(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記陽イオンは、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンからなる群より選択される少なくとも一つの陽イオンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の研磨剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0013】
本実施形態に係る研磨剤の製造方法は、分散剤を含み、酸化セリウムを主たる研磨材成分として含有する研磨剤の製造方法であって、使用済み研磨材スラリーに対して、六配位換算におけるイオン半径が80〜160pmである第一族元素又は第二族元素の陽イオンを用いて塩析処理し、前記酸化セリウムを凝集沈殿させて固液分離することにより研磨材成分を回収する工程、及び回収後の研磨材成分に、カルボン酸を有するアニオン性の高分子を有する分散剤を添加する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
(研磨材スラリー)
上述のように、本実施形態において研磨材スラリーとは、酸化セリウムを主成分とする研磨材と溶媒を含むものであり、研磨剤と同義であるが、以下においては、便宜上、成分調整後の研磨材スラリーを研磨剤と呼び、研磨工程で使用後で成分調整前の研磨材スラリーを単に研磨材スラリーとして区別する場合がある。前記酸化セリウムは、通常研磨剤に用いられるものであれば、特に限定されない。
【0015】
酸化セリウムの含有量は、基板用研磨剤全量に対して1〜10質量%であることが好ましく、3〜5質量%であることがより好ましい。酸化セリウムの含有量が1質量%未満であると、研磨が進行しない場合や、研磨した基板の形状が悪くなる場合があり、10質量%を超えると、生産コストがかかる場合がある。
【0016】
前記酸化セリウムの平均粒径(D
50)は、0.5〜1.5μmであることが好ましく、0.7〜1.2μmであることがより好ましい。酸化セリウムの平均粒径(D
50)が0.5μm未満であると、研磨速度が低下する可能性があり、1.5μmを超えると、研磨工程後のガラス基板に傷などが増えるおそれがある。
【0017】
ここで、前記平均粒径(D
50)とは、JIS R 1629−1997「ファインセラミックス原料のレーザー回折・散乱法による粒子径分布測定方法」に倣い、体積基準の積算分率で50%(D
50)に相当する粒子径を意味し、金属超微粉の平均粒径を表すものとして一般に用いられている。
【0018】
また、前記研磨材の他に、酸、酸化剤、殺菌剤、抗菌剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質及びpH調整剤等を含んでもよい。
【0019】
(使用済み研磨材スラリー)
よって、本実施形態において使用済み研磨材スラリーとは、前記研磨材スラリーを一回又は複数回に渡り研磨工程において使用し、その後に回収したものである。回収方法としては、例えば研磨機に備えられた貯留部に溜まっている研磨材スラリーを研磨終了後に抜き取る方法等が挙げられる。
【0020】
また、使用済み研磨材スラリーは前記研磨剤同様、酸化セリウムを主成分とする研磨材を含むものである。使用済み研磨材スラリーとしては、通常、水に対して質量比1〜10%の研磨材及びガラス成分が分散している。
【0021】
使用済み研磨材スラリーには、上記の酸化セリウム、ガラス成分以外に、分散剤や不純物成分(Al成分、Fe成分等)等が含まれている場合がある。
【0022】
以下、本実施形態に係る研磨剤の製造方法を各段階に分けて説明する。
【0023】
本実施形態では、上述したような研磨材スラリーであって、研磨工程において使用された使用済みの前記スラリーを回収し、回収した使用済スラリーを再度用いて研磨剤を製造する。
【0024】
〔研磨材成分回収工程〕
まず、上記したような手段によって回収した使用済み研磨材スラリーに対して、六配位換算におけるイオン半径が80〜160pmである第一族元素又は第二族元素の陽イオンを用いて塩析処理を行う。
【0025】
本実施形態の製造方法に係る塩析処理とは、使用済み研磨材スラリーに対して上記のようなイオン半径を有する第一族元素又は第二族元素の陽イオンを添加し、使用済み研磨材スラリーに含まれている分散剤との相互作用によって、セリウムを主成分とする研磨材を陽イオンと共に凝集させ、研磨材を沈殿させて固液分離することにより研磨材成分を得る処理のことである。
【0026】
(陽イオン)
前記陽イオンの六配位換算におけるイオン半径は80〜160pmであるが、80〜120pmであることがさらに好ましい。前記イオン半径が80pm未満である場合、イオンと分散剤の相互作用が少なく、塩析処理の効率が悪くなるおそれがある。また、前記イオン半径が160pmを超える場合、イオンと分散剤の相互作用が強くなりすぎ、分散剤が研磨材に対して作用するよりも陽イオンに対して優先的に作用するため、残存する分散材同士の相互作用が低くなりすぎることによって、塩析処理の際に研磨材の凝集性が悪化するおそれがある。
【0027】
六配位換算におけるイオン半径は80〜160pmである陽イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、マグネシウムイオン、アルカリ土類金属イオンなどが挙げられる。より具体的には、リチウムイオン(六配位換算におけるイオン半径:90pm)、ナトリウムイオン(六配位換算におけるイオン半径:116pm)、カリウムイオン(六配位換算におけるイオン半径:152pm)、マグネシウムイオン(六配位換算におけるイオン半径:86pm)、カルシウムイオン(六配位換算におけるイオン半径:114pm)、ストロンチウムイオン(六配位換算におけるイオン半径:132pm)、バリウムイオン(六配位換算におけるイオン半径:149pm)などが挙げられる。
【0028】
また、本実施形態の製造方法における塩析処理は前記第一族元素又は第二族元素の陽イオンで行う。前記第一族および第二族の元素は、水溶液中にて安定して陽イオンで存在することができるため、塩析処理が円滑に行える。
【0029】
なかでも、前記陽イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンからなる群より選択される少なくとも一つの陽イオンを用いることが好ましい。これらの陽イオンを用いることによって、より効率の良い塩析処理を行うことができる。
【0030】
前記陽イオンの対イオンとしての陰イオンは、塩化物イオンや炭酸イオン等を用いることができる。そして、前記陽イオンと陰イオンからなる塩は、使用済み研磨材スラリー中の研磨剤成分を凝集沈殿させるための凝集沈殿剤として好適に用いられる。
【0031】
前記凝集沈殿剤のうち、溶液のpH変化が小さく、沈降した研磨材及び廃液の処理が容易であるという理由から、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ヨウ化カリウム、炭酸ナトリウム等がより好ましい。
【0032】
さらに、前記使用済み研磨材スラリーに対して凝集沈殿剤を添加する際、使用済み研磨材スラリー液中の陽イオン濃度が1〜100mmol/Lの範囲内になるように添加することが好ましい。前記陽イオン濃度が1mmol/L未満であると、凝集効果が得られにくいため塩析処理の効率が悪くなりおそれがあり、100mmol/Lを超えると、再利用する際に塩が基板に残存し、分散剤を添加しても分散が行えず研磨材として使用ができなくなる可能性がある。
【0033】
(固液分離)
次に、使用済み研磨材スラリー中の研磨材と前記陽イオンとを凝集させ、研磨材を沈殿させる固液分離について説明する。
【0034】
陽イオンは前述のように凝集沈殿剤として、使用済み研磨材スラリーに添加される。使用済み研磨材スラリーに前記陽イオンを含む凝集沈殿剤を添加する手段(装置など)としては、収容した使用済み研磨材スラリーの研磨材を沈殿させることなく、良好に分散した状態で凝集沈殿剤と効果的に反応を進行させることができるものであれば、特に限定されない。
【0035】
例えば、前記添加装置としては、撹拌手段、加熱手段、温度制御手段、研磨材スラリーや凝集沈殿剤の供給手段等を備えた撹拌槽型の反応容器を用いることができる。また、研磨材スラリーと凝集沈殿剤の攪拌は、特に制限されず、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の撹拌機等を用いて行うことができる。
【0036】
続いて、凝集沈殿剤を添加された使用済み研磨材スラリーは、研磨材成分(研磨材由来の成分)と上澄み液(濾液)に固液分離される。前記上澄み液には、研磨剤中のガラス成分(Si成分)、その他の不純物成分(Al成分、Fe成分等)の大部分、分散剤の一部が可溶化又は遊離して移行している。
【0037】
固液分離の方法として、具体的には、シックナー等の沈降槽中で、前述の凝集沈殿剤を添加された使用済み研磨材スラリーを静置して研磨材粒子を沈降させて分離し、上澄み液をデカントまたは槽からオーバーフローさせる方法がある。または、機械的に、遠心分離、遠心沈降分離、濾過等により固液分離する方法がある。さらに、沈降分離と濾過等を組み合わせて固液分離を行ってもよい。なお、濾過分離の場合、研磨材粒子の粒径に応じて、濾布、セラミックフィルター、濾紙等適当な濾材を使用することができる。
【0038】
以上に説明した工程により、研磨剤成分と濾液とが固液分離される。
【0039】
(研磨剤成分)
前記回収工程において回収された研磨材成分は、酸化セリウムを主たる研磨材成分として含有する。また、回収された研磨材成分としては、前記酸化セリウムの他に凝集沈殿剤、分散剤、ガラス成分等を含むものである。
【0040】
また、本実施形態の製造方法においては、前記回収工程後の研磨材成分中における酸化セリウムの回収率は、80〜99%である。前記回収率は、研磨工程前の研磨材スラリー中の酸化セリウムの質量と、回収後の研磨材成分中の酸化セリウムの質量から求めることができる。本実施形態の製造方法では、前記範囲の回収率を達成できるため、収率良く研磨材スラリーを再使用することができる。
【0041】
(溶媒添加)
前記回収工程後の研磨材成分は、さらに溶媒を添加して研磨剤に調整してもよい。
【0042】
本実施形態の溶媒として、例えば水を使用することができる。前記水としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等が挙げられる。本実施形態の研磨材スラリー中の溶媒の含有量は、研磨材スラリーの取扱いがさらに容易になるため、55質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。
【0043】
前記溶媒は、下記の分散剤添加工程にて添加されてもよい。
【0044】
〔分散剤添加工程〕
本実施形態の分散剤添加工程は、前記回収後の研磨材成分にアニオン性の高分子を主成分とする分散剤を添加する工程である。
【0045】
本実施形態の分散剤は、前記アニオン性の高分子を含有する分散剤を添加、攪拌する方法等が挙げられる。前記研磨剤の攪拌は、特に制限されず、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の撹拌機等を用いて行うことができる。
【0046】
前記分散剤の添加量は、研磨剤全量に対して0.05〜2質量%であることが好ましく、0.1〜1質量%であることがより好ましい。前記分散剤の添加量が0.05質量%未満であると、分散効果が低くなりおそれがあり、2質量%を超えると、研磨液の物性に影響し研磨に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくない。
【0047】
また前記分散剤は、アニオン性の高分子を主成分とするものであるが、具体的には80〜100質量%含有することが好ましい。このような範囲の前記高分子を含有することによって、本発明の効果をより高めることができる。
【0048】
前記アニオン性の高分子の具体的な例としては、アクリル酸/マレイン酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、ポリ{2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸}、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジメチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アニリンスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物及びこれらの塩等が挙げられる。
【0049】
また、これらの中でも、研磨材の凝集を防ぐことでき、かつ分散性を高めることができることから、分子内にカルボキシル基を有する高分子であることがより好ましい。
【0050】
また、前記分散剤は、アクリル酸/マレイン酸共重合体が最も好ましい。これは、アクリル酸/マレイン酸共重合体におけるアニオン部位がカルボキシル基であるため、酸化セリウムの分散性に有効であるからである。
【0051】
前記アクリル酸/マレイン酸共重合体の重量平均分子量(Mw)は100〜10000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましい。前記分子量(Mw)が100未満であると、分散性が悪化して研磨加工性が悪化する可能性があり、10000を超えると、研磨材スラリーの粘性が上がり、研磨特性が悪化するおそれがある。
【0052】
本実施形態の製造方法では、上記研磨成分、分散剤、溶媒に加えて、酸、酸化剤、殺菌剤、抗菌剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質及びpH調整剤等を添加してもよい。
【0053】
また、最終的に得られる研磨剤において、主たる研磨材成分(研磨材)である酸化セリウムの含有量は、通常、前記研磨剤成分全量に対して1〜10質量%となるように、上記溶媒や上記添加剤の量を調製することが好ましい。酸化セリウムの含有量がこのような範囲であると、研磨加工性を維持できる点で好ましい。
【0054】
このようにして、本実施形態の製造方法により、分散剤を含み、酸化セリウムを主たる研磨材成分として含有する研磨剤を、使用済み研磨材スラリーを再使用することによって、効率よく製造することができる。
【0055】
本実施形態の製造方法により得られた研磨剤は、基板の製造方法におけるあらゆる研磨工程に使用できるが、その中でも基板の製造方法における粗研磨工程での使用に適している。
【0056】
本実施形態に係る研磨剤は、そのまま使用してもよいし、濃縮液であれば希釈して使用すればよい。前記濃縮液を希釈する場合、その希釈倍率は、特に制限されず、前記濃縮液における各成分の濃度(研磨材の含有量等)や研磨条件等に応じて適宜決定できる。
【0057】
本実施形態に係る研磨剤によって研磨される被研磨基板は、特に制限されないが、記録媒体として使用される記録ディスク用の基板、例えば、HDD用ガラス基板を製造するための被研磨基板が好ましい。
【0058】
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0059】
本発明の一局面である研磨剤の製造方法は、分散剤を含み、酸化セリウムを主たる研磨材成分として含有する研磨剤の製造方法であって、使用済み研磨材スラリーに対して、六配位換算におけるイオン半径が80〜160pmである第一族元素又は第二族元素の陽イオンを用いて塩析処理し、前記酸化セリウムを凝集沈殿させて固液分離することにより研磨材成分を回収する工程、及び回収後の研磨材成分に、アニオン性の高分子を有する分散剤を添加する工程を含むことを特徴とする。
【0060】
このような構成によれば、研磨材のリサイクルをより効率的に行うことができる。
【0061】
また、本発明の研磨剤の製造方法において、前記陽イオンは、六配位換算におけるイオン半径が80〜120pmであることが好適である。このような構成によれば、上記効果をより発揮し得る。
【0062】
また、本発明の研磨剤の製造方法において、前記陽イオンは、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンからなる群より選択される少なくとも一つの陽イオンであることが好適である。
【0063】
このような構成によれば、研磨特性に優れた研磨材のリサイクルをより容易に行うことができる。
【0064】
また、本発明の研磨剤の製造方法において、前記分散剤は、分子内にカルボキシル基を有する高分子であることが好適である。
【0065】
このような構成によれば、さらに、研磨材の凝集を防ぐことでき、かつその分散性を高めることができる。
【0066】
また、本発明の研磨剤の製造方法において、前記分散剤は、分子量(Mw)が100〜10000であるアクリル酸/マレイン酸共重合体であることが好適である。
【0067】
このような構成によれば、より研磨材の凝集を防ぐことができ、かつその分散性をより高めることができる。
【0068】
さらに、本発明の研磨剤の製造方法において、前記分散剤の添加量は研磨剤全量に対して0.05〜2質量%であることが好適である。
【0069】
このような構成によれば、よりいっそう凝集を防ぐことができ、かつ分散性をより高めることができる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
<実施例1>
〔ガラス基板〕
以下の各工程によって製造されたガラス基板を用意した。
【0072】
(円盤加工工程)
ガラス素材として、ガラス素材(組成は表1参照)を用い、溶融したガラス素材をプレス成形して、外径が約66mmの円板状のブランクスを作製した。ブランクスの厚みは1.05mmとした。
【0073】
【表1】
【0074】
(円盤加工工程)
円筒状のダイヤモンド砥石を備えたコアドリルを用いてブランクスの中心部に直径が20.5mmの円形の孔(中心孔)を開けた。次に、鼓状のダイヤモンド砥石を用いて、ブランクスの外周端面および内周端面を外径65mm、内径20mmに内・外径加工を行った。続いて、上記円盤加工工程後のガラス基板の外周端面および内周端面を、内外周加工機(TKV−1、舘野機械製作所製)により研削した。
【0075】
(研削工程)
前記内外周端面研削工程後のガラス基板の主表面を、両面研削機を使用して主表面の平坦度が10μmとなるよう、35μmの取り代で主表面を研削した。次に、前記ガラス基板の両表面を再び研削加工し、ガラス基板の平坦度が3μmとなるように、50μmの取り代で主表面を研削した。
【0076】
(研磨工程)
研磨材として酸化セリウムを5質量%、分散剤としてアクリル酸/マレイン酸共重合体を0.1質量%、溶媒として水を約95質量%攪拌し、研磨材スラリーを調製した。前記研磨材スラリーの平均粒径(D
50)を、レーザー回折粒度分布測定機(島津製作所株式会社製)にて測定を行うと、1.2μmであった。
【0077】
続いて、この研磨材スラリーを用いて、前述の各工程によって得られたガラス基板を以下の研磨条件により研磨した。
【0078】
(研磨条件)
研磨機:両面研磨機(HAMAI株式会社製)
研磨パッド:厚み0.8mm、平均開孔径30μm
研磨した被研磨ガラス基板の総枚数:100000枚
前記研磨工程により使用した研磨材スラリーを回収し、使用済み研磨材スラリーとして以下用いた。
【0079】
〔固液分離〕
以上の研磨工程によって使用された研磨材スラリーをタンクに50L用意し、これに対して5mol/Lに調製したマグネシウムイオンを有する塩化マグネシウム水溶液を徐々に添加して塩析を行い、凝集沈殿物を生成させた。
【0080】
凝集沈殿が起こったか否かの判断は、添加、撹拌後180分間静置する間に、沈降物と上澄みの界面が生じるかを確認することで行った。
【0081】
凝集沈殿物が確認された使用済み研磨材スラリーを、上澄み液をデカントすることによって上澄み液と凝集沈殿物とに分けた。そして、凝集沈殿物である研磨剤成分2700gを回収した。前記研磨剤成分は、酸化セリウムを2500g含有していた。
【0082】
ここで、研磨前に含まれていた酸化セリウムと、回収した研磨剤成分中に含まれる酸化セリウムの質量により酸化セリウムの回収率を求めると93%であった。
【0083】
次に、酸化セリウムの含有量が、研磨材スラリー全量に対して5質量%となるように、回収した前記研磨剤成分1000gを水で希釈した。その後、分散剤として重量平均分子量(Mw)が500であるアクリル酸/マレイン酸共重合体を2g添加し、スリーワンモーター(新東科学株式会社製)を用いて攪拌し、研磨剤1とした。
【0084】
〔分散性の評価〕
前記研磨剤1の粒径をレーザー回折粒度分布測定機(島津製作所株式会社製)で測定し、以下の評価基準で判定を行った。
【0085】
評価判定は以下の通りである。
◎:使用前の研磨材スラリーの粒径(D
50)との変化量が10%未満である。
○:使用前の研磨材スラリーの粒径(D
50)との変化量が10%以上20%未満である。
×:使用前の研磨材スラリーの粒径(D
50)との変化量が20%以上である。
【0086】
<実施例2〜8、比較例1〜3>
実施例2〜8、比較例1〜3では、下記表2に示すような陽イオン(塩)の種類、イオン半径、陽イオン添加量、分散剤の種類、その分子量及びその添加量を代えて研磨材成分を分散させた他は前記実施例1と同様にして研磨剤2〜11を調製した。
【0087】
そして、実施例2〜8、比較例1〜3の前記各研磨剤2〜11を用いたこと以外は、前記実施例1と同様に酸化セリウムの回収率を求め、かつ粒径測定を行い前述の評価を行った。
【0088】
以上の実施例1〜8,比較例1〜3によって得られた結果を下記表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
上記表2に示すとおり、実施例1〜4の研磨剤1〜4は、六配位換算におけるイオン半径が80〜160pmであるマグネシウムイオンを用いて塩析を行い、凝集沈殿物である研磨材成分を分散剤としてアニオン性の高分子を有するアクリル酸/マレイン酸共重合体を用いて分散させたため、使用前の研磨材スラリーと比較しても回収率が良好であり、分散性の劣らない研磨剤を得ることができた。特に、分子量(Mw)が1000〜5000のアクリル酸/マレイン酸共重合体を用いて分散させた実施例2,3は、使用前の研磨材スラリーと同等の分散性を得ることができたため、研磨能力の高い研磨剤を得ることができたと考えられる。
【0091】
また、実施例5〜6のカルボキシル基を有さないアニオン性の高分子を主成分とする分散剤を用いた研磨剤5〜6についても、分散性の劣らない研磨剤を得ることができたと考えられる。さらに、実施例7〜8の研磨剤7〜8についても、六配位換算におけるイオン半径が80〜160pmであるカルシウムイオン、カリウムイオンを用いて塩析を行ったため、分散性の劣らない研磨剤を得ることができたと考えられる。
【0092】
一方で、比較例1の研磨剤9は、塩析を行わずに濾過により研磨剤成分を、実施例3に用いた分散剤と同様の分散剤により分散させたが、回収率が悪く、また、不純物によって研磨物の粒度分布が大きく崩れる結果となった。また、比較例2の研磨剤10は、六配位換算におけるイオン半径が166pmである塩化ルビジウムイオンを用いて塩析を行ったが、スラリーの回収率が悪く、再利用できなかった。また、比較例3の研磨剤11は、研磨材成分を水で希釈し、分散剤を使用しなかったため、分散性に劣る結果となった。
【0093】
この出願は、2011年12月28日に出願された日本国特許出願特願2011−289539を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0094】
本発明を表現するために、前述において図面等を参照しながら実施形態を通して本発明を適切かつ十分に説明したが、当業者であれば前述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易になし得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。