特許第6044524号(P6044524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044524
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】燃料噴射状態解析装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/04 20060101AFI20161206BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20161206BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20161206BHJP
   F02M 65/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   F02D41/04 380P
   F02D45/00 301A
   F02D45/00 364K
   F02M55/02 360
   F02M65/00 304
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-240220(P2013-240220)
(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公開番号】特開2015-98860(P2015-98860A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2015年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】今井 稔
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−106208(JP,A)
【文献】 特開2012−002174(JP,A)
【文献】 特開平09−256897(JP,A)
【文献】 特開2010−101296(JP,A)
【文献】 特開2000−045824(JP,A)
【文献】 特開2000−282937(JP,A)
【文献】 特開2006−153007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D41/00−45/00
F02M39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を蓄圧保持する蓄圧容器(42)と、前記燃料を噴射孔(11b)から噴射する燃料噴射弁(10)と、前記蓄圧容器から前記噴射孔まで前記燃料を流通させる燃料通路(42b、11a)と、前記燃料通路内の燃料圧力を検出する燃圧センサ(20)と、を備える燃料噴射システム(50)に適用される燃料噴射状態解析装置(30、24)であって、
前記燃料噴射弁による前記燃料の噴射時に前記燃圧センサにより検出される前記燃料圧力に基づいて、前記燃料圧力の変化を示す圧力波形を取得する波形取得部(35)と、
前記燃料噴射弁により噴射させるように要求される要求噴射量が所定噴射量よりも多い場合に、前記波形取得部により取得される前記圧力波形から外乱成分を取り除いて目的成分を抽出する第1フィルタ部(36、25)と、
外乱成分を取り除く能力が前記第1フィルタ部よりも低くなっており、前記要求噴射量が前記所定噴射量よりも少ない場合に、前記波形取得部により取得される前記圧力波形から外乱成分を取り除いて目的成分を抽出する第2フィルタ部(36、26)と、
前記抽出された前記目的成分に基づいて、前記燃料噴射弁による燃料の噴射状態を解析する解析部(37)と、
を備え
前記解析部は、前記第2フィルタ部により抽出された前記目的成分に基づいて、前記燃料噴射弁により噴射可能な最小噴射量を検出することを特徴とする燃料噴射状態解析装置。
【請求項2】
前記燃料噴射システムは前記燃料噴射弁を複数備え、
前記解析部は、前記第2フィルタ部により抽出された前記目的成分に基づいて、複数の前記燃料噴射弁によりそれぞれ噴射可能な最小噴射量を検出し、
前記解析部により検出された最小噴射量のうち最大の最小噴射量を制限噴射量とし、前記燃料噴射弁により噴射させるように要求される要求噴射量が、前記制限噴射量よりも少なく且つ0以下でない場合に、前記燃料噴射弁により前記制限噴射量を噴射させる制限部(38)を備える請求項1に記載の燃料噴射状態解析装置。
【請求項3】
燃料を蓄圧保持する蓄圧容器(42)と、前記燃料を噴射孔(11b)から噴射する燃料噴射弁(10)と、前記蓄圧容器から前記噴射孔まで前記燃料を流通させる燃料通路(42b、11a)と、前記燃料通路内の燃料圧力を検出する燃圧センサ(20)と、を備える燃料噴射システム(50)に適用される燃料噴射状態解析装置(30、24)であって、
前記燃料噴射弁による前記燃料の噴射時に前記燃圧センサにより検出される前記燃料圧力に基づいて、前記燃料圧力の変化を示す圧力波形を取得する波形取得部(35)と、
前記燃料噴射弁により噴射させるように要求される要求噴射量が所定噴射量よりも多い場合に、前記波形取得部により取得される前記圧力波形から外乱成分を取り除いて目的成分を抽出する第1フィルタ部(36、25)と、
外乱成分を取り除く能力が前記第1フィルタ部よりも低くなっており、前記要求噴射量が前記所定噴射量よりも少ない場合に、前記波形取得部により取得される前記圧力波形から外乱成分を取り除いて目的成分を抽出する第2フィルタ部(36、26)と、
前記抽出された前記目的成分に基づいて、前記燃料噴射弁による燃料の噴射状態を解析する解析部(37)と、
を備え、
前記燃料噴射システムは前記燃料噴射弁を複数備え、
前記解析部は、前記第2フィルタ部により抽出された前記目的成分に基づいて、複数の前記燃料噴射弁によりそれぞれ噴射可能な最小噴射量を検出し、
前記解析部により検出された最小噴射量のうち最大の最小噴射量を制限噴射量とし、前記燃料噴射弁により噴射させるように要求される要求噴射量が、前記制限噴射量よりも少なく且つ0以下でない場合に、前記燃料噴射弁により前記制限噴射量を噴射させる制限部(38)を備えることを特徴とする燃料噴射状態解析装置。
【請求項4】
前記燃料噴射システムは車両に搭載されるものであり、
前記解析部は、前記車両のアクセルペダル(50)の操作量が0になって前記要求噴射量が0まで減少される際に、前記最小噴射量を検出する請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料噴射状態解析装置。
【請求項5】
前記第1フィルタ部(36)は、前記波形取得部により取得される前記圧力波形を、第1なまし係数によりなまし、
前記第2フィルタ部(36)は、前記波形取得部により取得される前記圧力波形を、前記第1なまし係数よりもなまし度合いの小さい第2なまし係数によりなます請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料噴射状態解析装置。
【請求項6】
前記第1フィルタ部(25)は、前記波形取得部により取得される前記圧力波形から、第1周波数よりも高い周波数成分を取り除き、
前記第2フィルタ部(26)は、前記波形取得部により取得される前記圧力波形から、前記第1周波数よりも高く設定された第2周波数よりも高い周波数成分を取り除く請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料噴射状態解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に設けられた燃料噴射弁による燃料の噴射状態を解析する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料噴射弁による燃料噴射に伴い生じた燃料通路内の燃料圧力の変化を燃圧センサにより検出し、その圧力変化に基づき燃料の噴射状態を解析するものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のものでは、検出された圧力変化の波形から外乱成分(ノイズ成分)を取り除いて目的の周波数成分を抽出し、抽出した目的の周波数成分に基づき燃料の噴射状態を解析している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−144749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のものでは、圧力変化の波形から外乱成分を取り除く際に、圧力波形の微小成分も取り除かれることとなる。このため、検出される圧力波形の微小成分に基づいて、燃料噴射弁が噴射可能な最小噴射量を検出しようとしても、最小噴射量を正確に検出できないおそれがある。
【0005】
なお、燃料噴射弁の最小噴射量に限らず、微小量の燃料を噴射した時の燃料圧力の変化に基づき検出する噴射率パラメータであれば、こうした実情は概ね共通したものとなる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、微少量の燃料を噴射する時であっても、燃料の噴射状態を解析する精度が低下することを抑制することのできる燃料噴射状態解析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
本発明は、燃料を蓄圧保持する蓄圧容器と、前記燃料を噴射孔から噴射する燃料噴射弁と、前記蓄圧容器から前記噴射孔まで前記燃料を流通させる燃料通路と、前記燃料通路内の燃料圧力を検出する燃圧センサと、を備える燃料噴射システムに適用される燃料噴射状態解析装置であって、前記燃料噴射弁による前記燃料の噴射時に前記燃圧センサにより検出される前記燃料圧力に基づいて、前記燃料圧力の変化を示す圧力波形を取得する波形取得部と、前記燃料噴射弁により噴射させるように要求される要求噴射量が所定噴射量よりも多い場合に、前記波形取得部により取得される前記圧力波形から外乱成分を取り除いて目的成分を抽出する第1フィルタ部と、外乱成分を取り除く能力が前記第1フィルタ部よりも低くなっており、前記要求噴射量が前記所定噴射量よりも少ない場合に、前記波形取得部により取得される前記圧力波形から外乱成分を取り除いて目的成分を抽出する第2フィルタ部と、前記抽出された前記目的成分に基づいて、前記燃料噴射弁による燃料の噴射状態を解析する解析部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、蓄圧容器により燃料が蓄圧保持され、蓄圧容器から燃料噴射弁の噴射孔まで燃料通路により燃料が流通させられる。そして、燃料噴射弁により燃料が噴射され、燃料通路内の燃料圧力が燃圧センサにより検出される。さらに、波形取得部によって、燃料噴射弁による燃料の噴射時に燃圧センサにより検出される燃料圧力に基づいて、燃料圧力の変化を示す圧力波形が取得される。
【0010】
ここで、波形取得部により取得された圧力波形は、燃料噴射弁により噴射させるように要求される要求噴射量が所定噴射量よりも多い場合に第1フィルタ部により外乱成分が取り除かれ、要求噴射量が同所定噴射量よりも少ない場合に第2フィルタ部により外乱成分が取り除かれる。第2フィルタ部の外乱成分を取り除く能力は、第1フィルタ部の外乱成分を取り除く能力よりも低くなっている。このため、要求噴射量が所定噴射量よりも少ない場合に第2フィルタ部により外乱成分を取り除くことで、圧力波形の微小成分が取り除かれることを抑制することができる。したがって、微少量の燃料を噴射する時であっても、燃料圧力の変化を目的成分に精度良く反映することができ、燃料の噴射状態を解析する精度が低下することを抑制することができる。
【0011】
また、要求噴射量が所定噴射量よりも多い場合には、第1フィルタ部により外乱成分を取り除くことで、圧力波形から不要な微小成分を取り除くことができる。その結果、圧力波形の目的成分を適切に抽出することができ、燃料の噴射状態を解析する精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】燃料噴射システムの概略を示す模式図。
図2】噴射指令信号に対応する噴射率および燃圧の変化を示すタイムチャート。
図3】燃料噴射弁に対する噴射指令信号の設定等の概要を示すブロック図。
図4】噴射率パラメータ算出の処理手順を示すフローチャート。
図5】燃圧波形の原波形及びフィルタ後波形を示すタイムチャート。
図6】最小噴射量の検出態様を示すタイムチャート。
図7】最小噴射量検出の処理手順を示すフローチャート。
図8】最小噴射量制限の処理手順を示すフローチャート。
図9】フィルタ部の変更例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、車両に搭載されたエンジン(内燃機関)の燃料噴射システムとして具体化している。このエンジンとしては、複数の気筒について高圧燃料を噴射して、圧縮自着火燃焼させる多気筒のディーゼルエンジンを想定している。
【0014】
図1は、上記エンジンの各気筒(#1〜#4)に搭載された燃料噴射弁10、各々の燃料噴射弁10に搭載された燃圧センサ20、及び車両に搭載された電子制御装置であるECU30等を示す模式図である。
【0015】
先ず、燃料噴射弁10を含むエンジンの燃料噴射システム50について説明する。燃料タンク40内の燃料は、燃料ポンプ41によりコモンレール42(蓄圧容器)に圧送されて蓄圧状態で保持され、高圧配管42bを通じて各気筒の燃料噴射弁10(#1〜#4)へ分配供給される。複数の燃料噴射弁10(#1〜#4)は、予め設定された順番で燃料の噴射を順次行う。本実施形態では、#1→#3→#4→#2の順番で噴射することを想定している。
【0016】
なお、燃料ポンプ41(ポンプ)にはプランジャポンプが用いられているため、プランジャの往復動に同期して燃料は圧送される。そして、燃料ポンプ41はエンジン出力を駆動源としてクランク軸により駆動するので、1燃焼サイクル中に決められた回数だけ燃料ポンプ41から燃料を圧送することとなる。
【0017】
燃料噴射弁10は、以下に説明するボデー11、ニードル形状の弁体12及びアクチュエータ13等を備えて構成されている。ボデー11は、内部に高圧通路11aを形成するとともに、燃料を噴射する噴射孔11bを形成する。弁体12は、ボデー11内に収容されて噴射孔11bを開閉する。なお、高圧配管42b及び高圧通路11aによって、燃料通路が構成されている。
【0018】
ボデー11内には弁体12に背圧を付与する背圧室11cが形成されており、高圧通路11a及び低圧通路11dは背圧室11cと接続されている。高圧通路11a及び低圧通路11dと背圧室11cとの連通状態は、制御弁14により切り替えられている。電磁コイルやピエゾ素子等のアクチュエータ13へ通電して、制御弁14を図1の下方へ押し下げ作動させると、背圧室11cは低圧通路11dと連通して背圧室11c内の燃料圧力は低下する。その結果、弁体12へ付与される背圧力が低下して弁体12はリフトアップ(開弁作動)する。これにより、弁体12のシート面12aがボデー11のシート面11eから離座して、噴射孔11bから燃料が噴射される。
【0019】
一方、アクチュエータ13への通電をオフして制御弁14を図1の上方へ作動させると、背圧室11cは高圧通路11aと連通して背圧室11c内の燃料圧力が上昇する。その結果、弁体12へ付与される背圧力が上昇して弁体12はリフトダウン(閉弁作動)する。これにより、弁体12のシート面12aがボデー11のシート面11eに着座して、噴射孔11bからの燃料噴射が停止される。
【0020】
したがって、ECU30がアクチュエータ13への通電を制御することで、弁体12の開閉作動が制御される。これにより、コモンレール42から高圧通路11aへ供給された高圧燃料は、弁体12の開閉作動に応じて噴射孔11bから噴射される。
【0021】
燃圧センサ20は、全ての燃料噴射弁10に搭載されており、以下に説明するステム21(起歪体)及び圧力センサ素子22等を備えて構成されている。ステム21はボデー11に取り付けられており、ステム21に形成されたダイヤフラム部21aが高圧通路11aを流通する高圧燃料の圧力を受けて弾性変形する。圧力センサ素子22はダイヤフラム部21aに取り付けられており、ダイヤフラム部21aで生じた弾性変形量に応じたアナログの圧力検出信号をECU30へ出力する。
【0022】
詳しくは、圧力センサ素子22は、モールドIC24に接続されている。モールドIC24は、圧力センサ素子22から出力される検出信号を増幅する増幅回路や、圧力センサ素子22に電圧印加する回路等を備えている。電圧印加回路から電圧印加された圧力センサ素子22は、ダイヤフラム部21aにて生じた歪の大きさに応じて抵抗値が変化するブリッジ回路を構成している。これにより、ダイヤフラム部21aの歪に応じてブリッジ回路の出力電圧が変化し、この出力電圧が高圧燃料の圧力検出値としてモールドIC24の増幅回路に出力される。増幅回路は、圧力センサ素子22(ブリッジ回路)から出力されるアナログの圧力検出値を増幅し、増幅したアナログ信号(連続値)をECU30へ出力する。
【0023】
ECU30(燃料噴射状態解析装置)は、CPU、ROM、RAM、記憶装置、及び入出力インターフェイス等を備える周知のマイクロコンピュータである。ECU30は、アクセルセンサ52により検出されるアクセルペダル51の操作量や、エンジン負荷、エンジン回転速度NE等に基づき目標噴射状態(例えば噴射段数、噴射開始時期、噴射終了時期、要求噴射量等)を算出する。例えば、エンジン負荷及びエンジン回転速度に対応する最適噴射状態を噴射状態マップにして記憶させておく。そして、現状のエンジン負荷及びエンジン回転速度に基づき、噴射状態マップを参照して目標噴射状態を算出する。また、ECU30は、コモンレール42内の燃料圧力が、目標噴射状態に応じた燃料圧力となるように燃料ポンプ41の吐出量を制御する。そして、ECU30は、算出した目標噴射状態に対応する噴射指令信号t1、t2、tq(図2(a)参照)を、後に詳述する噴射率パラメータtd,te,Rα,Rβ,Rmaxに基づき設定し、燃料噴射弁10へ出力することで燃料噴射弁10の作動を制御する。なお、ECU30によって、記憶部34、波形取得部35、フィルタ部36(第1フィルタ部、第2フィルタ部)、解析部37、及び制限部38が構成されている。
【0024】
次に、燃料噴射弁10から燃料を噴射させる場合における噴射制御の手法について、図2,3を用いて説明する。
【0025】
ECU30は、燃圧センサ20から出力されるアナログの圧力検出値を、設定されたサンプリングレートでサンプリングする。そして、ECU30は、サンプリングした値を、デジタルの圧力検出値に変換する。ECU30は、このデジタルの圧力検出値に基づき、噴射に伴い生じた燃料圧力の変化を燃圧波形(図2(c)参照)として検出する。以上の処理が波形取得部35としての処理に相当する。さらに、ECU30のフィルタ部36は、波形取得部35により取得された燃圧波形から外乱成分を取り除いて目的成分を抽出する。なお、図2(c)は、フィルタ部36により外乱成分を取り除いた後の燃圧波形である。
【0026】
ECU30の解析部37は、抽出した目的成分(燃圧波形)に基づいて、燃料の噴射率変化を表した噴射率波形(図2(b)参照)を演算して、噴射状態を検出する。そして、検出した噴射率波形(噴射状態)を特定する噴射率パラメータRα,Rβ,Rmaxを学習するとともに、噴射指令信号(パルスオン時期t1、パルスオフ時期t2及びパルスオン期間tq)と噴射状態との相関関係を特定する噴射率パラメータtd,teを学習する。また、ECU30の記憶部34には、工場出荷時の噴射率パラメータtd,te,Rα,Rβ,Rmaxが記憶されている。
【0027】
図3は、これら噴射率パラメータの学習、及び燃料噴射弁10へ出力する噴射指令信号の設定等の概要を示すブロック図であり、ECU30により機能する各手段31,32,33について以下に説明する。噴射率パラメータ算出手段31(解析部37)は、燃圧センサ20により検出された燃圧波形に基づいて、噴射率パラメータtd,te,Rα,Rβ,Rmaxを算出する。
【0028】
学習手段32は、算出した噴射率パラメータをECU30の記憶部34に記憶更新して学習する。なお、噴射率パラメータは、その時の供給燃圧(コモンレール42内の圧力)に応じて異なる値となるため、供給燃圧又は後述する基準圧力Pbase(図2(c)参照)と関連付けて学習させることが望ましい。図3の例では、燃圧に対応する噴射率パラメータの値を噴射率パラメータマップMに記憶させている。
【0029】
設定手段33は、現状の燃圧に対応する噴射率パラメータ(学習値)を、噴射率パラメータマップMから取得する。そして、取得した噴射率パラメータに基づき、目標噴射状態に対応する噴射指令信号t1、t2、tqを設定する。そして、このように設定した噴射指令信号にしたがって燃料噴射弁10を作動させた時の燃料圧力を、燃圧センサ20で検出する。噴射率パラメータ算出手段31は、検出された燃料圧力(アナログ値)をサンプリングしてデジタル値に変換し、このデジタル値に基づき燃圧波形を検出する。そして、噴射率パラメータ算出手段31は、検出した燃圧波形から外乱成分を取り除いた目的成分に基づいて、噴射率パラメータtd,te,Rα,Rβ,Rmaxを算出する。
【0030】
要するに、噴射指令信号に対する噴射状態(つまり噴射率パラメータtd,te,Rα,Rβ,Rmax)を検出して学習し、その学習値に基づき、目標噴射状態に対応する噴射指令信号を設定する。そのため、検出された噴射状態に基づき噴射指令信号がフィードバック制御されることとなり、経年劣化等が進行しても、検出される噴射状態が目標噴射状態に一致するよう高精度で制御できる。特に、検出される噴射量が目標噴射量となるように、噴射率パラメータに基づき噴射指令期間tqを設定するようフィードバック制御することで、検出される噴射量が目標噴射量となるように補償している。
【0031】
次に、噴射率パラメータを算出する手順について、図4のフローチャート及び図2を参照して説明する。なお、図4に示す処理は、ECU30(波形取得部35、フィルタ部36、解析部37)により、繰り返し実行される。
【0032】
まず、燃料噴射弁10に噴射を要求する要求噴射量が、最小検出噴射量よりも多いか否か判定する(S605)。ここで、最小検出噴射量(所定噴射量)は、要求噴射量が噴射率パラメータを精度良く検出することのできる噴射量であるか否か判定するための値であり、標準的な燃料噴射弁10が噴射可能な最小噴射量よりも若干多い噴射量に設定されている。すなわち、要求噴射量が最小検出噴射量よりも多ければ、全ての燃料噴射弁10で燃料の噴射を行うことが可能であり、且つ噴射に伴い生じる燃料圧力の変化の大きさが噴射率パラメータを検出可能な大きさとなる。
【0033】
要求噴射量が最小検出噴射量よりも多くないと判定した場合(S605:NO)、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0034】
一方、要求噴射量が最小検出噴射量よりも多いと判定した場合(S605:YES)、噴射率パラメータの算出に用いる燃圧波形の目的成分Wbを、燃圧センサ20の検出値に基づき算出する(S610)。詳しくは、波形取得部35は、燃圧センサ20から出力されるアナログの圧力検出値をサンプリングし、サンプリング値をデジタルの圧力検出値に変換する。波形取得部35は、このデジタルの圧力検出値に基づいて、噴射に伴い生じた燃料圧力の変化を示す燃圧波形を取得する。フィルタ部36(第1フィルタ部)は、波形取得部35により取得された燃圧波形を、通常用なまし係数n1(第1なまし係数)によりなましてフィルタ後波形(目的成分Wb)を算出する。例えば、Pk=Pk−1×(1−n1)+Pk×n1の式により、なまし演算を行う。Pkは対象とする点のなまし後の圧力値であり、Pk−1はPkよりも1つ前の点のなまし後の圧力値であり、通常用なまし係数n1は0<n1<1を満たす値である。通常用なまし係数n1は、要求噴射量が最小検出噴射量よりも多い場合に、波形取得部35により取得された燃圧波形から、適切に外乱成分を取り除いて目的成分Wbを抽出することのできる値に設定されている。なお、なまし演算の式としては、その他の任意の式を用いることができる。
【0035】
続いて、目的成分Wbのうち、噴射開始に伴い燃圧が降下を開始するまでの期間に対応する部分の波形である基準波形に基づき、その基準波形の平均燃圧を基準圧力Pbaseとして算出する(S611)。
【0036】
続いて、目的成分Wbのうち、噴射率増大に伴い燃圧が降下していく期間に対応する部分の波形である降下波形に基づき、その降下波形の近似直線Lαを算出する(S612)。
【0037】
続いて、目的成分Wbのうち、噴射率減少に伴い燃圧が上昇していく期間に対応する部分の波形である上昇波形に基づき、その上昇波形の近似直線Lβを算出する(S613)。
【0038】
続いて、基準圧力Pbaseに基づき基準値Bα,Bβを算出する(S614)。例えば、基準圧力Pbaseより所定量だけ低い値を基準値Bα,Bβとして算出すればよい。
【0039】
続いて、近似直線Lαのうち基準値Bαとなる時期(LαとBαの交点時期LBα)を算出し、交点時期LBαに基づき噴射開始時期R1を算出する(S615)。例えば、交点時期LBαよりも所定の遅れ時間Cαだけ前の時期を、噴射開始時期R1として算出すればよい。
【0040】
続いて、近似直線Lβのうち基準値Bβとなる時期(LβとBβの交点時期LBβ)を算出し、交点時期LBβに基づき噴射終了時期R4を算出する(S616)。例えば、交点時期LBβよりも所定の遅れ時間Cβだけ前の時期を、噴射終了時期R4として算出すればよい。
【0041】
続くステップS617では、図2(b)に示す噴射率波形のうち噴射増加を示す直線Rαの傾きを、近似直線Lαの傾きに基づき算出する。例えば、Lαの傾きに所定の係数を掛けてRαの傾きを算出すればよい。なお、S615で算出した噴射開始時期R1とS617で算出したRαの傾きに基づき、噴射指令信号に対する噴射率波形の上昇部分を表した直線Rαを特定することができる。さらに、S617では、噴射率波形のうち噴射減少を示す直線Rβの傾きを、近似直線Lβの傾きに基づき算出する。例えば、Lβの傾きに所定の係数を掛けてRβの傾きを算出すればよい。なお、S616で算出した噴射終了時期R4とS617で算出したRβの傾きに基づき、噴射指令信号に対する噴射率波形の降下部分を表した直線Rβを特定することができる。
【0042】
続いて、S617で算出した噴射率波形の直線Rα,Rβに基づき、噴射終了を指令したことに伴って、弁体12がリフトダウンを開始する時期(閉弁作動開始時期R23)を算出する(S618)。具体的には、両直線Rα,Rβの交点を算出し、その交点時期を閉弁作動開始時期R23として算出する。
【0043】
続くS619では、S615で算出した噴射開始時期R1の噴射開始指令時期t1に対する遅れ時間(噴射開始遅れ時間td)を算出する。さらに、S619では、S618で算出した閉弁作動開始時期R23の噴射終了指令時期t2に対する遅れ時間(噴射終了遅れ時間te)を算出する。
【0044】
続いて、基準圧力Pbaseと交点圧力Pαβとの圧力差ΔPγが所定値ΔPγth(>0)未満であるか否かを判定する(S620)。ΔPγ<ΔPγthと判定した場合(S620:YES)には、続くS621において、小噴射(噴射率が一定の最大値となる前に終了する噴射)であるとみなして、圧力差ΔPγに基づき最大噴射率Rmaxを算出する(Rmax=ΔPγ×Cγ)。一方、ΔPγ≧ΔPγthと判定した場合(S620:NO)には、続くS622において、基準圧力Pbaseからの最大圧力降下量ΔPに基づき最大噴射率Rmaxを算出する(Rmax=ΔP×Cγ)。なお、S622において、予め設定しておいた値(設定値Rγ)を最大噴射率Rmaxとして算出してもよい。その後、この一連の処理を一旦終了する(END)。なお、S611〜S622の処理が、解析部37としての処理に相当する。
【0045】
ここで、図5に、要求噴射量が最小検出噴射量と同程度に少ない場合について、燃圧波形の原波形及びフィルタ後波形を示す。
【0046】
図5(a)に示すように、燃料噴射弁10にパルスオン期間tqの通電電流が出力されると、燃料噴射弁10が駆動されて燃料の噴射が行われる。図5(b)は、燃圧センサ20から出力されるアナログの圧力検出値をデジタルの圧力検出値に変換して、噴射に伴い生じた燃料圧力の変化を示す燃圧波形の原波形を取得したものである。燃圧波形の原波形は、フィルタ部36により外乱成分を取り除く前の波形であるため、圧力の微小な上昇及び下降を含んでいる。したがって、この原波形をそのまま用いると、噴射率パラメータを精度良く検出することができない。
【0047】
図5(c)は、図5(b)の原波形を、フィルタ部36によって、通常用なまし係数n1によりなましてフィルタ後波形を算出したものである。このフィルタ後波形では、圧力の微小な上昇及び下降が取り除かれているものの、矢印で示すように燃料の噴射による燃料圧力の落ち込み量が原波形と比較して小さくなっている。すなわち、最小検出噴射量よりも少ない噴射量では、噴射時に燃圧センサ20により検出される燃料圧力の変化が小さい。このため、通常用なまし係数n1を用いて原波形をなますと、最小噴射量(噴射率パラメータ)の検出に必要な圧力波形の微小成分が取り除かれたり、縮小されたりするおそれがある。
【0048】
図5(d)は、図5(b)の原波形を、フィルタ部36によって、微小域用なまし係数n2(第2なまし係数)によりなましてフィルタ後波形を算出したものである。微小域用なまし係数n2は、通常用なまし係数n1よりも大きい値(0<n1<n2<1)であり、すなわち通常用なまし係数n1よりもなまし度合いの小さいなまし係数である。微小域用なまし係数n2は、要求噴射量が最小検出噴射量よりも少ない場合に、波形取得部35により取得された燃圧波形から、適切に外乱成分を取り除いて目的成分Wbを抽出することのできる値に設定されている。そこで、本実施形態では、要求噴射量が最小検出噴射量よりも少ない場合に、フィルタ部36は、波形取得部35により取得された燃圧波形を、微小域用なまし係数n2によりなまして目的成分Wbを算出する。そして、この目的成分Wbに基づいて、各燃料噴射弁10の最小噴射量を検出する。
【0049】
図6は、最小噴射量を検出する態様を示すタイムチャートである。
【0050】
図6(a)に示すように、時刻t11において、アクセルペダル51の操作量が0になると、すなわちアクセルがONからOFFになると、最小噴射量の検出処理が開始される。そして、図6(b)に示すように、車両やエンジンの振動が大きくなることを抑制するために、要求噴射量が徐々に減少させられる。これに伴って、図6(d)に示すように、噴射指令期間tqが徐々に短くされる。その結果、図6(c)に示すように、噴射に伴う燃料圧力の落ち込み量が徐々に小さくなる。
【0051】
時刻t12において、図6(c)に示すように、噴射に伴う燃料圧力の落ち込み量が0になり、以降は落ち込み量が0の状態となっている。このため、時刻t12又はその直前での要求噴射量を最小噴射量として検出することができる。なお、最小噴射量を特定するパラメータとして、時刻t12又はその直前での噴射指令期間tqを検出してもよい。さらに、これらの要求噴射量及び噴射指令期間tqと併せて、その時の燃料圧力を検出してもよい。また、微小域用なまし係数n2を用いて図4の噴射率パラメータ算出処理を行い、図2(b)に示す噴射率波形の面積から最小噴射量を算出してもよい。
【0052】
図7は、最小噴射量検出の処理手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、ECU30より所定の周期で繰り返し実行される。
【0053】
まず、アクセルがONからOFFに変わったか否か判定する(S10)。具体的には、アクセルセンサ52により検出されるアクセルペダル51の操作量が、0よりも多い状態から0に変化したか否か判定する(S10)。
【0054】
S10の判定において、アクセルがONからOFFに変わったと判定した場合(S10:YES)、燃料を噴射する要求があるか否か判定する(S11)。具体的には、要求噴射量が0よりも大きいか否か判定する。図6(b)に示したように、アクセルがONからOFFに変化した場合に要求噴射量は徐々に減少される。なお、S10の判定において一度YESと判定されてアクセルのOFF状態が続いている場合、要求噴射量が0になるまでS10の判定ではYESと判定される。
【0055】
S11の判定において、燃料を噴射する要求がないと判定した場合(S11:NO)、この一連の処理を一旦終了する(END)。すなわち、要求噴射量が徐々に減少されて0になった場合や、アクセルがONからOFFに変化した時の要求噴射量が少なく、要求噴射量が直ちに0にされた場合は、この一連の処理を一旦終了する。一方、S11の判定において、燃料を噴射する要求があると判定した場合(S11:YES)、要求噴射量が最小検出噴射量以下であるか否か判定する(S12)。
【0056】
S10の判定において、アクセルがONからOFFに変わっていないと判定した場合(S10:NO)、又はS12の判定において、要求噴射量が最小検出噴射量以下でないと判定した場合(S12:NO)、フィルタ部36で用いるなまし係数として通常用なまし係数n1を設定する(S13)。そして、図4に示した噴射率パラメータ算出処理を実行する(S14)。その後、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0057】
一方、S12の判定において、要求噴射量が最小検出噴射量以下であると判定した場合(S12:YES)、フィルタ部36で用いるなまし係数として微小域用なまし係数n2を設定する(S15)。そして、図4に示した噴射パラメータ算出処理と同様に、基準圧力Pbaseからの最大圧力降下量ΔPを検出する(S16)。なお、要求噴射量が最小検出噴射量以下である場合、最大圧力降下量ΔPは基準圧力Pbaseと交点圧力Pαβとの圧力差ΔPγに一致する。続いて、噴射に伴う燃料圧力の落ち込みがあるか否か判定する(S17)。具体的には、検出された最大圧力降下量ΔPが判定値よりも大きいか否か判定する。この判定値は、最大圧力降下量ΔPが外乱成分によるものではなく、噴射によるものであると判定することのできる値に設定されている。
【0058】
S17の判定において、噴射に伴う燃料圧力の落ち込みがあると判定した場合(S17:YES)、記憶されている最小噴射量よりも要求噴射量が小さいか否か判定する(S18)。詳しくは、最小噴射量は、各燃料噴射弁10について記憶部34に記憶されている。そして、噴射が行われている燃料噴射弁10の最小噴射量よりも、噴射が行われている燃料噴射弁10の要求噴射量が小さいか否か判定する。
【0059】
S18の判定において、記憶されている最小噴射量よりも現在の要求噴射量が小さいと判定した場合(S18:YES)、要求噴射量を最小噴射量として記憶する(S19)。詳しくは、噴射が行われている燃料噴射弁10の要求噴射量を、噴射が行われている燃料噴射弁10の最小噴射量として記憶部34に記憶する。
【0060】
また、S17の判定において、噴射に伴う燃料圧力の落ち込みがないと判定した場合(S17:NO)、又はS18の判定において、記憶されている最小噴射量よりも要求噴射量が小さくないと判定した場合(S18:NO)、この一連の処理を一旦終了する(END)。なお、S16〜S19の処理が、解析部37としての処理に相当する。
【0061】
複数の燃料噴射弁10において、それぞれ噴射可能な最小噴射量が異なることがある。このため、複数の燃料噴射弁10(#1〜#4)に共通の要求噴射量が、燃料噴射弁10(#1)の最小噴射量よりも大きく、燃料噴射弁10(#2)の最小噴射量よりも小さいことがある。この場合に、複数の燃料噴射弁10(#1〜#4)により共通の要求噴射量を噴射させようとすると、燃料噴射弁10(#1)では噴射が行われ、燃料噴射弁10(#2)では噴射が行われないこととなる。その結果、エンジンにおいて、燃料の燃焼による騒音や振動が大きくなるおそれがある。そこで、本実施形態では、検出した最小噴射量を用いて要求噴射量を制限する処理を行っている。
【0062】
図8は、検出した最小噴射量を用いて要求噴射量を制限する処理の手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、ECU30により所定の周期で繰り返し実行される。
【0063】
まず、燃料噴射弁10による噴射が復帰されるか否か判定する(S20)。具体的には、要求噴射量が0の状態(噴射が要求されない状態)から、要求噴射量が0よりも大きい状態になったか否か判定する。
【0064】
S20の判定において、燃料噴射弁10による噴射が復帰されると判定した場合(S20:YES)、解析部37により検出された各燃料噴射弁10の最小噴射量のうち最大の最小噴射量を制限噴射量Qmincとして設定する(S21)。詳しくは、記憶部34に記憶された各燃料噴射弁10の最小噴射量を読み込み、それらの最大値を制限噴射量Qmincとして設定する。
【0065】
続いて、要求噴射量が制限噴射量Qmincよりも小さいか否か判定する(S22)。具体的には、噴射が行われる燃料噴射弁10の要求噴射量が、制限噴射量Qmincよりも小さいか否か判定する。なお、S20の判定において一度YESと判定されて噴射が復帰した状態が続いている場合、要求噴射量が制限噴射量Qminc以上となるまでS20の判定ではYESと判定される。
【0066】
S22の判定において、要求噴射量が制限噴射量Qmincよりも小さいと判定した場合(S22:YES)、制限噴射量Qmincを要求噴射量として設定する(S23)。すなわち、燃料噴射弁10の要求噴射量が制限噴射量Qmincよりも少なく且つ0以下でない場合に、燃料噴射弁10の要求噴射量を制限噴射量Qmincとする。そして、通常の噴射設定処理を行う(S24)。具体的には、燃料噴射弁10から要求噴射量の燃料が噴射されるように、燃料噴射弁10を駆動する。そして、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0067】
また、S20の判定において、燃料噴射弁10による噴射が復帰されないと判定した場合(S20:NO)、又はS22の判定において、要求噴射量が制限噴射量Qmincよりも小さくないと判定した場合(S22:NO)、そのまま通常の噴射設定処理を行う(S24)。そして、この一連の処理を一旦終了する(END)。なお、S21〜S23の処理が、制限部38としての処理に相当する。
【0068】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0069】
・波形取得部35により取得された圧力波形は、燃料噴射弁10により噴射させるように要求される要求噴射量が最小検出噴射量よりも多い場合に通常用なまし係数n1を用いて(第1フィルタ部により)外乱成分が取り除かれ、要求噴射量が同最小検出噴射量よりも少ない場合に微小域用なまし係数n2を用いて(第2フィルタ部により)外乱成分が取り除かれる。第2フィルタ部の外乱成分を取り除く能力は、第1フィルタ部の外乱成分を取り除く能力よりも低くなっている。このため、要求噴射量が最小検出噴射量よりも少ない場合に第2フィルタ部により外乱成分を取り除くことで、圧力波形の微小成分が取り除かれることを抑制することができる。したがって、微少量の燃料を噴射する時であっても、燃料圧力の変化を目的成分Wbに精度良く反映することができ、燃料の噴射状態を解析する精度が低下することを抑制することができる。
【0070】
・要求噴射量が最小検出噴射量よりも多い場合には、第1フィルタ部により外乱成分を取り除くことで、圧力波形から不要な微小成分を取り除くことができる。その結果、圧力波形の目的成分Wbを適切に抽出することができ、燃料の噴射状態を解析する精度を向上させることができる。
【0071】
・解析部37は、第2フィルタ部により抽出された目的成分Wbに基づいて、燃料噴射弁10により噴射可能な最小噴射量を検出する。したがって、圧力波形から目的とする微小成分が取り除かれたり、縮小されたりすることを抑制することができ、最小噴射量を検出する精度が低下することを抑制することができる。
【0072】
・車両のアクセルペダル51の操作量が0になると、要求噴射量が0まで減少される。この際に、解析部37により最小噴射量が検出されるため、最小噴射量を検出するための特別な噴射制御を行う必要がなく、容易に最小噴射量を検出することができる。
【0073】
・解析部37により、第2フィルタ部により抽出された目的成分Wbに基づいて、複数の燃料噴射弁10によりそれぞれ噴射可能な最小噴射量が検出される。そして、解析部37により検出された最小噴射量のうち最大の最小噴射量を制限噴射量Qmincとし、要求噴射量が制限噴射量Qmincよりも少なく且つ0以下でない場合に、燃料噴射弁10により制限噴射量Qmincが噴射される。したがって、最小噴射量程度の燃料を噴射する際に、全ての燃料噴射弁10により燃料の噴射を行うことができ、燃料の燃焼による騒音や振動が大きくなることを抑制することができる。
【0074】
なお、上記実施形態に限らず、以下のように変更して実施してもよい。
【0075】
・燃料噴射弁10の最小噴射量を検出する際の噴射は、パイロット噴射やポスト噴射でもよいし、メイン噴射でもよい。ただし、要求噴射量としては、パイロット噴射に要求される要求噴射量、ポスト噴射に要求される要求噴射量、及びメイン噴射に要求される要求噴射量をそれぞれ用いる。
【0076】
・最小噴射量を検出する際に算出した噴射率パラメータtd,te,Rα,Rβ,Rmaxを、噴射量0に対応する噴射率パラメータとして、記憶部34に記憶させてもよい。そして、要求噴射量が最小検出噴射量よりも少ない場合に、それらの噴射率パラメータを用いて噴射状態を制御(補間)してもよい。
【0077】
図9に示すように、圧力センサ素子22から出力される圧力検出値から、第1周波数よりも高い周波数成分を取り除く第1フィルタ回路25(第1フィルタ部)、及び第2周波数よりも高い周波数成分を取り除く第2フィルタ回路26(第2フィルタ部)を、モールドIC24に設けることもできる。第2周波数は、第1周波数よりも高く設定されている。そして、ECU30は、要求噴射量が最小検出噴射量よりも多い場合に、第1フィルタ回路25の出力値に基づいて燃料の噴射状態を解析し、要求噴射量が最小検出噴射量よりも少ない場合に、第2フィルタ回路26の出力値に基づいて燃料の噴射状態を解析する。こうした構成によっても、微少量の燃料を噴射する時であっても、燃料の噴射状態を解析する精度が低下することを抑制することができる。なお、モールドIC24及びECU30により、燃料噴射状態解析装置が構成されている。また、第1フィルタ回路25及び第2フィルタ回路26を、ECU30に設けることもできる。
【符号の説明】
【0078】
10…燃料噴射弁、11a…高圧通路、11b…噴射孔、20…燃圧センサ、24…モールドIC、25…第1フィルタ回路、26…第2フィルタ回路、30…ECU、35…波形取得部、36…フィルタ部、37…解析部、42…コモンレール、42b…高圧配管、50…燃料噴射システム。
図1
図2
図3
図4
図6
図7
図8
図9
図5