特許第6044584号(P6044584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044584
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】電気パワーステアリング装置用のギア
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/06 20060101AFI20161206BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20161206BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20161206BHJP
   C08L 61/04 20060101ALI20161206BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20161206BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   F16H55/06
   B62D5/04
   C08L23/26
   C08L61/04
   C08L79/00
   C08L77/00
【請求項の数】3
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-95643(P2014-95643)
(22)【出願日】2014年5月7日
(62)【分割の表示】特願2011-106450(P2011-106450)の分割
【原出願日】2006年5月12日
(65)【公開番号】特開2014-209032(P2014-209032A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2014年5月7日
(31)【優先権主張番号】60/680,150
(32)【優先日】2005年5月12日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 健一
(72)【発明者】
【氏名】黒川 貴則
(72)【発明者】
【氏名】新井 大和
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−060759(JP,A)
【文献】 特開平10−141477(JP,A)
【文献】 特開平09−194719(JP,A)
【文献】 特表平02−501313(JP,A)
【文献】 特開2005−088737(JP,A)
【文献】 特開2003−231808(JP,A)
【文献】 特開平04−081464(JP,A)
【文献】 特開平10−025422(JP,A)
【文献】 米国特許第04861828(US,A)
【文献】 特開2004−210879(JP,A)
【文献】 特開2002−020416(JP,A)
【文献】 特開2005−002174(JP,A)
【文献】 特開2004−339454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/06
B62D 5/04
C08L 23/26
C08L 61/04
C08L 77/00
C08L 79/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リダクションギヤメカニズムによりステアリングアシストのために電気モータの回転速度を減速するとともにステアリングメカニズムに回転を伝達するための電気パワーステアリング装置用のギヤであって、ギヤはリダクションギヤメカニズムに導入され用いられており、ギヤの少なくとも歯は
(a)少なくとも1種のポリアミドと、
(b)5〜12重量%の少なくとも1種の衝撃改質剤と、
(c)0.5〜3重量%の少なくとも1種のポリカルボジイミドと
を含む無機強化剤または鉱物充填剤を含まない樹脂組成物から成形されていて、
前記衝撃改質剤(b)はカルボキシル部分を含み、
前記樹脂組成物が前記ポリアミド85〜94.5重量%を含む
ことを特徴とする電気パワーステアリング装置用のギヤ。
【請求項2】
前記衝撃改質剤(b)が、反応性官能基で変性されたエチレンプロピレン−ジエンコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の電気パワーステアリング装置用のギヤ。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、(d)熱可塑性フェノキシ樹脂をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電気パワーステアリング装置用のギヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミド樹脂組成物から形成される電気パワーステアリング装置用のギアに関する。より詳しくは、本発明は衝撃改質剤とポリカルボジイミドと任意選択的にフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とを含むポリアミド樹脂組成物から形成される電気パワーステアリング装置用のギアに関する。ポリアミド組成物は良好な耐衝撃性および剛性を有する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は2005年5月12日出願の米国仮特許出願第60/680150号明細書の利益を請求する。
【0003】
本発明の組成物は自動車用の電気パワーステアリング装置の中の電気モータの回転速度を下げ、パワーアウトプットを上げるために用いられる電気パワーステアリング装置用のギヤのために好ましい。
【背景技術】
【0004】
ポリアミド組成物は、優れた物理的特性、耐薬品性および加工性のゆえに多様な用途で用いられている。一般的な用途には、自動車部品および電気・電子部品が挙げられる。ポリアミドが良好な固有靱性を有するけれども、低弾性ゴム衝撃改質剤がポリアミド組成物の靱性を高めるためにしばしば用いられる。しかし、これらの衝撃改質剤の添加は、得られた樹脂の剛性を下げることがあり得る。剛性は、強化剤および充填剤、特に無機強化剤(例えばガラス繊維)および鉱物充填剤の添加によって改善することが可能であるが、この手段は、加工装置の磨耗、異方性、高い溶融粘度および低い耐加水分解性に関わる更なる問題につながり得る。従って、衝撃改質剤を含むポリアミド組成物であって、追加の強化剤および充填剤を添加する必要なく良好な剛性を有するポリアミド組成物が望ましいであろう。
【0005】
以下の開示は本発明の種々の態様に関連する場合があり、次の通り簡単に要約することができる。
【0006】
反応性官能基により変性されたゴム弾性材料をポリアミド樹脂に添加することにより衝撃強度を著しく改善することが可能であることは知られている。例えば、a)ポリアミド(66ナイロンおよび6ナイロンの混合物)60〜97重量%と、b)(i)カルボキシル官能基またはカルボキシレート官能基を有するゴム弾性オレフィンコポリマーまたは(ii)少なくとも1種のα−オレフィンと少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸のイオンコポリマーであって、三元共重合性モノマーを含むことが可能であり、金属塩基性塩により酸性成分を中和することにより少なくとも部分的にイオン化されているイオン性コポリマーから選択された高分子強化剤3〜40重量%とを含む強化されたポリアミドブレンドは米国特許公報(特許文献1)で開示されている。
【0007】
ポリカルボジイミドの添加によって溶融粘度および耐加水分解性が改善されたポリアミド組成物が開示されている。例えば、独特の流動学的特性および改善された剪断特性を有するポリカルボジイミド変性加工性ポリアミド製品は米国特許公報(特許文献2)で開示されている。カルボジイミド基がポリアミド中の末端COOHとNH2基を橋架けする橋架け剤としてポリカルボジイミドが機能することが開示されている。
【0008】
米国特許公報(特許文献3)には、0.1〜5重量%の芳香族ポリカルボジイミドを含むポリアミド樹脂組成物であって、高温での加水分解に対して安定化されているポリアミド樹脂組成物が開示されている。
【0009】
米国特許公報(特許文献4)には、ポリアミド中にカルボジイミド基対酸末端基の0.10〜3.5モル当量の比で芳香族ポリカルボジイミドまたは脂肪族ポリカルボジイミドを含むポリアミド樹脂組成物が開示されている。
【0010】
ポリアミド組成物の用途は上述した自動車部品を含む。例えば、コラム型電気パワーステアリング装置において、ウォームなどの小さいギヤおよびウォームホイールなどの大きなギヤはリダクションギヤメカニズムとして用いられ、電気モータの回転速度が減速され、パワーアウトプットが小さいギヤから大きなギヤへの伝達によって増大された後、回転はステアリングシャフトに加えられ、よってトルクはステアリング操作を助ける。軽量4ホイール自動車または普通の乗用車、特に比較的小さいサイズの乗用車において用いられる電気パワーステアリング装置において、いわゆる樹脂ギヤは、リダクションギヤメカニズムにおける歯衝撃騒音を減らし、重量を減らし、そして滑り抵抗を減らすことにより騒音レベルを減らす目的で少なくともその歯を従来の金属でなく樹脂から製造している小さいギヤおよび大きなギヤの少なくとも一方のギヤ、特に大きなギヤのために一般に用いられてきた。
【0011】
より詳しくは、ステアリングシャフトに連結されてステアリングシャフトと一体的回転を可能にする環状金属コアの複合構造を有する樹脂ギヤおよび環状ギヤ本体の外周上に歯を有するとともにコアの外周を囲むために形成された樹脂から製造された環状ギヤ本体は、電気パワーステアリング装置のギヤリダクションメカニズムのための大きなギヤとして広く用いられてきた。更に、例えば、MC(モノマーキャステリング)ナイロン、ポリアミド6、ポリアミド66およびポリアミド46などのポリアミド樹脂は、ギヤ本体を形成させるためにベース樹脂として一般に用いられてきた。近年、より大きな自動車の電気パワーステアリング装置においてもリダクションギヤメカニズムのための大きなギヤとして樹脂ギヤを用いる可能性が以前に比べてより研究されてきた。更に、より小さい環境汚染をもたらす燃料効率がより良好な自動車を製造する目的で自動車のサイズに関係なく、従来の電気パワーステアリング装置よりサイズおよび重量がより小さい電気パワーステアリング装置に関する需要が最近生まれてきた。
【0012】
しかし、こうした従来の樹脂ギヤに付随する問題は、大きな自動車の電気パワーステアリング装置または燃料消費を減らすためにサイズを小さくした電気パワーステアリング装置に従来の樹脂ギヤが導入される時、必要な耐久性の性能を十分に確保することができず、ギヤは比較的短期間以内に破壊される。これは、電気モータのパワーアウトプットを増やさなければならず、リダクションギヤメカニズムに伝達されたトルクが、自動車のサイズが大きくなるにつれて増えるからである。更に、電気パワーステアリング装置のサイズが小さくなるにつれて、大きなギヤのモジュールを増やし表面圧力を減らすような手段を講じることが難しくなり、小さいギヤから大きなギヤへ伝達された表面圧力は増える傾向がある。現在、従来の樹脂ギヤはリダクションギヤメカニズムのパワーアウトプットを増やす要件を完全には満たすことができない。
【0013】
従って、リダクションギヤメカニズムのより高いパワーアウトプットへの変換に対応する高い剛性、特に電気パワーステアリング装置が用いられる高温環境で高い強度を維持するために必要な剛性と樹脂ギヤが加えられた応力下で容易に破壊することを防ぐ高い靱性の両方を有する樹脂ギヤを提供することが望ましい。ガラス繊維などの強化繊維とベース樹脂として機能するポリアミド樹脂をブレンドすることにより樹脂組成物の剛性を高めることが可能であることは周知されている。しかし、結果としての問題は樹脂組成物の靱性が大幅に低下することである。なおもう1つの問題は、こうした樹脂組成物から成形された樹脂ギヤがいわゆる攻撃能力を有し、樹脂ギヤと合わせて組み立てられた金属ギヤの歯を容易に損なうか、または磨耗させることである。更に、損傷し磨耗した金属ギヤから生じる微細金属粉末(磨耗粉末)は歯自体を容易に切断するか、または損傷させる。この理由のために、強化繊維を含まない非強化型の樹脂組成物は樹脂ギヤを形成させるために好ましい。非強化樹脂組成物の特性を改善するために種々の研究が行われてきた。
【0014】
例えば、弾性材料とベース樹脂として機能するポリアミド樹脂をブレンドすることにより樹脂組成物の靱性を高めることが可能であることは知られている。しかし、剛性は低下するので、こうした樹脂組成物を用いることにより成形された樹脂ギヤは容易に変形され得る。結果としての問題は、例えば、樹脂ギヤを大きなギヤとして用いる時、小さいギヤを経由して電気モータの回転によってトルクが加えられ、大きなギヤは変形し、小さいギヤからのトルクの伝達比は減少するか、または回転が遅れ、小さいギヤとの係合が容易に損なわれることである。なおもう1つの問題は、こうした樹脂ギヤが即時の変形を受けやすいことに加えて、クリープ変形も容易に樹脂ギヤの中で容易に起き得、クリープ変形は寸法安定性を容易に低下させ、小さいギヤとの係合においてバックラッシの揺らぎを引き起こすことである。
【0015】
剛性が低下するのを防ぎつつポリアミド樹脂の分子量を高めると靱性を高めることが可能であることも知られている。しかし、例えば、種々の添加剤をポリアミド樹脂とブレンドする時、射出成形のための成形材料(ペレットなど)は、樹脂がポリアミド樹脂の融点以上の温度に加熱され溶融される状態において混練後に製造されるか、または製造された成形材料をその融点以上の温度に再び加熱し、射出成形装置のシリンダ内で溶融させ、その後、射出成形装置に連結した金属型に、例えば、複雑な構造の樹脂ギヤの場合にギヤ本体の形状に対応する造形キャビティに樹脂を射出することにより樹脂ギヤを製造する時、ポリアミド樹脂の分解は増し、ポリアミド樹脂の分子量はポリアミド樹脂によって吸収される水分および溶融中の熱の作用下で低下する。結果としての問題は、たとえ高い分子量を有するポリアミド樹脂を用いても、上述したプロセスによって製造された樹脂ギヤの靱性を高めることができないことである。
【0016】
ポリカルボジイミド化合物をポリアミド樹脂にブレンドすることにより樹脂組成物の種々の特性を改善することが可能であることは知られている。例えば、(特許文献5)(請求項1、パラグラフ番号0001、0004〜0007)には、ポリマー芳香族ポリカルボジイミドをポリアミド樹脂に0.1〜5重量%の比でブレンドする場合、特に酸性媒体中での加水分解に対する樹脂組成物の安定性を改善することが可能であることが記載されている。更に、(特許文献6)(請求項1、パラグラフ番号0005、0008、0031、0062)には、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、アクリルゴム、シリコーンゴムおよび弗素含有ゴム、変性ポリオレフィンゴムおよび変性ゴムを含む群から選択された少なくとも1種の弾性材料1〜300重量部をポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂30〜99重量%およびポリカルボジイミド70〜1重量%の合計100重量部にブレンドする場合、樹脂組成物の耐熱性および耐衝撃性を改善することが可能であることが記載されている。更に、(特許文献7)(請求項1、パラグラフ番号0002〜0003、0006〜0007、0012〜0014)には、脂肪族カルボジイミド化合物をポリアミド樹脂にブレンドする場合、加水分解に対する樹脂組成物の安定性、耐油性および金属ハロゲン化物に対する抵抗性を高めることが可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4,346,194号明細書
【特許文献2】米国特許第4,128,599号明細書
【特許文献3】米国特許第5,360,888号明細書
【特許文献4】米国特許出願第2004/0010094号明細書
【特許文献5】特開平6−16933号公報
【特許文献6】特開平9−194719号公報
【特許文献7】特開平11−343408号公報
【特許文献8】米国特許第4,174,358号明細書
【特許文献9】米国特許第2,941,956号明細書
【特許文献10】特公昭47−33279号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】J.Org.Chem.28,2069−2075頁(1963年)
【非特許文献2】Chemical Reviews,81,619−621頁(1981年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
簡単に述べると、そして本発明の1つの態様によると、
(a)約77〜約96.9重量%の少なくとも1種のポリアミドと、
(b)約3〜約20重量%の少なくとも1種の衝撃改質剤と、
(c)約0.1〜約5重量%の少なくとも1種のポリカルボジイミドと
を含み、前記重量%は組成物の全重量に基づくポリアミド組成物が提供される。
【0020】
本発明のもう1つの態様によると、上述した組成物から製造された物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による電気パワーステアリング装置用のギヤを導入しているリダクションギヤメカニズムを有する電気パワーステアリング装置の例を例示している概略断面図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図である。
図3】本発明の実施例および比較実施例で製作された電気パワーステアリング装置用のギヤのための樹脂組成物の曲げ弾性率(GPa)とノッチ付きシャルピー衝撃強度(KJ/m2)との間の関係を例示しているグラフである。
図4】本発明の実施例および比較実施例で製作された樹脂組成物の水吸収比率の変化を例示しているグラフである。
図5】本発明の実施例および比較実施例で製作された樹脂組成物を用いることにより形成された電気パワーステアリング装置用のギヤの耐久性比を例示しているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の組成物はポリアミドと衝撃改質剤とポリカルボジイミドと任意選択的にノボラック樹脂とを含む。
【0023】
(ポリアミド)
本発明の組成物のポリアミドは少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドである。ポリアミドは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーまたはより高次のポリマーであってもよい。2つ以上のポリアミドのブレンドを用いてもよい。適するポリアミドは、ジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体とジアミンの縮合生成物および/またはアミノカルボン酸および/またはラクタムの開環重合生成物であることが可能である。適するジカルボン酸には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸およびテレフタル酸が挙げられる。適するジアミンには、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシリレンジアミンおよびp−キシリレンジアミンが挙げられる。適するアミノカルボン酸は11−アミノドデカン酸である。適するラクタムには、カプロラクタムおよびラウロラクタムが挙げられる。
【0024】
好ましい脂肪族ポリアミドには、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド11、ポリアミド12;ポリ(m−キシリレンアジパミド)(ポリアミドMDX6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9T)、ヘキサメチレンテレフタルアミドとヘキサメチレンアジパミドのポリアミド(ポリアミド6T/66)などの半芳香族ポリアミド、ヘキサメチレンテレフタルアミドと2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドのポリアミド(ポリアミド6T/DT)、ヘキサメチレンイソフタルアミドとヘキサメチレンアジパミドのポリアミド(ポリアミド6I/66)、ヘキサメチレンテレフタルアミドとヘキサメチレンイソフタルアミドとヘキサメチレンアジパミドのポリアミド(ポリアミド6T/6I/66)ならびにこれらのポリマーのコポリマーおよび混合物が挙げられる。
【0025】
適する脂肪族ポリアミドの例には、ポリアミド66/6コポリマー、ポリアミド66/68コポリマー、ポリアミド66/610コポリマー、ポリアミド66/612コポリマー、ポリアミド66/10コポリマー、ポリアミド66/12コポリマー、ポリアミド6/68コポリマー、ポリアミド6/610コポリマー、ポリアミド6/612コポリマー、ポリアミド6/10コポリマー、ポリアミド6/12コポリマー、ポリアミド6/66/610ターポリマー、ポリアミド6/66/69ターポリマー、ポリアミド6/66/11ターポリマー、ポリアミド6/66/12ターポリマー、ポリアミド6/610/11ターポリマー、ポリアミド6/610/12ターポリマーおよびポリアミド6/66/PACM(ビス−p−{アミノシクロヘキシル}メタン)ターポリマーが挙げられる。
【0026】
好ましいポリアミドはポリアミド66である。ポリアミドと他の熱可塑性ポリマーのブレンドを用いてもよい。ポリアミドは、組成物の全重量を基準にして約77〜約96.9重量%、または好ましくは約83〜約94.5重量%で存在する。
【0027】
(衝撃改質剤)
衝撃改質剤は、ポリアミド樹脂を強化するために適するあらゆる衝撃改質剤である。適する衝撃改質剤の例は米国特許公報(特許文献8)に示されている。この特許は本明細書に引用して援用する。好ましい衝撃改質剤は、ポリオレフィン主鎖自体または側鎖のいずれかの上でポリオレフィンに結合されたカルボキシル部分を有するポリオレフィンであるカルボキシル置換ポリオレフィンである。「カルボキシル部分」は、ジカルボン酸、ジエステル、ジカルボン酸モノエステル、酸無水物、モノカルボン酸およびエステルならびに塩の1つまたは複数などのカルボキシル基を意味する。カルボン酸塩は中和されたカルボン酸である。有用な衝撃改質剤は、ポリオレフィン主鎖自体または側鎖のいずれかの上でポリオレフィンに結合されたジカルボキシル部分を有するポリオレフィンであるジカルボキシル置換ポリオレフィンである。「ジカルボキシル部分」は、ジカルボン酸、ジエステル、ジカルボン酸モノエステルおよび酸無水物の1つまたは複数などのジカルボキシル基を意味する。好ましいポリオレフィンは、エチレンと1つまたは複数の追加のオレフィンのコポリマーであり、ここで、追加のオレフィンは炭化水素である。
【0028】
衝撃改質剤は、好ましくは、エチレン/α−オレフィンポリオレフィンなどのオレフィンコポリマーに基づいている。オレフィンコポリマーを調製するために適するオレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘプテンまたは1−ヘキセンなどの2〜8個の炭化水素を有するアルケンが挙げられる。1,4−ヘキサジエン、2,5−ノルボルナジエン、1,7−オクタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンなどのジエンモノマーはポリオレフィンの調製に際して任意選択的に用いてもよい。好ましいオレフィンコポリマーは、エチレンと3〜6個の炭化水素を有する少なくとも1種のα−オレフィンと少なくとも1種の非共役ジエンから誘導されたポリマーである。特に好ましいポリオレフィンは、1,4−ヘキサジエンおよび/またはジシクロペンタジエンおよびエチレン/プロピレンコポリマーから製造されたエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ポリマーである。
【0029】
カルボキシル部分をオレフィンコポリマーに導入して、不飽和カルボキシル含有モノマーと共重合させることによりポリオレフィンの調製中に衝撃改質剤を形成させてもよい。酸、エステル、二酸、ジエステル、酸エステルまたは酸無水物などのカルボキシル部分を含む不飽和グラフト化剤によりポリオレフィンをグラフトすることによってカルボキシル部分を導入してもよい。
【0030】
適する不飽和カルボキシル含有コモノマーまたはグラフト化剤の例には、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸モノエチルエステルの金属塩、フマル酸、フマル酸モノエチルエステル、イタコン酸、ビニル安息香酸、ビニルフタル酸、フマル酸モノエチルエステルの金属塩、およびマレイン酸、フマル酸またはイタコン酸のメチルモノエステルおよびジエステル、プロピルモノエステルおよびジエステル、イソプロピルモノエステルおよびジエステル、ブチルモノエステルおよびジエステル、イソブチルモノエステルおよびジエステル、ヘキシルモノエステルおよびジエステル、シクロヘキシルモノエステルおよびジエステル、オクチルモノエステルおよびジエステル、2−エチルヘキシルモノエステルおよびジエステル、デシルモノエステルおよびジエステル、ステアリルモノエステルおよびジエステル、メトキシエチルモノエステルおよびジエステル、エトキシエチルモノエステルおよびジエステル、ヒドロキシモノエステルおよびジエステル、またはエチルモノエステルおよびジエステルなどが挙げられる。無水マレイン酸は好ましい。
【0031】
好ましい衝撃改質剤は、EPDMポリマーまたは無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/プロピレンコポリマーである。ポリエチレン、ポリプロピレンおよびEPDMポリマーなどのポリオレフィンとカルボキシル部分を含む不飽和化合物でグラフトされたポリオレフィンとのブレンドを衝撃改質剤として用いてもよい。
【0032】
他の好ましい衝撃改質剤は、亜鉛、マンガンまたはマグネシウムなどの二価金属カチオンで部分的に中和されたカルボキシル基含有ポリマーであるイオノマーである。好ましいイオノマーは、亜鉛で部分的に中和されたエチレン/アクリル酸およびエチレン/メタクリル酸コポリマーである。イオノマーは、デラウェア州ウィルミントンの本願特許出願人(Wilmington,DE)からサーリン(Surlyn)(登録商標)登録商標で市販されている。
【0033】
衝撃改質剤は、組成物の全重量を基準にして約2〜約20重量%、または好ましくは約5〜約14重量%で組成物の中に存在する。
【0034】
(ポリカルボジイミド)
ポリカルボジイミドは、脂肪族ポリカルボジイミド、脂環式ポリカルボジイミドまたは芳香族ポリカルボジイミドであることが可能であり、化学式
【0035】
【化1】
【0036】
によって表してもよい。
式中、R基は、脂肪族基、脂環式基または芳香族基を表す。
【0037】
適するR基の例には、2,6−ジイソプロピルベンゼン、ナフタレン、3,5−ジエチルトルエン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチレンフェニル)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルフェニル)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−5−メチルシクロヘキシル)、2,4,6−トリイソプロピルフェニル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンおよびメチルシクロヘキサンなどから誘導された二価基が挙げられるが、それらに限定されない。
【0038】
ポリカルボジイミドは、当業者に知られている様々な方法によって製造することが可能である。従来の製造方法は、米国特許公報(特許文献9)または(特許文献10)、(非特許文献1)、(非特許文献2)に記載されている。典型的には、ポリカルボジイミドは、有機ジイソシアネートの脱炭酸を伴う縮合反応によって製造される。この方法は、イソシアネート末端ポリカルボジイミドをもたらす。
【0039】
ポリカルボジイミドを調製するために、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートまたはそれらの混合物を用いることが可能である。適する例には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネートおよび1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0040】
連鎖停止剤は、重合を制御するとともにイソシアネート以外の末端基を有するポリカルボジイミドを産出するために用いることが可能である。適する連鎖停止剤の例には、モノイソシアネートが挙げられる。適するモノイソシアネートには、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネートおよびナフチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0041】
適する他の連鎖停止剤には、アルコール、アミン、イミン、カルボン酸、チオール、エーテルおよびエポキシドが挙げられる。例には、メタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)モノメチルエーテル、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、クエン酸、安息香酸、シクロヘキサン酸、エチレンメルカプタン、アリールメルカプタンおよびチオフェノールが挙げられる。
【0042】
ポリカルボジイミドを生成させる有機ジイソシアネートの反応は、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−e−ホスホレン−1−オキシドおよび前述の3−ホスホレン異性体などのカルボジイミド化触媒の存在下で行われる。これらの中で、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドは特に反応性である。
【0043】
ポリカルボジイミドは、組成物の全重量を基準にして約0.1〜約5重量%、または好ましくは0.5超〜約3重量%、またはより好ましくは0.5超〜約2重量%で組成物の中に存在する。
【0044】
本発明の組成物の中でポリアミド樹脂とポリカルボジイミドとの間、およびポリカルボジイミドと衝撃改質剤との間で相互作用が存在してもよい。これらの相互作用は、末端ポリアミドカルボキシル基とポリカルボジイミドの中のカルボジイミド基との間の共有結合および衝撃改質剤のカルボキシル部分とポリカルボジイミドの中のカルボジイミド基との間の共有結合を形成させる反応の形態を取ることが可能である。あらゆる共有結合を形成させる反応は、場合によってまたはすべての場合に可逆性であってもよい。これらの起きうる相互作用は、組成物の中のポリカルボジイミドの一部または全部が非結合性相互作用を経由してポリアミドおよび/または衝撃改質剤に結合されて、またはポリアミドおよび/または衝撃改質剤に付随して存在することを意味する。相互作用は、本発明の組成物の靱性および剛性に寄与することが考えられる。
【0045】
(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)
ノボラック樹脂としても知られている熱可塑性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂は、以下の構造(式中、Rの各例は1つまたは複数の置換基を表す)によって表すことが可能である。各置換基は、H、アルキル基、脂環式基およびアリール基から選択してもよい。各芳香族環はH以外の1つを上回る置換基を含んでもよく、H以外のすべての置換基は同じかまたは異なってもよい。
【0046】
【化2】
【0047】
フェノール−ホルムアルデヒド樹脂は、モル過剰のフェノールまたは置換フェノールが存在するように、酸または他の触媒の存在下で少なくとも1種のアルデヒドを少なくとも1種のフェノールまたは置換フェノールと反応させることにより調製することが可能である。適するフェノールおよび置換フェノールには、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、エチルフェノール、プロピルフェノール、p−ブチルフェノール、t−ブチルカテコール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクタフェノール、ヘプチルフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノール−A、ヒドロキシナフタレン、レゾルシノール、ビスフェノールA、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル−2,2−プロパン、イソアミルサリチレート、ベンジルサリチレート、メチルサリチレートおよび2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどが挙げられる。適するアルデヒドおよびアルデヒド前駆体には、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレンおよびトリオキサンなどが挙げられる。1種を上回るアルデヒドおよび/またはフェノールをノボラックの調製に際して用いてもよい。異なるもう2種のフェノール−ホルムアルデヒドのブレンドも用いてよい。従来のプラスチック成形のために用いることが可能であるあらゆる熱可塑性フェノール−ホルムアルデヒドは適する。但し、500〜1500の間の数平均分子量を有するフェノール−ホルムアルデヒドは、最小のそりおよび最適の機械的特性を提供する場合がある。
【0048】
好ましいフェノール−ホルムアルデヒドには、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂およびブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を用いる時、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂は、組成物の全重量を基準にして約0.5〜約10重量%、または好ましくは約2〜約6重量%、またはより好ましくは約2〜約5重量%で存在する。
【0049】
本発明の組成物は、難燃剤、潤滑剤、離型剤、染料および顔料、酸化防止剤および無機充填剤などの他の添加剤を更に含んでもよい。
【0050】
本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、無機強化剤(ガラスおよびガラス繊維を含む)または鉱物充填剤などの強化剤を全く含まない。
【0051】
本発明の組成物は、ブレンドが一体的全体を形成するように高分子成分のすべてが互い内でよく分散され、非高分子原料のすべてが高分子マトリックスに分散され、高分子マトリックスによって結合されている溶融混合されたブレンドである。本発明の高分子成分および非高分子原料を組み合わせるために、いかなる溶融混合方法も用いてよい。
【0052】
例えば、高分子成分および非高分子原料は、単一工程添加を通して一度に、または段階的方式で、例えば、一軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機、ブレンダー、ニーダー、またはバンバリーミキサなどの溶融ミキサに添加してもよく、その後、溶融混合してもよい。段階的方式で高分子成分および非高分子原料を添加する時、高分子成分および/または非高分子原料の一部は最初に添加し、後で添加される残りの高分子成分および非高分子原料と溶融混合し、よく混合された組成物を得るまで更に溶融混合される。
【0053】
本発明の組成物は、例えば、射出成形、ブロー成形、押出、熱成形、溶融キャスティング、真空成形および回転成形などの当業者に知られている方法を用いて物品に成形してもよい。組成物は異なる材料から製造された物品上に重ね成形してもよい。組成物をフィルムまたはシートに押し出してもよい。組成物をモノフィラメントに成形してもよい。
【0054】
得られた物品は、ハウジング、自動車部品、電気製品、電子部品および建設材料を含む様々な用途において用いてもよい。
【0055】
本発明の第2の態様は、自動車用の電気パワーステアリング装置の中の電気モータの回転速度を下げ、パワーアウトプットを上げるために用いられる電気パワーステアリング装置用のギヤに関する。
【0056】
本発明者らによって行われた研究は、少量のポリカルボジイミド化合物をポリアミド樹脂にブレンドすると、上述した種々の特性を改善することが可能であるのみでなく、樹脂ギヤの剛性が低下するのを防ぎつつ靱性を高めることも可能であることを実証した。これは、ポリアミド樹脂の末端官能基であるカルボキシル基とポリカルボジイミド化合物中に存在するカルボジイミド基の相互作用(おそらく付加反応によって引き起こされる架橋)によってポリアミド樹脂の見掛け粘性抵抗が高められるからである。本明細書で述べた粘性抵抗は、粘性成分の固体状態における樹脂の挙動を粘弾性体の挙動によって表す場合の粘性成分である。更に、この相互作用は可逆であり、ペレットを製造するとともに射出成形をおこなうために用いられる溶融プロセスにおいて相互作用が一時的に解消されるけれども、相互作用は冷却プロセスにおいて再び現れ、ポリアミド樹脂の見掛け粘性抵抗は増加する。結果として、上述したプロセスを経由して樹脂ギヤを製造する時に樹脂ギヤの剛性が低下するのを防ぎつつ靱性を高めることが可能である。
【0057】
しかし、2つの成分の間のみの相互作用はなお不十分であり、時には靱性はなお十分に高くない。この理由のために、(特許文献6)に記載されたように靱性の増加の効果をもたらす弾性材料のブレンディングが研究されてきたが、先行技術によって実証されたように、問題は弾性材料のみのブレンディングが剛性を下げるとともに樹脂ギヤの変形を促進することである。更に、(特許文献6)の実施形態のようにポリカルボジイミド化合物の量が多すぎる時、過剰のポリカルボジイミドが架橋され、よってポリアミド樹脂の見掛け粘性抵抗を増加させる効果を得ることを困難にする。更に、架橋されたポリカルボジイミド化合物の塊が樹脂組成物中に現れ、よって樹脂組成物の連続性を落とす。結果としての問題は靱性を大幅に下げることである。
【0058】
本発明の第2の態様は、電気パワーステアリング装置のためのギヤであって、ベース樹脂としてポリアミド樹脂を含むとともに強化繊維を含まない非強化樹脂組成物から形成された樹脂ギヤの少なくとも歯を有する樹脂ギヤとして、従来の樹脂ギヤの剛性と靱性より優れた剛性と靱性を有するギヤを提供する。
【0059】
詳しくは、本発明による電気パワーステアリング装置用のギヤは、リダクションギヤメカニズムによりステアリングアシストのために電気モータの回転速度を減速するとともにステアリングメカニズムに回転を伝達するための電気パワーステアリング装置用のギヤであり、ギヤはリダクションギヤメカニズムに導入され用いられており、ここで、ギヤの少なくとも歯は、
(a)少なくとも末端でカルボキシル基を有するポリアミド樹脂と、
(b)ポリカルボジイミド化合物0.5〜5重量%と、
(c)反応性官能基で変性された弾性材料3〜15重量%と、
を含む非強化型の樹脂組成物から成形されている。
【0060】
樹脂組成物は、好ましくは
(d)熱可塑性フェノキシ樹脂1〜10重量%を更に含む。
【0061】
更に、弾性材料(c)の反応性官能基が、カルボキシル基およびカルボキシレート基から選択される少なくとも1つのタイプであり、弾性材料(c)が反応性官能基で変性されたエチレン−プロピレン−ジエンコポリマーであることが好ましい。
【0062】
本発明は、ポリアミド樹脂の末端官能基であるカルボキシル基とポリカルボジイミド化合物中に存在するカルボジイミド基の相互反応のみでなく、弾性材料を変性する反応性官能基と前述した基のいずれかとの相互作用も用いる。更に、この相互作用は可逆であり、ペレットなどの成形材料を製造するか、またはこうして製造された成形材料を用いて射出成形を行うために用いられる溶融プロセスにおいて相互作用が一時的に解消されるけれども、相互作用は冷却プロセスにおいて再び現れる。結果として、ポリアミド樹脂の見掛け粘性抵抗は増加する。
【0063】
この相互作用が発生した状態において、弾性材料による靱性の増加の作用を維持しつつ剛性の減少は効果的に抑制されることが可能である。その理由は明確ではないが、以下の説明を提供することが可能である。反応性官能基で変性されていない、従って、ポリアミド樹脂またはポリカルボジイミド化合物と相互作用しない従来の弾性材料をブレンドする時、ポリアミド樹脂の見掛け粘性抵抗の減少および樹脂組成物内部で分離された状態で存在する弾性材料による塑性変形の強化のゆえに剛性は明らかに低下する。弾性材料が反応性官能基で変性されて、可逆作用を取ることが可能である。
【0064】
更に、本発明の第2の態様によると、ポリカルボジイミド化合物を全体の樹脂組成物を基準にして0.5〜5重量%の比率でブレンドするので、過剰のポリカルボジイミド化合物の架橋を防ぐことが可能である。その全量がポリアミド樹脂および弾性材料と相互作用し、ポリアミド樹脂の見掛け粘性抵抗を高め、樹脂組成物中で分離されずにポリアミド樹脂と一体的に挙動するように弾性材料を機能させることが可能である。従って、本発明の第2の態様は、従来のギヤの剛性および靱性より優れた剛性と靱性の両方を有する電気パワーステアリング装置用のギヤを提供することが可能である。
【0065】
更に、上述したように吸収された水分によって引き起こされる分解のゆえにポリアミド樹脂の分子量が容易に低下するので、樹脂組成物中の水分の量の厳密な制御が必要とされてきた。本発明の第2の態様により、利点は、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド化合物および弾性材料の相互作用のゆえに見掛け粘性抵抗を維持することが可能なので水分の厳密な制御を必要としないことである。
【0066】
熱可塑性フェノキシ樹脂はポリアミド樹脂による水吸収を抑制するように作用する。この理由のために、本発明の第2の態様による電気パワーステアリング装置のための樹脂を形成させる樹脂組成物が熱可塑性フェノキシ樹脂を含む時、ポリアミド樹脂による水吸収によって引き起こされる電気パワーステアリング装置用のギヤのサイズ変動は減少し、例えば、水吸収および膨潤によって引き起こされる他のギヤとのバックラッシュおよびそれによって引き起こされる係合の劣化を抑制することが可能である。更に、熱可塑性フェノキシ樹脂はポリアミド樹脂の靱性を低下させるが、この低下が成分間の上述した相互作用によって補償され得るので、電気パワーステアリング装置用のギヤは、熱可塑性フェノキシ樹脂を含む時でさえ、高い剛性および良好な靱性を維持することが可能である。
【0067】
弾性材料の反応性官能基がカルボキシル基およびカルボキシレート基の少なくとも1種である時、反応性官能基はポリカルボジイミド化合物中に存在するカルボジイミド基と効果的に相互作用し、よって電気パワーステアリング装置用のギヤの剛性および靱性を更に増加させる。更に、弾性材料が反応性官能基で変性されたエチレン−プロピレン−ジエンコポリマー(EPDM)である時、EPDMがポリアミド樹脂およびポリカルボジイミド化合物との良好な相互溶解度を有するので、電気パワーステアリング装置用のギヤの剛性および靱性を更に増加させることが可能である。更に、EPDMが良好な耐潤滑油性などを有するので、電気パワーステアリング装置用のギヤの耐久性を高めることが可能である。
【0068】
本発明による電気パワーステアリング装置用のギヤにおいて、少なくとも歯は、
(a)少なくとも末端でカルボキシル基を有するポリアミド樹脂と、
(b)ポリカルボジイミド化合物0.5〜5重量%と、
(c)反応性官能基で変性された弾性材料3〜15重量%と、
を含む非強化型の樹脂組成物から成形される。
【0069】
この樹脂組成物が強化繊維を含まない非強化型に限定されている理由は上で記載されている。電気パワーステアリング装置用のギヤの特定の例は、環状ギヤ本体の外周上に歯を有し、コアの外周を囲むように配置されている、ステアリングシャフト上に装備された金属コアと樹脂組成物から形成された環状ギヤ本体の複合構造を有する。
【0070】
こうした複合構造の電気パワーステアリング装置用のギヤは、例えば、コアおよびギヤ本体の形状に対応するキャビティを保持するためのリテーナを有する金属型のリテーナにコアを保持するインサート成形プロセスによって製造することが可能であり、金属型は射出成形装置に連結され、この状態で、射出成形装置の中で溶融した樹脂組成物は型キャビテイに注入され、その後、冷却されて、コアと一体の状態で樹脂本体を形成させる。ギヤ本体の歯が高い寸法精度を有することを要求されるので、例えば、上述したプロセスにおいて用いられた型キャビティ中の歯の形状に対応する形状でなく、後処理によって歯に形成することができる例えばシリンダとして形状調節面を形成し、形状調節面に対応するインサート成形ギヤ本体の外周面上で後処理、例えば切削によって歯を形成させることが好ましい。
【0071】
(ポリアミド樹脂)
従来の周知された多様なポリアミド樹脂のどれでもポリアミド樹脂として用いることが可能であるが、優れた剛性および靱性を有する電気パワーステアリング装置用のギヤを成形することを考慮して、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド6/66コポリマーまたはそれらの混合物を考慮することが可能である。それらの中で、ポリアミド66は好ましい。ポリアミド樹脂は、ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基との相互作用を可能にするために少なくとも終端末端でカルボキシル基をもたなければならない。カルボキシル基を終端末端処理によって除去したポリアミド樹脂においては、予想された効果を得ることができない。
【0072】
(ポリカルボジイミド化合物)
式(1)−N=C=N−R1−(1)によって表された反復単位を有する種々のポリカルボジイミド化合物をポリカルボジイミド化合物(b)として用いることが可能である。
【0073】
式(1)のR1の例は様々な二価有機基を含むが、以下の基は特に好ましい。ポリカルボジイミド化合物は、以下で述べる基の1つを含む単一反復単位よりなるホモポリマーであってもよいか、または2つ以上の異なる基を有する反復単位よりなるコポリマーであってもよい。
【0074】
2,5−ジイソプロピル−1,3−フェニレン、2,6−ジイソプロピル−1,3−フェニレン、4,6−ジイソプロピル−1,3−フェニレン、2,5−ジイソプロピル−1,4−フェニレンおよび2,6−ジイソプロピル−1,4−フェニレンなどのジイソプロピルベンゼンから誘導された二価基。3,5−ジエチル−2,4−トリレン、3,4−ジエチル−2,5−トリレン、3,4−ジエチル−2,6−トリレン、3,5−ジエチル−2,6−トリレン、2,4−ジエチル−3,5−トリレン、2,6−ジエチル−3,5−トリレン、2,4−ジエチル−3,6−トリレン、2,5−ジエチル−3,6−トリレンおよび2,3−ジエチル−4,6−トリレンなどのジエチルトルエンから誘導された二価基。
【0075】
1,3−ナフチレン、1,4−ナフチレン、1,5−ナフチレンおよび1,6−ナフチレンなどのナフチレンから誘導された二価基。1,3−シクロヘキシレンおよび1,4−シクロヘキシレンなどのシクロヘキシレンから誘導された二価基。2−メチル−1,3−シクロヘキシレン、4−メチル−1,3−シクロヘキシレン、5−メチル−1,3−シクロヘキシレンおよび2−メチル−1,4−シクロヘキシレンなどのメチルシクロヘキシレンから誘導された二価基。2,4,6−トリイソプロピル−1,3−フェニレン、2,3,5−トリイソプロピル−1,4−フェニレンおよび2,3,4−トリイソプロピル−1,5−フェニレンなどのトリイソプロピルベンゼンから誘導された二価基。
【0076】
式(2)によって表される二価基。
【0077】
【化3】
【0078】
式中、同じかまたは異なってもよいR2、R3、R4およびR5は、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルフェニル)、4,4’ −メチレンビス(2−エチル−6−メチルフェニル)および4,4’ −メチレンビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)などの1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。
【0079】
式(3)によって表される二価基。
【0080】
【化4】
【0081】
式中、同じかまたは異なってもよいR6、R7、R8およびR9は、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)および4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルシクロヘキシル)などのハロゲン原子または1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。
【0082】
ポリカルボジイミド化合物(b)は、例えば、イソシアネート基のカルボジイミド化反応を強化する触媒の存在下で上述した例の2つの基を含む1つ、2つまたはそれ以上の有機ジイソシアネートのカルボジイミド化反応を行うことにより合成することが可能である。適する触媒の例には、ホスホレンオキシド化合物および金属触媒が挙げられる。ホスホレンオキシド化合物の例には、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−フェニル−3−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−3−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−ホスホレン−1−オキシドおよび3−メチル−3−ホスホレン−1−オキシドが挙げられる。
【0083】
金属触媒の例には、ペンタカルボニル鉄、ノナカルボニル鉄、テトラカルボニルニッケル、ヘキサカルボニルタングステンおよびヘキサカルボニルクロミウムなどの金属カルボニル錯体、ベリリウム、アルミニウム、ジルコニウム、クロミウムおよび鉄などの金属のアセチルアセトン錯体、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート、トリ−t−ブチルホスフェート、トリフェニルホスフェートおよびテトラブチルチタネートなどの燐酸エステルが挙げられる。式(1)によって表される反復単位を有するポリカルボジイミド化合物の重合度は、好ましくは、反応の始めから終わりの段階まで早晩適切な時点で末端イソシアネートを遮断するためにアルコール、アミンまたはモノイソシアネートをブレンドすることにより前述した触媒の存在下で有機ジイソシアネートをカルボジイミド化に供する合成中に制御される。
【0084】
ポリカルボジイミド化合物(b)の重合度は、すなわち、式(1)によって表される反復単位の数は、好ましくは3〜10である。更に、ポリカルボジイミド化合物の分子量は、ポリスチレンのために計算された数平均分子量Mnによって表され、ゲル透過クロマトグラフィによって判明する500〜3000である。重合度または分子量がこの範囲より低い時、ポリアミド樹脂(a)と弾性材料(c)との相互作用が誘発されるとしてもポリアミド樹脂の見掛け粘性抵抗を増加させる十分な効果を得られない場合がある。逆に、重合度または分子量がこの範囲より高い場合、ポリカルボジイミド化合物の分子は大きくなり過ぎ、ポリアミド樹脂(a)と弾性材料(c)との相互作用は困難になる。結果として、いずれの場合も、ギヤの弾性を落とさずに電気パワーステアリング装置用のギヤの靱性を増加させる十分な効果を得られない場合がある。
【0085】
全体の樹脂組成物中のポリカルボジイミド化合物(b)の含有比率は0.5〜5重量%に限定される。ポリカルボジイミド化合物(b)の含有比率が0.5重量%未満である時に生じる問題は、電気パワーステアリング装置用のギヤの靱性を増加させる効果がポリアミド樹脂(a)と弾性材料(c)とのポリカルボジイミド化合物の相互作用によってギヤの弾性の低下なしに得ることができないことである。他方、含有比率が上述した5重量%を上回る場合、過剰のポリカルボジイミド化合物が架橋し、ポリアミド樹脂の見掛け粘性抵抗を増加させる効果を得ることができない。更に、架橋されたポリカルボジイミド化合物の塊が樹脂組成物中に現れ、樹脂組成物の連続性が落ち、よって靱性は大幅に低下する。
【0086】
なおもう1つの問題は、架橋されたポリカルボジイミド化合物の比率が増加し、ポリカルボジイミド化合物とポリアミド樹脂または弾性材料との相互作用が強すぎになり、溶融粘度が樹脂組成物からペレットなどの成形材料を製造する間に、または製造された成形材料を用いることによって行われる射出成形中に溶融プロセスにおいて高過ぎになることである。特に、電気パワーステアリング装置用のギヤを効率的に且つ射出成形プロセスにおいて成形欠陥なしに成形することができないことである。
【0087】
更に、ポリカルボジイミド化合物(b)によって製造されるギヤの弾性を落とさずに電気パワーステアリング装置用のギヤの靱性を増加させる効果を更に強化する観点から、また電気パワーステアリング装置用のギヤの効果的な成形を可能にするために樹脂組成物の溶融粘度を減少させる観点からも、全体の樹脂組成物中のポリカルボジイミド化合物(b)の含有比率が、上述した範囲内で0.5〜3.0重量%、より詳しくは1.5〜2.5重量%であることが好ましい。
【0088】
(弾性材料)
弾性材料(c)の例には、ベース骨格としてゴム、柔らかい樹脂および熱可塑性エラストマーなどの種々の弾性材料を含むとともに、ポリアミド樹脂(a)の末端カルボキシル基またはポリカルボジイミド化合物(b)に含まれるカルボジイミド基と相互作用できる種々の反応性官能基によって変性されたベース骨格の主鎖または側鎖を有する化合物が挙げられる。更に、ポリカルボジイミド化合物(b)に含まれるカルボジイミド基と相互作用できるカルボキシル基およびカルボキシレート基(カルボキシル基の金属塩またはカルボキシル基および有機基のエステル)から選択された少なくとも1つの型の基は反応性官能基として好ましい。反応性基が基の少なくとも1つの型の基である時、それらの基は、ポリカルボジイミド化合物に含まれるカルボジイミド基と効果的に相互作用することが可能であり、電気パワーステアリング装置用のギヤの剛性および靱性を更に改善することが可能である。
【0089】
2〜8個の炭素原子を有する少なくとも2種のオレフィン(エチレン、プロピレンなど)のコポリマーであり、耐潤滑油性およびポリアミド樹脂(a)またはポリカルボジイミド化合物(b)との相互溶解度に優れるオレフィンコポリマーはベース骨格を形成させる弾性材料として好ましい。更に、オレフィンコポリマーは非共役ジエンも含むことが可能である。それらの中で、エチレン、炭素原子数3〜6のα−オレフィンおよびジエンのコポリマー、特にエチレン−プロピレン−ジエンコポリマーは好ましい。ベース骨格がエチレン−プロピレン−ジエンコポリマーであり、無水マレイン酸をグラフトすることによりベース骨格がカルボキシル基で変性されている化合物は、上述した要件を満足させる好ましい弾性材料の例である。
【0090】
全体の樹脂組成物の中の弾性材料(c)の含有比率は3〜15重量%に限定される。弾性材料(c)の含有比率が3重量%未満である時、ポリアミド樹脂(a)およびポリカルボジイミド化合物(b)との弾性材料の相互作用による、ギヤの弾性を低下させずに電気パワーステアリング装置用のギヤの靱性を高める効果を得ることができない。更に、含有比率が15重量%を上回る場合、溶融粘度は、樹脂組成物からペレットなどの成形材料を製造する間、または製造された成形材料を用いることにより行われる射出成形中に溶融プロセスにおいて高すぎになる。結果として、特に射出成形プロセスにおいて効果的且つ成形欠陥なしに電気パワーステアリング装置用のギヤを成形することができない。
【0091】
更に、弾性材料(c)によって製造されるギヤの弾性を落とさずに電気パワーステアリング装置用のギヤの靱性を増加させる効果を更に強化する観点から、また電気パワーステアリング装置用のギヤの効果的な成形を可能にするために樹脂組成物の溶融粘度を減少させる観点から、全体の樹脂組成物中の弾性化合物(c)の含有比率が、上述した範囲内で5〜12重量%、より詳しくは8〜10重量%であることが好ましい。
【0092】
(熱可塑性フェノキシ樹脂)
樹脂組成物は熱可塑性フェノキシ樹脂(d)も含んでよい。熱可塑性フェノキシ樹脂は式(4)によって表される化合物である。
【0093】
【化5】
【0094】
式中、同じかまたは異なってもよいR10、R11およびR12は、水素原子、アルキル基、環式アシル基またはアリール基を表す。樹脂はノボラック樹脂とも呼ばれる。熱可塑性フェノキシ樹脂(d)が配合される場合、ポリアミド樹脂による水吸収が抑制され、ポリアミド樹脂による水吸収によって引き起こされる電気パワーステアリング装置用のギヤのサイズの変化は小さくなり、例えば、水吸収および膨潤によって引き起こされる他のギヤとのバックラッシュおよび結果としての係合の妨害を抑制することが可能である。
【0095】
更に、熱可塑性フェノキシ樹脂(d)はポリアミド樹脂の靱性を低下させるように作用するが、この低下が上述した成分(a)〜(c)間の相互作用によって補償され得るので、電気パワーステアリング装置用のギヤは、熱可塑性フェノキシ樹脂を含む時でさえ、高い剛性および良好な靱性を維持することが可能である。熱可塑性フェノキシ樹脂(d)の分子量は、好ましくは500〜1500である。この範囲において、樹脂組成物にポリアミド樹脂による水吸収を抑制する効果を与えることが可能であり、樹脂組成物の溶融粘度を下げることが可能であり、よって電気パワーステアリング装置用のギヤの効果的な成形を可能にし、成分(a)〜(c)の相互作用によって引き起こされるギヤの弾性の低下なしに電気パワーステアリング装置用のギヤの靱性を高める効果を制約なしに実証することができるからである。式(4)のnの値は、好ましくは、分子量をこの範囲に合わせるように調節される。
【0096】
更に、全体の樹脂組成物中の熱可塑性フェノキシ樹脂(d)の含有比率は、好ましくは1〜10重量%である。熱可塑性フェノキシ樹脂(d)の含有比率が1重量%未満の場合、ポリアミド樹脂による水吸収を抑制する十分な効果を得られない場合がある。更に、含有比率が10重量%を上回る場合、熱可塑性フェノキシ樹脂によって実証されているポリアミド樹脂の靱性の低下の作用が強められ得る。結果として、この作用を成分(a)〜(c)の相互作用によって十分には補償することができず、電気パワーステアリング装置用のギヤの靱性を低下させる場合がある。熱可塑性フェノキシ樹脂(d)によってもたらされるポリアミド樹脂による水吸収を抑制する効果を更に強化するとともに、電気パワーステアリング装置用のギヤの靱性の低下も抑制するために、全体の樹脂組成物の中の熱可塑性フェノキシ樹脂(d)の含有比率は上述した範囲内で1.5〜8重量%、好ましくは2〜6重量%である。
【0097】
上述した成分に加えて、樹脂組成物は、耐熱性を高めるための熱安定剤および高密度ポリエチレン(HDPE)粉末、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)粉末、二硫化モリブデンまたは耐磨耗性を高めるための固体潤滑剤としての弗素含有潤滑剤を更に含んでもよい。樹脂組成物へのこうした成分の導入は、電気パワーステアリング装置用のギヤの耐久性を更に高めることを可能にする。
【0098】
しかし、添加剤の幾つかは、ポリカルボジイミド化合物と優先的に反応することが可能であり、よってポリカルボジイミド化合物とポリアミド樹脂または弾性材料との間の相互作用を妨害する。靱性を高める予想された効果をこうした場合に得ることができないので、ポリカルボジイミド化合物と相互作用しないような添加剤を選択的に用いることが重要である。
(リダクションギヤメカニズムおよび電気パワーステアリング装置)
【0099】
図1は、本発明による電気パワーステアリング装置用のギヤを導入しているリダクションギヤメカニズムを有する電気パワーステアリング装置の例を例示している概略断面図である。
【0100】
図1を参照すると、電気パワーステアリング装置において、電気パワーステアリング装置の上に装備されたステアリングホイール1を有するインプットシャフトの機能を果たす第1のステアリングシャフト2およびラックおよびピニオンメカニズムなどのステアリングメカニズム(図示していない)に動作可能に連結されたパワーシャフトの機能を果たす第2のステアリングシャフト3がトーションバー4を介して同軸で連結されている。
【0101】
第1のステアリングシャフト2および第2のステアリングシャフト3を支持するハウジング5は、例えばアルミニウム合金から製造され、車体(図示していない)上に装備されている。ハウジング5は互いに接合されたセンサハウジング6およびギヤハウジング7を含んでいる。より詳しくは、ギヤハウジング7は円筒形状を有し、その上端での環状エッジ部分7aはセンサハウジング6の低端の外周上で環状ステップ部分6aに接合されている。ギヤハウジング7はリダクションメカニズムの機能を果たすウォームギヤメカニズム8を収容し、センサハウジング6はトルクセンサ9およびコントロールパネル10などを収容している。
【0102】
ウォームギヤメカニズム8は、軸方向に動きが制御されて軸方向に第2のステアリングシャフト3の中央部分と一体で回転することができるとともに、本発明による電気パワーステアリング装置用のギヤの機能を果たすウォームホイール(大きいギヤ)12と、ウォームホイール12に係合され、スプラインカップリング33を介して電気モータMの回転シャフト32に連結されているウォームシャフト11(小さいギヤ、図2参照)とを含む。
【0103】
ウォームホイール12は、第2のステアリングシャフト3との一体回転を可能にするために第2のステアリングシャフト3に接合された環状コア12aと、樹脂組成物から製造され、コア12aの外周を囲み、ギヤ本体12bの外周上に形成された歯を有するギヤ本体12bとを含む。ウォームホイール12は、例えばインサート成形によってコア12aとギヤ本体12bを接合し一体化することにより上述したように形成される。
【0104】
第2のステアリングシャフト3は、上と下からウォームホイール12を夾むように配置された第1のロールベアリング13と第2のロールベアリング14によって軸方向に回転可能に支持される。
【0105】
第1のロールベアリング13の外環15は、センサハウジング6の下端で管状突起6bの中に提供されたベアリング保持穴16に嵌合され保持される。外環15の上端面は環状ステップ部分17に接触し、センサハウジング6に対するその軸上方移動は抑制される。
【0106】
他方、第1のロールベアリング13の内環18は、外部プレス締付けによって第2のステアリングシャフト3に接合される。内環18の下端面はウォームホイール12のコア12aの上端面に接触する。
【0107】
第2のロールベアリング14の外環19は、ギヤハウジング7のベアリング保持穴20に嵌合され保持される。外環19の下端面は環状ステップ部分21に接触し、ギヤハウジング7に対するその軸下方移動は抑制される。
【0108】
他方、第2のロールベアリング14の内環22は第2のステアリングシャフト3上に装備されて、内環22が第2のステアリングシャフト3と一体で回転することができ、軸方向におけるその相対移動が抑制される。更に、内環22は、第2のステアリングシャフト3のステップ部分23と、第2のステアリングシャフト3のねじ込み部分上に締付けられているナット24との間に挟まれている。
【0109】
トーションバー4は、第1のステアリングシャフト2および第2のステアリングシャフト3を通り抜ける。トーションバー4の上端4aは、リンクピン25により第1のステアリングシャフト2に一体的に回転可能に連結され、下端4bはリンクピン26により第2のステアリングシャフト3に一体的に回転可能に連結されている。第2のステアリングシャフト3の下端は、中間シャフト(図示していない)を介してラックおよびピニオンメカニズムなどのステアリングメカニズムに上述したように連結される。
【0110】
リンクピン25は、第1のステアリングシャフト2と同軸で配置されている第3のステアリングシャフト27を連結して、第3のステアリングシャフト27が第1のステアリングシャフト2と一体的に回転することが可能である。第3のステアリングシャフト27はステアリングカラムを構成するチューブ28内部を通り抜ける。
【0111】
第1のステアリングシャフト2の上部分は、第3のロールベアリング29、例えばニードルロールベアリングを介してセンサハウジング6上に回転可能に支持される。第1のステアリングシャフト2の下部分の小径部分30および第2のステアリングシャフト3の上部分の穴31は、回転方向に規定のバックラッシュを提供することにより接合され、第1のステアリングシャフト2と第2のステアリングシャフト3の相対回転を規定範囲に制限している。
【0112】
更に、図2を参照すると、ウォームシャフト11は、ギヤハウジング7によって保持されている第4のロールベアリング34と第5のロールベアリング35によって回転可能に支持されている。
【0113】
第4のロールベアリング34と第5のロールベアリング35の内環36、37は、ウォームシャフト11に対応するネッキング部分により接合されている。更に、外環38、39はギヤハウジング7のそれぞれベアリング保持穴40、41の中に保持されている。
【0114】
ギヤハウジング7は、ウォームシャフト11の円周面の部分に半径方向で面する部分7bを含む。
【0115】
更に、ウォームシャフト11の一端部分11aを支持する第4のロールベアリング34の外環38は、ギヤハウジング7のステップ部分42に接触することにより位置合わせされている。他方、他端部分11bに向けた内環36の移動は、ウォームシャフト11の位置合わせステップ部分43に接触することにより制限される。
【0116】
一端部分11aに向けたウォームシャフト11の他端部分11b(カップリングの側の端部分)の付近のゾーンを支持する第5のロールベアリング35の内環37の移動は、ウォームシャフト11の位置合わせステップ部分44に接触することにより制限される。更に、外環39は、予備圧力調節のためのスクリュー部材45によって第4のロールベアリング34に向けて推進される。スクリュー部材45がギヤハウジング7の中に形成されたねじ込み穴46にねじ込まれる時、スクリュー部材45は、一対のロールベアリング34、35に予備圧力を加え、同時にウォームシャフト11を軸方向に位置あわせする。参照番号47は、予備圧力調節のためにスクリュー部材45を止め固定するためにスクリュー部材45に係合されたロックナットを表す。
【0117】
ギヤハウジング7内部で、ウォームシャフト11とウォームホイール12の少なくとも係合部分Aを含む領域は潤滑剤組成物で充填される。従って、ウォームシャフト11の係合部分Aのみ、または係合部分Aおよび周辺全体、あるいはギヤハウジング7の内側全体は潤滑剤組成物で充填してもよい。
【0118】
本発明は上述した実施方式に限定されない。例えば、本発明による電気パワーステアリング装置用のギヤは、ウォームシャフト11と組み合わせたウォームギヤメカニズム8を構成するウォームホイール12に限定されず、本発明の構成は、特に大きなギヤの中で、フラットギヤ、ベベルギヤ、ハイポイドギヤ、ヘリカルギヤおよびラックギヤなどのリダクションギヤメカニズムを構成する様々なギヤにおいて用いることも可能である。更に、本発明の請求の範囲に記載された特徴の範囲内で種々の修正を行うことが可能である。
【実施例】
【0119】
(実施例1〜12および比較実施例1〜6の調製)
表1〜3に示した成分を2シャフトニーダー内で溶融ブレンドし、押し出し、固化し、ペレットに切断した。原料の量を組成物の全重量を基準にして重量%で示している。
【0120】
(溶融粘度の測定)
得られたペレットサンプルを用いて溶融粘度をカイネス・キャピラリー・レオメータ(Kayness Capillary Reometer)(ヤスダ製作所(Yasuda Seisakusho)、LCRシリーズ)で測定した。0.13±0.01%の含水率を有するペレットで280℃の溶融温度および1,000秒-1の剪断速度で測定を行った。すべての試験を5回繰り返し、結果を平均値として示している。
【0121】
(試験片の調製)
非強化ナイロン樹脂のための標準成形条件を用いて、高さ4.0mm×長さ175mm×幅20mmのISO試験片を上述した得られたペレットから成形した。
【0122】
(物理的特性の測定)
物理的特性を測定するために上述した試験片を用いた。引張伸びはISO527−1/−2に準拠して測定した。弾性率はISO178に準拠して測定した。シャルピー衝撃強度はISO179/1eAに準拠して測定した。初期衝撃エネルギーを2Jに設定したが、破断しなかったサンプルのために15Jに更に増加させた衝撃エネルギーで衝撃を繰り返した。表2の「非破断」は、サンプルが2Jまたは15Jの衝撃エネルギー下で破断しなかったことを示している。
【0123】
(寸法安定性)
実施例7、11および12の組成物を60×60×2mmの板に成形した。流れ方向にある板の長さを測定し、板を50℃および相対湿度95%で500時間にわたり状態調節した。その後、流れ方向にある板の長さを再び測定し、%変化を計算した。%変化は実施例7に関して2.32%、実施例11に関して1.55%、実施例12に関して1.27%であった。
【0124】
以下の材料を実施例および比較実施例の組成物の中の原料として用いた。
ポリアミド樹脂A(ポリアミド6,6):本願特許出願人から入手できるザイテル(Zytel)(登録商標)101。
ポリアミド樹脂B(固相重合ポリアミド6,6):本願特許出願人から入手できるザイテル(Zytel)(登録商標)E50。
衝撃改質剤:無水マレイン酸でグラフトされたEPDMゴム。
ポリカルボジイミド:スタバキソール(Stabaxol)P、バイエル(Bayer)から入手できる芳香族ポリカルボジイミド。
フェノール−ホルムアルデヒド樹脂:スミライトレジン(Sumiliteresin)(登録商標)PR−NMD−202、118℃の軟化温度を有するフェノールノボラック樹脂であり、住友ベークライト(Sumitomo Bakelite Co.Ltd.)から入手できる。
熱安定剤:銅熱安定剤
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
実施例1〜10および比較実施例1〜6から明らかなように、衝撃改質剤およびポリカルボジイミドを含むポリアミド組成物は、ポリカルボジイミドおよび衝撃改質剤を含まないポリアミド組成物を基準として、高い剛性を維持しつつ高い衝撃強度を有する。
【0130】
実施例11および12は、衝撃改質剤およびポリカルボジイミドを含むポリアミド組成物の中のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂の存在が、水分にさらされた時に良好な寸法安定性も有する良好な剛性および衝撃強度を有する組成物につながることを実証している。
【0131】
従って、本明細書で前述した目的と利点を完全に満足させるポリアミド組成物および物品が本発明により提供されたことは明らかである。本発明をその特定の実施形態と合わせて記載してきた一方で、多くの代替案、修正および変種が当業者に対して明らかであることは明白である。従って、添付したクレームの精神および広い範囲内に入るこうしたすべての代替案、修正および変種を包含することが意図されている。
【0132】
(実施例13〜17、比較実施例7、8)
表5および6に示された比率で成分(a)〜(d)を予備混合し、二軸スクリュー(直径40mm)混練押出機を用いることにより溶融状態で混練し、紐様形状に押出成形し、ペレット化することにより、射出成形のための非強化型のペレットを製造した。混練中の樹脂温度は280〜320℃であった。
(a)ポリアミド樹脂:ポリアミド66(本願特許出願人によって製造されたザイテル(Zytel)(登録商標)101、RV=49.5)
(b)芳香族ポリカルボジイミド化合物:スタバキソール(Stabaxol)(登録商標)P(軟化点70℃)、ラインケミー・カンパニー(Rhein Chemie Co.)によって製造されたもの)
(c)弾性材料:無水マレイン酸をグラフトすることによりカルボキシル基において変性されたエチレン−プロピレン−ジエンコポリマー(本願特許出願人)
(d)熱可塑性フェノキシ樹脂:スミライトレジン(Sumilite Resin)(登録商標)PR−NMD−202(軟化点118℃)、住友ベークライト(Sumitomo Bakelite Co.,Ltd.)によって製造されたもの
【0133】
(比較実施例9〜13)
以下で記載したポリアミド樹脂を個々に用いたことを除き、実施例13〜17および比較実施例7と8と同じ方式で非強化ペレットを製造した。
(i)射出成形用の標準粘度66ナイロン(本願特許出願人によって製造された「ザイテル(Zytel)」(登録商標)103HS)
(ii)押出成形用の高粘度66ナイロン(本願特許出願人によって製造された「ザイテル(Zytel)」(登録商標)42A)
(iii)押出成形用の超高衝撃66ナイロン(本願特許出願人によって製造された「ザイテル(Zytel)」(登録商標)ST801)
(iv)射出成形用の低粘度(高サイクル)6ナイロン(宇部興産(Ube Industries Ltd.)によって製造された「UBE」ナイロン1013B)
(v)射出成形用の耐衝撃性6ナイロン(宇部興産(Ube Industries Ltd.)によって製造された「UBE」ナイロン1018I)
【0134】
(試験片の製作)
実施例および比較実施例において製造されたペレットを用いることにより非強化ナイロン樹脂のための普通成形条件下で厚さ4.0mm、長さ175mmおよび幅20mmの試験片を射出成形した。以下の試験を行うことにより試験片の特性を評価した。
【0135】
(引張破壊歪みの測定)
以下のISO規格によって規定された試験方法に従い試験片の引張破壊歪み(%)を測定した。
ISO527−1:1993「プラスチック−引張特性の決定−パート1:一般原則」
ISO527−2:1993「プラスチック−引張特性の決定−パート2:成形および押出プラスチックのための試験条件」
【0136】
(曲げ弾性率の測定)
以下のISO規格によって規定された試験方法に従い試験片の曲げ弾性率(GPa)を測定した。
ISO178:2001「プラスチック−曲げ特性の決定」
【0137】
(ノッチ付きシャルピー衝撃強度の測定)
切削により各試験片の中に単一ノッチを形成させることにより得られたノッチ付き試験片の貫層衝撃に関連するシャルピー衝撃強度(kJ/m2)を以下のISO規格によって規定された試験方法に従い測定した。
ISO179−1:2000「プラスチック−シャルピー衝撃特性の決定−パート1:非計器衝撃試験」
【0138】
(溶融粘度の測定)
キャピラリーレオメータ(「カイエネス・キャピラリー・レオメータ(Kayeness Capillary Rheometer)」、LSRシリーズ、ヤスダ(Yasuda Ltd.)によって製造されたもの)を用いることにより280℃の測定温度および1000s-1の剪断速度で試験片の溶融粘度を測定した。
【0139】
測定のために用いられたすべての試験片の水吸収比率を0.13%±0.001%に調節した。測定を5回行い、平均値を見出した。結果を表5〜7および図3に示している。
【0140】
【表5】
【0141】
【表6】
【0142】
【表7】
【0143】
表に提示されたデータおよび図は、従来のポリアミド樹脂を用いるとともに高い曲げ弾性率および優れた剛性を有する試験片(比較実施例9、10、12)が低い衝撃強度および低い靱性を有していたことを実証している。逆に、高い衝撃強度および優れた靱性を有する試験片(比較実施例11および13)は、小さい曲げ弾性率および低い剛性を有していた。更に、成分(a)〜(c)を含むが、0.5重量%未満の量でポリカルボジイミド化合物を含む樹脂組成物から製造された比較実施例7の試験片は、高い曲げ弾性率および優れた剛性を有していたが、低い衝撃強度および低い靱性を有していた。成分(a)〜(c)を含むが、15重量%を上回る量で弾性材料を含む樹脂組成物から製造された比較実施例8の組成物では、溶融粘度は高過ぎ、射出成形によって試験片を成形するのは困難であった。結果として、引張破壊歪み、曲げ弾性率およびノッチ付きシャルピー衝撃強度の測定をやめた。
【0144】
それに反して、実施例の樹脂組成物を用いることにより成形されたすべての試験片は、優れた剛性に加えて優れた靱性を有していた。すなわち、それらの試験片は高い剛性と高い靱性を兼ね備えていた。更に、実施例の比較は、弾性材料(c)の含有率が高ければ高いほど、靱性が高いことが可能であり、熱可塑性フェノキシ樹脂(d)をブレンドした時、剛性が低下するけれども、この剛性の低下は成分(a)〜(c)の機能によって補償することができ、剛性および靱性を実際的使用のために適するレベルに維持することができることを確認した。
【0145】
(水吸収比率の測定)
比較実施例8および実施例16と17の樹脂組成物を用いることにより成形された試験片を放置して23℃の温度および相対湿度50%RHの一定温度および湿度条件下で48時間にわたり留まらせることにより乾燥させ、その後、それらの重量を測定した。その後、試験片を放置して50℃の温度および相対湿度95%の高温および高湿度条件下で留まらせることにより水分を吸収させ、滞留時間と、乾燥状態の重量に対する重量増加比率によって見出された水吸収比率(%)との間の関係を見出した。結果を図4に示している。図は、熱可塑性フェノキシ樹脂を配合することにより水吸収を抑制することが可能であることを実証している。
【0146】
(耐久性の研究)
比較実施例7および実施例13、15および16の樹脂組成物を用いることによりインサート成形によって図1および2に示したようにコア12aおよびギヤ本体12bを一体化したウォームホイール12を製作した。各ウォームホイール12を図1および2で示した電気パワーステアリング装置中のスチールウォームシャフト11と合わせて組み立てた。自動車の前輪の静止ステアリングモードに等しい荷重下で直接回転および逆回転中にギヤ本体12bが破壊されるまでのサイクル数を測定し、比較実施例7の結果を1として取った時に得られるサイクルの数の比を耐久比として見出した。結果を図5に示している。この図は、すべての実施例で、比較実施例7の耐久性と比較することにより耐久性が高まったことを実証している。特に、実施例15において、比較実施例7の耐久性のサイクル数の5倍のサイクル数まで測定を行ったが、ギヤ本体12bは破壊されず、高い耐久性を確認することができた。
図1
図2
図3
図4
図5