特許第6044753号(P6044753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044753
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】救難支援装置及び救難支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20161206BHJP
   G01S 19/17 20100101ALI20161206BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G08B25/04 K
   G01S19/17
   G08B21/02
【請求項の数】11
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-1427(P2012-1427)
(22)【出願日】2012年1月6日
(65)【公開番号】特開2013-142915(P2013-142915A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 敦郎
【審査官】 吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−317244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S19/17
G08B19/00−31/00
H04B7/24−7/26
H04M1/00
1/24−1/82
99/00
H04W4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPSの電波信号を受信してユーザーの位置を取得するGPSアンテナ部と、
前記ユーザーの加速度、姿勢、及び向きを示す検出データを出力するセンサー部と、
前記ユーザーに加わる衝撃の大きさが所定の閾値を超えたか否かを判定する衝撃判定部と、
前記ユーザーが停止したか否かを判定する停止判定部と
前記ユーザーに加わる衝撃の大きさが前記所定の閾値を超えた場合、前記GPSアンテナ部が取得した前記ユーザーの位置を起点とした前記ユーザーの停止位置を、前記ユーザーが停止するまでに前記センサー部が出力した検出データに基づき算出する処理部と
を含む救難支援装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ユーザーの停止位置の情報を含む救難情報を生成する救難情報生成部を含み、
前記救難情報を含む救難信号を発信する、救難支援装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記センサー部は、
加速度センサーを含み、
前記衝撃判定部は、
前記加速度センサーの検出データを利用して、前記ユーザーに加わる衝撃の大きさが前記所定の閾値を超えたか否かを判定する、救難支援装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記センサー部は、
地磁気センサーを含み、
前記処理部は、
前記加速度センサーの検出データと前記地磁気センサーの検出データとを利用して、前記ユーザーの停止位置を算出する、救難支援装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記ユーザーの高度を算出する高度算出部を含み、
前記救難情報生成部は、
前記ユーザーの停止位置の高度の情報を含む前記救難情報を生成する、救難支援装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記センサー部は、
気圧センサーを含み、
前記高度算出部は、
前記気圧センサーの検出データを利用して、前記ユーザーの高度を算出する、救難支援装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、
前記ユーザーに加わる衝撃の大きさが前記所定の閾値を超えた後の所与のタイミングからの経過時間を計測する時間計測部を含む、救難支援装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、
前記ユーザーの生体情報を検出する生体情報検出部を含む、救難支援装置。
【請求項9】
請求項2において、
他の前記救難支援装置が発信した前記救難信号を受信する、救難支援装置。
【請求項10】
請求項9において、
受信した前記救難信号に含まれる前記救難情報から得られる遭難したユーザーの生体情報を利用して、当該遭難したユーザーの重篤度を判定する重篤度判定部をさらに含む、救難支援装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の救難支援装置を複数含み、
第1の前記救難支援装置が、前記救難信号を発信し、
第2の前記救難支援装置が、前記救難信号を受信する、救難支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救難信号発信装置及び救難支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
雪山で活動時(スキー、登山、工事、狩猟等)に積雪が不安定な場所で行動した場合、雪崩に遭遇してしまうことがある。現状の埋没時の捜索方法は、ビーコン、プローブを利用するのが一般的であるが、ビーコン操作に慣れないと時間を要し埋没者を重篤な状態に陥らせることがある。そこで、雪崩に遭遇し、埋没からの探索、発見を短時間に行う必要がある。
【0003】
従来の技術として、米国、カナダ、フランス、ロシアを中心に低高度周回衛星(LEO)を利用した遭難救助システムがある。LEO衛星は、遭難者の上空通過時に遭難者が所持する専用無線機からの遭難ビーコンを受信した後、世界に配置した39の専用地上局上空通過時に信号伝送を行なう。地上局では、その信号のドップラー情報等を用いて精度30kmで遭難者の位置を推定して、救助センターへの指令を出し、救助活動を行なう。LEO衛星は、遭難者の上空通過時にしかコンタクトできないため時間遅れが生じるが、静止衛星にも遭難救助機能を付加したことによりリアルタイム性が向上したとされている。
【0004】
また、GPSは、昇交点傾斜角が55度で昇交点経度が60度ずつ異なる六つの軌道上に4機ずつの人工衛星を配し、24衛星で全地球をカバーして測位機能を果たすとされている。測位方法は、以下のように行なうとされている。まず、いずれかの4衛星から発射された電波が利用者受信機に到達するまでの時間を測定し、光速Cを乗ずることにより衛星までの距離を測定する。そして、4衛星を2つの組に分け、一方の組の2衛星からの距離の差から構成する2衛星を焦点とする回転双曲線と他方の組の2衛星からの距離の差から構成する2衛星を焦点とする回転双曲線との地球上における交点を求める。この交点から利用者受信機の位置を求める。
【0005】
遭難個所の正確な位置把握による救助作業のコスト削減、救助作業の危険性を減少させることを目的とし、特許文献1には、「自己の位置情報を記憶する記憶部と、自己を所有するユーザーが所持する水の量を検知する検知部と、上記検知部により検知された水の量が所定の水量より少ない場合に、上記ユーザーに救援が必要になったと判定する判定部と、上記判定部により上記ユーザーに救援が必要になったと判定された場合に、上記記憶部に記憶された自己の位置情報を送信する送信部とを備えたことを特徴とする移動体通信装置」が開示されている。
【0006】
登山者が雪崩に巻き込まれた場合に、素早く救助活動を行なうために「雪崩ビーコン」と呼ばれる、MF帯の電波(457kHz)を利用した発信・受信兼用の装置が市販されており、これを用いて遭難者を探索する方法がある。雪に深く埋もれた発信器から出た電波が雪の中を透過するときの減衰量は周波数、雪の含水率、密度、温度に依存する。一般に、電波の周波数が高くなるほど波長が短くなるために送受信装置の小型化には有利となり、電波も飛びやすくなるが、電波が積雪を透過中に減衰を受けやすいという問題がある。
【0007】
特許文献2は、特に雪崩などで雪中に埋もれた遭難者の位置を早期に特定して救出に役立てるための、遭難者探索支援システム及びその探索方法に関するものであり、「430MHz帯の周波数範囲の中から選ばれた1種類以上の電波、および、MF帯の周波数範囲の中から選ばれた1種類以上の電波を発信する機能を有する発信器であって、且つ、発信時間が長くなるにつれて発信の発信周期が長くなるか、捜索電波を受信した時に発信出力が大きくなる発信器を登山者に所持させ、登山者が遭難した場合に、前記登山者が所持する発信器から発信している430MHz帯の電波を上空から探知する広範囲の第一次探索を実施し、その情報に基づいて次に地上捜索隊が遭難現地に近づき前記430MHz帯の電波での交会法による遭難エリアの絞り込みと、前記登山者が所持する発信器から発信しているMF帯の電波により遭難位置を特定する第二次探索を行なうことを特徴とする山岳遭難者探索システム」が開示されている。
【0008】
特許文献2の「0019」段落には、「図2(a)、(b)は、登山者が所持する小型発信器の2種類の実施例を示す。いずれの小型発信器40も、2つの周波数の電波をそれぞれ断続的に放射し、そのうちの1波は、VHF〜UHF帯の周波数範囲の中で特定小電力無線局として認可されている430MHz帯(A波)22であり、もう1波は雪崩用トランシーバのための国際標準周波数である457kHz(B波)23である。B波は、登山者同士の初期探索用にも使用できる。また、小型発信器(a)は、方位、時刻、温度、気圧、高度などを表示する付加機能25があるが、受信探索機能が備わってないために小型で携帯性が良い。また、無雪時などではA波のみ放射することも選択でき、さらに、遭難救助センターに遭難電波がキャッチされるとランプが青色に変わる機能を付加することも可能である。小型発信器(b)は、市販の「雪崩ビーコン」と呼ばれるB波の発信23及び受信機能24に、A波の発信機能22を付け加えたものである。」と記載されている。
【0009】
また、特許文献2の「0022」段落には、「図1は山岳遭難者探索システムの形態例を示す。遠方まで到達するA波11を、電波方位探知機50が搭載されたヘリコプター30によって上空から探索する。ヘリコプターには、図3に示すように飛行位置を取得する高性能GPS受信装置(位置センサ)31、飛行方位を取得するジャイロコンパス(方位センサ)32、飛行姿勢を取得する加速度センサ(姿勢センサ)33が取り付けてあり、機体の位置・方位・姿勢情報から、電波方向計測点の空間座標と基準方位のデータが得られる。探索中にA波11をキャッチした場合、ヘリコプターの移動とともに連続的に多地点での電波の強度および到来方位の計測を行なう。また機上では、簡易遭難解析装置36により、随時、発信源の推定分布図を地図情報に重ねて作成することで遭難場所を大まかに特定し、適切な計測飛行経路の選択に役立てる。一方、計測飛行中は、A波11の到来方位、電波強度データが、測定座標(緯度、経度、高度)31、機体の方位センサ32、姿勢センサ33のデータと共にリアルタイムで遭難救援センター70へ無線伝送13される。データを受け取った警察、消防署等の遭難救援センター70では、図4に示すように遭難電波到来方位と電波強度データを機体の位置・方位・姿勢データと同時に収集し、必要ならば飛行ルートを追加要求することで十分なデータを得る。そこでまずコンピューター解析により、到来方向の多重交会点及び電波強度分布から2次元存在確率密度分布図を作成することにより電波発信源の位置を直接推定し、推定箇所が2箇所以上になった場合は、前述の方法によって推定された位置周辺の実際の山岳地形に電波の反射・回折伝搬特性を考慮したFDTD(Finite Difference Time Domain method:時間領域差分法)計算機シミュレーション(41〜46)を行ない、前述の結果と照合する。このようなフィードバックプロセスを導入することにより、多重交会法で生じる偽の発信源を消去することで遭難推定場所を100m四方程度の範囲までに絞り、山岳地図情報画面(42)の中で遭難場所を重ね合わせて表示させる。この遭難位置情報を地上探索隊20に連絡する。」と記載されている。
【0010】
さらに、特許文献2の「0023」段落には、「これら情報を受けた地上の探索隊20が遭難現場に近づき、携帯する小型電波方位探知機60でA波11(又はB波12)の電波を受信し、交会法により遭難エリアを絞り、さらにB波12(又はA波11)の最大電波強度の位置を見つけることにより、遭難位置を2〜3m四方程度までに特定する。」と記載されている。
【0011】
特許文献3には、「探索対象者が有する探索対象端末と、前記探索対象端末を探索する探索端末と、を有する探索システムであって、前記探索対象端末は、位置情報衛星からの位置関連信号に基づいて現在位置を測位して探索対象端末の現在位置を示す探索対象位置情報を生成する探索対象位置情報生成手段と、前記探索対象位置情報を含む探索要求情報を、前記探索端末に送信する探索要求情報送信手段と、前記探索端末から励振信号を受信する励振信号受信手段と、前記励振信号に対応する応答信号を送信する応答信号送信手段と、を有し、前記探索端末は、前記探索要求情報を受信する探索要求情報受信手段と、位置情報衛星からの位置関連信号に基づいて現在位置を測位して前記探索端末の現在位置を示す探索端末位置情報を生成する探索端末位置情報生成手段と、前記探索対象位置情報に示される前記探索対象端末の現在位置と前記探索端末位置情報に示される前記探索端末の現在位置を比較する位置比較手段と、前記位置比較手段の比較結果に基づいて、前記探索対象端末に対して前記励振信号を送信する励振信号送信手段と、前記探索対象端末から前記励振信号に対応する前記応答信号を受信する応答信号受信手段と、前記応答信号の方向を特定する応答信号方向特定手段と、を有することを特徴とする探索システム」が開示されている。
【0012】
地震、雪崩、土砂くずれ等による生き埋め、ある空間に閉じ込められた場合、高いところから転落した場合の遭難、襲われる災難、轢き逃げ等が発生した場合、生命体を速やかに救助することが必要である。従来の技術として、地震災害等で生き埋めになった人の救助のために、腕時計等の身に携帯するものに災害検出センサーと、生体情報測定センサーと、発信機とを付け、災害検出センサーが災害を検知した時のみに生体情報を発信機で電波信号として送信するものがある。
【0013】
生き埋めになっていることが検出できないため、地震等で本人が家屋の下敷きになって閉じ込められていなくても、災害検出センサーが地震を検知すると、生体情報を電波として発信してしまい、捜索する救助隊の電波検知器が誤判断して救助活動を妨げることがあるという問題がある。このような課題に鑑みてなされたものであって、災難(地震、雪崩、土砂くずれ等による生き埋め、ある空間に閉じ込められた場合、高いところから転落した場合の遭難、襲われる災難、轢き逃げ)が発生した時に、救助が必要になったことを検出して救助信号を発信することができる救助信号発生方法及び装置を提供することを目的とし、特許文献4には、「災難で生命体に加わった衝撃を検知し(ステップ1)、一定時間内の生命体の移動距離を基に救助が必要かどうかを判断し(ステップ2)、救助が必要であると判断したら、救助信号を発信する(ステップ3)、ことを特徴とする救助信号発生方法」が開示されている。
【0014】
特許文献5には、「携帯機器からの信号を検知してその位置を確認する位置確認システムであって、前記携帯機器が、前記携帯機器を所持するユーザを特定する情報を送信する手段を備え、前記携帯機器からの信号を検知する検出部を備えた制御装置が、前記検出部で検知された前記携帯機器からの信号に基づき、前記携帯機器を所持するユーザを特定する情報を地図情報に重ね合わせて表示部に表示する制御部と、前記表示部に表示される地図情報と前記ユーザを特定する情報とを送信する送信部と、を備え、前記制御装置と通信接続する管理装置が、前記制御装置から送信された前記地図情報と前記ユーザを特定する情報とを受信して前記管理装置の表示部に表示する、ことを特徴とする位置確認システム」が開示されている。
【0015】
一般的に普及している雪崩遭難者捜索用ビーコン装置(以下、雪崩ビーコンという)は、457kHzの単一周波数の電波を使用した携帯救命無線装置である。雪崩の発生する恐れのある地帯で行動する各人(雪山登山者・スキーヤー・作業者等)が、雪崩ビーコンを常時送信状態(送信モード)として携行するものである。突発的に発生した雪崩に巻き込まれて雪中に埋もれて位置が不明になってしまった場合に、捜索者側が持つ雪崩ビーコンを受信状態(捜索モード)に切り替え、遭難者(雪崩の埋没者)が発信する電波を頼りに遭難者の位置を探し救助する。尚、雪崩における埋没遭難事故の場合には、少なくとも埋没後15分以内に救助する必要があるのが一般的である。それ以降は、時間が経つほど雪崩遭難者の生存率が激減してしまう。従来の雪崩ビーコン又は従来技術では、複数の遭難者が相互に隣接して存在しており且つ迅速な救助を必要とする雪崩遭難の場合には十分に効果を発揮することができない問題があった。従来技術の課題に鑑みなされたものであり、同一エリア内で複数の遭難者がいる場合に、これら遭難者を識別して迅速に遭難者を捜索して救助可能な雪崩ビーコンを提供することを目的とするものであり、特許文献6には、「雪崩に埋もれた1人以上の遭難者が携帯する送信機から発信するビーコン電波を受信機で受信して遭難者を捜索する雪崩遭難者捜索用ビーコン装置において、前記送信機は、一定周波数の搬送波を発生する搬送波発生手段と、各送信機に固有のデジタル識別信号を発生する識別信号入力手段と、前記搬送波を前記識別信号で変調する変調器とを備えることを特徴とする雪崩遭難者捜索用ビーコン装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−185436号公報
【特許文献2】特開2005−229449号公報
【特許文献3】特開2006−010331号公報
【特許文献4】特開2005−310034号公報
【特許文献5】特開2001−325634号公報
【特許文献6】特開2003−198389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、ビーコンやプローブ操作に慣れない捜索者の場合、探索に時間を要してしまうため、被災者を重篤な状態に陥らせる危険性がある。従って、雪中への埋没からの探索、発見を短時間に行う必要がある。
【0018】
GPSから取得できる位置情報をもとに地図情報に照らし、高度情報を取得することもできるが、積雪を考慮しなければならないために、GPSによる位置情報だけでは、遭難者が埋没している深度が不明であるため、事は深刻な状況にならざるをえないという問題をはらんでいた。
【0019】
さらに、GPS信号は積雪を透過中に減衰を受けやすいため、遭難者が埋没した状態ではビーコンがGPS信号を受信できず、位置情報を取得できない可能性もある。
【0020】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、遭難者の遭難位置の情報を確実に送信可能な救難信号発信装置、及び遭難者の早期の救助を可能とする救難支援システムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
[適用例1]
本適用例に係る救難信号発信装置は、ユーザーの位置を算出する位置算出部と、前記ユーザーに加わる衝撃の大きさが所定の閾値を超えたか否かを判定する衝撃判定部と、前記ユーザーに加わる衝撃の大きさが前記所定の閾値を超えた場合、前記位置算出部が算出した前記ユーザーの位置を起点として前記ユーザーが停止するまでの移動軌跡を算出する移動軌跡算出部と、前記位置算出部が算出した前記ユーザーの位置と前記移動軌跡算出部が算出した前記ユーザーの移動軌跡とを利用して前記ユーザーの停止位置を推定し、当該停止位置の情報を含む救難情報を生成する救難情報生成部と、を含み、前記救難情報を含む救難信号を発信する。
【0022】
例えば、この救難信号発信装置のユーザーが雪崩に巻き込まれた場合、当該ユーザーには相当程度の衝撃が加わると考えられる。そこで、この救難信号発信装置は、ユーザーに加わる衝撃の大きさが所定の閾値を超えた場合は、ユーザーが停止するまでの移動軌跡を算出し、ユーザーの位置を起点としてユーザーの移動軌跡を辿ることで、ユーザーの停止位置(遭難位置)を推定し、当該停止位置の情報を含む救難信号を送信する。すなわち、この救難信号発信装置は、例えば、ユーザーが雪崩に巻き込まれ、衛星信号を受信不可能な状態になったとしても、ユーザーが雪崩に巻き込まれる前に算出した位置の情報と雪崩に巻き込まれた後のユーザーの移動軌跡の情報からユーザーの遭難位置を推定できるので、この遭難位置の情報を確実に送信することができる。
【0023】
[適用例2]
上記適用例に係る救難信号発信装置は、加速度センサーをさらに含み、前記衝撃判定部は、前記加速度センサーの検出データを利用して、前記ユーザーに加わる衝撃の大きさが前記所定の閾値を超えたか否かを判定するようにしてもよい。
【0024】
ユーザーに加わる衝撃の大きさに応じて、ユーザーに加わる加速度の大きさも変化するので、加速度センサーが検出する加速度の大きさから衝撃の大きさを特定することができる。この加速度センサーは、複数軸の加速度を検出するようにしてもよい。
【0025】
この救難信号発信装置は、加速度センサーの検出データを記憶部に保存するようにしてもよい。このようにすれば、遭難したユーザーを救助した後、加速度センサーの検出データを記憶部から読み出して解析することでユーザーが受けた衝撃の大きさ等の情報を得ることができる。この情報を参考にすることで、ユーザーに適切な処置を施すことができる。
【0026】
[適用例3]
上記適用例に係る救難信号発信装置は、地磁気センサーをさらに含み、前記移動軌跡算出部は、前記加速度センサーの検出データと前記地磁気センサーの検出データとを利用して、前記移動軌跡を算出するようにしてもよい。
【0027】
加速度センサーの検出データから算出される加速度値を1階積分することで移動速度を算出することができ、2階積分することで移動距離を算出することができる。また、地磁気センサーの検出データから移動方向を算出することができる。従って、加速度センサーの検出データと地磁気センサーの検出データとを利用して移動軌跡を算出することができる。
【0028】
この救難信号発信装置は、移動軌跡の情報を記憶部に保存するようにしてもよい。このようにすれば、遭難したユーザーを救助した後、ユーザーの移動軌跡の情報を記憶部から読み出して解析することで遭難時の状況を詳細に把握することができる。これにより、ユーザーに適切な処置を施すことができる。
【0029】
[適用例4]
上記適用例に係る救難信号発信装置は、前記ユーザーの高度を算出する高度算出部をさらに含み、前記救難情報生成部は、前記ユーザーの停止位置の高度の情報をさらに含む前記救難情報を生成するようにしてもよい。
【0030】
この救難信号発信装置が発信する救難信号を受信すれば、ユーザーの停止位置(緯度・経度)とともに当該停止位置の高度の情報を得ることができるので、より正確な遭難位置を特定することができる。
【0031】
[適用例5]
上記適用例に係る救難信号発信装置は、気圧センサーをさらに含み、前記高度算出部は、前記気圧センサーの検出データを利用して、前記ユーザーの高度を算出するようにしてもよい。
【0032】
ユーザーの高度の変化に応じて気圧も変化するので、気圧センサーが検出する気圧値から高度を算出することができる。
【0033】
[適用例6]
上記適用例に係る救難信号発信装置は、前記ユーザーに加わる衝撃の大きさが前記所定の閾値を超えた後の所与のタイミングからの経過時間を計測する時間計測部をさらに含むようにしてもよい。
【0034】
この救難信号発信装置は、救難情報生成部が当該経過時間の情報をさらに含む救難情報を生成し、当該救難情報を含む救難信号を発信するようにしてもよいし、当該経過時間の情報を記憶部に保存するようにしてもよい。
【0035】
このようにすれば、ユーザーを発見した時の経過時間の情報から、ユーザーの生命の危険性等を判断し、ユーザーに対して危険性に応じた適切な処置を施すことができる。
【0036】
[適用例7]
上記適用例に係る救難信号発信装置は、前記ユーザーの生体情報を検出する生体情報検出部をさらに含むようにしてもよい。
【0037】
この救難信号発信装置は、救難情報生成部が当該生体情報をさらに含む救難情報を生成し、当該救難情報を含む救難信号を発信するようにしてもよいし、当該生体情報を記憶部に保存するようにしてもよい。
【0038】
このようにすれば、ユーザーの生体情報からユーザーの生命の危険性等を判断し、ユーザーに対して危険性に応じた適切な処置を施すことができる。
【0039】
[適用例8]
上記適用例に係る救難信号発信装置は、他の前記救難信号発信装置が発信した前記救難信号を受信するようにしてもよい。
【0040】
[適用例9]
上記適用例に係る救難信号発信装置は、受信した前記救難信号に含まれる前記救難情報から得られる遭難したユーザーの生体情報を利用して、当該遭難したユーザーの重篤度を判定する重篤度判定部をさらに含むようにしてもよい。
【0041】
この救難信号発信装置は、前記重篤度判定部の判定結果を表示部に表示するようにしてもよい。この救難信号発信装置のユーザーは、遭難者の重篤度を考慮しながら適切な救助活動を行うことができる。例えば、複数の遭難者がいる場合、当該ユーザーは、各遭難者の重篤度を比較し、助かる可能性がある遭難者を優先的に救助する等の措置を講じることができる。
【0042】
[適用例10]
本適用例に係る救難支援システムは、上記適用例に係る救難信号発信装置を複数含み、一部の前記救難信号発信装置が、前記救難信号を発信し、他の一部の前記救難信号発信装置が、前記救難信号を受信する。
【0043】
[適用例11]
本適用例に係る救難信号発信方法は、ユーザーの位置を算出する位置算出ステップと、前記ユーザーに加わる衝撃の大きさが所定の閾値を超えたか否かを判定する衝撃判定ステップと、前記ユーザーに加わる衝撃の大きさが前記所定の閾値を超えた場合、前記位置算出ステップで算出した前記ユーザーの位置を起点として前記ユーザーが停止するまでの移動軌跡を算出する移動軌跡算出ステップと、前記位置算出ステップで算出した前記ユーザーの位置と前記移動軌跡算出ステップで算出した前記ユーザーの移動軌跡とを利用して前記ユーザーの停止位置を推定し、当該停止位置の情報を含む救難情報を生成する救難情報生成ステップと、前記救難情報を含む救難信号を発信するステップと、を行う。
【0044】
[適用例12]
本適用例に係るプログラムは、コンピューターを、ユーザーの位置を算出する位置算出部と、前記ユーザーに加わる衝撃の大きさが所定の閾値を超えたか否かを判定する衝撃判定部と、前記ユーザーに加わる衝撃の大きさが前記所定の閾値を超えた場合、前記位置算出部が算出した前記ユーザーの位置を起点として前記ユーザーが停止するまでの移動軌跡を算出する移動軌跡算出部と、前記位置算出部が算出した前記ユーザーの位置と前記移動軌跡算出部が算出した前記ユーザーの移動軌跡とを利用して前記ユーザーの停止位置を推定し、当該停止位置の情報を含む救難情報を生成する救難情報生成部と、前記救難情報を含む救難信号を発信する通信制御部として機能させる。
【0045】
[適用例13]
本適用例に係る記録媒体は、上記適用例に係るプログラムを記録した、コンピューター読み取り可能な記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】第1実施形態の救難支援システムの概要についての説明図。
図2】第1実施形態の救難支援システムの構成例を示す図。
図3】救難信号発信装置の外観の一例を示す図。
図4】第1実施形態の救難信号発信装置の構成例を示す図。
図5】ユーザーが雪崩に遭遇したときにユーザーに加わる加速度の一例を示す図。
図6】第1実施形態の救難信号発信装置の送信処理の一例を示す図。
図7】第1実施形態の救難信号発信装置の受信処理の一例を示す図。
図8】第1実施形態の救難信号発信装置の表示画面の一例を示す図。
図9】第2実施形態の救難信号発信装置の構成例を示す図。
図10】第2実施形態の救難信号発信装置の送信処理の一例を示す図。
図11】第3実施形態の救難支援システムの概要についての説明図。
図12】第3実施形態の救難支援システムの構成例を示す図。
図13】第3実施形態の救難信号発信装置の送信処理の一例を示す図。
図14】第3実施形態の救難信号発信装置の受信処理の一例を示す図。
図15】第3実施形態の救難信号発信装置の表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0048】
1.第1実施形態
1−1.救難支援システムの概要
第1実施形態の救難支援システムでは、救難信号発信装置は、ユーザーが雪山で雪崩に巻き込まれて遭難した場合等に、遭難したことを自動で検知して救難信号を発信する。例えば、図1に示すように、本実施形態の救難信号発信装置2を携帯したユーザー3が雪山の位置P(高度h)の地点で雪崩4に巻き込まれて山の斜面を転落し、位置P(高度h),P(高度h),P(高度h),・・・を経由して位置P(高度h)で雪に埋没した状態で停止したとする。救難信号発信装置2は、ユーザー3が雪崩に巻き込まれる直前まではGPS衛星5からのGPSの電波信号を受信して測位計算することで位置P(3次元測位であれば高度hも)の情報を得ることができる。しかし、GPSの電波の周波数は非常に高いため電波が積雪を透過中に減衰を受けやすく、ユーザー3が雪崩に巻き込まれた後は、救難信号発信装置2がGPSの電波信号を確実に受信できる保証はない。そこで、救難信号発信装置2は、ユーザー3が雪崩に巻き込まれた後は、各種のセンサーを用いて、ユーザー3が停止するまでの移動軌跡を算出し、最終的にユーザー3が停止した位置Pを算出する。また、救難信号発信装置2は、気圧センサーを用いて位置Pの高度hを算出する。そして、救難信号発信装置2は、位置Pや高度hの情報を含む救難信号を発信する。この遭難したユーザー3と行動をともにしていた他のユーザーも救難信号発信装置2を携帯しており、当該他のユーザーの救難信号発信装置2は、救難信号を受信して遭難したユーザーの正確な位置や高度の情報を表示する。当該他のユーザーは、救難信号発信装置2に表示された情報を参考にして、遭難したユーザーを迅速に救助することが期待できる。
【0049】
1−2.救難支援システムの構成
[全体構成]
図2は、本実施形態の救難支援システムの構成例を示す図である。本実施形態の救難支援システムは、図2の構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0050】
図2に示すように、本実施形態の救難支援システム1は、複数の救難信号発信装置2を含む。
【0051】
各救難信号発信装置2は、各ユーザーに取り付けられ、ユーザーが雪崩等による衝撃を受けたことを検出し、遭難したユーザーの正確な位置や高度等の情報を含む救難信号を自動的に発信する。
【0052】
また、各救難信号発信装置2は、他の救難信号発信装置2が発信した救難信号を受信し、遭難したユーザーの情報を表示する。
【0053】
[救難信号発信装置の構成]
図3は、救難信号発信装置2の外観の一例を示す図である。図3に示すように、救難信号発信装置2は、例えば、操作部32、表示部38(液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等)、音出力部40(マイクロフォン等)等を備えた携帯型の装置であって、救難信号の発信及び受信機能を有するスマートフォン等の携帯情報端末であってもよい。表示部38に対する接触検出機構を設けることで表示部38を操作部として兼用してもよい。
【0054】
ユーザー3は、雪崩による衝撃や転落の際に救難信号発信装置2を落とさないように、救難信号発信装置2を衣服のチャック付きポケット等に入れたり、バンド等で体や衣服に装着する。あるいは、ユーザー3は、腕時計タイプの救難信号発信装置2を腕に装着するようにしてもよい。なお、ユーザー3は、防寒着の上に救難信号発信装置2を装着すると、雪崩の衝撃と寒冷により不具合が起こる可能性があるので、救難信号発信装置2を下着の上に装着するのが望ましい。
【0055】
図4は、本実施形態の救難信号発信装置の構成例を示す図である。本実施形態の救難信号発信装置は、図4の構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0056】
図4に示すように、本実施形態の救難信号発信装置2は、処理部(CPU:Central Processing Unit)10、センサー群20、通信部30、操作部32、記憶部34、記録媒体36、表示部38、音出力部40、GPSアンテナ50を含んで構成されている。本実施形態の救難信号発信装置2は、これらの構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0057】
GPSアンテナ50は、GPS衛星から送信される電波信号(GPS信号)を受信するアンテナであり、GPSアンテナ50が受信したGPS信号は、処理部(CPU)10に送られ、処理部(CPU)10による測位計算に使用される。
【0058】
センサー群20は、加速度センサー21、ジャイロセンサー(角速度センサー)22、地磁気センサー23、気圧センサー24を含んで構成されている。本実施形態のセンサー群20は、これらの構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0059】
加速度センサー21は、ユーザーに加わる加速度を検出する。ユーザーに加わる衝撃が大きいほど加速度も大きいので、加速度センサー21が検出する加速度の大きさからユーザーが雪崩により衝撃を受けたか否かをある程度判断することができる。また、ユーザーが静止している時、加速度センサー21は重力加速度(1G)のみを検出するので、ユーザーが救難信号発信装置2をあらかじめ決められた所定の向きに装着しておけば、加速度センサー21の検出値からユーザーの遭難後の姿勢をある程度判断することができる。あるいは、ユーザーが、救難信号発信装置2を装着後、あらかじめ決められた姿勢(直立姿勢等)で静止し、この時加速度センサー21が検出する重力加速度の向きを基準にして、加速度センサー21の検出値からユーザーの遭難後の姿勢をある程度判断することができる。
【0060】
また、加速度センサー21の検出値を1階積分することで、ユーザーが雪崩に巻き込まれて転落する際の移動速度を算出することができる。さらに、加速度センサー21の検出値を2階積分することで、ユーザーが雪崩に巻き込まれて転落する際の移動距離を算出することができる。
【0061】
なお、加速度センサー21は、1軸方向の加速度のみを検出可能であってもよいが、検出軸と直交する向きに加わる加速度を正しく検出できないので、2軸以上(複数軸)の加速度を検出可能である方がよい。ただし、2軸の加速度センサーでは、2つの検出軸と互いに直交する向きに加わる加速度を正しく検出できないので、加速度センサー21は3軸以上の加速度を検出可能であることが望ましい。
【0062】
ジャイロセンサー22は、ユーザーに加わる回転角速度を検出する。従って、ジャイロセンサー22の検出値を1階積分することで、ユーザーが雪崩に巻き込まれて転落する際の回転角度(姿勢)を算出することができる。
【0063】
なお、ジャイロセンサー22は、1軸方向の角速度のみを検出可能であってもよいが、検出軸と直交する向きに加わる角速度を正しく検出できないので、2軸以上(複数軸)の角速度を検出可能である方がよい。ただし、2軸のジャイロセンサーでは、2つの検出軸と互いに直交する向きに加わる角速度を正しく検出できないので、ジャイロセンサー22は3軸以上の角速度を検出可能であることが望ましい。
【0064】
地磁気センサー23は、方角を検出する。従って、地磁気センサー23の検出値からユーザーが雪崩に巻き込まれて転落する際の方向を算出することができる。
【0065】
このように、加速度センサー21の検出値、ジャイロセンサー22の検出値、地磁気センサー23の検出値から、ユーザーが雪崩に巻き込まれて転落する際の移動速度、移動距離、姿勢、移動方向がわかるので、ユーザーが雪崩に巻き込まれてから停止するまでの移動軌跡や停止後の姿勢等を算出することができる。
【0066】
気圧センサー24は、ユーザーの位置の気圧を検出する。一般に、気圧がわかれば、次式(1)により、高度を計算できることが知られている。
【0067】
【数1】
【0068】
式(1)において、tは気相の平均温度(℃)、pは海面気圧(hPa)、pは気圧の観測値(hPa)である。
【0069】
式(1)において、0.00366×tは温度による補正項であり、温度tが不明であれば、次式(2)より、高度hを近似的に計算してもよい。
【0070】
【数2】
【0071】
ユーザーの作業中の高度と気圧をそれぞれh、p、ユーザーの転落後の高度と気圧をそれぞれh、pとすると、式(2)より、次式(3)が得られる。
【0072】
【数3】
【0073】
従って、式(3)より、気圧センサー24が検出する気圧の変化量から高度の変化量を計算することができる。
【0074】
気圧センサー24としては、圧力の変化を振動子の周波数の変化として捉える周波数変化型、圧力の変化を静電容量の変化として捉える静電容量型、圧力の変化をピエゾ抵抗の抵抗値の変化として捉えるピエゾ抵抗型などのセンサーを適用することができる。なお、現在のところ、周波数変化型の気圧センサーは、静電容量型やピエゾ抵抗型の気圧センサーよりも高い分解能が得られており、周波数変化型の気圧センサーであれば1Pa以下の分解能も実現可能である。また、圧電振動子として水晶振動子を用いることで温度特性も良好な周波数変化型の気圧センサーを実現することができる。
【0075】
操作部32は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、ユーザーによる操作に応じた操作信号を処理部(CPU)10に出力する。
【0076】
表示部38は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成される表示装置であり、処理部(CPU)10から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。
【0077】
音出力部40は、スピーカー等の音を出力する装置である。
【0078】
記憶部34は、処理部(CPU)10が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部34は、処理部(CPU)10の作業領域として用いられ、操作部32から入力されたデータ、記録媒体36から読み出されたプログラムやデータ、処理部(CPU)10が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶するためにも使用される。
【0079】
処理部(CPU)10は、記憶部34や記録媒体36に記憶されているプログラムに従って、各種の計算処理や制御処理を行う。具体的には、処理部(CPU)10は、センサー群20に含まれる各種センサーからデータを取得して記憶部34あるいは記録媒体36等に保存し、取得したこれらのデータに基づいて各種の計算処理を行う。また、処理部(CPU)10は、操作部32からの操作信号に応じた各種の処理、表示部38に各種の情報を表示させる処理、音出力部40に各種の音を出力させる処理等を行う。また、処理部(CPU)10は、通信部30を介して救難信号を発信する処理や他の救難信号発信装置2が発信した救難信号を受信する処理を行う。本実施形態では、操作部32に対する所定の操作により、救難信号を発信可能な送信モードと救難信号を受信可能な受信モードのいずれかを選択可能に構成されており、電源起動時には送信モードに設定されている。なお、本実施形態では、処理部(CPU)10が他の複数の救難信号発信装置2とそれぞれデータ通信を行うために、各救難信号発信装置2には、固有の識別番号(固有識別番号)が割り当てられており、各救難信号発信装置2とのデータ通信の際には、通信対象のデータとともに通信対象の救難信号発信装置2の固有識別番号の情報も送受信される。
【0080】
特に、本実施形態では、処理部(CPU)10は、位置算出部11、衝撃判定部12、移動軌跡算出部13、高度算出部14、救難情報生成部15、時間計測部16、通信制御部17、表示制御部18、音出力制御部19を含む。ただし、本実施形態の処理部(CPU)10は、これらの一部の構成(要素)を省略又は変更したり、他の構成(要素)を追加した構成としてもよい。
【0081】
位置算出部11は、GPSアンテナ50を介して受信したGPS信号に重畳されている航法メッセージを復調し、航法メッセージに含まれる各GPS衛星の軌道情報を用いて測位計算を行い、ユーザーの位置を算出する処理を行う。ただし、GPS信号に重畳されている航法メッセージを復調する処理を行う復調部を別途設け、位置算出部11は、復調部により復調された航法メッセージに含まれる各GPS衛星の軌道情報を用いて測位計算を行い、ユーザーの位置を算出する処理を行うようにしてもよい。
【0082】
衝撃判定部12は、加速度センサー21の検出データ(加速度データ)を取得し、当該検出データ(加速度データ)に基づいて、ユーザーに加わる衝撃の大きさが所定の閾値を超えたか否かを判定する処理を行う。例えば、雪崩の衝突時の衝撃により、ユーザーに大きな加速度が加わるので、加速度の大きさから衝撃の大きさを判定することができる。図5は、ユーザーが雪崩に遭遇したときにユーザーに加わる加速度の一例を示す図である。図5において、横軸はユーザーの位置、縦軸は加速度を表す。また、図5の横軸には、図1に示した各位置が示されている。図5に示すように、ユーザーが位置Pで雪崩に巻き込まれたとすると、雪崩の衝突によりユーザーに大きな加速度が加わり、その後、ユーザーはほぼ一定の加速度で山の斜面(位置P,P,P)を転落し、位置Pで停止する。このように、ユーザーが雪崩による衝撃を受けた瞬間に大きな加速度が加わるので、本実施形態では、衝撃判定部12は、加速度センサー22の検出データに基づいて、ユーザーに加わる加速度を算出し、当該加速度が閾値Aを超えたか否かにより、ユーザーに加わる衝撃の大きさが所定の閾値を超えたか否かを判定する。
【0083】
移動軌跡算出部13は、衝撃判定部12によりユーザーに加わる衝撃の大きさが閾値を超えたと判定された場合、センサー群20に含まれる各種センサーの検出データに基づいて、位置算出部11が所与のタイミングで算出したユーザーの位置(例えば、ユーザーが雪崩による衝撃を受ける前に算出したユーザーの最新の位置)を起点としてユーザーが停止するまでの移動軌跡を算出する処理を行う。要するに、移動軌跡算出部13は、ユーザーが雪崩に巻き込まれた後の移動軌跡を算出する。
【0084】
高度算出部14は、気圧センサー24の検出データ(気圧データ)を取得し、当該検出データ(気圧データ)に基づいて、ユーザーの高度(特にユーザーの遭難位置の高度)を算出する処理を行う。例えば、高度算出部14は、前記の式(1)を用いて気圧から高度を算出することができる。また、例えば、位置算出部11が高度を含む3次元の位置を算出可能であれば、高度算出部14は、前記の式(3)を用いて、ユーザーが雪崩に巻き込まれる直前(ユーザーに加わる衝撃の大きさが閾値を超える直前)の位置と停止位置(遭難位置)との高度差を算出し、当該高度差の情報と、位置算出部11により算出されるユーザーが雪崩に巻き込まれる直前の位置の高度の情報とからユーザーの遭難位置の高度を算出するようにしてもよい。
【0085】
救難情報生成部15は、位置算出部11が所与のタイミングで算出したユーザーの位置(例えば、ユーザーが雪崩による衝撃を受ける前に算出したユーザーの最新の位置)と、移動軌跡算出部13が算出したユーザーの移動軌跡とに基づいてユーザーの停止位置を推定し、当該停止位置の情報を含む救難情報を生成する処理を行う。救難情報は、当該停止位置(遭難位置)の他、例えば、遭難した時刻、遭難時の衝撃の大きさ、遭難してからの経過時間、遭難後のユーザーの姿勢等の情報を含むようにしてもよい。
【0086】
時間計測部16は、衝撃判定部12によりユーザーに加わる衝撃の大きさが所定の閾値を超えたと判定されてからの経過時間を計測する処理を行う。
【0087】
通信制御部17は、通信部30を介して他の救難信号発信装置2との間で行うデータ通信を制御する処理を行う。特に、本実施形態では、通信制御部17は、救難情報生成部15が生成した救難情報を含む救難信号を発信する処理を行う。また、通信制御部17は、他の救難信号発信装置2が発信した救難信号を受信する処理を行う。
【0088】
表示制御部18は、表示部38の表示を制御する処理を行う。特に、本実施形態では、表示制御部18は、他の救難信号発信装置2から受診した救難信号に含まれる情報を表示部38に表示させる処理を行う。
【0089】
音出力制御部19は、音出力部40の出力を制御する処理を行う。特に、本実施形態では、音出力制御部19は、衝撃判定部12によりユーザーに閾値を超える衝撃が加わった場合、音出力部40に警報音を出力させる処理を行う。また、音出力制御部19は、操作部32に対して警報音を解除する所定の操作が行われた場合、音出力部40に警報音の出力を停止させる処理を行う。
【0090】
記録媒体36は、コンピューター読み取り可能な記録媒体であり、特に本実施形態では、コンピューターを上記の各部として機能させるためのプログラムが記憶されている。そして、本実施形態の処理部(CPU)10は、記録媒体36に記憶されているプログラムを実行することで、位置算出部11、衝撃判定部12、移動軌跡算出部13、高度算出部14、救難情報生成部15、時間計測部16、通信制御部17、表示制御部18、音出力制御部19として機能する。あるいは、不図示の通信部等を介して有線又は無線の通信ネットワークに接続されたサーバーから当該プログラムを受信し、受信したプログラムを記憶部34や記録媒体36に記憶して当該プログラムを実行するようにしてもよい。ただし、位置算出部11、衝撃判定部12、移動軌跡算出部13、高度算出部14、救難情報生成部15、時間計測部16、通信制御部17、表示制御部18、音出力制御部19の少なくとも一部をハードウェア(専用回路)で実現してもよい。
【0091】
なお、記録媒体36は、例えば、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、メモリー(ROM、フラッシュメモリーなど)により実現することができる。
【0092】
本実施形態では、記憶部30あるいは記録媒体32には、特に、自己の固有識別番号の情報や他の各救難信号発信装置2の固有識別番号と各ユーザーの氏名との対応情報が記憶されている。従って、救難信号発信装置2は、他の救難信号発信装置2から固有識別番号を受信すると、当該対応情報を参照することで当該他の救難信号発信装置2のユーザーを特定することができるようになっている。
【0093】
1−3.救難支援システムの処理
[救難信号発信装置の送信処理]
図6は、救難信号発信装置2の処理部(CPU)10による救難信号の発信及びこれに付随する処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0094】
まず、処理部(CPU)10は、GPSアンテナ50を介してGPS信号を受信し、測位計算を開始する(S10)。その後、処理部(CPU)10は、周期的に最新のGPS信号を受信して測位計算を行い、ユーザーの最新の位置(緯度・経度)を算出する処理を繰り返し行う。
【0095】
次に、処理部(CPU)10は、加速度センサー21の検出データ(加速度データ)を取得し、ユーザーに加わる加速度を算出する(S12)。この算出した加速度の情報は、記憶部34あるいは記録媒体36等に保存される。
【0096】
次に、処理部(CPU)10は、ステップS12で算出した加速度が閾値Aよりも大きいか否かを判定する(S14)。
【0097】
加速度が閾値Aよりも大きい場合(S14のY)、次に、処理部(CPU)10は、音出力部40から警報音を出力するとともに、経過時間の計測とユーザーの移動軌跡の算出を開始する(S16)。
【0098】
次に、処理部(CPU)10は、ユーザーが停止したか否かを判定する(S18)。例えば、処理部(CPU)10は、加速度センサー21の検出データ(加速度データ)から算出される加速度(重力加速度を除いた加速度)が0(ほぼ0)になった時にユーザーが停止したと判定してもよいし、ジャイロセンサー22の検出データ(角速度データ)から算出される角速度が0(ほぼ0)になった時にユーザーが停止したと判定してもよいし、加速度(重力加速度を除いた加速度)と角速度がともに0(ほぼ0)になった時にユーザーが停止したと判定してもよい。さらに、処理部(CPU)10は、加速度や角速度の条件に加えて、気圧センサー24の検出データ(気圧データ)が一定(ほぼ一定)になったか否か(すなわち、高度が一定になったか否か)を追加の条件として、ユーザーが停止したか否かを判定してもよい。
【0099】
そして、処理部(CPU)10は、ユーザーが停止したと判定すると(S18のY)、ユーザーが衝撃を受ける直前の位置(S14のYになる直前にGPS信号に基づく測位計算により算出したユーザーの位置)とユーザーの移動軌跡からユーザーの停止位置(緯度・経度)を推定する(S20)。具体的には、処理部(CPU)10は、ユーザーが衝撃を受ける直前の位置からユーザーが停止するまでの移動軌跡を辿ることで停止位置を推定することができる。この推定した停止位置やユーザーの移動軌跡の情報は、記憶部34あるいは記録媒体36等に保存される。
【0100】
次に、処理部(CPU)10は、ユーザーの停止位置の高度と姿勢を算出する(S22)。この算出した高度や姿勢の情報は、記憶部34あるいは記録媒体36等に保存される。
【0101】
次に、処理部(CPU)10は、所定の猶予時間が経過するまでに(S26のYになるまでに)操作部32に対する警報音(ステップS16で出力した警報音)の解除操作が行われたか否かを判定し(S24)、猶予時間内に解除操作が行われなかった場合(S24のNかつS26のY)、救難情報を生成し、当該救難情報と固有識別番号の情報を含む救難信号を発信する(S28)。この救難情報は、例えば、遭難した時刻、遭難した位置や高度、遭難時の衝撃の大きさ、遭難してからの経過時間、遭難後のユーザーの姿勢等の情報を含み、記憶部34あるいは記録媒体36等に保存される。
【0102】
一方、ステップS12で算出した加速度が閾値A以下である場合(S14のN)や猶予時間内に解除操作が行われた場合(S24のY)、処理部(CPU)10は、救難情報の生成及び救難信号の発信処理を行わない。例えば、ユーザーが単に転倒した場合や、雪崩に巻き込まれたが自力で脱出したような場合でも、ユーザーに加わる加速度が閾値Aを超えて(S14のY)警報音が出力される(S16)場合があるが、ユーザーは、救助が不要であれば、自ら警報音の解除操作を行うことで救難信号が発信されないようにすることができる。
【0103】
次に、処理部(CPU)10は、操作部32に対してユーザーが遭難してからの経過時間(S14で加速度が閾値Aを超えたと判定されてからの経過時間)の計測を終了する操作が行われたか否かを判定し(S30)、当該操作が行われた場合(S30のY)、ユーザーの遭難後の経過時間の計測を終了し、経過時間の計測結果を記憶部34あるいは記録媒体36等に保存する(S32)。例えば、救助者(他のユーザー)が遭難したユーザーを発見した時に、当該遭難したユーザーが携帯する救難信号発信装置2に所定の操作を行って経過時間の計測を終了させることで、ユーザーが遭難してから救助されるまでに要した時間の情報を保存することができる。
【0104】
そして、処理部(CPU)10は、処理を終了する(S34のY)まで、所定時間が経過する毎に(S36のY)、S10〜S32の処理を繰り返し行う。
【0105】
なお、処理部(CPU)10は、表示部38に、ユーザーの姿勢や遭難後の経過時間などの情報を表示するようにしてもよい。
【0106】
[救難信号発信装置の受信処理]
図7は、救難信号発信装置2の処理部(CPU)10による救難信号の受信及びこれに付随する処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0107】
まず、処理部(CPU)10は、ユーザーによる操作部32に対する操作に応じて、送信モードから受信モードに切り替える(S50)。例えば、ユーザーは、近くで雪崩が発生したことを知ると操作部32を操作することにより、救難信号発信装置2は、受信モードに切り替わり、救難信号の受信が可能になる。
【0108】
そして、処理部(CPU)10は、いずれかの他の救難信号発信装置2からの救難信号を受信すると(S52のY)、当該救難信号を発信した他の救難信号発信装置2のユーザー(すなわち、遭難者)に関する情報を生成する(S54〜S60)。
【0109】
処理部(CPU)10は、まず、救難信号に含まれる固有識別番号の情報から遭難者を特定する(S54)。具体的には、処理部(CPU)10は、記憶部30あるいは記録媒体32に記憶されている各救難信号発信装置2の固有識別番号と各ユーザーの氏名との対応情報を参照し、受信した救難信号に含まれる固有識別番号と一致するユーザーを特定する。
【0110】
次に、処理部(CPU)10は、救難信号の受信強度を算出するとともに(S56)、GPS衛星5からGPS信号を受信し、測位計算を行う(S58)。この測位計算により、ユーザーの現在位置が算出される。
【0111】
さらに、処理部(CPU)10は、気圧センサー24の検出データを取得し、遭難者との高度差を算出する(S60)。具体的には、処理部(CPU)10は、式(1)を用いて気圧センサー24の検出データから高度を算出するとともに、受信した救難信号に含まれる救難情報から遭難者が遭難した高度の情報を抽出し、遭難者との高度差を算出する。
【0112】
次に、処理部(CPU)10は、遭難者に関する情報を表示部38に表示する(S62)。図8(A)及び図8(B)に表示部38に表示される画面の一例を示す。図8(A)は1ページ目の画面の例であり、図8(B)は2ページ目の画面(1ページ目の画面をスクロールアップすることで表示される画面)の例である。図8(A)及び図8(B)の例では、遭難者に関する情報として、遭難者の氏名の情報(ステップS54で特定される)、遭難後の経過時間、遭難者の現在の姿勢及び遭難者の現在位置の各情報(いずれも、ステップS52で受信した救難情報に含まれる)、ユーザーの現在位置の情報(ステップS58で算出される)、救難信号の受信強度の情報(ステップS56で算出される)、遭難者との高度差の情報(ステップS60で算出される)などが表示部38に表示されている。特に、ユーザーの現在位置と遭難者の現在位置の情報は、画像として表示されており(自己の現在位置は○印、遭難者の現在位置は×印で表示)、リアルタイムに更新される。
【0113】
そして、処理部(CPU)10は、処理を終了する(S64のY)まで、所定時間が経過する毎に(S66のY)、S50〜S62の処理を繰り返し行う。
【0114】
このような処理により救難信号を受信した救難信号発信装置2のユーザーは、ステップS62で表示部38に表示される情報を見ながら、遭難者を救助することができる。具体的には、当該ユーザーは、自己の現在位置と遭難者の現在位置の相対関係から遭難者の方向を確認しながら救助に向かい、遭難者に接近したら受信強度が最大になる位置を検出することで遭難者が埋没している正確な位置を特定することができる。この間、当該ユーザーは、遭難後の経過時間、遭難者の姿勢(雪に埋没している姿勢)、当該姿勢が変化するか否か(遭難者が動けるか否か)等から遭難者の生命の危険性を把握することができる。そして、当該ユーザーは、遭難者との高度差の情報から遭難者が雪に埋没している深度を把握し、遭難者の姿勢等に注意しながら、例えば頭が上を向いていればプローブを頭に突き刺さないように注意しながら雪を掘り起こし、迅速かつ安全に遭難者を救助することができる。
【0115】
以上に説明したように、第1実施形態の救難支援システムでは、救難信号発信装置2は、GPS信号を受信してユーザーの位置を算出する処理を繰り返し行い、ユーザーに加わる衝撃の大きさが所定の閾値を超えた場合は、ユーザーの最新の位置を起点としてユーザーが停止するまでの移動軌跡を算出し、当該移動軌跡を辿ることでユーザーの停止位置(緯度・経度)を推定し、当該停止位置(遭難位置)の情報を含む救難信号を送信する。すなわち、救難信号発信装置2は、例えば、ユーザーが雪崩に巻き込まれ、GPS信号を受信不可能な状態になったとしても、ユーザーが雪崩に巻き込まれる前に衛星信号を受信して算出した最新の位置の情報と雪崩に巻き込まれた後のユーザーの移動軌跡の情報からユーザーの遭難位置を推定できるので、この遭難位置の情報を確実に送信することができる。
【0116】
また、第1実施形態の救難支援システムでは、救難信号発信装置2は、遭難したユーザーの停止位置(緯度・経度)の情報とともに当該停止位置の高度の情報も含む救難信号を送信するので、この救難信号を受信した他の救難信号発信装置2のユーザーは、遭難者のより正確な遭難位置を特定することができ、迅速な救助を行うことができる。
【0117】
また、第1実施形態の救難支援システムでは、救難信号発信装置2は、ユーザーが遭難した後の経過時間の情報を含む救難信号を送信するので、この救難信号を受信した他の救難信号発信装置2のユーザーは、遭難者の生命の危険性等を判断し、遭難者に対して危険性に応じた適切な救助を行うことができる。
【0118】
また、第1実施形態の救難支援システムでは、救難信号発信装置2は、加速度センサーの21検出データ、遭難者の移動軌跡の情報、遭難後の経過時間等を記憶部34等に保存するので、当該遭難者を救助した救助者や病院の医師等は、これらの情報を読み出して解析することで遭難者の状態を判断し、適切な処置を施すことができる。
【0119】
2.第2実施形態
2−1.救難支援システムの概要
第2実施形態の救難支援システムでは、救難信号発信装置は、遭難したユーザーの生体情報を取得し、当該ユーザーの位置や高度の情報とともに生体情報も含む救難信号を発信する。この遭難したユーザー3と行動をともにしていた他のユーザーの救難信号発信装置2は、救難信号を受信して遭難したユーザーの正確な位置や高度の情報とともに生体情報を表示する。当該他のユーザーは、救難信号発信装置2に表示された情報を参考にして、遭難したユーザーの生命の危険度を認識しながら迅速に救助することが期待できる。
【0120】
2−2.救難支援システムの構成
第2実施形態の救難支援システムの全体構成は、第1実施形態(図2)と同様であるため、図示及び説明を省略する。
【0121】
[救難信号発信装置の構成]
図9は、第2実施形態の救難信号発信装置の構成例を示す図である。本実施形態の救難信号発信装置は、図9の構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0122】
図9に示すように、第2実施形態の救難信号発信装置2は、第1実施形態(図4)と同様に、処理部(CPU)10、センサー群20、通信部30、操作部32、記憶部34、記録媒体36、表示部38、音出力部40、GPSアンテナ50を含んで構成されている。本実施形態の救難信号発信装置2は、これらの構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。通信部30、操作部32、記憶部34、記録媒体36、表示部38、音出力部40、GPSアンテナ50の各構成及び機能は、第1実施形態(図4)と同様であるため、その説明を省略する。
【0123】
センサー群20は、加速度センサー21、ジャイロセンサー(角速度センサー)22、地磁気センサー23、気圧センサー24、生体情報センサー25を含んで構成されている。本実施形態のセンサー群20は、これらの構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。加速度センサー21、ジャイロセンサー(角速度センサー)22、地磁気センサー23、気圧センサー24の各構成及び機能は、第1実施形態(図4)と同様であるため、その説明を省略する。
【0124】
本実施形態の救難信号発信装置2は、第1実施形態(図4)の構成に対して、生体情報センサー25(生体情報検出部の一例)が追加されている。
【0125】
生体情報センサー25は、ユーザーの生体情報を検出する。ユーザーの生体情報は、心拍数、脈拍数、呼吸数、あるいは、血圧等である。生体情報センサー25としては専用のセンサーを用いてもよいし、例えば、加速度センサー21を用いてユーザーの胸等の動きを検出し、処理部(CPU)10が、加速度センサー21の検出データから心拍数を算出するようにしてもよい。あるいは、生体情報センサー25としてマイクロフォンを設け、処理部(CPU)10が、当該マイクロフォンにより検出されるユーザーの心音や呼吸音から心拍数や呼吸数を算出するようにしてもよい。
【0126】
処理部(CPU)10は、記憶部34や記録媒体36に記憶されているプログラムに従って、第1実施形態と同様の各種の計算処理や制御処理を行う。特に、本実施形態では、処理部(CPU)10は、第1実施形態と同様に、位置算出部11、衝撃判定部12、移動軌跡算出部13、高度算出部14、救難情報生成部15、時間計測部16、通信制御部17、表示制御部18、音出力制御部19を含む。ただし、本実施形態の処理部(CPU)10は、これらの一部の構成(要素)を省略又は変更したり、他の構成(要素)を追加した構成としてもよい。
【0127】
位置算出部11、衝撃判定部12、移動軌跡算出部13、高度算出部14、時間計測部16、通信制御部17、表示制御部18、音出力制御部19の各機能は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0128】
救難情報生成部15は、転落したユーザーの停止位置(遭難位置)とともに当該ユーザーの生体情報を含む救難信号を生成する処理を行う。救難情報は、当該停止位置(遭難位置)と生体情報の他、例えば、遭難した時刻、遭難時の衝撃の大きさ、遭難してからの経過時間、遭難後のユーザーの姿勢等の情報を含むようにしてもよい。
【0129】
2−3.救難支援システムの処理
[救難信号発信装置の送信処理]
図10は、救難信号発信装置2の処理部(CPU)10による救難信号の発信及びこれに付随する処理のフローチャートの一例を示す図である。なお、図10において、第1実施形態(図6)と同様の処理を行うステップには同じ符号を付している。
【0130】
まず、処理部(CPU)10は、第1実施形態(図6のS10〜S22)と同様に、ステップS10〜S22の処理を行う。
【0131】
次に、処理部(CPU)10は、ユーザーの生体情報を取得し、記憶部34あるいは記録媒体36等に保存する(S23)。
【0132】
次に、処理部(CPU)10は、第1実施形態(図6のS24〜S28)と同様に、ステップS24〜S28の処理を行う。ただし、本実施形態では、処理部(CPU)10は、ステップS28において、ユーザーが遭難した時刻、遭難した位置や高度、遭難時の衝撃の大きさ、遭難してからの経過時間、遭難後のユーザーの姿勢等の情報に加えて、ステップS23で取得したユーザーの生体情報を含む救難情報を生成する。
【0133】
次に、処理部(CPU)10は、第1実施形態(図6のS30,S32)と同様に、ステップS30,S32の処理を行う。
【0134】
そして、処理部(CPU)10は、処理を終了する(S34のY)まで、所定時間が経過する毎に(S36のY)、S10〜S32の処理を繰り返し行う。
【0135】
なお、処理部(CPU)10は、表示部38に、ユーザーの姿勢や遭難後の経過時間、ユーザーの生体情報などの情報を表示するようにしてもよい。
【0136】
[救難信号発信装置の受信処理]
本実施形態における救難信号発信装置2の処理部(CPU)10による救難信号の受信及びこれに付随する処理のフローチャートは、第1実施形態(図7)と同様であるため、図示及びその説明を省略する。なお、本実施形態では、処理部(CPU)10は、ステップS62において、遭難者に関する情報として、遭難者の氏名の情報(ステップS54で特定される)、遭難後の経過時間、遭難者の現在の姿勢及び遭難者の現在位置の各情報(いずれも、ステップS52で受信した救難情報に含まれる)、ユーザーの現在位置の情報(ステップS58で算出される)、救難信号の受信強度の情報(ステップS56で算出される)、遭難者との高度差の情報(ステップS60で算出される)などに加えて、ユーザーの生体情報(ステップS52で受信した救難情報に含まれる)を表示部38に表示する。
【0137】
このような処理により救難信号を受信した救難信号発信装置2のユーザーは、ステップS62で表示部38に表示される情報を見ながら、遭難者を救助することができる。
【0138】
以上に説明した第2実施形態の救難支援システムは、第1実施形態の救難支援システムと同様の効果を奏する。
【0139】
また、第2実施形態の救難支援システムでは、救難信号発信装置2は、遭難者の生体情報を含む救難信号を送信するので、この救難信号を受信した他の救難信号発信装置2のユーザーは、遭難者の生命の危険度を考慮しながら迅速な救助を行うことができる。
【0140】
また、第2実施形態の救難支援システムでは、救難信号発信装置2は、遭難者の生体情報を記憶部34等に保存するので、当該遭難者を救助した救助者や病院の医師等は、この生体情報を読み出して解析することで遭難者の生命の危険性等を判断し、危険性に応じた適切な処置を施すことができる。
【0141】
3.第3実施形態
3−1.救難支援システムの概要
第3実施形態の救難支援システムでは、救難信号発信装置は、複数のユーザーが同時に被災し、遭難した場合等に、各救難信号発信装置がユーザーの遭難を自動で検知して救難信号を発信する。例えば、図11に示すように、航空機が空中で爆発事故を起こして雪山に不時着し、これにより、本実施形態の救難信号発信装置2をそれぞれ携帯した複数のユーザー3が雪山の斜面に散在し、あるいは雪に埋没しているような場合、各救難信号発信装置2は、各種のセンサーを用いてユーザー3の遭難を自動で検知してその位置を算出し、遭難位置の情報や生体情報を含む救難信号を発信する。そして、各救難信号発信装置2は、他の救難信号発信装置2が発信した救難信号を受信し、各ユーザー3の遭難位置や重篤度などの情報を表示する。軽傷のユーザー3は、救難信号発信装置2に表示された情報を参考にして、助かる可能性が高いユーザー3から優先して迅速に応急措置等を行うことができる。
【0142】
3−2.救難支援システムの構成
[全体構成]
図12は、第3実施形態の救難支援システムの構成例を示す図である。本実施形態の救難支援システムは、図12の構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0143】
図12に示すように、第3実施形態の救難支援システム1は、複数の救難信号発信装置2を含む。
【0144】
各救難信号発信装置2は、各ユーザーに取り付けられ、ユーザーが航空機事項等による衝撃を受けたことを検出し、負傷したユーザーの正確な位置や高度等の情報を含む救難信号を自動的に発信する。
【0145】
また、救難信号を発信しなかった各救難信号発信装置2は、他の複数の救難信号発信装置2がそれぞれ発信した救難信号を受信し、遭難した各ユーザーの情報を表示する。
【0146】
第3実施形態の救難信号発信装置の構成は、第2実施形態(図9)と同様であるので、図示及び説明を省略する。ただし、第3実施形態の救難信号発信装置2では、処理部(CPU)10の処理が第2実施形態と異なる。
【0147】
3−3.救難支援システムの処理
[救難信号発信装置の送信処理]
図13は、救難信号発信装置2の処理部(CPU)10による救難信号の発信及びこれに付随する処理のフローチャートの一例を示す図である。なお、図10において、第1実施形態(図6)と同様の処理を行うステップには同じ符号を付している。
【0148】
まず、処理部(CPU)10は、GPSアンテナ50を介してGPS信号を受信し、測位計算を開始する(S10)。その後、処理部(CPU)10は、周期的に最新のGPS信号を受信して測位計算を行い、ユーザーの最新の位置(緯度・経度)を算出する処理を繰り返し行う。
【0149】
次に、処理部(CPU)10は、加速度センサー21の検出データ(加速度データ)を取得し、ユーザーに加わる加速度を算出する(S12)。この算出した加速度の情報は、記憶部34あるいは記録媒体36等に保存される。
【0150】
次に、処理部(CPU)10は、気圧センサー24の検出データ(気圧データ)を取得し、気圧変化量を算出する(S13)。この算出した気圧変化量の情報は、記憶部34あるいは記録媒体36等に保存される。
【0151】
次に、処理部(CPU)10は、ステップS12で算出した加速度が閾値Aよりも大きいか否かを判定する(S14)。つまり、処理部(CPU)10は、ユーザーが受けた衝撃の大きさを事故発生時に想定される衝撃の大きさと比較し、航空機事故の可能性があるかを判定する。
【0152】
加速度が閾値Aよりも大きい場合(S14のY)、次に、処理部(CPU)10は、ステップS13で算出した気圧変化量が閾値Bよりも大きいか否かを判定する(S15)。気圧変化量が閾値Bよりも大きい場合(S15のY)、次に、処理部(CPU)10は、第2実施形態(図10のS16〜S28)と同様に、ステップS16〜S28の処理を行う。一方、ステップS13で算出した気圧変化量が閾値B以下である場合(S15のN)、処理部(CPU)10は、ステップS16〜S28の処理を行わない。
【0153】
空中爆発や不時着により航空機の機体の一部が損傷して機内の気圧が急激に低下することが考えられる。これに対して、航空機が乱気流に巻き込まれて大きく揺れた場合や、航空機に軽微な事故が発生したような場合は、気圧変化量が小さいと考えられる。そこで、処理部(CPU)10は、気圧の変化量に基づいて救助が必要な事故の発生の有無を最終判定し、必要に応じて救難情報の生成及び救難信号の発信処理を行う。
【0154】
次に、処理部(CPU)10は、第2実施形態(図10のS30,S32)と同様に、ステップS30,S32の処理を行う。
【0155】
そして、処理部(CPU)10は、処理を終了する(S34のY)まで、所定時間が経過する毎に(S36のY)、S10〜S32の処理を繰り返し行う。
【0156】
なお、処理部(CPU)10は、表示部38に、ユーザーの姿勢や遭難後の経過時間、ユーザーの生体情報などの情報を表示するようにしてもよい。
【0157】
[救難信号発信装置の受信処理]
図14は、救難信号発信装置2の処理部(CPU)10による救難信号の受信及びこれに付随する処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0158】
まず、処理部(CPU)10は、ユーザーによる操作部32に対する操作に応じて、送信モードから受信モードに切り替える(S50)。例えば、航空機が空中で爆発事故を起こして雪山に不時着したような場合、軽傷のユーザーが操作部32を操作することにより、救難信号発信装置2は、受信モードに切り替わり、救難信号の受信が可能になる。
【0159】
そして、処理部(CPU)10は、他の複数の救難信号発信装置2からの救難信号を受信すると(S52のY)、当該救難信号を発信した各救難信号発信装置2のユーザー(すなわち、遭難者)に関する情報を生成する(S54〜S60)。
【0160】
処理部(CPU)10は、まず、各救難信号に含まれる固有識別番号の情報から各遭難者を特定する(S54)。具体的には、処理部(CPU)10は、記憶部30あるいは記録媒体32に記憶されている各救難信号発信装置2の固有識別番号と各ユーザーの氏名との対応情報を参照し、受信した各救難信号に含まれる固有識別番号と一致する各ユーザーを特定する。
【0161】
次に、処理部(CPU)10は、各救難信号の受信強度を算出するとともに(S56)、GPS衛星5からGPS信号を受信し、測位計算を行う(S58)。この測位計算により、ユーザー(軽傷のユーザー)の現在位置が算出される。
【0162】
さらに、処理部(CPU)10は、気圧センサー24の検出データを取得し、式(1)を用いて、各遭難者との高度差を算出する(S60)。
【0163】
次に、処理部(CPU)10は、ステップS52で受信した各救難信号に含まれる各遭難者の生体情報から各遭難者の重篤度を判定する。例えば、処理部(CPU)10は、各遭難者の心拍数、脈拍数、呼吸数、血圧等のいくつがどの程度低下しているか等により、各遭難者の重篤度を判定することができる。
【0164】
次に、処理部(CPU)10は、遭難者に関する情報を表示部38に表示する(S62)。例えば、処理部(CPU)10は、図15に示すような、各遭難者の位置と重篤度を示す画面を表示部38に表示するようにしてもよい。図15の例では、各遭難者の位置が○印で示され、重篤度に応じて○印の色が変えられている。そして、例えば、ユーザーが操作部32を操作して1つの○印を選択すれば、例えば、図8(A)や図8(B)に示したような各遭難者の情報を表示する表示画面に切り替わるようにしてもよい。軽傷のユーザーは、このような表示を見ながら、助かりそうな遭難者を捜し、優先的に救助に向かうことができる。
【0165】
そして、処理部(CPU)10は、処理を終了する(S64のY)まで、所定時間が経過する毎に(S66のY)、S50〜S62の処理を繰り返し行う。
【0166】
このような処理により救難信号を受信した救難信号発信装置2のユーザー(軽傷のユーザー)は、ステップS62で表示部38に表示される情報を見ながら、助かりそうな遭難者を捜し、優先的に救助に向かうことができる。
【0167】
以上に説明した第3実施形態の救難支援システムは、第1実施形態の救難支援システムと同様の効果を奏する。
【0168】
また、第3実施形態の救難支援システムでは、救難信号発信装置2は、遭難者の生体情報を含む救難信号を送信し、この救難信号を受信した他の救難信号発信装置2は、遭難者の生体情報から重篤度を判定し、重篤度を表示するので、当該他の救難信号発信装置2のユーザーは、重篤度を考慮しながら適切な救助活動を行うことができる。例えば、複数の遭難者がいる場合、当該ユーザーは、各遭難者の重篤度を比較し、助かる可能性がある遭難者を優先的に救助する等の措置を講じることができる。
【0169】
4.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0170】
[変形例1]
本実施形態において、ユーザーが雪崩や航空機事故等により衝撃を受けた場合、救難信号発信装置2は、警報音を出力しているが、当該警報音をユーザーが解除できるようにしてもよい。そして、ユーザーにより警報音の解除操作が行われた場合、救難信号発信装置2は、当該解除操作が行われた旨を他の救難信号発信装置2に送信するようにしてもよい。このようにすれば、ユーザーが被災したが軽傷であったような場合やユーザーが被災したと誤って判定された場合等に、ユーザーの意思で無事であることを他のユーザーに知らせることができる。
【0171】
[変形例2]
本実施形態において、救難信号発信装置2の処理部(CPU)10の時間計測部16は、衝撃判定部12によりユーザーが強い衝撃を受けたと判定されてからの経過時間を複数のタイマーで計測し、操作部32に対する別々の操作を行うことで各タイマーが計測を終了して計測結果を保存するようにしてもよい。例えば、第1のタイマーは、ユーザーが衝撃を受けてから救助されるまで(救助者がユーザーを発見して所定の操作を行うまで)の時間を計測して保存し、第2のタイマーは、ユーザーが衝撃を受けてから病院に搬送されるまで(救助者や病院の医師が、ユーザーが病院に到着した後に所定の操作を行うまで)の時間を計測して保存するようにしてもよい。これにより、救助に要した時間の情報だけでなく病院までの搬送に要した時間の情報も収集することができる。
【0172】
また、病院に設置された情報端末(パソコン等)と救難信号発信装置2に同じ特殊な形状のコネクターを設け、救難信号発信装置2のコネクターを当該情報端末のコネクターに接続することで、救難信号発信装置2に保存されているユーザーの遭難時の情報が当該情報端末に表示されるようにしてもよい。さらに、上記の第2のタイマーは、操作部32に対して所定の操作を行う代わりに、救難信号発信装置2のコネクターを情報端末のコネクターに接続した時に、計測を終了して計測結果を保存するようにしてもよい。このようにすれば、病院までの搬送に要した時間の情報を確実に収集することができる。
【0173】
[変形例3]
本実施形態において、救難信号発信装置2は、初期状態で送信モードに設定されているが、初期状態で受信モードに設定し、処理部(CPU)が各種センサーの検出データを利用してユーザーが遭難したと判定した場合に、自動的に送信モードに切り替えて救難信号を発信するようにしてもよい。また、救難信号発信装置2は、救難信号の受信の有無を間欠的にチェックする間欠受信モードに設定されていてもよい。また、救難信号発信装置2は、ユーザーが遭難したと判定するまで上記間欠受信処理以外の処理を停止するスリープモードに設定されていてもよい。これらにより、特に携帯型の電子機器で問題となる消費電力を大幅に削減することができる。
【0174】
[変形例4]
第3実施形態の救難信号発信装置2の処理部(CPU)10による処理(図13)において、ステップS12で算出した加速度が閾値Aよりも大きいか、あるいは、ステップS13で算出した気圧変化量が閾値Bよりも大きい場合に、ステップS16〜S28の処理を行うように、よりフェールセーフな処理に変更してもよい。
【0175】
[変形例5]
本実施形態において、救難信号を受信した救難信号発信装置2は、受信した救難信号に含まれる情報を、衛星通信回線やインターネット等を介して救助部隊の待機場所に設置された他の情報端末等に転送するようにしてもよい。このようにすれば、救助部隊が迅速に遭難者の救助に向かうことができる。
【0176】
なお、本実施形態では、雪崩や航空機事故による遭難を例に挙げて説明したが、本発明は、それ以外の原因によりユーザーが遭難する場合に対して適用することができる。
【0177】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0178】
1 救難支援システム、2 救難信号発信装置、3 ユーザー、4 雪崩、5 GPS衛星、10 処理部(CPU)、11 位置算出部、12 衝撃判定部、13 移動軌跡算出部、14 高度算出部、15 救難情報生成部、16 時間計測部、17 通信制御部、18 表示制御部、19 音出力制御部、20 センサー群、21 加速度センサー、22 ジャイロセンサー、23 地磁気センサー、24 気圧センサー、25 生体情報センサー、30 通信部、32 操作部、34 記憶部、36 記録媒体、38 表示部、40 音出力部、50 GPSアンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15