(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力要素、該入力要素から動力が伝達される第1弾性体、該第1弾性体よりも内側に配置される第2弾性体、前記第1弾性体からの動力を前記第2弾性体に伝達する中間要素、および前記第2弾性体から動力が伝達されると共に出力部材に固定される出力要素とを含むダンパ装置において、
質量体と、前記中間要素または前記出力要素と当接可能な第3弾性体と、前記質量体に固定される固定部およびそれぞれ前記第3弾性体の少なくとも一端と当接するように設けられた複数の弾性体当接部を有する連結部材とを含むダイナミックダンパを備え、
前記中間要素は、前記第2弾性体を収容する弾性体収容部と、前記弾性体収容部を通る円周上に配置される開口部とを有する板状のプレート部を含み、
前記連結部材の前記弾性体当接部は、前記固定部から曲げ部を介して延出されて前記中間要素の前記プレート部の前記開口部内に配置されると共に、前記第2弾性体と周方向に並ぶように前記開口部内に配置される前記第3弾性体の端部と当接し、
前記中間要素の前記プレート部と、前記連結部材の前記弾性体当接部とは、両者の厚み方向において少なくとも部分的に重なり合い、前記プレート部と前記弾性体当接部との厚み方向における重なり範囲内に前記第2弾性体および前記第3弾性体の軸心が含まれることを特徴とするダンパ装置。
請求項7から9の何れか一項に記載のダンパ装置と、入力部材に連結されるポンプインペラと、該ポンプインペラと共に流体伝動装置を構成するタービンランナと、ロックアップクラッチとを備えた発進装置において、
前記第2出力プレートは、前記第1出力プレートよりも前記タービンランナ側に配置され、
前記ダイナミックダンパの前記質量体は、前記タービンランナを含み、
前記連結部材の前記固定部は、前記タービンランナの内周部に固定され、
前記固定部は、前記第2出力プレートの最も前記タービンランナ側に位置する部分よりも前記第1出力プレートに近接するように配置されることを特徴とする発進装置。
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたダンパ装置のように、ダイナミックダンパを構成する第3弾性体を、入力要素と出力要素との間でトルクを伝達する第1および第2弾性体とは異なる径方向位置に配置すると、ダンパ装置の外径が増加してしまい、装置全体をコンパクト化することが困難になる。一方、特許文献2に記載されたダンパ装置では、第2のばねとダイナミックダンパを構成する第3のばねとが回転軸線から同じ半径方向距離に配置されるので、ダンパ装置の外径の増加を抑制することができる。しかしながら、特許文献2に記載のダンパ装置では、出力プレートが、回転軸線の延在方向における第2のばねの中央部からずれた位置で当該第2のばねと当接し、第1の駆動プレートが、回転軸線の延在方向における第3のばねの中央部からずれた位置で当該第2のばねと当接する。このため、第2および第3のばねを軸心に沿って適正に伸縮させ得なくなり、振動を良好に減衰できなくなってしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、ダイナミックダンパを備えたダンパ装置をコンパクト化しつつ、ダイナミックダンパやダンパ装置の弾性体をより適正に伸縮させて振動の減衰性能をより向上させることを主目的とする。
【0007】
本発明によるダンパ装置は、
入力要素、該入力要素から動力が伝達される第1弾性体、該第1弾性体よりも内側に配置される第2弾性体、前記第1弾性体からの動力を前記第2弾性体に伝達する中間要素、および前記第2弾性体から動力が伝達されると共に出力部材に固定される出力要素とを含むダンパ装置において、
質量体と、前記中間要素または前記出力要素と当接可能な第3弾性体と、前記質量体に固定される固定部およびそれぞれ前記第3弾性体の少なくとも一端と当接するように設けられた複数の弾性体当接部を有する連結部材とを含むダイナミックダンパを備え、
前記中間要素は、前記第2弾性体を収容する弾性体収容部と、前記弾性体収容部を通る円周上に配置される開口部とを有する板状のプレート部を含み、
前記連結部材の前記弾性体当接部は、前記固定部から曲げ部を介して延出されて前記中間要素の前記プレート部の前記開口部内に配置されると共に、前記第2弾性体と周方向に並ぶように前記開口部内に配置される前記第3弾性体の端部と当接し、
前記中間要素の前記プレート部と、前記連結部材の前記弾性体当接部とは、両者の厚み方向において少なくとも部分的に重なり合い、前記プレート部と前記弾性体当接部との厚み方向における重なり範囲内に前記第2弾性体および前記第3弾性体の軸心が含まれることを特徴とする。
【0008】
このダンパ装置は、連結部材により支持されると共に中間要素または出力要素と当接可能な第3弾性体および当該連結部材を介して第3弾性体に連結される質量体を有するダイナミックダンパを含むものである。また、このダンパ装置の中間要素は、第2弾性体を収容する弾性体収容部と、弾性体収容部を通る円周上に配置される開口部とを有する板状のプレート部を含む。更に、連結部材の弾性体当接部は、固定部から曲げ部を介して延出されて中間要素のプレート部の開口部内に配置されると共に、第2弾性体と周方向に並ぶように開口部内に配置される第3弾性体の端部と当接する。そして、中間要素のプレート部と、連結部材の弾性体当接部とは、両者の厚み方向において少なくとも部分的に重なり合い、プレート部と弾性体当接部との厚み方向における重なり範囲内に第2弾性体および第3弾性体の軸心が含まれる。
【0009】
このように、ダイナミックダンパの第3弾性体を第2弾性体と周方向に並ぶように配置することで、当該第3弾性体を第1弾性体や第2弾性体の径方向における外側または内側、あるいは径方向における第1弾性体と第2弾性体との間に配置する場合に比べて、ダンパ装置の外径の増加を抑制して装置全体をコンパクト化することが可能となる。また、質量体に固定される連結部材の固定部から曲げ部を介して弾性体当接部を延出すると共に、当該弾性体当接部を中間要素のプレート部に形成された開口部内に配置することで、当該プレート部と連結部材の弾性体当接部とがダンパ装置の軸方向に並ばないようにすることができる。これにより、ダンパ装置の軸長の増加を抑制して装置全体をコンパクト化することが可能となる。加えて、このダンパ装置では、プレート部と弾性体当接部との厚み方向における重なり範囲内に第2弾性体および第3弾性体の軸心が含まれるので、中間要素とプレート部のスプリング収容部に収容された第2弾性体とを当該第2弾性体の軸心を通る中心線付近で当接させ、かつ連結部材の弾性体当接部と第3弾性体とを当該第3弾性体の軸心を通る中心線付近で当接させることができる。これにより、第2弾性体や第3弾性体をより適正に伸縮させてダイナミックダンパを含むダンパ装置の振動の減衰性能をより向上させることが可能となる。この結果、ダイナミックダンパを備えたダンパ装置をコンパクト化しつつ、ダイナミックダンパやダンパ装置の弾性体をより適正に伸縮させて振動の減衰性能をより向上させることができる。
【0010】
また、前記中間要素の前記プレート部、前記連結部材の前記弾性体当接部、前記第2弾性体および前記第3弾性体は、前記プレート部および前記弾性体当接部の厚み方向の中心線と、前記第2弾性体および前記第3弾性体の軸心とが前記ダンパ装置の軸心と直交する同一の平面内に含まれるように配置されてもよい。これにより、ダンパ装置の軸長の増加を抑制して装置全体をよりコンパクト化することが可能となる。また、このダンパ装置では、中間要素とプレート部のスプリング収容部に収容された第2弾性体とを当該第2弾性体の軸心を通る中心線上で当接させ、かつ連結部材の弾性体当接部に第3弾性体を当該第3弾性体の軸心を通る中心線上で支持させることができる。この結果、第2弾性体や第3弾性体をより適正に伸縮させてダイナミックダンパを含むダンパ装置の振動の減衰性能をより向上させることが可能となる。加えて、ダンパ装置の軸心と第2弾性体の軸心との距離と、ダンパ装置の軸心と第3弾性体の軸心との距離とを等しくすれば、ダンパ装置の外径の増加をより良好に抑制することが可能となる。ただし、第2弾性体は、第3弾性体と周方向に並ぶように配置されるのであれば、第3弾性体よりも(若干)径方向外側に配置されてもよい。これにより、第2弾性体をより低剛性化して、ダンパ装置の全体の減衰性能をより向上させることができる。
【0011】
更に、前記中間要素の前記プレート部は、環状に形成されると共に、それぞれ複数の前記弾性体収容部および前記開口部を有してもよく、前記弾性体収容部と前記開口部とは、交互に並ぶように前記プレート部に配設されてもよい。
【0012】
また、連結部材の前記固定部は、環状に形成されてもよく、前記連結部材の前記複数の弾性体当接部は、前記固定部から径方向外側に延出されてもよい。
【0013】
また、前記連結部材は、前記第2弾性体をガイドするように前記固定部から径方向外側に延出されたガイド部を有してもよい。
【0014】
更に、前記連結部材は、前記第3弾性体をガイドするように互いに隣り合う前記弾性体当接部の間に形成されたガイド部を有してもよい。
【0015】
また、前記出力要素は、互いに連結される第1および第2出力プレートを含んでもよく、前記中間要素の前記プレート部と前記連結部材の前記弾性体当接部とは、前記第1出力プレートと前記第2出力プレートとの間に配置されてもよい。これにより、第1および第2出力プレートの出力側当接部を第2弾性体の軸心を通る中心線に関して対称となる位置で第2弾性体と当接させると共に、第1および第2出力プレートの出力側当接部を第3弾性体の軸心を通る中心線に関して対称となる位置で第3弾性体と当接させることが可能となり、第2および第3弾性体をより適正に伸縮させてダンパ装置の振動の減衰性能をより向上させることができる。
【0016】
更に、前記第1出力プレートは、前記出力部材に固定されてもよく、前記第2出力プレートは、前記連結部材の前記固定部を径方向外側から囲むように配置され、複数の振子質量体を揺動自在に支持して該振子質量体と共に遠心振子式吸振装置を構成してもよい。これにより、ダイナミックダンパおよび遠心振子式吸振装置によりダンパ装置全体の振動を良好に減衰(吸収)することが可能となる。そして、第2出力プレートを連結部材の固定部を囲むように配置することで、両者がダンパ装置の軸方向に並ばないようにしてダンパ装置の軸長の増加を抑制し、それにより装置全体をコンパクト化することができる。
【0017】
また、前記第1および第2出力プレートの各々は、前記第2または第3弾性体をガイドする複数のガイド部を有してもよい。
【0018】
本発明による発進装置は、上記何れかのダンパ装置と、入力部材に連結されるポンプインペラと、該ポンプインペラと共に流体伝動装置を構成するタービンランナと、ロックアップクラッチとを備えた発進装置において、前記第2出力プレートは、前記第1出力プレートよりも前記タービンランナ側に配置され、前記ダイナミックダンパの前記質量体は、前記タービンランナを含み、前記連結部材の前記固定部は、前記タービンランナの内周部に固定され、前記固定部は、前記第2出力プレートの最も前記タービンランナ側に位置する部分よりも前記第1出力プレートに近接するように配置されることを特徴とする。
【0019】
この発進装置では、ダイナミックダンパの連結部材の固定部がタービンランナの内周部に固定され、当該タービンランナがダイナミックダンパの質量体として用いられる。これにより、ダイナミックダンパの質量体を別途設ける必要が無くなるので、発進装置の大型化を抑制することが可能となる。更に、タービンランナの内周部に固定される連結部材の固定部を、第1出力プレートよりもタービンランナ側に配置される第2出力プレートの最もタービンランナ側に位置する部分よりも第1出力プレートに近接するように配置することで、発進装置の軸長をより短縮化することができる。
【0020】
また、前記発進装置において、前記ロックアップクラッチは、多板式クラッチであってもよく、前記第1弾性体と前記第2弾性体とは、軸方向に離間して配置されてもよく、前記第1弾性体は、前記ロックアップクラッチを囲むように該ロックアップクラッチの外側に配置されてもよく、前記第2弾性体は、前記ロックアップクラッチと前記軸方向に並ぶように配置されてもよく、前記遠心振子式吸振装置の前記複数の振子質量体は、前記第2弾性体を囲むように該第2弾性体の外側に配置されると共に、前記第1弾性体と前記軸方向に並んでもよい。これにより、振子質量体の揺動範囲を充分に確保して、遠心振子式吸振装置による振動の減衰性能をより向上させることができる。従って、この発進装置では、装置全体のコンパクト化を図りつつ、ダイナミックダンパおよび遠心振子式吸振装置を含むダンパ装置により入力部材から出力部材までの間で振動を良好に減衰することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るダンパ装置10を含む発進装置1を示す部分断面図である。同図に示す発進装置1は、原動機としてのエンジン(内燃機関)を備えた車両に搭載されるものであり、ダンパ装置10に加えて、エンジンのクランクシャフトに連結される入力部材としてのフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されるポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、ダンパ装置10に連結されると共に自動変速機(AT)あるいは無段変速機(CVT)である変速機の入力軸ISに固定される出力部材としてのダンパハブ7、多板油圧式クラッチであるロックアップクラッチ8、それぞれダンパ装置10に連結される遠心振子式吸振装置20およびダイナミックダンパ30等を含む。
【0024】
ポンプインペラ4は、フロントカバー3に密に固定されるポンプシェル40と、ポンプシェル40の内面に配設された複数のポンプブレード41とを有する。タービンランナ5は、タービンシェル50と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード51とを有する。タービンシェル50の内周部は、複数のリベットを介してタービンハブ52に固定される。タービンハブ52は、ダンパハブ7により回転自在に支持され、当該タービンハブ52の発進装置1の軸方向における移動は、ダンパハブ7と、当該ダンパハブ7に装着されるスナップリングにより規制される。
【0025】
ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレード60を有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ61により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。ただし、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ61を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
【0026】
ロックアップクラッチ8は、ダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7とを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除するものである。 ロックアップクラッチ8は、フロントカバー3に固定されたセンターピース3sにより軸方向に移動自在に支持されるロックアップピストン80と、クラッチドラム81と、ロックアップピストン80と対向するようにフロントカバー3の内面に固定される環状のクラッチハブ82と、クラッチドラム81の内周に形成されたスプラインに嵌合される複数の第1摩擦係合プレート(両面に摩擦材を有する摩擦板)83と、クラッチハブ82の外周に形成されたスプラインに嵌合される複数の第2摩擦係合プレート84(セパレータプレート)とを含む。
【0027】
更に、ロックアップクラッチ8は、ロックアップピストン80を基準としてフロントカバー3とは反対側に位置するように、すなわちロックアップピストン80よりもダンパハブ7およびダンパ装置10側に位置するようにフロントカバー3のセンターピース3sに取り付けられる環状のフランジ部材(油室画成部材)85と、フロントカバー3とロックアップピストン80との間に配置される複数のリターンスプリング86とを含む。図示するように、ロックアップピストン80とフランジ部材85とは、係合油室87を画成し、当該係合油室87には、図示しない油圧制御装置から作動油(係合油圧)が供給される。そして、係合油室87への係合油圧を高めることにより、第1および第2摩擦係合プレート83,84をフロントカバー3に向けて押圧するようにロックアップピストン80を軸方向に移動させ、それによりロックアップクラッチ8を係合(完全係合あるいはスリップ係合)させることができる。なお、ロックアップクラッチ8として、摩擦材が貼着されたロックアップピストンを含む単板油圧式クラッチが採用されてもよい。
【0028】
ダンパ装置10は、
図1および
図2に示すように、ロックアップクラッチ8のクラッチドラム81を入力要素として利用するものであり、クラッチドラム81以外の回転要素として、中間部材(中間要素)12とドリブン部材(出力要素)15とを含む。更に、ダンパ装置10は、動力伝達要素として、ダンパ装置10の外周に近接するように同心円上に等間隔に配置される複数(本実施形態では、4個)の外側スプリング(第1弾性体)SP1と、外側スプリングSP1よりも内側かつ同心円上に等間隔に配置される複数(本実施形態では、2個)の内側スプリング(第2弾性体)SP2とを含む。
【0029】
本実施形態において、外側スプリングSP1は、荷重が加えられてないときに円弧状に延びる軸心を有するように巻かれた金属材からなるアークコイルスプリングである。これにより、外側スプリングSP1をより低剛性化し(バネ定数を小さくし)、ダンパ装置10をより低剛性化(ロングストローク化)することができる。同様に、本実施形態において、内側スプリングSP2は、荷重が加えられてないときに円弧状に延びる軸心(中心線)を有するように巻かれた金属材からなるアークコイルスプリングである。ただし、内側スプリングSP2として、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心(中心線)を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなる直線型コイルスプリングが採用されてもよい。
【0030】
ダンパ装置10の入力要素としても機能するクラッチドラム81は、第1摩擦係合プレート83が嵌合されるスプラインを有するドラム部81aと、ドラム部81aの外周部から径方向外側に延出された複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部(入力側当接部)81bとを有する。ダンパ装置10の取付状態において、各スプリング当接部81bは、
図2に示すように、互いに隣り合う外側スプリングSP1の間で両者と当接する。
【0031】
中間部材12は、フロントカバー3(ロックアップピストン80)側に配置される環状の第1中間プレート部材13と、ポンプインペラ4およびタービンランナ5側に配置されると共に複数のリベットを介して第1中間プレート部材13に連結(固定)される環状の第2中間プレート部材14とを含む。中間部材12を構成する第1中間プレート部材13は、
図1に示すように、複数の外側スプリングSP1の内周部をガイドするスプリングガイド部13aと、径方向外側に延びる複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部13bとを有する。ダンパ装置10の取付状態において、各スプリング当接部13bは、
図2に示すように、互いに隣り合う外側スプリングSP1の間で両者と当接する。
【0032】
中間部材12を構成する第2中間プレート部材14は、
図1に示すように、複数の外側スプリングSP1の外周部やタービンランナ5側の側部(
図1における左側の側部)をガイドするスプリングガイド部14aを有する。複数の外側スプリングSP1は、上述の第1中間プレート部材13のスプリングガイド部13aと、第2中間プレート部材14のスプリングガイド部14aとによりガイドされることにより、ロックアップクラッチ8を囲むように当該ロックアップクラッチの外側、すなわち流体伝動室9内の外周側領域に配置される。
【0033】
また、第2中間プレート部材14は、スプリングガイド部14aのタービンランナ5側の側部からフロントカバー3に向けて軸方向に延出された複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部(中間側当接部)14bと、スプリングガイド部14aよりもタービンランナ5側(
図1における左側)に位置するように軸方向にオフセットされると共に、ダンパ装置10の径方向に延在する平坦な環状のプレート部140とを有する。ダンパ装置10の取付状態において、各スプリング当接部14bは、第1中間プレート部材13のスプリング当接部13bと同様に、互いに隣り合う外側スプリングSP1の間で両者と当接する。
【0034】
第2中間プレート部材14のプレート部140には、
図2に示すように、内側スプリングSP2が配置される開口部である複数(本実施形態では、2個)のスプリング収容部(弾性体収容部)141が等間隔(本実施形態では、180°間隔)に形成されると共に、各スプリング収容部141の両側に複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部(中間側当接部)142が形成されている。ダンパ装置10の取付状態において、スプリング収容部141を介して向かい合う2個のスプリング当接部142は、
図2に示すように、両者の間の内側スプリングSP2の端部と当接(内側スプリングSP2の両端を支持)する。更に、プレート部140には、互いに隣り合うスプリング収容部141の端部(スプリング当接部142)同士の間に位置するように各スプリング収容部141を通る円周上に配置される複数(本実施形態では、2個)の開口部143が形成されている。すなわち、複数のスプリング収容部141と複数の開口部143とは、プレート部140の周方向に沿って交互に並ぶ。また、プレート部140は、
図2に示すように、ダンパハブ7によって調心されると共に回転自在に支持される。
【0035】
ドリブン部材15は、フロントカバー3(ロックアップピストン80)側に配置されると共に複数のリベットを介してダンパハブ7に連結(固定)される環状の第1出力プレート部材16と、ポンプインペラ4およびタービンランナ5側に配置される環状の第2出力プレート部材18とを含む。第1出力プレート部材16と第2出力プレート部材18とは、第2中間プレート部材14のプレート部140を挟み込むように複数のリベット17介して互いに連結(固定)される。第1出力プレート部材16と第2出力プレート部材18とを連結する各リベット17は、
図2に示すように、中間部材12の第2中間プレート部材14に形成された円弧状の支持穴144内に挿通される。これにより、中間部材12(第1中間プレート部材13および第2中間プレート部材14)は、第1出力プレート部材16と第2出力プレート部材18の間で、支持穴144およびリベット17を介してドリブン部材15により発進装置1やダンパ装置10の軸心周りに移動自在に支持される。
【0036】
ドリブン部材15を構成する第1出力プレート部材16は、
図1に示すように、リベット17が挿通される連結部よりも内周側に形成された複数のスプリングガイド部16aと、それぞれ対応する内側スプリングSP2の端部と当接可能な複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部(出力側当接部)16bと、複数のスプリングガイド部16aよりも第1出力プレート部材16の内周側に形成された複数のスプリングガイド部16cとを有する。ダンパ装置10の取付状態において、互いに向かい合う2個のスプリング当接部16bは、両者の間の内側スプリングSP2の端部と当接(内側スプリングSP2の両端を支持)する。また、スプリングガイド部16aとスプリングガイド部16cとは、第1出力プレート部材16の径方向に対向して内側スプリングSP2の側部(
図1における右側の側部)をガイドする。
【0037】
ドリブン部材15を構成する第2出力プレート部材18は、
図1に示すように、第1出力プレート部材16のスプリングガイド部16aと対向するように形成された複数のスプリングガイド部18aと、それぞれ対応する内側スプリングSP2の端部と当接可能な複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部(出力側当接部)18bと、第1出力プレート部材16のスプリングガイド部16cと対向するように形成された複数のスプリングガイド部18cとを有する。ダンパ装置10の取付状態において、互いに向かい合う2個のスプリング当接部18bは、両者の間の内側スプリングSP2の端部と当接(内側スプリングSP2の両端を支持)する。
【0038】
また、スプリングガイド部18aとスプリングガイド部18cとは、第2出力プレート部材18の径方向に対向して内側スプリングSP2の側部(
図1における左側の側部)をガイドする。複数の内側スプリングSP2は、上述の第1出力プレート部材16のスプリングガイド部16aおよび16c並びに第2出力プレート部材18のスプリングガイド部18aおよび18cによりガイドされることにより、複数の外側スプリングSP1からポンプインペラ4およびタービンランナ5の軸方向に離間すると共に入力軸ISに近接するように複数の外側スプリングSP1よりも内側に配置され、ロックアップクラッチ8(ロックアップピストン80やクラッチハブ82、第1および第2摩擦係合プレート83,84)と当該軸方向に並ぶ(径方向において少なくとも一部が重なる)ことになる。
【0039】
更に、ドリブン部材15を構成する第2出力プレート部材18は、リベット17が挿通される連結部から外側スプリングSP1と軸方向に並ぶように径方向外側に延出された質量体支持部18sを有する。そして、第2出力プレート部材18の質量体支持部18sは、複数(例えば、3〜4個)の振子質量体21を周方向に隣り合うように揺動自在に支持する。これにより、支持部材としての第2出力プレート部材18と、複数の振子質量体21とにより、遠心振子式吸振装置20が構成される。遠心振子式吸振装置20は、各振子質量体21を支持する支持部材としての第2出力プレート部材18(ドリブン部材15)の回転に伴って複数の振子質量体21が当該第2出力プレート部材18に対して同方向に揺動することで、ダンパ装置10のドリブン部材15に対して当該ドリブン部材15の振動とは逆方向の位相を有する振動を付与する。
【0040】
図1に示すように、遠心振子式吸振装置20の複数の振子質量体21は、内側スプリングSP2を囲むように当該内側スプリングSP2の外側に配置されると共に、外側スプリングSP1と軸方向に並ぶ(径方向において少なくとも一部が重なる)ことになる。また、各振子質量体21は、質量体支持部18sに所定の間隔をおいて複数形成された例えば略円弧状の長穴であるガイド穴に転動自在に挿通される支軸(ころ)22と、当該支軸の両端に固定される2枚の金属板(錘)21aとから構成される。ただし、遠心振子式吸振装置20の構成は、このようなものに限られない。また、遠心振子式吸振装置20は、各振子質量体21を支持する支持部材としてドリブン部材15を共用することにより、ダンパ装置10のドリブン部材15に連結されるが、専用の支持部材を用いてダンパ装置10の中間部材12と一体に回転するように構成されてもよい。
【0041】
ダイナミックダンパ30は、直線型コイルスプリングまたはアークコイルスプリングである複数(本実施形態では、2個の直線型コイルスプリング)の第3スプリング(第3弾性体)SP3と、第3スプリングSP3に連結されると共に上述のタービンランナ5やタービンハブ52と共に質量体を構成する連結部材31とを含むものである。なお、「ダイナミックダンパ」は、振動体の共振周波数に一致する周波数(エンジン回転数)で当該振動体に逆位相の振動を付加して振動を減衰する機構であり、振動体に対してトルクの伝達経路に含まれないようにスプリングと質量体とを連結することにより構成される。そして、スプリングの剛性と質量体の重さを調整することで、ダイナミックダンパを所望の周波数で作用させることができる。
【0042】
ダイナミックダンパ30の連結部材31は、タービンランナ5を構成するタービンシェル50に固定される環状の固定部32と、第3スプリングSP3の両端と当接するように固定部32から延出された複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部(弾性体当接部)33とを有する。連結部材31の固定部32は、タービンハブ52と共にタービンシェル50の内周部に複数のリベットを介して固定され、ドリブン部材15の第2出力プレート部材18により囲まれる。更に、固定部32は、第2出力プレート部材18の最もタービンランナ5側に位置する部分であるスプリングガイド部18a,18cよりも第1出力プレート部材16に近接するように配置される。また、複数のスプリング当接部33は、2個(一対)ずつ近接するようにダンパ装置10(発進装置1)の軸心に関して対称に形成され、互いに対をなす2個のスプリング当接部33は、例えば第3スプリングSP3の自然長に応じた間隔をおいて対向する。
【0043】
更に、各スプリング当接部33は、
図3に示すように、固定部32から軸方向に離間すると共に径方向外側に延びるように当該固定部32から曲げ部34を介して延出されて第2中間プレート部材14のプレート部140に形成された開口部143内に配置され、プレート部140と共に第1出力プレート部材16と第2出力プレート部材18との軸方向における間に位置する。すなわち、第2中間プレート部材14のプレート部140と、連結部材31の各スプリング当節部33とは、両者の厚み方向において少なくとも部分的(本実施形態では、ほぼ完全)に重なり合い、プレート部140とスプリング当接部33との厚み方向における重なり範囲内に内側スプリングSP2および第3スプリングSP3の軸心が含まれる。
【0044】
これにより、中間部材12を構成する第2中間プレート部材14のプレート部140をダンパハブ7により調心しつつ、当該プレート部140と連結部材31のスプリング当接部33とがダンパ装置10の軸方向に並ばないようにすることができるので、ダンパ装置10の軸長の増加を抑制して装置全体をコンパクト化することが可能となる。また、中間部材12のスプリング当接部142とプレート部140のスプリング収容部141に収容された内側スプリングSP2とを当該内側スプリングSP2の軸心を通る中心線付近で当接させ、かつ連結部材31のスプリング当接部33と第3スプリングSP3とを当該第3スプリングSP3の軸心を通る中心線付近で当接させることができる。これにより、内側スプリングSP2や第3スプリングSP3をより適正に伸縮させてダイナミックダンパ30を含むダンパ装置10の振動の減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0045】
図2に示すように、ダンパ装置10の取付状態において、各第3スプリングSP3は、一対のスプリング当接部33により支持されて、内側スプリングSP2と周方向に並ぶように互いに隣り合う2個の内側スプリングSP2の間に1個ずつ配置され、発進装置1やダンパ装置10の軸方向および周方向の双方において内側スプリングSP2とオーバーラップする。すなわち、連結部材31の各スプリング弾性体33は、内側スプリングSP2体と周方向に並ぶようにプレート部140の開口部143内に配置される第3スプリングSP3の端部と当接する。また、各第3スプリングSP3の両端は、ダンパ装置10の取付状態において、ドリブン部材15を構成する第1出力プレート部材16のスプリング当接部16bおよび第2出力プレート部材18のスプリング当接部18bと当接する。これにより、各第3スプリングSP3は、ダンパ装置10の出力要素であるドリブン部材15に連結される。
【0046】
このように、ダイナミックダンパ30を構成する第3スプリングSP3を内側スプリングSP2と周方向に並ぶように配置すれば、第3スプリングSP3を外側スプリングSP1や内側スプリングSP2の径方向における外側または内側、あるいは径方向における外側スプリングSP1と内側スプリングSP2との間に配置する場合に比べて、ダンパ装置10の外径の増加を抑制して装置全体をコンパクト化することができる。また、本実施形態において、中間部材12を構成する第2中間プレート部材14のプレート部140、連結部材31のスプリング当接部33、内側スプリングSP2および第3スプリングSP3は、
図3に示すように、プレート部140およびスプリング当接部33の厚み方向の中心線と、内側スプリングSP2および第3スプリングSP3の軸心とがダンパ装置10の軸心と直交する同一の平面PL内に含まれるように配置される。これにより、ダンパ装置10の軸長の増加を抑制して装置全体をよりコンパクト化すると共に、中間部材12(第2中間プレート部材14)のスプリング当接部142と内側スプリングSP2とを当該内側スプリングSP2の軸心を通る中心線上で当接させ、かつ連結部材31のスプリング当接部33に第3スプリングSP3を当該第3スプリングSP3の軸心を通る中心線上で支持させることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態において、複数の内側スプリングSP2と複数の第3スプリングSP3とは、
図2に示すように同心円上に配置され、発進装置1やダンパ装置10の軸心と各内側スプリングSP2の軸心との距離r2と、発進装置1やダンパ装置10の軸心と各第3スプリングSP3の軸心との距離r3とが等しくなっている。これにより、ダンパ装置10の外径の増加をより良好に抑制することが可能となる。更に、本実施形態において、各内側スプリングSP2と各第3スプリングSP3とは、それぞれの軸心が発進装置1やダンパ装置10の軸心と直交する同一の平面PL(
図1参照)内に含まれるように配置される。これにより、ダンパ装置10の軸長の増加をも抑制することができる。
【0048】
次に、
図4を参照しながら、上述のように構成される発進装置1の動作について説明する。
【0049】
発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが解除されている際には、
図4からわかるように、原動機としてのエンジンからのトルク(動力)が、フロントカバー3、ポンプインペラ4、タービンランナ5、連結部材31、第3スプリングSP3、ドリブン部材15、ダンパハブ7という経路を介して変速機の入力軸ISへと伝達される。ここで、本実施形態では、第3スプリングSP3が内側スプリングSP2と周方向に並んでダンパ装置10等の軸方向および径方向の双方において内側スプリングSP2とオーバーラップするように配置される。従って、外側スプリングSP1、内側スプリングSP2および第3スプリングSP3をダンパ装置10の径方向に並べて配置する場合に比べて、ダンパ装置10の外周に近接して配置される外側スプリングSP1をより低剛性化して(バネ定数を小さくして)ダンパ装置10の減衰性能をより向上させつつ、内側スプリングSP2および第3スプリングSP3のサイズ(外径)を充分に確保して両者の耐久性を良好に保ち、減衰性能に必要なスプリング特性を発揮させることができる。この結果、発進装置1では、ロックアップ解除時に第3スプリングSP3がフロントカバー3から変速機の入力軸ISまでの動力の伝達経路に含まれても、フロントカバー3から変速機の入力軸ISへとトルクを良好に伝達することが可能となる。
【0050】
一方、発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが実行される際には、
図2からわかるように、原動機としてのエンジンからのトルク(動力)が、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、クラッチドラム(ドライブ部材)81、外側スプリングSP1、中間部材12、内側スプリングSP2、ドリブン部材15、ダンパハブ7という経路を介して変速装置の入力軸ISへと伝達される。この際、フロントカバー3に入力されるトルクの変動は、主にダンパ装置10の外側スプリングSP1および内側スプリングSP2により減衰(吸収)される。ここで、発進装置1では、上述のように、ダンパ装置10の外周に近接して配置される外側スプリングSP1をより低剛性化(バネ定数を小さく)することができるので、ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されている際に、フロントカバー3に入力されるトルクの変動をダンパ装置10により良好に減衰(吸収)することができる。
【0051】
また、発進装置1では、ロックアップに伴ってロックアップクラッチ8によりフロントカバー3に連結されたダンパ装置10がフロントカバー3と共に回転すると、ダンパ装置10のドリブン部材15も発進装置1の軸心周りに回転し、ドリブン部材15の回転に伴って遠心振子式吸振装置20を構成する各振子質量体21がドリブン部材15に対して同方向に揺動することになる。これにより、遠心振子式吸振装置20からドリブン部材15に対して当該ドリブン部材15の振動(共振)とは逆方向の位相を有する振動を付与し、それによりフロントカバー3とダンパハブ7との間で遠心振子式吸振装置20によっても振動を減衰(吸収)することが可能となる。
【0052】
更に、ロックアップの実行時に、ポンプインペラ4やタービンランナ5(流体伝動装置)は、フロントカバー3と変速機の入力軸ISとの間でのトルクの伝達に関与せず、エンジンの回転に伴って当該エンジンからのトルクによりドリブン部材15が回転すると、ドリブン部材15のスプリング当接部16bおよび18bの何れか(何れか2組)が対応する第3スプリングSP3の一端を押圧し、各第3スプリングSP3の他端が連結部材31の対応する一対のスプリング当接部33の一方を押圧する。この結果、タービンランナ5が動力(トルク)の伝達に関与してない際には、複数の第3スプリングSP3や質量体としてのタービンランナ5等を含むダイナミックダンパ30がダンパ装置10のドリブン部材15に連結されることになる。これにより、発進装置1では、ダイナミックダンパ30によっても、エンジンからの振動を減衰(吸収)することが可能となる。ただし、上述のダンパ装置10において、ダイナミックダンパ30を構成する第3スプリングSP3の両端をドリブン部材15を構成する第1出力プレート部材16のスプリング当接部16bおよび第2出力プレート部材18のスプリング当接部18bと当接させる代わりに、プレート部140(第2中間プレート部材14)の開口部143の周方向における両端部と当接させることにより、ダイナミックダンパ30を中間部材12に連結されるようにしてもよい。
【0053】
以上説明したように、発進装置1のダンパ装置10は、ドリブン部材15のスプリング当接部16b,18bと当接するように連結部材31により支持される第3スプリングSP3および当該連結部材31を介して第3スプリングSP3に連結される質量体としてのタービンランナ5等を有するダイナミックダンパ30を含むものである。また、ダンパ装置10の中間部材12は、内側スプリングSP2を収容するスプリング収容部141や内側スプリングSP2と当接するスプリング当接部142を有すると共にダンパハブ7により調心されるプレート部140を含む。更に、連結部材31のスプリング当接部33は、固定部32から曲げ部34を介して延出されて中間部材12のプレート部140に形成された開口部143内に配置されると共に、第3スプリングSP3を内側スプリングSP2と周方向に並ぶように支持する。そして、中間部材12のプレート部140、連結部材31のスプリング当接部33、内側スプリングSP2および第3スプリングSP3は、プレート部140およびスプリング当接部33の厚み方向の中心線と、内側スプリングSP2および第3スプリングSP3の軸心とがダンパ装置10の軸心と直交する同一の平面PL内に含まれるように配置される。
【0054】
このように、ダイナミックダンパ30の第3スプリングSP3を内側スプリングSP2と周方向に並ぶように配置することで、当該第3スプリングSP3を外側スプリングSP1や内側スプリングSP2の径方向における外側または内側、あるいは径方向における外側スプリングSP1と内側スプリングSP2との間に配置する場合に比べて、ダンパ装置10の外径の増加を抑制して装置全体をコンパクト化することが可能となる。また、質量体としてのタービンランナ5に固定される連結部材31の固定部32から曲げ部34を介してスプリング当接部33を延出すると共に、当該スプリング当接部33を中間部材12のプレート部140に形成された開口部143内に配置することで、中間部材12のプレート部140をダンパハブ7により調心しつつ、当該プレート部140と連結部材31のスプリング当接部33とがダンパ装置10の軸方向に並ばないようにすることができる。これにより、ダンパ装置10の軸長の増加を抑制して装置全体をコンパクト化することが可能となる。
【0055】
更に、中間部材12のプレート部140の厚み方向の中心線と、連結部材31のスプリング当接部33の厚み方向の中心線と、内側スプリングSP2および第3スプリングSP3の軸心とが、ダンパ装置10の軸心と直交する同一の平面PL内に含まれるようにすることで、ダンパ装置10の軸長の増加を抑制して装置全体をよりコンパクト化することが可能となる。加えて、このダンパ装置10では、中間部材12のスプリング当接部142と内側スプリングSP2とを当該内側スプリングSP2の軸心を通る中心線上で当接させ、かつ連結部材31のスプリング当接部33に第3スプリングSP3を当該第3スプリングSP3の軸心を通る中心線上で支持させることができる。これにより、内側スプリングSP2や第3スプリングSP3をより適正に伸縮させてダイナミックダンパ30を含むダンパ装置10の振動の減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0056】
また、上記実施形態のように、ダンパ装置10の軸心と内側スプリングSP2の軸心との距離r2と、ダンパ装置10の軸心と第3スプリングSP3の軸心との距離r3とを等しくすれば、ダンパ装置10の外径の増加をより良好に抑制することが可能となる。ただし、内側スプリングSP2は、第3スプリングSP3と周方向に並ぶように配置されるのであれば、
図5に示すダンパ装置10Bのように、第3スプリングSP3よりも(若干)径方向外側に配置されてもよい。これにより、内側スプリングSP2をより低剛性化して、ダンパ装置10の全体の減衰性能をより向上させることができる。そして、外側スプリングSP1の軸心と第3スプリングSP3の軸心とは、完全に同一の平面内に含まれていなくてもよく、設計公差等により軸方向に若干ズレてもよい。
【0057】
更に、ダンパ装置10において、ドリブン部材15は、それぞれスプリング当接部16b,18bを有すると共に互いに連結される第1および第2出力プレート部材18を含み、中間部材12のプレート部140と連結部材31のスプリング当接部33とは、第1出力プレート部材16と第2出力プレート部材18との軸方向における間に配置される。これにより、第1および第2出力プレート部材16,18のスプリング当接部16b,18bを内側スプリングSP2の軸心を通る中心線に関して対称となる位置で内側スプリングSP2と当接させると共に、第1および第2出力プレート部材18のスプリング当接部16b,18bを第3スプリングSP3の軸心を通る中心線に関して対称となる位置で第3スプリングSP3と当接させることが可能となり、内側スプリングSP2および第3スプリングSP3をより適正に伸縮させてダンパ装置10の振動の減衰性能をより向上させることができる。
【0058】
また、ダンパ装置10において、第1出力プレート部材16は、ダンパハブ7に固定され、第2出力プレート部材18は、連結部材31の固定部32を径方向外側から囲むように配置され、複数の振子質量体21を揺動自在に支持して当該振子質量体21と共に遠心振子式吸振装置20を構成する。これにより、ダイナミックダンパ30および遠心振子式吸振装置20によりダンパ装置10全体の振動を良好に減衰(吸収)することが可能となる。そして、第2出力プレート部材18を連結部材31の固定部32を径方向外側から囲むように配置すると共に、両者が厚み方向において少なくとも部分的(本実施形態では、ほぼ完全)に重なり合うようにすることで、第2出力プレート部材18と連結部材31の固定部32とがダンパ装置10の軸方向に並ばないようにしてダンパ装置10の軸長の増加を抑制し、それにより装置全体をコンパクト化することができる。
【0059】
更に、上述の発進装置1では、ダイナミックダンパ30の連結部材31の固定部32がタービンシェル50の内周部に固定され、タービンランナ5がダイナミックダンパ30の質量体として用いられる。これにより、ダイナミックダンパ30の質量体を別途設ける必要が無くなるので、発進装置1の大型化を抑制することが可能となる。ただし、ダイナミックダンパ30がタービンランナ5とは異なる専用の質量体を有するものとして構成されてもよいことはいうまでもない。
【0060】
また、タービンランナ5(タービンシェル50)の内周部に固定される連結部材31の固定部32を、第1出力プレート部材16よりもタービンランナ5側に配置される第2出力プレート部材18の最もタービンランナ5側に位置する部分であるスプリングガイド部18a,18cよりも第1出力プレート部材16に近接するように配置することで、発進装置1の軸長をより短縮化することができる。
【0061】
更に、発進装置1では、外側スプリングSP1と内側スプリングSP2とがポンプインペラ4およびタービンランナ5の軸方向に離間して配置され、外側スプリングSP1は、ロックアップクラッチ8を囲むように当該ロックアップクラッチ8の外側に配置される一方、内側スプリングSP2は、ロックアップクラッチ8と軸方向に並ぶ(径方向において少なくとも一部が重なる)ように配置される。そして、遠心振子式吸振装置20の複数の振子質量体21は、内側スプリングSP2を囲むように当該内側スプリングSP2の外側に配置されると共に、外側スプリングSP1と軸方向に並ぶ(径方向において少なくとも一部が重なる)。これにより、振子質量体21の揺動範囲を充分に確保して、遠心振子式吸振装置20による振動の減衰性能をより向上させることができる。従って、この発進装置1では、装置全体のコンパクト化を図りつつ、ダイナミックダンパ30および遠心振子式吸振装置20を含むダンパ装置10によりエンジンからの振動を良好に減衰することが可能となる。
【0062】
なお、ダイナミックダンパ30において、上述の連結部材31の代わりに、
図6に示す連結部材31Bを採用してもよい。同図に示す連結部材31Bは、ダンパ装置の内側スプリングの側部(
図1における左側の側部)をガイドするように固定部32から径方向外側に延出されたスプリングガイド部35を有するものである。このようなダイナミックダンパ30を上述のダンパ装置10に適用した場合、ダンパ装置10の第2出力プレート部材18から最内周側のスプリングガイド部18cを省略することができる。これにより、第2出力プレート部材18の内周部に歪み等を生じさせないようにしながら、当該第2出力プレート部材18をより容易に形成することが可能となる。また、
図6に示すように、互いに対向し合うスプリング当接部33の間に、第3スプリングSP3の側部をガイドするスプリングガイド部36が形成されてもよい。
【0063】
また、第3スプリングSP3の両端部は、ダンパ装置10の取付状態において、連結部材31の一対(2つ)のスプリング当接部33により支持されると共に、それぞれドリブン部材15を構成する第1出力プレート部材16のスプリング当接部16bおよび第2出力プレート部材18のスプリング当接部18bと当接するが、これに限られるものではない。すなわち、ダイナミックダンパ30を構成する第3スプリングSP3の数を適宜増やすと共に、連結部材31に互いに隣り合う2つの第3スプリングSP3の間で両者の端部と当接するスプリング当接部を設け、当該スプリング当接部を介して隣り合う2つの第3スプリングSP3を両側からドリブン部材15等のスプリング当接部により支持してもよい。これにより、1本の第3スプリングSP3を少なくとも一対のスプリング当接部により両側から支持する場合に生じがちな製造交差に起因したガタ、すなわち第3スプリングSP3の端部とスプリング当接部との隙間を無くすことができるので、ダイナミックダンパ30をよりスムースに作動させることが可能となる。
【0064】
そして、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。