特許第6044551号(P6044551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6044551-研磨材分離方法 図000003
  • 特許6044551-研磨材分離方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044551
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】研磨材分離方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 57/00 20060101AFI20161206BHJP
   B24B 55/12 20060101ALI20161206BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B24B57/00
   B24B55/12
   C09K3/14 550D
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-551618(P2013-551618)
(86)(22)【出願日】2012年12月17日
(86)【国際出願番号】JP2012082607
(87)【国際公開番号】WO2013099666
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】特願2011-285033(P2011-285033)
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤
(72)【発明者】
【氏名】永井 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】前澤 明弘
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/105714(WO,A1)
【文献】 特開2000−254659(JP,A)
【文献】 特開2011−189503(JP,A)
【文献】 特許第5858050(JP,B2)
【文献】 特許第5370598(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 57/00
B24B 55/12
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化セリウムを含有する使用済みの研磨材スラリーから、酸化セリウム研磨材を分離する研磨材分離方法であって、該使用済みの研磨材スラリーを10〜70℃の範囲内で温度制御しながら、2価のアルカリ土類金属塩を添加して母液を調製し、該母液の25℃換算のpH値が、10.0未満である条件下で研磨材粒子被研磨成分から分離して凝集及び沈殿させ、該研磨材粒子を母液より分離することを特徴とする研磨材分離方法。
【請求項2】
前記2価のアルカリ土類金属塩が、マグネシウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の研磨材分離方法。
【請求項3】
前記研磨材スラリーの保温温度が、10〜40℃の範囲の値であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨材分離方法。
【請求項4】
前記研磨材の分離に用いる分離釜が、温度制御手段を有していることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の研磨材分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化セリウムを含有する使用済みの研磨材から使用済み酸化セリウムを回収し、これを再生酸化セリウム含有研磨材として再利用するための研磨材分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素を主成分とする被研磨物(例えば、光学ガラス、情報記録媒体用ガラス基板、半導体シリコン基板等)を仕上工程で精密研磨する研磨材としては、従来、酸化セリウムを主成分とし、これに酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジムなどが加わった希土類元素酸化物が使用されている。
【0003】
一般に、研磨材の主構成元素である希土類元素、特に、酸化セリウムは、日本国内では産出しない鉱物から得られるため、輸入に頼っている資源である。この酸化セリウムを含有する研磨材は、硬度が高い微粒子であるため、光学レンズや半導体シリコン基板及び液晶画面のガラス板など、電子部品関係の光学研磨材として大量に使用されている重要な資源であり、その再利用を強く望まれている資源の一つである。また、光学研磨用の研磨材は、上述の酸化セリウムを主成分としてナトリウムやクロムなどの金属元素や、イットリウムやデシプロシウムなど希土類元素の微粒子を含んでいる場合もあり、単純な廃棄は環境上強く禁止されている。そのため、研磨に使用した後の酸化セリウムを含む廃液については、無公害化処理が強く望まれており、酸化セリウムを含有する光学研磨材廃液の資源の再利用技術は、無公害化の目的においても重要である。
【0004】
一般的に各種の工業において発生する懸濁微粒子を含む廃水の処理としては、中和剤や無機凝集剤、高分子凝集剤等を用いて懸濁微粒子を凝集分離し、処理水は放流し、凝集分離した汚泥は廃棄処理されているのが現状である。
【0005】
また、酸化セリウム等の研磨材は、通常、研磨工程にて大量に使用する上、廃液中には被研磨成分(例えば、光学ガラス屑等)も共存し、研磨材と被研磨成分とを効率的に分離することが困難であるため、現状では、上記のように、研磨材廃液は、使用後は廃棄されており、環境負荷の面や廃棄コストの面からも問題を抱えている。
【0006】
したがって、近年、研磨材の主構成元素を効率よく回収して、希少材料である希土類元素の省資源化を図ることが重要な課題となっている。
【0007】
研磨材成分の回収の方法に関しては、例えば、特許文献1には、酸化セリウム系研磨材を含有するガラス用研磨液の使用済み研磨材に対して、電解質を添加して、50℃で2時間保温することにより、研磨された基体由来の成分(Si成分又はAl成分)を溶解させるとともに、研磨材を沈降分離させ、固液分離する方法が開示されている。特許文献1に記載の方法では、電解質物質としては、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属、アルカリ金属塩、及びアンモニウム塩を使用している。
【0008】
また、特許文献2には、酸化セリウムを主成分とするガラス用研磨液の使用済み研磨材に対し、ポリ塩化アルミニウムと高分子凝集剤とを添加して使用済み研磨材の固形分を凝集した後、脱水処理して脱水ケーキ状の研磨廃棄物を得て、その研磨廃棄物を、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液に混合し、可溶性の不純物を溶解した後、固液分離により、研磨材を回収する方法が開示されている。更に、特許文献3には、使用済み研磨材に対して、硫酸を加えて加熱処理することにより、レアアースやレアメタルを溶解し、スラリー中のシリカ等の凝集物と分離除去する方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献4には、コロイダルシリカ系の研磨材を回収する方法として、CMP(化学機械研磨)廃液に対し、マグネシウムイオンの存在下で、アルカリ添加してpH値を10以上に調整することにより凝集処理して固液分離した後、固形分をpH調整槽でpH値を9以下に調整してマグネシウムイオンを溶出させて、研磨材を回収する方法が開示されている。さらに、非特許文献1では、上記説明した金属の回収技術に関する総説がされている。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1〜4に開示されている方法では、回収される研磨材の純度が十分でないために、回収された研磨材は高精度な研磨には適さないものであった。
【0011】
また、上記特許文献4の方法では、酸化セリウムを主成分とする研磨材を用いて、ケイ素を主成分とするガラス等を研磨対象とする場合、使用済みの研磨材が含まれる研磨材スラリーのpHが10以上の条件で塩化マグネシウム等の添加剤を加えると、研磨材成分がガラス等とともに凝集してしまい、得られる再生研磨材の純度の低下につながる。その理由は、pHが10を超える範囲では、ケイ素を主成分とする研磨対象由来の成分(ガラス等)の凝集性が高まり、添加剤の添加により研磨材成分よりも容易に凝集するためであると考えられる。
【0012】
特許文献5では、使用済み回収液を凍結させることにより酸化セリウムの二次粒子を再生し、その後水を除去することによる再生酸化セリウム研磨材の製造方法が記載されている。しかしながら、特許文献5に記載されている方法では、凍結のための大掛かりな設備等が必要となり初期投資が非常に大きなものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平06−254764号公報
【特許文献2】特開平11−90825号公報
【特許文献3】特開平11−50168号公報
【特許文献4】特開2000−254659号公報
【特許文献5】特開2010−214515号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】金属資源レポート 45頁 2010.11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、酸化セリウムを主成分とする使用済み研磨材から、効率的かつ経済性に優れた方法で酸化セリウムを分離、回収することができる研磨材分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、酸化セリウムを含有する使用済みの研磨材スラリー、例えば、研磨機から排出される洗浄水を含む研磨材スラリー、あるいは使用済みの研磨材スラリーから、酸化セリウム研磨材を分離する研磨材分離方法であって、該使用済みの研磨材スラリーを、10〜70℃の範囲内で温度制御しながら、2価のアルカリ土類金属塩を添加し、母液の25℃換算のpH値が10.0未満の条件で研磨材を凝集させると共に、非研磨材は凝集させない条件で、研磨材(沈殿物)と非研磨材(上澄み液)に分離することを特徴とする研磨材分離方法により、酸化セリウムを主成分とする使用済み研磨材から、効率的かつ経済的に酸化セリウムのみを回収し、その後、簡易な方法で再生研磨材を得ることができる研磨材分離方法を実現することができることを見出し、本発明にいたった次第である。
【0017】
すなわち、本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
【0018】
1.酸化セリウムを含有する使用済みの研磨材スラリーから、酸化セリウム研磨材を分離する研磨材分離方法であって、該使用済みの研磨材スラリーを10〜70℃の範囲内で温度制御しながら、2価のアルカリ土類金属塩を添加して母液を調製し、該母液の25℃換算のpH値が、10.0未満である条件下で研磨材粒子被研磨成分から分離して凝集及び沈殿させ、該研磨材粒子を母液より分離することを特徴とする研磨材分離方法。
【0019】
2.前記2価のアルカリ土類金属塩が、マグネシウム塩であることを特徴とする第1項に記載の研磨材分離方法。
【0020】
3.前記研磨材スラリーの保温温度が、10〜40℃の範囲の値であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の研磨材分離方法。
【0021】
4.前記研磨材の分離に用いる分離釜が、温度制御手段を有していることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の研磨材分離方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の上記手段により、酸化セリウムを主成分とする使用済み研磨材から、効率的かつ経済性に優れた方法で酸化セリウムを分離、回収することができる研磨材分離方法が提供できる。
【0024】
本発明において上記のような効果を発揮する理由は、全て明確にはなっていないが、以下の様に推察している。
【0025】
本発明の作用効果の特徴点は、使用済み研磨材を含むスラリーから、研磨材の主成分である酸化セリウムのみを高濃度で回収する技術であり、単に酸化セリウムを回収するだけではなく、回収の際の酸化セリウムの回収効率を高めると共に、不純物含有率が低く、高純度で酸化セリウムを含有する再生研磨材を得ることにある。
【0026】
本発明の技術的思想は、酸化セリウムと無機塩として2価のアルカリ土類金属塩、例えば、マグネシウム塩との特異的な相性に起因していると推定している。使用済み研磨材に比重の大きい凝集剤を添加して固体成分として分離し、そののち酸化セリウムを精製して再生することは一般によく行われていることである。その際、固体成分として回収される酸化セリウムあるいは酸化セリウムを含む研磨材スラリーにはガラス研磨により生じる被研磨材であるガラス成分、例えば、二酸化ケイ素粒子も含まれる。このガラス成分を分離するためは、更に、種々の精製工程が必要となってくる。
【0027】
しかしながら、本発明の研磨材分離方法においては、使用済みの研磨材スラリーを10〜70℃の範囲内で温度制御しながら、pH調整剤等の添加剤を添加しない状態で、2価のアルカリ土類金属塩、例えば、マグネシウム塩を添加し、母液の25℃換算のpH値が、10.0未満である条件下で酸化セリウムのみ選択的に凝集させ、非研磨材であるガラス成分はほとんど凝集させることなく、効率的に両者を分離することができることを見出した。この方法により、酸化セリウムのみを高純度で分離することができ、その後の精製工程が必要なく、それ以降の工程を簡略化できる効果を生んでいる。
【0028】
本発明においては、回収した研磨材スラリーを、10〜70℃の範囲内で温度制御しながら、pH調整剤を添加しない状態で、2価のアルカリ土類金属塩、例えば、マグネシウム塩を添加し、凝集物を分離するまでの間、2価のアルカリ土類金属塩添加時のpHとして、母液の25℃換算のpH値が、10.0未満である条件で維持することが必要である。ここでいう2価のアルカリ土類金属塩添加時のpHとは、2価のアルカリ土類金属塩の添加が終了した直後のpHのことをいう。
【0029】
また、回収に使用された2価のアルカリ土類金属塩の一部は、酸化セリウム粒子に吸着し、再生酸化セリウム含有研磨材に残留することとなるが、酸化セリウムとの特異な結合をしているため、その後の研磨材としての使用において酸化セリウムの微粒子化を抑制するという効果も有することが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の研磨材分離方法を適用する研磨材再生工程の基本的な全体フローの一例を示す模式図
図2】本発明の研磨材分離方法が適用可能な分離濃縮工程及び研磨材回収工程のフォローの一例を示した概略図
【発明を実施するための形態】
【0031】
本実施形態の研磨材分離方法は、酸化セリウムを含有する使用済みの研磨材スラリーから、酸化セリウム研磨材を分離する研磨材分離方法であって、該使用済みの研磨材スラリーを10〜70℃の範囲内で温度制御しながら、2価のアルカリ土類金属塩を添加して母液を調製し、該母液の25℃換算のpH値が、10.0未満である条件下で研磨材粒子被研磨成分から分離して凝集及び沈殿させ、該研磨材粒子を母液より分離することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0032】
更に、前記2価のアルカリ土類金属塩が、マグネシウム塩であること、前記研磨材スラリーの保温温度が、10〜40℃の範囲の値であること、前記研磨材の分離に用いる分離釜が、温度制御手段を有していることが、本発明の効果をより発現することができる観点から好ましい。
【0033】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、以下の説明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0034】
《研磨材分離方法》
はじめに、本実施形態の研磨材分離方法を適用する研磨材再生工程の全体フローについて、図を用いて説明する。
【0035】
図1は、本実施形態の研磨材分離方法を適用する研磨材再生工程の基本的な全体フローの一例を示す模式図である。
【0036】
図1に示した研磨工程においては、研磨装置1は、不織布、合成樹脂発泡体、合成皮革などから構成される研磨布Fを貼付した研磨定盤2を有しており、この研磨定盤2は回転可能となっている。研磨作業時には、被研磨物(例えば、ガラス)3を所定の押圧力で上記研磨定盤2に押し付けながら、研磨定盤2を回転させる。同時に、スラリーノズル5から、ポンプを介して酸化セリウムを含む研磨材液4(研磨材スラリー)を供給する。研磨後の酸化セリウムを含む研磨材液4は、流路6を通じてスラリー槽Tに貯留され、研磨装置1とスラリー槽Tとの間を繰り返し循環する。
【0037】
また、研磨装置1を洗浄するための洗浄水7は、洗浄水貯蔵槽Tに貯留されており、洗浄水噴射ノズル8より、研磨部に吹き付けて洗浄を行い、研磨材を含む洗浄液10は、ポンプを介し、流路9を通じて、洗浄液貯蔵槽Tに貯留される。この洗浄液貯蔵槽Tは、洗浄(リンス)で使用された後の洗浄水を貯留するための槽であり、沈殿、凝集を防止するため、常時攪拌羽根によって攪拌されている。
【0038】
上記研磨工程で生じたスラリー槽Tに貯留され、循環して使用された研磨材液4と、洗浄液貯蔵槽Tに貯留された洗浄液10は、いずれも、研磨材である酸化セリウム粒子と共に、研磨工程1で研磨された被研磨物(例えば、ガラス)3より削り取られた非研磨材を含有した状態になっている。
【0039】
次いで、この研磨材液4と洗浄液10は、両者を混合液、あるいはそれぞれ個別の液として回収される。この工程を、スラリー回収工程Aと称す。
【0040】
次いで、スラリー回収工程Aで回収された研磨材液4と洗浄液10の混合液、あるいはそれぞれの単独液(以降、これらの液を母液と称す)に対し、母液の温度を10〜70℃の範囲で温度制御しながら、pH調整剤を添加しないで、無機塩として2価のアルカリ土類金属塩を添加し、母液の25℃換算のpH値が、10.0未満である条件下で研磨材のみを凝集させ、非研磨材(例えば、ガラス粉等)を凝集させない状態で、該研磨材のみを母液より分離して濃縮する(分離濃縮工程B)。
【0041】
研磨材を含む濃縮物と、非研磨材を含む上澄み液との分離操作は、強制的な分離手段は適用せずに、自然沈降による液・液分離を行う。このようにして母液を、非研磨材等を含む上澄み液と、下部に沈殿した酸化セリウムを含む濃縮物とに分離した後、デンカンテーション法、例えば、釜を傾斜させて、上澄み液を排液する、あるいは、排液パイプを分離した釜内の上澄み液と濃縮物の界面近くまで挿入し、上澄み液のみを、釜外に排出して、研磨材を回収する(研磨材回収工程C)。
次いで、分離した酸化セリウムを含む濃縮物では、酸化セリウム粒子が無機塩により凝集体(二次粒子)を形成しているため、独立した一次粒子に近い状態まで解きほぐすため、水及び分散剤を添加し、分散装置を用いて、所望の粒子径まで分散する(粒子径制御工程D)。
【0042】
以上のようにして、高純度で、不純物の含有比率が低い再生研磨材を、簡易な方法で得ることができる。
【0043】
次いで、本実施形態の研磨材分離方法及び構成技術の詳細について説明する。
【0044】
〔研磨材〕
一般に、光学ガラスや半導体基板等の研磨材としては、ベンガラ(αFe)、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、コロイダルシリカ等の微粒子を水や油に分散させてスラリー状にしたものが用いられているが、本発明においては、半導体基板の表面やガラスの研磨加工において、高精度に平坦性を維持しつつ、十分な加工速度を得るために、物理的な作用と化学的な作用の両方で研磨を行う、化学機械研磨(CMP)に適用が可能な酸化セリウムを主成分とする研磨材を用いる。
【0045】
研磨材として使用される酸化セリウムは、純粋な酸化セリウムでは無く、バストネサイトと呼ばれる、希土類元素を多く含んだ鉱石を焼成した後、粉砕したものが好ましい。酸化セリウムが主成分ではあるが、その他成分として、ランタンやネオジウム、プラセオジウム等の希土類元素を含有し、酸化物以外にフッ化物等が含まれることもある。
【0046】
本発明に使用される酸化セリウムは、その成分及び形状に関しては、特に限定はなく、一般的に研磨材として市販されているものを使用することができ、酸化セリウム含有量が50質量%以上である場合に、効果が大きく好ましい。
【0047】
〔研磨工程〕
研磨材としては、下記に示すような使用形態(研磨工程)を有し、本発明はこのように使用された使用済み研磨材からの再生研磨材再生する研磨材分離方法である。
【0048】
ガラス基板の研磨を例にとると、前記図1で説明したように、研磨工程は、研磨材スラリーの調製、研磨加工、洗浄で一つの工程となるのが一般的である。
【0049】
(1)研磨材スラリーの調製
酸化セリウム主成分とする研磨材の粉体を水等の溶媒に対して1〜15質量%になるように添加、分散して研磨材スラリーを調製する。この研磨材スラリーを研磨機に対して循環供給して使用する。研磨材として使用される酸化セリウム微粒子は、平均粒子径が数十nmから数μmの大きさの粒子が使用される。
【0050】
分散剤等を添加することにより、酸化セリウム粒子の凝集を防止するとともに、撹拌機等を用いて常時撹拌して分散状態を維持することが好ましい。一般には、研磨機の横に研磨材スラリー用のタンクを設置し、撹拌機等を使用して常時分散状態を維持し、供給用ポンプを使用して研磨機に循環供給する方法を採用することが好ましい。
【0051】
(2)研磨
図1に示すように、研磨パット(研磨布)とガラス基板を接触させ、接触面に対して研磨材スラリーを供給しながら、加圧条件下でパットとガラスを相対運動させる。
【0052】
(3)洗浄
研磨された直後のガラス基板及び、研磨機には大量の研磨材が付着している。そのため、図1で説明したように、研磨した後に研磨材スラリーの代わりに水等を供給し、ガラス及び研磨機に付着した研磨材の洗浄が行われる。この際に、研磨材を含む洗浄液は系外に排出される。
【0053】
この洗浄操作で、一定量の研磨材が系外に排出されるため、系内の研磨材量が減少する。この減少分を補うために、スラリー槽Tに対して新たな研磨材スラリーを追加する。追加の方法は1回の加工毎に追加を行っても良いし、一定加工毎に追加を行っても良いが、溶媒に対して十分に分散された状態の研磨材を供給することが望ましい。
【0054】
〔使用済みの研磨材スラリー〕
本発明でいう使用済み研磨材スラリーとは、研磨機及び研磨材スラリー用タンクからなる系の外部に排出される研磨材スラリーであって主として二種類ある。
【0055】
一つ目は、洗浄工程で排出される洗浄液を含む研磨材スラリー1(リンススラリー)であり、二つ目は一定加工回数使用された後に廃棄される、スラリー槽Tに貯留されている使用済みの研磨材スラリー2(ライフエンド)である。以後、本発明では、それぞれ研磨材スラリー1、研磨材スラリー2と称す。なお、本発明は、研磨材スラリー1及び2の両方に適用することが好ましいが、どちらか一方にのみ適用してもよい。
【0056】
洗浄水を含む研磨材スラリー1の特徴として、以下の2点が挙げられる。
【0057】
1)洗浄時に排出されるために洗浄水が大量に流入し、タンク内のスラリーと比較して研磨材濃度が低下している。
2)研磨布等に付着しているガラス成分も、洗浄時にこの研磨材スラリー1中に流入する。
【0058】
一方使用済みの研磨材スラリー2の特徴としては、新品の研磨材スラリーと比較してガラス成分濃度が高くなっていることが挙げられる。
【0059】
〔再生酸化セリウム含有研磨材の研磨材再生工程〕
本発明の研磨材を再生し、再生酸化セリウム含有研磨材を製造する研磨材分離方法は、図1で概要を説明したように、概ねスラリー回収工程A、分離濃縮工程B、研磨材回収工程C、粒子径制御工程Dの4つの工程から構成されている。
【0060】
(1:スラリー回収工程A)
研磨機及びスラリー用タンクからなる系から排出される研磨材スラリーを回収する工程である。回収する研磨材スラリーには、前記洗浄水を含む研磨材スラリー1と使用済みの研磨材スラリー2の2種類が含まれる。
【0061】
一般に回収した研磨材スラリーには、0.1〜40質量%の酸化セリウム研磨材が含まれる。
【0062】
スラリーは回収された後、直ちに分離工程に進めても良いし、一定量を回収するまで貯蔵しても良いが、いずれの場合も回収されたスラリーは常時撹拌し、分散状態を維持することが好ましい。
【0063】
本発明においては、スラリー回収工程Aで回収した研磨材スラリー1と研磨材スラリー2とを混合して母液を調製した後、以降の分離濃縮工程B及び研磨材回収工程Cで処理する方法であっても、あるいはスラリー回収工程Aで回収した研磨材スラリー1と研磨材スラリー2とを、それぞれ独立した母液として、以降の分離濃縮工程B及び研磨材回収工程Cで処理してもよい。
【0064】
(2:分離濃縮工程B)
回収した使用済み研磨材スラリーは、被研磨物由来のガラス成分を混入している。また、洗浄水の混入により濃度が低下している。研磨加工に再度使用するためには、ガラス成分の分離と、研磨材成分の濃縮を行う必要がある。
【0065】
本発明の研磨材分離方法においては、分離濃縮工程Bで、スラリー回収工程Aで回収した研磨材スラリー(母液)を、10〜70℃の範囲内から選択される任意の温度条件で温度制御しながら、2価のアルカリ土類金属塩を添加し、母液の25℃換算のpH値が、10.0未満である条件下で研磨材のみを凝集させ、非研磨材を凝集させない状態で、該研磨材を母液より分離して濃縮する。これにより、酸化セリウムを主成分とする研磨材成分のみを効率よく凝集沈殿させ、ガラス成分のほとんどは上澄みに存在させて凝集物を分離することで、酸化セリウム成分とガラス成分との分離と、研磨材スラリーの濃縮を同時に行うことが可能となった工程である。
【0066】
具体的な操作について、図2を用いて説明する。
【0067】
図2は、本発明の研磨材分離方法が適用可能な分離濃縮工程及び研磨材回収工程のフォローの一例を示した概略図である。
【0068】
工程(B−1)
前工程であるスラリー回収工程Aで回収した研磨材スラリー(母液)13を、温度検知管T、攪拌機15を備え、外周部に保温ジャケットHを有する分離釜14に投入する。研磨材スラリー(母液)13を分離釜14に投入した後、保温ジャケットHにより、研磨材スラリー(母液)13の液温度を所望の温度に調整する。この保温ジャケットHには、温度検知管Tより検出した研磨材スラリー(母液)13の温度に対し、冷媒あるいは冷却水等の冷却媒体や、温水や蒸気スチーム等の加熱媒体を流入させて、研磨材スラリー(母液)13の温度を、設定した温度に調整する。
【0069】
工程(B−2)
所望の温度に制御した研磨材スラリー(母液)13に対し、攪拌しながら、無機塩として2価のアルカリ土類金属塩を、添加容器16より添加し、母液の25℃換算のpH値を10.0未満の条件で維持する。
【0070】
工程(B−3)
無機塩の添加により、研磨材スラリー(母液)13中に含まれる酸化セリウム粒子のみが凝集して底部に沈降し、凝集体18を形成する。酸化セリウムが分離沈降した上澄み液17には、ガラス等の非研磨材が含有され、ここで、研磨材と非研磨材とが分離される。
【0071】
〈2価のアルカリ土類金属塩〉
本発明においては、酸化セリウムの凝集に用いる無機塩が、2価のアルカリ土類金属塩であることを特徴とする。
【0072】
本発明に係るアルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、バリウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩等を挙げることができるが、その中でも、本発明の効果をより発現することができる観点から、マグネシウム塩であることが好ましい。
【0073】
本発明に適用可能なマグネシウム塩としては、電解質として機能するものであれば限定はないが、水への溶解性が高い点から、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなどが好ましく、溶液のpH変化が小さく、沈降した研磨材及び廃液の処理が容易である点から、塩化マグネシウム及び硫酸マグネシウムが特に好ましい。
【0074】
〈2価のアルカリ土類金属塩の添加方法〉
2価のアルカリ土類金属塩の添加方法として、マグネシウム塩を例にして説明する。
【0075】
a)マグネシウム塩の濃度
添加するマグネシウム塩は、粉体を回収スラリーに直接供給しても良いし、水等の溶媒に溶解させてから研磨材スラリーに添加してもよいが、研磨材スラリーに添加した後に均一な状態になるように、溶媒に溶解させた状態で添加することが好ましい。
【0076】
好ましい濃度は、0.5〜50質量%の水溶液とすることである。系のpH変動を抑え、ガラス成分との分離を効率化するためには、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0077】
b)マグネシウム塩の添加温度
マグネシウム塩を添加する際の温度は、回収した研磨材スラリーが凍結する温度以上であって、90℃までの範囲で有れば適宜選択することができるが、研磨材スラリーの温度制御を安定に行い、ガラス成分との分離を効率的に行う観点からは、10℃〜70℃であることが好ましく、10℃〜40℃あることがより好ましい。
【0078】
c)マグネシウム塩の添加速度
マグネシウム塩を添加する速度は、回収した研磨材スラリー中でのマグネシウム濃度が一度に変化せず、均一になるように添加することが好ましい。1分間当たりの添加量が全添加量の20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0079】
d)マグネシウム塩添加時のpH値
本発明の技術的な特徴は、分離濃縮工程Bでマグネシウム塩を添加する際に、予め回収した研磨材スラリーのpH値を調整せずに、母液の25℃換算のpH値が10.0未満の条件で分離濃縮を行うことを特徴とする。一般に、回収した研磨材スラリーのpH値はガラス成分のためややアルカリ性を示し、8〜10未満であるので、予め回収した研磨材スラリーのpH値を調整する必要はない。
【0080】
本発明においては、pH値は25℃において、ラコムテスター卓上型PHメーター(アズワン(株)製 pH1500)を使用して測定した値を用いる。
【0081】
本発明においては、マグネシウム塩を添加し、その後、該凝集物を分離するまでマグネシウム塩添加時のpH値以下に維持することを特徴とする。ここでいうマグネシウム塩添加時のpH値とは、マグネシウム塩の添加が終了した直後のpH値のことをいう。
【0082】
本発明では、沈殿した凝集物を分離するまで、マグネシウム添加時のpH値以下を維持する。具体的には、25℃換算pH値として、10.0未満で維持することを特徴とし、好ましくは、6.5以上、10.0未満で維持することである。pH値として10未満とすることで、廃液に含まれるガラス成分の凝集を防ぐことができるため、回収の際の酸化セリウムの純度を高くすることができ好ましい。マグネシウム塩添加時のpH値の下限は、pH調整剤による純度低下や操作性などから、6.5以上であることが好ましい。
【0083】
e)マグネシウム塩添加後の撹拌
マグネシウム塩を添加した後、少なくとも10分以上撹拌を継続することが好ましく、より好ましくは30分以上である。マグネシウム塩を添加すると同時に研磨材粒子の凝集が開始されるが、撹拌状態を維持することで凝集状態が系全体で均一となり凝集物の粒度分布が狭くなり、その後の分離が容易となる。
【0084】
f)マグネシウム塩添加時の温度制御
本発明の研磨材分離方法においては、2価のアルカリ土類金属塩であるマグネシウム塩を、研磨材スラリーに添加する際、研磨材スラリーの温度を10〜70℃の範囲内から選択される任意の温度条件で温度制御しながら添加することを特徴の一つとする。
【0085】
2価のアルカリ土類金属塩添加時の研磨材スラリーの温度を、10〜70℃の範囲内から選択される任意の温度条件に制御することにより、研磨材スラリーにおいて、酸化セリウムを主成分とする研磨材成分のみを効率よく凝集沈殿でき、ガラス成分のほとんどを上澄み液に存在させることができ、効率的に酸化セリウム成分とガラス成分とを分離することができる。
【0086】
研磨材スラリーの温度としては、10〜70℃の範囲内であることを特徴とするが、より好ましくは10〜60℃の範囲内であり、更に好ましくは10〜40℃の範囲内である。
【0087】
研磨材スラリーの温度が10℃以上であれば、固液分離を起こすことなく、添加する2価のアルカリ土類金属塩の研磨材スラリー中における所望の溶解度を維持することができ、冷却装置等の過剰で高度な設備投資なしに、確実に研磨材成分と、非研磨材成分とを分離することができる。また、研磨材スラリーの温度が70℃以下であれば、添加する2価のアルカリ土類金属塩の効果を十分に発現させることができ、過度の熱エネルギーを付与することなく、確実にかつ効率的に研磨材成分と、非研磨材成分とを分離することができる。
(3:研磨材回収工程C)
図2に示すような分離濃縮工程Bで、ガラス成分を含む上澄み液17と酸化セリウム粒子を含む凝集体18に分離した後、凝集体18を回収する。
【0088】
a)研磨材凝集物の分離の方法
マグネシウム塩の添加により凝集した研磨材の凝集体と上澄み液とを分離する方法としては、一般的な凝集物の分離方法をいずれも採用することができる。すなわち、自然沈降を行って上澄みだけを分離することができ、また遠心分離機等の物理的な方法を行うこともできる。再生酸化セリウム含有研磨材の純度の点から、自然沈降を行うことが好ましい。
【0089】
この状態では上澄み液が分離されていることから、回収スラリーと比較して比重が増加し、濃縮されていることとなる。このスラリーには、回収されたスラリー以上の濃度の酸化セリウムが含有されている。
【0090】
凝集した研磨材の凝集体と上澄み液とを分離する方法の一例としては、図2において、工程(B−3)で示したように、自然沈降により、非研磨材等を含む上澄み液17と、下部に沈殿した酸化セリウムを含む濃縮物18とに分離した後、工程(C−1)で、排液パイプ19を釜14内の上澄み液17と凝集体18の界面近くまで挿入し、上澄み液17のみを、ポンプ20を用いて、釜外に排出して、工程(C−2)で研磨材を含有する濃縮物18を回収する。
【0091】
(4:粒子径制御工程D)
本発明の研磨材分離方法においては、上記各工程を経て回収した使用済みの酸化セリウムを再利用するため、最終工程として、酸化セリウム粒子の粒子径分布を調整することができる。
【0092】
マグネシウム塩等を用いて、酸化セリウム粒子を凝集して回収した凝集体は、そのままの状態では、二次粒子としての塊状であり、再利用するために、凝集した粒子を解して、単独粒子状態(一次粒子)にする再分散を施すため、最後に、粒子径制御工程Dを組み入れることが好ましい。
【0093】
この粒子径制御工程Dは、分離濃縮工程で得られた凝集した研磨材成分を再分散させて、処理前の研磨材スラリーと同等の粒度分布になるように調整する工程である。
【0094】
凝集した研磨材粒子を再分散させる方法としては、a)水を添加し、処理液中のマグネシウムイオン濃度を低下させる方法、b)金属分離剤(分散剤ともいう)を添加することで研磨材に付着するマグネシウムイオン濃度を低下させる方法、c)分散機等を使用して、凝集した研磨材粒子を解砕する方法がある。
【0095】
これらの方法は、それぞれ単独で使用しても良いし、組み合わせて使用しても良いが、a)、b)及びc)の内、いずれか二つを組み合わせる方法が好ましく、a)、b)及びc)を全て組み合わせて行う方法がより好ましい。
【0096】
水を添加する場合その量は、濃縮したスラリーの体積によって適宜選択され、一般的には濃縮したスラリーの5〜50体積%であり、好ましくは10〜40体積%である。
【0097】
金属分離剤(分散剤)としては、カルボキシル基を有するポリカルボン酸系高分子分散剤が好ましく挙げられ、特にアクリル酸−マレイン酸の共重合であることが好ましい。具体的な金属分離剤(分散剤)としては、ポリティーA550(ライオン(株)製)等が挙げられる。金属分離剤(分散剤)の添加量としては、濃縮したスラリーに対して0.01〜5体積%である。
【0098】
また、分散機としては、超音波分散機、サンドミルやビーズミルなどの媒体攪拌ミルが適用可能であり、特には、超音波分散機を用いることが好ましい。
【0099】
また、超音波分散機としては、例えば、(株)エスエムテー、(株)ギンセン、タイテック(株)、BRANSON社、Kinematica社、(株)日本精機製作所等から市販されており、(株)エスエムテーUDU−1、UH−600MC、(株)ギンセンGSD600CVP、(株)日本精機製作所 RUS600TCVP等を使用することができる。超音波の周波数は、特に限定されない。
【0100】
機械的撹拌及び超音波分散を同時並行的に行う循環方式の装置としては、(株)エスエムテーUDU−1、UH−600MC、(株)ギンセン GSD600RCVP、GSD1200RCVP、(株)日本精機製作所 RUS600TCVP等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0101】
超音波分散機を用いた粒子径制御工程Dの具体的な方法としては、分離釜に、上記研磨材回収工程Cで調製した凝集体を、例えば、a)水を添加し、処理液中のマグネシウムイオン濃度を低下させ酸化セリウム分散液を調製釜に貯留した後、攪拌機で攪拌しながら、金属分離剤(高分子分散剤)を添加した後、ポンプを介して、超音波分散機にて分散処理が施され、凝集した酸化セリウム粒子が解きほぐされる。次いで、その下流側に設けた粒子径測定装置にて、分散後の酸化セリウム粒子の粒子径分布をモニターし、酸化セリウム分散液の粒子径分布が所望の条件に到達したことを確認した後は、三方弁等を操作し、酸化セリウム分散液を、系外に排出して再生研磨材を得ることができる。
【0102】
この工程で得られる粒度分布としては、経時変動が少なく、1日経過後の粒度変動が少ないものが望ましい。
【0103】
〔再生酸化セリウム含有研磨材〕
本発明においては、上記粒子径制御工程Dを経て得られる最終的な酸化セリウム含有研磨材は、粒度分布の経時変動が小さく、回収した時の濃度より高く、マグネシウムの含有量としては、0.0005〜0.08質量%の範囲であることが好ましく、その他の物質の含有量は1.0質量%以下であることが好ましい。
【0104】
本発明の研磨材分離方法により得られる再生研磨材は、微量のマグネシウム塩等の2価のアルカリ土類金属塩を含むが、使用過程における微粒子化を抑制し、新品と同等の研磨性能を有する。
【実施例】
【0105】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0106】
《再生研磨材の調製》
〔再生研磨材1の調製:本発明〕
以下の製造工程に従って、再生研磨材1を調製した。
【0107】
1)スラリー回収工程A
図1に記載の研磨工程で、ハードディスク用ガラス基板の研磨加工を行った後、洗浄水を含む研磨材スラリー1を210リットル、使用済み研磨材を含む研磨材スラリー2を30リットル回収し、回収スラリー液として240リットルとした。この回収スラリー液は比重1.03であり、8.5kgの酸化セリウムが含まれている。
【0108】
2)分離濃縮工程B
次いで、この回収スラリー液を分離釜に移送し、回収スラリー液の液温度を20±1℃の範囲内で制御し、酸化セリウムが沈降しない程度に撹拌しながら、塩化マグネシウム10質量%水溶液2.5リットルを10分間かけて添加した。塩化マグネシウムを添加した直後の25℃換算のpH値は8.60で、この条件を維持した。
【0109】
3)研磨材回収工程C
上記の状態で30分撹拌を継続した後、1.5時間静置し、自然沈降法により、上澄み液と凝集物とを沈降・分離した。1.5時間後、図2の工程(4)に従って、排水ポンプを用いて上澄み液を排出し、凝集物を分離回収した。回収した凝集物は60リットルであった。
【0110】
4)粒子径制御工程D(分散工程)
分離した凝集物に水12リットルを添加した。さらに、金属分離剤(高分子分散剤)としてポリティーA550(ライオン(株)製)を300g添加し、30分撹拌した後、超音波分散機を用いて、凝集物を分散して解きほぐした。
【0111】
分散終了後、10ミクロンのメンブランフィルターで濾過を行って、再生酸化セリウムを含有する再生研磨材1を得た。酸化セリウム濃度は、8.7質量%で、粒度(D90<2.0μm)、マグネシウム含有量は0.01質量%であった。
【0112】
〔再生研磨材2の調製:本発明〕
上記再生研磨材1の調製において、2)分離濃縮工程Bで用いた無機塩を、塩化マグネシウムに代えて、硫酸マグネシウムを用いた以外は同様にして、再生研磨材2を得た。
【0113】
〔再生研磨材3の調製:比較例〕
上記再生研磨材1の調製において、2)分離濃縮工程Bにおける温度制御条件を5℃に変更した以外は同様にして、再生研磨材3を得た。
【0114】
〔再生研磨材4〜8の調製:本発明〕
上記再生研磨材1の調製において、2)分離濃縮工程Bにおける温度制御条件を、それぞれ、10℃、30℃、40℃、50℃、70℃に変更した以外は同様にして、再生研磨材4〜8を得た。
【0115】
〔再生研磨材9の調製:比較例〕
上記再生研磨材1の調製において、2)分離濃縮工程Bにおける温度制御条件を80℃に変更した以外は同様にして、再生研磨材9を得た。
【0116】
〔再生研磨材10の調製:比較例〕
上記再生研磨材1の調製において、2)分離濃縮工程Bで用いた無機塩を、塩化マグネシウムに代えて、炭酸カリウムを用いた以外は同様にして、再生研磨材10を得た。
【0117】
〔再生研磨材11の調製:比較例〕
上記再生研磨材1の調製において、2)分離濃縮工程Bで無機塩として塩化マグネシウムを添加した後、回収スラリー液のpH値を、pH調整剤として水酸化カリウムを用いて、母液のpHを10.10に調整した以外は同様にして、再生研磨材11を得た。
〔再生研磨材12の調製:比較例〕
上記再生研磨材1の調製において、2)分離濃縮工程Bで無機塩として塩化マグネシウムを添加した後、回収スラリー液のpH値を、pH調整剤として水酸化カリウムを用いて、母液のpHを10.80に調整した以外は同様にして、再生研磨材12を得た。
【0118】
《再生研磨材の評価》
〔再生研磨材の純度評価:ガラス成分との分離能の評価〕
上記再生研磨材1〜12の調製において、2)分離濃縮工程Bの無機塩を添加する前の回収スラリー液と、各無機塩を添加して、静置して分離した後の上澄み液のそれぞれをサンプリングし、下記の方法に従って、ICP発光分光プラズマ分析装置により成分分析を行った。未処理の回収スラリー液に対して、セリウム濃度が減少し、かつケイ素濃度が変化していなければ、分離時に、酸化セリウム粒子のみが沈降し、非研磨材であるガラス粒子は沈降せずに、上澄み液中にとどまっていることを示し、セリウム濃度及びケイ素濃度が共に、未処理の回収スラリー液に対して低下していれば、沈殿物中に酸化セリウム粒子と共にガラス粒子も沈降し、効率的に両者を分離することができなかったことを示す。
【0119】
(ICP発光分光プラズマによる成分分析)
上記分離した各上澄み液に対して、ICP発光分光プラズマにより、セリウム成分、ガラス成分(Si成分)の濃度を測定し、未処理(添加剤無し)の使用済みスラリーと比較した。具体的には、下記の手順に従って行った。
【0120】
〈試料液Aの調製〉
(a)試料(未処理の回収スラリー液、上澄み液)を、スターラーなどで撹拌しながら1ml採取した
(b)原子吸光用フッ化水素酸を5ml加えた
(c)超音波分散してシリカを溶出させた
(d)室温で30分静置した
(e)超純水で、総量を50mlに仕上げた
以上の手順に従って調製した各検体液を、試料液Aと称する。
【0121】
〈Si及びMgの定量〉
(a)試料液Aをメンブレンフィルター(親水性PTFE)で濾過した
(b)濾液を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)で測定した
(c)Siは標準添加法、Mgはマトリクスマッチングの検量線法により定量した。
【0122】
〈セリウムの定量〉
(a)試料液Aをよく分散し、5ml採取した
(b)高純度硫酸を5ml加え、溶解させた
(c)超純水で50mlに仕上げた
(d)超純水で適宜希釈しICP−AESで測定した
(e)マトリクスマッチングの検量線法により、セリウムを定量した。
【0123】
〈ICP発光分光プラズマ装置〉
エスアイアイナノテクノロジー社製のICP−AESを使用した。
【0124】
《エネルギー効率の評価》
上記再生研磨材1〜12の調製の各分離濃縮工程Bで、分離濃縮に要したエネルギー量を比較し、再生研磨材1におけるエネルギー量を、ランクAとし、下記の基準に従って、エネルギー効率の評価を行った。
S:再生研磨材1におけるエネルギー量の0.95倍未満である
A:再生研磨材1におけるエネルギー量の0.95倍〜1.05倍に範囲内である
B:再生研磨材1におけるエネルギー量の1.06倍〜1.10倍に範囲内である
C:再生研磨材1におけるエネルギー量の1.11倍以上である
以上により得られた解析結果を、表1に示す。
なお、表1に記載のpH値は、25℃換算のpH値として表示してある。
【0125】
【表1】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明の研磨材分離方法は、比較の研磨材分離方法に対し、沈殿分離工程での酸化セリウム(研磨材)と、ガラス成分(非研磨材)との分離性に優れ、かつ分離濃縮工程における経済性(エネルギー効率)に優れ、高純度の再生研磨材を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の研磨材再生方法は、効率的な方法で酸化セリウムを回収し、その後、簡易な方法で再生研磨材を得ることができ、光学ガラスや水晶発振子等の仕上工程において使用されている精密研磨に用いられている研磨材の再生方法として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0127】
1 研磨装置
2 研磨定盤
3 被研磨物
4 研磨材液
5 スラリーノズル
7 洗浄水
8 洗浄水噴射ノズル
10 研磨材を含む洗浄液
13 研磨材スラリー(母液)
14、21 分離釜
15 攪拌機
16 添加容器
17 上澄み液
18 凝集体
19 排液パイプ
20 ポンプ
F 研磨布
H 保温ジャケット
T 温度検知管
スラリー槽
洗浄水貯蔵槽
洗浄液貯蔵槽
図1
図2