(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行車体(2)の後側に昇降リンク機構(3)を設け、該昇降リンク機構(3)に作業装置(4)を設け、前記走行車体(2)の左右の後輪(11,11)に伝動する左右の伝動ケース(200L,200R)を設けた作業車両において、
該左右の伝動ケース(200L,200R)の間に基部フレーム(100)を設け、該基部フレーム(100)の前部に走行車体(2)のメインフレーム(15)を設け、前記左右の伝動ケース(200L,200R)を該基部フレーム(100)及びメインフレーム(15)に固着し、
圃場を整地する整地装置(27)と、
前記整地装置(27)に駆動力を伝動する整地伝動部材(301)と、
前記整地伝動部材(301)を設ける側の左右一方の伝動ケース(200L,200R)に、前記整地伝動部材(301)への伝動を切り替える整地クラッチ装置(320)と、を設け、
前記左右一方の伝動ケース(200L,200R)内で該整地クラッチ装置(320)に伝動する入力軸(321L)を設け、該入力軸(321L)を前記整地伝動部材(301)よりも機体上側に設けたことを特徴とする作業車両。
前記メインフレーム(15)を前記基部フレーム(100)に固着し、該基部フレーム(100)の左右両側に左右のフランジ(120L,120R)を固着すると共に、前記メインフレーム(15)を構成する左右の補助フレーム(15sL,15sR)に補助フランジ(120sL,120sR)を各々固着し、
該左右のフランジ(120L,120R)と補助フランジ(120sL,120sR)に前記左右の伝動ケース(200L,200R)を装着したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
前記左右の伝動ケース(200L,200R)の下面に平坦部(201L,201R)を各々形成し、該左右の平坦部(201L,201R)に前記左右の伝動ケース(200L,200R)から潤滑油を排出する排出部(202L,202R)を機体左右方向に向けて形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の作業車両。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0032】
ここでは、本発明の作業車両の一実施の形態としての乗用型の8条植田植機1について図面を参照しながら説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態の、走行車両を備える乗用型の8条植田植機1(以下、単に田植機と称す)の側面図を示し、
図2はその平面図を示している。
【0034】
また、
図3(a)は、後輪ギアケースの取り付け場所を説明する、メインフレーム15の後部の拡大左側面図であり、
図3(b)は、その背面図である。尚、
図3(a)では、図面を見易くするために左右一対の後輪ギアケース200L、200Rを二点鎖線で示した。
【0035】
尚、本明細書では作業車両の前進方向に向かって左右をそれぞれ左、右と規定し、前後をそれぞれ前、後と規定する。
【0036】
この田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている
。
尚、田植機1が、本発明の作業車両の一例にあたり、苗植付部4が、本発明の作業装置の一例にあたる。
【0037】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10及び左右一対の後輪11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右一対の前輪10が各々取り付けられている。
【0038】
また、走行車体2は、前端部が、ミッションケース12の背面部に固着されたメインフレーム15を有すると共に、そのメインフレーム15の後部を構成する、走行車体2の左右方向に配置された基部フレーム100と、基部フレーム100の両端側から上方に向けて立ち上がり、昇降リンク機構3の前端側が連結される左右一対のリンクベースフレーム42L、42Rとを有している。
【0039】
また、走行車体2の後部左右側には、左右一対の後輪11にエンジン20からの駆動力を伝動する伝動機構を収納する左側後輪ギアケース200L、右側後輪ギアケース200Rが配置されている。
【0040】
そして、
図3(a)、
図3(b)に示す通り、左側後輪ギアケース200Lと右側後輪ギアケース200Rは、基部フレーム100及び左右一対のリンクベースフレーム42L、42Rに、それぞれ直接固定されている。この点については、更に後述する。
【0041】
尚、本実施の形態の左右一対の前輪10、及び左右一対の後輪11は、本発明の走行装置の一例にあたる。また、本実施の形態の左側後輪ギアケース200L、及び右側後輪ギアケース200Rは、本発明の伝動ケースの一例にあたる。また、左右一対のリンクベースフレーム42L、42Rは、本発明のリンクフレームの一例にあたる。
【0042】
エンジン20は、メインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。
【0043】
ミッションケース12に伝達された回転動力は、ミッションケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13に伝達されて左右一対の前輪10を駆動すると共に、残りが、第1伝動軸230Lを介して左側後輪ギアケース200Lに、また、第2伝動軸230Rを介して右側後輪ギアケース200Rに、それぞれ伝達されて左右一対の後輪11を駆動する。
【0044】
また、左側後輪ギアケース200Lに伝達された走行動力の一部は、更に、左側後輪ギアケース200L内に設けられた整地クラッチ機構320を介して、苗植付部4に取り付けられた整地ローター27(第1整地ローター27aと第2整地ローター27bの組み合わせを単に整地ローター27と言うことがある)へ伝動される。整地クラッチ機構320については、
図6等を用いて更に後述する。
【0045】
また、右側後輪ギアケース200Rに伝達された走行動力の一部は、更に、右側後輪ギアケース200R内に設けられた施肥クラッチ機構420を介して施肥装置5へ伝動される。施肥クラッチ機構420については、
図9等を用いて更に後述する。
【0046】
尚、本実施の形態の整地ローター27は、本発明の整地装置の一例にあたり、また、整地クラッチ機構320は、本発明の整地伝動クラッチ装置の一例にあたる。
【0047】
又、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動される。
【0048】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に運転席31が設置されている。運転席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10を操向操作する操縦ハンドル34が設けられている。
【0049】
エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(
図2参照)、フロアステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下する構成となっている。
【0050】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41を備えている。上リンク40及び下リンク41は、それらの基部側がメインフレーム15の後端部の基部フレーム100に立設した背面視門形のフレームを構成する左右一対のリンクベースフレーム42L、42Rに回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に、苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
【0051】
メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダー46が設けられており、昇降油圧シリンダー46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0052】
苗植付部4は、8条植の構成で、フレームを兼ねる植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51aに供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51aに供給すると苗送りベルト51bにより苗を下方に移送する苗載せ台51、苗取出口51aに供給された苗を苗植付具52aによって圃場に植付ける苗植付装置52等を備えている。
【0053】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート55、57、56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55、57、56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52により苗が植付けられる。
【0054】
各フロート55、57、56は、圃場表土面の凹凸に対応して前端側が上下動する如く回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサー(図示せず)により検出され、その検出結果に対応して昇降油圧シリンダー46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0055】
施肥装置5は、肥料タンク60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62でセンターフロート55及びサイドフロート56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)まで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体(図示せず)によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込む構成となっている。ブロアー用電動モーター53で駆動するブロアー58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバー59を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送する構成となっている。
【0056】
又、苗載せ台51は、左右方向にスライドする構成である。
【0057】
又、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく一対の予備苗枠38が設けられている。
【0058】
次に、上述した通り、主として
図3(a)、
図3(b)を参照しながら、メインフレーム15の後部の構造、及び左側後輪ギアケース200Lと右側後輪ギアケース200Rの固定について、更に説明する。
【0059】
図3(a)、
図3(b)に示す通り、メインフレーム15の左右後端部15L、15Rは、側面視で略L字状に折り曲げられた左右方向に長い補強アングル15bの両端部にそれぞれ溶接固定されており、メインフレーム15の左右後端部15L、15Rの下角部に設けられた切欠部15aL、15aRと、側面視で略四角柱状の基部フレーム100の左右両端の前側上角部100aL、100aRとが、溶接により完全に固着されている。
【0060】
一方、基部フレーム100の左右両端の上面側には、左右一対のリンクベースフレーム42L、42Rの下端部がそれぞれ溶接により完全に固着されている。
【0061】
また、基部フレーム100の左右両端縁部には、左右一対の左側後輪ギアケース200L、右側後輪ギアケース200Rを固定するための複数の貫通孔121が周囲に明けられた平板状の左右一対の左側フランジ120Lと、右側フランジ120Rが、鉛直方向に沿って配置された状態で溶接固定されている。
【0062】
更に、左側フランジ120Lの内面は、左側のリンクベースフレーム42Lの下端部と密着した状態で、互いに溶接により完全に固着されている。また、同様に、右側フランジ120Rの内面は、右側のリンクベースフレーム42Rの下端部と密着した状態で、互いに溶接により完全に固着されている。
【0063】
そして、左側後輪ギアケース200Lの内面は、基部フレーム100の左端と左側のリンクベースフレーム42Lの下端部外側とが溶接により一体的に固着された左側フランジ120Lの外面に密着した状態で、左側フランジ120Lの内面側から複数の貫通孔121を利用して挿入されたボルト等の締結部品122によって、左側フランジ120Lに完全に固定されている。
【0064】
同様に、右側後輪ギアケース200Rの内面は、基部フレーム100の右端と右側のリンクベースフレーム42Rの下端部外側とが溶接により一体的に固着された右側フランジ120Rの外面に密着した状態で、右側フランジ120Rの内面側から複数の貫通孔121を利用して挿入されたボルト等の締結部材122によって、右側フランジ120Rに完全に固定されている。
【0065】
さらに、メインフレーム15の左右後端部15L、15Rの上方には、左右の補助フレーム15sL、15sRを、左右後端部15L、15Rと略平行姿勢で配置しており、この左右の補助フレーム15sL、15sRの後端部には、左側後輪ギアケース200L及び右側後輪ギアケース200Rの機体左右方向で且つ上部を受ける補助フランジ120sL、120sRを各々固着している。なお、左右の補助フレーム15sL、15sRは、図示は省略するが、左右後端部15L、15Rに連結部材を介して連結することにより、メインフレーム15の一部を構成するものとする。
【0066】
左右の補助フランジ120sL、120sRは、複数(少なくとも2つ)の貫通孔123が形成されており、この貫通孔123にボルト等の締結部材122を介して左右の後輪ギアケース200L、200Rの上部を機体内側から固定するものである。
【0067】
この様に、大きな負荷を受けやすい左右一対の左側後輪ギアケース200L、及び右側後輪ギアケース200Rを、基部フレーム100の左右両端、及び左右一対のリンクベースフレーム42L、42Rの下端部に、それぞれ直接固定される構成としたことにより、左右一対の左側後輪ギアケース200L、及び右側後輪ギアケース200Rの締結部分の耐久性の向上を図れ、その結果として機体全体の耐久性の向上につながる。また、例えば、ヨーイング方向の強度を改善できる。
【0068】
また、この様に、左右一対の左側後輪ギアケース200L、及び右側後輪ギアケース200Rを、基部フレーム100の左右両端、及び左右一対のリンクベースフレーム42L、42Rの下端部に、それぞれ直接固定される構成としたことにより、従来の様に、左右長さの長い連結フレームに固定された左右幅の小さい後輪ギアケースの構成に比べて、本実施の形態の左側後輪ギアケース200L、及び右側後輪ギアケース200Rの左右幅は大きく設定できるので、左側後輪ギアケース200L、及び右側後輪ギアケース200Rの剛性を向上させることが出来る。
【0069】
さらに、左右の補助フレーム15sL、15sRと左右後端部15L、15Rを連結部材(図示省略)を介して連結すると共に、左右の後輪ギアケース200L、200Rの上部を各々左右の補助フランジ120sL、120sRに固定して連結することにより、左右の後輪ギアケース200L、200Rがメインフレーム15にいっそう強固に取り付けられるので、機体の剛性がいっそう向上する。
【0070】
尚、左右一対の左側フランジ120Lの内面、及び右側フランジ120Rの内面は、何れも、メインフレーム15の左右後端部15L、15Rと密着した状態で、互いに溶接により完全に固着されている。
【0071】
また、左側後輪ギアケース200Lは、
図3(b)に示す通り、左側後輪ギアケース本体210Lと、左側後輪ギアケース蓋290Lとから構成されており、また、右側後輪ギアケース200Rは、
図3(b)に示す通り、右側後輪ギアケース本体210Rと、右側後輪ギアケース蓋290Rとから構成されている。
【0072】
次に、
図4〜
図5を用いて、左側後輪ギアケース200L、及び右側後輪ギアケース200Rの構造について更に説明する。
【0073】
ここで、
図4(a)は、左側後輪ギアケース本体210Lを右側から見た(
図3(b)の矢印A参照)図であり、
図4(b)は、左側後輪ギアケース本体210Lを前側から見た(
図4(a)の矢印B参照)図であり、
図4(c)は、
図4(a)のC−C’断面を示す部分断面矢視図である。
【0074】
また、
図5は、左側後輪ギアケース本体210Lを背面側から見た、ローター伝動軸301の配置状態を示す概略の部分斜視図である。
【0075】
図4(b)に示す通り、左側後輪ギアケース本体210Lの合わせ面211Lは、
図3(b)に示す通り、左側後輪ギアケース蓋290Lの合わせ面291Lに対向配置されて、ボルト等の締結部材(図示省略)により連結されている。
【0076】
また、同様に、右側後輪ギアケース本体210Rの合わせ面211Rは、
図3(b)に示す通り、右側後輪ギアケース蓋290Rの合わせ面291Rに対向配置されて、ボルト等の締結部材(図示省略)により連結されている。
【0077】
そして、左側後輪ギアケース本体210Lは、合わせ面211Lから左側フランジ120L側に向けて大きく突き出した突出部220Lを有しており、その突出部220Lの最突出端面221Lには、左側フランジ120Lと密着してボルト等の締結部材122で固定するための下孔223が、左側フランジ120Lに設けられた貫通孔121と対応する位置に複数設けられている。
【0078】
また、同様に、右側後輪ギアケース本体210Rは、合わせ面211Rから右側フランジ120R側に向けて大きく突き出した突出部220Rを有しており、その突出部220Rの最突出端面221Rには、右側フランジ120Rと密着してボルト等の締結部材122で固定するための下孔223が、右側フランジ120Rに設けられた貫通孔121と対応する位置に複数設けられている。
【0079】
上記の突出部220L、220Rが、それぞれ左側フランジ120L、及び右側フランジ120Rを利用して、基部フレーム100及び左右一対のリンクベースフレーム42L、42Rに、それぞれ直接固定される構成としたことにより、上述した通り、左右一対の左側後輪ギアケース200L、及び右側後輪ギアケース200Rの締結部分の耐久性の向上を図れ、その結果として機体全体の耐久性の向上につながる。
【0080】
また、左側後輪ギアケース本体210Lの突出部220Lには、
図5に示す通り、後面側に開口部224を有する凹部の底面225に、整地ローター27に駆動力を伝動するローター伝動軸301のローター伝動軸後端部301aを貫通させて、回動可能に装着するための装着孔225aが形成されている。
【0081】
上述した通り、ローター伝動軸301を突出部220Lに設ける構成としたことにより、ローター伝動軸301を、基部フレーム100や左側後輪ギアケース200Lと同じ高さに配置することが可能となり、ローター伝動軸301の配置の自由度が上がり、その結果として、整地ローター27の昇降幅が大きくなる。
【0082】
また、ローター伝動軸301のローター伝動軸後端部301aを装着する装着孔225aを、左側後輪ギアケース本体210Lの突出部220Lの後面側に開口部224を有する凹部の内部に形成したことにより、ローター伝動軸後端部301aに泥土が付着しにくく、泥土による整地ローター27の作動不良を防止出来る。
【0083】
次に、
図3(b)、
図4(c)に示す通り、左側後輪ギアケース200Lの最下面、及び、右側後輪ギアケース200Rの最下面には、ジャッキアップ用の平坦部201L、201Rがそれぞれ形成されている。
【0084】
これにより、ジャッキアップ時の走行車体2の姿勢が安定し、メンテナンス作業の能率が向上する。
【0085】
また、平坦部201L、201Rの上方には、左側後輪ギアケース200L内、及び右側後輪ギアケース200R内の潤滑油を外部に排出する排出口202L、202Rが、横向き、即ち機体の内側に向けてそれぞれ設けられている。
【0086】
これにより、ジャッキを平坦部201L、201Rに当てた場合でも、ジャッキにより排出口202L、202Rが塞がれることがないので、ジャッキアップしたままの状態で、潤滑油の排出が可能となり、作業効率が向上する。
【0087】
また、排出口202L、202Rが、合わせ面211L、211Rに対してずらせて設けられているので、排出口202L、202Rから排出された廃油が、ジャッキにかからない。
【0088】
また、排出口202L、202Rには、着脱可能な栓(ドレンプラグ)203をそれぞれに設けた。
【0089】
排出口202L、202Rが左右の後輪ギアケース200L、200Rの機体内側に形成されていることにより、左右の平坦部201L、201Rのうち、どちらか一側にジャッキ装置を合わせて上昇させると、上昇させた側の排出口202L又は202Rのどちらかが機体内側に向かう下り傾斜姿勢となるので、平坦な状態では後輪ギアケース200L、200Rの内側底部に残ってしまう潤滑油を排出することができ、劣化した潤滑油が残りにくく、メンテナンス性が向上する。
【0090】
次に、
図6〜
図8、
図10を用いて、ミッションケース12側から伝動される駆動力の、左側後輪ギアケース200Lにおける伝動構成について説明する。
【0091】
ここで、
図6は、左側後輪ギアケース200Lの内部における駆動力の伝達構成を示す概略平面図である。また、
図8は、左側後輪ギアケース本体210Lを前側から見た、整地ローター伝動軸301への駆動力の入り切りを行う整地クラッチ機構320とギア機構310との関係を示す概略斜視図である。また、
図10は、ミッションケース12、左側後輪ギアケース200L、及び右側後輪ギアケース200Rにおける伝達構成を示した概略平面図である。
【0092】
尚、
図6、
図7、
図9、
図10において、走行車体2の前側、後側、左側、及び右側をそれぞれ矢印F、B、L、及びRで表した。
【0093】
図6に示す通り、入力軸321を含む整地クラッチ機構320には、ミッションケース12側から第1伝動軸230Lを介して入力軸321Lに動力が伝達される。その動力は、入力軸321Lの後端側の第1傘歯車321aLから、第2傘歯車330Lが固着されている第2回転軸340Lに伝動され、第2回転軸340Lに固着された小径ギア331Lを介して、大径ギア332Lに伝達されることにより、左側後輪シャフト341Lが回動する構成である。
【0094】
次に、整地クラッチ機構320による、ローター伝動軸301への駆動力の入り切りの構成について説明する。
【0095】
図6に示す通り、整地クラッチ機構320は、入力軸321Lと、その入力軸321Lに摺動自在にスプライン接続された整地ローター入切クラッチ322と、整地ローター入切クラッチ322を第1傘歯車321aL側に常時付勢する付勢スプリング323と、付勢スプリング323による付勢力に対抗して整地ローター入切クラッチ322の鍔部322aを押す突起部324aLを先端に備え、入力軸321Lの軸方向に沿って矢印E方向(
図6、
図8参照)に整地ローター入切クラッチ322をシフトさせる切替シフター324Lと、入力軸321Lに遊嵌し、整地ローター入切クラッチ322の第1傘歯車321aL側に設けられた第1ギア325とを備えている。
【0096】
そして、
図8に示す通り、整地ローター入切クラッチ322の第1ギア325側の面には第1クラッチ爪322bが複数形成されており、第1ギア325の整地ローター入切クラッチ322側の面には、第1クラッチ爪322bと嵌合するべく第2クラッチ爪325aが複数形成されている。
【0097】
また、切替シフター324Lの根元部324bL側は、昇降リンク機構3の走行車体2側に設けられた、ロッドやワイヤー、スプリング等で構成される切替連動機構326aに接続されている。機体の旋回時や後進時、または作業者の操作によって苗植付部4が上昇するとき、昇降リンク機構3が所定高さまで上方移動すると、切替連動機構326aが切替シフター324Lを操作し、整地クラッチ機構320を切状態にする。
【0098】
これにより、苗植付部4が上昇する際に整地ローター27の駆動を停止させることができるので、整地ローター27に付着していた泥土を飛散させ、苗植付部4や走行車体2、及び作業者が泥土で汚れることが防止される。
【0099】
また、整地作業の必要ない状態で、余分な駆動力を使用することが防止される。
【0100】
上記構成では、整地クラッチ機構320が整地ローター27の駆動を切るのは、苗植付部4の上昇に連動するときとなる。しかしながら、圃場の土質が非常に柔らかく、整地ローター27を接触させると泥が浮き上がり、かえって圃場面が荒れる場合には、苗植付部4を植付作業高さまで下降させつつ、整地ローター27への駆動力の供給を遮断する必要がある。
【0101】
このとき、切替シフター324の根元部324bに、切替連動機構326aに加えて、切替レバー326を接続し、作業者がこの切替レバー326を操作することにより、整地ローター27への駆動力を任意に入切できる構成とするとよい(
図7参照)。ここで、
図7は、切替シフター324の根元部324bに、切替連動機構326aに加えて切替レバー326を設けた構成であって、左側後輪ギアケース200Lの内部における駆動力の伝達構成を示す概略平面図である。
【0102】
この構成においては、切替レバー326が整地クラッチ機構320を切操作する位置に操作されているときには、苗植付部4の昇降にかかわらず、整地クラッチ機構320が切状態となる構成とし、苗植付部4が昇降するたびに切替レバー326を操作する必要がない構成とするとよい。
【0103】
これにより、作業者が、切替シフター324Lの根元部324bL側に連結された切替レバー326を操作して、切替シフター324Lを一方側(
図7中では、左側)にシフトさせると、整地ローター入切クラッチ322が同じ方向(
図7中では、左側)にシフトして、第1クラッチ爪322bと第2クラッチ爪325aの嵌合が外れるので、入力軸321Lの回動による駆動力は、第1ギア325には伝動されない。従って、この場合、整地ローター27側には駆動力は伝達されない。
【0104】
一方、作業者が、切替シフター324Lの根元部324bL側に連結された切替レバー326を操作して、
図7中において、切替シフター324Lを他方側(
図7中では、右側)にシフトさせると、整地ローター入切クラッチ322が同じ方向(
図7中では、右側)にシフトして、第1クラッチ爪322bと第2クラッチ爪325aが嵌合するので、入力軸321Lの回動による駆動力は、第1ギア325に伝動される。
【0105】
そして、第1ギア325の回動による伝動力が、チェーン311を介して、ローター伝動軸301に固着されている第2ギア312に伝達される。
【0106】
これにより、整地ローター27側に駆動力が伝達される。
【0107】
尚、本実施の形態のギア機構310は、第1ギア325と第2ギア312とチェーン311等を包括する構成上の名称である。
【0108】
また、切替シフター324Lの根元部324bL側に取り付けられた切替レバー326は、手動でロック出来る構成とし、整地クラッチ機構320を「常時入り」、「常時切り」、及び「作業装置の昇降動作に連動」の何れかに切り替える切替レバー326を、左側後輪ギアケース200Lから外側に突き出した左側後輪シャフト341Lに取り付けられた後輪11側、即ち機体外側に配置した。
【0109】
これにより、作業者は、整地クラッチ機構320の切替操作を機体外側から容易に行うことが出来るので、作業条件に合わせた整地装置の切替に時間がかからず、作業能率が向上する。
【0110】
例えば、土質が柔らかいときは、切替レバー326を操作して「常時切」とすることにより、駆動する整地装置に泥土が巻き上げられて圃場をかえって荒らしてしまうことや、巻き上げた泥土が地面を見づらくすることを防止できるので、作業装置の作業精度や視認性が安定する。
【0111】
また、例えば、土質が硬く、特に旋回時の前輪10,後輪11の走行跡を残さないようにするときは、「常時入」とすることにより、直進中だけでなく旋回中にも駆動する整地装置で地面を整地することができるので、旋回位置に前輪10,後輪11が形成する凹凸が残りにくくなり、圃場端での作業精度が向上する。
【0112】
次に、
図9、
図10を用いて、ミッションケース12側から伝動される駆動力の、右側後輪ギアケース200Rにおける伝動構成について説明する。
【0113】
ここで、
図9は、右側後輪ギアケース200Rの内部における駆動力の伝達構成を示す概略平面図である。尚、
図9において、走行車体2の前側、後側、左側、及び右側をそれぞれ矢印F、B、L、及びRで表した。
【0114】
尚、
図9において、
図6に示した左側後輪ギアケース200Lと同じ構成のものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0115】
図9に示す通り、入力軸321Rを含む施肥クラッチ機構420には、ミッションケース12側から第2伝動軸230Rを介して入力軸321Rに動力が伝達される。その動力は、入力軸321Rの後端側の第1傘歯車321aRから、第2傘歯車330Rが固着されている第2回転軸340Rに伝動され、第2回転軸340Rに固着された小径ギア331Rを介して、大径ギア332Rに伝達されることにより、右側後輪シャフト341Rが回動する構成である。
【0116】
次に、施肥クラッチ機構420による、施肥伝動軸401への駆動力の入り切りの構成について説明する。
【0117】
図9に示す通り、施肥クラッチ機構420は、入力軸321Rと、その入力軸321Rに摺動自在にスプライン接続された施肥入切クラッチ422と、施肥入切クラッチ422を第1傘歯車321aR側と反対側に常時付勢する施肥付勢スプリング423と、施肥付勢スプリング423による付勢力に対抗して施肥入切クラッチ422の施肥鍔部422aを押す突起部324aRを先端に備え、入力軸321Rの軸方向に沿って矢印E方向(
図9参照)に施肥入切クラッチ422をシフトさせる切替シフター324Rと、入力軸321Rに遊嵌し、施肥入切クラッチ422の第1傘歯車321aR側とは反対側に設けられた第3傘歯車425とを備えている。
【0118】
そして、
図9に示す通り、施肥入切クラッチ422の第3傘歯車425側の面には第3クラッチ爪422bが複数形成されており、第3傘歯車425の施肥入切クラッチ422側の面には、第3クラッチ爪422bと嵌合するべく第4クラッチ爪425aが複数形成されている。
【0119】
さらに、切替シフター324Rの根元部324bRは、施肥装置5の駆動力を切り替える施肥切替モータ426aにケーブル427を介して連結されており、苗植付部4の昇降に連動して施肥入切クラッチ422を切り替える構成とする。
【0120】
これにより、苗植付部4が上昇する際に施肥装置5の駆動を停止させることができるので、苗の植付を行わない箇所に肥料が供給されることが防止され、肥料の消費量が抑えられる。
【0121】
施肥装置5が供給する肥料は、作業者が圃場の成分や栽培する作物に合わせて変更するが、肥料は成分が異なると比重も異なるので、施肥装置5の肥料の供給量の位置調節が同一であっても、実際に供給される肥料の量が設定に比べて多くなったり少なくなったりすることがある。これを防止するには、作業前に施肥装置5から肥料の供給を行う、所謂試し繰出しを行い、肥料の供給量を作業条件に適した量に設定する必要がある。
【0122】
このとき、走行車体2の副変速伝動を操作し、走行伝動を遮断して苗植付部4、施肥装置5及び整地ローター27に駆動力を供給する「走行中立」状態にする必要があるが、施肥装置5は苗植付部4が駆動していないと駆動しない構成となっているので、試し繰出し作業を行う際、苗植付部4から苗を下ろす必要があり、余分な作業が生じる問題がある。苗が苗植付部4に載っていると、試し繰出しの際に苗が掻き取られ、余分に消費されてしまう問題がある。さらに、エンジンを作動させる必要があるので、余分な燃料が必要になる。
【0123】
上記の問題を生じさせること無く試し繰出しを行うべく、切替シフター324Rの根元部324bR側に、試し繰出しレバー426を着脱可能に構成する。そして、施肥切替モータ426aを作動させて施肥入切クラッチ422を入状態としてから、試し繰出しレバー426を時計回りまたは反時計回りに回転操作すると、施肥伝動軸401が回転し、施肥装置5から肥料が供給される。
【0124】
施肥入切クラッチ422の切替シフター324Rの根元部324bRは、右側の後輪ギアケース200Rから機体外側に向かって突出しているので、試し繰出しレバー426の着脱を妨げる部品が少なく、着脱作業が容易になると共に、試し繰出しレバー426の操作性が妨げられることが無く、試し繰出し作業能率や、繰出し量が安定するので、施肥精度が向上する。
【0125】
なお、試し繰出しレバー426をケーブル427を介して切替シフター324Rの根元部324bRと接続し、施肥入切クラッチ422の入切操作を行う機能を持たせてもよい。
【0126】
これにより、作業者が、切替シフター324Rの根元部324bR側に連結された施肥切替レバー426を操作して、切替シフター324を一方側(
図9中では、右側)にシフトさせると、施肥入切クラッチ422が同じ方向(
図9中では、右側)にシフトして、第3クラッチ爪422bと第4クラッチ爪425aの嵌合が外れるので、入力軸321の回動による駆動力は、第3傘歯車425には伝動されない。従って、この場合、施肥装置5側には駆動力は伝達されない。
【0127】
一方、作業者が、切替シフター324の根元部324b側に連結された施肥切替レバー426を操作して、
図9中において、切替シフター324を他方側(
図9中では、左側)にシフトさせると、施肥入切クラッチ422が同じ方向(
図9中では、左側)にシフトして、第3クラッチ爪422bと第4クラッチ爪425aが嵌合するので、入力軸321の回動による駆動力は、第3傘歯車425に伝動される。
【0128】
そして、第3傘歯車425の回動による伝動力が、施肥伝動軸401に固着されている第4傘歯車412に伝達される。
【0129】
これにより、施肥装置5側に駆動力が伝達される。
【0130】
上記構成により、施肥切替レバー426を、右側後輪ギアケース200Rから外側に突き出した右側後輪シャフト341Rに取り付けられた後輪11側、即ち機体外側に配置した。
【0131】
これにより、作業者は、施肥クラッチ機構420の切替操作を機体外側から容易に行うことが出来るので、繰り出し時に手動でのクラッチの入り切りがし易くなる。
【0132】
尚、上記実施の形態では、左右一対の左側後輪ギアケース200L、及び右側後輪ギアケース200Rを、基部フレーム100の左右両端、及び左右一対のリンクベースフレーム42L、42Rの下端部に、それぞれ直接固定される構成としたことにより、左側後輪ギアケース200L、及び右側後輪ギアケース200Rの剛性を向上させる構成について説明したが、これに限らず例えば、左側後輪ギアケース200L及び右側後輪ギアケース200Rを一体構造(鋳物)とし、その一体構造の上面側で、左右一対のリンクベースフレーム42L、42Rの下端部と締結させる構成としても良い。これにより、左右一対のリンクベースフレーム42L、42Rとともに、一体構造の左側後輪ギアケース200L及び右側後輪ギアケース200Rの剛性も向上出来る。また、整地装置や施肥装置への駆動力を伝動する伝動軸の通る部分の周辺形状について、設計自由度が向上する。
【0133】
また、上記実施の形態では、切替シフター324を、右側後輪ギアケース200Rに収納された入力軸321の右側、即ち、右側の後輪11側に配置した構成について説明したが(
図9参照)、これに限らず例えば、右側後輪ギアケース200Rに収納された入力軸321の下側に配置する構成であっても良い。この構成により、切替シフター324周辺の泥は重力で落ちるので、切替シフター324周辺への泥溜まりが防止出来る。
【0134】
また、上記実施の形態では、本発明の走行装置の一例として、車輪を前輪及び後輪に用いた構成について説明したが、これに限らず例えば、クローラを用いた構成であっても良い。
【0135】
また、上記実施の形態では、作業装置として苗植付部4を連結した場合について説明したが、これに限らず、苗植付部以外の各種作業用装置を連結する構成であっても良い。