(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044536
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】高炉装入物検出装置
(51)【国際特許分類】
C21B 7/24 20060101AFI20161206BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20161206BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
C21B7/24
C21B5/00 302
F27D21/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-271734(P2013-271734)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-124436(P2015-124436A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2015年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】平田 丈英
(72)【発明者】
【氏名】野内 泰平
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−204791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/24
C21B 5/00
F27D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉に装入される装入物の状態を検出する高炉装入物検出装置であって、
前記装入物からの近赤外領域の反射波を分光してスペクトルを取得する分光部と、
前記分光部で取得されたスペクトルから前記装入物の種類を判別する種類判別部と、
前記種類判別部で判別された種類の装入物の存在領域から当該種類の装入物の粒度を検出する粒度検出部、
及び前記種類判別部で判別された種類の装入物の前記分光部で取得されたスペクトルから当該種類の装入物の水分量を検出する水分量検出部、
及び前記種類判別部で判別された種類の装入物の前記分光部で取得されたスペクトルから当該種類の装入物の水分量を検出し、当該水分量から当該種類の装入物の粉率を検出する粉率検出部の少なくとも2つ以上と
を備えたことを特徴とする高炉装入物検出装置。
【請求項2】
前記近赤外領域の反射波として、1000〜1500nmを含む波長帯域を分光することを特徴とする請求項1に記載の高炉装入物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉に装入される装入物の状態を検出する高炉装入物検出装置に関し、例えば高炉への装入物であるコークス、鉱石(鉄鉱石)、焼結鉱が夫々どの程度、どのような状態で高炉に装入されているかを検出するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉の炉頂部から高炉内に装入される装入物の量や性状、例えば粒度分布、水分量、粉率などの管理は十分とはいえないのが現状である。例えば高炉の炉頂上方に配置されたコンベヤから高炉内に装入される装入物の状態を検出することができれば、例えば高炉の炉内通気状態を管理することができ、高炉操業を安定化することも可能である。このような高炉装入物検出装置としては、例えば下記特許文献1及び2に記載されるものがある。このうち特許文献1に記載される高炉装入物検出装置は、原料貯蔵層の排出口を囲むようにコイルセンサを配置し、原料の排出に伴って変化するコイルセンサの出力値に基づいて原料の混合度を検出するものである。また、下記特許文献2に記載される高炉装入物検出装置は、カメラで撮像した画像に対して画像処理を行い、コークスの粒度分布を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4802739号公報
【特許文献2】特開2003−83868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載される高炉装入物検出装置は装入物の混合度を検出するだけであり、特許文献2に記載される高炉装入物検出装置はコークスの粒度を検出するだけのものであることから、高炉操業を安定化するためには装入物の情報が不足する。また、前記特許文献2に記載される高炉装入物検出装置は、コークスの粒度を検出するだけであるため、高炉のようにコークスのみならず、鉱石や焼結鉱が混合されて装入される場合には、粒度検出のための画像処理のパラメータが夫々で異なるため、夫々の粒度を適正に検出できない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、装入物の種類を特定し、夫々の状態を検出することが可能な高炉装入物検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の高炉装入物検出装置は、高炉に装入される装入物の状態を検出する高炉装入物検出装置であって、前記装入物からの近赤外領域の反射波を分光してスペクトルを取得する分光部と、前記分光部で取得されたスペクトルから前記装入物の種類を判別する種類判別部と、前記種類判別部で判別された種類の装入物の存在領域から当該種類の装入物の粒度を検出する粒度検出部、及び前記種類判別部で判別された種類の装入物の前記分光部で取得されたスペクトルから当該種類の装入物の水分量を検出する水分量検出部、及び前記種類判別部で判別された種類の装入物の前記分光部で取得されたスペクトルから当該種類の装入物の水分量を検出し、当該水分量から当該種類の装入物の粉率を検出する粉率検出部の少なくとも2つ以上とを備えたことを特徴とするものである。
また、前記近赤外領域の反射波として、1000〜1500nmを含む波長帯域を分光することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
而して、本発明の高炉装入物検出装置によれば、装入物からの近赤外領域の反射光を分光してスペクトルを取得し、その取得されたスペクトルから装入物の種類を判別する。装入物の種類が判別されたら、その種類の装入物の存在領域を例えば画像から求めて粒度を検出する。また、装入物の種類が判別されたら、その種類の装入物のスペクトルから当該種類の装入物の水分量を検出する。また、装入物の種類が判別されたら、その種類の装入物のスペクトルから当該種類の装入物の水分量を検出し、スペクトルから求めた装入物の水分量と当該装入物の粉率とは一意の関係にあるから、その水分量から当該種類の装入物の粉率を検出する。従って、装入物の種類を特定し、その種類の装入物の粒度、水分量、粉率を検出することができるので、これらに基づいて、例えば高炉炉内通気性を管理して高炉操業を安定化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の高炉装入物検出装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図1の高炉装入物検出装置で検出された装入物反射光の分光スペクトルの説明図である。
【
図3】水分量が変化したときの鉱石反射光の分光スペクトルの説明図である。
【
図4】水分量が変化したときのコークス反射光の分光スペクトルの説明図である。
【
図5】水分量が変化したときの焼結鉱反射光の分光スペクトルの説明図である。
【
図6】検出された水分量と粉率の相関を示す説明図である。
【
図7】
図1の高炉装入物検出装置で検出された装入物の種類の正解率の説明図である。
【
図8】
図1の高炉装入物検出装置で検出された装入物の水分量と実際値の相関を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の高炉装入物検出装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の高炉装入物検出装置の概略構成図である。高炉1では、炉頂部から鉱石(鉄鉱石)、コークス、焼結鉱が装入物として装入され、それらの炉内堆積物に対して炉下部の羽口2から熱風を送風し、装入物の還元、即ち製銑が行われる。炉床部に流れ落ちた溶銑は、溶滓と共に、高炉2の炉底部外周に形成された出銑口から出銑される。
【0010】
本実施形態では、鉱石、コークス、焼結鉱といった装入物を高炉1の炉頂部から装入するために、高炉1の炉頂部上方にコンベヤ3を配置している。コンベヤ3で搬送された装入物は、一旦、ホッパー(バンカーともいう)4に投入され、そこから回転式分配装置5を介して、炉内に均等に装入される。本実施形態では、コンベヤ3の上方にカメラ6を配置し、このカメラ6で捉えたコンベヤ3上の装入物の反射光から、装入物の種類や大きさ、水分量などを検出する。本実施形態では、安定した光量を得るために証明が必要であるが、必要に応じて予め設定された波長域の照明を用いてもよい。
【0011】
カメラ6は、単に撮像領域を撮像するというだけのものではなく、所謂ラインセンサなどと呼ばれるセンサの一種で、例えばコンベヤ3の搬送方向と直交方向に向けて一次元的に捉えた装入物反射光のうち、近赤外領域の反射光を各画素毎に分光してスペクトルを取得することができる。このように近赤外領域の反射光を分光して取得した装入物のスペクトルを、例えばホストコンピュータのような高度な演算処理機能を有する演算処理装置7に取り込み、この演算処理装置7によって装入物の種類の判別、種類が判別された装入物の粒度、種類が判別された装入物の水分量、種類が判別された装入物の粉率を検出する。
【0012】
演算処理装置7には、装入物の種類の判別を行う装入物種類判別部8、種類が判別された装入物の粒度を検出する粒度検出部9、種類が判別された装入物の水分量を検出する水分量検出部10、種類が判別された装入物の粉率を検出する粉率検出部11が構築されている。これらの判別部や検出部は、ソフトウエアによる演算処理で構成される。
図2には、種類毎の装入物反射光の分光スペクトルを示す。赤外分光法では、検出物の表面状態が複雑である場合には、得られる分光スペクトルにバラツキが生じる。そこで、例えば装入物の種類毎に多数の分光スペクトルを種々の条件でサンプリングしてデータベースに蓄積し、分散を正規化したものが
図2である。この装入物の種類に応じた分光スペクトルの基準値を用いて、装入物種類判別部8では装入物の種類の判別を行う。
【0013】
このような装入物の種類に応じた反射光の分光スペクトルの基準値を用いることで、例えば現在得られた反射光の分光スペクトルが鉱石、コークス、焼結鉱の何れであるかを判別することができる。例えば鉱石は見た目に赤褐色であり、コークスや焼結鉱の見た目は灰色である。そのため、コークスや焼結鉱の反射光の分光スペクトルのパターンに対し、鉱石の反射光の分光スペクトルのパターンは特徴的である。従って、得られた反射光の分光スペクトルが鉱石の反射光の分光スペクトルの基準値に類似していれば、それは鉱石であると判別することができる。一方、コークスの反射光の分光スペクトルのパターンと焼結鉱の反射光の分光スペクトルのパターンとは類似している。しかしながら、両者には、特に1000〜1200nmの波長領域に明確なパターンの差があり、この部分を得られた反射光の分光スペクトルと比較することで、コークスか焼結鉱かを判別することができる。
【0014】
このように装入物の種類の判別が行われたら、粒度検出部9で、各装入物の粒度(大きさ)の検出を行う。この装入物の粒度検出は、例えばカメラ6で得られた装入物の撮像情報(画像)を用いて、例えば前記特許文献2に記載される粒度検出方法を適用することができる。この場合、既に装入物の種類が判別されているので、判別された装入物の種類に応じて画像処理のパラメータを適切に設定することが可能となり、結果的に装入物の存在領域を明確にして粒度を適正に検出することが可能となる。また、この他にも、一般的な画像処理によって画像データを二値化し、境界を抽出した装入物の存在領域の大きさから装入物の粒度を検出する方法も挙げられる。
【0015】
一方、判別された装入物の種類に基づいて、その装入物の水分量の検出を水分量検出部10で行う。
図3には鉱石の、
図4にはコークスの、
図5には焼結鉱の、夫々水分量が変化したときの反射光の分光スペクトルを示す。何れも、1450nm近傍、及び1950nm近傍の水の吸収波長帯において、水分量の変化に伴って分光スペクトルの変化が見られる。従って、種々の水分量の分光スペクトルを各装入物の種類毎に多数サンプリングしてデータベースに蓄積し、得られた反射光の分光スペクトルを各装入物の種類毎に設定した水分量毎の分光スペクトルと比較して、その装入物の水分量を検出することができる。なお、前述した1000〜1200nmにおけるコークスと焼結鉱の夫々の反射光の分光スペクトルの特徴、及び1450nm近傍の水の吸収波長帯から、反射光の分光領域を1000〜1500nmとしてもよい。
【0016】
また、各装入物の水分量を検出したら、その水分量を用いてその装入物の粉率を粉率検出部11で検出する。
図6には、装入物の水分量と粉率の相関を示す。図では、装入物の水分量と粉率の関係を表示しているが、前述のようにして装入物の水分量が求められれば、その装入物の粉率も検出することができる。
装入物の粒度、水分量、粉率は、高炉の炉内通気性に影響を及ぼす。具体的には、粒度が小さく、水分量が多く、粉率が大きいほど、炉内通気性が低下する。炉内通気性の低下は、高炉操業の不安定化に繋がるから、これらの装入物性状を把握することは、高炉操業の安定化を可能とする。本実施形態の高炉装入物検出装置では、高炉装入物の種類を判別するだけでなく、更にそれらの装入物の粒度、水分量、粉率を検出することができるので、高炉操業の安定化を図ることができる。
【0017】
図7には、本実施形態の高炉装入物検出装置で検出された装入物の種類の正解率を示す。前述したように、鉱石の反射光の分光スペクトルのパターンは明確な特徴を有するために、判別の正解率は100%であった。一方、コークスと焼結鉱とでは、分光スペクトルのパターンが類似しているものの、前述のように1000〜1200nmの波長域において波長に対する変化率に差があるため、若干の誤差はあるものの90%を超える正解率であった。また、
図8には、本実施形態の高炉装入物検出装置で検出された装入物の水分量と実際値の相関を示す。同図から明らかなように、バラツキはあるものの、水分量を検出することができている。
【0018】
このように本実施形態の高炉装入物検出装置では、装入物からの近赤外領域の反射光を分光してスペクトルを取得し、その取得されたスペクトルから装入物の種類を判別する。装入物の種類が判別されたら、その種類の装入物の存在領域を例えば画像から求めて粒度を検出する。また、装入物の種類が判別されたら、その種類の装入物のスペクトルから当該種類の装入物の水分量を検出する。また、装入物の種類が判別されたら、その種類の装入物のスペクトルから当該種類の装入物の水分量を検出し、スペクトルから求めた装入物の水分量と当該装入物の粉率とは一意の関係にあるから、その水分量から当該種類の装入物の粉率を検出する。従って、装入物の種類を特定し、その種類の装入物の粒度、水分量、粉率を検出することができるので、これらに基づいて、例えば高炉炉内通気性を管理して高炉操業を安定化することが可能となる。
【符号の説明】
【0019】
1 高炉
2 羽口
3 コンベヤ
4 ホッパー
5 分配装置
6 カメラ
7 演算処理装置
8 装入物種類判別部
9 粒度検出部
10 水分量検出部
11 粉率検出部