(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮熱板は、水平方向に延在するとともに、鉛直方向に、前記切削対象物とは反対方向に延在していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の切削工具。
請求項6に記載の切削設備が備える切削工具を用いて、切削対象物を切削する際に、前記放熱部または前記放熱器に気体を吹き付けることを特徴とする切削工具の冷却方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の切削工具では、下記の問題がある。
(a)切削工具の回転速度は切削条件で決まってしまうため、空気流発生手段で生じる空気流の流速を大きくすることができないので、切刃を冷却する能力が十分ではない。
(b)切削中は、工具本体に取り付けられる切刃が切削対象物に常に接触しているので、空気流が切刃の先までとどかず、切刃自体に熱がこもってしまう。
【0007】
また、例えば、連続鋳造機から得られる高温の鋳片を、高温状態を維持したまま、次工程の加熱炉へ装入する場合には、仮に鋳片に欠陥が発生したときには、エネルギーロスを抑えるために高温状態を維持したまま鋳片表面を切削して、表面欠陥を除去することが望ましい。このように、高温の鋳片(鋼材)の表面を、上述の特許文献1に示す切削工具を用いて切削する場合であって、その切削工具を空冷しようとする場合には、次に示す(A)及び(B)の問題が生じる。
(A)高温の鋼材から上昇気流が生じ、その上昇気流によって切削工具の上方の気体も温度が高くなり、切削工具本体の回転によって発生する空気流発生手段からの気流の温度も高いため、切削工具が冷却されにくい。すなわち、空気流発生手段のみでは、切削工具のうち特に温度が高くなる切刃を冷却する能力が十分ではない。
(B)高温の鋼材に接触している切刃からの熱伝導による熱が大きいだけでなく、その鋼材からの輻射熱も大きいため、切削工具が高温となってしまう。
上記(A)及び(B)の問題に起因して、切削工具が加熱されて、温度が上がってしまい、その状態で切削を続けていくと、切削工具のうち特に刃先の強度が落ち、刃先の寿命が短くなるという問題が生じる。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高温となった鋼材表面を切削する場合であっても、空冷で効果的に冷却可能な切削工具、該切削工具を備える切削設備、及び、該切削設備が備える切削工具の冷却方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下の通りである。
(1)切刃が取り付けられた工具であって、放熱部を有することを特徴とする切削工具。
(2)切刃が取り付けられた工具本体と、該工具本体に固着される放熱器と、を有することを特徴とする上記(1)に記載の切削工具。
(3)前記工具本体及び前記放熱器に流路が形成され、該流路によって、前記工具本体の内部と前記放熱器の内部とが連通していることを特徴とする上記(2)に記載の切削工具。
(4)切刃が取り付けられた工具本体を有し、該工具本体に放熱部が形成されていることを特徴とする上記(1)に記載の切削工具。
(5)前記工具本体に、その内部と外側とを連通する流路が形成されていることを特徴とする上記(4)に記載の切削工具。
(6)前記流路は前記切刃に面することを特徴とする上記(3)または上記(5)に記載の切削工具。
(7)切削対象物からの熱を遮断する遮熱板を有することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の切削工具。
(8)前記遮熱板が複層構造を有していることを特徴とする上記(7)に記載の切削工具。
(9)前記遮熱板は、切削工具の側面から水平方向に延在していることを特徴とする上記(7)または上記(8)に記載の切削工具。
(10)前記遮熱板は、水平方向に延在するとともに、鉛直方向に、前記切削対象物とは反対方向に延在していることを特徴とする上記(9)に記載の切削工具。
(11)上記(1)ないし上記(10)のいずれか1項に記載の切削工具と、前記放熱部または前記放熱器の周囲に配置される気体噴射ノズルと、を備える切削設備。
(12)上記(11)に記載の切削設備が備える切削工具を用いて、切削対象物を切削する際に、前記放熱部または前記放熱器に気体を吹き付けることを特徴とする切削工具の冷却方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高温となった鋼材表面を切削工具で切削する場合であっても、放熱器または放熱部を通じて、クーラントを用いない空冷で切削工具を効果的に冷却可能とし、切削工具及び該切削工具に取り付けられる切刃の温度上昇及び摩耗を防いで、切刃の寿命を長くなる。また、その放熱器または放熱部に気体を吹き付けることによって、更に、切削工具から放熱することを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。以下の説明では、第1実施形態から第3実施形態が記載される。これらの実施形態の切削工具は、その一部として、切刃が取り付けられた工具からの放熱機能を発揮する放熱部を有している点で共通している。まずは、本発明の第1実施形態について説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の切削工具を示す側面図である。
図1に示すように、切削工具1は、切刃2と、該切刃2が複数取り付けられる工具本体3と、該工具本体3に固着される放熱器4と、工具本体3に装入されるアーバー5と、を有している。
図1は、切削工具1の構成要素がそれぞれ分離されている状態を示している。
【0014】
切削対象物10の上方に切削工具1が配置され、工具本体3の底面が切削対象物10に対面している。切削工具1は、工具本体3から水平方向に延在するとともに、鉛直方向に、切削対象物10とは反対方向に延在する遮熱板7を有することが好ましい。該遮熱板7によって、高温の切削対象物10から生じる上昇気流が遮断されて、気流によって切削工具1(放熱器4)の周りの気体の温度が高くなることが防止される。また、
図1によれば、遮熱板7は、貫通穴が中央部に形成されていて、工具本体3を貫通穴に嵌めて、工具本体3と放熱器4とに挟まれることで固定される構成となっているが(
図3参照)、この構成に限らず、例えば、後述する切刃保持部3bなどの側面から水平方向に延在するように、遮熱板7を工具本体3に設けてもよい。遮熱板7は、本来、工具本体3及び放熱器4を取り囲むことになるが、説明のため、
図1においては、遮熱板7のみを断面で示している。
【0015】
切削工具1の上方には、回転する主軸11aを有する工作機械11が上下方向に変位可能に配置される。略円柱状であるアーバー5が取り付けられた状態で主軸11aが回転して、切削工具1が回転する。切削工具1が回転している間に工作機械11を下方向に移動させることで切削工具1が切削対象物10に近づき、複数の切刃2が切削対象物10の表面に接触する。これにより、切削対象物10の表面が切削される。
【0016】
図2は、
図1の切削工具を示す底面図であり、2つの形態の底面を示している。
図2(a)及び(b)に示す両形態ともに、工具本体3の底面は円形状となっており、切刃固定部31と切屑ポケット32とが、その底面に円環状に複数形成されている。切刃固定部31には切刃2が取り付けられる。
図1及び
図2は、2つの切刃固定部31に切刃2が取り付けられている状態を示している。切刃2は、生産効率を確保する観点から、4個以上設置されていることが好ましい。
【0017】
切刃2には貫通穴が形成され、切刃固定部31には取付孔31aが設けられている。切刃2を切刃固定部31に嵌めて、次いで、ボルト33を切刃2の貫通穴を介して取付孔31aに固定して、切刃2を切刃固定部31に固定する。なお、切刃2により切削対象物10が削られて発生する切屑は、切刃固定部31に隣接する切屑ポケット32に溜まる。切刃ポケット32は、
図2(a)及び(b)に示すように工具本体3の回転方向Rにおける切刃固定部31の前に設けてもよいし、
図2(b)に示すように工具本体3の外側へ通ずる溝形状としてもよい。
図1及び
図2に示すように、切刃2は直方体形状となっており、切刃固定部31は切刃2の嵌め込みが可能な形状となっているが、本発明はこの形状に限られず、切刃2及び切刃固定部31は、切削対象物10の切削に適する形状であればよい。
【0018】
図3は、
図1の切削工具を示す断面図である。
図1及び
図3に示すように、工具本体3は本体部3aと切刃保持部3bとからなる。本体部3aは中空の略円錐台形状をしており、切刃保持部3bは略円板形状をしている。工具本体3の中空部分にアーバー5が装入される。切刃2の底面2aが水平面40に対して所定の角度θで傾斜して、切刃2が本体部3aの底面(切削工具1の底面)に取り付けられる。角度θが適当な範囲にあれば、本体部3aに大きな負荷をかけることもなく切削対象物10の表面を薄く削ぎ得て、かつ、切刃2と切削対象物10との間の空間が十分に確保され、後述する放熱器4によって、温度上昇を防ぎつつ切刃2及び本体部3aを効果的に除熱する。
【0019】
図1及び
図3に示すように、放熱器4は本体部4aと放熱部4bとからなる。本体部4aは中空の略円錐台形状をしており、この中空部分の内周面が、工具本体3の本体部3aの側面に適合するように傾斜している。放熱部4bは円板状の放熱板で構成され、この放熱板は、本体部4aの側面から水平方向に沿って外側へ突出するように、鉛直方向に沿って所定間隔を持って本体部4aに複数設けられている。この形状によって、外気に接触する放熱器4の表面積が大きくなる。放熱器4が工具本体3に重なって、放熱器4の内周面が工具本体3の側面に接触する。これにより、工具本体3から放熱器4に熱が伝導する(逃げる)。放熱器4と工具本体3との間には、熱伝導性を高める密着材(図示せず)を挟んでおくことが好ましい。熱がより伝導しやすくなるからである。
【0020】
放熱器4が重ねられた工具本体3の中空部分にアーバー5が装入された状態で、
図1〜3に示すように、貫通穴が形成されたストッパ51をアーバー5の底面に接触させ、この貫通穴にボルトを通して、このボルトを、アーバー5の底面に設けられた取付孔に固定することで、ストッパ51によってアーバー5を工具本体3に固定する。アーバー5が工具本体3に固定されると、アーバー5の外周に形成された突出部5aが放熱器4を工具本体3に押え付ける。これにより、放熱器4が工具本体3に固着される。
【0021】
アーバー5の上部には、接続部材52が嵌り込む窪みが設けられており、主軸11aの底面にも、接続部材52が嵌り込む窪みが設けられている。これらの窪みに接続部材52が嵌り込むことで、アーバー5が主軸11aに接続される。なお、工作機械11によっては、接続部材52を用いずとも、主軸11aにアーバー5を取り付けることが可能な場合もある。
【0022】
切削対象物10が高温の鋼板の場合、その切削対象物10の表面を切刃2で切削すると、切削対象物10の近傍から上昇気流が生じ、その上昇気流によって切削工具1の上方の気体も温度が高くなる上に、切削対象物10に接触している切刃2からの熱伝導による熱が大きくなり、更に、切削対象物10からの輻射熱も大きいので、切刃2から工具本体3の切刃保持部3bを経由して本体部3aに、熱が大量に伝わる。この大量の熱は、工具本体3には放熱器4が固着されているため、工具本体3から本体部4aに伝導し、次いで、放熱部4bへ伝導する。放熱器4の本体部4aに複数設けられた放熱部4bの形状によって、放熱部4bが大気に接触している表面積は大きくなり、放熱部4bを構成している複数の放熱板の隙間へ熱が伝達しやすい。よって、放熱器4で除熱される切刃2及び工具本体3は温度上昇しにくい。
【0023】
工具本体3は、切刃2を保持可能な剛性を有する材料からなることが好ましく、この剛性を有する材料としては、一般的な炭素鋼や工具鋼が挙げられる。切削反力に耐え得る剛性を有すれば、銅やアルミニウムなどの熱伝導率が高い材料からなることがより好ましい。放熱器4も熱伝導率が高く、回転によって形状が維持されるとともに加工しやすい材料が好ましく、例えば、アルミニウムや銅が挙げられる。アーバー5の材料は特に限定されるものではなく、従来の工作機械に用いられる材料を用いればよい。
【0024】
放熱器4は、例えば、旋盤で円筒を、その軸方向で順々に、その径方向内側に深くなるような溝を円筒表面に複数形成するように加工することで、製造することが可能である。これにより、中空の略円錐台形状となった本体部4a、及び、該本体部4aから水平方向に突出する複数の円板状の放熱板が形成される。しかしながら、本発明において、放熱器4は、この形状に限定されず、切削工具1の回転により変形することのない剛性を保つことができる形状であればよく、また、放熱部4bを、いわゆるフィン構造としているが、多数の貫通穴が形成されたロータス構造としてもよい。
【0025】
工具本体3の製造方法について、(a)例えば、旋盤で円筒の一部を中空の略円錐台形に削って、本体部3aを形成し、(b)次いで、該本体部3aから延びている円筒部分(切刃保持部3bに相当)の端面に、フライス盤などで切刃固定部31と切屑ポケット32とを形成する。このようにして、工具本体3を製造することが可能である。
【0026】
切削工具1では、工具本体3に放熱器4が固着されている形態となっているが、工具本体3の一部として放熱器4の放熱部4bを形成する形態としても、放熱部4bは、放熱器4が工具本体3に固着されている形態と同様に、工具本体3からの放熱機能を発揮する。なお、
図1及び
図3では工具本体3の本体部3aは略円錐台形状としてあるが、本体部3aの形状はこの形状に限られず、例えば円柱状であってもよい。本体部3aの形状に合わせて、放熱器4の本体部4aの内周面の形状も適宜変更できる。
【0027】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の切削工具101は、第1実施形態の工具本体3と放熱器4とが一体成型物となった形態の切削工具である。
図4は、本発明の第2実施形態の切削工具を示す側面図であり、
図5は、
図4の切削工具を示す断面図である。
図4及び
図5に示される符号のうち、
図1〜3と共通する構成は、
図1〜3と同一の符号で示し、かつ、説明を省略する。
【0028】
図4に示すように、切削工具101は、切刃2と、該切刃2がその底面に複数取り付けられる工具本体103と、該工具本体103に装入されるアーバー105と、を有している。工具本体103は、本体部103aと切刃保持部103bと放熱部103cとからなり、該放熱部103cは、本体部103aの側面から水平方向に沿って外側へ突出するように、鉛直方向に沿って所定間隔を持って本体部103aに形成されている。第2実施形態の放熱部103cは、第1実施形態の切削工具1における放熱部4bに相当し、形状、機能及び作用も放熱部4bと同様である。第2実施形態の本体部103aは、第1実施形態の切削工具1における工具本体3と本体部4aとの一体成型されたものに相当する。また、切刃保持部103bから、水平方向に適当な長さ分延在し、鉛直方向に、切削対象物10とは反対方向に延在する遮熱部103dを形成してもよい。遮熱部103dは、第1実施形態の切削工具1の遮熱板7の機能を発揮し、高温の切削対象物10から生じる上昇気流を遮断する。遮熱部103dは、本来、放熱部103cを取り囲むことになるが、説明のため、
図4においては、遮熱部103dを断面で示している。
【0029】
図5に示すように、工具本体103には、その内部と外部とを連通する流路111が形成されていることが好ましく、この流路111を冷却気体が通過する。放熱部103cを構成する複数の円板状の放熱板の隙間に面する本体部103aの部分に、流路111が形成されている。この流路111は、工具本体103の内部にまで延在している。流路111は、更に、切刃保持部103bの内部にまで延在して、切刃2に面してもよい。
図5に示すように、流路111は、冷却気体が切削対象物10に向かわないように、工具本体103において、切削対象物10とは反対側へ通ずるように形成されている。
【0030】
また、高温となる切削対象物10に対面するストッパ51は、切削対象物10から工具本体103に伝わる輻射熱量を抑える遮熱板の機能を発揮するので、複層構造にして、高温側の放射率を低く抑えるとよい。また、第1実施形態の切削工具1において、ストッパ51に接触していたアーバー5及び切刃保持部3bの底面部分(
図3参照)に対応するアーバー105及び切刃保持部103bの底面部分に、
図5に示すように、流路111に連通する中空部113を形成してもよい。これにより、流路111からの冷却気体によってストッパ51を冷却し得る上に、中空部113が熱抵抗になり、切削対象物10からストッパ51を介して切刃保持部103bに伝わる熱量を抑え得る。
【0031】
更には、アーバー105には流路112が形成されており、アーバー105が工具本体103に装入された状態で、流路112と流路111とが連通する。流路111から冷却気体を噴出させることで、放熱部103cと通して工具本体103をより冷却することができる。
【0032】
更には、工作機械の主軸には流路が形成される(図示せず)とともに、接続部材102にも流路106が形成されており、工具本体103が主軸に取り付けられた際には、流路111は、流路106及び工作機械の流路にも連通する。工作機械の流路と接続部材102の流路106とを経由して、流路112及び流路111へ冷却気体が供給され、次いで、放熱部4bを構成する複数の放熱板の隙間に形成される、流路111の出口から、この冷却気体が噴射される。
【0033】
図5では、流路111は、本体部103aにのみ形成されている形態が示されているが、本発明はこの形態に限らず、放熱部103cに流路111を形成して、放熱部103cの内部を冷却気体が通過可能となるようにしてもよい。また、
図5の形態に倣い、第1実施形態の切削工具1(
図1及び
図3)において、工具本体3、放熱器4及びアーバー5に、第2実施形態の流路111,112に相当する流路を形成してもよい。
【0034】
なお、工具本体103は、第1実施形態の工具本体3及び放熱器4の成型方法に準じた方法により成型することができる。工具本体103に流路111を形成する場合には、本体部103aと切刃保持部103bと放熱部103cが形成し終えた後に、複数の放熱板の隙間に面する本体部103aの部分に、例えばドリル盤などで貫通穴を設ければ、流路111を形成することができる。
【0035】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態について説明する。
図6は、本発明の第3実施形態の切削工具を示す断面図であり、
図7は、
図6の切削工具に固着される放熱器を示す平面図である。
図6及び
図7に示される符号のうち、
図1〜3と共通する構成は、
図1〜3と同一の符号で示し、かつ、説明を省略する。
【0036】
図6に示すように、切削工具201は、切刃2と、該切刃2がその底面に複数取り付けられる工具本体3と、該工具本体3に固着される放熱器204と、工具本体3に装入されるアーバー5と、を有している。放熱器204は本体部204aと放熱部204bとからなる。放熱部204bは複数の突起からなり、この突起は、本体部204aの側面から鉛直方向に沿って上方へ突出するように、水平方向に沿って所定間隔を持って本体部204aに複数設けられている。この突起を上方へ突出するように形成すれば、放熱部204bは、切削対象物10からの、輻射熱や対流伝達による熱の影響を受けにくくなると同時に、放熱部204bからの熱が上昇気流として上方へ移動しやすくなる。
【0037】
図7に示すように、放熱部204bの突起を円弧形状にすることが好ましい。放熱部204bの突起を円筒形状にしてもよいが、突起が円弧形状である場合には、円筒形状の場合と比べて、複数の突起間の隙間205がより多く形成されているため、隙間205を気体が通過することが可能となり、外気に接触する放熱器204の表面積が大きくなる。なお、第1,2実施形態における放熱部4b,103cの放熱板を、複数の突起からなるように設計変更してもよい。なぜならば、第1,2実施形態の放熱部4b,103cでも、突起間の隙間によって外気に接触する表面積が大きくなるからである。
【0038】
更には、工具本体3と放熱器204とに、第2実施形態における工具本体103と同様に流路を形成して、流路に冷却気体を供給してもよい。切削工具201では、工具本体3に放熱器204が固着されている形態となっているが、工具本体3の一部として放熱器204の放熱部204bを形成する形態としても、放熱部204bは、放熱器204が工具本体3に固着されている形態と同様に、工具本体3からの放熱機能を発揮する。なお、図示は省略しているが、切削工具201にも、第1実施形態の切削工具1と同様に、工具本体3の側面から水平方向に延在する遮熱板7を設けてもよい。
【0039】
上記実施形態の切削工具を有する切削設備、及び、切削工具をより効果的に冷却する方法を説明する。
図8は、切削工具を有する切削設備を示す説明図であり、切削工具として第1実施形態で説明した切削工具1を採用しており、該切削工具1で、切削対象物10を切削している状態を示している。切削工具1の代わりに、切削工具101または切削工具201を採用してもよい。
【0040】
切削設備301は、切削工具1、該切削工具1が取り付けられる工作機械11、冷却気体源305、及び、放熱器4の周囲に配置される噴射ノズル(気体噴射ノズル)306、を備える(切削工具1の構成については
図1参照)。噴射ノズル306は、冷却気体源305から供給される冷却気体を放熱部4bに向けて冷却気体を吹き付けることが好ましい。冷却気体を吹き付けることによって、複数の放熱板の隙間にも冷却気体が供給され、また、放熱部4bの周囲には、気体の流れが発生する。その結果、放熱部4bでの放熱が効果的に行われ、切刃2及び工具本体3の除熱が促進される。
【0041】
噴射ノズル306から冷却気体を吹き付ける場合、遮熱板7は、切刃保持部3bの周囲から水平方向に、噴射ノズル306の配置位置まで延在することが好ましく、加えて、遮熱板7は、鉛直方向に切削対象物10とは反対方向に延在することが好ましい。すなわち、遮熱板7は水平方向に延在してから上方向に折り曲がった形状となっている。これにより、遮熱板7で、冷却気体が切削対象物10に直接的に向かうことを防ぎ、切削対象物10の温度低下を抑えることができる。なお、遮熱板7を、切刃保持部3bに取り付ける形態としてもよい。遮熱板7は、工具本体3と同一であってもよいし、異なる場合であっても、耐熱性があり、かつ熱を反射しやすい物質であることが望ましく、また、複層構造にしてもよい。遮熱板7を複層構造とする場合には、切削対象物10に面する側の層を、アルミニウムなどの放射率の低い材料とし、その層からみて切削対象物10とは反対側の放熱部4b側の層を、酸化鉄などの放射率の高い材料とすることが好ましい。この複層構造では、放射率が低い材料で、切削対象物10からの熱線を反射することによって、切削対象物10から放熱部4bへ輻射熱が伝わることをより効果的に抑えることができる。
【0042】
第2実施形態の切削工具101を、噴射ノズル306から冷却気体を吹き付ける対象とする場合には、流路111に冷却気体を供給すると、複数の放熱板の隙間から冷却気体が噴射される。これにより、噴射ノズル306からの冷却気体と、複数の放熱板の隙間から噴射される冷却気体とが、複数の放熱板の隙間で相互に対向するなどして複雑な気流の状態となる。よって、第1実施形態の切削工具1に噴射ノズル306から冷却気体を吹き付ける場合よりも効果的に、対流熱伝達による切刃2及び工具本体3の除熱を行うことができる。なお、この場合には、遮熱部103dが遮熱板7の上記機能を発揮している。
【0043】
第3実施形態の切削工具201を、噴射ノズル306から冷却気体を吹き付ける対象とする場合には、噴射ノズル306で、放熱器204に冷却気体を吹き付けてもよい。その場合には、噴射ノズル306は、放熱器204の上方に設けて、放熱部204b及び隙間205に向けて冷却気体を吹き付けることが好ましい。その場合にも、
図6には示していないが、切刃保持部3bの周囲に、第1実施形態の切削工具1と同様に遮熱板を形成しておくことが好ましい。
【0044】
以上のようにして、工具本体に設けられた放熱器または放熱部を通じて、切削工具を空冷で効果的に冷却可能としている。また、放熱器または放熱部に気体を吹き付けることによって、更に、切削工具から熱を取り除くことを可能としており、ひいては、切刃の寿命も長くなる。なお、本発明の切削工具は、連続鋳造機から得られる鋳片などの高温の鋼材表面を切削する場合に限らず、低温の鋼材表面を切削する場合にも適用することが可能である。