特許第6044537号(P6044537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6044537アクリル変性ポリオレフィンが極性溶媒に分散している非水分散液及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044537
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】アクリル変性ポリオレフィンが極性溶媒に分散している非水分散液及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/00 20060101AFI20161206BHJP
   C08F 8/46 20060101ALI20161206BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20161206BHJP
   C09D 151/06 20060101ALN20161206BHJP
   C09D 5/02 20060101ALN20161206BHJP
【FI】
   C08F255/00
   C08F8/46
   C08F8/14
   !C09D151/06
   !C09D5/02
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-512035(P2013-512035)
(86)(22)【出願日】2012年9月13日
(86)【国際出願番号】JP2012073422
(87)【国際公開番号】WO2013080629
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-262173(P2011-262173)
(32)【優先日】2011年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】柏原 健二
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−157542(JP,A)
【文献】 特表2004−500441(JP,A)
【文献】 特開2009−221466(JP,A)
【文献】 特開平10−204372(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/108753(WO,A1)
【文献】 特開2002−188042(JP,A)
【文献】 特開2002−020674(JP,A)
【文献】 特開2002−327145(JP,A)
【文献】 特開2004−269872(JP,A)
【文献】 特表2010−516847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F251−289、291−297
C09D151
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性ポリプロピレン及び酸変性プロピレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも1種と、酸変性部分と反応する官能基を有する不飽和結合含有化合物との反応物、(メタ)アクリル酸系モノマーグラフト共重合しているアクリル変性ポリオレフィンがアルコール系の極性溶媒のみに分散している非水分散液。
【請求項2】
前記不飽和結合含有化合物は、水酸基を含有する不飽和結合含有化合物及びエポキシ基を含有する不飽和結合含有化合物である、請求項1に記載の非水分散液。
【請求項3】
アクリル変性ポリオレフィンがアルコール系の極性溶媒のみに分散している非水分散液の製造方法であって、酸変性ポリプロピレン及び酸変性プロピレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも1種に、酸変性部分と反応する官能基を有する不飽和結合含有化合物を反応させた後に、(メタ)アクリル酸系モノマーをグラフト共重合することにより得られるアクリル変性ポリオレフィンをアルコール系の極性溶媒のみに分散させることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル変性ポリオレフィンが極性溶媒に分散している非水分散液及びその製造方法に関する。アクリル変性ポリオレフィンは、ポリオレフィン基材に対する接着付与成分(バインダー成分)として塗料、インキ、接着剤等の用途で幅広く利用されている。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂は、優れた性質を持ち安価であることから、自動車部品等に多量に使用されている。しかしながら、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等の極性を有する合成樹脂とは異なり、非極性で且つ結晶性であるため、塗装や接着が困難であるという問題を有する。
【0003】
従来、ポリオレフィン系樹脂に対する接着性に優れたコーティング組成物などとして、アクリル変性ポリオレフィンを含有する組成物が知られている(特許文献1、2等)。
【0004】
しかしながら、従来公知のアクリル変性ポリオレフィンを含有する組成物は、いずれも非極性溶媒であるトルエン、キシレン等にアクリル変性ポリオレフィンを溶解した態様に実質的に限定されており、極性を有する塗料用樹脂又は塗料と混合した場合には、十分な相溶性が得られず、層分離が生じ易いという問題がある。また、トルエン、キシレン等は環境問題になり得る芳香族系溶媒であるため、望ましくは使用を回避すべきである。
【0005】
以上より、アクリル変性ポリオレフィンが極性溶媒に分散している非水分散液の開発が進められているが、現状では十分な性能を有する非水分散液は未だ開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−309161号公報
【特許文献2】特許第4225318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アクリル変性ポリオレフィンが極性溶媒に分散している非水分散液及びその製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のアクリル変性ポリオレフィンが極性溶媒に分散して非水分散液となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は下記の非水分散液及びその製造方法に関する。
1.酸変性ポリプロピレン及び酸変性プロピレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも1種と、酸変性部分と反応する官能基を有する不飽和結合含有化合物との反応物に、(メタ)アクリル酸系モノマーがグラフト共重合しているアクリル変性ポリオレフィンがアルコール系の極性溶媒のみに分散している非水分散液。
.前記不飽和結合含有化合物は、水酸基を含有する不飽和結合含有化合物及びエポキシ基を含有する不飽和結合含有化合物である、上記項1に記載の非水分散液。
.アクリル変性ポリオレフィンがアルコール系の極性溶媒のみに分散している非水分散液の製造方法であって、酸変性ポリプロピレン及び酸変性プロピレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも1種に、酸変性部分と反応する官能基を有する不飽和結合含有化合物を反応させた後に、(メタ)アクリル酸系モノマーをグラフト共重合することにより得られるアクリル変性ポリオレフィンをアルコール系の極性溶媒のみに分散させることを特徴とする製造方法。
【0010】
以下、本発明の非水分散液及びその製造方法について詳細に説明する。
【0011】
本発明の非水分散液は、アクリル変性ポリオレフィンが極性溶媒に分散している非水分散液であって、前記アクリル変性ポリオレフィンは、酸変性ポリオレフィンに、酸変性部分と反応する官能基を有する不飽和結合含有化合物を反応させた後に、(メタ)アクリル酸系モノマーをグラフト共重合することにより得られることを特徴とする。
【0012】
上記特徴を有する本発明の非水分散液は、特に酸変性ポリオレフィンに、酸変性部分と反応する官能基を有する不飽和結合含有化合物を反応させた後に、(メタ)アクリル酸系モノマーをグラフト共重合することによりアクリル変性ポリオレフィンを得るため、かかるアクリル変性ポリオレフィンは極性溶媒に分散可能である。そのため、本発明の非水分散液は極性を有する塗料用樹脂又は塗料と混合した場合にも相溶性が得られる点で層分離の発生が抑制されている上、環境問題になり得る芳香族系溶媒の使用を回避することができる点でも優位性がある。
【0013】
本発明で用いる酸変性ポリオレフィンは限定的ではないが、ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも1種に、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフト共重合することにより得られるものが好ましい。
【0014】
プロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα−オレフィンを共重合したものである。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどを1種又は数種用いることができる。これらのα−オレフィンの中では、エチレン、1−ブテンが好ましい。プロピレン−α−オレフィン共重合体のプロピレン成分とα−オレフィン成分との比率は限定されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0015】
α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも酸無水物が好ましく、無水マレイン酸、無水イタコン酸がより好ましい。グラフト共重合する量は、0.1〜10重量%が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。
【0016】
ポリプロピレン又はプロピレン−α−オレフィン共重合体にα,β−不飽和カルボン酸又はその酸無水物をグラフト共重合する方法としては、溶液法や溶融法などの公知の方法が挙げられる。
【0017】
溶液法としては、例えば次のように行う。即ち、ポリプロピレン又はプロピレン−α−オレフィン共重合体を、トルエン等の芳香族有機溶媒に100〜180℃で溶解させた後、α,β−不飽和カルボン酸又はその酸無水物を添加し、更にラジカル発生剤として水素引き抜き効果が高い有機過酸化物を一括又は分割で添加して反応させる。この反応液をアセトン等のケトン系有機溶媒に投入して樹脂を取り出し、乾燥することにより酸変性ポリオレフィンを得る。
【0018】
溶融法としては、例えば次のように行う。即ち、ポリプロピレン又はプロピレン−α−オレフィン共重合体を、融点以上に加温溶融した後、α,β−不飽和カルボン酸又はその酸無水物と、ラジカル発生剤として有機過酸化物を添加して反応させる。反応後、溶融状態で減圧して未反応のα,β−不飽和カルボン酸又はその酸無水物を除去し、酸変性ポリオレフィンを得る。溶融法では、ニーダー、押し出し機などを使用する。
【0019】
ラジカル発生剤として使用される有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられ、反応温度と分解温度によって選定することができる。
【0020】
本発明で用いる酸変性ポリオレフィンは、更に塩素化されていてもよい。即ち、酸変性塩素化ポリオレフィンとして用いてもよい。
【0021】
この塩素化は、例えば、塩素系溶媒中に酸変性ポリオレフィンを溶解し、ラジカル触媒の存在下又は不存在下で、塩素含有率が16〜35重量%になるまで塩素ガスを吹き込んで行うことができる。塩素系溶媒としては、例えば、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルム等が挙げられる。溶解、反応温度としては、塩素系溶媒中で酸変性ポリオレフィンが溶解する温度以上が望ましい。
【0022】
なお、ポリプロピレン又はプロピレン−α−オレフィン共重合体を酸変性することにより得られる酸変性ポリオレフィンは、酸変性に用いた酸成分がα,β−不飽和カルボン酸である場合にはジカルボキシル基を有し、酸変性に用いた酸成分がα,β−不飽和カルボン酸の酸無水物である場合には酸無水物基を有している。しかしながら、酸無水物基は、空気中や溶媒中の水分を吸収して容易に開環するため、酸変性塩素化ポリオレフィンにおいては、時間の経過とともにジカルボキシル基に変化していることがよくある。
【0023】
そこで、酸変性塩素化ポリオレフィンは、必要に応じて加熱脱水して、ジカルボキシル基を酸無水物基に変化させておくことが好ましい。
【0024】
本発明では、アクリル変性ポリオレフィンは、酸変性ポリオレフィン(酸変性塩素化ポリオレフィンの概念も含む。以下同じ。)に、酸変性部分と反応する官能基を有する不飽和結合含有化合物を反応させた後に、(メタ)アクリル酸系モノマーをグラフト共重合することにより得る。
【0025】
酸変性部分と反応する官能基を有する不飽和結合含有化合物を反応させることにより、酸変性ポリオレフィンに二重結合を導入し、それにより後続の(メタ)アクリル酸系モノマーのグラフト共重合を容易に進行させることができる。本発明では、不飽和結合含有化合物としては、官能基として水酸基を含有する不飽和結合含有化合物及びエポキシ基を含有する不飽和結合含有化合物が好ましい。
【0026】
本発明では、水酸基を含有する不飽和結合含有化合物としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸ポリプロピレングリコール等を用いることが好ましい。また、エポキシ基を含有する不飽和結合含有化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を用いることが好ましい。これらの不飽和結合含有化合物は、酸変性ポリオレフィンに対して10〜90重量%程度用いることが好ましい。
【0027】
なお、不飽和結合含有化合物を反応させる際は、酸変性ポリオレフィンの良溶媒である反応溶媒としては特に限定されず、例えば、後述の(メタ)アクリル酸系モノマーを、不飽和結合含有化合物を反応させる際の反応溶媒として好適に使用できる。この場合、不飽和結合含有化合物により酸変性ポリオレフィンに二重結合が導入された後は、反応溶媒として用いた(メタ)アクリル酸系モノマーを酸変性ポリオレフィンにグラフト共重合させることができるため、工程を簡略化することができる。反応溶媒として用いる(メタ)アクリル酸系モノマーとしてはメタクリル酸n−ブチルなどが好ましい。
【0028】
不飽和結合含有化合物を反応させて酸変性ポリオレフィンに二重結合を導入した後は、(メタ)アクリル酸系モノマーのグラフト共重合を行うことにより、酸変性ポリオレフィンにアクリル変性部分(極性基部分)を導入する。
【0029】
(メタ)アクリル酸系モノマーのグラフト共重合の方法は、二重結合が導入された酸変性ポリオレフィンを融点以上に加熱させて重合させる方法、又は有機溶媒に溶解させて反応させる重合のいずれでもよく、前述のα,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物から選ばれる少なくとも1種をグラフト共重合させる反応の場合と同様の方法及び装置で行うことができる。
【0030】
(メタ)アクリル酸系モノマーのグラフト共重合においては、グラフト共重合された状態において、酸変性ポリオレフィンと(メタ)アクリル酸系モノマーの重量比が50:50〜10:90となるようにするのが好ましい。即ち、(メタ)アクリル酸系モノマーを50〜90重量%グラフト共重合するのが好ましい。(メタ)アクリル酸系モノマーが50重量%未満では、非水分散液の調製が困難となるおそれがあり、90重量%を超えるとポリオレフィン基材に対する接着性が低下する傾向がある。
【0031】
グラフト共重合は、例えば、反応液の温度を維持し、(メタ)アクリル酸系モノマーとラジカル発生剤の混合物を、二重結合が導入された酸変性ポリオレフィン溶液中に滴下させて行うことができる。
【0032】
グラフト共重合させる(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸系モノマーは、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0033】
ラジカル発生剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物を使用できる。
【0034】
上記で得られたアクリル変性ポリオレフィンは極性溶媒に容易に分散して非水分散液を調製することができる。極性溶媒(分散溶媒)としては、アルコール系、エステル系、ケトン系、グリコール系等の極性溶媒が好ましく、具体的には、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート等が挙げられる。これらの極性溶媒は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の非水分散液は、特に酸変性ポリオレフィンに、酸変性部分と反応する官能基を有する不飽和結合含有化合物を反応させた後に、(メタ)アクリル酸系モノマーをグラフト共重合することによりアクリル変性ポリオレフィンを得るため、かかるアクリル変性ポリオレフィンは極性溶媒に分散可能である。そのため、本発明の非水分散液は極性を有する塗料用樹脂又は塗料と混合した場合にも相溶性が得られる点で層分離の発生が抑制されている上、環境問題になり得る芳香族系溶媒の使用を回避することができる点でも優位性がある。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0037】
実施例1
500mLフラスコに、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体(無水マレイン酸含有率2.0重量部)15.0g、アクリル酸2−ヒドロキシエチル4.5g及びメタクリル酸n−ブチル22.5gを加えて110℃で2時間撹拌させた。その後、メタクリル酸n−ブチル22.5g及び2−プロパノール(分散溶媒)258.0gを加えた。次いで、t−ブチルパーオキシピバレート(日本油脂社製、パーブチルPV)2.1gを加えて80℃で6時間撹拌させた。その後、室温まで冷却して樹脂濃度20重量%のアクリル変性ポリオレフィンの非水分散体を317.3g得た。なお、アクリル変性ポリオレフィンのZ−平均粒子径は130nmであった。
【0038】
実施例2
500mLフラスコに、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体(無水マレイン酸含有率2.0重量部)15.0g、アクリル酸4−ヒドロキシブチル4.5g及びメタクリル酸i−ブチル18.0gを加えて110℃で2時間撹拌させた。その後、2−プロパノール(分散溶媒)150.0gを加えた。次いで、t−ブチルパーオキシピバレート(日本油脂社製、パーブチルPV)2.1gを加えて80℃で6時間撹拌させた。その後、室温まで冷却して樹脂濃度20重量%のアクリル変性ポリオレフィンの非水分散体を185.4g得た。なお、アクリル変性ポリオレフィンのZ−平均粒子径は150nmであった。
【0039】
実施例3
500mLフラスコに、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体(無水マレイン酸含有率2.0重量部)15.0g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル4.5g、メタクリル酸グリシジル3.0g及びメタクリル酸t−ブチル22.5gを加えて110℃で2時間撹拌させた。その後、メタクリル酸t−ブチル22.5g及び2−プロパノール(分散溶媒)270.0gを加えた。次いで、t−ブチルパーオキシピバレート(日本油脂社製、パーブチルPV)2.1gを加えて80℃で6時間撹拌させた。その後、室温まで冷却して樹脂濃度20重量%のアクリル変性ポリオレフィンの非水分散体を333.1g得た。なお、アクリル変性ポリオレフィンのZ−平均粒子径は130nmであった。
【0040】
実施例4
500mLフラスコに、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体(無水マレイン酸含有率2.0重量部)15.0g、アクリル酸4−ヒドロキシブチル4.5g及びメタクリル酸i−ブチル22.5gを加えて110℃で2時間撹拌させた。その後、メタクリル酸i−ブチル22.5g及び2−プロパノール(分散溶媒)150.5gを加えた。次いで、t−ブチルパーオキシピバレート(日本油脂社製、パーブチルPV)2.1gを加えて80℃で6時間撹拌させた。その後、室温まで冷却して樹脂濃度30重量%のアクリル変性ポリオレフィンの非水分散体を211.9g得た。なお、アクリル変性ポリオレフィンのZ−平均粒子径は155nmであった。
【0041】
比較例1
実施例1において分散溶媒である2−プロパノールの代わりにトルエンを用いる以外は実施例1と同様にして、アクリル変性ポリオレフィンのトルエン溶液を318.2g得た。
【0042】
試験例1
実施例1〜4で得られた非水分散体及び比較例1で得られた溶液について、極性を有する塗料用樹脂であるアクリル樹脂との相溶性を評価した。
【0043】
相溶性の評価方法及び評価基準は下記の通りとした。
【0044】
非水分散体及び溶液を、それぞれ、アクリルポリオール(大日本インキ社製、アクリディックA800)と樹脂比率が1:1となるように混合し、得られた溶液をアプリケーターにより膜厚50μmでガラス板に塗布し、80℃で30分間乾燥してフィルムを得た。
【0045】
当該フィルムの透明性により相溶性の良否を評価した。具体的には、当該フィルムが透明の場合には、極性を有する塗料用樹脂であるアクリル樹脂・アクリルポリオールを混合したときの相溶性が良好であると評価した。他方、当該フィルムが透明でない場合には、該アクリル樹脂・アクリルポリオールを混合したときの相溶性が不良であると評価した。評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】