスラスト力SPよりも測定値が小さくなるので、下側ワークロール3に発生するスラスト力SPの測定精度が低い。
【0037】
これに対して、本実施形態のスラスト力測定装置20は、下側ワークロール3の一端側に配設されている。このスラスト力測定装置20は、前述したように、下側ワークロール3の一端側の端面3aに回動自在に固定されたスラストベアリング21と、下側ワークロール3の回転軸方向に発生するスラスト力SPを電気的に変換するロードセル22と、下側ワークロール3の一端側の端面3aに向かってロードセル22をスラストベアリング21に押付けるロードセル押付け機構23とを有している。
【0038】
したがって、本実施形態のスラスト力測定装置20によれば、上側ワークロール2と下側ワークロール3とで被圧延材を圧延する際に下側ワークロール3に発生するスラスト力SPは、下側ワークロール3の一方の端面3aからスラストベアリング21を介してロードセル22に直線的に伝達されるので、下側ワークロールチョック5aとハウジング9との摩擦の影響を受けることなく、下側ワークロール3に発生するスラスト力SPを測定することができる。この結果、従来のように、ワークロールチョックの内部にロードセルを設置した場合やハウジングに歪み計を設置した場合と比較して、下側ワークロール3に発生するスラスト力SPを高精度で測定することができる。
【0039】
また、本実施形態のスラスト力測定装置20によれば、下側ワークロール3に発生するスラスト力SPを高精度で測定することができるので、下側ワークロール3の一端側と下側ワークロールチョック5aとの間に介在されるベアリング(13,14)の設備寿命を高精度で予測することができる。
ここで、上側ワークロール2と下側ワークロール3とで被圧延材を圧延する際に下側ワークロール3に発生するスラスト力SPを、本実施形態のスラスト力測定装置20で測定した結果、スラスト力SPは376Kgf であった。これに対し、同じ条件で、キーパプレート11a付近に設置したロードセルで測定した結果、スラスト力SPは61Kgf であった。この実測値の差分315Kgf は、下側ワークロールチョック5aとハウジング9との間の摩擦力吸収分と推測する。
【0040】
本実施形態のスラスト力測定装置20は、下側ワークロール3の一端側の端面3aにスラストベアリング21が固定され、このスラストベアリング21にロードセル22が下側ワークロール3の一端側の端面3aに向かって押付けられている。
したがって、本実施形態のスラスト力測定装置20によれば、下側ワークロール3の回転力のロードセル22への伝達を遮断することができるので、下側ワークロール3の一端側の端面3aから伝達されるスラスト力SPをロードセル22で測定することができる。
【0041】
本実施形態のスラスト力測定装置20は、ロードセル22が固定板25及びボルト24を介してカバー部材26に支持され、カバー部材26が下側ワークロールチョック5aにネジ止め固定されている。
したがって、本実施形態のスラスト力測定装置20によれば、カバー部材26を取り外すことにより、下側ワークロール3を組み込んだ状態でロードセル22の設置及び取り外しが可能である。従来のようにロードセルをワークロールチョックの内部に配設した場合は、ワークロールを組み込んだ状態でのロードセルの設置・取り外しは困難である。
【0042】
本実施形態のスラスト力測定装置20において、ロードセル押付け機構23は、複数のボルト24の各々の挿入部24cがカバー部材26の内側に突出するように複数のボルト24の各々の雄ネジ部24bがカバー部材26の複数の貫通雌ネジ部26bに個別に嵌め合わされ、複数のボルト24の各々の挿入部24cが固定板25の複数の貫通孔25aの各々に回動可能な状態で個別に挿入された構成になっている。
【0043】
したがって、複数のボルト24を回して複数のボルト24がカバー部材26の内側に突出する突出量を調整することにより、固定板25を下側ワークロール3の回転軸方向に移動させることができるので、固定板25に固定されたロードセル22をスラストベアリング21に押付けることができると共に、スラストベアリング21への押圧力を調整することができる。
【0044】
なお、前述の実施形態では、下側ワークロール3の一端側にスラスト力測定装置を配設した場合について説明した。しかしながら、スラスト力測定装置20は、下側ワークロール3の他端側に配設してもよい。即ち、スラスト力測定装置20は、下側ワークロール3の両端のうちの少なくとも何れか一方に配設すればよいが、下側ワークロール3の両端側に配設することが好ましい。
【0045】
また、前述の実施形態では、下側ワークロール3にスラスト力測定装置20を配設した場合について説明した。しかしながら、スラスト力測定装置20は、上側ワークロール2に配設してもよい。即ち、スラスト力測定装置20は、下側ワークロール3及び上側ワークロール2のうちの少なくとも何れか一方に設置すればよいが、下側ワークロール3及び上側ワークロール2の両方に配設してもよい。
【0046】
ただし、スラスト力測定装置20の配設は、ワークロールの駆動方式を考慮する必要がある。
また、前述の実施形態では、2段式圧延機1に本発明に係るスラスト力測定装置20を組み込んだ場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、4段式若しくはそれ以上の段数の圧延機に適用することができる。この場合、ワークロールにスラスト力測定装置を配設するのは勿論であるが、バックアップロールにスラスト力測定装置を配設してもよい。即ち、本発明のスラスト力測定装置は、バックアップロール、ワークロールに限定することなく、被圧延材の圧延に寄与するロールを対象とすることができる。
【0047】
以上説明したように、本発明に係るスラスト力測定装置及び圧延機は、ワークロールに発生するスラスト力を高精度で測定するという効果を有し、被圧延材の圧延設備内に配備される圧延機及びそれに搭載されるスラスト力測定装置に有用である。
【符号の説明】
【0048】
1…2段式圧延機、2…上側ワークロール、3…下側ワークロール、3a…端面、4a,4b…上側ワークロールチョック、5a,5b…下側ワークロールチョック
6…圧下シリンダ、6a…シリンダロッド、6b…シリンダチューブ、7…プレッシャーブロック
8…ワークロールバランス、8a…シリンダロッド、8b…シリンダチューブ
9…ハウジング、9a…底板部、9b…天板部、9c…前柱部、9d…後柱部
11a,11b…キーパプレート、12a,12b…凹部
13…コロベアリング、14…ボールベアリング、15…位置決め部材、16…ボルト
20…スラスト測定装置、21…スラストベアリング、22…ロードセル、23…ロードセル押付け機構
24…ボルト、24a…頭部、24b…雄ネジ部、24c…挿入部
25…固定板、25a…貫通孔、26…カバー部材、26a…部分、26b…貫通雌ネジ部、SP…スラスト力
図1
図2
図3
図4