(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
変速機ケース内において、車体幅方向に延びる軸心上に、駆動源に連結された入力軸と、第1のプラネタリギヤセット及び第2のプラネタリギヤセットと、所定のクラッチとが配設された横置き式の自動変速機であって、
前記第1、第2のプラネタリギヤセットと前記クラッチとは、前記変速機ケースの反駆動源側から、前記第1のプラネタリギヤセット、前記クラッチ及び前記第2のプラネタリギヤセットの順に配置され、
前記クラッチの外側回転部材は、前記クラッチの油圧室を形成すると共に前記第1のプラネタリギヤセットに連結され、
前記入力軸の反駆動源側に同軸上に、前記第2のプラネタリギヤセットに連結されると共に前記外側回転部材に連結されて前記第1のプラネタリギヤセットと前記第2のプラネタリギヤセットとを動力伝達可能に連結する動力伝達軸が設けられ、
前記動力伝達軸は、前記外側回転部材との連結部より反駆動源側に延設された延設部を有し、
該延設部は、前記第1のプラネタリギヤセットの内側を貫通して反駆動源側の端部が前記変速機ケースの反駆動源側の端部に設けられた端部縦壁に回転自在に嵌合され、
前記クラッチに油圧を供給する油圧供給油路は、前記変速機ケースの端部縦壁から、前記端部縦壁と前記動力伝達軸の延設部の反駆動源側の端部との嵌合部を介して該動力伝達軸に設けられた軸方向に延びる油路に連通し、該油路から前記クラッチの油圧室に通じるように構成されている、
ことを特徴とする自動変速機。
前記動力伝達軸の延設部は、前記動力伝達軸における前記第1のプラネタリギヤセットと前記第2のプラネタリギヤセットとを連結する動力伝達部に比べて小径とされている、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に開示された自動変速機は、
図7に示すように、入力側(図の左側)にシングルピニオン型の第1、第2プラネタリギヤセットPGa、PGbを径方向の内外に重ねて配置し、その出力側にダブルピニオン型の第3プラネタリギヤセットPGcと、シングルピニオン型の第4プラネタリギヤセットPGdとを配置すると共に、前記第1、第2プラネタリギヤセットPGa、PGbの入力側に第1クラッチCLaを、出力側に第2クラッチCLbを、さらにその出力側に第3クラッチCLcをそれぞれ配置し、前記第1クラッチCLaの外側回転部材と第3クラッチCLcの外側回転部材とを、第2クラッチCLbの外周側を跨ぐ動力伝達部材xで連結した構成とされている。
【0007】
このような構成によると、第2クラッチCLbは、前記第1、第2プラネタリギヤセットPGa、PGbと、第3クラッチCLcの内側回転部材yと、前記動力伝達部材xとで囲まれた閉鎖空間内に位置することになる。
【0008】
この自動変速機のように、クラッチが変速機ケース内において閉鎖空間内に配置されると、クラッチに油圧を供給する油路を変速機ケースの外周壁や縦壁から直接的に導くことができず、クラッチへの油圧供給油路の形成が困難なものとなり得る。
【0009】
このような問題に対し、クラッチが変速機ケースの端部縦壁との間にプラネタリギヤセットを挟んで配置されている場合に、該クラッチに油圧を供給する油路を変速機ケースの外周壁から導くことが困難なときは、変速機ケースの端部縦壁にプラネタリギヤセットの内側を貫通して軸方向に延びるボス部を設け、該ボス部に設けた油路を経由してクラッチに油圧を供給することが考えられる。
【0010】
しかしながら、ボス部に設けた油路を経由してクラッチに油圧を供給する場合、ボス部の外側に嵌合されたプラネタリギヤセットが大径化し、変速機ケースの径方向寸法が増大することとなる。特に軸心が車体幅方向に延びる横置き式の自動変速機において、変速機ケース内の反駆動源側の端部に配置されたプラネタリギヤセットが大径化すると、エンジンルーム内に配設されたフレーム部材などとの干渉が問題となりやすく、エンジンルーム内への搭載性が悪化することとなる。
【0011】
そこで、本発明は、自動変速機の多段化に伴う上記のような問題に対処し、軸心が車体幅方向に延びる横置き式の自動変速機において、クラッチへの油圧供給油路の簡素化が可能で、車載性に優れた新たな構成の自動変速機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明に係る自動変速機は、次のように構成したことを特徴とする。
【0013】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、変速機ケース内において、車体幅方向に延びる軸心上に、駆動源に連結された入力軸と、第1のプラネタリギヤセット及び第2のプラネタリギヤセットと、所定のクラッチとが配設された横置き式の自動変速機であって、
前記第1、第2のプラネタリギヤセットと前記クラッチとは、前記変速機ケースの反駆動源側から、前記第1のプラネタリギヤセット、前記クラッチ及び前記第2のプラネタリギヤセットの順に配置され、
前記クラッチの外側回転部材は、前記クラッチの油圧室を形成すると共に前記第1のプラネタリギヤセットに連結され、
前記入力軸の反駆動源側に同軸上に、前記第2のプラネタリギヤセットに連結されると共に前記外側回転部材に連結されて前記第1のプラネタリギヤセットと前記第2のプラネタリギヤセットとを動力伝達可能に連結する動力伝達軸が設けられ、
前記動力伝達軸は、前記外側回転部材との連結部より反駆動源側に延設された延設部を有し、
該延設部は、前記第1のプラネタリギヤセットの内側を貫通して反駆動源側の端部が前記変速機ケースの反駆動源側の端部に設けられた端部縦壁に回転自在に嵌合され、
前記クラッチに油圧を供給する油圧供給油路は、前記変速機ケースの端部縦壁から、前記端部縦壁と前記動力伝達軸の延設部の反駆動源側の端部との嵌合部を介して該動力伝達軸に設けられた軸方向に延びる油路に連通し、該油路から前記クラッチの油圧室に通じるように構成されている、ことを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の自動変速機において、前記動力伝達軸の延設部は、前記動力伝達軸における前記第1のプラネタリギヤセットと前記第2のプラネタリギヤセットとを連結する動力伝達部に比べて小径とされている、ことを特徴とする。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の自動変速機において、
前記クラッチは、前記動力伝達軸における前記第1のプラネタリギヤセットと前記第2のプラネタリギヤセットとを連結する動力伝達部の外周側に配置され、
前記油圧供給油路は、前記動力伝達軸と前記外側回転部材との連結部を介して、前記動力伝達軸に設けられた油路と前記クラッチの油圧室とが連通されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記の構成により、本願の請求項1に記載の発明によれば、変速機ケースの反駆動源側から第1のプラネタリギヤセット、クラッチ及び第2のプラネタリギヤセットが順に配置され、クラッチの外側回転部材は、クラッチの油圧室を形成すると共に第1のプラネタリギヤセットに連結されている。入力軸の反駆動源側には、第2のプラネタリギヤセットに連結されると共に外側回転部材に連結される動力伝達軸が設けられ、動力伝達軸は、反駆動源側に延設された延設部を有し、延設部は、第1のプラネタリギヤセットの内側を貫通して変速機ケースの反駆動源側の端部縦壁に回転自在に嵌合されている。
【0017】
そして、クラッチに油圧を供給する油圧供給油路は、変速機ケースの端部縦壁から、動力伝達軸に設けられた軸方向に延びる油路に連通し、該油路からクラッチの油圧室に通じるように構成されている。
【0018】
これにより、クラッチが変速機ケースの端部縦壁との間にプラネタリギヤセットを挟んで配置されている場合に、クラッチに油圧を供給する油圧供給油路が変速機ケースの端部縦壁から動力伝達軸を介して導かれるから、変速機ケースの端部縦壁にプラネタリギヤセットを貫通して軸方向に延びるボス部を設けて該ボス部に設けた油路を経由してクラッチに油圧を供給する場合に比べて、ボス部に設けた油路とクラッチの油圧室との間にシールを設ける必要がなく、クラッチへの油圧供給油路を簡素化することができると共に、反駆動源側において変速機の径方向寸法を短縮することが可能となる。
【0019】
したがって、特に車体幅方向の寸法に制約があるエンジンルーム等に軸心を車体幅方向に向けて搭載される横置き式の自動変速機として、車載性に優れた自動変速機が実現される。
【0020】
また、動力伝達軸の延設部は、動力伝達経路を構成しないことから、動力伝達軸における動力伝達経路を構成する部分に比して小径とすることが可能となり、変速機の径方向寸法の更なる短縮が可能となり、当該自動変速機の車載性をさらに向上させることができる。
【0021】
また、請求項2に記載の発明によれば、動力伝達軸の延設部は、動力伝達軸における第1のプラネタリギヤセットと第2のプラネタリギヤセットとを連結する動力伝達部に比べて小径とされていることにより、変速機の径方向寸法の更なる短縮が可能となり、自動変速機の車載性をさらに向上させることができる。
【0022】
また、請求項3に記載の発明によれば、動力伝達軸における第1、第2のプラネタリギヤセットを連結する動力伝達部の外周側に配置されるクラッチに油圧を供給する油圧供給油路は、動力伝達軸と外側回転部材との連結部を介して動力伝達軸に設けられた油路とクラッチの油圧室とが連通されている。
【0023】
これにより、クラッチが第1、第2のプラネタリギヤセットを連結する動力伝達部の外周側に配置される場合においても、クラッチの油圧室を形成するクラッチの外側回転部材と動力伝達軸との間にシールを設けることなく、変速機ケースの端部縦壁から動力伝達軸の油路を通じ、動力伝達軸と外側回転部材との連結部を介してクラッチの油圧室に油圧を供給することができ、クラッチへの油圧供給油路の簡素化を具体的に実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る自動変速機10を含む横置き式パワーユニット1の構成を示す骨子図であって、このパワーユニット1は、駆動源としてのエンジンEと、該エンジンEからトルクコンバータ(図示せず)を介して動力が入力される自動変速機10と、該自動変速機10の出力により中間伝動機構2を介して駆動されるデファレンシャル装置3とを有し、該デファレンシャル装置3から延びる駆動軸4a、4bを介して左右の駆動輪(図示せず)が駆動されるようになっている。
【0027】
ここで、前記中間伝動機構2は、中間軸2a上に、自動変速機10の後述する出力ギヤ13に噛み合う大径の第1ギヤ2bと、前記デファレンシャル装置3の入力部材であるデフリングギヤ3aに噛み合う小径の第2ギヤ2cとを設けた構成で、自動変速機10の出力を減速してデファレンシャル装置3に伝達するようになっている。
【0028】
一方、前記自動変速機10は、変速機ケース11内に、前記エンジンEに連結されて該エンジンE側(以下、エンジン側を「前側」、反エンジン側を「後側」とする)からトルクコンバータを介して反エンジンE側に延びる入力部材としての入力軸12と、変速機ケース11内の前側に配設された出力部材としての出力ギヤ13と、第1、第2、第3、第4プラネタリギヤセット(以下、「プラネタリギヤセット」を単に「ギヤセット」という)PG1、PG2、PG3、PG4とを有し、これらが同一軸線上に配置されている。
【0029】
ここで、「第4ギヤセットPG4」は特許請求の範囲における「第1のプラネタリギヤセット」に、「第3ギヤセットPG3」は同じく「第2のプラネタリギヤセット」にそれぞれ相当する。また、「エンジン側(前側)」は特許請求の範囲における「駆動源側」に、「反エンジン側(後側)」は同じく「反駆動源側」にそれぞれ相当する。
【0030】
そして、前記第1ギヤセットPG1は、前記出力ギヤ13の前側、即ち変速機ケース11内の前端部に配置され、第2ギヤセットPG2と第3ギヤセットPG3とは、前記出力ギヤ13の後方において、軸方向のほぼ同一位置で、前者を外周側、後者を内周側として径方向に重ねて配置され、前記第4ギヤセットは、さらにその後方の変速機ケース11内の後端部寄りに配置されている。
【0031】
また、前記変速機ケース11には、前記出力ギヤ13の後方に位置するように、外周壁11aから内方に延びる中間壁11bが設けられ、該中間壁11bの内周部から前方に延びる第1円筒部11cにベアリング14を介して前記出力ギヤ13が回転自在に支持されている。
【0032】
また、中間壁11bと、その後方に位置する前記第2、第3ギヤセットPG2、PG3との間に、第1クラッチCL1及び第2クラッチC2が、前者を外周側、後者を内周側として、軸方向のほぼ同一位置で径方向に重ねて配置されていると共に、前記第2、第3ギヤセットPG2、PG3と前記第4ギヤセットPG4との間に、第3クラッチCL3が配置されている。
【0033】
さらに、前記第4ギヤセットPG4の外周には第1ブレーキBR1が配置され、前記第4ギヤセットPG4とその後方の変速機ケース11の反エンジンE側の端部に設けられた端部縦壁としての後部縦壁11dとの間には第2ブレーキBR2が配置されている。
【0034】
次に、
図2により、前記自動変速機10の構成をさらに詳しく説明する。
【0035】
前記第1〜第3ギヤセットPG1〜PG3は、いずれも、キャリヤに支持されたピニオンがサンギヤとリングギヤとに直接噛み合ったシングルピニオン型プラネタリギヤセットで構成され、第4ギヤセットPG4は、キャリヤに支持された内側ピニオンがサンギヤに、外側ピニオンが前記内側ピニオンとリングギヤとに噛み合ったダブルピニオン型プラネタリギヤセットで構成されている。
【0036】
そして、回転要素として、第1ギヤセットPG1は、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、第1キャリヤC1を有し、第2ギヤセットPG2は、第2サンギヤS2、第2リングギヤR2、第2キャリヤC2を有し、第3ギヤセットPG3は、第3サンギヤS3、第3リングギヤR3、第3キャリヤC3を有し、第4ギヤセットPG4は、第4サンギヤS4、第4リングギヤR4、第4キャリヤC4を有する。
【0037】
また、前記第1サンギヤS1と前記第3キャリヤC3、前記第2サンギヤと前記第3リングギヤR3、前記第2リングギヤR2と前記第4リングギヤR4、前記第3サンギヤS3と前記第4キャリヤC4とは、それぞれ常時連結されており、さらに、前記入力軸12は、前記第1サンギヤS1及び第3キャリヤC3に、前記出力ギヤ13は前記第1リングギヤR1に、それぞれ常時連結されている。
【0038】
ここで、常時連結された前記第2サンギヤS2と前記第3リングギヤR3とは、第3ギヤセットPG3の外周側に第2ギヤセットPG2が重ねられることにより、リング状の単一部品として、或いは2つのリング状部材を溶接や焼嵌め等により直接結合することにより、一体化されている。
【0039】
また、常時連結された前記第3サンギヤS3と前記第4キャリヤC4とは、第3サンギヤS3に連結されて入力軸12の反エンジンE側に同軸上に設けられた動力伝達軸22と、後述する第4キャリヤC4に連結されると共に動力伝達軸22に連結された第3クラッチCL3の外側回転部材16とによって連結されている。
【0040】
一方、前記第1〜第3クラッチCL1〜CL3は、シリンダにピストンP1’、P2’、P3’を嵌合することによって画成された油圧室P1、P2、P3を有し、これらの油圧室P1〜P3に油圧が供給されたときに摩擦板が締結され、内外の回転部材が結合されるようになっている。
【0041】
具体的には、第1クラッチCL1は、油圧室P1への油圧供給時に、外側回転部材に常時連結された第1キャリヤC1と、内側回転部材に常時連結された第2キャリヤC2とを連結し、第2クラッチCL2は、油圧室P2への油圧供給時に、外側回転部材に常時連結された第1キャリヤC1と、内側回転部材に常時連結された第2サンギヤS2及び第3リングギヤR3とを連結し、第3クラッチCL3は、油圧室P3への油圧供給時に、外側回転部材に常時連結された第3サンギヤS3及び第4キャリヤC4と、内側回転部材に常時連結された第2キャリヤC2とを連結する。
【0042】
その場合に、前記第1、第2クラッチCL1、CL2の外側回転部材は、いずれも第1キャリヤC1に常時連結されているので、これらの回転部材は結合されて、両クラッチCL1、CL2で共用される共用回転部材15とされている。
【0043】
そして、この共用回転部材15に設けられ、径方向に重なる前記第1、第2クラッチCL1、CL2の油圧室P1、P2を構成する前方への膨出部15aの内周面が、前記変速機ケース11における中間壁11bの内周端から後方へ延びる第2円筒部11eの外周面に嵌合され、変速機ケース11の前記中間壁11b及び前記第2円筒部11eから、前記内、外周面の嵌合部を介して前記油圧室P1、P2にそれぞれ通じる油圧供給油路a、bが形成されている。
【0044】
第3クラッチCL3については、外側回転部材16が第4キャリヤC4に連結されると共に第3クラッチCL3の油圧室P3を構成し、且つ動力伝達軸22に連結され、内側回転部材16’が第2キャリヤC2に連結されている。第3クラッチCL3の外側には、第2リングギヤR2と第4リングギヤR4とを連結する動力伝達部材17が配置されている。
【0045】
このように、第3クラッチCL3は、変速機ケース11の反エンジンE側において、動力伝達軸22における第4ギヤセットPG4のキャリヤC4と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3とを連結する動力伝達部22aの外周側に配置され、第4ギヤセットPG4と、第2、第3ギヤセットPG2、PG3と、動力伝達部材17とによって囲まれた閉鎖空間内に配置されている。
【0046】
図3は、前記自動変速機の別の要部を拡大した断面図であり、第3クラッチに油圧を供給する油圧供給油路を説明するための説明図である。前述したように、入力軸12の反エンジンE側に動力伝達軸22が設けられ、動力伝達軸22は、第3クラッチCL3の外側回転部材16との連結部より反エンジンE側に延設された延設部22bを有し、該延設部22bは、第4ギヤセットPG4の内側を貫通して反エンジンE側の端部22cが変速機ケース11の後部縦壁11dに回転自在に嵌合されている。
【0047】
図3に示すように、変速機ケース11の後部縦壁11dには、図示しないバルブコントロールユニットから導かれた変速機ケース11の後部縦壁11dに設けられた油路caに連結される凹部11fが形成され、動力伝達軸22の延設部22bは、この凹部11f内に挿入され、軸受部材31を介して変速機ケース11の後部縦壁11dに回転自在に嵌合されている。
【0048】
動力伝達軸22はまた、エンジンE側の端部22dが入力軸12の反エンジン側の端部に形成された凹部12aに挿入され、軸受部材33を介して入力軸12に回転自在に嵌合されている。
【0049】
動力伝達軸22の延設部22bは、動力伝達経路を構成しないことから、動力伝達軸22における第3ギヤセットPG3と第4ギヤセットPG4とを連結する動力伝達部22aに比べて小径とされている。
【0050】
動力伝達軸22の延設部22bには、反エンジンE側の端面から軸方向に延びる油路cbが形成され、具体的には、反エンジンE側の端面から軸方向に延びる油路cb1と、該油路cb1に連通されて径方向に延びる油路cb2とが形成されている。
【0051】
また、動力伝達軸22の延設部22bには軸受部材31よりも反エンジンE側にシールリング32が装着され、変速機ケース11の後部縦壁11dと動力伝達軸22の延設部22bとの嵌合部において変速機ケース11の後部縦壁11dに設けられた油路caと動力伝達軸22に設けられた油路cbとの接続部がシールされている。
【0052】
本実施形態では、第3クラッチCL3の油圧室P3は、
図2及び
図3に示すように、第3クラッチCL3の外側回転部材16によって構成されるシリンダP3”と、該シリンダP3”に嵌合されたピストンP3’とによって画成されている。
【0053】
このようにして、変速機ケース11の後部縦壁11dに設けられた油路caと、動力伝達軸22に設けられて軸方向に延びる油路cbと、第3クラッチCL3の外側回転部材16に設けられて第3クラッチCL3の油圧室P3に連通される油路ccとが、変速機ケース11の後部縦壁11dと動力伝達軸22の延設部22bの端部22cとの嵌合部及び動力伝達軸22と第3クラッCL3の外側回転部材16との連結部を介して連通され、これら油路ca、cb、ccによって第3クラッチCL3に油圧を供給する油圧供給油路cが形成されている。
【0054】
また、前記第1、第2ブレーキBR1、BR2も、それぞれ、シリンダにピストンP4’、P5’を嵌合することによって画成された油圧室P4、P5を有し、これらの油圧室P4、P5に油圧が供給されたときに摩擦板が締結され、第1ブレーキBR1は、常時連結された第2リングギヤR2と第4リングギヤR4とを変速機ケース11に結合して固定し、第2ブレーキBR2は、第4サンギヤS4を変速機ケース11に結合して固定する。そして、第1、第2ブレーキBR1、BR2への油圧供給油路d、eは、変速機ケース11の外周壁11aないし後部壁11dから油圧室P4、P5に直接油圧を供給するように設けられている。
【0055】
なお、図示しないが、前記第2円筒部11eの外周面と、共用回転部材15の膨出部15aの内周面との嵌合部における油圧供給油路a、bの連通部についても、それぞれシールリングによってシールされている。
【0056】
また、図示しないが、各クラッチCL1〜CL3には、非締結時に油圧室P1〜P3の残圧による摩擦板の引き摺りや不必要な締結を防止するための遠心バランス室が設けられ、前記各油圧供給路a〜cとは別に、潤滑油を各遠心バランス室に導入するための油路が設けられている。
【0057】
以上の構成により、この自動変速機10によれば、
図2に示す油圧室P1〜P5に対する油圧の給排制御により、
図4の締結表に示すように、第1〜第3クラッチCL1〜CL3と第1、第2ブレーキBR1、BR2との5つの摩擦締結要素から3つの摩擦締結要素を選択的に締結すれば、前進の1〜8速及び後退速が形成される。
【0058】
即ち、第1クラッチCL1、第3クラッチCL3及び第1ブレーキBR1を締結すれば1速となり、第1クラッチCL1、第1ブレーキBR1及び第2ブレーキBR2を締結すれば2速となり、第1クラッチCL1、第3クラッチCL3及び第2ブレーキBR2を締結すれば3速となり、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2及び第2ブレーキBR2を締結すれば4速となり、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3を締結すれば減速比1の5速となり、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3及び第2ブレーキBR2を締結すれば6速となり、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3及び第1ブレーキBR1を締結すれば7速となり、第2クラッチCL2、第1ブレーキBR1及び第2ブレーキBR2を締結すれば8速となり、さらに、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2及び第1ブレーキBR1を締結すれば後退速となる。
【0059】
その場合に、第1〜第4ギヤセットPG1〜PG4の各ギヤの歯数を例えば
図5に示すように設定すれば、各変速段の減速比及び前進の隣接変速段間のギヤステップ(下段の減速比/上段の減速比)は
図6に示すようになり、各変速段の減速比及び各変速段間でのギヤステップの配分が適切に設定される。
【0060】
ところで、この自動変速機10においては、径方向に重ねて配置された第2、第3ギヤセットPG2、PG3のうちの外周側の第2ギヤセットPG2の第2リングギヤR2と、その後方に配置された第4ギヤセットPG4の第4リングギヤR4とが常時連結され、かつ、第4リングギヤR4と変速機ケース11の外周壁11aとの間に第1ブレーキBR1が配設されているから、変速機ケース11内において、第2〜第4ギヤセットPG2〜PG4の外周側、特に径方向に重ねられた外周側の第2ギヤセットPG2の外周側に他の回転要素を連結する動力伝達部材を配置することができない構造となっている。
【0061】
したがって、2つのプラネタリギヤセットを径方向に重ねて配置した上に、さらにその外周側に動力伝達部材が配設されるものに比べて、変速機の径方向寸法が短縮されることになる。
【0062】
また、この自動変速機10においては、径方向に重ねて配置される第2、第3ギヤセットPG2、PG3における第2サンギヤと第3リングギヤR3とが一体化されており、これによっても、変速機の径方向寸法の短縮が図られている。
【0063】
ここで、前記第2リングギヤR2と前記第4リングギヤR4とを常時連結するに際し、これらのリングギヤR2、R4と、これらを連結する動力伝達部材17とで一体化された筒状構造体18(
図2参照)を形成すれば、径方向の外周側に配置された第2ギヤセットPG2の最も外周側に位置するため径が大きくなり、そのため、軸心に対して傾きやすく、支持が不安定になりやすい第2リングギヤR2が安定して支持されることになる。これにより、ギヤの支持が不安定であることによるギヤ鳴りや耐久性の低下等の不具合の発生が抑制される。
【0064】
また、変速機ケース11の前端部においては、第1ギヤセットPG1の第1サンギヤS1に入力軸12が、第1リングギヤR1に出力ギヤ13がそれぞれ常時連結されているから、該第1ギヤセットPG1の内周側及び外周側に前記入力軸12及び出力ギヤ13以外の動力伝達部材を配置することができず、したがって、この端部においても、プラネタリギヤセットの内周側や外周側に他の動力伝達部材が配設されるものに比べて、変速機の径方向寸法の短縮が可能となる。
【0065】
一方、変速機ケース11内の後端部においては、第4ギヤセットPG4の第4リングギヤR4と変速ケース11の外周壁11aとの間に第1ブレーキBR1が、第4サンギヤS4と変速機ケース11の後部壁11dとの間に第2ブレーキBR2がそれぞれ配設されるから、第4ギヤセットPG4のさらに後側に他の動力伝達部材を配置することができない。
【0066】
したがって、変速機ケースの端部に配置されたプラネタリギヤセットのさらに当該端部側に動力伝達部材が配設されるものに比べて、変速機の軸方向寸法を短縮することが可能となり、前記第2、第3ギヤセットPG2、PG3を径方向に重ねて配置したことに加えて、軸方向寸法が一層効果的に短縮される。また、この自動変速機10においては、第1、第2クラッチCL1、CL2も径方向に重ねて配置され、これによっても軸方向寸法の短縮が図られている。
【0067】
さらに、第4ギヤセットPG4が配置される変速機ケース11の外周壁11aの後端部11a’は、その前方の第2、第3ギヤセットPG2、PG3が径方向に重ねて配置された部位11a”より小径とすることが可能となり、例えばエンジンルームに搭載される場合に、該エンジンルーム内に配設されたフレームやその他の部材等との干渉を回避しやすくなる。
【0068】
このように、自動変速機10によれば、径方向寸法及び軸方向寸法が効果的に短縮され、前進8段の横置き式自動変速機として、コンパクトに構成され、スペースが限られたエンジンルーム内への搭載性に優れた自動変速機10が実現される。
【0069】
また、この自動変速機10によれば、変速機ケース10内の軸方向の中間部において、前記第1ギヤセットPG1と第2、第3ギヤセットPG2、PG3とに挟まれた第1、第2クラッチCL1、CL2に対する油圧の供給を、変速機ケース11の中間壁11b及び第2円筒部11eから直接行うことができる。
【0070】
一方、変速機ケース11の後部縦壁11dとの間に第4ギヤセットPG4を挟んで配置される第3クラッチCL3に対する油圧の供給は、変速機ケース11の後部縦壁11dから、動力伝達軸22に設けられた軸方向に延びる油路cbに連通し、該油路cbから第3クラッチCL3の油圧室P3に導かれる。
【0071】
これにより、変速機ケース11の後部縦壁11dに第4ギヤセットPG4を貫通して軸方向に延びるボス部を設けて該ボス部に設けた油路を経由してクラッチに油圧を供給する場合に比べて、ボス部に設けた油路とクラッチの油圧室との間にシールを設ける必要がなく、クラッチへの油圧供給油路を簡素化することができると共に、反駆動源側において変速機の径方向寸法を短縮することが可能となる。
【0072】
したがって、特に車体幅方向の寸法に制約があるエンジンルーム等に軸心を車体幅方向に向けて搭載される横置き式の自動変速機として、さらに車載性に優れた自動変速機が実現される。
【0073】
また、動力伝達軸22の延設部22bは、動力伝達軸22における第3ギヤセットPG3と第4ギヤセットPG4とを連結する動力伝達部22aに比べて小径とされていることにより、変速機の径方向寸法の更なる短縮が可能となり、自動変速機の車載性をさらに向上させることができる。
【0074】
さらに、動力伝達軸22における第3、第4ギヤセットPG3、PG4を連結する動力伝達部22aの外周側に配置される第3クラッチCL3の外側回転部材16との連結部を介して動力伝達軸22に設けられた油路cbと第3クラッチCL3の油圧室P3とが連通されている。
【0075】
これにより、第3クラッチCL3が第3、第4ギヤセットPG3、PG4を連結する動力伝達部22aの外周側に配置される場合においても、第3クラッチCL3の油圧室P3を形成する第3クラッチCL3の外側回転部材16と動力伝達軸22との間にシールを設けることなく、変速機ケース11の後部縦壁11dから動力伝達軸22の油路cbを通じ、動力伝達軸22と外側回転部材16との連結部を介して第3クラッチCL3の油圧室P3に油圧を供給することができ、クラッチへの油圧供給油路の簡素化を具体的に実現することができる。
【0076】
なお、以上の実施形態では、入力軸12と第3キャリヤC3との連結、動力伝達軸22と第3サンギヤS3との連結、動力伝達軸22と第3クラッチCL3の外側回転部材16との連結がそれぞれ、
図3に示すように溶接によって連結されているが、スプライン嵌合や接着によって連結するようにしてもよい。
【0077】
また、出力部材として出力ギヤ13が用いられ、中間伝動機構2を介してデファレンシャル装置3側に動力を出力するように構成されているが、出力部材としてスプロケットを用い、チェーン伝動機構を介してデファレンシャル装置に動力を伝達するようにしてもよい。