(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2のように、前進6速及び後退1速を達成する自動変速機に対してプラネタリギヤセットの数を増大すれば、自動変速機の更なる多段化が可能になり、燃費の向上化を図ることができる。
【0007】
しかし、その多段化に際してプラネタリギヤセットの数を増大させる必要があるため、自動変速機が大型化するという問題がある。特に特許文献2の構成では、自動変速機の出力部(出力軸)が、プラネタリギヤセットのキャリアで駆動されるようになっているため、出力部がプラネタリギヤセットのリングギヤで駆動される場合に比べて、出力部に同じトルクを発生させるときの該プラネタリギヤセットの各構成ギヤにかかる力が、大きくなってしまう。この結果、出力部を駆動するプラネタリギヤセットの各構成ギヤのモジュールや、肉厚、ギヤ幅を大きくする必要があり、自動変速機がより一層大型化してしまう。
【0008】
そこで、出力部をプラネタリギヤセットのリングギヤで駆動するようにすればよいが、自動変速機では、その点だけを単純に変更することはできず、そのような変更は、結局、プラネタリギヤセット、クラッチ及びブレーキの結合関係を全て変更することになり、新たな構成の自動変速機を最初から創り出さなければならない。
【0009】
また、自動変速機では、各摩擦締結要素への油圧供給構造を考慮する必要がある。特にクラッチは、入力軸や、プラネタリギヤセットと該クラッチとを連結する連結部材、或るプラネタリギヤセットの構成要素と他のプラネタリギヤセットの構成要素とを連結する連結部材等といった部材によって囲まれる場合があり、この場合には、そのクラッチの周囲に位置する部材が、クラッチへの油圧供給経路上に存在することになるため、そのクラッチ周囲の部材に、クラッチへの油圧供給のための油圧供給孔を形成する必要がある。このようにクラッチ周囲の部材に油圧供給孔を形成すると、その油圧供給孔の開口の近傍には、油圧の漏れを防止するためのシール部材を設ける必要がある。そして、油圧供給孔を形成する部材の数が多くなると、油圧供給構造が複雑になるとともに、上記シール部材の数が増えてコストアップを招いたり、上記シール部材によって、油圧供給孔を形成する部材と連結されたプラネタリギヤセットの回転に対する抵抗が増大したりする。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、4つのプラネタリギヤセットとクラッチを含む5つの摩擦締結要素とを備えた自動変速機において、大型化を抑制するとともに、クラッチへの油圧供給のための油圧供給孔を形成する部材の数を出来る限り少なくして、クラッチへの油圧供給構造を簡素化しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明では、変速機ケース内に、動力源に連結される入力軸と、第1サンギヤ、第1キャリア及び第1リングギヤを有する、シングルピニオン型の第1プラネタリギヤセットと、第2サンギヤ、第2キャリア及び第2リングギヤを有する、シングルピニオン型の第2プラネタリギヤセットと、第3サンギヤ、第3キャリア及び第3リングギヤを有する、ダブルピニオン型の第3プラネタリギヤセットと、第4サンギヤ、第4キャリア及び第4リングギヤを有する、シングルピニオン型の第4プラネタリギヤセットと、5つの摩擦締結要素と、出力部と、を備えた自動変速機を対象として、上記第1プラネタリギヤセット、第2プラネタリギヤセット、第3プラネタリギヤセット及び第4プラネタリギヤセットは、入力軸方向において、入力軸の一方側からこの順に並んで配設され、上記第1キャリア及び上記第4リングギヤが上記入力軸に常時連結され、上記出力部が上記第3リングギヤに常時連結され、上記第1リングギヤと上記第2キャリアとが常時連結され、上記第2サンギヤと上記第4サンギヤとが常時連結され、上記第2キャリアと上記第3サンギヤとが常時連結され、上記第3キャリアと上記第4キャリアとが常時連結され、上記5つの摩擦締結要素は、上記第2リングギヤと上記第3キャリアとの間を断接する第1クラッチ、上記第4サンギヤと上記第4リングギヤとの間、又は、上記第4キャリアと上記第4リングギヤとの間を断接する第2クラッチ、上記第1サンギヤと上記変速機ケースとの間を断接する第1ブレーキ、上記第1リングギヤ及び上記第2キャリアと上記変速機ケースとの間を断接する第2ブレーキ、及び、上記第2リングギヤと上記変速機ケースとの間を断接する第3ブレーキである、という構成とした。
【0012】
上記の構成により、出力部が、第3プラネタリギヤセットの径が大きい第3リングギヤ(特に第3プラネタリギヤセットがダブルピニオン型であるために、第3リングギヤの径がより一層大きくなる)に連結されて、該第3リングギヤによって駆動されるので、出力部が第3キャリアや第3サンギヤで駆動される場合に比べて、出力部に同じトルクを発生させるときの第3プラネタリギヤセットの各構成ギヤにかかる力を小さくすることができる。この結果、第3プラネタリギヤセットの各構成ギヤのモジュールや、肉厚、ギヤ幅を大きくしなくても済み、前進6速及び後退1速を達成する従来の自動変速機に対してプラネタリギヤセットの数を増大して多段化を実施するようにしても、自動変速機の入力軸方向及び径方向の寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【0013】
また、第1クラッチは、第2リングギヤと第3キャリアとの間を断接するものであるので、変速機ケースの近傍に配設することができ、第1クラッチへの油圧供給経路を、変速機ケースから、第2リングギヤと第1クラッチとを連結する連結部材、又は、第3キャリアと第1クラッチとを連結する連結部材の油圧供給孔を通って第1クラッチに至るようにすることができ、第1クラッチへの油圧供給のための油圧供給孔を形成する部材は1つで済む。
【0014】
さらに、第2クラッチは、並設されたプラネタリギヤセットの端に位置する第4プラネタリギヤセットの第4サンギヤと第4リングギヤとの間、又は、第4キャリアと第4リングギヤとの間を断接するものであるので、第2クラッチを、入力軸方向において、第4プラネタリギヤセットに対して、第3プラネタリギヤセットとは反対側に配設することで、第2クラッチへの油圧供給経路を、変速機ケースから、入力軸と第4リングギヤとを連結する連結部材の油圧供給孔を通って第2クラッチに至るようにすることができ、第2クラッチへの油圧供給のための油圧供給孔を形成する部材は1つで済む。
【0015】
したがって、第1及び第2クラッチへの油圧供給のための油圧供給孔を形成する部材の数を少なくすることができ、第1及び第2クラッチへの油圧供給構造を簡素化することができる。
【0016】
上記自動変速機において、上記第2クラッチは、入力軸方向において、上記第4プラネタリギヤセットに対して、上記第3プラネタリギヤセットとは反対側に配設されている、ことが好ましい。
【0017】
このことにより、第2クラッチへの油圧供給のための油圧供給孔を形成する部材を1つにすることができ、よって、第2クラッチへの油圧供給構造を確実に簡素化することができる。
【0018】
上記自動変速機において、上記自動変速機は、前進8速及び後退1速を達成するものであり、上記第1クラッチ及び上記第3ブレーキの締結により後退速が形成され、上記第1クラッチ及び上記第2ブレーキの締結により第1速が形成され、上記第2ブレーキ及び上記第3ブレーキの締結により第2速が形成され、上記第2クラッチ及び上記第2ブレーキの締結により第3速が形成され、上記第2クラッチ及び上記第3ブレーキの締結により第4速が形成され、上記第1クラッチ及び上記第2クラッチの締結により第5速が形成され、上記第2クラッチ及び上記第1ブレーキの締結により第6速が形成され、上記第1クラッチ及び上記第1ブレーキの締結により第7速が形成され、上記第1ブレーキ及び上記第3ブレーキの締結により第8速が形成される、という構成が好ましい。
【0019】
このことで、各プラネタリギヤセットの各構成ギヤの歯数を適切に設定することで、後退速及び第1速乃至第8速において適切な減速比を達成することができるとともに、変速段間のギヤステップを良好なもの(当該自動変速機が搭載された車両のドライバにとってフィーリングに優れたもの)にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の自動変速機によると、第1及び第2クラッチへの油圧供給のための油圧供給孔を形成する部材の数を少なくすることができ、第1及び第2クラッチへの油圧供給構造を簡素化することができる。また、コストを低減することができるとともに、油圧供給孔を形成する部材と連結されたプラネタリギヤセットや入力軸の回転に対する抵抗の増大を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る自動変速機1のスケルトンを示す。この自動変速機1は、車両に搭載されるとともに、前進8速及び後退1速を達成するものである。
【0024】
上記自動変速機1は、変速機ケース2内に、動力源4(詳しくは、動力源4の出力軸)に連結される入力軸3と、第1プラネタリギヤセットPL1と、第2プラネタリギヤセットPL2と、第3プラネタリギヤセットPL3と、第4プラネタリギヤセットPL4と、5つの油圧式の摩擦締結要素CL1,CL2,B1,B2,B3と、上記動力源4からの動力が、上記第1乃至第4プラネタリギヤセットPL1,PL2,PL3,PL4により形成される動力伝達経路を介して伝達される、出力部としての出力ギヤ7と、を備えている。
【0025】
本実施形態では、入力軸3は、自動変速機1の一側(
図1の左側)から他側(
図1の右側)までの全体に亘って延びている。そして、入力軸3の軸方向一側端部が、動力源4に連結されている。尚、これに代えて、入力軸3の軸方向他側端部が動力源4に連結されていてもよく、動力源4を2つ設けて、これら動力源4に入力軸3の両端部がそれぞれ連結されていてもよい。
【0026】
上記動力源4は、内燃機関であってもよく、電動モータであってもよい。また、入力軸3は、動力源4に直接連結されていてもよく、例えばトルクコンバータや断接クラッチ等を介して間接的に連結されていてもよい。入力軸3の両端部がそれぞれ動力源4に連結される場合には、例えば、入力軸3の一側端部が連結される動力源4を内燃機関とし、他側端部が連結される動力源4を電動モータとしてもよい。
【0027】
本実施形態では、上記車両はFF車であり、該車両の前部に、動力源4及び自動変速機1が搭載されて、その搭載された状態での動力源4の出力軸及び自動変速機1の入力軸3は、上記車両の車幅方向に水平に延びている。
【0028】
上記第1プラネタリギヤセットPL1は、入力軸3と同軸上に配設されていて、第1サンギヤS1、第1キャリアC1及び第1リングギヤR1を有する。第1キャリアC1には、シングルピニオンP1が設けられている。すなわち、第1プラネタリギヤセットPL1は、シングルピニオン型のプラネタリギヤセットである。
【0029】
上記第2プラネタリギヤセットPL2は、入力軸3と同軸上に配設されていて、第2サンギヤS2、第2キャリアC2及び第2リングギヤR2を有する。第2キャリアC2には、シングルピニオンP2が設けられている。すなわち、第2プラネタリギヤセットPL2も、シングルピニオン型のプラネタリギヤセットである。
【0030】
上記第3プラネタリギヤセットPL3は、入力軸3と同軸上に配設されていて、第3サンギヤS3、第3キャリアC3及び第3リングギヤR3を有する。第3キャリアC3には、ダブルピニオンP3が設けられている。すなわち、第3プラネタリギヤセットPL3は、ダブルピニオン型のプラネタリギヤセットである。
【0031】
上記第4プラネタリギヤセットPL4は、入力軸3と同軸上に配設されていて、第4サンギヤS4、第4キャリアC4及び第4リングギヤR4を有する。第4キャリアC4には、シングルピニオンP4が設けられている。すなわち、第4プラネタリギヤセットPL4も、シングルピニオン型のプラネタリギヤセットである。
【0032】
入力軸方向において、入力軸3の上記一側(動力源4側)から順に、第1プラネタリギヤセットPL1、第2プラネタリギヤセットPL2、第3プラネタリギヤセットPL3及び第4プラネタリギヤセットPL4が並んでいる。
【0033】
上記第1キャリアC1及び上記第4リングギヤR4は、上記入力軸3に常時連結されている。また、上記第1リングギヤR1と上記第2キャリアC2とが常時連結され、上記第2サンギヤS2と上記第4サンギヤS4とが常時連結され、上記第2キャリアC2と上記第3サンギヤS3とが常時連結され、上記第3キャリアC3と上記第4キャリアC4とが常時連結されている。
【0034】
上記5つの摩擦締結要素は、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3であって、入力軸3と同軸上に配設されている。第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2は、多板クラッチで構成され、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3は、本実施形態では、多板クラッチタイプで構成されるが、バンド式で構成されてもよい。
【0035】
上記第1クラッチCL1は、上記第2リングギヤR2と上記第3キャリアC3との間を断接するものであり、上記第2クラッチCL2は、上記第4サンギヤS4と上記第4リングギヤR4及び上記入力軸3との間を断接するものである。第2クラッチCL2は、入力軸方向において、第4プラネタリギヤセットPL4に対して、第3プラネタリギヤセットPL3とは反対側に配設されている。
【0036】
上記第1ブレーキB1は、上記第1サンギヤS1と上記変速機ケース2との間を断接するものであり、上記第2ブレーキB2は、上記第1リングギヤR1及び上記第2キャリアC2と上記変速機ケース2との間を断接するものであり、上記第3ブレーキB3は、上記第2リングギヤR2と上記変速機ケース2との間を断接するものである。
【0037】
上記出力ギヤ7は、入力軸3と同軸上に配設され、かつ上記第3リングギヤR3に常時連結されていて、該第3リングギヤR3によって駆動されるように構成されている。図示は省略するが、出力ギヤ7は、カウンタ機構のカウンタ入力部としてのカウンタ入力ギヤと噛み合っていて、該カウンタ入力ギヤを駆動する。このカウンタ機構は、入力軸3と平行に延びるように配設されたカウンタ軸と、該カウンタ軸上に配設され、出力ギヤ7により駆動される上記カウンタ入力ギヤと、該カウンタ軸上に配設されたカウンタ出力部としてのカウンタ出力ギヤとを有している。上記カウンタ軸、上記カウンタ入力ギヤ及び上記カウンタ出力ギヤは、一体的に回転するようになされている。そして、上記カウンタ出力ギヤは、デファレンシャル機構のデフ入力部としてのデフリングギヤと噛み合っていて、該デフリングギヤを駆動する。そして、出力ギヤ7に生じるトルク(動力)が、上記カウンタ機構及び上記デファレンシャル機構を介して、上記車両の前輪に伝達されることになる。
【0038】
次に、上記自動変速機1の変速方法について説明する。
【0039】
図2は、各変速段時における第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3の締結状態を示す。○印が締結していることを示し、空欄が締結を解除していることを示す。
【0040】
また、
図2には、第1プラネタリギヤセットPL1、第2プラネタリギヤセットPL2、第3プラネタリギヤセットPL3及び第4プラネタリギヤセットPL4の各構成ギヤを、以下のように設定したときの各変速段時におけるギヤ比(減速比)と、変速段間のギヤステップ(第1速のギヤ比/第2速のギヤ比、第2速のギヤ比/第3速のギヤ比、第3速のギヤ比/第4速のギヤ比、第4速のギヤ比/第5速のギヤ比、第5速のギヤ比/第6速のギヤ比、第6速のギヤ比/第7速のギヤ比、第7速のギヤ比/第8速のギヤ比)とを併せて示す。尚、
図2のギヤ比では、レシオレンジ(第1速のギヤ比/第8速のギヤ比)は、7.533となる。
【0041】
上記各構成ギヤの歯数は、
第1サンギヤS1:54、第1リングギヤR1:86、シングルピニオンギヤP1:16
第2サンギヤS2:54、第2リングギヤR2:86、シングルピニオンギヤP2:16
第3サンギヤS3:46、第3リングギヤR3:108、ダブルピニオンギヤP3:31
第4サンギヤS4:54、第4リングギヤR4:108、シングルピニオンギヤP4:27
となっている。尚、上記歯数は例示であって、これに限るものではない。
【0042】
後退速は、第1クラッチCL1及び第3ブレーキB3の締結により形成される。このとき、入力軸3に連結された第1キャリアC1及び第4リングギヤR4が、入力軸3の回転数をN0として、回転数N0で入力軸3と同じ向きに回転する。尚、以下、断りのない限り、回転の向きは入力軸3と同じとし、入力軸3の回転とは逆の向きに回転する場合には、その旨を記載する。
【0043】
第3ブレーキB3の締結により、第2リングギヤR2は、固定されて回転しない。また、第1クラッチCL1の締結により、第2リングギヤR2に連結された第3キャリアC3及び第4キャリアC4も回転しない。
【0044】
第1リングギヤR1、第2キャリアC2及び第3サンギヤS3は、同じ回転数であって入力軸3の回転とは逆の向きで回転数N10で回転し、第2サンギヤS2及び第4サンギヤS4は、同じ回転数であって入力軸3の回転とは逆の向きでN10よりも高い回転数で回転する。
【0045】
第1リングギヤR1が入力軸3の回転とは逆の向きで回転数N10で回転しかつ第1キャリアC1がN0で回転するので、第1サンギヤS1は、N0よりも高い回転数で回転する。
【0046】
第3サンギヤS3が入力軸3の回転とは逆の向きでN10で回転しかつ第3キャリアC3が回転しないので、第3リングギヤR3(つまり出力ギヤ7)は、入力軸3の回転とは逆の向きでN10よりも低い回転数で回転することになる。
【0047】
第1速は、第1クラッチCL1及び第2ブレーキB2の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第4リングギヤR4が、上記回転数N0で回転する。
【0048】
第2ブレーキB2の締結により、第1リングギヤR1、第2キャリアC2及び第3サンギヤS3は、固定されて回転しない。
【0049】
第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1リングギヤR1が回転しないので、第1サンギヤS1は、N0よりも高い回転数で回転する。
【0050】
第1クラッチCL1の締結により、第2リングギヤR2、第3キャリアC3及び第4キャリアC4が、同じ回転数であってN0よりも低い回転数N11で回転する。また、第2サンギヤS2及び第4サンギヤS4は、同じ回転数であって入力軸3の回転とは逆の向きで回転する。
【0051】
第3サンギヤS3が回転せずかつ第3キャリアC3がN11で回転するので、第3リングギヤR3(つまり出力ギヤ7)は、N11よりも低い回転数N1で回転することになる。
【0052】
第2速は、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第4リングギヤR4が、上記回転数N0で回転する。
【0053】
第2ブレーキB2の締結により、第1リングギヤR1、第2キャリアC2及び第3サンギヤS3は、固定されて回転しない。また、第3ブレーキB3の締結により、第2リングギヤR2も、固定されて回転しない。第2キャリアC2及び第2リングギヤR2が回転しないので、第2サンギヤS2も回転せず、第2サンギヤS2に連結された第4サンギヤS4も回転しない。
【0054】
第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1リングギヤR1が回転しないので、第1サンギヤS1は、N0よりも高い回転数で回転する。
【0055】
第4サンギヤS4が回転せずかつ第4リングギヤR4がN0で回転するので、第4キャリアC4が、N0よりも低い回転数N12(>N11)で回転し、第4キャリアC4に連結された第3キャリアC3も、N12で回転する。
【0056】
第3サンギヤS3が回転せずかつ第3キャリアC3がN12で回転するので、第3リングギヤR3(つまり出力ギヤ7)は、N12よりも低い回転数N2(>N1)で回転することになる。
【0057】
第3速は、第2クラッチCL2及び第2ブレーキB2の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第4リングギヤR4が、上記回転数N0で回転する。
【0058】
第2クラッチCL2の締結により、第4サンギヤS4、第4リングギヤR4及び第4キャリアC4は、一体的に回転する、つまり同じ上記回転数N0で回転する。また、第4サンギヤS4に連結された第2サンギヤS2もN0で回転し、第4キャリアC4に連結された第3キャリアC3もN0で回転する。
【0059】
第2ブレーキB2の締結により、第1リングギヤR1、第2キャリアC2及び第3サンギヤS3は、固定されて回転しない。
【0060】
第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1リングギヤR1が回転しないので、第1サンギヤS1は、N0よりも高い回転数で回転する。また、第2サンギヤS2がN0で回転しかつ第2キャリアC2が回転しないので、第2リングギヤR2は、入力軸3の回転とは逆の向きに回転する。
【0061】
第3サンギヤS3が回転せずかつ第3キャリアC3がN0で回転するので、第3リングギヤR3(つまり出力ギヤ7)は、N0よりも低い回転数N3(>N2)で回転することになる。
【0062】
第4速は、第2クラッチCL2及び第3ブレーキB3の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第4リングギヤR4が、上記回転数N0で回転する。
【0063】
第2クラッチCL2の締結により、第4サンギヤS4、第4リングギヤR4及び第4キャリアC4は、同じ上記回転数N0で回転する。また、第4サンギヤS4に連結された第2サンギヤS2もN0で回転し、第4キャリアC4に連結された第3キャリアC3もN0で回転する。
【0064】
第3ブレーキB3の締結により、第2リングギヤR2は、固定されて回転しない。第2リングギヤR2が回転せずかつ第2サンギヤS2がN0で回転するので、第2キャリアC2が、N0よりも低い回転数N13で回転し、第2キャリアC2に連結された第1リングギヤR1及び第3サンギヤS3もN13で回転する。
【0065】
第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1リングギヤR1がN13で回転するので、第1サンギヤS1は、N0よりも高い回転数で回転する。
【0066】
第3サンギヤS3がN13で回転しかつ第3キャリアC3がN0で回転するので、第3リングギヤR3(つまり出力ギヤ7)は、N13よりも高くかつN0よりも低い回転数N4(>N3)で回転することになる。
【0067】
第5速は、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第4リングギヤR4が、上記回転数N0で回転する。
【0068】
第2クラッチCL2の締結により、第4サンギヤS4、第4リングギヤR4及び第4キャリアC4は、同じ上記回転数N0で回転する。また、第4サンギヤS4に連結された第2サンギヤS2もN0で回転し、第4キャリアC4に連結された第3キャリアC3もN0で回転する。また、第1クラッチCL1の締結により、第3キャリアC3に連結された第2リングギヤR2もN0で回転する。
【0069】
第2サンギヤS2及び第2リングギヤR2がN0で回転するので、第2キャリアC2もN0で回転し、第2キャリアC2に連結された第3サンギヤS3もN0で回転する。
【0070】
第3キャリアC3及び第3サンギヤS3がN0で回転するので、第3リングギヤR3(つまり出力ギヤ7)は、N0と同じ回転数N5(>N4)で回転することになる。
【0071】
第6速は、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第4リングギヤR4が、上記回転数N0で回転する。
【0072】
第2クラッチCL2の締結により、第4サンギヤS4、第4リングギヤR4及び第4キャリアC4は、同じ上記回転数N0で回転する。また、第4サンギヤS4に連結された第2サンギヤS2もN0で回転し、第4キャリアC4に連結された第3キャリアC3もN0で回転する。
【0073】
第1ブレーキB1の締結により、第1サンギヤS1は、固定されて回転しない。第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1サンギヤS1が回転しないので、第1リングギヤR1が、N0よりも高い回転数N14で回転し、第1リングギヤR1に連結された第2キャリアC2及び第3サンギヤS3も、N14で回転する。
【0074】
第2キャリアC2がN14で回転しかつ第2サンギヤS2がN0で回転するので、第2リングギヤR2は、N14よりも高い回転数で回転する。
【0075】
第3サンギヤS3がN14で回転しかつ第3キャリアC3がN0で回転するので、第3リングギヤR3(つまり出力ギヤ7)は、N0よりも高くかつN14よりも低い回転数N6(>N5)で回転することになる。
【0076】
第7速は、第1クラッチCL1及び第1ブレーキB1の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第4リングギヤR4が、上記回転数N0で回転する。
【0077】
第1ブレーキB1の締結により、第1サンギヤS1は、固定されて回転しない。第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1サンギヤS1が回転しないので、第1リングギヤR1が、N0よりも高い上記回転数N14で回転し、第1リングギヤR1に連結された第2キャリアC2及び第3サンギヤS3も、N14で回転する。
【0078】
第1クラッチCL1の締結により、第2リングギヤR2、第3キャリアC3及び第4キャリアC4は、N0よりも高くかつN14よりも低い回転数N15で回転する。また、第2サンギヤS2及び第4サンギヤS4は、同じ回転数であってN14よりも高い回転数で回転する。
【0079】
第3サンギヤS3がN14で回転しかつ第3キャリアC3がN15で回転するので、第3リングギヤR3(つまり出力ギヤ7)は、N15よりも高くかつN14よりも低い回転数N7(>N6)で回転することになる。
【0080】
第8速は、第1ブレーキB1及び第3ブレーキB3の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第4リングギヤR4が、上記回転数N0で回転する。
【0081】
第1ブレーキB1の締結により、第1サンギヤS1は、固定されて回転しない。第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1サンギヤS1が回転しないので、第1リングギヤR1が、N0よりも高い上記回転数N14で回転し、第1リングギヤR1に連結された第2キャリアC2及び第3サンギヤS3も、N14で回転する。
【0082】
第3ブレーキB3の締結により、第2リングギヤR2は、固定されて回転しない。第2リングギヤR2が回転せずかつ第2キャリアC2がN14で回転するので、第2サンギヤS2は、N14よりも高い回転数N16で回転し、第2サンギヤS2に連結された第4サンギヤS4もN16で回転する。
【0083】
第4サンギヤS4がN16で回転しかつ第4リングギヤR4がN0で回転するので、第4キャリアC4は、N0よりも高くかつN16よりも低い回転数N17で回転し、第4キャリアC4に連結された第3キャリアC3もN17で回転する。
【0084】
第3サンギヤS3がN14で回転しかつ第3キャリアC3がN17で回転するので、第3リングギヤR3(つまり出力ギヤ7)は、N14よりも高くかつN17よりも低い回転数N8(>N7)で回転することになる。
【0085】
本実施形態では、出力ギヤ7が、第3プラネタリギヤセットPL3の第3リングギヤR3に常時連結されていて、該第3リングギヤR3によって駆動されるように構成されている。すなわち、出力ギヤ7が、第3プラネタリギヤセットPL3の径が大きい第3リングギヤR3(特に第3プラネタリギヤセットPL3がダブルピニオン型であるために、第3リングギヤR3の径がより一層大きくなる)で駆動されるので、出力ギヤ7が第3キャリアC3や第3サンギヤS3で駆動される場合に比べて、出力ギヤ7に同じトルクを発生させるときの第3プラネタリギヤセットPL3の各構成ギヤにかかる力を小さくすることができる。この結果、第3プラネタリギヤセットPL3の各構成ギヤのモジュールや、肉厚、ギヤ幅を大きくしなくても済み、前進6速及び後退1速を達成する従来の自動変速機に対してプラネタリギヤセットの数を増大して多段化を実施するようにしても、自動変速機1の入力軸方向及び径方向の寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【0086】
また、各変速段の減速比を適切にすることができるとともに、変速段間のギヤステップを良好なもの(上記車両のドライバにとってフィーリングに優れたもの)にすることができる。
【0087】
図3は、自動変速機1の第2クラッチCL2周辺の具体構成例を概略的に示す。
【0088】
第2クラッチCL2の、第4プラネタリギヤセットPL4とは反対側の側方には、変速機ケース2の油圧供給部2aが位置している。第2クラッチCL2は、自動変速機1の入力軸方向の上記他側端部(動力源4とは反対側の端部)に位置しているので、第2クラッチCL2の近傍に変速機ケース2の油圧供給部2aを位置させることができる。油圧供給部2a内には、第2クラッチCL2への油圧供給路2bが形成されている。
【0089】
第2クラッチCL2は、第4リングギヤR4と入力軸3とを連結する連結部材51に設けられた複数のクラッチ板52と、該クラッチ板52の内周側に配設されたクラッチハブ55に設けられた複数の摩擦板56とを有している(
図3では、これらを簡略化して描いており、クラッチ板52及び摩擦板56の枚数も図示の数よりも多い)。クラッチ板52及び摩擦板56は、入力軸方向において、交互に配置されていて、それぞれのスプライン溝51a,55aに沿って入力軸方向に移動可能になされている。上記クラッチハブ55は、第4サンギヤS4と連結されている(本例では、一体形成されている)。
【0090】
クラッチ板52及び摩擦板56は、入力軸方向に摺動可能に構成されたピストン60によって、第4プラネタリギヤセットPL4側へ押圧されて互いに係合し、これにより、第2クラッチCL2が締結されることになる。尚、クラッチ板52及び摩擦板56は、上記連結部材51に設けたスナップリング58によって、それよりも第4プラネタリギヤセットPL4側へ移動するのが阻止される。
【0091】
上記ピストン60と上記連結部材51との間には、締結油圧室61が形成されており、この締結油圧室61に油圧が供給され、これにより、ピストン60がクラッチ板52及び摩擦板56を押圧する。尚、
図3中、62は、遠心バランス油圧室であり、第2クラッチCL2の非締結時に、締結油圧室61内のオイルが遠心力により入力軸3から遠い側に移動することにより、ピストン60をクラッチ板52及び摩擦板56の側へ移動させようとするが、この移動を、ばね63(図では、板ばねであるが、これには限られない)と共に阻止するために遠心バランス油圧室62に油圧が供給される。
【0092】
上記連結部材51には、上記油圧供給路2bと締結油圧室61とを接続する油圧供給孔51bが形成されており、油圧供給路2b及び油圧供給孔51bを介して締結油圧室61に油圧が供給されることになる。変速機ケース2の油圧供給部2aと連結部材51との間における油圧供給孔51b開口の近傍には、油圧の漏れを防止するためのシール部材65が設けられている。
【0093】
遠心バランス油圧室62への油圧供給構造も、締結油圧室61への油圧供給構造と同様である。すなわち、連結部材51に、遠心バランス油圧室62に接続される油圧供給孔51cが設けられ、油圧供給部2aにおいて、油圧供給路2bとは周方向で異なる部分に、油圧供給孔51cに接続される油圧供給路(図示せず)が設けられている。また、変速機ケース2の油圧供給部2aと連結部材51との間における油圧供給孔51c開口の近傍に、シール部材(図示せず)が設けられている。
【0094】
尚、
図3中、66はベアリングであり、71は、第3キャリアC3と第4キャリアC4とを連結する連結部材であり、72は、第2サンギヤS2と第4サンギヤS4とを連結する連結部材である。また、一点鎖線で示すラインLは、入力軸3の中心線である。
【0095】
ここで、比較例の自動変速機として、4つのプラネタリギヤセットPL1,PL2,PL3,PL4の並び方を変えたものを、
図4に示す(
図1と同じ部分については、同じ符号を付している)。この比較例の自動変速機では、入力軸方向において、入力軸3の上記一側(動力源4側)から順に、第1プラネタリギヤセットPL1、第4プラネタリギヤセットPL4、第2プラネタリギヤセットPL2及び第3プラネタリギヤセットPL3が並んでいる。
【0096】
上記比較例の自動変速機における第2クラッチCL2周辺の具体構成例を
図5に概略的に示す。
【0097】
比較例の自動変速機では、第2クラッチCL2は、円筒状のクラッチケース81に、該クラッチケース81のスプライン81aに沿って入力軸方向に移動可能に設けられた複数のクラッチ板52と、入力軸3と第4リングギヤR4とを連結する連結部材51に、該連結部材51のスプライン溝51aに沿って入力軸方向に移動可能に設けられた複数の摩擦板56とを有している(
図5では、これらを簡略化して描いている)。クラッチケース81は第4サンギヤS4と連結されている。ピストン60の構成は、上記実施形態のものと同様である。但し、締結油圧室61は、ピストン60とクラッチケース81との間に形成されている。
【0098】
比較例の自動変速機では、第2クラッチCL2への油圧供給構造が、上記実施形態のものとは大きく異なっている。すなわち、第2クラッチCL2への油圧供給経路が、変速機ケース2の油圧供給部2a、入力軸3、クラッチケース81、及び、第3キャリアC3と第4キャリアC4とを連結する連結部材71によって構成されている。
【0099】
図4から分かるように、第2クラッチCL2の径方向外側には、第1リングギアR1と第2ブレーキB2(又は第2キャリアC2)とを連結する部材(
図5では図示せず)が存在するとともに、第2クラッチCL2が上記連結部材81に囲まれている。このため、変速機ケース2の油圧供給部2aを、第2クラッチCL2の近傍に配置することが困難であり、第1プラネタリギヤセットPL1の駆動源4側に配置している。そして、その油圧供給部2a内の油圧供給路2bが、入力軸3の中心部に形成された油圧供給孔3a、連結部材71に設けられた油圧供給孔71a、及び、クラッチケース81に設けられた油圧供給孔81bを介して、締結油圧室61に接続されている。尚、入力軸3の油圧供給孔3aは、入力軸3の外周面に形成された油圧流入口3bを介して油圧供給路2bと接続されるとともに、入力軸3の動力源4とは反対側の端面に開口しており、該開口が、入力軸3と連結部材71との間の隙間を介して該連結部材71の油圧供給孔71aに接続されている。
【0100】
油圧供給部2aと入力軸3との間における油圧流入口3bの近傍、入力軸3の外周面と連結部材71との間における上記端面の近傍、及び、連結部材71とクラッチケース81との間における油圧供給孔71a,81b開口の近傍には、油圧の漏れを防止するためのシール部材65がそれぞれ設けられている。尚、遠心バランス油圧室62への油圧供給構造も、締結油圧室61への油圧供給構造と同様である(連結部材71及びクラッチケース81において、油圧供給孔71a,81bとは周方向で異なる部分に、遠心バランス油圧室62に接続される油圧供給孔がそれぞれ設けられている)。
【0101】
このように比較例の自動変速機では、上記実施形態のものに比べて、油圧供給孔を形成する部材が多くなって、第2クラッチCL2への油圧供給構造が複雑になるとともに、変速機ケース2の油圧供給部2aの油圧供給路2bから締結油圧室61に至るまでの油圧供給経路において必要なシール部材65の数が増えてコストアップを招いたり、シール部材65によって、入力軸3や第4プラネタリギヤセットPL4の回転に対する抵抗が増大したりする。
【0102】
これに対し、上記実施形態の自動変速機1では、油圧供給孔を形成する部材が1つで済み、第2クラッチCL2への油圧供給構造を簡素化することができる。また、油圧供給路2bから締結油圧室61に至るまでの油圧供給経路において必要なシール部材65が少なくて済み、コストを低減することができるとともに、入力軸3や第4プラネタリギヤセットPL4の回転に対する抵抗の増大を抑制することができる。
【0103】
また、第1クラッチCL1への油圧供給構造も、第2クラッチCL2への油圧供給構造と同様に、簡素化することができる。すなわち、第1クラッチCL1と変速機ケース2との間には、第2リングギヤR2と第1クラッチCL1とを連結する連結部材(第2リングギヤR2又は第1クラッチCL1の部材の一部で構成されたものであってもよい)、又は、第3キャリアC3と第1クラッチCL1とを連結する連結部材(第3キャリアC3又は第1クラッチCL1の部材の一部で構成されたものであってもよい)が1つ存在するだけであり、変速機ケース2の油圧供給部を第1クラッチCL1の近傍に配置し、その1つの連結部材に油圧供給孔を形成して、上記油圧供給部からその油圧供給孔を介して第1クラッチCL1の締結油圧室に油圧を供給するようにすればよい。
【0104】
したがって、本実施形態では、第1及び第2クラッチCL1,CL2への油圧供給構造を簡素化することができ、また、コストを低減することができるとともに、自動変速機1の効率を向上させることができる。
【0105】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0106】
例えば、上記実施形態では、第2クラッチCL2が、第4サンギヤS4と第4リングギヤR4との間を断接する構成としたが、これに代えて、第2クラッチCL2が、
図6に示すように、第4キャリアC4と第4リングギヤR4との間を断接する構成としてもよい。すなわち、第2クラッチCL2は、その締結により、第4サンギヤS4、第4キャリアC4及び第4リングギヤR4を一体的に回転させる(同じ回転数で回転させる)ことを目的にするものであり、この目的のためには、第2クラッチCL2を、第4サンギヤS4と第4リングギヤR4との間を断接する代わりに、第4キャリアC4と第4リングギヤR4との間を断接する構成とすることも可能である。この場合、
図3のクラッチハブ55を、第4サンギヤS4に連結する代わりに、第4キャリアC4に連結する構成にするだけでよく、他の構成は
図3の構成と同じである。したがって、第2クラッチCL2が第4キャリアC4と第4リングギヤR4との間を断接する構成の場合も、上記実施形態と同様に、第2クラッチCL2への油圧供給のために、第4リングギヤR4と入力軸3とを連結する連結部材51のみに、油圧供給孔51bを設ければよく、第2クラッチCL2への油圧供給構造を簡素化することができる。
【0107】
ここで、第4サンギヤS4、第4キャリアC4及び第4リングギヤR4を一体的に回転させるという目的のためには、第2クラッチCL2を、第4サンギヤS4と第4リングギヤR4との間を断接する代わりに、第4サンギヤS4と第4キャリアC4との間を断接する構成とすることも可能である。しかし、この構成では、第4リングギヤR4と入力軸3とを連結する連結部材51に加えて、第4サンギヤS4と第2クラッチCL2とを連結する部材、又は、第4キャリアC4と第2クラッチCL2とを連結する部材に、油圧供給孔を設けなければならなくなり、第2クラッチCL2への油圧供給構造を簡素化することは困難になる。そこで、第2クラッチCL2は、第4サンギヤS4と第4リングギヤR4との間を断接する構成、又は、第4キャリアC4と第4リングギヤR4との間を断接する構成とする。
【0108】
また、上記実施形態では、第3プラネタリギヤセットPL3からカウンタ機構への動力伝達を、出力ギヤ7とカウンタ入力ギヤとの噛み合いにより行うようにしたが、チェーンやベルトを介して行うようにしてもよい。この場合、第3プラネタリギヤセットPL3の第3リングギヤR3により駆動される出力部及びカウンタ機構のカウンタ入力部は、チェーンが巻かれるチェーンスプロケットや、ベルトが巻かれるプーリで構成されることになる。また、同様に、カウンタ機構からデファレンシャル機構への動力伝達を、チェーンやベルトを介して行うようにしてもよい。この場合も、カウンタ機構のカウンタ出力部及びデファレンシャル機構のデフ入力部は、チェーンが巻かれるチェーンスプロケットや、ベルトが巻かれるプーリで構成されることになる。
【0109】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。