(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0009】
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係わる車両制御装置を含む車両制御システムの構成を説明する。車両制御システムは、主に車外から得られる情報(例えば、自車周囲に存在する他車両に関する情報)に基づいて、車両において制御すべき物理量(例えば、制動量)に対する複数の要求を生成する先進運転支援システム1と、先進運転支援システム1により生成された複数の要求、及び主に車内から得られる情報(例えば、車速、操舵角、ペダル操作量、走行予定ルート)に基づいて生成される要求を調停して制御目標値を出力する車両制御装置3と、車両制御装置3から出力された制御目標値に基づいて、車両において制御すべき物理量を制御するVDC5(Vehicle Dynamics Controller)とを備える。なお、本発明の実施形態では、車両において制御すべき物理量として、車両の制動量を例に取り説明する。
【0010】
先進運転支援システム1は、例えば、アドバンスド・ドライバ・アシスタンス・システム(Advanced driver Assistance systems:ADAS)と呼ばれるものであり、主に車外から得られる情報に基づいて車両の制動量に対する要求を生成する制御ロジックとして、車速一定制御部11と、車車間距離補正制御部12と、前突関連制御部13とを備える。
【0011】
車速一定制御部11は、車速を目標値に維持する定速走行制御を行うと共に、前車との距離、相対速度等を検出して車間距離を制御する車間距離制御を行う車速一定制御(Adaptive Cruise Control:ACC)に基づく要求を生成する。車車間距離補正制御部12は、前車との距離、相対速度等を検出して、ドライバーに対してアクセル解放、ブレーキ踏込等を促すとともに、必要に応じて車間距離制御を行う車車間距離補正制御(Distance Control Assist:DCA)に基づく要求を生成する。前突関連制御部13は、前方障害物との距離、相対速度等の検出値を入力として、衝突を回避するためのブレーキ制御を行う衝突回避緊急ブレーキ制御(Forward Collision Avoidance:FCA)に基づく要求、及び衝突が避けられない場合に、衝突被害を可能な限り低減させる前突抑制ブレーキ制御(Intelligent Break Assist:IBA)に基づく要求を生成する。
【0012】
これらの制御ロジックは、互いに異なる目的(観点)から同一の物理量(制動量)に対する要求を生成するため、これらの制御ロジックにより生成される要求が互いに異なる場合がある。そこで、先進運転支援システム1は、車速一定制御部11により生成された要求、車車間距離補正制御部12により生成された要求、及び前突関連制御部13により生成された要求を調停する第1の調停部14を備える。第1の調停部14は、調停した結果として、1つの要求を車両制御装置3へ出力する。
【0013】
車両制御装置3は、例えば、インテリジェント・ドライバビリティ・モジュール(Intelligent Driveability Module:IDM)と呼ばれるものであり、同一の物理量(制動量)に対する複数の要求を調停する機能を備えつつ、緊急度の高い特定の目的(観点)に基づく要求については調停を行わずにVDC5へ転送する機能を実現する。
【0014】
上記機能を実現するため、車両制御装置3は、車両において制御すべき物理量(制動量)に対する複数の要求が入力される入力部31と、入力された要求毎に、要求の優先度が高いか否かを判断する判断部32と、優先度が高くないと判断部32により判断された複数の要求があった場合に、これらの複数の要求を調停して制御目標値を決定する第2の調停部34(調停部)と、優先度が高いと判断部32により判断された要求があった場合に、この要求を制御目標値として転送する転送部36と、転送部36から転送された、或いは第2の調停部34により決定された制御目標値を制御対象物としてのVDC5に対して出力する出力部37とを備える。
【0015】
入力部31は、先進運転支援システム1から出力される要求を受信して判断部32へ送信する。判断部32は、入力部31から受信した要求を調停処理の対象とするべきか、或いは転送処理の対象とするべきかを判断するため、入力された要求の優先度が、高いか否かを判断する。判断部32は、入力された要求の優先度が高い場合、これを転送処理の対象とするべきと判断し、入力された要求の優先度が高くない場合、これを調停処理の対象とするべきと判断する。そして、判断部32は、調停処理の対象とするべきと判断した要求(以後、「一般要求」という)を第1の異常診断部33へ送信し、転送処理の対象とするべきと判断した要求(以後、「緊急要求」という)を転送部36へ送信する。
【0016】
図1に示す実施形態では、優先度が高い要求の種類、優先度が高くない要求の種類があらかじめ類別されており、車速一定制御(ACC)に基づく要求、及び車車間距離補正制御(DCA)に基づく要求は、優先度が高くない一般要求と判断され、衝突回避緊急ブレーキ制御(FCA)に基づく要求、及び前突抑制ブレーキ制御(IBA)に基づく要求は、優先度が高い緊急要求と判断される。なお、優先度が高くない一般要求としては、車速一定制御(ACC)に基づく要求、車車間距離補正制御(DCA)に基づく要求の他に、横滑り防止制御(AVDC)に基づく要求、及び旋回速度制御(CBA)に基づく要求が含まれる。なお、入力された要求の優先度が高いか否かを判定する方法としては、要求の種類毎に優先度を表すパラメータを付与し、そのパラメータの値が閾値よりも大か小かを比較する方法を用いても良い。
【0017】
第1の異常診断部33は、一般要求に異常が有るか否かを診断し、異常が無い一般要求を第2の調停部34へ送信する。また、車両制御装置3は、先進運転支援システム1が備える制御ロジック(11〜13)とは異なる目的(観点)に基づいて制動量に対する要求を生成するIDM制御部35を備える。IDM制御部35は、旋回速度制御(Cornering Break Assist:CBA)に基づく要求(一般要求)を生成する。旋回速度制御(CBA)とは、車両が旋回する時の車速を適正範囲内に維持するための制動制御である。IDM制御部35により生成された一般要求は、第2の調停部34に送信される。従って、第2の調停部34には、第1の異常診断部33からの一般要求と、IDM制御部35からの一般要求とが入力される。
【0018】
第2の調停部34は、優先度が高くないと判断部32により判断された複数の一般要求が入力された場合に、これらの複数の一般要求を調停して制御目標値を決定する。決定された制御目標値Rmは、出力処理部38を介して出力部37に送信される。調停の具体的な方法は特に限定されず、既知の方法を適用してもよい。なお、第2の調停部34による調停処理の対象となる複数の一般要求には、判断部32により判断された一般要求のみならず、IDM制御部35からの一般要求も含まれる。
【0019】
転送部36は、緊急要求を受信し、これを制御目標値Rtとして出力部37に送信する。出力部37は、転送部36から転送された、或いは第2の調停部34により決定された制御目標値をバッファ(図示せず)に一時的に格納し、バッファからVDC5に対して制御目標値を出力する。
【0020】
車両制御装置3は、緊急要求を高速でVDC5へ伝送するために、緊急要求が流れるルートの動作速度を、一般要求が流れるルートの動作速度よりも速くする。具体的には、
図1の点線Hgで囲む入力部31、判断部32、転送部36、出力部37の演算周期を、
図1の点線Lwで囲む第1の異常診断部33、IDM制御部35及び第2の調停部34の演算周期よりも短くする。例えば、
図1の点線Hgで囲む演算部(31、32、36、37)の演算周期を1msとし、
図1の点線Lwで囲む演算部(33、35、34)の演算周期を10msとすればよい。
【0021】
VDC5は、転送部36からの制御目標値Rtが入力されるIBA&FCA入力処理部52と、第2の調停部34からの制御目標値Rmが入力される入力処理部51と、衝突回避緊急ブレーキ制御(FCA)の作動許可を判断するFCA作動許可処理部53と、第2の異常診断部54と、制御目標値をブレーキオイルの圧力値(bar)へ変換する液圧処理部55とを備える。
【0022】
IBA&FCA入力処理部52は、衝突回避緊急ブレーキ制御(FCA)或いは前突抑制ブレーキ制御(IBA)に基づく制御目標値Rtに対する入力処理を施し、入力処理部51は、車速一定制御(ACC)、車車間距離補正制御(DCA)、横滑り防止制御(AVDC)、或いは旋回速度制御(CBA)に基づく制御目標値Rmに対する入力処理を施す。入力処理が施された制御目標値(Rt、Rm)は、第2の異常診断部54により異常の有無が診断された後、液圧処理部55に送信される。なお、第2の異常診断部54は、FCA作動許可処理部53からFCA作動許可の指示が有った場合に限り、転送部36からの衝突回避緊急ブレーキ制御(FCA)に基づく制御目標値Rtを液圧処理部55に送信する。液圧処理部55は、制動量の制御目標値(Rt、Rm)に基づいて、ブレーキオイルの目標圧力値(bar)を算出する。ブレーキオイルの目標圧力値(bar)は、アクチュエータ(図示せず)に対して送信される。
【0023】
図2を参照して、実施形態に係わる車両制御方法として、
図1に示す車両制御装置3の動作の一例を説明する。先ず、ステップS01において、入力部31は、先進運転支援システム1から車両の制動量に対する複数の要求を受信する。ステップS03において、判断部32は、入力部31に入力された要求毎に、要求の優先度が高いか否かを判断する。優先度が高い場合(S03でYES)、ステップS07の転送処理に進み、優先度が高くない場合(S03でNO)、ステップS05の調停処理に進む。なお、このステップS01の入力処理及びステップS03の判断処理は、1msの演算周期で実行される。
【0024】
ステップS05では、10msの演算周期のもとで、第2の調停部34による調停処理が実行される。よって、10msよりも短い周期で入力部31に一般要求が入力される場合、第2の調停部34による調停対象として、複数の一般要求が入力される。第2の調停部34は、優先度が高くないと判断された複数の一般要求があった場合に、複数の一般要求を調停して制御目標値(Rm)を決定する。その後、ステップS09へ進む。
【0025】
一方、ステップS07では、1msの演算周期のもとで、転送部36による緊急要求の転送処理が実行される。転送部36は、優先度が高いと判断された緊急要求があった場合に、調停処理をバイパスして、緊急要求を制御目標値(Rt)として転送する。その後、ステップS09へ進む。
【0026】
ステップS09において、出力部37は、制御目標値(Rm、Rt)を出力部37内のバッファに一時的に格納する。ステップS11に進み、出力部37は、1msの演算周期のもとで、制御目標値(Rm、Rt)をVDCへ送信する。
【0027】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0028】
複数の要求を調停する機能を備えつつも、優先度の高い緊急要求については調停を行わずに、第2の調停部34をバイパスして、制御対象物(VDC5)へ制御目標値Rtとして転送することにより、優先度の高い緊急要求の高速伝送が可能となる。更に、調停機能を備えることにより、制御対象物(VDC5)への入力ラインが減少し、制御対象物(VDC5)での情報処理に要するリソースを低減させることができるため、コストが低減し、汎用性が向上する。
【0029】
転送部36の演算周期が、第2の調停部34の演算周期よりも短いため、調停処理に比べて転送処理の周期が短くなり、転送処理の高速化が可能となる。
【0030】
車両において制御すべき物理量は、車両の制動量であり、優先度が高くない一般要求は、車速一定制御(ACC)で実施される定速走行制御に基づく要求、車速一定制御(ACC)や車車間距離補正制御(DCA)で実施される車間距離制御に基づく要求、横滑り防止制御(AVDC)に基づく要求、旋回速度制御(CBA)に基づく要求のうち少なくとも2つの要求である。このため、これらの一般要求は調停処理の対象となるので、制御対象物(VDC5)への入力ラインが減少し、制御対象物(VDC5)での情報処理に要するリソースを低減させることができる。
【0031】
車両において制御すべき物理量は車両の制動量であり、優先度が高い緊急要求は、衝突回避緊急ブレーキ制御(FCA)に基づく要求、前突抑制ブレーキ制御(IBA)に基づく要求のうち少なくとも1つの要求である。このため、優先度の高い緊急要求は転送処理の対象となるので、調停処理によるタイムラグが減少する。
【0032】
従来では、目的が異なる複数の制御アルゴリズムからの要求を調停しながら出力していた。よって、システム全体の演算負荷を下げても調停という機能が独立して作動しているため応答遅れが発生する。その結果、応答遅れが許容できない場合は、車両挙動が悪化してしまう。実施形態によれば、優先度の高い緊急要求は調停対象とならないため、応答遅れによる車両挙動の悪化を抑制できる。
【0033】
一方、総ての要求が転送処理により一方的に送信されてしまうと、車両挙動の変動が大きくなってしまうが、優先度の低い一般要求を調停の対象とすることにより、車両挙動の変動を緩やかにすることができる。
【0034】
(第2実施形態)
第2実施形態では、転送部36から制御目標値Rtが転送された場合に、出力部37が、第2の調停部34により決定された制御目標値Rmと転送部36から転送された制御目標値Rtのいずか一方を出力する場合について説明する。第2実施形態に係わる車両制御装置3は、出力部37の構成が第1実施形態と相違するが、その他の構成は第1実施形態と同じであるため、説明及び図示を省略する。
【0035】
図3を参照して、第2実施形態に係わる出力部37の構成を説明する。出力部37は、第2の調停部34により決定された制御目標値Rmと転送部36から転送された制御目標値Rtとを比較する比較部39を備え、比較部39による比較結果に基づいて、制御目標値Rm及び制御目標値Rtのいずれか一方をVDC5へ出力する。例えば、比較部39は、制御目標値Rm及び制御目標値Rtの大きさを比較し、大きい方をVDC5へ出力する。
【0036】
次に
図4、
図5を参照して第2実施形態の作用を説明する。転送部36から制御目標値Rtが転送されていない時、出力部37は、第2の調停部34により決定された制御目標値Rm
0をVDC5へ出力する。この期間を定時調停期間Nmという。
【0037】
その後、転送部36から制御目標値Rt
1が転送された場合、第1実施形態では、転送部36からの制御目標値Rt
1をそのままVDC5へ転送してしまう。制御目標値Rt
1が制御目標値Rm
0よりも小さい場合、制御目標値Rm
0から制御目標値Rt
1へ急激に変化してしまうため、車両挙動の変動が大きくなってしまう。
【0038】
第2実施形態では、転送部36から制御目標値Rt
1が転送された場合、比較部39が、制御目標値Rt
1が転送された時の制御目標値Rm
1と制御目標値Rt
1とを比較し、大きい方(制御目標値Rm
1)をVDC5へ出力する。
【0039】
図4に示す例では、制御目標値Rtが時間と共に単調に増加する場合を示している。第2の調停部34により決定された制御目標値Rmに時間変化が無い或いは少ない場合、制御目標値Rtと制御目標値Rmの大小関係が逆転する。比較部39は、制御目標値Rmが制御目標値Rtよりも大きい期間(これを、補正期間Adという)において、制御目標値Rm
1、Rm
2を出力し、制御目標値Rmが制御目標値Rtよりも小さい期間(これを、転送期間Trという)において、制御目標値Rt
3、Rt
4、Rt
5、Rt
6、・・・を出力する。
【0040】
これにより、VDC5へ出力される制御目標値の時間変化は、
図5に示すようになる。
図4の定時調停期間Nm及び補正期間Adにおいては、第2の調停部34により決定された制御目標値Rmが出力され、転送期間Trにおいては、転送部36から転送された制御目標値Rtが出力される。
【0041】
図6を参照して、第2実施形態に係わる車両制御装置3の動作の一例を説明する。
図2のフローチャートと比べて、ステップS09の前に、ステップS13を更に備えている点が相違するが、その他の点について
図2と同じであるため説明を省略する。
【0042】
ステップS13において、所定の時間内において、第2の調停部34から制御目標値Rmが入力され、且つ、転送部36から制御目標値Rtが転送された場合、比較部39は、制御目標値Rmと制御目標値Rtとを比較し、大きい方を選択する。ステップS11では、比較部39により選択された制御目標値をVDC5へ出力する。
【0043】
以上説明したように、比較部39は、第2の調停部34により決定された制御目標値Rmと転送部36から転送された制御目標値Rtとを比較し、比較結果に基づいて、制御目標値Rm及び制御目標値Rtのいずれか一方をVDC5へ出力する。これにより、
図4及び
図5を参照して説明したように、調停制御と転送制御とが切り替わる過渡期における車両挙動の変動を緩やかにすることができる。
【0044】
(第3実施形態)
第3実施形態では、
図1の車両制御装置3において、出力部37が、第2の調停部34により決定された制御目標値Rmと、転送部36から転送された制御目標値Rtとを異なるバッファに一時的に格納する場合について説明する。第3実施形態に係わる車両制御装置3は、出力部37の構成が第1実施形態と相違するが、その他の構成は第1実施形態と同じであるため、説明及び図示を省略する。
【0045】
図7を参照して、第3実施形態に係わる出力部37の構成を説明する。出力部37は、第2の調停部34により決定された制御目標値Rmを格納する調停バッファ40と、転送部36から転送された制御目標値Rtを格納する転送バッファ41とを備える。出力部37は、制御目標値Rm及び制御目標値RtのそれぞれをVDC5へ出力することができる。
【0046】
図8を参照して、
図4に示す例においてVDC5へ出力される制御目標値の時間変化の一例を説明する。
図4の定時調停期間Nm及び補正期間Adにおいては、調停バッファ40から制御目標値Rm
0〜Rm
2がVDC5へ出力される。一方、転送期間Trにおいては、調停バッファ40及び転送バッファ41の各々から、制御目標値Rm
3〜Rm
6及び制御目標値Rt
3〜Rt
6の両方がVDC5へ出力される。これにより、転送期間Trにおいて、各制御目標値に応じた制動制御が可能となる。例えば、調停による制御目標値Rm
3〜Rm
6に基づいてモータ(車両駆動手段)の回生制動量を制御し、転送による制御目標値Rt
3〜Rt
6と調停による制御目標値Rm
3〜Rm
6との差分に基づいて、摩擦ブレーキ制動量を制御する、所謂、回生協調制御が可能となる。
【0047】
なお、出力部37は、転送期間Trにおいて、調停による制御目標値Rm
3〜Rm
6、及び転送による制御目標値Rt
3〜Rt
6と調停による制御目標値Rm
3〜Rm
6との差分の両方を、VDC5へ出力してもよい。これにより、VDC5における差分演算のためのリソースを低減することができる。
【0048】
図9を参照して、第3実施形態に係わる車両制御装置3の動作の一例を説明する。
図2のフローチャートと比べて、ステップS09の代わりに、ステップS15及びステップS17を備えている点が相違するが、その他の点について
図2と同じであるため説明を省略する。
【0049】
ステップS15において、調停バッファ40は、ステップS05で決定された制御目標値Rmを一時的に格納する。一方、ステップS17において、転送バッファ41は、ステップS07で転送された制御目標値Rtを一時的に格納する。ステップS11では、調停バッファ40及び転送バッファ41に格納されている制御目標値Rm及び制御目標値Rtの両方をVDC5へ出力する。
【0050】
以上説明したように、出力部37は、調停バッファ40と、転送バッファ41とを備えることにより、調停による制御目標値Rmと転送による制御目標値Rtの両方を制御対象物(VDC5)へ出力することができる。このため、制御対象物(VDC5)は、各制御目標値に応じた制動制御を行うことができる。例えば、
図8に示したように、制御目標値Rmと制御目標値Rtの両方を用いて回生協調制御を行うことが可能となる。
【0051】
従来、車載コントローラエリアネットワーク(CAN)の様に同期が取れない場合は応答遅れを防止するため、上位ECU(例えば、ADAS1)が下位ECU(例えば、IDM3或いはVDC5)に対して割り込み処理を要求していた。割り込み処理により同じ要求を転送していたため、制御対象物(VDC5)は割り込み処理による要求なのか否かをを把握することができない。実施形態によれば、出力部37が、調停バッファ40と、転送バッファ41とを備えるため、制御対象物(VDC5)は、いずれの要求かを把握することができる。
【0052】
従来、制御対象物(VDC5)において要求を判別するためのデータを、送信(IDM3)側が多重に送信するため、要求を出力するバッファが1つだと多重性を確保したデータを送信することはできない。出力部37が、調停バッファ40と、転送バッファ41とを備えることにより、多重性を確保したデータを送信することができるようになる。
【0053】
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0054】
例えば、第3実施形態において、出力部37は比較部39を更に備えていることが望ましい。これにより、比較部39による比較の結果、転送期間Trである場合に限り、調停による制御目標値Rmと転送による制御目標値Rtの両方を送付し、回生協調制御が不要となる定時調停期間Nm及び補正期間Adでは、調停による制御目標値Rmのみを送付することができ、効率の良い制御目標値の伝送が可能となる。
【0055】
特願2013−095083号(出願日:2013年4月30日)の全内容は、ここに援用される。