特許第6044561号(P6044561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044561
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20161206BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B60C11/03 B
   B60C5/00 H
   B60C11/03 100C
   B60C11/03 A
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-35642(P2014-35642)
(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-160469(P2015-160469A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年7月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 正和
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−207283(JP,A)
【文献】 特開2005−138678(JP,A)
【文献】 特開2013−180637(JP,A)
【文献】 特開2010−132181(JP,A)
【文献】 特開2011−57141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、
前記トレッド部のセンター領域にタイヤ周方向に延びる第1主溝を設け、前記トレッド部のタイヤ赤道位置よりも車両内側の領域にタイヤ周方向に延びる第2主溝を設け、前記トレッド部のタイヤ赤道位置よりも車両外側の領域にタイヤ周方向に延びて溝幅及び溝深さの少なくとも一方が前記第1主溝及び前記第2主溝よりも小さいサブ溝を設け、
前記第1主溝の中心位置からタイヤ赤道位置までの距離GL1をタイヤ接地幅TLの半幅TL/2の6%以下とし、前記第2主溝の中心位置からタイヤ赤道位置までの距離GL2をタイヤ接地幅TLの半幅TL/2の40%〜65%とし、前記サブ溝の中心位置からタイヤ赤道位置までの距離GL3をタイヤ接地幅TLの半幅TL/2の40%〜65%とし、
前記第2主溝よりも車両内側に第1リブを区画し、前記第2主溝と前記第1主溝との間に第2リブを区画し、前記第1主溝と前記サブ溝との間に第3リブを区画し、前記サブ溝よりも車両外側に第4リブを区画すると共に、
前記トレッド部に、一端が車両内側の接地端に到達し他端が前記第2主溝に対して非連通となるように第1リブ内で閉止した複数本の第1ラグ溝と、一端が前記第2主溝に連通し他端が第1リブ内又は第2リブ内で閉止した複数本の第2ラグ溝と、一端が前記第1主溝に連通し他端が第2リブ内又は第3リブ内で閉止した複数本の第3ラグ溝と、一端が前記サブ溝に連通し他端が第3リブ内で閉止した複数本の第4ラグ溝と、一端が前記サブ溝に連通し他端が第4リブ内で閉止した複数本の第5ラグ溝と、一端が車両外側の接地端に到達し他端が前記サブ溝に対して非連通となるように第4リブ内で閉止した複数本の第6ラグ溝を設けたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第2ラグ溝及び前記第3ラグ溝が車両内側に向かって開口することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1ラグ溝が車両内側の接地端を横切って前記第1リブの車両内側の端部まで延在し、前記第6ラグ溝が車両外側の接地端を横切り、該第6ラグ溝の車両外側の端部が第4リブ内で閉止することを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第2主溝から前記第1ラグ溝のタイヤ赤道側の閉止端までの距離RG1を前記第1リブの接地領域内での幅RL1の15%〜35%とし、前記第2主溝から前記第2ラグ溝の閉止端までの距離RG2を前記第2リブの幅RL2の30%〜65%とし、前記第1主溝から前記第3ラグ溝の閉止端までの距離RG3を前記第3リブの幅RL3の25%〜60%とし、前記サブ溝から前記第4ラグ溝の閉止端までの距離RG4を前記第3リブの幅RL3の15%〜40%とし、前記サブ溝から前記第5ラグ溝の閉止端までの距離RG5を前記第4リブの幅RL4の15%〜40%とし、前記サブ溝から前記第6ラグ溝の両側の閉止端までの距離RG6,RG7をそれぞれ前記第4リブのタイヤ接地領域内での幅RL4の25%〜45%としたことを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1ラグ溝及び前記第6ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度α1,α6をそれぞれ70°〜90°とし、前記第2ラグ溝、前記第3ラグ溝、前記第4ラグ溝及び前記第5ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度α2,α3,α4,α5をそれぞれ45°〜80°としたことを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1主溝及び前記第2主溝の溝幅GW1,GW2をそれぞれ8mm〜16mmとし、前記サブ溝の溝幅GW3を1mm〜2.5mmとしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記第2ラグ溝と前記第3ラグ溝とをタイヤ周方向に沿って交互に配置し、前記第3ラグ溝と前記第4ラグ溝及び前記第5ラグ溝とをタイヤ周方向に沿って交互に配置し、前記第4ラグ溝及び前記第5ラグ溝と前記第6ラグ溝とをタイヤ周方向に沿って交互に配置したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第1ラグ溝、前記第2ラグ溝、前記第3ラグ溝及び前記第5ラグ溝が車両内側に向かって開口し、前記第3ラグ溝が前記第1ラグ溝、前記第2ラグ溝及び前記第5ラグ溝とは逆方向に傾斜することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記トレッド部のタイヤ赤道位置よりも車両外側の領域での溝面積比率が8%〜22%の範囲にあり、前記トレッド部のタイヤ赤道位置よりも車両内側の領域での溝面積比率が22%〜40%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記第1ラグ溝乃至前記第6ラグ溝のタイヤ周方向のピッチ長Lがタイヤ外周長の1.5%〜3.5%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記サブ溝が前記第4ラグ溝及び前記第5ラグ溝よりも浅いことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記第1ラグ溝乃至前記第6ラグ溝がいずれも湾曲し、前記第1ラグ溝、前記第2ラグ溝、前記第3ラグ溝及び前記第6ラグ溝の曲率半径をそれぞれ80mm〜360mmとし、前記第4ラグ溝及び前記第5ラグ溝の曲率半径をそれぞれ8mm〜40mmとしたことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、ウエット性能とドライ性能と耐偏摩耗性をバランス良く改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の高性能化に伴い、空気入りタイヤにおいて、ドライ路面での操縦安定性に代表されるドライ性能と、ウエット路面での操縦安定性に代表されるウエット性能とを高次元でバランス良く改善することが強く求められている。
【0003】
従来、空気入りタイヤにおいては、トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝を設け、これら主溝によりタイヤ周方向に延在する複数列の陸部を区画し、その陸部に対してタイヤ幅方向に延びるラグ溝を設けるようにしている。例えば、トレッド部のセンター領域にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝を設ける一方で、トレッド部のショルダー領域にタイヤ幅方向に延びる複数本のラグ溝を設け、これらラグ溝の端部を陸部内で閉止することで該陸部を複数のブロックに細分化しない構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この場合、トレッド部の剛性が維持されるため、ドライ性能を維持しつつウエット性能の改善を図ることができる。
【0004】
しかしながら、優れたウエット性能を獲得するにはラグ溝成分を十分に確保する必要があり、その結果として、ドライ性能が低下するばかりでなく、耐偏摩耗性が低下するという問題がある。特に、サーキット走行のような過酷な走行環境では、ウエット性能及びドライ性能を改善することに加えて、良好な耐偏摩耗性を維持することが求められるので、従来のトレッドパターンでは必ずしも十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−113652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ウエット性能とドライ性能と耐偏摩耗性をバランス良く改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、
前記トレッド部のセンター領域にタイヤ周方向に延びる第1主溝を設け、前記トレッド部のタイヤ赤道位置よりも車両内側の領域にタイヤ周方向に延びる第2主溝を設け、前記トレッド部のタイヤ赤道位置よりも車両外側の領域にタイヤ周方向に延びて溝幅及び溝深さの少なくとも一方が前記第1主溝及び前記第2主溝よりも小さいサブ溝を設け、
前記第1主溝の中心位置からタイヤ赤道位置までの距離GL1をタイヤ接地幅TLの半幅TL/2の6%以下とし、前記第2主溝の中心位置からタイヤ赤道位置までの距離GL2をタイヤ接地幅TLの半幅TL/2の40%〜65%とし、前記サブ溝の中心位置からタイヤ赤道位置までの距離GL3をタイヤ接地幅TLの半幅TL/2の40%〜65%とし、
前記第2主溝よりも車両内側に第1リブを区画し、前記第2主溝と前記第1主溝との間に第2リブを区画し、前記第1主溝と前記サブ溝との間に第3リブを区画し、前記サブ溝よりも車両外側に第4リブを区画すると共に、
前記トレッド部に、一端が車両内側の接地端に到達し他端が前記第2主溝に対して非連通となるように第1リブ内で閉止した複数本の第1ラグ溝と、一端が前記第2主溝に連通し他端が第1リブ内又は第2リブ内で閉止した複数本の第2ラグ溝と、一端が前記第1主溝に連通し他端が第2リブ内又は第3リブ内で閉止した複数本の第3ラグ溝と、一端が前記サブ溝に連通し他端が第3リブ内で閉止した複数本の第4ラグ溝と、一端が前記サブ溝に連通し他端が第4リブ内で閉止した複数本の第5ラグ溝と、一端が車両外側の接地端に到達し他端が前記サブ溝に対して非連通となるように第4リブ内で閉止した複数本の第6ラグ溝を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、トレッド部のセンター領域に第1主溝を配置し、トレッド部のタイヤ赤道位置よりも車両内側の領域に第2主溝を配置し、トレッド部のタイヤ赤道位置よりも車両外側の領域にサブ溝を配置すると共に、トレッド部に第1ラグ溝乃至第6ラグ溝を分散させて配置することにより、良好なウエット性能を維持しながら、トレッド部の剛性バランスを最適化してドライ性能を改善することができる。しかも、第1ラグ溝乃至第6ラグ溝の端部を閉止し、第1リブ乃至第4リブを細分化しない構造とするので、これが各リブの剛性を維持することと偏摩耗の抑制に大きく寄与する。そのため、上記構成によれば、ウエット路面での操縦安定性に代表されるウエット性能とドライ路面での操縦安定性に代表されるドライ性能と耐偏摩耗性をバランス良く改善することが可能になる。
【0009】
本発明において、第2ラグ溝及び第3ラグ溝が車両内側に向かって開口することが好ましい。これにより、車両外側からの入力に対する第2リブ及び第3リブの剛性を維持し、ドライ路面での操縦安定性を向上することができる。
【0010】
第1ラグ溝は車両内側の接地端を横切って第1リブの車両内側の端部まで延在し、第6ラグ溝は車両外側の接地端を横切り、該第6ラグ溝の車両外側の端部が第4リブ内で閉止することが好ましい。これにより、ドライ性能とウエット性能をバランス良く改善することができる。
【0011】
第2主溝から第1ラグ溝のタイヤ赤道側の閉止端までの距離RG1は第1リブの接地領域内での幅RL1の15%〜35%とし、第2主溝から第2ラグ溝の閉止端までの距離RG2は第2リブの幅RL2の30%〜65%とし、第1主溝から第3ラグ溝の閉止端までの距離RG3は第3リブの幅RL3の25%〜60%とし、サブ溝から第4ラグ溝の閉止端までの距離RG4は第3リブの幅RL3の15%〜40%とし、サブ溝から第5ラグ溝の閉止端までの距離RG5は第4リブの幅RL4の15%〜40%とし、サブ溝から第6ラグ溝の両側の閉止端までの距離RG6,RG7はそれぞれ第4リブのタイヤ接地領域内での幅RL4の25%〜45%とすることが好ましい。これにより、ウエット性能とドライ性能と耐偏摩耗性をバランス良く改善することができる。
【0012】
第1ラグ溝及び第6ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度α1,α6はそれぞれ70°〜90°とし、第2ラグ溝、第3ラグ溝、第4ラグ溝及び第5ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度α2,α3,α4,α5はそれぞれ45°〜80°とすることが好ましい。これにより、ウエット性能とドライ性能と耐偏摩耗性をバランス良く改善することができる。
【0013】
第1主溝及び第2主溝の溝幅GW1,GW2はそれぞれ8mm〜16mmとし、サブ溝の溝幅GW3は1mm〜2.5mmとすることが好ましい。これにより、ドライ性能とウエット性能をバランス良く改善することができる。
【0014】
第2ラグ溝と第3ラグ溝とはタイヤ周方向に沿って交互に配置し、第3ラグ溝と第4ラグ溝及び第5ラグ溝とはタイヤ周方向に沿って交互に配置し、第4ラグ溝及び第5ラグ溝と第6ラグ溝とはタイヤ周方向に沿って交互に配置することが好ましい。このように隣り合うラグ溝同士を千鳥状に配置することにより、トレッド部の剛性バランスを均一化し、ドライ性能と耐偏摩耗性をバランス良く改善することができる。
【0015】
第1ラグ溝、第2ラグ溝、第3ラグ溝及び第5ラグ溝が車両内側に向かって開口する場合、第3ラグ溝は第1ラグ溝、第2ラグ溝及び第5ラグ溝とは逆方向に傾斜することが好ましい。このように第3ラグ溝を第1ラグ溝、第2ラグ溝及び第5ラグ溝とは逆方向に傾斜させることにより、トレッド部の剛性バランスを均一化し、ドライ性能と耐偏摩耗性をバランス良く改善することができる。
【0016】
トレッド部のタイヤ赤道位置よりも車両外側の領域での溝面積比率は8%〜22%の範囲にあり、トレッド部のタイヤ赤道位置よりも車両内側の領域での溝面積比率は22%〜40%の範囲にあることが好ましい。このように車両外側の領域での溝面積比率を相対的に小さくすることにより、コーナリング時の負荷をしっかりと受け止めることができるためドライ路面での操縦安定性が向上し、更にはトレッド部の摩耗を抑制することができる。また、車両内側の領域での溝面積比率を相対的に大きくすることにより、排水性を十分に確保することができる。
【0017】
第1ラグ溝乃至第6ラグ溝のタイヤ周方向のピッチ長Lはタイヤ外周長の1.5%〜3.5%の範囲にあることが好ましい。これにより、ドライ性能とウエット性能をバランス良く改善することができる。
【0018】
サブ溝は第4ラグ溝及び第5ラグ溝よりも浅いことが好ましい。車両外側の領域に位置するサブ溝を浅くすることにより、ドライ路面での操縦安定性を向上し、かつ耐偏摩耗性を向上することができる。
【0019】
第1ラグ溝乃至第6ラグ溝はいずれも湾曲し、第1ラグ溝、第2ラグ溝、第3ラグ溝及び第6ラグ溝の曲率半径はそれぞれ80mm〜360mmとし、第4ラグ溝及び第5ラグ溝の曲率半径はそれぞれ8mm〜40mmとすることが好ましい。このように各ラグ溝を湾曲させることにより、制駆動時や旋回時に損傷を受け易いラグ溝に掛かる力を分散し、偏摩耗を回避することができる。
【0020】
本発明において、各寸法はタイヤを正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で測定されるものである。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤが乗用車である場合には180kPaとする。
【0021】
本発明において、タイヤ接地幅TLは上述した測定条件にて測定されるタイヤ断面幅Tの85%と定義される。溝面積比率とは、タイヤ接地幅TLにて規定される接地領域内での溝面積比率である。この溝面積比率は各領域の総面積(陸部及び溝部を含む)に対する各領域内の溝部の総面積の比率(%)である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す斜視図である。
図2図1の空気入りタイヤを示す正面図である。
図3図1の空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
図4図1の空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。
図5】従来例の空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。
図6】比較例の空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1図4は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。この空気入りタイヤは、車両装着時におけるタイヤ表裏の装着方向が指定されたタイヤである。図1図4において、INは車両装着時の車両内側であり、OUTは車両装着時の車両外側である。このような装着方向はタイヤ外表面の任意の部位に表示される。
【0024】
図1図3に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0025】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0026】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0027】
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
【0028】
図4に示すように、トレッド部1のセンター領域にはタイヤ周方向に延びる第1主溝11が形成され、トレッド部1のタイヤ赤道位置CLよりも車両内側の領域にはタイヤ周方向に延びる第2主溝12が形成され、トレッド部1のタイヤ赤道位置CLよりも車両外側の領域にはタイヤ周方向に延びるサブ溝13が形成されている。第1主溝11及び第2主溝は新品時の最大溝幅が2.5mm以上であり、かつ溝深さが3.5mm以上のものである。一方、サブ溝13は溝幅及び溝深さの少なくとも一方が第1主溝11及び第2主溝12に関する上記規定よりも小さいものである。
【0029】
タイヤ断面幅T(図2参照)の85%をタイヤ接地幅TLとしたとき、第1主溝11の中心位置からタイヤ赤道位置CLまでの距離GL1はタイヤ接地幅TLの半幅TL/2の6%以下に設定され、第2主溝12の中心位置からタイヤ赤道位置CLまでの距離GL2はタイヤ接地幅TLの半幅TL/2の40%〜65%に設定され、サブ溝13の中心位置からタイヤ赤道位置CLまでの距離GL3はタイヤ接地幅TLの半幅TL/2の40%〜65%に設定されている。これにより、第2主溝12よりも車両内側に第1リブ21が区画され、第2主溝12と第1主溝11との間に第2リブ22が区画され、第1主溝11とサブ溝13との間に第3リブ23が区画され、サブ溝13よりも車両外側に第4リブ24が区画されている。
【0030】
更に、トレッド部1には、複数本の第1ラグ溝31、複数本の第2ラグ溝32、複数本の第3ラグ溝33、複数本の第4ラグ溝34、複数本の第5ラグ溝35、複数本の第6ラグ溝36がそれぞれタイヤ周方向に沿って間隔をおいて形成されている。第1ラグ溝31の各々は、一端が車両内側の接地端Einに到達し他端が第2主溝12に対して非連通となるように第1リブ21内で閉止した構造を有している。第2ラグ溝32の各々は、一端が第2主溝12に連通し他端が第2リブ22内で閉止した構造を有している。第3ラグ溝の各々は、一端が第1主溝11に連通し他端が第3リブ23内で閉止した構造を有している。第4ラグ溝の各々は、一端がサブ溝13に連通し他端が第3リブ23内で閉止した構造を有している。第5ラグ溝35の各々は、一端がサブ溝13に連通し他端が第4リブ24内で閉止した構造を有している。第6ラグ溝36の各々は、一端が車両外側の接地端Eoutに到達し他端がサブ溝13に対して非連通となるように第4リブ24内で閉止した構造を有している。ラグ溝31〜36の溝幅及び溝深さは特に限定されるものではなく、例えば、溝幅を3.5mm〜8.0mm(好ましくは4.5mm〜7.5mm)とし、溝深さを3.0mm〜7.0mm(好ましくは4.0mm〜7.0mm)とすれば良い。
【0031】
上述した空気入りタイヤでは、トレッド部1のセンター領域に第1主溝11を配置し、トレッド部1のタイヤ赤道位置CLよりも車両内側の領域に第2主溝12を配置し、トレッド部1のタイヤ赤道位置CLよりも車両外側の領域にサブ溝13を配置すると共に、トレッド部1にラグ溝31〜36を分散させて配置することにより、良好なウエット性能を維持しながら、トレッド部1の剛性バランスを最適化してドライ性能を改善することができる。しかも、ラグ溝31〜36の端部を閉止し、リブ21〜24を細分化しない構造とするので、これが各リブ21〜24の剛性を維持することと偏摩耗の抑制に大きく寄与する。そのため、上記トレッドパターンを有する空気入りタイヤによれば、ウエット性能とドライ性能と耐偏摩耗性をバランス良く改善することができる。
【0032】
ここで、第1主溝11の中心位置からタイヤ赤道位置CLまでの距離GL1がタイヤ接地幅TLの半幅TL/2の6%より大きいとウエット性能が低下する。第1主溝11の距離GL1は半幅TL/2の3%以下であると良い。特に、良好なウエット性能を発揮するために、第1主溝11はタイヤ赤道位置CLと重なる位置に配置されることが望ましい。接地面圧が高いトレッドセンター付近に第1主溝11を配置することで、効率良く排水することができる。なお、第1主溝11はタイヤ赤道位置CLに対して車両内側及び車両外側のいずれの側にずれていても良い。
【0033】
また、第2主溝12の中心位置からタイヤ赤道位置CLまでの距離GL2がタイヤ接地幅TLの半幅TL/2の40%より小さいと第2リブ22の剛性が低下して操縦安定性や耐偏摩耗性が悪化し、逆に65%よりも大きいと第1リブ21の剛性が低下して操縦安定性や耐偏摩耗性が悪化する。
【0034】
更に、サブ溝13の中心位置からタイヤ赤道位置CLまでの距離GL3がタイヤ接地幅TLの半幅TL/2の40%より小さいと第3リブ23の剛性が低下して操縦安定性や耐偏摩耗性が悪化し、逆に65%よりも大きいと第4リブ24の剛性が低下して操縦安定性や耐偏摩耗性が悪化する。第2主溝12の距離GL2とサブ溝13の距離GL3は実質的に等しくするのが良い。
【0035】
上記空気入りタイヤにおいて、第2ラグ溝32は一端が第2主溝12に連通するものであれば良く、その他端は第1リブ21内又は第2リブ22内で閉止することが可能である。同様に、第3ラグ溝33は一端が第1主溝11に連通するものであれば良く、その他端は第2リブ22内又は第3リブ23内で閉止することが可能である。しかしながら、第2ラグ溝32及び第3ラグ溝33は図示のように車両内側に向かって開口することが好ましい。これにより、車両外側からの入力に対する第2リブ22及び第3リブ23の剛性を維持し、ドライ路面での操縦安定性を向上することができる。
【0036】
また、第1ラグ溝31は車両内側の接地端Einを横切って第1リブ21の車両内側の端部まで延在し、第6ラグ溝36は車両外側の接地端Eoutを横切り、該第6ラグ溝36の車両外側の端部が第4リブ24内で閉止することが好ましい。これにより、ドライ性能とウエット性能をバランス良く改善することができる。つまり、デザインエンドまで延長された車両内側の第1ラグ溝31はウエット性能の向上に寄与し、両端が閉止された車両外側の第6ラグ溝36はドライ性能の向上に寄与する。
【0037】
図4において、第2主溝12から第1ラグ溝31のタイヤ赤道側の閉止端までの距離RG1は第1リブ21の接地領域内での幅RL1の15%〜35%の範囲に設定され、第2主溝12から第2ラグ溝32の閉止端までの距離RG2は第2リブ22の幅RL2の30%〜65%の範囲に設定され、第1主溝11から第3ラグ溝33の閉止端までの距離RG3は第3リブ23の幅RL3の25%〜60%の範囲に設定され、サブ溝13から第4ラグ溝34の閉止端までの距離RG4は第3リブ23の幅RL3の15%〜40%の範囲に設定され、サブ溝13から第5ラグ溝35の閉止端までの距離RG5は第4リブ24の幅RL4の15%〜40%の範囲に設定され、サブ溝13から第6ラグ溝36の両側の閉止端までの距離RG6,RG7はそれぞれ第4リブ24のタイヤ接地領域内での幅RL4の25%〜45%の範囲に設定されている。これにより、ウエット性能とドライ性能と耐偏摩耗性をバランス良く改善することができる。
【0038】
ここで、第2主溝12から第1ラグ溝31の閉止端までの距離RG1が第1リブ21の幅RL1の15%よりも小さいと第1ラグ溝31が第2主溝12に近接するため剛性が低下して偏摩耗が発生し易くなり、逆に35%よりも大きいと排水性が低下する。特に、距離RG1は第1リブ21の幅RL1の20%〜30%であることが好ましい。
【0039】
第2主溝12から第2ラグ溝32の閉止端までの距離RG2が第2リブ22の幅RL2の30%よりも小さいと第2リブ22の剛性が上がり過ぎて横力を適度に逃がすことができなくなるため偏摩耗が発生し易くなり、逆に65%よりも大きいと第2リブ22の剛性が下がり過ぎてドライ路面での操縦安定性が低下する。特に、距離RG2は第2リブ22の幅RL2の40%〜55%であることが好ましい。
【0040】
第1主溝11から第3ラグ溝33の閉止端までの距離RG3が第3リブ23の幅RL3の25%よりも小さいと第3リブ23の剛性が上がり過ぎて横力を適度に逃がすことができなくなるため偏摩耗が発生し易くなり、逆に60%よりも大きいと第3リブ23の剛性が下がり過ぎてドライ路面での操縦安定性が低下する。特に、距離RG3は第3リブ23の幅RL3の35%〜50%であることが好ましい。
【0041】
サブ溝13から第4ラグ溝34の閉止端までの距離RG4が第3リブ23の幅RL3の15%よりも小さいと第3リブ23の剛性が上がり過ぎて横力を適度に逃がすことができなくなるため偏摩耗が発生し易くなり、逆に40%よりも大きいと第3リブ23の剛性が下がり過ぎてドライ路面での操縦安定性が低下する。特に、距離RG4は第3リブ23の幅RL3の20%〜30%であることが好ましい。
【0042】
サブ溝13から第5ラグ溝35の閉止端までの距離RG5が第4リブ24の幅RL4の15%よりも小さいと第4リブ24の剛性が上がり過ぎて横力を適度に逃がすことができなくなるため偏摩耗が発生し易くなり、逆に40%よりも大きいと第4リブ24の剛性が下がり過ぎてドライ路面での操縦安定性が低下する。特に、距離RG4は第4リブ24の幅RL4の20%〜30%であることが好ましい。
【0043】
サブ溝13から第6ラグ溝36の両側の閉止端までの距離RG6,RG7が第4リブ24の幅RL4の25%よりも小さいとコーナリング時のウエット性能が低下し、逆に45%よりも大きいとドライ路面での操縦安定性が低下する。特に、距離RG6,RG7は第4リブ24の幅RL4の30%〜40%であることが好ましい。
【0044】
図4において、第1ラグ溝31及び第6ラグ溝36のタイヤ周方向に対する傾斜角度α1,α6はそれぞれ70°〜90°の範囲に設定され、第2ラグ溝32、第3ラグ溝33、第4ラグ溝34及び第5ラグ溝35のタイヤ周方向に対する傾斜角度α2,α3,α4,α5はそれぞれ45°〜80°の範囲に設定されている。これにより、ウエット性能とドライ性能と耐偏摩耗性をバランス良く改善することができる。なお、傾斜角度α1〜α6は第1ラグ溝31乃至第6ラグ溝36の各々において両端の溝幅中心位置同士を結ぶ直線のタイヤ周方向に対する傾斜角度である。
【0045】
ここで、第1ラグ溝31及び第6ラグ溝36のタイヤ周方向に対する傾斜角度α1,α6が70°より小さいと回転時の方向性が強くなり、一方向への回転時に比べて他方向への回転時の排水性が低下することになる。上記トレッドパターンは車両に対する装着方向が指定されるものの、回転方向が指定されるものではない。特に、傾斜角度α1,α6は75°〜85°であることが好ましい。
【0046】
第2ラグ溝32、第3ラグ溝33、第4ラグ溝34及び第5ラグ溝35のタイヤ周方向に対する傾斜角度α2,α3,α4,α5が45°よりも小さいと対応するリブ22,23,24の剛性が低下するため特にドライ路面でのコーナリング時における操縦安定性が低下し、逆に80°よりも大きいと制駆動時に偏摩耗が発生し易くなる。特に、傾斜角度α2〜α5は50°〜70°であることが好ましい。
【0047】
上記空気入りタイヤにおいて、第1主溝11及び第2主溝12の溝幅GW1,GW2はそれぞれ8mm〜16mmとし、サブ溝13の溝幅GW3は1mm〜2.5mmであることが好ましい。これにより、ドライ性能とウエット性能をバランス良く改善することができる。
【0048】
ここで、第1主溝11及び第2主溝12の溝幅GW1,GW2が8mmよりも小さいと排水性が低下し、逆に16mmよりも大きいとコーナリング時に発生する横力により第1主溝11及び第2主溝12の位置でトレッド部1にバックリングが発生し易くなる。特に、溝幅GW1,GW2は10mm〜14mmであることが好ましい。また、第1主溝11及び第2主溝12の溝深さは5mm〜7mmとするのが良い。その溝深さが5mmよりも小さいとウエット性能が低下し、逆に7mmよりも大きいと操縦安定性が低下する。特に、第1主溝11及び第2主溝12の溝深さは5.5mm〜6.5mmであることが好ましい。
【0049】
一方、サブ溝13の溝幅GW3が1mmよりも小さいとウエット性能が低下し、逆に2.5mmよりも大きいと操縦安定性が低下する。特に、サブ溝13の溝幅GW3は第1主溝11及び第2主溝12の溝深さの20%〜90%であることが好ましい。
【0050】
上記空気入りタイヤにおいて、第2ラグ溝32と第3ラグ溝33とはタイヤ周方向に沿って交互に配置され、第3ラグ溝33と第4ラグ溝34及び第5ラグ溝35とはタイヤ周方向に沿って交互に配置され、第4ラグ溝及び第5ラグ溝と第6ラグ溝とはタイヤ周方向に沿って交互に配置されている。このように隣り合うラグ溝同士を千鳥状に配置することにより、トレッド部1の剛性バランスを均一化し、その結果、ドライ路面での操縦安定性を向上し、かつ偏摩耗を回避することができる。
【0051】
また、第1ラグ溝31、第2ラグ溝32、第3ラグ溝33及び第5ラグ溝35が図示のように車両内側に向かって開口する場合、第3ラグ溝33のタイヤ幅方向に対する傾斜方向は第1ラグ溝31、第2ラグ溝32及び第5ラグ溝35のタイヤ幅方向に対する傾斜方向とは逆であることが好ましい。このようにトレッド部1のセンター領域に配置された第1主溝11に開口する第3ラグ溝33を第1ラグ溝31、第2ラグ溝32及び第5ラグ溝35とは逆方向に傾斜させることにより、トレッド部1の剛性バランスを均一化し、その結果、ドライ路面での操縦安定性を向上し、かつ偏摩耗を回避することができる。
【0052】
上記空気入りタイヤにおいて、トレッド部1のタイヤ赤道位置CLよりも車両外側の領域での溝面積比率は8%〜22%の範囲にあり、トレッド部1のタイヤ赤道位置CLよりも車両内側の領域での溝面積比率は22%〜40%の範囲にあると良い。このように車両外側の領域での溝面積比率を相対的に小さくすることにより、コーナリング時の負荷をしっかりと受け止めることができるためドライ路面での操縦安定性が向上し、更にはトレッド部1の摩耗を抑制することができる。特に、車両外側領域での溝面積比率は12%〜20%の範囲にあることが好ましい。また、車両内側の領域での溝面積比率を相対的に大きくすることにより、排水性を十分に確保することができる。特に、車両内側領域での溝面積比率は25%〜35%の範囲にあることが好ましい。
【0053】
第1ラグ溝31乃至第6ラグ溝36のタイヤ周方向のピッチ長Lはタイヤ外周長の1.5%〜3.5%の範囲にあると良い。これにより、ドライ性能とウエット性能をバランス良く改善することができる。第1ラグ溝31乃至第6ラグ溝36のピッチ長Lがタイヤ外周長の1.5%よりも小さいと操縦安定性が低下し、逆に3.5%よりも大きいとウエット性能が低下する。特に、ピッチ長Lはタイヤ外周長の2%〜3%の範囲にあることが好ましい。
【0054】
サブ溝13はそれに連通する第4ラグ溝34及び第5ラグ溝35よりも浅いものとするのが良い。車両外側の領域に位置するサブ溝13を浅くすることにより、ドライ路面での操縦安定性を向上し、かつ偏摩耗や損傷を低減することができる。
【0055】
更に、第1ラグ溝31乃至第6ラグ溝36はいずれも湾曲したものであると良い。そして、タイヤ周方向に延びる第1主溝11又はサブ溝13に連通しない第1ラグ溝31及び第6ラグ溝36の曲率半径RR1,RR6、並びに、第1主溝11又は第2主溝12に連通する第2ラグ溝32及び第3ラグ溝33の曲率半径RR2,RR3はそれぞれ80mm〜360mmとし、サブ溝13に連通する第4ラグ溝34及び第5ラグ溝35の曲率半径RR4,RR5はそれぞれ8mm〜40mmとすると良い。このように各ラグ溝31〜36を湾曲させることにより、制駆動時や旋回時に損傷を受け易いラグ溝31〜36に掛かる力を分散し、偏摩耗を回避することができる。特に、曲率半径RR1,RR2,RR3,RR6は120mm〜240mmとし、曲率半径RR4,RR5は10mm〜25mmとすることが好ましい。ラグ溝31〜36の各々において、単一の曲率半径を適用しても良く、或いは、複数の曲率半径を組み合わせるようにしても良い。なお、曲率半径RR1〜RR6はラグ溝31〜36の中心線上に含まれる湾曲開始点と湾曲終了点とその中間点を通る円弧の曲率半径である。ラグ溝31〜36が屈曲部を有する場合、その屈曲部を除いた部分の平均曲率半径とする。
【実施例】
【0056】
タイヤサイズ205/55R16 91Vで、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、図1図4に示すように、トレッド部のセンター領域にタイヤ周方向に延びる第1主溝を設け、トレッド部のタイヤ赤道位置よりも車両内側の領域にタイヤ周方向に延びる第2主溝を設け、トレッド部のタイヤ赤道位置よりも車両外側の領域にタイヤ周方向に延びるサブ溝を設け、トレッド部に第1リブ乃至第4リブを区画し、トレッド部に第1ラグ溝乃至第6ラグ溝を設けると共に、第1主溝の位置〔GL1/(TL/2)×100%〕と溝幅GW1、第2主溝の位置〔GL2/(TL/2)×100%〕と溝幅GW2、サブ溝の位置〔GL3/(TL/2)×100%〕と溝幅GW3、第1ラグ溝の閉止位置〔RG1/RL1×100%〕と傾斜角度α1、第2ラグ溝の閉止位置〔RG2/RL2×100%〕と傾斜角度α2、第3ラグ溝の閉止位置〔RG3/RL3×100%〕と傾斜角度α3、第4ラグ溝の閉止位置〔RG4/RL3×100%〕と傾斜角度α4、第5ラグ溝の閉止位置〔RG5/RL4×100%〕と傾斜角度α5、第6ラグ溝の閉止位置〔RG6/RL4×100%,RG7/RL4×100%〕と傾斜角度α6を表1及び表2のように設定した実施例1〜5及び比較例1〜4のタイヤをそれぞれ製作した。
【0057】
比較のため、図5に示すように、トレッド部(41)のセンター領域においてタイヤ周方向に延びる複数本の主溝(42)とトレッド部のショルダー領域においてタイヤ幅方向に延びる複数本のラグ溝(43,44)を備えた従来例1のタイヤを用意した。更に、図6に示すように、サブ溝を排除し、ラグ溝を主溝に対して非連通としたこと以外は実施例1と同様の構造を有する比較例5のタイヤを用意した。
【0058】
なお、第1主溝の位置として正値と負値を記載しているが、正値は第1主溝がタイヤ赤道位置よりも車両内側にシフトしている場合を意味し、負値は第1主溝がタイヤ赤道位置よりも車両外側にシフトしている場合を意味する。
【0059】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、ドライ性能(操縦安定性、走行タイム)、耐偏摩耗性、ウエット性能(操縦安定性、ハイドロプレーニング発生速度)を評価し、その結果を表1及び表2に併せて示した。各評価は、試験タイヤをリムサイズ16×7JJのホイールに組み付けて排気量2000ccの後輪駆動車に装着し、ウォームアップ後の空気圧を220kPaとした条件にて行った。
【0060】
ドライ性能:
ドライ路面のサーキットにおいてテストドライバーによる走行試験を実施し、サーキットを7周走行したときの走行タイムを計測すると同時に、その際の操縦安定性を官能評価した。ドライ路面での操縦安定性は従来例1を5点とする10点満点で評価した。この評価点が大きいほどドライ路面での操縦安定性が優れていることを意味する。走行タイムについては、ベストタイムと、ベストタイム及びワーストタイムを除いた5周の平均タイムとを求めた。走行タイムの評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど走行タイムが短いことを意味する。
【0061】
耐偏摩耗性:
ドライ路面のサーキットにおいてテストドライバーによる走行試験を実施し、50kmの連続走行後、トレッド部に生じた偏摩耗の度合いを調べた。耐偏摩耗性については、偏摩耗の度合いを10点満点(10:優、9又は8:良、7又は6:可、5以下:不良)で評価した。この評価点が大きいほど耐偏摩耗性が優れていることを意味する。
【0062】
ウエット性能:
ウエット路面のサーキットにおいてテストドライバーによる走行試験を実施し、その際の操縦安定性を官能評価した。ウエット路面での操縦安定性は従来例1を5点とする10点満点で評価した。この評価点が大きいほどウエット路面での操縦安定性が優れていることを意味する。また、一定の水深条件においてハイドロプレーニングの発生速度を計測した。ハイドロプレーニング発生速度の評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどハイドロプレーニング発生速度が高いことを意味する。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
この表1及び表2から判るように、実施例1〜5のタイヤは、従来例1との対比において、ウエット性能とドライ性能と耐偏摩耗性をバランス良く改善することができた。一方、比較例1,3,5のタイヤは、ドライ性能と耐偏摩耗性が良好であるものの、ウエット性能が劣っていた。また、比較例2,4のタイヤは、ウエット性能が良好であるものの、ドライ性能と耐偏摩耗性が劣っていた。
【符号の説明】
【0066】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
11 第1主溝
12 第2主溝
13 サブ溝
21,22,23,24 リブ
31,32,33,34,35,36 ラグ溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6