(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1には、本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置12が排気管10への装着状態で示されている。以下において、単に「上流側」及び「下流側」というときは、排気管10内での排気の流れ方向(矢印F1方向)における上流側及び下流側をそれぞれいうものとする。触媒コンバータ装置12は、上流側排気管10Aと下流側排気管10Bの間に取り付けられている。
【0017】
図1に示すように、触媒コンバータ装置12は、導電性及び剛性を有する材料によって形成された触媒担体14を有している。触媒担体14を構成する材料としては、導電性セラミック、導電性樹脂や金属等を適用可能であるが、本実施形態では特に導電性セラミックとしている。
【0018】
触媒担体14は、ハニカム状または波状等とした薄板を渦巻状あるは同心円状等に構成することで材料の表面積が増大された円柱状あるいは円筒状に形成されている。触媒担体14の表面には触媒(白金、パラジウム、ロジウム等)が付着されて担持されている。
【0019】
触媒は、排気管10内を流れる排気中の物質(炭化水素等)を浄化する作用を有している。なお、触媒担体14の表面積を増大させる構造は、上記したハニカム状や波状に限定されるものではない。
【0020】
触媒担体14には2枚の電極16A、16Bが貼着され、さらに電極16A、16Bにはそれぞれ端子18A、18Bが接続されている。電極16A、16B及び端子18A、18Bは、触媒担体14に給電するための給電部材の一例である。端子18A、18Bから電極16A、16Bを通じて触媒担体14に通電することで、触媒担体14を加熱できる。この加熱により、表面に担持された触媒を昇温させることで、触媒の浄化作用を高く発揮させることができるようになっている。
【0021】
触媒担体14は、外周に配置された保持マット26を介して、筒体28の内部に収容された状態で保持されている。保持マット26は、たとえばアルミナマットや樹脂マット、セラミックウール、インタラムマットやムライト等により、絶縁性と所定の弾性を有する繊維状に形成されている。
【0022】
筒体28は、本実施形態ではステンレス等の金属で成形されており、上流側の上流筒体28Aと、下流側の下流筒体28Bとが接続されて、全体として略円筒状になっている。筒体28は、上流側排気管10Aと下流側排気管10Bの間で、排気の流路の一部を成す。
【0023】
上流筒体28Aは、上流側から下流側まで一定の径を有する円筒状の収容筒30と、この収容筒30の上流端からさらに上流側に連続し、径が段階的に縮径された上流側縮径部32を有している。すなわち、触媒担体14よりも上流側で、且つ上流側排気管10Aよりも下流側に、上流側縮径部32が位置している。
【0024】
上流側縮径部32は、本発明における上流筒の一例である。
図1に示した例では、上流側縮径部32は2か所の縮径部32Cで2段階に縮径されているが、縮径部32Cの数は1つでも3つ以上でもよい。
【0025】
上流側縮径部32は、このように上流に向かって縮径される形状であるため、最も下流側の部位が、上流側縮径部32において最も大径の最大径部32Dである。すなわち、最大径部32Dは、上流側縮径部32(上流筒)において、収容筒30の内周面に最も近い部位である。
【0026】
上流側排気管10Aと、上流筒体28Aの収容筒30と、の間は、上流側円錐部材20及び接続部材22で接続されている。上流側円錐部材20は、上流側から下流側へ拡径されている。接続部材22は、円筒状の部材である。
【0027】
収容筒30の内面には、ガラスコート層44が設けられている。ガラスコート層44は、セラミック等の無機物を含有しており、電気絶縁性を有している。このガラスコート層44は、本発明における絶縁層の一例である。
【0028】
収容筒30におけるガラスコート層44の形成範囲44Eは、収容筒30の内周面において、周方向の全範囲で、且つ排気の流れ方向で連続する所定範囲(
図1に示す例では流れ方向の略全範囲)である。このガラスコート層44が設けられることで、排気中の煤は収容筒30の内面に接触しなくなる。
【0029】
さらにガラスコート層44は、本実施形態では、
図1及び
図2から分かるように、収容筒30の内周面から、上流側縮径部32の内周面を経て外周面に至る範囲(実質的に上流側縮径部32の全面)に施されている。
図2から分かるように、上流側縮径部32の最大径部32D、すなわち、収容筒30の内周面に最も近い部位が、収容筒30におけるガラスコート層44の形成範囲44Eに位置している。
【0030】
筒体28の収容筒30内には、触媒担体14の下流側に、下流筒40が設けられている。下流筒40は、触媒担体14から下流側へ離間し、筒体28の収容筒30よりもわずかに小径とされた第1円筒部40Aと、この第1円筒部40Aから下流側縮径部40Cを経て下流側に連続し、径が段第1円筒部40Aよりも小径の第2円筒部40Bを有している。
図1に示した例では、下流筒40は1か所の下流側縮径部40Cによって1段階で縮径されているが、2段階以上に縮径されていてもよい。
【0031】
下流筒40の第1円筒部40Aは、下流筒40において最も大径の最大径部40Dである。最大径部40Dは、下流筒40において、収容筒30の内周面に最も近い部位である。
図3から分かるように、下流筒40の最大径部40D、すなわち、収容筒30の内周面に最も近い部位が、収容筒30のガラスコート層44の形成範囲44Eに位置している。
【0032】
下流筒40の第1円筒部40Aの外周には、保持マット42が装着されている。下流筒40は、保持マット42によって、筒体28の内部に収容された状態で保持されている。保持マット42は、保持マット26と同様に、たとえばアルミナマットや樹脂マット、セラミックウール、インタラムマットやムライト等により、絶縁性と所定の弾性を有する繊維状に形成されている。
【0033】
図1に示すように、下流筒体28B内には、上流側から順に酸素濃度センサ46及び第2触媒担体48が設けられる。酸素濃度センサ46は排気中の酸素濃度を検知し、データを図示しない制御装置に送る。制御装置では、このデータとエンジンの状態などから、たとえば、触媒担体14への供給電力の調整を行う。
【0034】
第2触媒担体48には、たとえば、触媒担体14の触媒と同じか、又は更に他の触媒が収容されている。そして、上流触媒コンバータ18で処理しない排気中の成分を第2触媒担体48の触媒で浄化できる。なお、第2触媒担体48は、絶縁性の材料で構成されており、通電により昇温される構成ではない。
【0035】
第2触媒担体48の外周には、保持マット50が装着されている。第2触媒担体48は、保持マット50によって、下流筒体28Bの内部に収容された状態で保持されている。
【0036】
保持マット50は、保持マット26、42と同様に、たとえばアルミナマットや樹脂マット、セラミックウール、インタラムマットやムライト等により、絶縁性と所定の弾性を有する繊維状に形成されている。保持マット26、42、50は同じ材質でもよいし、それぞれ異なる材質でもよい。
【0037】
次に、本実施形態の触媒コンバータ装置12の作用を説明する。
【0038】
図1に示すように、触媒コンバータ装置12は、筒体28が排気管10の途中(上流側排気管10Aと下流側排気管10Bの間)で、排気管10と同心になるように取り付けられている。触媒担体14の内部を排気が通過すると、触媒担体14に担持された触媒により、排気中の物質(炭化水素)等が浄化される。
【0039】
本実施形態の触媒コンバータ装置12では、端子18A、18B及び電極16A、16Bによって触媒担体14に通電し、触媒担体14を加熱することで、触媒担体14に担持された触媒を昇温させ、浄化作用をより高く発揮させることができる。たとえば、エンジンの始動直後等、排気の温度が低い場合には、あらかじめ触媒担体14への通電加熱を行うことで、エンジン始動初期における触媒の浄化性能を確保できる。
【0040】
筒体28の収容筒30の内周面には、ガラスコート層44が施されており、筒体28の絶縁性が高められている。したがって、触媒担体14への通電時に電流が筒体28へ漏れることが抑制される。これにより、触媒担体14への通電量を確保し、触媒担体14を効果的に昇温させることができる。
【0041】
排気中には、たとえばエンジンの低温始動時等にカーボンが含まれることがある。排気中のカーボンの一部は、上流側縮径部32に煤として堆積される。ここで、排気の熱により上流側縮径部32が昇温されることで、堆積した煤を燃焼させる(焼き切る)ことができる。
【0042】
特に、本実施形態の触媒コンバータ装置12では、上流側縮径部32の径が上流側に向かって縮径されている。これにより、上流側縮径部32の内側を流れる排気に渦が生じるので、縮径されていない(一定径の円筒状の)構造と比較して、上流側縮径部32が排気から熱を受けやすくなる。上流側縮径部32の温度が上昇しやすくなるので、上流側縮径部32に付着したカーボンの燃焼を促進できる。
【0043】
また、排気中のカーボンの一部は、下流筒40にも煤として堆積されることがある。そして、排気の熱により下流筒40が昇温されることで、堆積した煤を燃焼させる(焼き切る)ことができる。
【0044】
特に、本実施形態の触媒コンバータ装置12では、下流筒40にも下流側縮径部40Cが設けられているので、下流側縮径部40Cが設けられていない下流筒(一定の径を有する円筒状の部材)と比較して、下流側縮径部40Cにおいて排気の流速が上昇する。これにより、下流筒40の温度が上昇しやすくなるので、下流筒40に付着したカーボンの燃焼を促進できる。
【0045】
また、本実施形態では、収容筒30と上流側縮径部32とを、継ぎ目のない一体的な部材として構成しているので、収容筒30と上流側縮径部32とを別体とした構造と比較して熱容量が小さい。このため、触媒担体14から収容筒30及び上流側縮径部32に移動する熱量が少なく、触媒担体14を効果的に昇温できる。
【0046】
本実施形態の触媒コンバータ装置12では、
図2から分かるように、上流側縮径部32の最大径部32D、すなわち、収容筒30の内周面に最も近い部位が、収容筒30におけるガラスコート層44の形成範囲44Eに位置している。また、
図3から分かるように、下流筒40の最大径部40D、すなわち、収容筒30の内周面に最も近い部位が、収容筒30におけるガラスコート層44の形成範囲44Eに位置している。したがって、上流側縮径部32や下流筒40に堆積した煤が収容筒30に接触することが抑制される。これにより、たとえば、堆積した煤が触媒担体14に接触しても、収容筒30には接触しないので、煤によって、電極16A、16B間の電気抵抗が低くなる(あるいは短絡される)ことを抑制できる。たとえば、煤が触媒担体14よりも下流側で、且つ収容筒30の内周面において、周方向に連続して堆積されても、この煤による短絡を抑制できる。
【0047】
しかも、触媒担体14の上流側でガラスコート層44を覆うように煤が堆積した場合でも、上流側縮径部32の最大径部32D、すなわち、収容筒30の内周面に最も近い部位が、収容筒30におけるガラスコート層44の形成範囲44Eに位置している。このため、上流側縮径部32の熱により、ガラスコート層44を覆う煤を燃焼できる。
【0048】
同様に、触媒担体14の下流側でガラスコート層44を覆うように煤が堆積した場合でも、下流筒40の最大径部40D、すなわち、収容筒30の内周面に最も近い部位が、収容筒30におけるガラスコート層44の範囲に位置している。このため、下流筒40の熱により、絶縁層を覆う煤を燃焼できる。このように、触媒担体14の上流側及び下流側でガラスコート層44を覆うように堆積した煤を燃焼することで、煤による短絡をより効果的に抑制できる。
【0049】
図4には、本発明の第2実施形態の触媒コンバータ装置62が示されている。第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0050】
第2実施形態の触媒コンバータ装置62では、第1実施形態の下流筒40に代えて、下流担体64が設けられている。下流担体64は、たとえば、触媒担体14や第2触媒担体48の触媒と同じか、又は更に他の触媒が収容されている。そして、触媒担体14の触媒で処理しない排気中の成分を下流担体64の触媒で浄化できる。なお、下流担体64は、絶縁性の材料で構成されており、通電により昇温される構成ではない。
【0051】
下流担体64の外周には、保持マット66が装着されている。下流担体64は、保持マット66によって、上流筒体28Aの内部に収容された状態で保持されている。
【0052】
保持マット66は、保持マット26、42、50と同様に、たとえばアルミナマットや樹脂マット、セラミックウール、インタラムマットやムライト等により、絶縁性と所定の弾性を有する繊維状に形成されている。保持マット66は、保持マット26、42、50は同じ材質でもよいし、異なる材質でもよい。
【0053】
図5に示すように、下流担体64は全体として円柱状に形成されており、外周面の全体が最大径部64Dである。そして、下流担体64の最大径部64D、すなわち、収容筒30の内周面に最も近い部位が、収容筒30のガラスコート層44の形成範囲44Eに位置している。
【0054】
第2実施形態の触媒コンバータ装置62においても、第1実施形態の触媒コンバータ装置12と同様の作用効果を奏する。
【0055】
さらに、第2実施形態の触媒コンバータ装置62では、下流担体64の触媒によって、排気をさらに浄化することが可能である。
【0056】
しかも、第2実施形態の触媒コンバータ装置62では、収容筒30の内周面のガラスコート層44によって上記した短絡を抑制しており、下流担体64の周囲にはガラスコートを施す必要がない。下流担体64は、たとえば収容筒30と比較して、外気に触れる部分がないため収容筒30と比較して高い耐熱性が求められるが、ガラスコート層を施さないことで、耐熱性が高くなる。
【0057】
また、第2実施形態の触媒コンバータ装置62では、下流担体64が熱源として作用する。すなわち、下流担体64に排気の熱が作用して下流担体64が昇温されると、たとえがエンジン停止等によって排気が流れない状態でも、下流担体64が熱エネルギを保持する。そして、下流担体64の熱が触媒担体14に作用することで、触媒担体14の温度低下を抑制できる。さらに、エンジン再駆動時にも、より少ない通電電力で、触媒担体14を所望の温度に昇温することが可能であり、消費電力の低減や、燃費の向上に寄与できる。
【0058】
さらに、第2実施形態では、下流担体64の触媒によって排気を浄化する際に反応熱が生じる。下流担体64は、この反応熱によって昇温される。これにより、下流担体64に堆積した煤を燃焼させる効果が、より高くなる。