(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸基を有さないビニル系単量体(A)、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(B)及び光重合開始剤(C)を含む活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物であって、
前記(B)は、ガラス転移温度が30℃以上であり、かつその製造において酸基を有する原料を用いないものであり、
硬化後の粘着剤のガラス転移温度が−20℃以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
前記(A)及び(B)の合計を100質量部としたときに、前記(A)を90〜98質量部、前記(B)を2〜10質量部含むことを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の代表的かつ非限定的な具体例について、詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0012】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本開示を実施する際に必須のものではなく、特に本開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0013】
本明細書及び/又はクレームに記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0014】
以下、本発明について詳しく説明する。尚、本願明細書においては、アクリル及び/又はメタクリルを(メタ)アクリルと、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、また、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを(メタ)アクリロイルと表す。
【0015】
<酸基を有さないビニル系単量体(A)>
本発明における酸基を有さないビニル系単量体(A)(以下、「(A)成分」ともいう)は、カルボキシル基又はスルホン酸基のような酸基を有するビニル系単量体以外の単量体を示す。酸基を有するビニル系単量体を用いた場合には、得られた粘着製品を金属に長時間接触させたときに腐食を生じることがあるため、酸基を有する単量体を(A)成分として使用することはできない。また、(A)成分は、上記の通り、酸基を有さない単量体であるが、原料として用いた単量体に不純物として酸基が含まれているような場合は許容される。
(A)成分としては、Tgが低く粘着性を有する重合体が得られる点で炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの使用が好ましく、例えばn−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、好ましい単量体としてはn−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等の炭素数4〜9のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。
アルキル(メタ)アクリレートの使用量は、粘着性の良好な重合体が得られる点で、(A)成分100質量部中、30〜100質量部の範囲が好ましく、50〜98質量部がより好ましく、60〜95質量部がさらに好ましい。
【0016】
(A)成分としては、前記アルキル(メタ)アクリレート以外にも粘着性能を損なわない範囲で、これと共重合可能な他の単量体を使用することができる。共重合可能な単量体としては例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族系単量体;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂肪族環系ビニル単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート及びポリエチレン−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド及びN−メトキシブチルアクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミド及びN−置換化合物;アリルアルコール等の不飽和アルコール;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。
【0017】
(A)成分としては、更に、分子内に2個以上のビニル基を有する多官能単量体を用いてもよい。
多官能単量体としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−ノナンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;これらポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのアルキレンオキサイド〔エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等〕付加物のポリ(メタ)アクリレート;これらポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのカプロラクトン変性物のポリ(メタ)アクリレート;エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート及びエチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性イソシアヌル酸のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限らない。
多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマーも使用することができ、具体的にはウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。
【0018】
前記多官能単量体の使用量は、(A)成分全体のうちの5質量%未満とすることが好ましい。多官能単量体を5質量%以上用いた場合、得られる粘着剤の凝集力は高くなるが、粘着力が劣る傾向がある。また、多官能共重合体の使用量が多いと、活性エネルギー線により硬化した際の硬化速度が低下する場合がある。
【0019】
(A)成分はその重合体のガラス転移温度(Tg)の計算値が−45℃未満になるように選ばれるのが好ましい。ここでTgの計算値は「POLYMER HANDBOOK 第4版」(John Wiley & Sons,Inc.発行)に記載された各単独重合体のTgを元にして、以下の式(1)に示す計算によって求められる値を用いる。
〔数1〕
1/Tg={W(a)/Tg(a)}+{W(b)/Tg(b)}
+{W(c)/Tg(c)}+・・・ (1)
上記の式中、
Tg:重合体のTg
W(a):重合体における単量体(a)からなる構造単位の重量分率
W(b):重合体における単量体(b)からなる構造単位の重量分率
W(c):重合体における単量体(c)からなる構造単位の重量分率
Tg(a):単量体(a)の単独重合体のガラス転移温度
Tg(b):単量体(b)の単独重合体のガラス転移温度
Tg(c):単量体(c)の単独重合体のガラス転移温度
【0020】
<片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(B)>
片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(B)(以下、「(B)成分」ともいう)は、ビニル系単量体を主な構造単位とする重合体であって、その片末端に(メタ)アクリロイル基を有するものである。
(B)成分の製造方法としては特に限定されないが、ビニル単量体の選択範囲が広い点、製造に重金属を必須とせず電子材料周辺の部材に適用しやすい点、安価に製造が行える点において、以下に示す工程により得られることが好ましい。
第1工程;水酸基、アミノ基又はアルコキシシリル基等の官能基を有する連鎖移動剤の存在下でビニル単量体を重合し、片末端に官能基を有する重合体を合成する工程。
第2工程;上記第1工程で得られた重合体の片末端に存在する官能基に対し、当該官能基と反応可能な官能基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「化合物(D)」ともいう)を反応させ、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーを得る工程。
ただし、ここでも酸基を有するビニル単量体を用いた場合には、得られた粘着製品を金属に長時間接触させたときに腐食を生じることがあるため、酸基を有する単量体を(B)成分の原料として使用することはできない。
【0021】
(B)成分を得るために用いる(メタ)アクリロイル基を有する化合物(D)としては、前記連鎖移動剤が有する反応性官能基と対応するものが用いられる。
例えば前記反応性官能基が水酸基又はアミノ基の場合、化合物(D)はイソシアナト基を有するものを用いる。前記反応性官能基が水酸基の場合、化合物(D)はクロロ基を有するものを用いる。前記反応性官能基がアルコキシシリル基の場合、化合物(D)はアルコキシシリル基を有するものを用いる。
上記の内でも、副反応の少なさ、反応後処理の簡便さ、原料入手性等の点から前記反応性官能基が水酸基であって、化合物(D)がイソシアナト基を有するものである場合が好ましい。以下に、水酸基を有する連鎖移動剤及びイソシアナト基を有する化合物(D)を用いた場合の前記第1工程及び第2工程について詳述する。
【0022】
○第1工程:片末端に水酸基を有する重合体の合成
ビニル系単量体を、水酸基を有する連鎖移動剤の存在下で、重合開始剤を用いて重合させることにより、片末端に水酸基を有する重合体が得られる。
前記ビニル系単量体の例としては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられるが、共重合性、硬化物の粘着剤特性、耐候性、耐水性等が優れるため、(メタ)アクリレートが好ましい。
(メタ)アクリレートの例としては、前記(A)成分として用いることができるビニル系単量体と同様の化合物を使用することができる。
【0023】
水酸基を有する連鎖移動剤の具体例としては、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、6−メルカプト−1−ヘキサノール、3−メルカプト−1−ヘキサノール、チオグリセロール、チオフェノールなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも少量で効率的に水酸基を導入できる点から、2−メルカプトエタノールを用いるのが好ましい
【0024】
重合開始剤の例としては、所定の反応温度でラジカルを発生する開始剤であれば何でもよい。具体的には、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)などのアゾ系化合物が挙げられる。各種単量体との副反応を起こしにくい点から、アゾ系化合物を用いるのが好ましい。
【0025】
片末端に水酸基を有する重合体は、適当な有機溶媒を用いた溶液重合により得るのが好ましい。使用する有機溶媒は特に限定はされないが、有機炭化水素系化合物、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等を使用することができる。
また、有機溶媒中の水分を除くためにオルト酢酸トリメチル、オルト蟻酸トリメチル等の脱水剤を添加することもできる。
【0026】
重合温度は、用いる単量体及び溶媒の種類、並びに、単量体濃度等の各条件により適宜調整されるが、通常、50〜150℃の範囲であり、60〜120℃の範囲がより好ましい。
【0027】
○第2工程:片末端への(メタ)アクリロイル基の導入
第一工程で得られた片末端に水酸基を有する重合体に対し、(メタ)アクリロイル基とイソシアナト基の両方を有する化合物(化合物(D))を反応させることで、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(B)が得られる。この際、反応を短時間で安定的に進行させるために、反応を促進するための触媒と、重合禁止剤を添加することが好ましい。
【0028】
(メタ)アクリロイル基とイソシアナト基を有する化合物としては、例えば2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルイソシアナートなどが挙げられる。これらの中で硬化速度の点からアクリロイル基を有する化合物が好ましく、中でも副反応の少なさから2−イソシアナトエチルアクリレートが特に好ましい。
(メタ)アクリロイル基とイソシアナト基を有する化合物の使用量としては、片末端水酸基に対して0.8〜1.2モル等量を用いるのが好ましい。
【0029】
反応を促進するための触媒としては、金属系化合物、3級アミン、4級アンモニウム塩、ホスフィン系化合物、ホスホニウム塩などが挙げられるが、少量で高い効果が得られる金属系化合物が好ましい。
金属系化合物の具体例としては、ジ−n−ブチルスズオキシド、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズ、ジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−オクチルスズオキシド、ジ−n−オクチルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロリド、ジ−n−ブチルスズジアルキルメルカプタン、ジ−n−オクチルスズジアルキルメルカプタン等の有機スズ化合物;オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛等の有機鉛化合物;オクチル酸ビスマス等の有機ビスマス化合物等が挙げられる。
触媒使用量は、片末端に水酸基を有する重合体と(メタ)アクリロイル基とイソシアナト基を有する化合物の合計量を合計量100重量部としたときに、0.05重量部以下とすることが好ましい。0.05重量部以上を使用すると触媒由来の着色などの問題が起こる。
【0030】
重合禁止剤としてはハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエンなどが挙げられる。
重合禁止剤使用量は片末端に水酸基を有する重合体と(メタ)アクリロイル基とイソシアナト基を有する化合物の合計量を合計量100重量部としたときに、0.002〜0.02重量部とすることが好ましい。0.002重量部以下の場合は重合禁止効果が十分に発揮されず、0.02重量部以上を使用すると重合禁止剤由来の着色が起こったり、後の硬化速度が遅くなるなどの問題が起こる。
【0031】
○その他
(B)成分の合成時に有機溶剤を用いた場合、第1及び第2工程の後に有機溶剤を乾燥除去するための脱溶剤工程を備えることが好ましい。該工程により有機溶剤を除去することで、有機溶剤に起因する引火爆発等の危険や臭気などの問題を回避することができる。
脱溶剤工程は、用いた有機溶剤の種類等にもよるが、常圧又は減圧条件下、50〜200℃程度で加熱することにより有機溶剤の除去及び乾燥が行われる。比較的低温・短時間で乾燥を完了することができる減圧加熱が推奨される。
【0032】
本発明における(B)成分は、重量平均分子量が、5,000〜20,000であることが好ましい。重量平均分子量を5,000以上とすることにより後の硬化物を粘着剤として用いた際に粘着力と保持力を高いレベルで両立させることができる。また、重量平均分子量が20,000以下の場合、相溶性に優れるため硬化物に濁りが生じ難い。尚、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定したポリスチレン換算の値である。
また、本発明における(B)成分のガラス転移温度(Tg)は、30℃以上であり、好ましくは55℃以上であり、さらに好ましく90℃以上である。Tgを30℃以上とすることにより、得られる硬化物を粘着剤として用いた際の保持力が向上する。本発明では、ガラス転移温度は、示差走査熱量計において検出される吸熱ピークの中間点により測定される。
【0033】
(A)成分と(B)成分の質量比は、(A)成分と(B)成分の合計を100質量部としたときに、(B)成分が2質量部以上10質量部以下になることが好ましい。2質量部以上になることにより硬化物の保持力が向上し、10質量部以下であることにより、硬化物の粘着力が保たれる。
【0034】
本発明では、(B)成分は片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーであることが必要である。両末端に(メタ)アクリロイル基を有するもの及び末端以外の主鎖の途中に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーを用いた場合、得られる硬化物の粘着力及び凝集力のバランスが取れない。また、活性エネルギー線照射による硬化性が良い点から、アクリロイル基を有するマクロモノマーがより好ましい。
【0035】
<光重合開始剤(C)>について
本組成物は、紫外線、可視光等の活性エネルギー線により硬化させる目的で、光重合開始剤(C)(以下、「C成分」ともいう)を加える必要がある。
(C)成分としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4-(2−ヒドロキシエトキシ)-フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパンー1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチループロピオニル)−ベンジル]−フェニル]−2−メチルプロパンー1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタンー1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルーフェニル)−ブタンー1−オン、アデカオプトマーN−1414((株)ADEKA製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン化合物;
ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル−2−ベンゾフェノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパンー1−オン、4,4‘−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4‘−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン及び4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;
チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロピルチオキサントン、3−[3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イル]オキシ]−2−ヒドロキシプロピル−N,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;
アクリドン、10−ブチル−2−クロロアクリドン等のアクリドン系化合物;
1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O―ベンゾイルオキシム)]及びエタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O―アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;
2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体及び2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;並びに
9−フェニルアクリジン及び1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体等が挙げられる。
これらの化合物は、1種又は2種以上を併用することもできる。
【0036】
(C)成分の配合割合としては、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.01〜3質量部となることが好ましい。(C)成分の配合割合を0.01質量部以上とすることにより、適量な紫外線又は可視光線量で組成物を硬化させることができ生産性を向上させることができ、一方3質量部以下とすることで、硬化物の保持力を高め、かつ耐候性や透明性に優れたものとすることができる。
【0037】
<その他の成分>
本発明の組成物には、前記以外にも必要に応じて後記するその他の成分を配合することもできる。具体的には、無機材料、レベリング剤、シランカップリング剤、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤、耐光性向上剤、並びに有機溶剤及び/又は水等を挙げることができる。
以下これらの成分について説明する。
【0038】
(1)光重合開始助剤
本発明の組成物には、さらに反応性を高めるために、光重合開始助剤として添加することもできる。
光重合開始助剤としては、脂肪族アミンあるいはジエチルアミノフェノン、ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジメチルアミノ安息香酸イソアシル等の芳香族アミン等が挙げられる。
光重合開始助剤の配合割合は、組成物の固形分100重量部に対して、0〜10重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜5重量%である。
【0039】
(2)レベリング剤
レベリング剤としては、シリコーン系化合物及びフッ素系化合物等が挙げられる。
レベリング剤の配合割合は、組成物の固形分100重量部に対して、0.5重量%以下であることが、接着性能への悪影響が小さいため好ましい。
【0040】
(3)シランカップリング剤
シランカップリング剤は、ガラス、金属、金属酸化物等の無機物への接着性能を高める目的等で添加することもできる。
シランカップリング剤は、1分子中に1個以上のアルコキシシリル基と1個以上の有機官能基を有する化合物であり、有機官能基としては、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミノ基、チオール基が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
シランカップリング剤の配合割合は、組成物の固形分100重量部に対して、5重量%以下であることが、アウトガス低減の点から好ましい。
【0041】
(4)重合禁止剤又は/及び酸化防止剤
本発明の組成物には、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤を添加することが、本発明の組成物及び光硬化型充填樹脂シートの保存安定性を向上させことができ、好ましい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、並びに種々のフェノール系酸化防止剤が好ましいが、イオウ系二次酸化防止剤、リン系二次酸化防止剤、クロペン系酸化防止剤等を添加することもできる。
これら重合禁止剤又は/及び酸化防止剤の総配合割合は、組成物の固形分100重量部に対して、0.001〜3重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0042】
(5)耐光性向上剤
本発明の組成物には、用途に応じて、紫外線吸収剤や光安定剤を添加することができる。
耐光性向上剤の配合割合は、組成物の固形分100重量部に対して、0〜10重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜5重量%である。
【0043】
(6)有機溶剤
本発明の組成物は、生産性・環境面からは有機溶剤を含有しないことが好ましいが、塗工性を改善する等の目的で、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、(B)成分の製造に関連して上記した有機溶剤を使用できる。
【0044】
<粘着剤組成物>
本発明の組成物は、前述の原料を、常温または加熱下で、従来公知の方法により混合することにより得られる。組成物の粘度には、特に制限はないが、25℃において、200〜20,000mPasとなることが好ましい。粘度がこの範囲になることにより、平滑な塗工が可能になる。
また、本発明における粘着剤組成物は、活性エネルギー線照射により得られる硬化物のガラス転移温度(Tg)が−20℃以下であり、好ましくは−30℃以下であり、さらに好ましく−40℃以下である。前記Tgを−20℃以下とすることにより、良好な粘着性を示すことができる。尚、粘着剤組成物のTgも、(B)成分同様、示差走査熱量計において検出される吸熱ピークの中間点により測定される。
【0045】
<活性エネルギー線照射方法>
本発明の粘着剤組成物は、紙、各種プラスチック、金属、無機材料及び木材等の種々のフィルムまたは成形体等の基材に適用することができる。また、フィルムやガラス板等の各種部材の貼り合せ(固定)の用途にも用いることができる。
プラスチックの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。
無機材料としては、モルタル、コンクリート及びガラス等が挙げられる。
本発明の組成物の基材への塗布方法としては、常法に従えば良く、バーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、グラビアコート、ダイコート、フローコート及びスプレーコート等が挙げられる。
【0046】
基材に対する粘着剤組成物の膜厚は、目的に応じて適宜設定すれば良いが、活性エネルギー線を照射した後の状態で5〜100μm程度である。
【0047】
本発明の組成物を硬化させるための活性エネルギー線としては、電子線、紫外線、可視光線及びX線等が挙げられるが、安価な装置を使用することができるため、紫外線が好ましい。
紫外線照射装置としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV無電極ランプ、LED等が挙げられる。
照射条件は、活性エネルギー線の種類や配合組成に応じて適宜設定すべきものであるが、照射強度の点では0.1〜200mW/cm
2が好ましく、0.5〜100mW/cm
2がより好ましい。また、照射エネルギーとしては10〜5000mJ/cm
2が好ましく、100〜2000mJ/cm
2がより好ましい。
電子線により硬化させる場合には、使用できる電子線(EB)照射装置としては種々の装置を使用することができ、例えばコックロフトワルトシン型、バンデグラフ型及び共振変圧器型の装置等が挙げられ、電子線としては50〜1,000eVのエネルギーを有するものが好ましく、より好ましくは100〜300eVである。
【0048】
<粘着製品及びその製造方法>
本発明の粘着製品は、本発明の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物を備えることができる。本明細書において、粘着製品は、本発明の硬化物を粘着性を発揮させた状態で保持したものであればよく、その形態は特に限定されない。概して、粘着製品は、1又は2以上の基材と、その少なくとも一部に対して保持される本発明の硬化物とを備えている。硬化物は、粘着部位あるいは粘着層として備えている。
【0049】
基材は、特に限定されないで粘着性を備えることが有用な全ての基材、部品及び製品が挙げられる。また、基材の材質も既述のとおり特に限定されない。
【0050】
例えば、粘着製品は、公知材料のシート、フィルム等の基材の少なくとも一部に硬化物を備えるものであってもよい。この形態としては、典型的には、公知の粘着テープやフィルムが挙げられる。また、各種形状の部品に対して硬化物を備えるものであってもよい。この形態としては、典型的には、粘着層を備えた各種部品等が挙げられ、例えば、粘着層を備えた、光学フィルム、表面保護フィルム、発泡体等が挙げられる。さらに、2以上の部品との間に硬化物を備えるものであってもよい。この形態としては、例えば、表面保護フィルムや光学フィルムが粘着層を介して被着対象物たる被着体に固定された部品又は製品が挙げられる。こうした粘着製品は、電子材料、光学材料のほか、特に限定されない。
【0051】
粘着製品における硬化物の厚みは特に限定しないで、目的に応じて適宜設定され、例えば、5〜100μmとすることができる。
【0052】
本発明の粘着製品の製造方法は、1又は2以上の基材に対して本発明の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を供給する工程と、前記組成物に活性エネルギー線を照射して硬化して粘着性を発揮させる工程と、を備えることができる。前記供給工程は、既述のように常法に従って組成物を基材に供給して実施することができ、前記粘着性発揮工程も、既述した様な各種の条件を採用して実施することができる。
【実施例】
【0053】
以下に、合成例及び実施例を挙げて具体的に説明する。尚、下記において「部」とは、質量部を意味する。
【0054】
○片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(B)の製造
<製造例1>
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器、窒素ガス導入管および温度計を備えたガラス製フラスコに、ビニル単量体としてメタクリル酸メチル(以下、「MMA」という)100部、連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール酸1.3部、及び重合溶剤として酢酸ブチル(以下、「BAC」という)80部を仕込み、窒素気流下で90℃に加熱攪拌した。別容器にてBAC20部に2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(日本ファインケム製、商品名「ABN−E」)0.5部を添加、溶解して重合開始剤溶液を調整し、フラスコ内溶液を90℃に保ったままこの重合開始剤溶液を3時間かけてフラスコへ滴下した。さらに3時間加熱攪拌を継続することにより重合を完結させ、片末端に水酸基を有する重合体を得た。
窒素気流を空気バブリングに切り替えて、引き続き同じフラスコ内にメトキシフェノール0.02部、ジオクチルスズジラウレート(日東化成製、商品名「ネオスタンU−810」)0.01部、変性剤として2−イソシアナトエチルアクリレート(昭和電工製、商品名「カレンズAOI」)2.3部を加えて90℃で3時間加熱した後に室温まで冷却し、片末端にアクリロイル基を有するマクロモノマーB1のBAC溶液を得た。
この溶液を圧力3kPaの減圧下で100℃に加熱することでBACを除去し、白色粉末としてマクロモノマーB1を得た。
得られたマクロモノマーB1の分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)=11,000、数平均分子量(Mn)=6,000であった。また、このマクロモノマーB1のTgは96℃であった。
【0055】
<製造例2〜8、および比較製造例1,4〜7>
単量体、連鎖移動剤および変性剤を表1及び表2に示す通り用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、マクロモノマーB2〜B8、および重合体P1,P4〜7を得た。
ここで、重合体P6及びP7は、重合体の分子鎖途中にアクリロイル基を1分子当りそれぞれ平均4個及び1個導入したマクロモノマーである。
マクロモノマーB2〜B8、および重合体P1,P4〜7の物性値を表1及び表2に示す。
【0056】
<比較製造例2,3>
単量体、連鎖移動剤および変性剤を表2に示す通り用い、重合終了後、ジオクチルスズジラウレート0.01部をテトラブチルアンモニウムブロミド1.0部に置き換え、110℃で8時間反応させた以外は製造例1と同様の操作を行い、重合体P2、P3を得た。
重合体P2,P3の物性値を表2に示す。
【0057】
<比較製造例8>
単量体および連鎖移動剤を表2に示す通り用い、重合終了後、変性を行わずに圧力3kPaの減圧下で100℃に加熱することでBACを除去し、重合体P8を得た。
重合体P8物性値を表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
表1及び表2において用いた略称を以下に示す。
MMA:メタクリル酸メチル
St:スチレン
EA:アクリル酸エチル
AN:アクリロニトリル
MAA:メタクリル酸
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
MPA:3−メルカプトプロピオン酸
MTG:2−メルカプトエタノール
DM:n−ドデシルメルカプタン
MOI:メタクリル酸2−イソシアナトエチル(昭和電工製「カレンズMOI」)
AOI:アクリル酸2−イソシアナトエチル(昭和電工製「カレンズAOI」)
GMA:メタクリル酸グリシジル
4HBAGE:4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成製「4HBAGE」)
TMI:ジメチルメタイソプロペニルベンジルイソシアネート(三井サイテック製「TMI」
【0061】
<実施例1〜13、比較例1〜13>
(A)成分、(B)成分及び光開始剤(C)、及びその他成分を表3に示す割合で配合し、均一に混合することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた各組成物について、以下に記載する評価方法により各種性能を評価し、結果を表3に示した。
【0062】
<粘着シートの作成>
アプリケーターを用いて、各組成物を50μmPETフィルム(東レ製「ルミラーT−60 #50」)に膜厚が25μmになるように塗布した。その後、紫外線照射装置(ECS−401GX、アイグラフィックス(株)製)を用い、下記条件で積算光量が1000mJ/cm
2となるまで紫外線を照射し、硬化粘着剤層を得た。その後、粘着剤層に38μm離型PETフィルム(東レフィルム加工(株)製「セラピールBK」)を貼り、試験に使用する粘着シートを得た。
紫外線照射条件:
80W/cm集光型高圧水銀灯
ランプ高さ10cm
コンベアスピードは、1パス当たりの照射量が100mJ/cm
2になるように調節。
【0063】
(1)硬化性
前記粘着シートの作成において、1パスごとの重合性官能基の反応率を記録し、重合性官能基の反応率が95%を超えるまでのパス回数を記録することで、硬化性を評価した。なお、重合性官能基の反応率は、硬化物を赤外線吸収スペクトル装置(PerkinElmer製FT−IR Spectrum100)を使って測定し、1730cm−1の基準ピーク(エステル)に対する810cm−1の重合性官能基(C=C二重結合)のピークの比率変化から、紫外線照射前を反応率0%として算出した。
【0064】
(2)塗膜濁り
前記粘着シートについて、ヘイズメーター〔日本電色工業(株)製NDH2000〕を用いてヘイズを測定した。なお、測定値はルミラーT−60 #50とセラピールBKの2枚重ねたものをブランクとした。
【0065】
(3)着色
前記粘着シートについて、高速積分球式分光透過率測定器〔(株)村上色彩技術研究所製SPECTROPHOTOMETER DOT−3C〕を用いてYI値を測定した。なお、測定値はルミラーT−60 #50とセラピールBKの2枚重ねたものをブランクとした。
【0066】
(4)粘着力
前記粘着シートを25mm幅に裁断し、離型PETフィルムを剥がしたものを、BA処理SUS304板に貼付け、自動ローラー装置で荷重2kg×1往復で圧着して試験片を作成した。この試験片を用い、23℃、50%RHの条件において、JIS Z 0237記載の方法に準じて180°剥離強度を測定し、得られた値を粘着力とした。
【0067】
(5)保持力
前記粘着シートを25mm幅に裁断し、離型PETフィルムを剥がしたものを、BA処理SUS304板に、接着面積が25mm×25mmとなるように貼り合わせ、これを自動ローラー装置で荷重2kg×1往復で圧着して試験片を作成した。23℃、50%RHの条件において、この試験片についてJIS Z 0237記載の方法に準じて保持力を測定した。なお、荷重は1kgとし、荷重を掛けて剥がれ落ちるまでの時間を測定し、その保持時間[hr]を保持力とした。なお、24時間以上保持した場合は初期貼りつけ位置からのズレ幅を記載した。
【0068】
(6)金属腐食
前記粘着シートを25mm幅に裁断し、離型PETフィルムを剥がしたものを、アルミ板上に貼り合わせた後、60℃×90%RHの高温高湿条件下に48hr放置した。その後、試料をアルミ板から剥がし、表面を目視にて確認し、以下の基準に従って評価した。
○:アルミ箔表面に変色が確認されなかった。
×:アルミ箔表面に変色が確認された。
【0069】
【表3】
【0070】
表3において用いた略称を以下に示す。
BA:n−ブチルアクリレート
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
AA:アクリル酸
【0071】
実施例1〜13は、本発明で規定の要件を満たす活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の実験例であり、良好な硬化性を有し、得られた粘着シートは、粘着力及び凝集力を高いレベルで両立し、着色が少なく、かつ、金属腐食が抑制されたものであった。
実施例1及び8の比較から、末端重合性官能基にアクリロイル基を有するマクロモノマーを用いた方が、メタクリロイル基のものよりも硬化性の点で優れることが判る。
【0072】
これに対し、比較例1及び8〜11は、(B)成分が本発明で規定する要件を満たさないもの、又は(B)成分自体を使用しない粘着剤組成物であるが、粘着性能のバランスに劣るものであった。
また、比較例2、3、5及び12は、(A)成分又は(B)成分の原料に酸基を有する化合物を使用しているため、金属腐食が認められた。
比較例4は、(B)成分の重合性官能基が(メタ)アクリロイル基ではないため活性エネルギー照射による硬化性に劣る結果となった。
比較例6及び7は、末端ではなく分子鎖途中にアクリロイル基を有する重合体を(B)成分として用いた例である。比較例7は、アクリロイル基を平均1個有する重合体を用いたが、得られた塗膜に濁りが生じた。これは、官能基を持たない重合体の影響によるものと推察される。また、比較例6はアクリロイル基を平均4個有するものであるため、官能基を持たない重合体の影響は少なく、塗膜に濁りは見られないものの、粘着力が十分でないものであった。
比較例13は、硬化物のガラス転移温度が−20℃を超えるものであるため、粘着力が不十分な結果となった。